beebeeのおすすめリスト 2018年10月10日23時10分から2019年12月8日8時15分まで ---------------------------- [自由詩]ひとりの夜/坂本瞳子[2018年10月10日23時10分] ふうと ため息がでる 皺が増えるだろう 夢が失われるだろう シーツに潜り込んで 嗚咽を堪えて 涙を拭う 息を止めてみる ほんの少し 救われない気持ちが広がる この一人部屋は 狭いくせに 無限の宇宙が感じられて 孤独に苛まれそうになるのを なんとか誤魔化す術を探している 見つからないのが悔しくて 爪を噛んでみるけれど 空虚は埋められることなく 闇がなお一層広がりつつあるのを 認めたくはなくて 無理に眠りに堕ちる そんな一日の終り 月の光は届かない ---------------------------- [自由詩]秋の傷あと/橘あまね[2018年10月12日22時29分] 血 死 傷 痛み 沁みこんで 真夜中に叫ぶ 狂おしい祈りの雨音 実 火 時 苦味 留まって 飛びたてない鳥 古ぼけた日めくりの呪い 血 死 傷 痛み 流れれば 永遠の眠り 消えていく足音を奏で 実 火 時 苦味 届かない 温かな記憶 指先に遺るひとかけら ---------------------------- [自由詩]南の信仰/春日線香[2018年10月13日6時47分] 雀ほどの大きさの塊が手の中にある。線路に沿って歩くと片側がコンクリートで補強した斜面になり、さらに行くと竹藪の奥に家屋や井戸が打ち捨てられている。その先には登山道に続く道端に白い花の群生。あそこまで行く。あそこまでこの塊を持って行く。          * * * 封筒には長い白髪の束と、古い紙幣が二千円分。表にも裏にも無記名。燃やすか流すかしたほうがいいのだろうができないでいる。          * * * 塀の破れ目。ブロックの三つの穴が空を向いて、そのひとつにオロナミンCのビンが挿さっている。草むらから子供が飛び出してきてビンの口に指を突っ込む。これはあったこと。誰も憶えていない、誰も見ていない地上の。          * * * 三輪車がテトラポットの隙間で朽ちている。フナムシの高貴な城がはるかに聳え、影は複雑な表情をする。釣り人が残していった浮きが散らばり、一人の影が両腕を上げて防波堤の先へ駆けていく。痩せ細った胸。南の信仰。フェニックスの木陰。          * * * 彼は今、詩を書いている。          * * * 火山由来の地下水が地下を通って海底に湧くらしい。アパートの駐車場にしゃがんで遊んでいた子供が、五時のチャイムを耳にして家に帰る。彼の家には広い窓がある。窓の向こうには湾があり、湾には古い町が沈んでいる。海の底で暮らす人々がいる。 ---------------------------- [俳句]秋空/ひだかたけし[2018年10月13日14時08分] 秋晴れや雲なき空の青深し 汝が静か深まる青に吐息つく 秋深まり君なき夜の銀河濃し ---------------------------- [自由詩]花束の輪郭/十一月の失敗作[2018年10月13日22時40分] 摘み取るために育てた花を愛でているのは 貴方の愛し方そのもので 薬指にだけ好きな色をつけて ずらりと並べた人形の瞳の前でくちづけを交わしましょう これは幸福ですか? それともまやかしですか? 鐘の音が響くフィナーレ 貴方が愛した花を束ね空へと高く高く 青空の中で色を失うその花は 誰かの手に落ちる前に枯れた これは幸福でした。そしてまやかしでした。 