北大路京介の梅昆布茶さんおすすめリスト 2015年12月1日11時18分から2017年11月7日20時42分まで ---------------------------- [自由詩]priceless/梅昆布茶[2015年12月1日11時18分] とびっきりの笑顔ひとつください おいくらでしょうか? こころの痛みを鎮めるお薬ひとつください どこかにありますか? 曇りのない青空のもと もうお気に入りの傘も要らないと 言ってくれませんか? もう想いだせなくなった町並みに おもかげだけが去来しているように 蹴飛ばした缶蹴りの缶が いつか戻ってくるとは信じていないのに お気に入りのフレーズを口遊みながら 今日も彷徨うのが好きなようなんです 斜めに入ってくる陽の光にヤマハのFG-130が光っています いずれにしてもなにかプレイヤーになりたかったのですから 爆買い爆睡エモーショナルレスキュー 僕たちは五大元素でできているスケアクロウ かぎりなく空間を縮め はてしなく市場を開拓し 圧縮された時間と感情を生きている あさ7時にあくコーヒー店に ちっちゃな行列ができるように ぼくのなかのかたちのないものが 順番を待っているのでしょう 答えはなくてもよいのです キースリチャードのギターが ときどききければいいだけなんですから ---------------------------- [自由詩]季節はずれの蜃気楼/梅昆布茶[2015年12月7日1時01分] できの悪い推理小説のプロット 夢の死に絶えたファンタージェン 造物主のいない創世記   すべての夢がわずかな因果の隙間に託されるなら いつもつまずいている僕はニッチな日雇い漂流生活者 習うより慣れろとか 経験や真実は様々なかたちで いろんな方向からやってくるけれども 僕は通過儀礼的な試験に臨んでいるわけでははないし そんなものはすでに自己検証もないまま風化してしまって 的中する馬券はまずめったには舞い込まないだろう 僕は狭いところで夢を見ているだけなのかもしれないが ちょっとは時々は中毒になるんだ 酒 女の人 煙草 音楽 思想 そして詩人という僕とあなたの蜃気楼 僕らはたぶんどこにもつかえない通貨を貯め込んで そのおもみでアトランティスのように沈没するのかもしれない ローレライのように通過する船を待って 呪いをほどこすほど魔力も歴史もないから ラインの美しさをおもいながら 唯々ウインナーワルツの 踊ったこともないステップを 夢見るだけなのかもしれないし でもあなたの蜃気楼も とってもすきなのですから ---------------------------- [自由詩]風とスケートボードと/梅昆布茶[2015年12月13日20時15分] 継ぎはぎだらけのタペストリー 隙間から柔らかな風が吹いた気がして 離島が点在する 静かな海をゆく船を夢想する 日常は羅針盤もないスケートボード リュックひとつでバランスをとって乾いた舗道を滑ってゆく 時計はなぜか少しづつ狂ってゆくままで その小さな差異がきっと僕のほんとうの成分なんだろうと想う 舗装の継ぎ目の僅かな衝撃が区切ってゆく毎日 風のゆらぎを追いかけてまた滑りはじめる ---------------------------- [自由詩]時間、ありますか/梅昆布茶[2015年12月22日23時33分] 生きることは単純なことの積み重ねなんだ 難しいことは何もないはずなのに躓く 躓くところから物語は始まるのかも知れない ただ対処する方法がわからないだけ たぶん物事に正解はないが解決するちからが必要なだけなんだろう 整理するべきことも沢山かかえながら 指をくわえて見ていたってなにも変わらないんだという ラジオから流れるメッセージにうなずいて メビウスリンクのような光がながれるスカイツリーが 夜に浮かんでいる辺りを走り抜ける 次々と要求されるパスワードにちょっと疲れているだけなんだ いくつものドアをノックして誰にもあえない街に迷い込む 路地裏の野良猫も彼の世界観さえなかなか教えてくれない街に 生きることは些細なことの連続でたぶん それがあなたの傾向や嗜好や生理学的なシルエット やわらかなあなたの内部に深く浸透してゆくあいだに あなたが変化にきづかないうちに変わってゆく 幾千もの夜と昼を経ていつか光のなかへもどってゆく 意味なんていつのまにか粉々に砕け散ってしまうものさ いつかあなたの特別な物語を聴きたいんだが そのときは時間をとっておいてくれますか? 