唐草フウのおすすめリスト 2019年8月3日13時24分から2020年3月22日23時59分まで ---------------------------- [自由詩]手毛/末下りょう[2019年8月3日13時24分] まだはやいと 手毛を抜いて ハンドクリームを塗ると 夕星が棚引く テフロンの夜空 そういえば ぼくは椅子を持っていない だれかぼくのところに来なくてはならない日が来たら ぼくの骨でぼくの椅子を 一脚こしらえて ぼくはテーブルのように棚引いていよう 乾いた口のなか うたかたの歌を繰り返してみせて おいしい お茶を 一杯 きれいな 手で おもてなしするために ---------------------------- [自由詩]八月の折り目/末下りょう[2019年8月17日19時33分] チャリのストッパーを跳ね上げた音が 八月の折り目に 鋭めに響いて バイバイした 終わりが始まりに触れようとして、外側を内側に折り込み 内側を外側に折り返して発達する八月に沿って いくつもの指先が やみくもに闇を吸い込みながら 左右に激しく揺れ 折り目をひらき 、また折り目を折り重ねて だまし船を鶴に折りなおすように 花束を折る すれ違う電車の窓明かりに横顔を照らされて モルモットのようにペダルを漕ぐ 星屑が並走する金網の向こう 崩れた花壇でカシャカシャ回るセルロイドの風車が 夜風から脱輪する 遠くの パトカーか救急車か シェルターの サイレンを 追って 帰りはいつも できることならあなたの涙を目蓋で握りしめて無言で立っていたい けど、その代わりといってはなんだけど まるめて捨てやすい しわくちゃの花束を贈る 笑ってくれるうちは ---------------------------- [自由詩]かなしみのふち/次代作吾[2019年8月18日23時34分] 覆水盆に返らずなんて言う 盆があるだけ良い あわてて水を掬いにいったら 盆を膝で割ることもある かなしみのふち 小さなことが気になって 大きなことがどうでもよくなって 大きなことに気分が悪くなって 小さいことにつまづいて かなしみのふち 常に落下しているとしたら 今いるこの一点はふちになる やじろべえ ぜんぜんうまいこと言えてない 詩になっていかない そうゆうふちで かなしみはポケットから はみ出してるぐらいのもので あんまりたいしたもんじゃない そうゆうかなしみのふちで 鏡を見て 変な顔をしてみたり お酒を飲んで 換気扇の下でおどったり 動くなぁって 動いてるなぁって ---------------------------- [自由詩]なにもしない日/水宮うみ[2019年8月19日17時07分] あたしは、もうなにもしない。 きょうこそ、かならず、なあんもしない。 勉強もピアノも、いぬの散歩もなぁんにもしない。 あたしはっ! なにもっ! ひとつもっ! しない!! ぜったい! ぜっったいっ!! なんっっにもしないっ!!! ---------------------------- [自由詩]障害者支援施設に勤めて/印あかり[2019年8月23日12時13分] 利用者がうんちを漏らした トイレに誘導して、ズボンをおろすと お尻にもデイパンツにもみっちりうんちが付着している デイパンツを千切って丸めてゴミ袋へ ズボンを脱がせて新しい着替えを履かせる 立ってもらうと、暴れん坊のわりに 大人しくお尻を差し出してきた わたしは黙々とウエットタオルでお尻を拭いた 黙々と拭いた その日、勤務が終わったあと 大きな夕焼けを見た とても大きかった ---------------------------- [自由詩]風鈴/七[2019年8月25日1時54分] 宇宙が生まれてからあっという間の この夏 待っていた風がようやく 畳を撫でた りーん ちりーん 光の速さでピントを合わせる この夏 皺だらけになった母の喉元が 麦茶を呑み込んだ 「せみがうるさいねえ」 蝉の透明な殻はどれも 宇宙服のように正しく掛けられて その持ち主は見あたらない 脱いだら死んでしまうというのに みなそれくらい夢中なんだろう りーん ちりーん 青畳の上で わたしたちは ひとりきりだった   ---------------------------- [自由詩]晩夏の雨/塔野夏子[2019年9月1日11時34分] 濃密だった夏が あっけなく身体からほどけてゆく 世界から色を消してゆくような 雨が降る 雨が降る あの光きらめく汀を歩く 私の幻は幻のまま それでも 夏はこの上なく夏であったと 青い頁に記して いつのまにか其処に出現していた 