唐草フウのおすすめリスト 2020年5月25日22時09分から2020年9月20日10時48分まで ---------------------------- [自由詩]代謝/木葉 揺[2020年5月25日22時09分] 夜明けの太ももは 物事を知りすぎて 動く気配もない 左よ、流れろ 真夜中のフラッシュバックに 首筋が次々と 反応したからなのか カーテンの隙間に殺菌される 右脚が あきらめ半分動き出す ミネラルウォーターを流して 義理堅い椅子に寄りかかると まもなく 何も知らない日々が始まる ---------------------------- [自由詩]共鳴する黄昏/塔野夏子[2020年5月27日16時30分] 幾重もの黄昏が 共鳴する中を歩いている 自分の黄昏 知っている誰かの黄昏 あるいは知らない誰かの黄昏 数知れぬ意識の黄昏 黄昏てゆくのは今日という日 あるいはなんらかの時世 あるいは遠い未来 夢 予感 いずれにせよ 幾重もの黄昏は共鳴し その中を歩いている その共鳴が美であるのか 黄昏てゆく先にある夜が どのような夜なのか知らず ただその夜はまたきっと 幾重にも共鳴するだろうことを思い 月と星の出現を待ちながら 歩いている ---------------------------- [自由詩]日傘とパンクロック/カマキリ[2020年6月12日1時21分] スカートをはいてからおかしくなってしまった 縁側から外宇宙へ向かう道は あの子の膝にあたまをのせるだけだったのに まちがいだらけだって言葉に足がすくんだわたしに 日傘が少し傾いた 入り切らない背中の半分が溶けてしまえば この影はもうちょっとちいさくなってくれるのだろうか ---------------------------- [自由詩]微睡む窓/塔野夏子[2020年6月13日11時02分] 微睡む窓から 静かな私が飛びたつ 静かさに沿うかぎり どこまでも遠くまで飛んでゆける さえずりや せせらぎや さざめきや ざわめきや を 内包しつつも 静かさは静かさのままで そのなかを 静かな私は静かなまま 飛んでゆく 飛んでゆく 静かさの浮揚力で どこまでも どこまでも 時と風がからみあう またほどける からんではほどけ 流れてゆく どこまでも どこまでも 微睡む窓が 微睡みからさめるその時まで ---------------------------- [自由詩]ノート(57Y.6・3)/木立 悟[2020年6月17日9時18分] 廊下に机を並べてもよいか と 紳士が言う あわてて廊下に出てみると 既にたくさんの人が着席している 窓の外の雪景色は 常に上下に動いている 階段の照明は  意図的に消されている 暗がりのなか 人々が次々と上ってくる ここは占有できないと 紳士に告げようとするが見つからない 照明はますます暗く 窓の外の雪景色はますます明るい ---------------------------- [自由詩]日々の緒/カマキリ[2020年7月15日22時19分] とぎれとぎれの信号も 詰まってあふれだした声も 獣道で見つけた風景も しましま模様の高い空も 右手に光るガラス片も 左手にふるえる小さなカエルも 晩御飯のにおいのする街角も まだ心惹かれる長い影も 忘れてしまえよと 立て掛けた傘がうそぶく ごらんよ感傷だと 捨てられた傘が倒れる 忘れてしまえよと ---------------------------- [自由詩]夏の練習曲/塔野夏子[2020年8月5日11時09分] 清い流れに沿い 鶺鴒(せきれい)が閃くように飛んで 揺れるねむの花 ねむの花はやさしい花 と 誰かが云った 小さな手が生み出す 鍵盤の響きはたどたどしくても その無邪気さで 天使の声を紡ぐ 小さな嘆きにも 予期せぬさようならにも いつかは なぐさめが優美に降りたって 夏が来ると ことさらになつかしい帰り道 たどたどしい練習曲が 聴こえる ピアノの初心者によく使われる「ブルグミュラー25の練習曲」からいくつかの曲タイトルを詩の中に入れています。現在出ている楽譜では、タイトルの訳語が変わっているものもあるようですが、私が習った当時のものをここでは使いました ---------------------------- [自由詩]手探りで/ふるる[2020年8月13日21時48分] 大きな山だった 立ちはだかったまま青く動かないで 汚れたままの靴と 広くて深い空 その空に追突していった ま白い鳥が 置いていった羽をくるくるもてあそびながら 雲の上や切れ間を流れる風に見とれていた 見えなくても動いてある あそこや ああ あそこにも 叔父のよく動く口 話を聞きながら頷いていたけれど 半分しかわからなかった 墨をするときの静かな気持ちで どんな質問に答えよう どんな答えを編みだそう 予想ができないから 