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俺の寿命よりはちょっと永過ぎるから きょうの朝を 楽しむことに決めてみたんだ ---------------------------- [自由詩]えーと。。/梅昆布茶[2016年4月12日12時38分] 頻繁に人にであうでもない この生活にあまり不満はないのだ ベランダの脇の雑草がどう伸びようと 有る意味僕のそとの世界のできごと 疲れている意識もなるべく解消しようと 優しい母や鬼嫁も懐かしく いつもきみを牽引している言葉が欲しい 拙かろうとすくなくとも君なんだな 酔っぱらってばかりはいられないので 21世紀の最初の精神病患者としては ただしい狂気のありかたに したがうしかないのです ---------------------------- [自由詩]実験工房にて/梅昆布茶[2016年5月3日12時29分] 実験工房にて 神学を爆破する導火線に 火をつけてみる 解体工房にて 蔓延するヘイトスピーチの 舌の根を根絶する スナイパーロボットと 遊ぶ あの建物は もう誰もいないのに どうして建ってるんだろう 僕は誰もいないのに どうしてここに 立っているのだろう 滑り台からひそかに すべりおりてくる 僕の三つ子の魂を 待っているのだろうか もうなにも 持っていないから 新しいことができる 実験室で やっと 愛とかいう 迷惑な成分を 合成することが できるのかもしれない ---------------------------- [自由詩]使命/梅昆布茶[2016年5月5日11時12分] 束縛されない生なんて一時も無い 愛しきれたひとなんていなかった 孤独は平気だが 孤立しては生きてゆかれないから 哲学書を逆から読む 偏ったじぶんの人生観の途上で ニーチェや仏陀に出会ってかってに恩師とおもう 神秘主義ではないほんとうの素敵な謎を 奇蹟ではないあたらしい地平線を 支配されない束縛しない ただ死にむかって生きる自分を肯定しながら それでも最期の瞬間まで夢を紡ぐ ひょっとして こんなことを 使命とおもっているのかもしれない ---------------------------- [自由詩]窓から見える曠野/梅昆布茶[2016年5月7日20時21分] あるとき哀しみがやってきて 壁紙を引き剥がし読みかけの テーブルの上の本を引き裂いてゆく 暗幕で覆われた部屋には夜しかない そう曠野はいまこのこころに映る風景なのだ それでも半額のシールの貼られた 総菜弁当をレンジで温めながら 生命はなにかを維持しようと歪み 撓みながらもかたちを保ち続けるものだ 喜びばかりが陳列されているわけではないショーケースには ところどころにぽっかりと空洞のように穴があいていて 僕らはかつてそこに何が並んでいたのかさえ もう思い出せないだろうが いまはそれでよいのだろうとおもっている その部屋はいつまでもとっておくわけにはゆかない 望もうと望むまいとにかかわらず常に模様替えされてゆくんだから でもときどきあの部屋の佇まいを思い出すことがあるんだ ---------------------------- [自由詩]孤独の断章〜アレンジメント/梅昆布茶[2016年5月10日8時42分] 孤独はいまも継続中だ それが常態となってしまえば たいした痛みも感じないものだ ときおり非日常にきみがやってくる それは僅かな恩寵でもあり かすかな煩悶でもある きみは花をアレンジメントする もう心の探り合いなんて要らない 単純な美しさを夢想している それは天の星の配置のように 緩やかな時の解れのように この素敵な世界のやさしい 地図なのかも知れない これはただの夢だとは わかっているつもりなんだ 