静かな九月の扉に ためいきとともに そっと手をかける ---------------------------- [自由詩]鯨の枕/カマキリ[2019年9月27日1時08分] 破かれていくカーテンの あの優しい日当たりが好きで 部屋の真ん中で目を閉じている 深い深い水の中 うっすらと張り付くように 白い目をしたばけものの声が レースの間から漏れている 水たまりに石を投げて その波紋を楽しむように 口が開かなくなったぼくらは 頼りない膜を貼りながら 呼吸をする夢を見続けている ---------------------------- [自由詩]何もかもの背中/プル式[2019年10月8日23時51分] すべてが終わったと思ったのは ありえない夢を見て憐憫な感情と 寂寥感に押しつぶされた朝 傘もさせない晴天の空の下 会社に向かう電車の中で 再び閉じたまぶたに夢を願ったとき 過去と現実と夢と願いの すべてが僕の中で燃え尽きもせず 燃えかけで水をかけられた炭のように 水びたしで重たい炭の匂いと 裏切られた欲望への希望と もはや届くことの叶わなくなった スクリーンの内側で流されていく 思いが今ならわかる それなのに僕はもう泣けない。 ---------------------------- [自由詩]ノート(56Y.11・26)/木立 悟[2019年12月13日21時56分] こむずかしいことを言う奴は殺す わからないことを言う奴から殺す 真夜中にひとり 径を歩いているだけなのに それを咎めるような奴は殺す 崖の途中にぶら下がる屍体 月と陽と潮風と浪と 人しか喰えなくなった鳥に喰われて 骨だけになった晒し者の姉 骨だけになっても殺す 粉々になっても殺す お前が誰であっても殺す 俺に近づくものは殺す 二階建ての家の屋上で ここから飛び降りて死ねと言う ひとりが死ぬには低すぎるじゃないか お前も一緒に地の泥を呑め 俺の影を踏むな 俺だけを照らす 星の火を踏むな 俺の指を覆う羽に触れるな 愛想笑いの亡霊が 雹と墓石のはざまに立ち 嗤い沈み 騒がしい 既に人ではないというのに 砕けた標識灯の冠 光のなかに消える光 弱い光を拾い集める 常に瘡蓋だらけの中指で 大陸を巡り 殺しつづけ 海に海を重ねて殺し 見わたす限りひとりになり 空の弦の終わりを見る ---------------------------- [自由詩]winter delight/むぎのようこ[2019年12月15日22時55分] けして、色づく ことのない実りを空が 見下ろしひとつ残らずあおく 透かして終うから こころ細く磨りへらして研がれた ひとみは ぶあつい掌に覆われて、あめが しずかに、雪になるように、 こまやかな 結晶があたりを循環する ひんやりと 嘯いた頬が、じわじわと 逆上せて うらがえったり、融けたりする 実りを くわえた鳥が天の たかい、たかいところを見えなく なるまで待って やがてしろく喪われてしまう ひかりが なにもかもを透明にする うたを くちずさんで、ふりむきざまの 影を抱いたふたえに ひろがった虹をわかたれながら あるいてゆくのに 幸福を千切りながら 約束ばかり磨りへらして、さよなら すら わすれて仕舞える花の かおりが冷えては囲われて ゆく冬の ことをゆっくりと結ぶ ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]義父が急に認知症?に(その後)/ふるる[2019年12月17日16時31分] 9月のはじめに他県に住んでいた義父がいきなり動けない、しゃべれない、記憶ない、となり、原因不明で要介護度4ほどの認知症になり、夫も私も驚いてしまったのですが、検査入院の末、脳に髄液がたまっていて、それが原因で脳が委縮してそういう症状が出ているとのことでした。なぜ髄液がたまったのかは分からず。 病院としては治療は特にないと言われ、すすめられていたリハビリの病院は結局、怪我や肺炎で身体が動かなくなった人のためのもので、受け入れはできないと言われてしまい、介護老人保険施設(老健)に行って下さいと言われました。 介護老人保険施設(老健)とは、介護老人のリハビリを行う施設で、3ヶ月毎に審査があって、大丈夫そうなら自宅へ帰す、自宅復帰が目的の、公的施設です。 そういう施設の存在を初めて知りました。入って3ヶ月は週3回リハビリ、とかきまりがあるそうです。 入所は、家族と施設の人との面談と施設の見学、病院からの健康診断書提出、からの、施設側の会議でOKが出れば入れるという、なかなかに日数がかかるものでした。 