育てた花を汚すのは 私の愛そのもので ---------------------------- [自由詩]林檎/chiharu[2018年10月14日12時59分] 母の手は魔法使いのように 何でもできた 欲しいものを 何でも作ってくれた 「母の手の中の林檎が うさぎになってゆく」 いつも傍で見ていた 幼いわたしを思い出した、朝 ---------------------------- [自由詩]神の椅子/ミナト 螢[2018年10月14日17時51分] こっくりとした 黄色の満月が ぽっかりと浮かぶ 十月の夜 すっかりと冷えた 心を温める まっすぐな光に 酔いしれて うっすらと重くなる 瞼を閉じれば しっかりと座る 車椅子の上で やっと探してくれた カーディガンを ギュッとする とても大切そうに ---------------------------- [自由詩]聴診器/ミナト 螢[2018年10月15日9時12分] 制服のふたりがイヤフォンを分けて 同じ音楽の風に乗ったまま 片耳を横切るかすれた予鈴 真ん中でぶつかる裏声の歌 美しいものに触れるとみんな お腹がいっぱいになりませんか 鞄の中のアップルパイを 食べていないから本当なのだろう スカートの裾が手を振るような さよならをする前に確かめよう 君のイヤフォンを外しながら 胸に当てた心の音を探して 伝わって来るドキドキの鼓動が 僕の指先に信号を送る 食べ忘れたアップルパイを割る時に 破れる薄い皮の一枚が 僕たちの鼓膜みたいに震えた ---------------------------- [自由詩]「春を待つ」/桐ヶ谷忍[2018年10月16日15時58分] 雪が降っている感覚に、薄目を開けた 凍りつく湿度と、ほのかな光を感じる 雪の一片一片には 冬の陽がほんのわずか宿っているのだという だから真白く淡く輝いているのだと 幼い頃、母が聞かせてくれた 地中深くに眠る自分のところまで その感触が届くということは 地上はよほど吹雪いているのかもしれない 土に沁み込んできたつめたさは いのちを氷らせる残酷さと させまいとするような、光の温み 母の最期はこういうものではないかと思う 為す術なく亡くなるのを看取る苦悶と 死に際に浮かべられた精一杯の微笑のような 雪は、そんな両極を突きつけてくるようだ 思って、哂った 幻想だ 母は自分に向けて微笑んでくれなどしない 代わりに、死なれる嘆きもないだろう そうさせたのも、そうなったのも、仕方ない 仕方ないと、諦めはついていたはずだ まどろみに見た、ただの夢だ 手足をいっそう縮ませ、かたく目を閉じる まだ眠らなければ 雪の下のこの暗い土中でただただ眠るのだ 春になったら土を掻いて、掻いて掻いて 地上へと這い出るのだ 春の陽は 自分を生んだ時に見せてくれた、母の微笑のようだろう それだけは、きっと間違いないだろう ---------------------------- [自由詩]偽文集/春日線香[2018年10月17日5時29分] 見たところ肝臓のようだ。中学校の階段の踊り場の高窓から差し込む夕日に照らされて、赤黒い肉塊が落ちている。まるで今しがた体内から摘出したばかりとでもいうようにてらてらと艶めかしい輝きを放って、よく見ればその端がわずかに踏みにじられて床になすりつけられた跡がある。おそらく上靴で踏まれたものであろうその跡は筋状になって上階へと続いている。よく掃除されて清潔な踊り場に教師も生徒も通らず、あって然るべき死体もない。ただ肝臓だけが夕日に照らされて急速に腐敗の度を増しつつ、どうしたことか強いスミレの香りを放っている。スミレの芳香が悪意を感じるばかりにあたり一面に漂っている。          * * * 足が寒くて目が覚めた。寝ているうちに片足が布団から出てしまったらしい。なにか不安な夢から抜け切れないで枕元の明かりで足を見てみると、透き通った白魚が腿のあたりまでびっしりと食いついている。食いついたきりでぴくりともしないので生きているのか死んでいるのかもさだかではないが、やはりこれは生きている物の怪だろう。夜中の弱い明かりの下、白魚は食いついた足から吸う血によって徐々にルビー色に染まっていくのだ。          * * * 「僕がその古本屋を訪ねたのは職業上の理由があったからで、それはある秘匿された情報の調査のためである。