孤独ってしぶといぼくたちの根幹なんだから あたらしい娘とであうような顔をして ちょっとO型にしては繊細な上海生まれのきみと 吟遊詩人にもなれないし 友情だけでも生活できないし 新宿の北海道メインの居酒屋で 僕はかってに北方のジムモリソンみたいな シャーマンを呼び出して きみのアレンジメントに少しだけ 自分の花を紛れ込ませる もうドアーズみたいには いきてゆけない時代だし だれもいつも混沌をなかなか 整理できないでいるみたいだ リザードはちょっとだけ 冷たい床をさわって そしてじぶんの生活にもどる そんなようなことだ ---------------------------- [自由詩]愛撫へのエチュード/梅昆布茶[2016年5月20日7時27分] どうも世の中は愛撫に肯定的ではない 君の乳暈的世界で僕は日夜トレーニングを怠らないが 硬骨魚は自分の砦と離島に棲むのが好きだ でも女は快感を要求しボンネットが揺れるだけ 柔らかな肉の隙間の襞に愛は溢れるのだろうか? 中川イサトがたぶん1960年代だとおもうが 僕と君のラブジュースとかいう曲を発表して すぐに発禁になった記憶がある 低次元は低次元で生きる術もあろう 時代のなかで意義有る低次元 時代を喰らう権力という低次元 もちろんどちらにも加担せずにストーンズのアンジーを聴いている俺 酔いどれたままでは生きてゆけないのと同様 覚醒したままではそのうち気が狂ってしまうだろう 逸脱したままの西武新宿線の浮遊車両は 幻想の沃野を夢見てひた走る ただインターステラーな夢を追いかけて ---------------------------- [自由詩]ふたたびスケートボードに乗って/梅昆布茶[2016年5月31日18時39分] 恋人たちは喜びをわかちあい 老人達はバックギャモンに余念がない 子供達は無垢に世界を徘徊し 大人達は株価のチャートに気を取られ 僕はといえば太陽に労いの言葉をかけて しけた煙草に火をつけて君をけむたがらせてばかり 入管法違反の僕はいつのまにか日本人に成り済まし 何食わぬ顔で近所のおばさんに挨拶している 金欠になると一日五百円生活をはじめるのが恒例で いつも僕の脳内はもの悲しい祝祭に満たされ えせ吟遊詩人はいちばん安い言葉の部品を組み立てて ニーチェとシッダールダの3Dモデルを売り出そうと目論んでいる この素晴らしい世界でただしい狂気を実現するために このながいながい下り坂を ちいさなスケートボードで滑り降りてゆく 言葉だけは裏切らないこの素敵な世界を ---------------------------- [自由詩]死者の書/梅昆布茶[2016年6月6日20時14分] 初めて君に遭ったとき 君の瞳によぎった喜びの表情を 俺は見逃さなかった 人生で与えられる物は少ないが 創造という風をいつかつかまえることができたら 上出来な人生といえるだろう 醗酵しない人生は 水面に稀薄に拡がる油膜のようなものだ 孤独は魂のきらめきを高めるが ときに愛のベクトルをコントロールできかねて 人は堕ちてゆく 渋谷駅前の雑踏で俺は夢をみる それはそれは薄汚い夢でも それだけは俺の物だ 俺の頭はすくなくとも今朝は澄み切っている いつも腹ぺこのハイエナではないんだ きみを愛することも出来るし貪ることも 俺は君に永遠に届かない 長い長い手紙を書こう それは歴史書であり哲学でもあり 死者の書でもある愛の詩にすぎない ---------------------------- [自由詩]フィボナッチの夢/梅昆布茶[2016年6月28日22時24分] フィボナッチ数という概念以前に 自然は数理をすべて把握していた 僕の心の中で君との関係性の黄金比は 生物学的に柔らかく深くとても妖しく 揺れ続けているがそれでも 日常の僕はいつも不安定で ときどきハイリターンのレバレッジをかけても そんな容易く人生は微笑んではくれないものだ 自由と責任と愛 様々な要素を満たす数式を 導き出す過程が人生だとしたら その解答が自身のなかにあるなら 僕はまだいきてゆけると思っている訳だ ---------------------------- [自由詩]新しい地平線/梅昆布茶[2016年7月3日20時50分] 路上生活者のように毎日が過ぎてゆく ランボーのように地獄の季節も創出できず 安吾のようにデカダンに遊ぶ余裕も無く 冷たい缶ビールで無聊を凌ぐ 僕の故郷であるペンギン村では あられちゃんが銀河鉄道の車内で 弁当を売っているとか 無駄に丈夫で長生きしそうな僕が 上海生まれのきみに恋をしている 消し炭にもたまには火がつくものである 古いアンプとスピーカーから 逝ってしまったジャニスのブルースが流れる部屋で 新しい地平線が望める丘に何時か立とうと思っている ---------------------------- [自由詩]君と話したい/梅昆布茶[2016年7月5日0時58分] ジムで軽く汗を流した後でも 僕は特別な人にはならない 僕の専門はロックだが 知性に裏打ちされた感性で生きてゆきたいと 思っている ジョーきみに言いたいんだ 書を捨てて街に出よう ひとは何時かは経験値に挑戦するものだ 僕も例外ではない 僕はいつも何かを伝えることを忘れちまって つい自分の乗りを強制したり だからみんな逃げてゆく そんなことはもうこりごりなんで 革命は望まないが いつも僕の前にはハイアーグラウンドが 待っている訳なんだ 誰もひとりでは生きられないが 誰かと死ぬことは出来ない だからこそ 今きみと話し続けたいと思うのだ ---------------------------- [自由詩]僕たちのために/梅昆布茶[2016年7月10日8時20分] 僕は継ぎはぎのコラージュ 君は端切れで出来たパッチワーク お似合いのカップルだと思うのだがどうだろう 僕は季節外れの風車 君は糸を忘れた糸車 似た者同士のような気もするのだが もう雨は止んだし君にキスするにはちょうど良い天気だし それとも二人乗りの自転車で岬まで行こうか 灯台へ続く道はきらきらと不出来な僕たちを待っていてくれるだろう コカコーラを飲み干したら記念写真をとろうね 永遠に子供で 果てしなく年老いて やがて空になる僕たちのために ---------------------------- [自由詩]夕暮れ2/梅昆布茶[2016年7月16日19時24分] 埃っぽい一日が暮れかける ゆくあてもない想いが影といっしょに夕闇に溶けて行く ちっぽけな哀しみを手のひらで転がして ため息にも似たつぶやきを繰り返す 幼い頃母に背を押されるようにして嫌々学校へ行ったこと ねじを巻かれたブリキの兵隊のように感じていた 布団のうえ温もりを残したままのパジャマのなかに まだ居る自分を想像する 夕暮れは様々な想いをつれてやってくる 日によって一日の長さが違う事や誰とも友達になれなかったこと 秋刀魚のわたの苦さのようにそういった味わいも 必要なものと今だからおもえるのかもしれない 濃縮された一日がくるりと翻って 新たな白い皿が用意される 上底+下底×高さ÷きみ=不可思議な森の妖女サイレン 表情のない皿の上に感情を並べる タグのないファイルのように のっぺらぼうの頁が埋もれ火「新たなるパート」の魁 ミステリーツアーを待つ ゆっくりと坂をくだる これいじょう滑らないように 祈るように ---------------------------- [自由詩]ソングライター/梅昆布茶[2016年7月29日12時11分] いま歌っているのだろうか心から 誰かに伝える努力をしているだろうか 僕はソングライターではなかったのだろうか きちんと生きているだろうか きちんと本を読んでいるのだろうか ドラッガーのマネジメントを ニーチェの詩的な箴言を 立原道造の高原の詩と 岡林信康の望むものは 有る意味孤立して生きてゆくことはあたりまえ ハンディキャップのある友とも同視線で それが理想だ 僕はソングライターだ コードを自由には操れはしないが いつか届ける為にギターをチューニングして いつか出会う為に微笑みを用意して きっと出会う為に 歌うのだろう ---------------------------- [自由詩]原始のままに/梅昆布茶[2016年8月9日1時13分] 