でもって、手続をしていたら、病院側から、義父の身体から多剤耐性菌が出たというお知らせ・・・。義父はごく初期の食道がんの手術をしていて、その後飲んでいた抗生剤のせいかもと。原因はよくわからないそうですが。(抗生剤はきちんと量と回数を守って飲まないと、耐性菌を育てることになってしまうそうです。飲んだり飲まなかったりが一番良くない) そんなわけで、介護老人保険施設(老健)への入所はできなくなり、ふりだしに・・・ と思ったらなんと驚くことに、発症から2ヶ月後、義父の症状が急激に良くなりました。どうやら髄液が身体に吸収されたので、脳の圧迫がなくなったせいらしい。それはよかったんですが、寝てばかりいたので筋力がすっかり落ちてしまい、夜中にトイレに起きてベッドから落ちたら危ない、ということで、夜中はベッドに拘束、昼間は車いすに拘束になってしまいました。こんなんじゃまた頭がおかしくなりそうだ、と訴えるので、ヘルパー派遣の手続途中でしたが、見切り発車で退院させることにしました。退院したら、わりとすぐに歩けるようになって、筋力もだんだんついてきました。よかった。ご飯も自分の好きなものを食べられるしね。 義父が倒れたのが9月はじめ、退院したのが11月はじめで、丁度2か月間、色々な知識を得ました。 リハビリ用の、介護老人保険施設(老健)というものの存在や、介護のバリアフリーリフォーム補助があるんですが、基本的に移動のためのスロープや手すりのリフォーム補助で、階段へ行かせない防止柵の補助は出ないとか、ゴミ出しを市が代わりにやってくれるサービスとか(これは、周りにゴミ出しのボランティアの人がいなければやります、と言われました。ゴミ出しボランティアも初めて知った。) 普段家事をぜんぜんしない夫が、すごく優しく両親のお世話をしていて、すごいなぁ〜偉いなぁ〜と感心しきりでした。 病院の社会福祉担当の方にもさんざんお世話になりました。ありがたや。 これは愚痴なんですが、義父母と24時間一緒にはいられないので、見守り用に監視カメラを買ったのですが、その設定ができないできない。 メーカーにいっぱい問い合わせしたところ、Android用のバージョンアップがしてなくて、さらにバージョンアップはiOS経由でしかできないとかふざけたことをおほざきになってて、なんだとう〜(怒)でした。結局、うちのルーターでは使えたけど、義父母の家では使えなくて、オークション行きかな… 現在は、ヘルパーさんが以前は週1だったのが、週5になり、義父が義母のお世話を一手に担っていたのが、負担が少し減って、悩みの種だった腰痛も少しよくなって、夫も週1度は実家に行くようになり(猫の毛が嫌だからというので、家の中で一人用テントで寝てる)結果的には良かったのかな。でした。 ---------------------------- [自由詩]そっちにいっていいかな/佐野ごんた[2019年12月20日21時15分] 全部リセットしてしまいたい 過去もこれからの未来も リセットの先に何があるのか ただ繰り返すだけかもしれない けど、今よりはマシかもしれない まだがんばれるよ だいじょうぶ そばにいるよ あらゆる慰めにうんざりだ こきゅう めをとじても 何も考えないなんてできない しあわせと海、なつかしい匂い いつかの いまから そっちにいっていいかな ちがうよ ただ、しがみつきたいだけだ ---------------------------- [自由詩]スキヤキオブザデッド/ふるる[2019年12月26日15時11分] この時ー恐ろしい予感は当たっていたー すき焼きなのに肉がない! 先輩は突然ゲラゲラ笑いはじめ、急に真顔になって 「心配ないとも。すべてが上手くいく」と言った いくもんか… 豆腐だけのすき焼きなんて嫌だ 12月寒空の中、早足で肉を買いにいくと 月に照らされたすべての家のポーチでは藤のブランコが揺れていて 星空を背負った枯れ木はきらきらと震え 青白く浮かぶブランコに座るだけで安心できたのだけれども無視して駆け抜ける 急な場面転換のためには主人公は失神したらいいけど ホラー小説でなければそんなに簡単に失神はできないだろう すき焼きの時に失神なんかしてる場合じゃない この肉は俺のもの 運転免許を取ったのは万が一ゾンビに襲われたとき逃げるためだ 車のキーのありかは…わかるな? さあ早く走れ振り返るな 気がつくと見知らぬ場所に倒れていて 簡潔に説明すると 肉がないのは 連絡ミスと慌ただしさが重なったせいだ その複雑な経緯を 簡単には説明できそうもない 初めての都会はごちゃごちゃして