戦前、日本国の気象情報は軍部によってコントロールされ、敵国にはもちろん、自国の国民にさえ正しい情報が伝わることはなかった。元より古い時代の話ではあるので今更そんなことに興味を持つ人も少なく、戦前の気象情報には相当の空白があり、今日に至るまである種タブーめいた扱いを受けている。中でも昭和十X年に国土を襲ったXX台風は、物理的な被害が甚大かつその後の社会にアパシー的な無力感を生ぜしめたこともあって、本来ならもっと早くに全貌が詳らかにされるべきであった。しかし統制下ゆえに民間はおろか軍部にすら……」          * * * 黄色のレインコートを着た人々が図書館のいたるところに配置されている。顔の部分が妙にうすらぼんやりしているので彼らは死者なのだとわかる。とはいえ、自分も同じような顔をしているのは明らかで、そもそもここに生きた人間が入ること自体が不可能なのだろう。いつのまにか塩素臭いレインコートを着せられて本の番をしている我々がこの職務から解放されるのはいつなのか、いやそもそも職務といえるのかどうか。棚から本を抜き出してぱらぱらと目を通しても、煤けたページに不明瞭な文字や図像が蛇のように蠢くばかり。呆れ果てて本を床に投げ落としても、次の瞬間には書架に新しい本が補充されている。棚から棚へ、部屋から部屋へ。時折すれ違う彼らの顔に絶望や恍惚を読み取ることは困難で、同じように、自分も自らの来歴すらわからなくなっている。レインコートの鮮やかな黄色だけがここでは神のごとく正しい。          * * * 玄関まで水が迫っているのでどうしようかなと考えていたところに、甲斐さんがボートで来た。そこら中で孤立しているので拾ってまわっているそうだ。ここもあと一時間もすれば完全に水没するというので、慌てて最低限の荷物を背負ってボートに乗り込んだ。見知った街が変わり果てているのは悲しいことだが自然の暴威は仕方ないことでもある。ボートの備えがあってよかったねえあんたは昔から心配性だったからねえなどと話している最中に、そういえば、と突如気がついた。甲斐さんは八年も前に癌で死んでしまったではないか。これはとうに死んだ人の操るボートではないか。水をかき分けていくボートの周囲に夢のように鮮やかな桃色の花が漂ってきて、甲斐さんと私はさざめく水面をどこまでもどこまでも運ばれていった。 ---------------------------- [自由詩]少年の夜/ミナト 螢[2018年10月21日9時26分] 宝石が輝く未来を映す 約束をしてる指輪のように 細かい傷さえ命の鼓動を 刻んだ証に選ばれた音 エレベーターの最上階で見る 夜景と同じ眩しさを知っても 転がる釣銭を追い求めてる 自分がどこにいるのか解らない 緑の匂いが残る都会に 懐かしさを進化させた思いを 伝えられそうな舞台があった 人はいつまでススキの花を摘み 大切な誰かに渡せるのか 少女が女性と呼ばれるとしたら ファンデーションの上からなぞる筆 くすぐったい魔法を掛けるため 野原を出て行く前に武器を持て ---------------------------- [自由詩]旅にあって/Giovanni[2018年10月21日15時55分] 旅にあって 飲めない酒を飲んだ 目の前にひらける黒い雲 灰褐色の光 酩酊船 嵐 錨の切れたラテン帆の船 波頭 眩暈 眩暈。 