乱太郎のただのみきやさんおすすめリスト 2014年1月26日13時13分から2017年7月15日20時34分まで ---------------------------- [自由詩]私利私欲の独裁者に対抗する抑止力/ただのみきや[2014年1月26日13時13分] ピョンヤンの街が日を跨ぐ頃 乾いた靴音で少し先を行く 女 ロシア人だろうか 街灯に照らされて 骨盤で風を切る 右に左に揺れている おしり  尻視欲 と 抑止力 激しい激しい せ・め・ぎ・合・い (あぁ! 十二時の鐘の音が…… ) 妄想の魔法が解けたなら ジキルの薬でもうひとっ飛びだ 抑止力は欲詩力へと姿を変えて 知り詩欲の読砕者に対抗するのだ 専守防衛だと舐められる でももっと舐めて欲しいから挑発してみるのも悪くない (やっぱり難しい二字熟語をたわわに生らせてほしいのかい (死ぬとか殺すとか殺されたとかいっぱい入れてほしいのかい (コンナフウニひらがなとカタカナがコうゴにハいッたリとカ (やっぱり政治家とか神様の悪口を言ってほしいのかい) (実話はハッピーじゃないほうが共感しやすいのかい) もっともっと責めちゃおう 「ほーら欲しいなら欲しいと言ってごらん  もっとオ○マトペが欲しいと言ってごらん  オ○マトペでいっぱいにして欲しいんだろう  句読点なしで 直に 空白もないほどいっぱいに…… 」  むにょーんむにょーんフワリフワリがたごとがたごとモジャモジャ  ズダララズダララるるるるるるるギャギャッギギギャギャーべちゃ  でろりんでろんグジャリグジャリしゅらしゅしゅどっどどどどうど  チロリンチロンぴったんぺたんグワシグワぬらーりくらーりロロロ  ぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅ  ぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅ  ぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅ  ぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅ  ぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅ  ぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅ  ぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅ  ぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅ  ぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅ  ぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅ  ぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅ  ぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅ  ぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅ  ぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅ  ぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅ  ぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅ  どうだ 何を想像した  廃ビルの七階から脱糞される黒い機関車か  稲刈りをする少年の瞳に降りたアオサギか  祈らない春のあかい噴水に溺れる花嫁か  そうじゃないだろう  知っているぞ おまえが思い浮かべたものを? 確かな抑止力の働きに 「そして誰も読まなくなった」 ミステリーの女王に対抗する ヒステリーの抒情 クランベリーの赤いパイ 船べりの白い灰 眠る文字     《私利私欲の独裁者に対抗する抑止力:2014年1月26日》 ---------------------------- [自由詩]不死鳥/ただのみきや[2014年2月8日13時53分] 雪を被った針葉樹の臍あたり ふっくりと一羽の雀 小さな瞳に世界を映す やがて薄曇りの向こう儚げに 手招きをする太陽へと飛び去って 小さな黒点となり 視界から消えた わたしの煤けた肋骨の奥底 芥の中に微かに残る熾火からも 雀のような 鶸のような 不死鳥一羽 飛び立たないものか 人が定めたあらゆる境界を越え 無残に刻まれた時と時代を越え 遠く まだ見ぬ森や湖 知り得ない誰かの心まで      《不死鳥:2013年12月25日》 ---------------------------- [自由詩]嘘つき/ただのみきや[2014年3月16日15時46分] 持ち上げては こき下ろす 嘘をつかない人間はいないのだが 良い目を見たから許せないのか 騙されたから許せないのか 自分の嘘はばれたくないものだが 真実を追求する マスメディアもかなりの嘘つきと 知っていながら毎朝毎晩覗いている 嘘は良くないと 子供に教えながら どこか後ろめたいから 嘘にもいろいろあるのだと 許される立場とそうでない立場があるのだと 鈍色の色分けで言い訳をするが 信じることの大切さと その結果の自己責任について どう学び教わってきたのか記憶もなく 嘘がばれた有名人を 嘘を隠した一般人が マスメディアに力を得てはウソツキと 呼ばわるのもどこか気色が悪く なんだか切なくなってくる 嘘つきとしては小心者なのだ       《嘘つき:2014年3月15日》 ---------------------------- [自由詩]地球詩人/ただのみきや[2014年4月4日22時01分] 破裂した精神から 無数に咲き乱れる 色とりどりの気球 大気圏を目指すアストロノーツ 「僕らはこの星の火傷そのもの  剥離する瘡蓋だ―― 」  ――なのに捨てきれない! 抱き寄せる母性(ガイア)の腕(カイナ) 蛮遊韻力の誘惑に 垂直に墜ちる烈火の雲雀 詠う隕石症候群 音(オン)を意(イ)を長く棚引かせ 誰のものでもない 開花した瞳の真中へと 押し寄せる波 何かを対消滅させて 生まれて来る 言葉と言葉のあわい 新しいもの 否 むしろ 遡るものか 愛する故に    噛みついた痕     《地球詩人:2014年2月23日》 ---------------------------- [自由詩]目よ見よ見えない言の花/ただのみきや[2014年4月30日21時50分] 蛇口から      ゆっくりと          こぼれて              おちる 透明で    ふくよかな         水の           躍動よ 掌を   舟のように        編んで           受け切れず 細波立つ     小さな池に          思い切り              飛び込んで 顏を洗う     朝は       ぶちまけられた              光のミルク 失われた     肌色の        こじ開けられた               祈りの中で 破裂する     山椒魚の         卵          韻律の白濁 それは    わたくしの         失くした             ひとみたち 掌から    仰ぎ見る        空虚な自我             風の戯れ              カタコンベ      双子の少女           白髪の              干した無花果 スカシバの      時を止める           百万回の               まばたきが 混濁させる      虚と実         仄暗い            生と死 止(や)まれぬ     夢を       詠めずに           病んで 文字を纏わず       ひと鳴き           ひと刺し               ひと知れず                                                                           《目よ見よ見えない言の花:2014年2月23日》 ---------------------------- [自由詩] 雨/ただのみきや[2014年5月17日6時29分] すべる 若葉の上を 果てしのない空の歴程を越え 円い揺りかごに大地を包む はねる ピアノのように ひび割れた思想の冷たい黙示の上を 目覚めの兆しを死者の鼻先で踊る はじける 終わりへの歓喜 花を俯かせ毛虫の背を飾り 幼子は魚の頃の夢 波紋の音導(おとしるべ)       《雨:2014年5月16日》 ---------------------------- [自由詩]ひとつの殻の中で崩壊して往く/ただのみきや[2014年6月29日13時02分] わたしは 片付けきれない部屋 足の踏み場もなく 散らかったまま 古い紙袋からは 見つかってはヤバいものたちが 虎視耽々こちらを窺う ベッドの中には 初恋の人を模した バラバラの詩体 声もなく笑う鍵もなく壊れ 薄緑のカーテン ざわめき風の指先 齢を重ねきれず こと切れる日を待つ 行きつ戻りつの秒針が 皮膚に苦く刺青する朝 喚けど雨は降り注ぎ 色を失くし茫漠の 銀河を漂う淡々と 刻まれた棺の面持ちで 撒き散らした視線の触れ 妄想を孕み鬱蒼が絡む 賞味期限遠く過ぎ去り 背中の割れた秘密を吹聴する 誰も知らない童話の切断された手足 黴臭い風が 捲りあげる脳裏に 古くても鮮明な染痕 顏 顔 顔に埋め尽くされて 眠れない眠りの雫に浮かぶ 部屋は深く呼吸しながら 閉じて往く 冷たく蒼い魚のまま そこに在る夢を燻らせて     《ひとつの殻の中で崩壊して往く:2014年6月29日》 ---------------------------- [自由詩]食傷小町/ただのみきや[2014年8月17日10時38分] 愛やら哀や食傷小町 茄子を揉み揉む外法(げほう)のスアシ アブラ帷子(かたびら)文系ソバカス 瞬(しばた)くひゃっこの黒蜜空(から)して 琴(きん)やら吟(ぎん)や食傷小町 炎天御被り蔓巻く斜視しゅしぇ 韻エクセル死すグロリア八景 浴衣めくれて騒乱咲く蘭  来る日も狂う食傷小町 未満の破顔の癪とり蟲めく 仮名カナ鳴かずに切り義理なくし 怪訝(けげん)の滝から桃責め拗(す)ね拗(す)ね