よしおかさくらのたちばなまことさんおすすめリスト 2008年3月28日16時36分から2008年11月16日9時23分まで ---------------------------- [自由詩]うさぎ/たちばなまこと[2008年3月28日16時36分] はじめまして うさぎ 大きなうさぎ 隠れ家のうたげまで 丸いしっぽを振ってさ 顔と変わらないでかさのヘッドフォンなんかが かつて愛を共に真似た Northって名まえのしろくまに似ている 隠れ家のうたげまで 誘いこんでよ うさぎ イタリアの泡をスペインのドレスで のぞきこんだりする アメリカのチーズケーキを桜ヶ丘のカットで つついたりもする それでもパーフェクトだと 褒めてくれる 大きなうさぎ ほほを少し染めて セピアに浮いたビー玉たちを ベレー帽に集めたりした 饒舌なこあらも 骨太のきりんも 東京のはくちょうも 私には初めてだったけれど 石のチョコレートをほおばるうさぎも 初めてさ つばめが私をハグしたら あのこが乳房に描いたらくがきを 消しに帰るよ うさぎ うたげの熱を首に巻いて ゆるい坂に 街の物語を聞いたりしてさ 振り返ってもそこにいたね うさぎ 私は新しい名まえを 思ったりしてさ ---------------------------- [自由詩]みかん(未完)/たちばなまこと[2008年6月17日19時13分] もう ラヴソングも描けないのさ 日の入りが終わった天空の マゼンタがきれいでね 良い絵が描けた後の 水入れみたいでね そんなことを伝える人も居ないのさ 眼球の奥でつくられる とろんとした水は 落ちないまま底に浸みてしまうんだけど 遠くで見ているの? きみの天使は人のことばを 少し口に出来るようになってね 伝えたいことがたくさんあるんだけど 上手く言えなくてね 今日も 眠るのが怖くて泣いていたよ バズタブから抱き上げて涙ごと タオルでくるんだら はだかのまま眠ったんだよ はだかのまま 私の体に戻るようにして ---------------------------- [自由詩]白い女の子/たちばなまこと[2008年11月10日23時53分] 白く 抱かれている女の子を見て きれいだな と思う やさしくふれられて やさしいことばを感じて ため息を漏らすの メロディーのように たぶん アイラインを落としても つむった瞼にまつげは 甘いラインを描く 首もとにささやかれて 大きさに包まれて 思わず二の腕にくちづけてしまうような 小さな本能を集めて 届くというのは空の誰かが 待っているからなのかもしれない くちづけ ひとつにいくつもの誓いをたてる 白い肌には桃色がさして 待っているのは天使なのかもしれない ほのおが灯ったのって ゆれる ひかりがはじまりのベールのようで やわらかいね すべすべだね あったかいね きれいだね たいせつだよ あいしているよ たとえばくらがりでも 空に手がふれるとき ひかりが見える 女の子は 大切に 強く されて どこまでもゆける 知らないだれかにも教えてあげたいと 感じる 白い女の子 ---------------------------- [自由詩]先生/たちばなまこと[2008年11月16日9時23分] 先生 今年も忙しさに思想が流されてしまう そんな季節が来ましたね あなたは貴婦人だったり豪傑な男の人だったり 駆けだしの幼い人だったり するのだけれど 先生は 忘れた頃に 夢枕にきりりとたち うなだれた教え子の背中をさする 先生に夜というのは やさしいのですか たくさんの人が門をくぐり たくさんの人が去ってゆく 先生はいつもそこにいて「いらっしゃい」と腰をあげる あなたはどうですか わたしはどうですか 自分に素直に流される そんな人間くさい先生でした 職員室で泣いてしまう人を 何人も見ました 先生だったりしました 教え子だったりしました 優しく深い海のような 幾たびも屈折して届く 光の帯たちの 暗がりを知る 重さを知る 柔らかな痛みを知る目の中に 沈んでしまうから 泣いてしまうのでしょうか 環境に足を取られて 向かうことすら出来そうにない そんなときにはわたしも 泣いてしまうのでした あなたの教え子たちも 泣くのでしょうね 小さな思想が 土足でなだれ込んでくる世の中に 圧せられて 先生 あなたがそんなにも傷ついて 思想を殺して 背負う子どもたちだから いつか花をあげたいのです 二十歳の女の子たちを「子どもたち」と呼ぶ 貴婦人先生を 思い出にあたためながら 先生 今日は彼女の記念日です わたしには先生と呼ばせてくれる人が 何人いるのかわかりませんが 彼女には人の輪がひろがっていて 人生の道しるべをくれる先生に溢れている あなたは先生で もしかしたらわたしも 先生 その女の人のブーツには 億万色の砂を駆けてきた しなやかな脚 彼女もまた 多くを学び 多くを伝えてくれる 先生なのですね 先生 思想は殺されるべきでしょうか あなたなら熱く「否」を唱えるでしょう それならば先生 あなたの熱も上昇を続けて欲しいのです 帰る家があって 血が流れていて 仲間がいて 教え子たちがいて あなたの思想を待っている ---------------------------- (ファイルの終わり)