正しくあることはできない ここからここまでの感覚と言えるだろうか 直感を信じる あの大きな山を前に ばらけた木々のざわめき 降ってきた木の実を 両手で受け止めてからすべもなく捨てた 少しだけつらいような出来事 ただ、想像するだけだからなんてことはない その周りを回ることだって 拗ねて首を曲げた その近くに風は吹いて 閉じこもって考えていても仕方がない 外に出ればまたあの山だ 向こうには何があるかって 考えないのか 気が向いたら遊びにおいでと言っていたのに 叔父は消えてしまい レコードのアルバムが沢山遺されて物置の中に カビの匂いとしめった木の匂い すぐにお腹が痛くなる場所 二三枚レコードを抱えて外へ出る 電線のたくさん交差しているあたりで曲がり叔父の足跡はそこまで レコードのビニールカバーは破れて飛んでいった 最後にかけたのはどれだったのか 中身がないものや ジャケットと違うレコードが入っていたり 立派な黒くてつやつやした円盤に 刻んであるのは若き叔父の姿 拗ねたように首を曲げて 下を見ている 猫背の人から漂うのは拒絶 話しかけてもらえる期待と絶望感 会話はあまりしなかった 聞けば何でも答えてくれた 半分しか理解できなかったけれど ガイネンという言葉を初めて知った 質問の仕方がよければ 質問者は答えに近づいている 質問にも色々あってね ふっとそれまでの空気と世界が途切れ 世界も自分も何度でも塗り替えられる そう言った顔は思い出せない 光にのまれていた 闇が覆っていた どちらか 霞んでいる叔父の顔は穏やかに見えた 母の事を姉さんと呼ぶ唯一の人 いつもノートにむつかしい呪文を書き込み おそらく数式だった ねだって手の甲に書いてもらった 肘から手首までの長いもの 小指におさまるもの くすぐったくても我慢した 母に見せると 誰に似たんだか変な子になっちゃって 困ったような声 何も為さずに消えた横顔は真面目 それは消えた足跡 まっすぐで 答えを探る瞳孔 嘘を許さない背中 たまには陽を浴びたらいい あの山を見ると嫌になる いま抱えている問題を思い出す 目の色が不思議で 太陽の下では濃くなる 茶色い猫が歩いてころりと寝転んだ くわえていたのは靴の片方で せっせと飼い主に貢いでいるのだった 片方だけの靴が だから叔父の家の前には並べてあった 彼のいた場所には穴があいて そんな穴がどこにでもある そこに触れると冷たくなったり 暖かくなったりする 乾いた音楽がいい 演奏家もウェットなのは苦手 淡々と奏でられるバッハ ゴルトベルク という響きも教わった たまに頭に手を置いてなでるでもなく少し待つ 手を繋いだことはなかった 嘘の何がいけないのよ 母の怒った声は震えていて なだめてあげたいほどだった ごめんとつぶやいたのは誰だったのか 誰もいなかったのか そびえ立つ大きな固まりが空を持ち上げて 山は大きな人だった 夕焼けは毎回燃え夜へと消え 叔父はあの向こうへ 多くの疑問を残し 黒い雲を沸かせ 雷を呼び 先の大雨で山肌はただれ 河は壊れた 呆然と見つめる横顔の中で そんな時はうつむいてしまえばいいのだと知っていた いないのに必要なときは蘇る 風や雲とともに 切れるほど青い空にすっと雲がかかり 嫌な思い出もあんな色に塗れたらいいなと叔父は形のよい唇でつぶやいた 淡々とした叔父にも嫌な思い出がかぶさっていたのかと 今驚いている イチ、と猫を呼ぶ声は低く 姉さん、と呼ぶ声は少し高く なんとなく過ごしているうちに年を取り 恋も愛もなく通りすぎ 今は老いた母と二人暮らし 昨日介護退職をし とても深くて青いような困難が立ちふさがり 叔父ならどう答えるか うつむくのか 淡々と書き付けるのか すりきれた記憶から 手探りで思い出している 母は毎日誰もいない玄関に向かって おかえり と言う ---------------------------- [自由詩]ノート(考え)/木立 悟[2020年8月14日19時28分] 考えても仕方の無いことを 考えても仕方が無いのだが 考えてしまう 考えて書けってなんだ 書くことは常に 考えの外に在るのだ ---------------------------- [自由詩]ノート(またたき)/木立 悟[2020年8月14日19時29分] またたき またたき またたきの音がする しびれているのは 右か左か どちらの目なのか 両方なのか 左足を咬まれて 愉快でたまらない 左足の内に 咬んだものが潜んでいて ずっと 夜明けを見つめていた またたきまたたき見つめていた ---------------------------- [自由詩]またちんちんをさわっているよ/はだいろ[2020年8月14日21時59分] 気がつくと またちんちんをさわっているよ さみしいからだろうよ 何がさみしいかというと あらゆる人の記憶から おのれを消し去ってしまいたいから あらゆる人の記憶から 消え去ったあとのぼくは さぞひとりぼっちでまるで 一本の木のように おだやかなこころでありえるだろうよ だけどだれもほんとうは きみのことなど思い出しはしないのさ きみが誰かのことを ほとんど思い出したりはしないように このようにぼくらはいつも それぞれにさみしいのだから ついまた気がつくと やはりちんちんをさわっているんだよ ---------------------------- [自由詩]ポシェット/クーヘン[2020年8月19日12時14分] 小さなポシェットひとつで、あなたは何処へだって行けるんですよ。 