ラッシュアワーも大変だったし 変な絵を買わされそうにもなった 「オブザデッド」というタイトルだった 絵画にタイトルがつけられるようになったのはわりと最近 なぜなのかは各自来週までに調べてくるように はいはいはーい みなさん静かになるまでに75秒かかりました! ネギが煮えるまではあともう少しかかりますから お箸をスタンバイ フライングはなしで 大きく目と口を開いた怯え方は全く大げさにすぎると言わざるを得ない つぶれたサンドイッチがリュックの底から見つかって ふられたばっかりみたいに元気のないサンドイッチを一口かじると猛烈にお腹が減っていた しかしこの空腹感は 簡単に満たせそうもない もう時間がないのに どのくらいの空腹感なのか 詳しいことはまだわかっていない様子です、は、 急ぎお伝えしました現場からは以上です 以上ですがここまでで何かご質問はありますか? なければ次へ 肉を買いにどこまで行ったんだ? なんか外が騒がしいな… と、つぶやいた先輩の後ろには ---------------------------- [自由詩]冬とまばたき/木立 悟[2020年1月10日9時52分] 部屋のなかの折れた櫛を 覗き込む鴉 鉄格子 窓 鉄格子 窓 鏡を照らす鏡 夜を囲む夜 目が痛む 息を吐く 雪が止む 夜に切る爪 赤い中指 罪人の樹の枝中から こぼれ落ちる泡の不可視 谷間に残る細い雪が 途切れ途切れの輪を連ね 翳りの翳りの底の底から 風の器を差し出している 氷の下の氷の下 光の板の重なりの下 鏡文字とともに流れる 凍りかけた陽のかたち 夜の声 硝子 足元の囁き そわそわと 水に生えた水が揺れる 階段を下りる膝がかがやき 羽になり 羽になり 46656まで増え 窓の外に微笑んでいる 鳥の幽霊と紙のはざまに 光は昇り 地鳴りは到く 誰かに涙を見られないように 冬は一度だけまばたきをする ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]言葉とかについてつらつらと/ふるる[2020年1月19日18時03分] 言葉(文章)についての本を色々読んだので、つらつらと書きます。 ・言葉は人の身体にまあまあ合っている 言葉は、人の脳の容量とか、口の動かし方、息の出し方、書く動作、に、合っている。からこそ、多くの人に使われているのだと思います。 記憶や思考回路にもすごくかかわっているので、ある意味身体の一部かも。 (とはいえ、読み書きというのは、人にとっては不自然な行為らしい。ある程度の訓練がいる。) それぞれの個性、体質に合った言葉っていうのがあるのかも。 合ってない言葉で考えたり、使ったり、喋ったり、聴いたりしてると体調悪くなるとか、あったりして。 ・自分もそうだけど、意外とみんな言葉の扱い方を気にしていない 言葉は、思考、予測、判断、伝達、記憶、思想、など、社会生活の基本中の基本なのに、そのことを皆あまり気にかけていない。 自分の持っている語彙や言葉の組立方が記憶の仕方にも価値観にも関わってくるし、人間関係の作り方もそうだし、自分の全てと言えるのに、それを増やそうとかうまく使おうとかあんまり気にしない。 言葉が置かれた場所、媒体、発せられ方、書き方、によって、言葉の印象や集中度や理解度が変ってしまうのに、それにも無頓着。 ラブレター書く時は、便せんやペンなども厳選すると思うけど、それ以外はあんまり。 例えば、教科書も、最も理解しやすい、頭に入っていきやすいフォントやレイアウトってあると思うんだけど、そこまで考えられているのか、いないのか。 これは文句なんですが、面白そうな本があっても、フォントが癖がありすぎて読みづらいというのがあるんですが、どうにかならないのか。なんであんなの採用するんだろ。おしゃれだと思ってるのか。 ・簡単に言葉に騙されることを知っておいた方がいい 言葉は、貨幣と一緒で、ある約束を皆が守っているからこそ存在し、使うこともできる。共通の意味だったり、大前提として、「言葉を発している人は悪人ではなく、言うことは嘘ではない」ということだったり。 なので、詐欺にはころっと騙されるし、大げさな言い回しや盛り上がるような言い方で政治に利用できたりする。 それは、アンケート結果やグラフ、これとこれには因果関係がある、という一見論理的な根拠がありそうな言説にも騙されやすい、につながる。 (そのアンケート結果は、限定された人々の意見なのではないか?とか、肺がんと煙草の因果関係とか、他の要因もあるのかもと疑うのも大事) 私たちは言葉を信じているからこそ、簡単に騙されるということを知っておいて損はないです。