アイヤラアイ アイヤラアイ 舐めずり舐めずり アイヤラアイ       《食傷小町:2014年8月16日》 ---------------------------- [自由詩]快速処方箋/ただのみきや[2014年9月27日20時42分] 苦行に明け暮れサラリーマンは電車の棚で蛹になった 無関心という制服に包まれたシュークリーム並の少年たちが 耳におしゃぶりを挿したまま喃語と一緒に痰を吐きまくるから ユニクロを着た老人たちの血圧は上昇し 戦争体験を折っては飛ばし始めたがいっこうに届きはしなかった こんな話は聞かせたくないと赤ん坊は泣いて母親の耳を塞ぎ 車内アナウンスはただただ弁解と謝罪を繰り返す ヤスデは重荷だった自分には毒も牙もないからだ いつもこんな馬鹿げた人間たちを運ばなければならない 月は笑って観ていた娯楽番組なのだ地球は サラリーマンの脱皮が始まった 未満の蝶は卑猥さをヒラヒラさせながら駄洒落ることもなく 原子力に対する歪んだ愛を語り出したから 女は流星のように閃いて恋人を刺殺すると 車内を駆け抜け笑い声だけが風になった あとには山椒魚の卵のようにゼラチンに包まれたひらがなの山 小面を着けた別の女が現れて短歌を火にくべ燃やし始めると 甘い匂いが漂い始めたがそれはすぐに人の焦げる匂いに変わった 遠近法だけが人々を金魚鉢の日常に浸らせる魔法だと 平和の鳩は双頭の鷲に内臓を喰われながらもにこやかだった ああ小面を外してもあまり変わらない顏の女は乱れ髪 「君死にたまふ ことなかれ主義者め! 」 何かに似ていると思っていた音がSP盤のノイズだと気が付き 幽霊というほどでもない物忘れが激しかっただけの老人たちが ぼんやりと煙のように消えて逝くと物語は脱線を始め 車窓から一斉に櫂を突き出して電車は次元を超えて往く ワームホールの向こう側でヤスデはミミズと恋に落ち 超新星の爆発的祝祭のもと天使たちも錐揉みしながら落ちて往った その果てに 水中に燃える古い駅舎がある 封印された恋情を物語の中の友情に置き換えた 年老いたジョバンニはカムパネルラを捜し彷徨っている 少年という小箱へそっと仕舞った妹を求め無垢な修羅がやって来た ああカムパネルラの首筋に激しいキスを 修羅に渡してなるものか 逃げよう! これを読んでいる誰かの頭の中へ ポイントを切り変えて文字の上を素足で走って 遠心力が欲望の鎌首を擡げさせる肉の密度の湿り気に またひとりサラリーマンの脱皮が始まった さあ裸にオナリナサイ爆弾にオナリナサイ オナリナサイオナリナサイオナリナサイオナリナサイ 青筋立ったこめかみに少女の真っ赤な唇 冷たい銃口 嘘か真か麻薬か砒素か 文字撒き散らし彗星電車は矢のように脳裏を貫く夢 ああ永劫回帰線を越えて駅ビル調剤薬局へ もるひねよりもひねくれてひねもすのぼりくだりかな                《快速処方箋:2014年9月27日》 ---------------------------- [自由詩]並木に沿って小さくなる背中/ただのみきや[2014年10月18日21時24分] 学校帰りの女の子がふたり ひとりはピンクのパール系ランドセル ひとりは水色でステッチが入っている 驚くほど洒落たかわいい服を着て (これは昭和の感覚 たぶん) さえずりは巣の中の雲雀の卵のあたたかさか 蜂や蝶ばかりに好かれる陽向のシロツメクサ 楽しそうにじゃれ合って にぎやかに過ぎて行く すると 転がり落ちた鈴みたいな濁点が跳ねて 半ば腐った死人の耳目に飛び込んだ―― 生き返った詩人は胸ポケットのペンを探り ひらり と風に舞う 木の葉を手繰り寄せた   《並木に沿って小さくなる背中:2014年10月12日》 ---------------------------- [自由詩]安全地帯の変死体/ただのみきや[2014年11月22日15時26分] うるむゆきのはざま ぬれ落ち葉にそっと載せた瞳の過食 遠く翳る今を汲む オト ノ のたうつ沈黙 噛み締められた貧困が小走りで吹き渡る さざなみのような オト ヘ 欹てては刎ねられたこの両耳を手向けよう サクシュスルモノサレルモノ 縫い合わされた翼の中で震える血袋 錆びたイデオロギーの小刀による  玉虫色の割礼痕の疼き 真夏に滾る夢を上手く鎮火して 文脈をわきまえた無害な小悪党となる 飽食の飢餓に狂った子供たちは 互いに噛み合いまた己を噛む蝗それが 時代がこじ開けた解答だと言うのなら 堕落しても腐敗を許さない 冬の懐に仕舞われて ひとつの死(あるいは詩)の公式が 晴天下の雲雀の囀りと落下のように 証明を終えるだろう 廃止されない奴隷制度が わたしの目からわたしを覗く とめどなく熱を奪う ゆきはましろな万人への告訴状 肥えた舌は焼かれ餅のように膨らみ爆ぜよ 打て!     撃て!        討て!  