あおばのよだかいちぞうさんおすすめリスト 2003年4月25日20時53分から2006年5月3日10時00分まで ---------------------------- [自由詩]ババロア/よだかいちぞう[2003年4月25日20時53分] 彼女はびしょびしょに濡れた服を着て この服いいでしょ といった ぼくは濡れてるから着替えた方がいいって いったけど 彼女はそのうち乾くから平気だよと まったく気にしていなかった いつまでも濡れた服を着ていると いけないというのは いつからか常識のようにぼくのあたまの中に入っていたので ぼくはその濡れた服ばかりに気を取られていた 次の日も 彼女はびしょびしょに濡れた服を着て ぼくの前に現れた ぼくがまた、また服が濡れてるよと いっても 彼女は何も心配していなかった 彼女とぼくは街中を歩いた すれ違う人が びしょびしょに濡れた彼女の服に気付いても 驚かず、なにも関心を示さないようだった ぼくも、彼女と出会う前に 服を濡らした人とこんなところですれ違ったとしても 別になにも思わなかっただろ そんなことを考えながら彼女と歩いていると ぼくはなにかいままでずっと 勘違いして居たんじゃないかという気がしてくる けれどもびしょびしょに濡れた服は 誰の目にも彼女の体に貼り付いていて あまり心地よさそうには見えなかった 彼女はババロアの話をしようといってきたので ぼくたちは歩くのをやめて ババロアの話をすることにした ババロアはヨーグルトの偽物だとか ババロアはプリンのできる前のもので プリンができる前まではみんなババロアだったのだけど プリンが出来てしまったから ババロアだったところはみんなプリンに取って代わってしまって ババロアは廃れてしまったんだとか そんな意味の無いババロアの話を彼女は熱心にした ---------------------------- [自由詩]路上で無料占いをしていた時の話/よだかいちぞう[2004年6月23日15時36分] 90%知りたい だけどそれはやめておく 死ぬのはいくつの歳か それを聞きたいけど 聞かないことにする と、57歳のおじさんが言った ぼくの座る 駅前の公園のベンチの前には 柵があった その柵が 公園と通勤客を 分けていた だから公園に入るためには 柵と柵のわずかな隙間から 入ることが許されている おじさんは公園の中に入らず 柵ごしからぼくに まずはと千円札をくれた おじさんはぼくが勧めても 公園には入らなかった おじさんは公園には入らず 柵に両腕を乗せて ぼくに話し掛ける 先のことを聞くのは嫌だから 過去のことを知りたい ぼくは57歳なんだけど まだ一度も結婚したことが無い もし結婚をしていたら いくつの時だったか 知りたい そう云って来るのだ 過去を占ったことは いままでやったことがなかった おじさんの顔形 風采は悪くなかった けっして 女には不自由はしなかったはずだ ぼくの占いで出た数字を云うと 頭をのけぞって そのころのことを思い出そうとしていた ぼくは間違っていた おじさんが居なくなってから気付いた こう占えばよかったのだ おじさんはいつ 柵の中に入らないと決めたのか? ぼくは見当違いに公園の中を占っていた ---------------------------- [自由詩]□■ひかり■□/よだかいちぞう[2006年2月5日20時45分] ある日神様が降りてきて すべての半分を君に与えた しかし残りの半分は 自分で何とかしなさいと言われた 数日は、いや一年くらいは 与えられた半分のもので 飽きずにすんだ けれどもまだ半分を読みきってないうちに 自分には無いもう半分を探しはじめた 自分のある半分はあとで見れるからと言って 探し方が雑だったのか 粗大ごみばかりが部屋の中を埋めていた これらをどこで拾ってきたのかと聞くと ヤフオクで買ったと言われた 遮光性の無い薄っぺらのカーテンから 日が差し込んで来た 斜めになってる箪笥に 西日があたる この部屋の箪笥ひとつで 人生が終わってしまうのは よくあることだけど それはとても詰まらなそうで 嫌な気分になった 君が言う この部屋に火をつけるんだ 神に宣戦布告する たとえ半分でも 神は戦いを避けるだろうから そのときに少し教えてもらえるはずだと 君は言う 太陽の光と 火の光 どちらが強いか 目に見せてやる ---------------------------- [自由詩]■白き休日よ永遠なれ■/よだかいちぞう[2006年5月3日10時00分] いま大音響でロックを聴いている のめりこんでいい気持ちだ 向こうの部屋では 気持ちよさげに 彼女が寝ている 真空パックや魔法瓶で この白い時間を閉じ込めたい 部屋に白いちょうちょが舞い始めた 窓ガラスから透けて入って来たのだ 彼女にも見せよう いまからそっちに行くね ---------------------------- (ファイルの終わり)