森の猫の梅昆布茶さんおすすめリスト 2013年12月14日17時29分から2017年6月14日13時50分まで ---------------------------- [自由詩]ひょうたん島移住計画/梅昆布茶[2013年12月14日17時29分] ある日ぼくのもとに封書がとどいた 送り主をみると その日暮らしの友舍 たしかにその日暮らしはしているが 友を募るほど盛大ではないし あけてみると請求書だ 項目として 笑った時間 13.14時間 怒った時間 1.04時間 泣いた時間 6.94時間 無為な時間 85.77時間 合計で11万8000ガバス? おいおい ガバスって ひょっこりひょうたん島の 通貨単位だろうが 知るひとぞ知るかのドン・ガバチョに ちなんだ単位だろう・・・ どうやらその日暮らしの感情生活を維持するための サービスへの対価らしいのだが そんな新サービス 頼んだ覚えもないし・・・ 漂流する独立国家 ひょっこりひょうたん島 漂流するのはどっかと一緒だなんて くちが裂けても言えないが言ってしまおう こんどその日暮らしにも 税金がかかるそうな どっかの議会で決まったらしいが その日暮らし税の税率は7% 悪質なその日暮らしには重加算税もあるらしい のんびりその日暮らしも楽しめないこの世の中 ひょっこりひょうたん島へでも移住しようかとも 思ってしまう今日この頃だ ---------------------------- [自由詩]姉と話す/梅昆布茶[2014年4月26日0時09分] 横浜の姉に電話する。 料理や家事のことでわからないことがあると 姉にきいてみるのだが。 姉もだんだん逝った母に似て 話が長くなってきつつあるようだ。 煮ると焼くしかない僕のレパートリーを ちょっと広げてみようかと 揚げ物のコツをきいてみたわけなのだ。 いろいろ話したあとで甥っ子の鬱病の話。 帰国子女の彼は僕の高校の後輩でもある。 某なんとか総研の中間管理職らしい彼。 生まれてしばらくは母が面倒を見ていたこともあった。 ボクもよく近くの公園や動物園などに連れて行ったものだ。 トンネルのなかにいる彼。 どの場所に居ようとも 人間は何かを抱えながら生きなければならない。 ---------------------------- [自由詩]猫でした/梅昆布茶[2014年5月9日3時39分] 猫でした まちがいなくねこだったと思うのですが 定かではありません 幸せだったかもしれませんし そうじゃあなかったかもしれません 宿無しだったのはたしかです いまでもたいして変わりはしませんが 濡れそぼる夜はなくなったようです また猫に戻りたいかときかれれば まああれはあれで良かったかなと思うだけです よく遠くのそらをながめていました 腹も減るものですが別の何かもさがしていたものです からっぽの街で風の行方を追いかけては 光のあふれる季節をみつけようと彷徨いました そう猫でした いまでもその記憶が残っているのです ---------------------------- [自由詩]手/梅昆布茶[2014年7月20日3時50分] きみの手を想う 華奢でちょっと小さめだった 骨折して松山の病院へいっしょに行ったときも きみの身体の一部が壊れたことに かなしみを覚えていた きみの替わりに朝 新聞配達をやった それは些細な苦労だった ほんのつかのまのちいさな労力だ それなのにしんどいと思い始めた自分 何年経ても ときに会社の設計室でトレースをし なにくれとなく子供達の世話をしたり きみの手はよくはたらいたとおもう 僕の手は無骨だ 神経がかよっていないかと思われるほど 丈夫だけれども うまくこころを伝えられない厄介者だ もういちど手を繋げるとは思っていないが 子供の結婚式にでもであえたら そんな僕の手にもこころが通い始めたかもしれないと きみに伝えたいと思っている ---------------------------- [自由詩]ラジカル・ミステリー・ツアー/梅昆布茶[2014年10月8日14時27分] リベラルな共産党員 天気のよい氷雨 帰りを待っている女房 USO800取得の国家 コマネチをやらないビートたけし 歌をわすれないカナリヤ ツタンカーメンの祝福 酔いどれてるうちに いいかげんな宇宙を創ってしまった 素敵な神様 品行方正な浜田幸一 宅配の若者と 恋におちたジュリエット グレープジュースをトマトジュースで割るひと 尻の青い猿 山口百恵が引退せず『蒼くない時」 なんちゅう 自伝的ベストセラーをものす ゴーストライターではなくて 松田聖子が結婚後 引退しひっそりと家庭に入る 首都高の出口が ユニバーサル・スタジオ・ジャパン アンタレス 日光猿軍団リバイバルランド なんて書き換えられている そんなツアーがしてみたいと ときどきおもうのだ ---------------------------- [自由詩]素描/梅昆布茶[2014年11月5日13時29分] すべての望みをかなえることができないように すべてのいのちをいきることができないように ぼくたちはあるフレームできりとられた風景を生きる ことばでそれらをデッサンする どうやったら頭のなかの陰翳を 鉛筆画のように定着させようか あるいはそれに淡彩で色づけしてみようかと 生きるためのツールとして からだをことばをスキルを獲得してゆく 人との距離をはかるすべをおぼえ 蓑虫のようにはなりたくないとおもいつつ ついつい殻をまとって生きる 国のかたちがみえないように 国境にはあきらかな線が引かれている訳もなくただ ひなげしがいちめんに咲きほころんでいる おなじ風のなかでおなじ大地にはぐくまれて 自然のあるいは社会の秩序にしたがうように群れる それにあがらうも 流されるもそれぞれの流れ 人もひなげしも場所はことなるが ただ生きていることや ただ咲いていることって けっこう素敵で美しいともおもう デッサンでいいんだ おおきな号数の大作なんていらない きみの日々の手の温もりを 確かめたい アメリカの中間選挙の結果よりも きみのデッサンのほうが よっぽど重要な気がするんだ ぼくのフレームのなかにかかせないもの 基盤に到達するデッサンを ときどきは 届けて欲しいとおもうのだ ---------------------------- [自由詩]詩人/梅昆布茶[2014年11月13日10時52分] 名前のないものにかこまれて生きている 見たもの感じたこと 言い表せないもどかしさ 伝えようとするものには 名前がないし きみの良いところも うまく表現できない馬鹿者だが そういった隙間を きみのことばが するりと埋めてくれる楽しみもある ことばの力を たぶん信じている たんなる道具であったなら それほどにこころを揺さ振るまいとも いいんだ風変わりでも孤独でも あるいは平凡にもおもえる日常の点描でも 名前のないものにかこまれて生きている それに命名するいのちのはたらきを 詩人とよびたいと想う 僭越ながら そう決めたのですから ---------------------------- [自由詩]明けまして猫年ですが?/梅昆布茶[2015年1月5日16時25分] 明けましておめでとうございます。 僕の書斎兼 食卓兼 呑み場所の 宇宙の中心に猫好きなくにちゃんのミニカレンダーをすとんと置いてあるので ことしは猫年になりそうです。 除夜の鐘をききながら渋谷新宿あたりを走りまわっていました。 あいかわらず忙しい1年になるのかもしれません。 僕は猫座の六等星 なんの取り柄もなくてしょっぱいだけの人間です。 谷中の猫カフェ いきましたか? いま人気の街ですがなぜ猫が多いのでしょうね。 高田馬場の清龍で呑みましたね。 僕が焼酎をあおっていたころとはずいぶん違った オシャレな居酒屋でした。 いずれにしても猫年は気まぐれにときどきやってくるので そんなところが誰かさんに似ています。 なーんてね。 これちょっとベースに現フォに投稿するかも。 ご了承の程を、、、。 相変わらずことしもほとんどアホで過ごしてしまいそうな不安。 得意のセリフはまあいっか。。。 しぶとさが身上なので今年もよろしくね。 