そらの とこのおすすめリスト 2009年2月23日15時51分から2015年10月11日13時22分まで ---------------------------- [自由詩]まもなく/乱太郎[2009年2月23日15時51分] 昼下がりの陽射しが 雪のじゅうたんをめくって 春をたたきおこす 小さな飾り気のない 窓の外では ゆきんこたちが まだ ぺちゃくちゃ おしゃべりしている それでも 待ち焦がれる温もり 夜明けの歌を 雀がチクパクして まばゆい朝にあいさつする 君といられる 春がまもなくやってくる ---------------------------- [自由詩]ゆめのしま/コーリャ[2009年2月23日17時01分] もし ぼく が かんじょう を ポリぶくろ に つめて すてる ことが できたとしたら どうだろう まいあさ しゅうしゅうしゃ が やってきて あちこち で ふくろ を つんで ゆめ の しま へ もって いって しまう  ある あさ かんじょうを すてに いくと きんじょ の おばさん が こう いう 「ちゃんと かんじょう は せんべつ して いただかないと  たのしみ は ふねんかんじょう  かなしみ は かねんかんじょう  くるしみ は さいりようかんじょう です」 ゆめの しま では かなしみ が もやされ たのしみ は ふんさい された あとに うめられて くるしみ は どろどろ に とかされて ちがう かんじょう に なるのだ ---------------------------- [自由詩]FATHER&MOTHER/poco[2009年2月23日23時41分] きみがいなくなって半年たった 3ヶ月目まではめそめそしてたぼくも 今じゃすっかり立ち直った だけど キッチンの換気扇の下で煙草を燻らすきみが 今でもすぐに思い浮かぶよ 煙草のきらいなぼくを つまらない男、と冗談めかして笑ってさ いつもの場所にきみがいる * バレンタインにチョコレートをくれた臨職の女の子に なんて返事しようか迷ってる きみのことはすっかり忘れたつもりだけど 一緒に暮らすなら きみのような女じゃないと、と思ってる 男は未練たらしい、と冗談めかして笑ってさ きみはどこかの街を颯爽と歩いてる ロマンチックなだけだよと言い返して だけどきみはここにいない * いつか定年退職して、 その時そばにいるのがきみじゃなきゃと思ってる もう涙ながしたりはしないけど いつまでもきみの影を探してる 影踏みか、かくれんぼ はたまた鬼ごっこのようだな 本当はまだ遊びが続いてるような気がしてるんだ もういいかい。 もういいよ。 そろそろ帰っておいで。 ---------------------------- [自由詩]雪/小原あき[2009年2月24日11時33分] 雨粒が窓をノックしてきたので 掃除の手を休めて 少しだけ話をした 最近、寒くなりましたね、 とこちらが言うと わたしたちもそろそろ 衣替えをしようと思っているところです、 とぷっくりと太った雨粒が言った 曇った窓ガラスに張りついた雨粒 怒っている者 笑っている者 踊っている者 太っている者 しょんぼりしている者 いろいろいた その雨粒たちが 一斉に衣替えを終えると 窓の外では 所狭しと彼らが ぎゅぎゅっとおしくらまんじゅうをする 怒っている者 笑っている者 踊っている者 太っている者 しょんぼりしている者 いろいろいて すべてが おしくらまんじゅうをして 押される者 押す者 痛がる者 楽しむ者 窓の外は たいへんなお祭り騒ぎ 寒いはずなのに あったかい湯気が立っているみたいだ ---------------------------- [自由詩]船/小川 葉[2009年2月24日23時30分]   ひさしぶりに実家に帰ると お父さんが 船になっていた 甲板には母がいて いつものように洗濯物を干したり いい匂いがしてくる 調理室で料理をつくるのも やはり母だった 嫁いだ妹も帰ってきて わあ、お父さんたら、と言って 驚きもせず船内へ入ってゆく わたしも妹に続く 妹は 船内にとても詳しくて ぼくも昔はお父さんのことなら 妹に負けずに詳しかったはずなのに その詳しさは 船になってしまった今では 何の役にもたたなかった どうしてお父さんが船なんかに とたずねると 船が少し揺れて 妹も船みたいになって 汽笛を鳴らすので わたしはもう何も言わなかった それから 妹とお母さんと 食堂で晩御飯をを食べた お父さんは? お父さんのぶんは? とわたしがたずねると また船が揺れて 妹とお母さんも船みたいになるので わたしはもう二度と 何も言わないことにした 何も言えなくなるほどに わたしは故郷を離れていた お父さんが 船になったなんて 何かの冗談かもしれないけど ほんとうのような気もしていた あんなに仲良く 家族みたいにしていたのに それは昔のこと わたしたちはいつしか わたしだけになって 船を見えなくなるまで見送っていた なつかしい家が見える その岸壁から いつまでも いつまでも手を振っていた お父さん と呼びかけると やさしい汽笛の音がした いつまでもいつまでも やさしいお父さんの 声がしていた   ---------------------------- [自由詩]王様の耳はパンの耳/nonya[2009年2月26日19時14分] 一昨日の朝食で 僕の耳に ピーナツバターを こびりつかせたまま サニーレタスと一緒に 皿の隅っこに追いやったのは 誰だ 昨日の朝食で 僕の耳を ホットミルクに 浸しこんだまま プチトマトのへたと一緒に 三角コーナーに投げ入れたのは 誰だ 確かに僕の耳は ワイドショーの発言者の声や ふてぶてしい預言者の声が 自分の声のように 聞こえてしまうのだけど 確かに僕の耳は 聞きなれない批判や 聞き苦しい真実には 反応しないように 出来上がっているのだけど 体裁のいい サンドウィッチの馴れ合いに 加われないばかりか なんのためらいもなく 切り落とされてしまうなんて 全然納得いかない 僕が王様だって どこかに書いてあるんじゃなかったの? どうでもいいけど アンタ 笑い過ぎだよ えっ? 僕の耳が 喉に詰まったから 助けて欲しいって? 助けてやってもいいけど その前に ゴールデンタイムの 生放送で叫んで欲しいな 王様の耳はパンの耳 ってね ---------------------------- [自由詩]ささやき/m_on+[2009年2月27日23時47分] であった    しりあった よりそった     ほほえんだ ささやかれた    たずねた ささやかれた    こたえた わらった    たのしんだ さそわれた    こまった さそわれた       のってみた きづかなかった       きずついた ---------------------------- [自由詩]溢れ出ようとするモノに言葉は追い付けない/kauzak[2009年3月1日21時32分] 去年の3月から始めた投稿もちょうど1年が 過ぎて投稿数を数えたら108で図った訳で もないのに煩悩の数に一致して確かにポイン トに一喜一憂したりいつの間にか自分らしい と感じるモノに逃げたりしたりして煩悩だら けだったと思いながらも去年の暮れに初めて 参加してみたポエトリーリーディングで足が 震えだしたのと同じように体験をしてみなけ れば分からないことがまだまだ余りに多すぎ て例えばこのテキストが詩として成り立つに は感情とか感覚とかの外にモノがコトがナガ レがナミが大掴みに抽象的にしか言葉にでき ない何かが圧倒的な量でただあることを自覚 してこの事実を前にして言葉で何ができると いうのだろうかと常に疑いながらもそれを突 き破って現れる言葉を掬うことでしか成立し ないだろうと感じるけれど僕はいつまでそれ に耐えられるのだろうかと考えてしまうから 怖気づいて果たせないかもしれないけれども また声を声帯を震わせ息を詰まらせ不格好で もただ言葉を発することが詩に対して強くあ り続ける手段かもしれないと思い込んでいる ---------------------------- [自由詩]リモコン/小原あき[2009年3月2日19時05分] 夫がいる週末は楽しいから なんにもない平日を 早送りする だけど、今夜は 夫が 携帯電話と間違えて リモコンを持って行ってしまった 夕飯を食べる時間に 夫がいないので 舅とふたりで食べる いつもなら早送りするのだけど 今日はやけにゆっくりと話すな と思ったら 初めて舅に会った日も こんな風に話していたのを 思い出した じゃがいもを犬にあげる舅 お前はこれが好きだからな なんて言っていたけど 本当はじゃがいもよりも ほうれん草をあげてほしい あの犬は緑内障だから 長い沈黙が気になる いつも早送りしていたことを 後悔しはじめていた すると 舅はもそもそと話しだす 犬の話 農業の話 夫の話 数少ない共通の話題を 慣れた口調で話しだす 舅はリモコンを持たない だから、 いつもわたしと ふたりきりの場面を きちんと見てきたのだ わたしは早送りをして 舅を置いてけぼりにしていたのかもしれない リモコンなんて便利なもの 本当はちっとも便利なんかじゃ なかったんだ ---------------------------- [自由詩]とおい水/小川 葉[2009年3月3日2時29分]   たかのり君 と呼んでしまった 生姜焼き定食のことを もちろん たかのり君が 生姜焼き定食であるはずはなく けれども 一度そう呼んでしまえば そのようにも思えてきて こんがりと焼きあがった生姜焼きは あの夏休みの良く焼けた たかのり君の肌の色のような気がして 艶のある白いごはんは 真っ黒いたかのり君の口元に光る 歯のように見えて 漬物はいつも柴漬けに決まっていて ごはんならわかるけれども 味噌汁だけがおかわり自由である そういうへんなところも たかのり君そっくりだった お冷やお待たせしました わたしがたかのり君を ほとんど食べ終えそうなところに お給仕のおばさんが 一杯の水を運んできた そう言えば たかのり君が焼かれる時も かなしみのあまり 水をあげることもできないほど たかのり君の母さんは 泣いてばかりだった けど、たしか あの事故で 母さんも亡くなったはずだ どうしてたかのり君の葬儀に 彼の母さんを見ていた 記憶があるのだろう わたしは生姜焼き定食を食べ終え コップの中で 一杯の水になってしまった たかのり君の母さんを飲み干した 七百五十円を支払った あの母子が この世界にいないことだけが 確かなことだった   ---------------------------- [携帯写真+詩]お母さんのケーキ/風音[2009年3月3日14時43分] 居候のわたしの為に お母さんが焼くケーキ。 ほんのり甘くて 優しい味がした。 わたしは このひとから 産まれたんだ。 ありがとう、お母さん。 ---------------------------- [携帯写真+詩]晴れ舞台/風音[2009年3月3日18時34分] 一年に一度の晴れ舞台 小道具もちゃんと持った? 髪も整えて さあ いくわよ ---------------------------- [自由詩]御霊/僕[2009年3月5日22時16分] 目覚めると 腕の中の 小さな額にキスをする 大きな青い目に目やにをつけて 大きな欠伸をするあなたに ゆっくりと キスをする 薬を口に詰め込んで 苦しそうにするあなたにキスをする いってきますと キスをする 玄関で 待ち構えるあなたを抱きしめ キスをする あなたの背中が愛おしくって あなたの瞳が愛おしくって あなたの全てが愛おしくって 私は幾度も 幾度も キスをする 私の唇からあなたへと 私の御霊が 流れるよう きゅっとあなたを抱きしめて 神に祈る ---------------------------- [自由詩]白銀/ゆうと[2009年3月8日0時35分] きみはいつも つめたくて とおくて とおくて ちかくなったら みえなくなって ふれてしまったら きえちゃうひと それでも やさしさは あたたかく いつも ぼくを つつんでくれて うそみたいに わらったりして ゆめみたいに ないたりした ながれたなみだも あたたかく ただただぼくは ゆきがみたかった ゆきはいつも あたたかく あたたかくって きみから ときはなたれた いまでも ぼくは わすれて いない ぼくは しらないけど きみは しっていた きみは しらないけど ぼくは しってたよ それは とても あたたかく きみは とても やさしいひと ---------------------------- [自由詩]。/ほのか[2009年3月9日13時44分] 今日も太陽は知らん顔で笑ってる。 ---------------------------- [自由詩]父へ 出せない手紙/舞狐[2009年3月23日5時59分] 父の命日がある季節 春 お墓参りもあまり行けず 貴方がどんな人だったか よく知りません 私が私として生きている中で 一番イヤだったのは 貴方の世界に引きずり込まれ 貴方の奥さんに呼ばれ 書類に捺印したときでした よく知らない貴方と 最後の別れの時 なぜか涙がとめどなく溢れ 自分が半分 消滅してしまうような気持ちになりました 学生の息子さんと 就職したばかりの娘さん二人 知らない親戚に囲まれて 私の生家は 他人の家でした 一度病院で 母と私と貴方で 待合室で話ましたね 母と私と貴方 家族だったんですよね たぶん 昔は あれからもう何年になりますか? 