木立 悟のおすすめリスト 2020年10月28日9時37分から2021年11月28日0時17分まで ---------------------------- [自由詩]雷を髪に飾ることはできる/ふるる[2020年10月28日9時37分] 雷を髪に飾ることはできる、とあの人は言いました。 プラスチックの黄色い髪留めのことかと思いました あるいは単なる冗談なのかと 朝食は取らない主義で それはお腹が弱いから 薄紫の傘が立て掛けてあり 雨の日は思い出します 話の前後がわからない 話がよく飛ぶ それだけで疎まれた マフラーは黄色が似合っていた 冬は何かと寒いので おでんの煮たまごが嬉しい 正解はここにある 温かいおいしさの上に 小さい頃から知っているとはいえ 空白が長い 共通の思い出をもてあましている 子供の単なる冗談など 風が囁きから嘆きにかわり また冬でした 冬になると思い出します 小石を蹴りながら帰る癖 今はどこかにいってしまった癖 手を繋ぐのをためらったのはどちらから 工場夜景見学に誘われて 重たいカメラに触らせてくれた 誘える人が他にいなくて 夜は怖いから 夜をいつまでも怖がる 震える手を繋いで少しだけ 歩きたかった 今度はこちらから誘おうかな 理由は何がいいだろう 一人ではだめな理由 二人三脚とか ぐらついた三脚を押さえてもらって 天井に星をぶら下げた 文化祭はお化け屋敷が人気 うちのクラスには閑古鳥が鳴くけれど 別にそれでよかった 学食のおにぎりは唐揚げにぎりがおすすめ ご飯に唐揚げの味がうつって美味しいから 絶対に食べてね それから 缶のココアを間違えて買ったからと言ってくれた 好きだけど 缶のココアはめちゃくちゃ甘い 残りが残ったまま持って帰った 冬なので息も白く マフラーに半分顔が隠れて話しやすい 目をそらしがちだけど 見ていたかった 世界史の教科書 生物の図解 電子辞書 出ない赤ペン 一緒に居眠りしている 後になって気づく 穏やかな時間だったと よく思い出せないけれど マフラーは黄色で 口が埋もれて見えなかったのが 良かった 泣き顔を見たときに 親しい関係でないことがこれほどつらいとは知らなかった すぐに触れて慰めることができない 理不尽な不自由 ココアの缶がまだとってあって べつにプレゼントされたわけでなし 捨てればいいのに いつでも捨てられるから なんて だって温かいからね そういう気持ちとかは 誰にでもは無理で 多分ずっとあって だから捨てない 多分この困難を乗り越えたら ずっと成長できているだろう 悲しみの中でも笑えることを覚えて 少し もう少し ここは観光地で秋はにぎやか バス停に人だかりができて 乗れない人は呆然とする なんてことは地元の人なら知ってる 何度聞いても内容が分からなかった 電子工学を新しくするための研究の研究って 役に立つのかどうかは きっと生きているうちはわからない でもするんだ 誰ががやらないとね マフラーについた雪の結晶が すぐに消えてしまう 思い出はそんなふうだから 何度も思い出して作り直さないと でもどこかには残っているから 引っ張られるのだと思う 触れていい許可を得るために告白するんだろうけれど 一番は泣いているときに慰めたい その役目を担いたい 何故そんなふうに思うんだろう 自分ではない人なのに ただ知っている人で 笑いかけてくれるというだけなのに 大学も就職も離れた場所で 久しぶり過ぎるくらい久しぶり 変わっていなかったのは 嬉しいし不思議 相変わらずお腹は弱いのかな 約束の雷 と言ってあの人はわたしの髪に触れました。 ---------------------------- [自由詩]栗のスープ/ふるる[2020年11月14日22時51分] いつしか、 日は暮れていて足元は寒くなった ももに置いた手は静かに落ちた しばらく眠っていたらしく 目の前で遊んでいた子たちも いなかった こうして一人の時間が増えたかわりに 雨や落ち葉が隙間を埋めに来る なかなか上手くできていて 窓辺に座って黒ぐろと光るカラスを見たり 夕陽を薄い頭で受けたりして 退屈はしていない ほとんど何も考えずに夕食の支度はできる 毎日作っている 気がついたらできていることもある 少なからず できる料理は増え ケチャップやマヨネーズなど足してみては やめてみたり 来る日も来る日も不足のことで困るけれど 劇的な変化や改善策はなく 日が落ちれば 生きる仕事はとりあえずこなしたといえる 身体は老いの盛りの登り坂 中身はがらがら 焦りや不安がいまだに寄りそって 欠けた茶碗が気に入っていて捨てられない 笑い 泣くたびに 激しさはなくなりほわほわと幼子の髪のよう 小さな君が何かよく分からないものをプレゼントしてくれて 分からないなりに嬉しいことが嬉しく 熟練の技という感じ 生まれて初めて生の栗から、 モンブランを作ってみた ゆでて、くりぬいて、混ぜて、木べらで裏ごしして こんなに頑張ったのにまだ 木の実の味しかしない ラム酒を入れてやっとモンブラン あの味ラム酒だったのか 買いすぎた栗にも発見の二文字 何十年生きてもやったことがないことには初めての沸き返り つくづく見る栗はつやつやのカブトムシの良さ 栗のスープとやらも作りたい そうこうしているうちに十一月 と思っているうちに十二月 よくわからなかったプレゼントは 逆さにして後ろから見たら人だった 焦り、不安、おびえ、 雪山を凍りながら下る川の水のように 鋭利で駿烈な感情 それらは今しかない 無駄なことは浴びるほどしたらよくて 後悔しても忘れる時が来る 生きる仕事といえば 食べ物、言葉、自分自身を 入れては出す単調な作業 シンプルな中に熟練の技を光らせ 生ゴミは夏場は凍らせておき プラゴミは細かく切り 楽しめるのかどうか 今は何も楽しくないだろうけど 羨ましい その 自らを否定し斬りまた縛る力の強さなどは 自分のことばかり考えるというのは 叶わぬ恋をしつつも希望は捨てていないようなもの 君の身体は光っている 暗闇だとよく分かる 言わなければ分からなかったか 悲しみで身体を包んでいる 贈り物みたいにしていたら 誰かに届いただろうか 喜んでもらえただろうか 記念日のように きれいな人の心を読みきれずに とんちんかんな受け答えで笑われた