またきっと呑みに行きましょうね! ---------------------------- [自由詩]朝のユーモレスク/梅昆布茶[2015年2月11日19時10分] よろこび いつくしみ むさぼり 穢土はひとのこころにすむものか 浄土もまたひとのこころにあるものか コーヒーに 砂糖とクリームをゆっくり溶かしながら そんなことをおもう そうか国土ではないなにものかが 白くなったり黒くなったりもするものなのだ 八百万の神々でよかったのかもしれない 単一の価値観でしか生きられないよりは なんだかよく機能のわからないボタンだらけの 母が愛用していたラジカセのリモコンを 適当に押しながら 仕事にはちょっっと早い時間に目覚めてしまった自分には 流れているユーモレスクのゆっくりとした歩調が 欲しいのだとおもった ---------------------------- [自由詩]磔刑の丘に/梅昆布茶[2015年2月23日10時53分] 視野の隅 磔刑の丘が緩やかに 空に溶けて行く先には何もない 君の指先は工場で品質を素早く読み取る 精密な器械でもあるが ときにわたしを虜にしてしまう 哀しく白い造形でもある 時間のなかの小さな違和を検出する その瞳には歌が流れてゆくだろうか 獣のように垢染みてしまった私は もはや隠れるすべもなく風に吹かれている すべての大切なものは必ず失われる しかしやがて慈雨となって新芽を潤し 春の先触れとなって心に降りそそぐのだろう ---------------------------- [自由詩]夜が零れる/梅昆布茶[2015年3月4日21時08分] かつて激しくなにかになりたいと 想ったことがあっただろうか 自分以外のだれかになりたいとはいくども考えたが それはクラスの席替え程度の安易な願望にすぎなかった ラモーンズのコピー親父バンドの エネルギッシュな汗をみる 羨ましいがもう社会的メタモルフォーゼも ままならない我が身 せめて夜に零れ咲く徒花の春を待つ 実体のなかったもののように子供達の笑い声 若芽の和毛のようにちくちくとやさしく痛い 変容は求めずともやって来るものだが できるならばより私であるちいさな価値に 寄り添ってある小径だったならもっといい 捨て去る訳でもなくあるものは省略され いつしか融合してゆくもの いつのまにか様々なものの順序がいれかわり 空いた隙間をまた何かが埋めて行く 容量を超えたものが流れ去るように この夜に零れ落ちてゆくものを見送り 春宵のほのかなぬくもりに浸りながら 冷たい器の縁を指でなぞる ---------------------------- [自由詩]サボテン/梅昆布茶[2015年3月20日3時31分] 硬質なおんなと軟弱なおとこ 大切なものと捨てなければ進めない足枷 サボテンのようにわずかな水分で生きて行く だれもじぶんを交換できないので 大好きなシャツの袖に腕を通す 生きる意欲はほんのちっちゃな努力なんだ いつもだれかにささえられてあるいはささえて 変換するちからあるいは感性を 交感する宇宙との共存を ちっちゃな哲学を積み重ねて行く 大きなものはいらない いまをどうするか考える そうなんだ きみの笑顔はたぶん人生の からっぽな僕のお守りなんですね ---------------------------- [自由詩]和解/梅昆布茶[2015年3月27日9時01分] 何処かに眠っている昨日 さとうきびから生成される明日 個人的に厳しい毎日 会社的に使いやすい存在 安定した自分という誤解 信頼できる友という希望 愛という夢想 性という分離 因数分解でわかるものは とうてい追いつけない論理 自分を救うことをあきらめないまま 他人まで救おうと無謀に走る 富という汚辱 貧という奈落 ちぎれた雲に自分をみる 夢見た本はどこかに隠してあるが 褒賞のないたたかいが 人生だとしたらそれでも挑む さいごは勝ち負けのない あんたとの和解を望んでいるんだから ---------------------------- [自由詩]アンダンテ/梅昆布茶[2015年4月2日18時13分] 僕の歩速はアンダンテ 歩幅はきみを抱きしめるときの喜び 世界はストーンサークル 星の影を測る物差し 僕の耳はユーフォニューム B♭で風の音を聴く貝殻 きみは狂った時計が時を刻むアンビエントな部屋で 玉葱のようにの次々と衣装を脱ぎ捨ててゆく ちょっと衰えた胸はバンドネオン 僕は白い腕のあいだで明滅するタンゴ 僕の歩速はアンダンテ 歩幅はきみと別れるための哀しみ ---------------------------- [自由詩]地図/梅昆布茶[2015年4月22日11時36分] 心と身体が離れている その隙間に不安が滑り込む いちいち手足に呼びかけないと 動作しない人間型ロボットみたいで いろんなものを詰め込んだ 底の抜けた南京袋 唇から直腸まで 排泄物や消化途中の 20%引きの 焼き鳥レバーも僕 缶チューハイの空き缶で 家を造ったら30坪ほどの 二階建ての家になるだろう それはかつての僕の家で 家族もいたことだろう 記憶も曖昧で そんな軽いステージで 家族を養えるわけはない そう言いながら 樺太産のししゃもと鳥レバー ほんとうの地図ってあと何枚めくったら 僕の地図になるのか でも国土地理院にも無い地図を あなたは描いている だからたぶん僕もそうしたいと 想っている訳なんだ ---------------------------- [自由詩]リモートコントロール/梅昆布茶[2015年6月17日11時33分] 戸棚の奥からでてきた何のものだかわからない古いリモコン 我が家ではときどきあるのだこういうことが ためしにあちこち押してみる わずかな振動が空気を震わせて とつぜん世界が半壊 するわけはないのだが 買い物にでるときに遭った隣の親父さんが やけに愛想がよすぎて頭がくらくらした だって普段は仏頂面の見本みたいな人なんだ それ以降グッドラック?の目白押し 道端で100円拾った 100円はおおきいので また頭がくらくらした こじれていた彼女から仲直りのメール 田舎から米と野菜がどっさり送られてきた 近所の嫌いな犬がなぜか吠えない 会社の上司がしきりに気色悪いヨイショをしてきたり 通勤電車のつながりが良すぎたり 世界がまるで僕にウインクしているようにも 感じられたんだ いま考えればあれは僕のこころの ちいさなしあわせスイッチだったんじゃあないかとおもうんだ 人間はささいなことで様ざまなスイッチが入ってしまうものだ そのリモートコントローラーでさえ どこにあるかわからない始末なんだろうなきっと きみも戸棚の奥を捜してごらん わけのわからないリモコンが出てきたら ためしに押してみるといいよ ただその結果世界が半壊しても 僕は保障しないからね ---------------------------- [自由詩]半魚人の夜/梅昆布茶[2015年8月22日11時27分] きみの夢は軽いけれどもきみは重い 人間ひとりってたいそうな荷物だ きみを背負うには僕がかぎりなくかるくなければならない すべてのものをかかえて吊り橋は容易には渡れないものだろう 僕の祖先は半魚人だってきみはいうが かすかにさかなだった記憶と猫だった記憶と カマキリだったらしい記憶が交錯するが いまはせめて人間でありたいとおもっている こっそり誰かに名前をつたえるたびに 風がそれを吹き消して行くさ 十万億土に風は吹く さいごの砂のひと粒までも捲き上げて逝く ---------------------------- [自由詩]店長/梅昆布茶[2015年11月29日19時53分] 顔を合わせることもないのだが 納品先のユニークな店長 真夜中の搬入なので 鍵を開けセキュリティを解除して 作業をするのだが 厨房内のホワイトボードを ふと見れば   欲しいものリスト 子供用のプラスチックおでん ゆのみ ブランケット 等身大悟りんフィギュア ヒーター やさしいこころ 真夜中しんとしたなかで 僕はときどき悟店長と あえたようなきがするときがある ---------------------------- [自由詩]越境/梅昆布茶[2016年1月8日19時19分] ひとの心は果てしなく彷徨う 距離や時間を超えてゆく 痕跡にすぎないものに捉われ 憶測の触手をあすに伸ばしておののく ときどき何かを削ぎ落しながら 変わってしまうことをおそれながらも かたちのない自分を追い続ける いつも密かに抱いている想い それは越境する自分を映す幻灯機がほしいこと 明滅する生命のことわりを抱いて 自分の現在を捜しに行く 国境線がみえてきたら ぼくのこころとからだは蛍になって 夜空に飛び立つ準備をはじめるのだ ---------------------------- [自由詩]コンビニよりあなたの歌へ/梅昆布茶[2016年3月17日11時23分] コンビニエンスストアーは小遣いがあるときはぼくらのポケットだが だいすきなしょーもないもの以外はたいがいなんでも売ってるみたいだ いつも仕事に出かける時は装備の点検をして 会社でも点呼をうけるがちょっと好きな本をこっそりお守り代わりに持ってゆく この素敵な職務のなかでも もっと素敵な世界を忘れないように ぼくは根っからの馬鹿者なので しょーもないことでそのうちに必ず地獄に堕ちるのだ すべては無常で 夕方6時には眼が覚めないかもしれないのだが こんびにえんすすとあーに ひょっとしてだけれども フォーラム@現代詩 なんちゅうアンソロジーが 並ぶ日はこないとおもうのだが みえない軌跡の可視化に僕もまぜてほしくて みそっかすでもいいからよせてもらえば すっかりうれしいのです コンビニエンスストアーは小遣いのないときはぼくらの冷たい指標となって それでもぼくたちのだいすきなしょーもないものたちを ざくざくと突き刺してこの歳になって残り少ない芽を やさしく浸食しているのかもしれないともおもうのです そしてコンビニではけっして手に入らない あなたのことばの輝きを 固有の意味をひきかえにできる通貨をいつか ぼくの薄い財布に隠しておけるようになりたいのです ---------------------------- [自由詩]新学期/梅昆布茶[2016年4月18日11時45分] 我が身にはこれからも あまりゆかりのない言葉 新学期 なぜだかわからないが 断固として幼稚園にも行かず 日々放浪していた僕にあたえられた 小学校という世界の箱庭で やっと社会性というバッジを 胸に着けて ちいさなカヌーで 支流に漕ぎだしたんだ そしてだんだん 河の浅いところと深いところの 流速のちがいや それをつなぐ光や時間が 変化すること 自分の感情によっても ことなるサインを明滅させつづける 入学式 誰とも並んだことがなかった 整列の意味もわからず 函館の小学校の児童として まっすぐ生きようとしていたのかもしれない 新学期 いくつになろうとも欲しいものだ だから勝ってにつくっても まわりが認めてくれないので いつも没になる でも 自由につくる 新学期 いつかどこかで 入学式 そんな人生も いいかもしれない ---------------------------- [自由詩]実験工房にて/梅昆布茶[2016年5月3日12時29分] 実験工房にて 神学を爆破する導火線に 火をつけてみる 解体工房にて 蔓延するヘイトスピーチの 舌の根を根絶する スナイパーロボットと 遊ぶ あの建物は もう誰もいないのに どうして建ってるんだろう 僕は誰もいないのに どうしてここに 立っているのだろう 滑り台からひそかに すべりおりてくる 僕の三つ子の魂を 待っているのだろうか もうなにも 持っていないから 新しいことができる 実験室で やっと 愛とかいう 迷惑な成分を 合成することが できるのかもしれない ---------------------------- [自由詩]使命/梅昆布茶[2016年5月5日11時12分] 束縛されない生なんて一時も無い 愛しきれたひとなんていなかった 孤独は平気だが 孤立しては生きてゆかれないから 哲学書を逆から読む 偏ったじぶんの人生観の途上で ニーチェや仏陀に出会ってかってに恩師とおもう 神秘主義ではないほんとうの素敵な謎を 奇蹟ではないあたらしい地平線を 支配されない束縛しない ただ死にむかって生きる自分を肯定しながら それでも最期の瞬間まで夢を紡ぐ ひょっとして こんなことを 使命とおもっているのかもしれない ---------------------------- [自由詩]AI/梅昆布茶[2016年5月16日11時52分] サインインできませんか? あなたのAppleIDをおわすれですか? あなたにIDは必要ですか? このメールに返信はできません まちがったパスワードです あなたは存在していないのかもしれません AIに感情は可能ですか? レプリカントのレイチェルは よっぽどましな女でした アンドロイドは電気羊の夢をみるかって? 