貴方の命日が 今年もやってきます 私がケーキのろうそくの火を吹き消す日 貴方の命日 春は私には 淋しい季節です ---------------------------- [自由詩]「やさしい唄をきかせてください」/ベンジャミン[2009年4月21日0時43分] もうずいぶんとむかし あなたはたしか 「砂漠のなかで金の粒をさがすようね」と言った 僕はそれはちょっと違うんじゃないかと言いそこねた きれいな空をそのままうつしたような海の ちょうどそんなような記憶だった 砂浜で貝殻を拾って歩く あなたはたしか 「わたしの耳よりすこし大きな貝をさがしてね」と言った 僕はその希望にそうような貝殻をさがして歩いた きれいな空をうつした海にあなたの影がにじむころ ちょうどそんな貝殻を見つけられた 貝殻を耳にあててあなたは瞳を閉じる あなたにどんな唄がきこえているのか 僕は何か大切なことをききそこねてしまった そのままずいぶんと時が経って あれが記憶だったのか夢だったのかも思い出せない 僕はそのまま 何か大切なことをききそこねて いつも心の中に不安をひそませていたのだと思う 両手で耳をふさいでも ざわめきのようなものしかきこえない そんなとき 僕はすこしだけ悲しい詩を書きたくなる 僕はすこしだけ悲しい詩を読みたくなる そんなとき あのときあなたがきいていたのは きっと やさしい唄に違いないと思いたくなる      ---------------------------- [自由詩]「蟻と会話をする少女のお話」/ベンジャミン[2009年4月28日2時16分] 蟻と会話をする少女といっても それほど不思議な出来事ではない むしろ日常の一部に自然と吸い込まれて その自然ということにしっくりとくるのだった その少女はサッカー部のマネージャーで いつも決まった場所でボールひろいをする そうやって飛んでくるボールを待つあいだ いつも近づいてくる蟻がいるというのだ その蟻は他の蟻と違ってその少女に話しかけてくる(らしい) 退屈か?と聞かれて、あなたは退屈なの?と いいや働いているのだと返事がくると、わたしもと そうやって毎日のように蟻と会話をしているという(らしい) その話しかけてくる蟻は同じ蟻なのか?と 僕が大人ぶってきくと、少女は わたしに話しかけてくるのはその蟻だけだという 手のひらにのせると指のあいだや手の裏表を忙しそうに歩いて そしてときおり立ち止まっては、いろいろと話をする(らしい) あまり詳しくは知らないが、ちゃんと名前もあるのだ(らしい) ある日 その少女が泣きながら教室に入ってきた ぽろぽろと泣く少女に理由を尋ねてみると なにやら蟻とケンカをしたということだった 噛まれたといって、人差し指を見せてくれたが どこが噛まれた場所なのかわからないほどだった そんなに泣くくらい痛かったのか?と僕が大人ぶってきくと 泣いている理由は他にあるのだと少女は熱心に話してくれた 「噛まれてから、蟻の言葉がわからなくなってしまった」 要約すると、そういう話だった もうその蟻と話をすることができないので悲しいという 僕は大人ぶって、仲直りすればまた話せるようになるよと慰めた 「噛まれてから、他の蟻と区別がつかなくなってしまった」 要約すると、そういう返事がかえってきた 事の重大さは、僕が思っていた以上のようで けっきょく少女は、その日一日を泣いて過ごした 蟻と会話をする少女といっても それほど不思議な出来事ではない 同じ言葉で会話をする僕らが 共通の言葉を失ってしまったなら そう考えると大人ぶっている僕だって 言葉以上に失ってしまうものの大きさに 本当の意味で気づくことは簡単なことではないからだ ---------------------------- [自由詩]象の出来事/小川 葉[2009年5月2日22時51分]     駅前で 象が似顔絵を描いてる めずらしいので たくさん人が集まってる 似顔絵はとても上手だけれど 鼻だけ象みたいに長いので 群集の歓声はどよめきに変わる 目から涙が零れてる 目だけ見てると 人のようにも見えるから 群集はみな 家族のことを思い出してる 象がどこで生まれ どのように暮らし なぜ駅前で似顔絵を描いてるのか 知ることもなく 人は家に帰ると 今日一日の出来事を 家族に話して眠りに就く 夢の中 象の出来事を 誰にも話してないことを ふと思い出すけれど 朝になれば忘れてる 駅前に 象はもういない     ---------------------------- [携帯写真+詩]虹/小原あき[2009年5月15日18時55分] ひとは ただ、泣きたくなる時がある そらも ただ、泣きたくなる時がある ひとしきり泣いたあと ふと見上げると 虹が出ている時がある そういう時はたいてい 晴れた顔になっている ---------------------------- [自由詩]ドラマ/小原あき[2009年5月22日13時22分] テレビドラマを見ていたら