いつしか、酔うのは私なのか それとも船なのか そればかりを考えていた ただ 奴は飲んだ 壊した 呪った 憎んだ 夢を見 わくわくして歩き 魅惑され そして 渋面のように頑固だった それなのに 子供の浮かべる おもちゃの船の ようでした なんて 酒飲みながら 涙するよな おとぎ話は止めてくれ とうとう 嵐に飲まれながら 自分もいつの間にやら 眠りの海の藻屑となったとさ ---------------------------- [自由詩]ひりひり痛い/たま[2019年2月4日9時58分] ひりひり痛いあなたの詩 きょうもひとつ読みました ズキズキ ズキンズキン ヒリヒリ ピリピリ そんなことばはベトナムにはないという 家族の痛みも 親子の痛みも どこの国へ行ってもおなじはずなのに 日本人はおかしいね ひりひり痛いあなたの詩 ひりひり痛い痛みの上にまたひとつ重ねて ズキズキが ズキンズキンになって ひりひりを忘れるために ズキンズキンが必要みたいに ひりひり痛いうちに ふっと一息 傷口に愛を重ねてくれるひとが必要なのに いつまでも翻訳できない痛みを抱えて ひとり生きて行くのですか だったらもう 思いっきりひとりになればいい なにもかも脱ぎ捨てて ふっと一息 あなた自身の愛を ひりひり痛いあなたの詩 きょうもひとつ読みました ---------------------------- [自由詩]小さな春/朝焼彩茜色[2019年3月5日11時35分] あの春から この春がやって来た 馨りはまだ手のひらの上 ふわっと小さな宇宙を乗せて ここへ ここへとやって来た 呼び覚まし 瞬間にカチッとアルバムにはまる 大事な 大事な一期一会を刻んで 切なさに 頷いて 歩んだ消えない足跡の付箋のページに 陽だまりを手招いて 背筋を伸ばす 瞳と心を繋ぐその踊り場で 新しいもの そのままのもの それと さよならするもの この春の中に綴じ込める 馨りの鍵をしめ ふわっと大きな宇宙へ預ける 半分上の空で委ねられて ここへ ここへ また巡ってくる ---------------------------- [自由詩]台所/為平 澪[2019年3月6日20時50分] そこには多くの家族がいて 大きな机の上に並べられた 温かいものを食べていた それぞれが思うことを なんとなく話して それとなく呑み込めば 喉元は 一晩中潤った 天井の蛍光灯が点滅を始めた頃 台所まで来られない人や 作ったご飯を食べられない人もでてきて 暗い所で食事をとる人が だんだん増えた そうして皆 使っていた茶碗や 茶渋のついた湯呑を 机の上に置いたまま 先に壊れていった カタチあるモノはいつか壊れるというけれど いのちある人のほうが簡単にひび割れる 温かいものを求めて ひとり 夜の台所で湯を沸かす 電気ポットを点けると 青白い光に 埃をかぶった食器棚がうかびあがる 夜に積もる底冷えした何かがこみあげて 沸騰した水は泡を作ってあふれかえる 仕舞われたお茶碗と 湯気の上がることを忘れてしまった湯呑たち その間で かろうじて 寝息を立てている老いた母と動かない猫 おいやられていくものと おいこしていくものの狭間で 消えていった人のことなどを あいまいに思い出せば 台所には 昔あった皿の分だけ 話題がのぼる ---------------------------- [自由詩]ありえない、くそったれの夜にも/秋葉竹[2019年3月7日23時32分] この忌々しい 憎しみに満ちた いつも苛立っている 人生を棄てたい夜もある。 そっと、だ。 人も、仔猫も、眠るコタツで ここからはじまる春の風に寂しさが 青ざめていくのだとして。 信じてあげなくてはならない それは夜に生きる天使を その目で優しくみてあげなくては、 ならない狂った嵐一過の自然の哀しい裏切り、 に抑えこまれた 甘いハチミツの香りがする夜のこと。 そんな疚しい幸せならば 義務感にその身を削っても 絶望感に心を凍らせても 体を他の人に預ける信頼が 大好きなんだと言う嘘と向かいあえない なんて、優しく響くんだ 誰の声も優しくしてくれているんだと気づいた その言葉に勇気づけられたし それでも真っ直ぐな、 心破れた哀しみを歌ったし これでもう、そういうふうに、 悪びれずに、悩まずに 眠るね? そしてこの、底のない暗闇の部屋で眠るのだ。 仔猫の、震えるヒゲほどに、小さな寝息を立てて。 そういう風に すべての人を誤解し、 誤解され、 あまねく世界のことを そういうものとして 感じられるのだ。 