僕にもいまだわかりませんが。。。 ---------------------------- [自由詩]君へ/梅昆布茶[2016年5月28日12時01分] 緩やかな流れに触れたいと想う 雑多なものをすべて洗い晒してしまう水のちからに ただ流星の軌跡をおいかけて その先の消滅を想う ときに走りときに休みときに泣いて やはり今がいいとおもってしまうのがいつもなんだが できれば流れのなかに身をおいて ものごとを考えたい 僕がなにか考えたい時は ほっといてもいきているから たぶんだいじょうぶ きみができること せいいっぱいやって そしてあえると よいかななんて 思っているのです ---------------------------- [自由詩]死者の書/梅昆布茶[2016年6月6日20時14分] 初めて君に遭ったとき 君の瞳によぎった喜びの表情を 俺は見逃さなかった 人生で与えられる物は少ないが 創造という風をいつかつかまえることができたら 上出来な人生といえるだろう 醗酵しない人生は 水面に稀薄に拡がる油膜のようなものだ 孤独は魂のきらめきを高めるが ときに愛のベクトルをコントロールできかねて 人は堕ちてゆく 渋谷駅前の雑踏で俺は夢をみる それはそれは薄汚い夢でも それだけは俺の物だ 俺の頭はすくなくとも今朝は澄み切っている いつも腹ぺこのハイエナではないんだ きみを愛することも出来るし貪ることも 俺は君に永遠に届かない 長い長い手紙を書こう それは歴史書であり哲学でもあり 死者の書でもある愛の詩にすぎない ---------------------------- [自由詩]猫だった頃/梅昆布茶[2016年7月18日21時57分] 「眠り猫」 眠りたかった 眠り猫のようにまるくなって 幸せな眠りの世界に入りたかった 好きだった すべてを合わせても足りないぐらい そのぶん言葉にできなかった 「猫の眼」 こころは瞬間から瞬間へと変化してゆく 外界の縁に触れて限りなく色をかえて しあわせが柔らかな羽毛のように浮かんで見えようとも それは微細な瞬間の集積なのだ 瞬間を充実させる努力がすべてであるのだとおもう 眼で見る 聞こえるおと 薫りを嗅ぐ 舌で味わうこと 身体で圧力や温度を感じる そういった五感を綜合して 心として認識する われ思うゆえにわれがあるのではないと思う 想いを喚起するのは感覚器官だ 猫の眼のように変わる それが世界でありこころであり 瞬間をきちんとつなげて維持する力は 人によってちがうのだろう こころは常に汚れてゆく 洗うことは難しいが やさしく洗う流れがあるなら それに従えばいい それでも誰かを愛せるのなら いつでも時間はやさしく 誰をも助けてくれる筈だろう アベノ橋不思議商店街という古本コミックが好きだった 現実の大阪の阿倍野は再開発され スカイタワーができたらしい 猫の眼のように変わる それは素敵なことなのかもしれない そういずれは広辞苑だって 流れに曝されて 変わってゆくのだもの 「猫でした」 猫でした まちがいなくねこだったと思うのですが 定かではありません 幸せだったかもしれませんし そうじゃあなかったかもしれません 宿無しだったのはたしかです いまでもたいして変わりはしませんが 濡れそぼる夜はなくなったようです また猫に戻りたいかときかれれば まああれはあれで良かったかなと思うだけです よく遠くのそらをながめていました 腹も減るものですが別の何かもさがしていたものです からっぽの街で風の行方を追いかけては 光のあふれる季節をみつけようと彷徨いました そう猫でした いまでもその記憶が残っているのです ---------------------------- [自由詩]Love&Peace&Kitchen/梅昆布茶[2017年2月27日21時06分] インスタントラーメンと目玉焼きぐらいしかつくれなかったが いつしか肉ジャガが美味しくつくれるようになってしまった かぼちゃの煮物と筑前煮と筍の土佐煮にきんぴら 変化は世の常ではあるが妻と離別し 母も他界し息子3人からは音信もない 逼迫する生活の中で老いながら学んでゆく 個の経済学と上野千鶴子的社会学 人間は急には変われないがしかし 常に変革を追い求め得る存在でもある 自身のパラダイムを組み替えることは至難の技ではあるが 地球儀(いまではGoogleearthか?)