その他、映像や言葉を発する人の見た目、態度にも騙されちゃうので、なんかもう素直ないい人って危ないですね。 ・言葉で差別意識を無意識に持ってしまうことも知っておいた方がいい 方言やカタコトは洗練されてない、標準語はきどってる、冷たい、みたいな価値観が一般化するのはよろしくありませんね。 方言女子かわいい!もだめなのかな。でも、音の印象でかわいらしさや力強さ、女性男性を感じてしまうのはしょうがないらしいんですよ…(濁音は発音がめんどくさいのでよい印象がないそうです。あと、口腔内空間が膨張するので、大きい、強いなどの印象も持たれるそうです。) ・言外を読み取っている 人には、行間を読む力もあって、言葉と、言葉で書いてない部分、合わせて一つの意味、ということです。 だから、文をどこで切って、次に何をつなげるか、行間にもよっぽど意味があります。 映画でモンタージュという、ある映像に別の映像をつないでいって、時間や空間の距離や、哀しみだったり恐怖だったりを表現する手法があるのですが、それも人の行間を読む力あってこそです。行間の読み方には、AとBの関係を想像したり、AとBを合わせて次に何が起きるか予測したり、何が起こったのか想像したり、色々あります。 憲法や法律の文章の一文が長いのは、なるべく文と文との切れ目、行間をなくして、余計な思惑を入れさせたくない、ということらしいです。 あと、辞書なんかの文が体言止めだったりするのも、書いている人の「個性」「思惑」を想像させないため、らしいです。 あと、日本語は言外の読みを促す言語らしく、それでいい事もあるんでしょうが、余計な忖度とか、あらぬ誤解とか、へんな空気に染まっちゃうとか、ありそうです。 ・言葉と現実の頭の中は違う 例えば、「〜はこう思った。」と文章を書くとして、誰しも、そんなに理路整然と思考していない。思考や思いは、好き嫌いやその時の状況により、常に乱雑に散らばり、あっちこっち行っている。言葉の文法にあてはめて、ちゃんと考えているように装っているだけだと思う。まあ言葉自体が、一般化、省略、要約、分類のための仕切り、だし、今使っている言葉は、昔誰かが考えた言葉で、今の時代にぴったり合っているわけでもない。まだその言葉が発明されてなくて、言い表せなさ、もどかしさ、というのが常にあると思う。だから、今文字で書いていることも100%ほんとって無理だと思う。50%くらいかな? あと、現実自体が常に流転、身体の細胞やくっついてる菌類もめまぐるしく生まれては死に、エネルギーも入れたり使ったり、まさに諸行無常でとっても忙しいのに、言葉はとても硬く、何かをそこに固定しようとする。 まあそういう意味では、言葉の真実度?リアルさ加減?は低いと言える。 ・本を読むということは… 本の文章には必ず、知覚、思考、情緒が入っていて、本の作者が、どういうふうに世界を認識し、自分の中で要約してるのかを追体験することで、読者は世界の認識の仕方、理解の仕方を学んでいる。偏った思想の本ばっか読んでたら、そうなっちゃうんだろうなー それプラス、読者の経験を思い出したり想像力を駆使しながら読むので、読書は一見受け身だけど、作者との共同作業でお話を新たに作りながら読んでいると言える。 今の時代の言葉の周辺 ・言葉との付き合い方が今までとは全く違う時代に突入 誰もが、気軽に、長々と、言葉を全世界に向けて発せられる時代って今までなかった。 昔は手書き、ガリ版、なんかで一生懸命書いていたから、みんなが文字を連ねる物理的な大変さを知っていたし、そういう点でも多分、作家は尊敬されていた。肉筆を読む編集さんも必死だったと思われる。 それが今じゃあねっころがりながら鼻歌まじりでぽちぽちやっても書けるしコピペの時代だから…編集さんのチェックが入っているのか怪しい本もいっぱいあるし。 言葉という、貨幣にも等しい生活基盤を、やろうと思えば誰もが無責任に放出し、浪費し、捨て、消去できる時代。 それがいいことなのか悪いことなのか。なんか、ぺらぺら〜で重みがなくなる気がするけど。 特にツイッターでは書く方も読む方も、責任感がゼロというか、ソースなしの間違った情報平気で乗せるしデマを書くし、それに賛同するし。 それに加えて、デジタル媒体での、映像付きの力強い言葉って感染力が高いらしい。人は見た物をすぐ信じる癖があるから。 くわばらくわばら… 媒体や発信のされ方によって、言葉(映像も)の信用度を上げ下げする時代ということかな。昔は、書籍として出版されているものにはある程度の信用度があったんだけど、今やSNSで評判のいいものがそのまま出版されているのもあるからな…題名詐欺も多いと感じる。