だからそこからはじまる スイートで キュートで ハニーな 総じて享楽的な 白い手袋の手まねきを 艶めかしいと思ってしまったのだ。 と思って 新しい正義を作りあげて 心眠らせベットに眠らせ これでもう、そういうふうに、 悲しみを感じたのは 人生のこの忌々しい風が強くなったせいなのだと 真っ正面からの、嘘の笑顔が見られたせいなのだと 感じたのだ、悲しみを。 この、ありえない、くそったれの街にも こころまで、空っぽの、優しさの風がふくんだろう。 ---------------------------- [自由詩]ひとり/舞狐[2019年3月10日21時32分] 人混みのなか 孤独に見つかってしまう 笑顔で元気に明るくしているけど 孤独が私を放さない 悲しみと苦しさが私を覆うとき 降りやまぬ雨に 溶けてしまいたくなる ---------------------------- [自由詩]早春/石村[2019年3月14日12時46分] はるのいろが のはらをそめて きれいだね ぼんやりかすんだくうきに ひかりがきらきらちらばつて きれいだね ひとびとは みな やはらかいいろの そらをながめてゐる ぼんやりしたかほで しづかにふるへる こころだけになつて そのふぜいが なんとも いいね きれいだ うん きれいだね (二〇一八年二月二十六日) ---------------------------- [自由詩]みつまたカノン/るるりら[2019年3月18日17時28分] A 光とパッションで あい わず ぼおおん おもわず ぼんぼぼん 三叉路のような枝先に 咲いているのは紙様の花 花の名は みつまたで なぜだか知らぬが いにしえの人は紙を梳いた 枝が三つに分かれているから みつまた 紙に神がやどりますようにと 咲いている B はる一番の すっぱだかさで あい わず ぼおおん おもわず ぽんぽん ボールのように咲いてます 三つの枝の先で みつまた咲いてます 春は三叉路分かれ道 思考は みつあみ なぜだか知らぬが いにしえの人は紙に書いた 現在を過去を未来で書いて 花笑う わかれても また別の形で会いましよう C 仄見える あなたのビジョンに たまゆら ゆれて 風光る 雲足の速さのままに髪を梳かし 結んでは開いて手を打って また開き ひろがっていく こころ映えは 春霞 もう悩むのはやめ歌い始めました  AからBへの歌を歌い  BはCの歌を聴いています CかAと重なってきたらカノンです ほら耳を澄ましてみて                    はるが おんがくのように ながれている ---------------------------- [自由詩]walk・on 11(改訂)/ひだかたけし[2019年3月20日17時15分] すっかり日々は暖かくなり 桜もいよいよ開花間近 なのに私の心は鉛の様 不安と恐怖が波打って 奥底から沸き上がる (昨夜は凶暴な悪夢に襲われ 汗みどろで目が覚めた) すっかり日々は暖かくなり 桜もいよいよ開花間近 春は私の傍らを 何とは無しに肉感的、 ゆっくりゆったり進んでいく ---------------------------- [自由詩]春の夢/ひだかたけし[2019年3月21日12時42分] もうすっかり春になりましたね 今日は風が強いです 咲いたばかりの桜の花が ゆらゆら大きく揺らいでいます  ■□ 私は街を周回していた 人波物凄い都市だった (流れに乗り遅れたら、 踏み潰されてしまうよ) 帰りの井の頭線の改札に向かい ようやく辿り着いたと思ったら またすっかり外に出てしまう 何度試しても内から外へ 街の人波に呑まれてしまう そうしてぐるぐるしているうち わたしはどんどん擦り減って 燃えかすのような自意識が 外部に裸で剥き出され 恐怖に震え佇立する (宙空には微か 仄白い満月、浮かび)  □■ もうすっかり春になりましたね 今日は風が強いです 歩き始めたばかりの子供が ゆらゆら必死に立っています ---------------------------- [自由詩]ほね/るるりら[2019年3月22日9時28分] もしも 三人が しゃれこうべになったら 三人は親子だと すぐにわかる  なぜなら 同じ頭の形してる。 