をくるくる回してみると そこには眼にみえないほどの無限の母のレシピが貼り付けてある 保存瓶に整列した梅酒やピクルスや誰かのハートや国籍のない手紙 歴史の外の世界にあらたに棚を設け自分の中で並べかえてみる ひとの生業は様々で良い それぞれが尊厳をもって生きることはとても素敵だ 僕は今日も未知のレシピを探しながらかつ老いながら歩いてゆく たぶん身体の続くかぎりは走り休み息を整えながら転がり続ける ときどきシフトするが僕は母のレシピを毎日つくってゆく すべてと僕の大切なものを食するためにそれが生きることだと 教えてくれた人の為に ---------------------------- [自由詩]Life/梅昆布茶[2017年5月4日8時45分] 休日のぎょうざ割引き75円 つい貧乏性で買ってしまった 詩にしがみついた死神と言われたくないが 売れないホステスに肩入れするみたいに 研修中の保険屋さんになった50過ぎの彼女がちょっとだけ心配だ たいして先もないのだけれど どっちが痛んでも老老介護なんです。ご苦労さま 部族あるいは血縁と離脱したい僕はでも 社会の中のちいさな計算機になっている 僕のインジケーターは空虚に向かって奈落への 斜角を嬉しげに示すやさしいガイダンスなのだ 魔法と闇が混在して心を揺さぶりカモメはその飛跡を 粗雑で末端だけ緻密できまぐれな資本主義を嘲笑って描く できレースでもいいんじゃんか 画にかいたような幸せを誰も掴んでいないから絵になるんだが まいにち僕はは夢から醒めたばかりの朝を抽出する 柔軟と従順は似ていて非なるものかとも 想像と創造は別々の出来事でもないみたいだし ただ今朝の薔薇の花束を誰に送ろうか ちいさな心の変革を貯めて行こうとおもう それが拙い詩にでもなれば いちばん良いのだけれど ---------------------------- [自由詩]マスターに寄せて/梅昆布茶[2017年6月14日13時50分] マスターに会った 仕事帰りの立ち寄った100円ショップ たまたま見かけて追っ掛けてきてくれたようだ グリーンのパジェロミニ 助手席にはkさん マスターと一緒に お店を切り盛りしてきた 可愛い女性だ お店を辞めてから 薬剤師の資格でマツキヨで働き 今も借金返済中だと kさんも市民文化センターのレストランで 元気に働いているんで こんどもよろしくねって 僕はアイパッドの容量がオーバー気味で 彼女とも相変わらず盛り上がらず でもMacBook ProからHDMIで 出力しようと考えていたり 渋谷や 新宿歌舞伎町で浮遊している 若者達は何をかんがえているのだろうと ずいぶんと様々なギターを捨てて いまはマスターからゆずってもらった FGー130とフェンダーの おもちゃみたいな ミニギターの2本 だけ 星雲の質量にみあうだけの こころが欲しいと想うのだけれど 物理はずいぶん宇宙を明解にしつつあるとは理解しつつ 人間の法則はいつまでも保留されたまま 誰にも理解されない粒子が飛び交う 人間という宇宙空間で僕は絶対的に孤独ではないのだろう 別れた妻やもう結婚しているかも知れない子供たち 便りのないことが僕の容量を示唆するんだけれども 大好きな現フォ詩人たちもこうやって日常を もしかして購っているのかもしれないとも想うのです あまり詩を描かなくなったかもしれないし それは詩とよべるものなのかどうか疑問ではあるが いいんだそれは マスターが店を閉めた理由よりはどうでもいい悩みだったんだから 僕はマスターから感じたエッセンスで生きる ちょっと効かない僕のおまじないで日常を 音楽化したり映像化したりできる能力を夢見て マスターみたいに挫折しても屈折しないおやじでいたいし いつかあんな素敵にブルースを奏でられたらともおもう 死ぬまで自分の拡張機能に 気付いて生きることを そっか あんまり限定しないで 生きようとおもったわけなんです マスターに会った 日のことなんです ---------------------------- (ファイルの終わり)