わが欲望の透明な臨界  満開の奢りの中で 不在という概念と刺し違えてほどけ去れ この有罪こそ救済         《安全地帯の変死体:2014年11月13日》 ---------------------------- [自由詩]乖離の音/ただのみきや[2014年11月29日22時19分] わたしはわたしの詩の中から 書いているわたしを見つめていた ある日それは贅肉を削ぎ落とす行為 やがて臓器を切り売りして かつて愛したものの首を絞め 部屋中に灯油を撒いた 見限ることにしたのだ わたしはわたしの詩の中から 世界を見まわしてみた あれほど憎らしかった喧噪が 夏休み前の終業式の鐘の音か キリストの再臨を告げるラッパのよう 空白を飛び越え憑依する 猛々しく巨大なグッピー 遠く青く 狼煙が残された       《乖離の音:2014年11月29日》 ---------------------------- [自由詩]時間がないのに/ただのみきや[2015年1月10日20時02分] もったいない と みっともない が 朝から口論している 板挟みのわたし ポカンとしたくつ下     《時間がないのに:2015年1月10日》 ---------------------------- [自由詩]憑き身月見て/ただのみきや[2015年1月28日19時48分] 奇天烈な手つきで 狐憑き 月のツノ触る 淡い間(あわい)の 睦言夜ごと 霊(たま)の緒からめて 落ち戯れて 指きり含んだ口の中 だんご捏ね 味見 うめ 咲くな さくら 白子の肌染めて 産め 朔に ほむら 盲いて汁粉かな            《憑き身月見て:2015年1月24日》 ---------------------------- [自由詩]雪のとけた校庭で/ただのみきや[2015年4月1日18時34分] 「みんなが俺を蹴りやがる 逃げても逃げても追って来る 囲まれては蹴りまくられて 仕舞には頭突きでふっとばされて 時には拳で殴られて そんな毎日 地獄の日々―― 」 「みんなが私に夢中なの 渡したくない人 奪いたい人 私を中心に みんなもう必死 追いかけられるのは最高の気分 拍手に歓声 高らかな笛の音 それが人生 輝く毎日―― 」 なんて言わない思わない 中身は空気のカラッポ能無し 地球ほども円くって 兎みたいに跳ねたと思ったら 大砲みたいに飛んでった 泥だらけのサッカーボール          《雪のとけた校庭で:2015年4月1日》 ---------------------------- [自由詩]『ラッキーストライク』  卵から始まるはな詩?/ただのみきや[2015年7月4日14時08分] はい 間違いございません わたしが?ラッキーストライク?です 本家本元  「首相投卵事件」以来 多くの有名著名人ばかりを狙った スロウアンエッグテロリスト 今や多くの模倣犯が現れて 巷でしょっちゅう起きている 投卵事件の生みの親 ?ラッキーストライク?本物です 鬱憤晴らしといえばそうですが ただムシャクシャして速行動って訳ではありません わたしはね わたしなりに世の不条理や運命の冷酷さを 何年も何年も悩み想い巡らし考えました おかげですっかり脱毛症になり 卵みたいになっちまって ますます運命を呪いましたよ まあ結論から申しますと ささやかな「運の再分配」というところでしょうか 成功者 人気者 権力者 マスコミや観衆の前に颯爽と出てきた所を いきなり生卵が直撃する それも必ず顔面ど真ん中 驚きと恐怖 その無様な姿の 写真や映像が津々浦々まで行き渡る わたしはね 母方の姓が首相と同じでね 名前の方が一文字違い なんか親近感を持っていて でも同時に なんでわたしはこうも運がなく 人生の最下層を生きているのかって どうしても我慢がならなかった だってほら しゃあしゃあと 国民の安心とか 働く人のためとか  いっこうに何にも良くならないじゃないですか なのにスター気取りで中身のない演説して すごい給料じゃないですか首相って たんなるパペットでしょうあれって だからね 最初の一投目は首相に決めたんです 衆院選の応援演説 ドーラン塗った顏のど真中 炸裂したって訳ですよ ほら去年大リーグに移籍した セ・リーグの嫌な投手がいたでしょう しょっちゅうどこかの局の女子アナと くっついたとか離れたとか まあマスコミも馬鹿なんだけど あんな男が女性から大人気って言うんだから 世も末ですよね 全く わたしもこう見えて高校時代 ピッチャー兼外野手でした 肩の良さもコントロールの良さも 県内屈指と言われたものです ところがね 県内予選の第一試合で 何処と当たったと思います そうあの馬鹿野郎の高校とですよ 県内ではライバルだったんです ところがね うちのチームは打撃が弱かった 一回戦敗退です わたしはこれといった活躍なし そのまま野球人生も終わりました あいつは県内予選を勝ち抜いて 甲子園の決勝では投手戦を制して優勝 プロ野球選手になって 契約金が何億って 美人アナウンサーを とっかえひっかえってあんた おかしいじゃあないですかあ! だからやったんです 卵を投げたら遠投でもコントロールでも 負けやしません これは正当な復讐です わたしにはその権利がある お分かりでしょう そう あのIT企業の社長 ?時代の寵児?って良くテレビに出ていたあいつも やりましたよわたしが あれは最高でしたね 腰を抜かしたって言うじゃないですか あの怯えた顔 見咎められた小悪党感丸出しで 実家は養鶏業でした わたしは卵の扱いが長けていまして 三歳で五個 五歳で十個の卵を自在にお手玉したものです 養鶏業者の運動会では卵キャッチボールの種目で 兄とペアーで百五十八メートルを記録して優勝しました いま思えば良い時代でしたよ でも長い不景気と親父の賭け事のせいで 養鶏場が他人の手に渡ってしまい その頃からわたしの人生は狂ってしまった ――自首した理由ですか? 