あまりにもつまらなくて 消してしまった 今までの人生を見ていたら あまりにもつまらなくて 自殺してしまった *** そんな彼女の ラストシーンを見ていたら あまりにも悲しくて 録画したテープを 土に埋めてしまった ---------------------------- [自由詩]「蟻」/ベンジャミン[2009年5月27日17時12分] とけた飴の中に 蟻が一匹閉じ込められていた 綺麗にそろった六本の脚は もう動くことはない 蟻は甘い甘い飴の中 最後を迎えるにはこれ以上ない場所で きっと苦しみ抜いたに違いない けれどその苦しみさえも 飴は甘く包み込んでいた 傾いてゆく日を反射して キラキラと光るその身体は どんな悲しみも寄せつけない (それは殻だからだ) それは蟻という殻であって もはや蟻そのものではなく それは飴という墓場の中で ただ美しく横たわっている (涙の中で溺れる蟻を想像してみた) どんなに残酷であろうかと それは蟻という殻をまとった つまり蟻という命なのだと 飴の中に閉じ込められた蟻は 飴の中でただ幸せな殻となり それはどんな悲しみも受け入れずに わたしはそんな蟻を幸せそうにただ 眺めてやることしかできないのだ 蟻の味わった苦しみはすでに 飴の甘さにとけてしまっているから だから わたしはその幸せな殻にむかって 涙を流してやることもなく立ち去ろうとした そのとき 幸せな殻となったはずの 飴の中に閉じ込められた蟻が 少しだけ動いたような 気がした それは 幸せな殻にしまわれるはずの わたしの悲しみだったのかもしれない ---------------------------- [自由詩]圏外アンダーグラウンド/ゆうと[2010年9月22日3時00分] 海へ いきたいと いったら つれていって くれたかな 月が みたいと いったら 雲を かきわけて みせて くれたの? そこまで しないよ そこまで しないって ねえ そうなら いなくなってよ 嘘 そばにいて ほしい さっき 鍵 わたし わすれて しまったの わたし わすれたの さっき さっきのこと だけど もう とりかえしの つかない ところへ あなたは いって しまったのね もう かえって こないように なにも おもいださないように ヘッドフォンで ふさいで 携帯電話を すてたら ばいばい ---------------------------- [自由詩]献立/ゆうと[2010年9月29日2時45分] あしたは なにを たべようか きめかねて いるから きみがきめて いいよ ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]無題/モリー[2011年1月29日19時11分] 私は時々、こう考える。私以外の人間は存在せず、現実は全て私の夢で、その私はまだ生まれてさえいないのではないかと。 また、こうも思う。宇宙全体が本当はバスケットボールくらいの球で、アメリカ人の子供がいくつも<宇宙>をもっていてそれら同士をぶつけて遊んでいる。 二つの感覚は時に私を興奮させ、時に混乱させる。 『マトリックス』を初めて見たとき強い衝撃を受けた。まるで私の妄想を脚色し映像化しているように思えたからだ。まだ幼かった私は、「飼われている」という新しい発想が恐ろしくて堪らず世界の歪みを必死に探したりした。 中学生の頃、私は宇宙のことについて度々友人と生徒会室で話し込んでいた。反重力装置の話、宇宙の広さ、時空の個数など沢山情報交換をしたが、一番興味深かったのは二人ともから上記の考えを自分もしている、と聞いたことだった。彼女達も風呂場などの密室に入ると自分が居る空間以外は無い(闇が広がっている)のではという恐怖を日々味わってきたと言う。アメリカ人の子供の話も、多少違ったが似たようなことを思っていたらしい。私達は互いに「今生きてる?」「今生きてると聞いたあなたは本当に居る?」とか言い合って三人で笑って帰った。 私は怖い。 知覚の限界が世界の最果てであったら……。 私はテレビの電源に手を伸ばし、ポチと、赤を緑に変えた。 ---------------------------- [自由詩]ひとよひとよひと/にしなますみ[2011年4月24日1時02分] テレビの音が  ザー です うるさいです 私の体というモノはうすい胸です なんてうるさい 雨の音が  ザー です 待ち合わせた場所ではじっと立っていました人が多過ぎるので人の歩く音は聞こえませんでした 建物の上のほうには巨大な画面があって何か動いていましたが何だったのかもう覚えていません 喉が渇いたので自動販売機を探して飲み物を買い慌てて戻って飲んでいたのですが缶を捨てる場所が見当たらなかったのでずっと手に持っていました それから手をつないだのですが 空き缶は途中で捨てました 飲み物が入っていなかったからです 電車に乗ったのですが人が多くてずっと立っていました 景色がざーっと流れていくのを眺めてあまり話しませんでした 手はつないでいました 外国人の子供が英語で喋っているのを聞いてやっぱり英語なので何を喋っているのか判りませんでした 部屋の中に入ってから 雨の音が  ザー です 手はつないでいません くちづけ 胸と胸があたる ひとの涎がうすい胸におちても 音がしない 耳の中に  ザー  ザー  ザー はうるさいです ---------------------------- [自由詩]3月11日午後2時46分/吉岡ペペロ[2012年3月11日12時12分] あのとき祈ったとおりになった だから生きている 世界は ぼくにだけ語りかけている あなたにだけ語りかけている それが生きているということ ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]秋道/らいか[2015年9月13日17時29分] 「もう秋だな」 「ううんそうじゃなくて、まだ秋だよ」 「秋ってさ、どうして秋なんだろうな」 「そんなロミオとジュリエットみたいなこと言わないでよ おかしいなぁ」 と女の子はそう言って乾いた猫じゃらしを手に摘んでねじるように回転させる 「回し過ぎじゃない?」 「回してるのよ」 ほら、と男の子は女の子の回している指先を指さした 猫じゃらしは根元が少しちぎれそうになっていた 「そしたらもう少し上を持てばいいのよ」 そう言って根元から少し上に指先をずらした 暫く下校道の畑沿いを歩いて、金木犀の香りに鼻で気がついたとき 男の子は 「ねぇねぇ今日遊ぼうよ」 と女の子に声をかけた 「うち、門限があるのよ、ごめんね」 「そっか、そうだったね」 「秋ってさ時間短いよな、もうすぐ冬だしさ」 「何言ってるの?」 クスクスと笑いながらこう続けた 「まだ夏終わったばかりよ?」 「秋はあっという間に終わるよ   そしたら春が来て長い長い夏が来るんだよ、それでまた秋が来る」 「じゃあ冬はどこ行っちゃったの?」またクスクスと笑う 「冬はなきっと無いんだよ」 「無いの?なくなっちゃったの?」両手で微笑んじゃう広角を隠す そんな女の子を横目に男の子は 「何もない リセットの季節だよ 春に芽吹いて 夏に茂って 秋に輝いて また何も無くなるんだよ」 少し考えて 「男の子って意外とロマンティストなのね」 「そうでもないさ」 「ううん。十分ロマンティストだよ」 夕日と金木犀の香りのする秋色な帰り道に 秋虫の羽音を聞きつつ ゆっくりと流れる時間を踏みしめながら 冬を待つ秋を踏みしめ二人は道の突き当たりで別れた  どこか遠くからか薫る野焼きの匂いと秋虫の羽音しかしない帰り道のちょっとした出来事でした。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]夕暮れ道/らいか[2015年10月11日13時22分] そらに浮かぶ、あの日の星は遠く。 遠く銀河系の隅っこの方まで離れてしまって。 もう帰って来れないけど。 放課後、昇降口で… 「ねぇねぇ」 君の声が聞こえてくる。 僕も挨拶に返事を返した。 「今帰り?」 「うん、ねぇよかったら一緒に帰らない?」 そのこはランドセルをヨイショッと背負いなおす。 「もちろん」 僕もランドセルを背負いなおす。 いつも同じようなやり取りをしているからなんだか、合言葉みたいな感じになっている。 今日出た宿題の話なんてしながら帰るんだ。 帰り道、途中にある精肉店から流れてくる唐揚げの匂いがたまらなくお腹をキュウクツにさせる。 学校の校庭から響くチャイムの音は、もう遠くまで歩いてきたのに、僕たちの小ささを感じさせた。 秋の夕暮れはどこまでも青く高くそして透明で、次第に悲しくなるように暗くなる。 街のシルエットが消える前に僕たちは言った 「また明日ね」 やがて 月日が流れ、もしもあの日に帰れたならばもう一度、あの子に挨拶がしたい、などと回想したり。 ただそれだけを思って、もしかしたらその時の記憶を共有できるかもしれない、肉屋の店主に声をかける勇気もない僕はその子のことなど手にも届かず。 ただただ遠い星の様にどこにあるかもわからない、記憶のなかだけの薄れた存在に近づけそうで 二度と会うことなく過ごしていくんだ 「ねぇ、明日また一緒に帰れたらいいね」 ---------------------------- (ファイルの終わり)