もちろんポシェットふたつでも、おそらくポシェットなど持たずとも。 ---------------------------- [自由詩]はまなす/Giovanni[2020年8月20日9時33分] 海が見たい とつぶやいた あなたは今日の今頃は 白いベル付きの ドアの向こう あなたののこした たった一つの 小麦色の帽子をもって 記憶の底の海へ行こう ※※※※※※※※※※※※※※※ さびれた海水浴場に はなますの花が咲いた あなたのように やさしく はかなく いじましい 甘く酸っぱい実を付けた 海風が 麦わら帽子を さわさわ揺らす いつかあなたに であったときのように 白い雲が かすみのように 空走る さびれた海水浴場に はなますの花が咲いたよ あなたはいない 僕は ひとり せつなく くるおしく 小さな赤い実のように 2008.8 ---------------------------- [自由詩]二月の夜に/Giovanni[2020年8月20日9時49分] 子供のころ ある 二月の夜に こんな    ふ     う      に       電        線         を          伝           っ            てどこまでも遠くへ行きたい                        と                        思                        っ                        た                       し                      か                     し           結 局 行き着けるのはしょせん高圧線の高さまで    位 そこで それに気付いた僕は 地 べ た に 寝 転 が っ て 恨 め し そ う に 空 を 眺 め た                  空はどこまでも青く                  空に心を吸われた                  白い少年の神話も                  嘘ではないと思われた                  一人 寂しくなると                  公園で横になり                  透き通る空を眺めた                  空は 僕みたいな                  プータローの心も                  青々と吸ってくれるかな                  そう思いながら 草むらに横になって僕は僕の四肢が空と一つになる夢を見た    大人になって  ずいぶんと経った  ある 二月の夜に  僕はもう空にも  地べたにもいないことに  ふと 気がついた  僕はどこに立っているのだろう  僕はどこに行けばいいのだろう  二月の夜空は寒すぎて  二月の地面は凍てついて  帰りたくとも帰れない  行き場のない僕たちは  ただ 言葉にならない  行き場のない言葉を  あてもなく あてもなく  紡ぎ続けるばかりだ   2007.2.20 ---------------------------- [自由詩]ゆうやけのくに/カマキリ[2020年8月21日20時15分] 自転車を押す君が単線を渡ると 図ったかのように踏切が鳴り出した いつものようにぼくは何もつかめないから 警戒色みたいな棒に文字通り遮断された 蜃気楼の中から電車が見えてきた 向こうの君は張り付いたスカートを大げさになおしながら 轟音と熱風に遮られていった あの口角がつりあがっているのを想像しながら 電車がまた蜃気楼に帰っていくのを見送ると おそらく仏頂面だと分かる後ろ姿が 少しだけ遠くなっていた 追いかけようかどうしようか この道を行くしかないのだけれど ---------------------------- [自由詩]夜と歩いて/木立 悟[2020年9月5日8時46分] 線を踏んで 花の内 爪先立ちの 花の内 花を 花を 他から多へ 掴もうとする手の反対側へ しずくは落ちて 落ちてゆく 膝を折り 倒れる鏡 映るものは空と地ばかり 斑の陽がそそぎ 