〇○の科学とか〇○講義とか書いてあっても、作者の経歴が怪しかったり。 もちろん悪いばっかりでなく、いい言葉が必要な人に届いている可能性はある。 ・デジタル世界に言葉や知識がどんどこ蓄積されていくと… 集合的知性(個々の意見(人の意見は知らない)を平均すると、案外正しい解が得られる)みたく、人類の知がアップデートされるのか、されないのか。 ・デジタル書籍が頭に入ってこない デジタル書籍って全然頭に入ってこないんです。何故なのか?知りたいよ。一説によると、人は文字を風景の一部と認識してて、本は3次元的な地形だと思ってるらしい。デジタル書籍は平面だから、脳の使う場所が違っちゃうのかな?読めはするけど、記憶に残らない・・・ある程度記憶しながら読まないと筋が分からないのに、その記憶ができない。本だと、厚みで、だいたいの距離感が測れる。薄い本なら、そんな複雑な事書いてないだろうとなるし、厚い本だと、人がいっぱいでてくるんだろうなーと覚悟しながら読む。そう、本を読むっていうのは、常に予測しながら読むってことなので、デジタル書籍だと、ぜんぜん予測できないし(慣れればできるようになるのかな)あと、読み終わったあと、本なら真ん中らへんの右のページに書いてあったとか記憶できてるんだけど、デジタルだと、どこに何が書いてあったか、というのを思い出せない。結果、内容もよく思い出せない。 デジタルだと、すごい狭い1本道を歩いてる感じで、本だと、遠くまで見渡しつつ飛行してる感じ。確かに地上の道だけだと地理を覚えにくいかも。地図を見るのは苦手なんですけどね。 ・言葉について、現代の問題 今の若い人はテレビ、ラジオをつけないので、「ほぼ全員が普通に」知っている共通の語彙が少なくなっている。 子どもがデジタルの問題集になれちゃうと、板書できないとか、長文を批判的に読めないとかの弊害があるらしい。 デジタルの世界って、一見多様な意見あふれる寛容な世界と思いきや、自分の世界に閉じこもれる世界でもあり、自分に都合のよい情報だけに閉じこもる狭量な人もいっぱいいる。 紙に書いて記録・思考する派と、スマホに保存する派や、紙の本とデジタルの本のどっちに親しむか、で脳の記憶回路やそれに伴う思考回路が違ってくる可能性がある。 これらは、今後、どういうことになっていくんでしょう?デジタルネイティブとそうでない人との断然、無理解、恐怖、からの差別がはじまるのか… ・その他、言葉に望むこと 標準語も通じる言葉としてはあっていいんだけど、標準語では表せない言葉で、方言では言える言葉は積極的に取り入れてもらいたい。 沈殿物が下にたまってることを言う方言があったんだけど、なんだったっけな。 とにもかくにも… ・伝達、交流などなど、言葉はめちゃくちゃ便利な道具だな〜 想像や空想の世界を広げられる=想像したものは作れるらしいし=想像力は人の心の痛みを想像にもつながるし 時間と空間を超えられる(昔の外国の小説とか面白いし!) ラベルになる、情報を短くして記入しておける(探す手間が省ける) ありとあらゆるものを言葉で短くすることで、記憶したり思い出したりできる(脳がすごいともいえる。思い出す力も使うから、読書は面白い) 伝えるのが難しいものでも、比喩を使うと、皆が知っているもので代用するから、伝わる。考える時も比喩を使ってるのだそうです。心が「広い」とか愛情を「注ぐ」とか、物に例えると抽象概念のことを考えやすい。 違う言語でも、翻訳があるから、国を越えて、世代も越えて、まあまあ通じ合える。 言葉の組み合わせだけで、面白いこと、感動すること、色々創作できて…お金かからなくていいよね… ↓読んだ本です。 『本を読むときに何が起きているのか ことばとビジュアルの間、目と頭の間』ピーター・メンデルサンド(著)フィルムアート社 『タイトルの魔力 作品・人名・商品の名前学』佐々木 健一 (著)中央公論新社 『文体の科学』山本 貴光 (著)新潮社 『ことばの力学 応用言語学への招待』白井 恭弘 (著)岩波書店 『日本語とコミュニケーション』滝浦真人(著) 大橋理枝(著)放送大学教育振興会 『「あ」は「い」より大きい!?