と、言われ ハチマキ姿のタコの絵のような 立派な おでこを 三つ つきあわせて 婆さんと母さんと娘が、声をたてて笑った あかんぼうの髪の毛は ゆでたてのトウモロコシのヒゲのように やわらかく 繊細に おつむを守っている 新米の母親と お婆さんとが 交互に おつむをくりくり なでるほどに  ずいぶんと違う性質の三人なのに ほねは とても似ているのが おかしい 皮膚のようなものを除いてみるスケルトンな眼識を与えられ 本質的に同じものをもっているというだけの ほねたちの わかちがたい ふくよかな笑い ******* http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=5978980#12741981 即興で詩を書き合う 即興ゴルコンダ(仮)参加作品。今回の題名は、こうだたけみさんの出題です。 ---------------------------- [自由詩]夢路/梅昆布茶[2019年4月5日13時09分] ぼくの朝は完結しないつめたい夜を引きずってはいない ぼくの大腸は閉塞して夜をためこんでいたけれどもね カーテンを引くと天使はねぼけまなこで羽ばたいている 窓からのぞくと景色のはじに満開の桜の樹があって いくつかの峠道をへて空にのみこまれてゆく路がある それはだれでもがたどれる路なのだろうか それともときどきしか垣間見れない夢路なのだろうか ぼくの夜は道玄坂か代々木公園のあたりに紛れ込んで ちょっと休息をとっているだけかもしれないのだ ---------------------------- [自由詩]鬼と桜/……とある蛙[2019年4月9日14時46分] 駅から続く桜並木 だらだら坂のドン詰まり 君がいた病院があります。 桜並木の木の下には 死体と狂気が 埋まっています。 もう四年も前の想い出ひとつ 今年も桜の木の下で 散りゆく花弁ひらひらと 桜並木の真ん中を 足早にすぎる風一陣 鬼になった君の風 桜並木の木の下には 別れの想いが 淀んでいます。 もう四年も前の想い出ひとつ 今年も桜の木の下で 散りゆく絆ひらひらと 桜並木の真ん中を 人の間に冷たい風が 鬼になった君の風 見上げる花は真っ盛り 冷え冷えとした足元ばかり 冷え冷えとした君との思い 桜並木の木の下には 積み残した恨みが 沈んでいます。 今年も桜の木の下で 届かぬ想いひらひらと 桜並木の真ん中を 空しい時間が吹き抜ける 鬼の風も吹き抜ける 見上げる花は真っ盛り 涙にぬれたこの地べた 桜並木の木の下には 人の心の奥底の 鬼がひっそり佇んでいます。 ---------------------------- [自由詩]ぶらっくほーる遊び/そらの珊瑚[2019年4月11日10時21分] まばゆさに目をとじれば 暗闇となった世界に浮かんだ 円が燃え上がる そんな遊びを繰り返していた あれはぶらっくほーる 宇宙への入り口か出口だった だれもかれもみんなおとなになってしまった わたしも 尖ったまばゆさを直視できなくて 春は永遠を飛び越える はなのかたちのまま散った 造花のかなしさをひとつ ひろっておうちにかえる ---------------------------- [自由詩]星狩り/山人[2019年12月8日8時15分] 君と星狩りに行ったことを思い出す 空が星で埋め尽くされて、金や銀の星が嫌というほど輝いていた 肩車して虫かごを渡し、小さな手で星をつかんではかごに入れていた ときおり龍が飛んできて、尾で夜空をあおぐと、星がさざめいた 君の寝床の傍にかごを置いて、彼らの好きな鉱水を与えるとよくひかった ---------------------------- (ファイルの終わり)