紙から分かれたたましいを濡らし 雨まじり 雨まじり 底だけがただ白い空 正と負のはざま 塵と水ふりやまず 喉の渇き 花かばう花 窓へ窓へと寄せる暮れ 平穏の後に来るものを恐れ 平穏をまるで享受できない 雨の花は揺れ 湿った光を描き さすらい人 野に咲く頃 浮き沈みする羽のかたまり 命と命なきものの切れ端が 光に流れ 水に流れる 紙 欠片 波 虹彩 夢に積もり 夢を分ける 鏡の檻 鏡の門番 硝子の原に落ちる星 水が 夜が 水に映る夜が ひとつの巨きな花を 巡りつづける ---------------------------- [自由詩]コンデンス/平井容子[2020年9月16日0時05分] 母は、 なまえはつけないほうがいいよ と冷蔵庫にむかって 言いつづけた 寝ているときは ずっと怒っている 車をひっくり返し おとこを犯し ベランダに放火し エレベータをさかさまに走った ・電子レンジの中で ・沸騰しつづけるミルク 3LDKの王国の 昔話はここらへんでおしまいです たしかに、 なまえがなくてよかったと 安心した日々もあったかな ・回想はいつも ・突沸する わたしたちは かつて自分より はるか尊かった夢の前で 例外なくむくんでいて 安心しながら のどを焼くあまさに いつもなだらかに狂っている ---------------------------- [自由詩]ノート(瓶)/木立 悟[2020年9月16日8時29分] 瓶はこちらを向かなくていいのだ 羽をたたみ 地に降り立ち 夜のむこうの夜を見ていればいいのだ ---------------------------- [自由詩]ノート(骨)/木立 悟[2020年9月16日8時30分] もうひといきだ ひともどきまで もうひといきだ しかし骨が光になってゆくのは 水たまりが渇くより早いものだ ---------------------------- [自由詩]ローグ/塔野夏子[2020年9月19日11時28分] 其処は中庭 周囲がすっかり閉ざされて 何処から入ればいいのかわからない中庭 其処で プロローグと エピローグが 手をとりあってくるくると回っている モノローグと ダイアローグが 寄りそいあい接吻を交わす ローグ ローグ ローグたちは 其の中庭でとりとめなくとめどなく 戯れあう 時に互いに際立ちあい 時にまじりあい融けあい プロローグはエピローグに モノローグはダイアローグに いつしかなりかわっていたり ローグ ローグ ローグたちの 変幻自在なダンスは続いてゆく 何処からも閉ざされているのに すべてが通過するその中庭で ---------------------------- [自由詩]真面目なあの人を笑わせたい/ふるる[2020年9月19日21時24分] 真面目なあの人を笑わせたい そう思ってたくさんの嘘を用意した 花を摘むよりも簡単 お箸を並べるよりも 宇宙人の話は全然だめで にこりともしてくれない 幽霊も金縛りもだめ 好きなものを知らなければ 笑わせることなんかできない だから知りたかった 髪の一部分だけが白い理由など 信じているものはあるのか など 難しい顔で川なんか見て そういう顔してたら許されるのか 捨てたことを 沢山捨てている人は 軽々と階段を降りるけれど 雨が苦手 古い階段のような音がするので振り向くと 雨で体がきしんでいるという ゆっくりとバスに乗る ガラス窓に雨粒が砕け 泣くのか、洗うのか迷っている 小さな子供が眠っているのにも気づかない いつまででも見ていられる頬 梅雨入りの匂いは好きなものの一つ 墓にも持っていきたいくらい さっきメールを打つ指に見とれた 伸ばし気味の指 無駄がなくて良かった 長文のメールは誰宛なのか 教えてくれないし 言っても分からないという 難しい事は分からない 子供には難しい そうやって目を塞ぐから 一人で歩けなくなったんだ 慣れた道と慣れた階段でも 迷ったり踏み外したりできるのは 才能の一つ なかなかできることじゃないし 誰も真似してくれない 偶然同じバスに乗ったけれど うつむいてメールばかり打っていて 落とし物でも探してるのか 何かの歌の歌詞が落ちた こうして見るとすごく恥ずかしい言葉が 歌にするとすごく素敵 するどくとがった言葉も するすると優しいメロディーで骨抜きに むかし 急に思い出話が始まった 銭湯には洗い終わった赤ん坊に服を着せてくれる人がいた 銭湯は知ってるかな今の若い人は それから 風呂がない者は知り合いのうちに風呂を借りに行ったりもした 湯気の中では皆赤ん坊のような顔になる 気の抜けたつるりとした顔 集めていたのはレコード 私は消しゴム コーラとか芋ようかんの匂いのがありました あの集めたのはどこにいってしまったのかな 捨てたのかあげたのかさえ思い出せない 海馬は捨てるのが得意 寝ているうちにせっせと捨てるらしい また母がうつ病で入院しました 