演繹と帰納 対象化と止揚 ナボコフとアンヌ・ヴィアゼムスキー ダーウィンとジグムント・フロイト 様々な世界観が駆け巡る 数学者は数理に没頭して あまり感情の処理に脳の活動を割かないが 詩人とはどういう人種なのだろう 言葉を組み替える遺伝子学者 大切なものを拾い集める考古学者 それともおっちょこちょいの文筆好きに過ぎないのか サーカスは終わらない永遠に 帝国の逆襲はいまも続いているし 戦場のアームスーツは美しく累積し 平和の歌は遠くで響いている 安寧の日々はいつか風化する 誰もチキンにはなりたくない 君とコーヒーを飲みたいから 暖かく柔らかい君の肉体を 不安定な僕の精神生活を 阿倍野橋魔法商店街を 遺伝子の配列が解明されても いきなり誰かを理解できる訳でもないのだが それでも接触を試みる 僕は自分に満足していないが 満足している友と働く 夜の静寂がかろうじて安定させるもの 僕の細胞をいつの間にか入れ替えてしまう時間に 新たなる反逆を試みる 文明なんてつい最近のことだ 僕はいつも通り原始人のままだ ---------------------------- [自由詩]アリスの夢/梅昆布茶[2016年8月20日23時10分] 運命は変えられるの? アリスは尋ねる 運命なんてありはしないさ きみが夢のなかで存在するように 偏在する夢が現在という一点に 結ぶ露のようなものが人生らしいんだが アリスは頷くと白兎とともに舞台の袖へ退く また不思議な夢の続きを永遠の子供達に伝道する使命に萠えて アリスに故郷があるように僕にもある筈の何かが解らなくて エンディングロールに答えを捜す 昔は夢だけでも結構2,3年は生きてゆけたものだが いまはブレードランナーのように日々を費やす愚か者 夢のなかで心理テストを繰り返す 新宿歌舞伎町の夜のように底なしの淵に立ってるみたいに 僕の人生はドライブレコーダーと保険で保証され 安い女と連れ子4人と古いオーディオシステムと ときどきの新しい地平線で構成されている 論理的解答は数理のなかにあって 文学的解答はあまりに広汎ではてしなく 解をもとめる必要性もなくて ランヴォーのの燃え盛る詩編と 僕のつまらない短詩を比較しようもないが いつも通りアリスに逢いに行く いつも通りに ---------------------------- [自由詩]おもいで/梅昆布茶[2016年9月19日11時18分] おもいでのまちをとおりすぎて おもいでのまちにかえる おもいではとうにうせてあきのそらがひろがる なんだかかなしくてくちぶえをふいてみる おもいでのいちばではなにをうっているのだろう はつこいとかははのせなかあるいはだいすきだったかおのないにんぎょう おもいでのがいろにぼくはいなくて よそよそしいたにんのおもいでだけがとおりすぎてゆく おもいではうせてきみもいまはいない ぼくのこころはあのころにすみついたまま おもいではしょうじょのかおをして すたすたあるきさってゆくが ちょっとふりかえって にっこりわらってくれたありがとう ---------------------------- [自由詩]日々のエチュード/梅昆布茶[2017年11月7日20時42分] とりあえずのチキンは食べられてしまって ぎゃばんのseasoningが恋しいクリスマスも近いし ぼくのなかの騒がしい自由は休憩しているのだろう 忘れさられる歌を今日もうたっているし 古いギターは古い弦が張りっぱなしで それでも明日をのぞきこんでみる 魔法のランプは1000年前に買収された会社といっしょに 処分されてしまったし だから夜の幹線道路をtune-upして走るスクーターが 僕なのかもしれないけどね とどかない手紙に切手を貼って くぐもった声でも歌うさ いつだってステージなんて 用意されてはいないんだから 彼女はいつまでも届かない洋服を待っている 僕は素知らぬ顏でたばこをふかす どっちが悪いのかはよくわからないのだけれど もうちょっと優しい時間をもてたらいいとおもっているんだ ---------------------------- (ファイルの終わり)