そんなようなものが 心に残っているからいつまでも眺めている 健康診断の途中で帰って来た そういう人でいっぱい 街は健康とは関係がなく 赤と緑の点滅が震える やがて 白く凍る 胡桃もひとりでに落ちる 幼い君には重すぎる願いだろう 忘れないで欲しい 何かを 何であるかとたずねたこと その疑問符 よくわからない人の形 いつしか、 秋は暮れきった 冬がまた始まる 君と同じくらいの頃は毎冬 バケツの水に張った丸い氷を外して 叩き割ってから学校へ行った 毎日だった やらなくなったのはいつだか 何故だか 診断の結果に興味はない 目が年々しぼんでいくのは困る そのうち閉じて枯れ落ちる まぶたの 花びら 数少ない友人にとり残されて 残された日々 足りないものを埋めようとして歩いている人の側へ行く 誰もが無言だよと 誰かが言う ---------------------------- [自由詩]なんかいも忘れなおす/はるな[2021年3月11日14時30分] 高いところから 低いところへ、 広いほうへ 明かるいほうへ 夥しい言葉の群れが かたまり 解れ、また 縺れ しまいに いちまいの 布のようになった それを拾いあげ 畳んだり 伸ばしたり 切り裂き、繋ぎ 型に嵌め 指を包み、 汚れ、それを洗い、 日にさらし、風にさらし、 ちりぢりと ほつれてゆく やわらかい 襤褸をまとい 高いところから、 低いところへ、 明かるいほうへ、 広いところへ あらゆるものの流れが とめどなく 途方なく 眠ってもいないのに 目を覚ます、 何回も、何回も 何回も 覚め続ける ---------------------------- [自由詩]みちゆき(ブラウザにより意味不明になりますすみません)/ふるる[2021年7月20日17時45分]  一段下がったこの一行目を歩くみちゆき 二行目には何かの展開が来るはずで 三行目ははなから期待してなかったけど 四行目の隣に        かわいらしい花が咲いている のを見ていたら六行目に辿り着き     それから     それから    さらさら川は流れ    それからの橋 を渡ったところに 十行目で待つと言っていたKがいて Kはいつでも作者の都合よく 微笑んだり悩んだりしているので 次の行で仲良く連れだって行こうよと言うと いいよと返事 あ 二人で   ぴ  ょ   水たまりを   ん    越えて よろけて笑ったりなどしてもう 二十六行目についたはるか遠くには同じ形で  山   山   山 がそびえている  青緑  緑   深緑 といった具合でさわやかな風も吹              く 角を曲   が   り   ついたところは最後の行ではなくまだ韻を踏みながら行く   バク   スカンク   バイクで   スイカを買いに行くのか二匹白黒同士で仲がいい私たちは何台も来たから   バ   ス   に乗る         この停留所には停まりません   あと二行後に停まります  ここで降りるまだまだ行くあしひきの山 本さんちはすぐそこだからぬばたまの黒 瀬さんちも隣だしちはやふる神 名さんちは次の行せをはやみ岩 田さんちはここから十七行先でここではちはやふる神名さんが回覧板をくるくる回している道は交差していて     ド  ク ー   ロ  ー ス ド を渡りひとまずロード……の時間が長いといらいらするねゲームの話 まだロード中……(このフィールドはどれだけ広いのかというゲームの話) 岩田さんちはここで オープンガーデンがあるので入ると 素敵な花 花 ハーブ 花とあり 奇妙な段     差                  が                            ああっ                   穴に                  落ちた                   じめ                    ん                  誰かー       いませんかー?                   ああ          深い穴でじめっぽく不快          一緒に落ちたKを見ると そろそろ他の詩や小説に戻らなければならないんだけど出られなかったらどうしよう             どうしようもなく               Kと二人絶望                   感が                   あっ                横穴がある                    ず                     っ                   と                    横                  を                  進                 ん                 で                出               る              と            外だ       右が散文で左が詩とある こちら詩の方は海辺で星の砂と思ったら 歌の砂 歌は沢山ある 浜辺では 猫がおわああと鳴いているし 四人の僧侶が手を振っている 無表情で体操をしている人もいる 赤い手押し車が輝いているし 一つの波が来て これは不可解な船旅になりそうでも 行く     波にゆら  れて      私と         K   の中では       不安と                 期待が      みちて         ゆきて              みち ゆき        ---------------------------- [川柳]ムンク/ふるる[2021年11月28日0時17分] 月があるから地球はまだいい星 ビニールで包んだプレゼント丸見え 川があっちからこっちへ流れてく 星は動いてるんだろうけど分からん 太陽当たり前過ぎて感謝できん 内臓に意識を向けても寒いまま 右脳と左脳分けてないけど二人 ブックカバー脱がしてから読みたい派 ご飯炊けた匂いは正直微妙 ムンクって力んでるよね むん、クッて ---------------------------- (ファイルの終わり)