今回は早めに病院だったので回復は早いのかも 打ち込める何もない可愛そうな人 この世にはいくらでも 美しい音楽や小説の中の一文がある 獣のような一句や 雷のような音だってあるのに 何なら夕暮れ時に外に出てみればいい 替えがたく美しいものがあふれ 空ですら抱えきれぬほど広がり 誰のものでもなくやがて失われ 別れの星が控えめに飾られる 音楽の宇宙を散歩しているような指揮者がいた とても楽しそうに 彼の燕尾服の袖から手のひらがひらひらと踊る 何十人ものプロフェッショナルが一つの音楽を作る それは身体の臓器が連携して一つの命を作るようなものかな ばらばらだけど一つ 聞いたこともない拍手が止まない 君の思い出話も聞いてみようか お絵かきといえばタブレットに指で描いていたので いざ紙に描くとなるとしりごみしてました タブレットの絵は嫌ならすぐ消せるので それから前に戻るボタンがなくて不便でした 間違った線がすぐ消せないのは困ります すぐ消せるのがいいのか いいですね もうすぐにでも 消したくなります 本も全て電子書籍を読むので 紙の本て苦手ですね 頭に入ってこない 明るさが足りないのかも 五十も年が離れていればずいぶんと変わるものだ 昔は小説なんか読んでるとバカになると言われた 今は 動画ばかり見てるとバカになるよと言われます 他人の楽しみを破壊したり知らないことを無闇に恐れることを愚かという 急に涼しい風 雨は去り誰かが窓を開けてくれた 蒸し暑い夜は寝苦しく 何度も寝返りをうっては いるべき場所を探していた たぶんここではない 不安が大きい人はなかなかそれを手放さない 不安を手放すことすら恐れている むかし 姉とその子供がいて 二人にまじわるのは とても居心地が良かった その子の腕に数式を書いてやったこともあった 変わった子ですね 今急に思い出したよ あの子の名前を 掃除機を買おうと思ったんです とうとう動かなくなりました 色々ネットで調べ過ぎて 今なら何でも答えられますよ 掃除機について 一段式サイクロンと二段式サイクロンの違いなどどうですか 吸込仕事率とか いるべき場所はどこだろう そこに山や河はあるのだろうか 時が来ればそうすべき時にふさわしい場所へ行くだろう 今はその時ではないけれど ただいまと言えるだろうか 残していった物はまだあるだろうか 迷いますよ紙パック式かコードレスかとか 君は何の話をしているんだ 好きなものの話ですよ こんなに色々な事を話しているのに 真面目なあの人がどうやったら笑うのかまだわからない ---------------------------- [自由詩]影なき世界/はだいろ[2020年9月19日22時02分] 君の望む世界は、 自由や 共感や優しさからは 反対に振れた世界だろう どうして そんな世界を 望むのか 僕にはわからないよ 君は君の望む世界で 変わらず権力者の側にいられると どうしてそう 無邪気に思えるのだろう 強い群れの中に潜んでいるだけで 弱者にはならずに済むと どうしてそう思えるのか 僕にはわからない いつか美しいひとに出会った時に 君は君の心を裏切って 一人大きなものの陰に隠れるのか たくさんの人がそこにいたとしても 黒い影で君の影も 見えなくなってしまうだろう どうして そんな世界を望むのか 僕にはほんとうに わからないんだよ ---------------------------- [自由詩]欠伸/まいこプラズマ[2020年9月20日8時30分] むかしの人々は だらしなく開かれた口から 魂が抜け出ると信じていたらしい なにかの間違いで 底引き網で引きあげられて はらわたがドロリと飛び出した 深海魚みたいにですか? 怪しげな エクトプラズムと似ていますか? ぼくたちは 魂だけで何が出来るのかな? 肉体は要らないのですか? それは本心ですか? 圧力に耐えて生きているのですね 外に飛び出して 開放されたいと 顎を外しかねない程に焦がれて 逃避は悪いことですか? 逃げるしか方法がない時もあるとは思いませんか? 逃げましょうよ 全力で やる気が有りませんと 顎を外して踊ってみせる貴方が羨ましい ---------------------------- [自由詩]処方箋/クーヘン[2020年9月20日10時48分] ・ 悲しい朝に目覚めたら、深く深呼吸を。 心の産毛へと、澄んだ風を送るように。 ・ 1番の歌詞が、みんなのものならば。 2番の歌詞は、あなただけのものさ。 ・ ラフな絵コンテの中にこそ幸せはある。 幸せになることをどうか気負わないで。 ・ 青い鳥は青い空に擬態してやってくる。 あなたの小さな窓辺にも、やってくる。 ・ 本当の処方箋は、小さな紙に一行だけ。 「元気じゃないあなたも、宇宙の一部。」 ---------------------------- (ファイルの終わり)