音象徴で学ぶ音声学入門』川原繁人 (著)ひつじ書房 『新記号論 脳とメディアが出会うとき』石田 英敬 (著), 東 浩紀 (著)ゲンロン 新記号論〜以外はやさしく書かれた本なのでご興味あるかたは是非〜 ---------------------------- [自由詩]記憶/タオル[2020年1月19日20時15分] けんけんぱらん けんぱらん みぞれ落つ昼 とんとんとんとんとん だれもいないやね走る 甘いお茶 ちっとも おもしろくない午後だったのに いまでもせなかに 葉っぱの裏に こもっている うすいうすい灰色のプール さびた手すり 撫でようとして撫でれなかった猫 うごかない壁 ---------------------------- [自由詩][:urban legend/プテラノドン[2020年1月21日7時09分] プレパラートと実験室 ハサミの形をしたコウモリが 逃げ出した。 そいつは 闇に馴染みながら、 すいすいと夜を裂いた。 研究者たちは 議論するばかりで 探し出そうとは しなかった。 ネオン街 瞳以外、囚われた少女。 彼女は時折舞い落ちてくるネオンを 畏敬して 跪いて拾い集めた。 つなぎ合わせて作ったドレスは全て 優雅な制服に見えた。 悲喜こもごもの紫や緑のリボンを巻いて 彼女も天井に 吊るした。 ---------------------------- [自由詩]ネタバレ/クーヘン[2020年1月21日12時30分] お寿司のネタは常にネタバレをしている。 シャリの上にて堂々とネタバレをしている。 ---------------------------- [自由詩]教室/たもつ[2020年1月21日21時40分]     木立ちを抜けていくのが 私たちの木立ち だからすっかり抜けてしまうと 教室がある 先生は、と先生が言うと 先生は、と復唱する私たち やがて始業のチャイムが鳴り つまりそれは 今までの授業は何だったのだろう 昼間、給食が波のように押し寄せ 波が給食のようにほぐれ 午後には風やそれ以外も吹き始める 犬に形の似たものを答えなさい、という設問に 覚えたての母の名前を書いた私の答案は 二度と返ってくることはなかった 先生は、(先生が) 先生は、(復唱) 教室から木立ちを抜け 木立ちはすっかり抜け落ち 後は延々と水みたいに坂道が続く 祈り、という言葉を簡単に使ってはいけません と先生に注意された私たちの祈りは 本物や偽物よりも多分ずっと儚い     ---------------------------- [自由詩]毒(あるいは懐古/カマキリ[2020年2月1日0時21分] いつまでもしびれがとれない この道程だけが正しかったはずなのに 錆びた看板を見るたびにきしむのは 割れたこころがざわつくのは きっとこれは毒で 慣れてはいけないけれど 忘れるほどにしまいこんでもいけないのだろう 目障りであたたかくてわたしにしか見えないもの 鋭くてやわらかくて手にすると重いもの きっとこれは毒で いつまでもしびれがとれない ---------------------------- [自由詩]STILL YAMABUKI/カマキリ[2020年2月4日20時49分] 巨大なロボットの神経をつなぐように 眼下には電車がうごめいている わたしは忘れてしまいたいことだらけだから ここにひとりでいるのかもしれない 夕暮れが不平等に影をちらして まだら模様の人々を見ると無性に帰りたくなる それでもやることだけはたくさんあるから わたしのガイコツはいつかわたしを突き破る隙を探している 上着を脱ぐにはまだ寒いからいっそ凍ってしまえばいい 雲の先端が怖いからどんどん地下へ潜っていく 残された道は少ないけれど なんにもないわけじゃあなくて 先細って行くそれがとても悲しかった ポツポツと火が点くがここは地獄でもないから 同情するだけの優しいものに食い止められて わたしはまだ帰れない ---------------------------- [自由詩]私の間の大きな骨/カマキリ[2020年2月14日23時42分] 耐えきれないことを冷蔵庫に押し込んで 明日の朝になれば食べごろになったりして そうやって生きていくそうやって目を覚ます 多くの間違いのたったひとつだよ また増えても大丈夫 消えない汚れと痣、知らない傷が増えて コンビニへ駆け込んで冷たいものを買う そうやって落としていくそうやって渡していく 後ろめたさも同じ温度で また増えても大丈夫 教えてほしいことも聞きたくはないことも 包まずに時間通りバスが来て窓が曇る そうやってつよくなる 私の間の大きな骨 ---------------------------- [自由詩]缶切りがない/カマキリ[2020年3月5日0時46分] 風通しのいいこの部屋は なにも考えられなくなる 昨日飲み干してしまった 感傷とかそういうのが 妙な日当たりによって いつもよりきれいに見えてしまうんだ 何度か空っぽに対して 