簡単に言うと生きる希望を失ったからです わたしが卵を顔面にストライクさせた連中がね みんなどういう訳だか人気が上がったり 幸運に恵まれるんです あれ以来首相の支持率はV字回復し 馬鹿ピッチャーは優勝の立役者となり 人気絶頂で大リーグへ移籍 あのアホ社長の会社の株価も わたしの卵が命中して以来急上昇 マスコミがつけた呼び名なんですよ 「ラッキーストライク」は まさかとは思いましたけどね 偶然がこんなに続く訳もないし 試してみたんですよ 有名人ではないですけど 知り合いに会社をリストラされた男がいまして 奥さんにも逃げられて 借金もある まあそんな兄弟みたいな男を狙うなんて ちょっと気がとがめましたけど 実験ですからね 待ち伏せして  命中させましたよ どうなったと思いますか そいつ次の週には再就職が決まり 競馬で万馬券を当てて 若い彼女ができったって言うじゃありませんか 信じられます? でも本当なんです それでわたしは決心しました 実は わたしにはずっと昔から 想いを寄せている女性がいましてね その女性が五年くらい前から悪い男と付き合いだして もともと清楚で愛想のよい人だったのに 純粋なだけに染まりやすかったのか あっという間に変わってしまって 髪は金髪で裸みたいな服 腕にはタトゥー いつも咥えタバコで 昔は 目があったら会釈してくれてね 嬉しかったなぁ だけど今じゃ目も合わせてもらえないし 目が合ったら合ったで汚いものでも見る様に でもね あの人はどう見ても幸せじゃなかった 悪い男にそそのかされて無理していて 見ていられなかった それでね 彼女を不幸から救おうと心に決めた訳です わたしの卵を命中させて わたしはこのミッションを ラッキーストライクの最後の投卵にしよう そう決めたのです そうして決行しました あの人が夕暮れの商店街から橋を渡って歩いてくるところを 真正面からです わたしは最大のラッキーを願って投げました 外しはしません 当然 顔面ストライクです 立ち止った彼女に駆けよりわたしは叫びました 「これでもうあなたは自由だ わたしがあなたをきっと幸せにします! 」 すると彼女の真っ赤な唇から 卵まみれの咥え煙草が落ちて アスファルトの上を転がりました ええ たぶん ラッキーストライクが── そうして 彼女はわたしの股間をおもいっきり蹴り上げ ハンドバックの金具の部分でこめかみを二度三度殴り 倒れた私を鋭いヒールで十数回にわたって蹴り踏み 罵り 唾を吐きかけ 立ち去りました わたしはその後 失神したようで しばらくして意識が戻り なんとか歩けるようになってから こうして 警察へ出頭したわけです ――刑事さん そんなに  笑うことはないでしょう            《ラッキーストライク:2015年5月24日》 ---------------------------- [自由詩]秋・湿傷/ただのみきや[2015年9月23日11時55分] 雨 いつのまにか 静かな吐息のように  染まりはじめた黄葉から ひとつ ふたつ しずく おち 中空(なかぞら)はしっとりして 往くトンボたち ゆるやかに すこし乱れて   青い海へ沈んで往くあなた   平和な国で殺されたあなた   乾いた銃声が容易く奪った   把握されない数も知れない   あなたわたしでないあなた 別世界とでも言おうか まるで   いくらでも近く     いくらでも遠く 居れるだろう 心腫らすのみで   いくらでも近く     いくらでも遠く 現実と情報 ずぶ濡れになって 雨 ざわめきだし 節くれだった枯木からも ひとふたみつしずくつらなれば 逃げそびれた トンボふるえ 広すぎる空に往き場なく              《秋・湿傷:2015年9月21日》 ---------------------------- [自由詩]あんぐれら/ただのみきや[2015年11月4日20時13分] 誰かを磔にしたまま錨は静かに沈む  泥めく夢の奥深く月の眼裏火星の臓腑まで 黒々と千切られた花嫁が吹かぬ風に嬲られる  カモメたちは歓喜と嘆きをただ一節で歌った 私刑による死刑のための詩形おまえは言葉の焼石  熾火がすべて灰になり人は無に囚われる 浅瀬もなくただ己の中に座礁した水夫たち  時は抽象画のように見る者を停止させる 主役を奪われ脇役にすらなれず観客のまま  ページの向こうが裏表紙であることに唖然として 時々記憶が戻ったかのように点滅すると  尖った思考が遠く流されて往くのが見える その水面下は氷漬けになった巨大な腫瘍  かつて幼子は浜に上がった母のぬかるむ死体を見ていた 自分を抱こうと指先からゆっくりと開く白い扉を  海神などいない痩せ細った海は異物化してザラザラ 男たちはパイプに火薬を詰める痛みを載せたロケットだ  女神を抱けばアンクレットの鈴が響き甘露が降る 錨で繋がれたまま赤錆びた霧を吐く精神の鉄屑は  乾いた快楽で死を綴る三百年生きたアシカの目                    《あんぐれら:2015年11月4日》 ---------------------------- [自由詩]はかないで/ただのみきや[2016年4月6日20時42分] 蛇はひと口咬んで あとは丸呑み 四の五の言わず呑み込んで ゆっくりと消化する 蜘蛛は牙でひと刺し 注射して中身を溶かす あとはハンモックで横になり ゆっくりストロー 蛆は胃液を吐く 死肉を蕩かし粥にして 頭を皿に沈める成長したくて まあ食べること食べること 人はしっかり噛んで よく咀嚼しなければならない 固いものだって噛めば噛むほど 味がわかってくると言うもの 牛にはかなわない 反芻し再び噛みしめより深く納め その乳は他人だって養えるし 死んでも残せる糧がある こっちは儘ならず 養ってくれた糧ほども 美味くて滋養のあるものなんて 振舞おうにも残そうにも 翼を切られたオウムが誰かの 滋味のある声色を真似ている お喋りは的もなく散らされて 鳥は壊れたラジオになった ぴーぴーがーがー もとの声音はどこへやら             《はかないで:2016年4月6日》 ---------------------------- [自由詩]うさぎのダンス/ただのみきや[2016年9月24日22時01分] 赤い目をしていま なにを読み どこを跳ねるのか あなたは謀った 和邇(ワニ)たちの背を戯れ跳ねながら 目指すところへ近づいた時(それは幻想だった) 傲りと嘲りが 鈴のように唇からこぼれて水に跳ねた 美しい余韻 裳裾のたなびき ――素早く誰かが捕まえる! 和邇(ワニ)たちのハはあなたの衣を剥ぎ取った 兎のコスプレもハンドルネームも みみず腫れの感情は膿んでもチを流さない ただカラフルな砂粒が口から止めどなく溢れ 見せたい真実だけを切り貼りした 張りぼての素体を沈没させる あなたは重い虚像と括られたまま 渦潮に飲み込まれ 怒りと憐憫と羞恥 三匹の蛭に内側を啜られながら 夜にピンで留められた白黒写真のように 身動きできない孤独の底へ 青い光の砂浜で あなたは神々の呟きを聞いた 八十人の神々が再生の道をレクチャーする 神々には顔がない ただ書き込みだけがある 救済のハウツーの求道者たちに ヤオロズの集合知は量産された天の沼矛を授けた 新しい創造を約束して それは幼児の絵のように素早く描かれ 写真の料理のように完璧で腹を満たさなかったが 塩辛さが乾く暇もなく 爛れた魂の被膜は引き攣った シヲ風を読めば読むほど耐えられないほどに シャットダウンしても声なき声は止まず 回路を敷いて走り回り 止めようとする者を轢き殺した 夢を見る才に恵まれた者は悪夢からも愛されるのか 再び暗い渦に飲み込まれ 乾いた浜辺へと吐き出され 青い光 神々の呟き いつか救いのヌシが訪れて 本当の回復と再生の道を示してくれる そう誰かが言った 神代の話だ あなたの中のあなたが少女の唇で 告発する 挫折した男が酔ってわめくように    《シは手段として訪れて  やがてその座は入れ代わり  目的として支配し  犠牲を惜しまなくなった  わたしは  すでにヌシを殺して  シへと変えてしまったのだ》 ああ肌蹴ハを持ちトランスダンス! だがアメノウズメのようには神々を虜にはしなかった コジキのウサギの ダンスのセンスに 和邇(ワニ)たちは奇声を発し 八十人の神々がほくそ笑む (やつらの実体はウサギ以下の臆病なサギ師だ! ) あなたを洗う真水はどこか あなたを包む子羊の毛 のように柔らかい蒲の穂はどこにあるか 赤い目をしていま なにを読み どこを跳ねるのか               《うさぎのダンス:2016年9月24日》 ---------------------------- [自由詩]歩けや歩け/ただのみきや[2016年11月2日21時01分] ハトが二羽歩いている なにもない場所で なにか啄みながら 啄まずにはいられない 生きるために 地べたを歩きまわらずにいられない うまく歩きまわるには 首をふり続けずにはいられない ヨコに? もちろんタテに 世の中を このなりゆきを 自分を 他人を すべて肯定いたします (本当はなんにも考えちゃいない) ハイハイ へえそう ウンウン なるほど フムフム そのとおり 平和の象徴 おバカの象徴 翼を持っていることを まるで忘れているかのように 足元ばかり気にしながら 首をふりふり 歩くわ歩くわ そうさ食わずにはいられない 生きるために 地べたを歩きまわらずにいられない ペンとノートを放って 翼はあたまの奥へうまく畳んで (少々はみ出し気味だけど) ♪ピンポーン  ♪ピンポーン コンニチハ トツゼンスイマセン  ――タダイマトクベツワリビキデス ――デハマタヨロシクオネガイイタシマス 平和だね 今日の目標 新規4件 今月の目標 新規八十件 あたま下げ下げ 歩けや歩け               《歩けや歩け:2016年11月2日》 ---------------------------- [自由詩]たぶんクリスマス/ただのみきや[2016年12月24日19時59分] 朝早く 家族が眠っている間に雪かきをする でないと外出も時間も困難になるから 白く美しい雪 儚く消える雪 だが降り過ぎるとまったく始末に負えない 気温が下がり切らないと雪は酷く重くなる 汗でシャツを湿らせながら雪かきをする 別に珍しいことではないのだけれど 目覚める前 朝と夜の間にあなたの重い悲しみを 一心不乱にかき出している誰かがいる 冷め切らない傷口から湧き出して あなたの出口を塞ぎ閉じ込める 始末に負えない憂鬱を ――それにしてはスッキリしないって? それほど溢れ積もっていたってこと 少々軋むが扉が開くようにはなっている           《たぶんクリスマス:2016年12月24日》 ---------------------------- [自由詩]お気に入りの一編/ただのみきや[2017年1月25日20時35分] 