佐々宝砂のtonpekepさんおすすめリスト 2005年3月1日20時34分から2005年10月25日17時47分まで ---------------------------- [自由詩]指先のソネット/tonpekep[2005年3月1日20時34分] 朝 あなたは やって来て 部屋の そこここは せせらぎ 時間は 急速に 速くなり そうして あなたの声の他は 何も透らなくなり 僕の呼拍は 透きとおり 僕は何も 思わなくなり 愛が 部屋いっぱいに 溢れ 返り 酸素のひとつ ひとつに 芽が吹き出し 部屋は 光り初め あなたを脱がせる 指先のソネット ああ あなたは歌いはじめる 僕の名は そのとき あなたにまとわる 光の白蝶になり あなたの 耳朶に 照り ---------------------------- [自由詩]夏男/tonpekep[2005年7月5日17時50分] 夏のことをよく知っている人がいて その人は 例えば緑の葉っぱを重ねたような人で ときどき 鮮やかな花を咲かせていたりする ただ画家がその人の絵を 描こうとするとき その人は たちまち恥ずかしそうに崩れ落ち 小さな川の流れになるような人で 絵の中では 網を持った子供らの水飛沫になっている わたしの夏はそうやって 繰り返してきたように思う そうしていつの間にか大人になった 今じゃ夏のことはよく分からない ときどき夏のことをよく知っている人を 子らの絵の中に見かける ---------------------------- [自由詩]風邪流行ってます/tonpekep[2005年10月25日17時47分] ぞくぞくするものだから 風邪をひいたように思ったのだけれど なんだ 背中に離婚届が貼り付いていたのか ついでだから その上から婚姻届も貼ってしまおう 少し温かくなるかもしれない それでも何だか優れないので 体温計を郵便ポストの受け口に差し込んでいると 角などどこにもない一本道の 角を曲がって 郵便局のおじさんがやって来た なぜか黄色いヘルメットを被っていて なぜかそこに世界安全という文字が書かれてあって なぜかでっぷりしたお腹の下の方では ライダーベルトの風車がくるくると廻っていた 「ショッカーはきみの悪いこころの中に潜んでいるぞ!」 そう言ってぼくに 遅すぎる年賀状を届けてくれました あけまして/おめでとう/今年もよろしく/酉 誰からだろう そう思って裏返してみると 鈴木智と書かれてあった 鈴木智って誰だろう 日本で一番多い名字の鈴木さんに ぼくはたった一人も知り合いがいなかった チーンと鼻をかむ ティッシュペーパーの中は 花びらでいっぱいだった 何だか無性に涙がこぼれた ---------------------------- (ファイルの終わり)