納得するように頷いたあと しびれた足を持ち上げながら 言葉通り丁寧に窓を拭く それでよかったわけじゃあないけれど 駆け上がる気持ちに蓋をしたいんだ それがダメならせめて 思い出に連れて行ってくれ だってこの部屋には缶切りがないもんだから ---------------------------- [自由詩]引き出し/たもつ[2020年3月10日17時27分] 午後が落ちている 歩くのに疲れて 坂道を歩く 人だと思う エンジンの音 やまない雨の音 降り積もる 昔みたいに 曜日のない暦 夏の数日 確かに生きた 覚えたての呼吸で 何も残らない すべてが愛しすぎて 朝の手 夜を触る 音のない言葉 共有の嘘 引き出しを開けてごらん 虹が入っている ---------------------------- [自由詩]泡、あるいはテンペスト/大村 浩一[2020年3月15日22時51分] 瓶の壁を 静かに登る泡 幾つも 幾つも ためらいながら 少しずつ 飲むか、 と言うと 欲しい と答える グラスへ注いで 渡す ありがとうと 小さな声 あなたが居て 私が居て ここまでを繰り返した ここで 掻き消されても いまここに ある なにもない 青空 この夏を 凌ぐ事が出来たら 2020/3/15 ---------------------------- [自由詩]白へ 白へ/木立 悟[2020年3月18日19時04分] 風と水たまり 鉛筆 かくれんぼ 雨と雪の服 画用紙の端から端 暗い明るさ 午後の未来 胸の苦しさ 十月十日 横ならびの虹と径 賢くない鴉が啄ばむもの 静かに そして 近づくもの 一度の雷鳴 みな恐れて 走る 走る 花を踏んで 水を踏んで 雨の柱 こすれあう音 径は響く 海へ 岩へ 昼にひらいた手に落ちるもの 乱される前の水底の文字 ずっと静かに 残るはずもなく 径は白いが白くなく 白くない白いを繰りかえし 血と埃の季節を越え 常在の冬を撒いてゆく ---------------------------- [自由詩]浅い春/塔野夏子[2020年3月19日11時26分] 浅い春が 私の中に居る いつからかずっと居る 浅い春は 爛漫の春になることなく 淡い衣のままで ひんやりとした肌のままで 佇んでいる (そのはじまりを  浅い と形容されるのは  春の特権でありましょう) 鴇(とき)色の雨を あるいは真珠色の日射しを ながめながら うっすらと微笑みながら けれどどこか うつろな眼差しのままで かたわらにいつも 菫の花を咲かせて ---------------------------- [自由詩]ひなた/ガト[2020年3月19日18時13分] 後ろで手を組んで 足をそろえて ちょこんと立つ女の子のように 春が遠くで見ている 少し 体を傾けて 小さく笑いながら ---------------------------- [自由詩]生活/たもつ[2020年3月20日10時08分]     とり急ぎ、という言葉を初めて聞いたとき 鳥も急ぐのだと思った 正確に言うと へえ、鳥も急ぐんだ、と思った それはユウコの初めての言葉だった 今思えばあの頃 鳥は皆、急いでいたような気もする まだ急いでいるものなのだろうか ユウコは青白い顔色で 都会が良く似合った 生きる音がしていた 指は幾度となく紙をなぞり 影は指と紙との境目をつくり 指を辿れば そこにはいつもユウコがいたのだった ここは立地が良い、悪い、というのが好きで とりあえず、という珍妙な言葉を 生まれて初めて聞いたのもユウコからだった 鳥は会えないのか、和えないのか そこのところはわからなかったけれど ユウコの言葉の中で鳥は鳥として生きた ユウコにはユウコの十年があった ユウコとの十年があった たとえ息を吐くだけでも それは生活でよかった   ---------------------------- [自由詩]点滅/木葉 揺[2020年3月22日23時59分] 人に向かって歩く 遠くに見える人 人が点滅する そうして人は消えてゆく 離れている時はつながっていた いくつそんなため息をつけば 光を育てられるのだろう もうたぐり寄せるものもなく ただ人がいたはずの場所を 確かめている 湿った震えだけ残されて それをもとに何か作れるかもと しゃがんでいる 足が痛み始める あれは人だったのか 立ち上がって目眩を覚えると 別のものを探そうとするけれど ちらつく その気配が人なのだと また思ってしまう 人ほど不確かなものはないのに ---------------------------- (ファイルの終わり)