説明 解説 言い訳 どれも要らないと云った ただそのままで あなたは惹きつける 男が女を始めて見たように 女が蛇を始めて見たように たぶん 美しくて奇妙 エロチックで恐ろしい 縫い付けられた 意識の導火線 なにも知らないこと 正しい出会いとは 食するまでの三秒は永遠の顔 ゆらぎながら凍結する 知りたくて食べたなら 知らないままで食べたということ そうしてすぐに異端審問 サディスティックでマゾヒスティック 拷問は繰り返される  学び続けた人生だから あなたを複写して魂はのたうち回った いくつ針を刺しても固定しきれない 鱗が花びらみたいに散って 散りながら燃えて  燃え尽きて 焦がしはしなかった 誰の土地も 内側に流す涙のように だけど知ってしまえば哀しい玩具 手垢で汚れて往くだけの 古ぼけたお人形 それを傍らに抱いていつまでも 何度でもごっこ遊びに夢中になれるなら ――Imagination!  ようこそ我が家へ だが純粋さもいつしか所作を身に着ける 節回しも朗々と――            《お気に入りの一編:2017年1月25日》 ---------------------------- [自由詩]愉楽の日々/ただのみきや[2017年2月15日18時59分] 光はエロスの舟  夜の海原を彫り進む うすべに色の裸婦たち 西風を脱いだり着たり 死は翅を休める蝶  なだらかな土器の窪みへ そっと脈でも取るように その中で葡萄酒が笑う 四次元的パズル 密閉された宇宙 骨になるのも気づかぬままに ――眠り姫には まずは一瞥 お好みなら口づけで目覚めさせよ そうでなければ素通りを            《愉楽の日々:2017年1月17日》 ---------------------------- [自由詩]春の飛行機/ただのみきや[2017年3月8日19時28分] 飛行機がなめらかにすべって往く そう青くもない春の空 だだっ広くてなにもない つかみどころのない空気の層を 真っすぐ切っているだけなのに こんな遠くまで聞こえて来る ――あれは空気の呻き それとも飛行機の叫びか つめたくて ぶ厚くて つかみどころもないくせに 気をぬいたら最後 こっちをバラバラにしかねない 見えない圧力 抵抗を 真一文字に掻っ切って ああ纏わりつく有象無象の呪縛たち ちくしょうめ! 火を噴くまでやってやる 飛行機がなめらかにすべって往く もう青くない春の空 哀しいくらいになにもない つめたい雲のそのまた向こう ――何処へ?   ――さあ  どこかへ               《春の飛行機:2017年3月5日》 ---------------------------- [自由詩]濡れた火の喪失/ただのみきや[2017年5月3日22時30分] すでに起きたのか  これから起きることか おまえの吐息 ひとつの形のない果実は 始まりと終わりを霧に包み 不意に揺れ 乱れても 損なわれることのない 水面の月の冷たさへ わたしの内耳を しなやかに しめやかに 遡上する 視線を潤ませた青い蜥蜴のように 網の目を潜り抜けた こころとからだ その糜爛した垂れ幕の 衣擦れよ 死産した喃語 干からびた嬌声 螺旋に封じられたまま 不在の真珠からほとばしる幻の海 骨灰よ 分別もなく癇癪持ちの子供になって 幸福のあらゆる模型を壊し尽くす 御守り袋の中身を次々と引き出して 飴玉の包みを剥すように 舌の上でころがして 甘ったるく 溶け去るものばかり 自らに帰した ひとつの遊戯 回り道をした 何度も同じ道を 忘れたふりをして 彫刻のような額を覆う 両の手の 乾いた土くれは 崩れ落ち 枯れ果てた根は顕わ 再び雨に打たれても もう  なにも感じない すでに起きたのか これから起きることか 今朝 街路樹はムスリム女のよう 目には見えない蜻蛉が∞になって 命を繋いでいるのか 光が 少し捲れ 余所余所しくそよいでいた 疑いもなく 死にたがり屋の目が 懐かしい男が 景色の隠喩の向こう 焼け焦げた音楽のように笑っている 揺らめく姿を掴み損ね  溺れる匂い 振り向けば 扉は閉じて                《濡れた火の喪失:2017年5月3日》 ---------------------------- [自由詩]がらんどう/ただのみきや[2017年6月3日21時23分] がらんどう でなけりゃ鳴らない 灯りはいらない 隙間から射し込む程度 《外面(そとづら)はいつだって焼かれているさ がらんどうで 鳴かねばなるまい 万華鏡を回す要領 青白い夢の燃え滓の    黒焦げの 不屈の 蠢く心臓の  ぬらぬら血を纏う 業の深い 壊れた時計の    逸脱した 歯車の ――言(こと)の音(ね)の 匂い がらんどうにはガラクタが 片手に余る程度 それで十分 密閉された光響く薄暗がり こころうつろことばうつし うつろう水のよう 微かな傾斜を捉え 捕えられ ――何処へ         《がらんどう:2017年6月3日》 ---------------------------- [自由詩]世代論/ただのみきや[2017年6月21日21時30分]   ――水脈を捉え ひとつの 薬湯のように甘く  饐えて 人臭い        廃物の精液               輸入された どれだけ銭を洗っても どれだけ子を流しても          粉ミルクを溶いて      飯を焚いて 油膜に浮かぶ幻は     死者も生者も選り好みしない     排他的寛容で         呑み込んで      流れ 流れ ナガルル        大蛇文明の              赤銅色の細波に   あやされながらゆがむ顔            顔                      顔            顔 顔  顔顔顔顔顔顔顔 顔       顔           顔         顔         吐き戻したくても           洗濯機が     リピートする        主語のない    押し花にされた             ヒトたち      焦げ付いた念写           増殖するハーモニー    視線から突き出す曲った金属片           嗚呼青嵐の自死同盟   全ての文字を剥ぎ取られた       あの知の愚鈍なのっぺらぼうを              発育不全の指で執拗に犯せ          甘やかされたことを自慢して叫べ      朝明けの小舟の上で  二つの腐乱した月が      眠らない    眼球   魚  魚 魚  魚 魚  魚         魚 みんな酔ったがみんなじゃない       亀裂の役目を負った者たち               同               時               多              発             的            発(赤)狂            吐 血として シタタル 芸術文化                    タ                    リエルか 舌足らずの  夜肌に墨を刺し        倒れ          壜は 寓話か               らっぽ の      選ばれた        必然として       生贄は      天才は       本物だったか         偽物だったか 鈍い音 かぎ裂き 断絶の             小面うふふ                   盲目の弄りで                    黒曜石のイマージュ            つけろ            傷を            傷だ           傷つけ          傷つけろ         傷  切れ        傷  切れろ       傷  切らレろ      傷 切らレヨミヨ     よ メ よ止まずに    快楽の包み紙をそっと破ル 腹いっぱいにナルナ誰も       羞恥ヨ    無事には帰すな      寄せては返す 人も泡も  傷として     烙印ヲ皮膚とせよ 時代の臍の緒だ      恩赦はない       無音爆破された空ビン 星降る肉体 灼熱の    めくるめく      煌めきの回遊が        肉を喰らう肉にすぎない者たち   涙も小便も赤い     平和を心底憎んでいるかのような        書きかけの死を                   投函せよ過去へ未来へ            愛も憎悪もプラスチックの     あれはよくできた甲冑で              人型の なか身はSF 古き良き時代の未来           字幕を横切る                蝶               軽いステップで          おまえから抜けだした     ひどく憂鬱な日に          雨を降らせる音                  の配置             見えない   雨漏りを         脳は見た       天井画を描きながら                 おまえの脳は                   だまし上手                   騙され上手             恐れなくていい   理解という誤解          誤解という理解                 気分だけの――                  《世代論:2017年6月21日》 ---------------------------- [自由詩]青い裂果/ただのみきや[2017年6月24日13時44分] 青い裂果     光の手中に墜ち さえずる鳥 ついばむ鳥 文字へと変ずるか 黒く蟻を纏って 大気に溶けだす肉体は祈り 小さな動物の頭蓋のよう 未満の種子 生を宿すこともなく 成熟と血脈から絶たれ 自他の境を失った やがて他者へと 遍く 薄められ 青い裂果    赤い鉄の匂い 招きに集う悪食のぬめる眼に 映る あどけなさ真白く 渾身の 鈍器の一撃に似て             《青い裂果:2017年6月24日》 ---------------------------- [自由詩]暮れないまま/ただのみきや[2017年7月15日20時34分] 滲む濃紺のシルエット おくれ毛ぬれたその耳を塞いで いたのは 誰の声だったのか 小さな手から逃げ出した 風船は 空いっぱいにふくらんで  音もなく 破裂した 大人びて寂しい 始まりと終わりが一つのような 夏の日に かつての やがての 小箱の中の永遠に            《暮れないまま:2017年7月11日》 ---------------------------- (ファイルの終わり)