犬絵のおすすめリスト 2018年12月24日7時30分から2019年3月13日5時08分まで ---------------------------- [自由詩]手紙/こたきひろし[2018年12月24日7時30分] ポストに投函した手紙が何処へ届くかは解らない 宛名と宛先を忘れた 差出人とその住所も忘れた そんな封書の中身は便箋が数枚 便箋には文字を綴るのも忘れた そんな手紙は迷子になって いく先も帰る所もなくなって もしかして 知らない誰かの郵便受けに届いたら それはそれで 問題になるだろう きっと手紙はいつまでも封書のままで 永遠に閉ざされてしまうから それはそれで ロマンチック だな ---------------------------- [自由詩]夜をたぐる/かんな[2018年12月24日8時47分] もうすぐ トンネルだね。 息子がつぶやく 車内は空調がきいてあたたかい 帰路を走るフロントガラスに ちらちらと落ちる雪 しろいね。 冬が深まるたび 吐く息が白くなる 不思議そうな顔をする君 サンタクロースのひげも しろいね ろっかくけい。 曲がるストローをつなげて かたちをつくる 雪の結晶の絵本を読む 君の中でリンクする ふたつのかたち ゆきだるまを窓辺に置く カーテンを体に巻きつけて 夜をたぐり寄せる かすかな光を抱いて ツリーの下で眠る君の 頬をそっと撫でる ---------------------------- [自由詩]森林公園/羽根[2019年1月6日1時15分] 久しぶりに近くの森林公園へ家族みんなで出かけた 元競馬場であった公園は楕円形で木々に囲まれ その中は芝生が一面に覆っている 車椅子を出し細い女性を乗せ 二才の息子を負ぶって歩き始めたら 愛犬「レオ」は元気に走りだした 色々な家族がレジャーシートを出し キャッチボールやバトミントンなどをしている お昼頃になるとみんなお弁当を出して食べだした 手作りのお弁当は花壇みたいに綺麗だった 料理の出来ない私はコンビニのお弁当で 見た目も冴えなかった 息子も気がづいたのか 他の家族のお弁当を見ていて なかなかお弁当を食べようとしなかった 「レオ」はドッグフードには目もくれず 車椅子の女性に纏わり続けていた 夕方になりそろそろ帰る準備をした 車椅子を出し「レオ」に紐を付けようとしたら 白い毛から小さな虫が飛んで来た 家に何とか着いて車椅子に細い女性を 載せようとしたら女性には足はなく 「レオ」はただ紐のみだけだった その夜夢か現実か分からない微睡の中 「レオ」から飛んで来た 小さいとんぼのような昆虫が 私の胸に止まっていた それは美しい蜉蝣だった 体は弱く細長で 寿命は数時間から一週間ぐらいで 産卵したら消えしまう儚い命 その時ベッドのサイドボードの上にある 三人と一匹の写真が急に明るく輝き 二才の息子が夜鳴きを始めた 私は二人きりである我が子をそっと抱き寄せ 写真を見ながら 泣き止むまでいつまでも 優しく揺らし続けていた ---------------------------- [短歌]毒愛/秋葉竹[2019年1月8日23時57分] 砂嵐 まさかの街に吹き荒れる そうかこの名を砂漠も嫌うか マフラーの 手編みにこだわるわけではない 言葉にできれば、それで良いのに どんぐりも 黄昏の森哀しみも 掬わず、無視して、ただ歩く道 空も好き まるでしあわせ、虹の橋 禁止されてる、けど渡りたい キスだけね したことあったし思い出に もう、してるから、もう、泣いてよい? この喉を 愛の音符のカタチにし 歌ってあげるよ、あのときの嘘 嘘で愛 したことないから愛してと 揺れて化粧をするバスで泣く 哀の空 七色の虹の夢をみる そんな綺麗なあしたを待つだけ 毒を飲む 狂わしい胸、肋骨を 暴いた口紅、あなたという毒 ---------------------------- [自由詩]普通電車に乗って/こたきひろし[2019年1月9日10時09分] 電車という文字に普通が乗ると 普通でなく思えるのは普通じゃないのかな もしかしたら私は意味不明な存在なのかも知れない それはともかくとして 滅多に乗らない電車にその日乗ったのは 東京に行くためだった 西銀座の宝くじは他で買うよりいいらしい 数日前に最愛の妻が言った 宝くじが当たる夢を見たの そうかよかったな その先に妻が言いたい事の想像がついたから 私はわざとらしく気のない返事をした そしていかにも思い出したように私は言った 妻の関心をそちらに引き寄せたくて 昨夜はお前の夢を見たよ 結婚してはじめてと付け加えた すると妻が 貴方の見た夢なんてどうでもいいわ どうせろくな夢じゃないでしょ そうかもな お前が何者かに拉致監禁されてしまう夢だったから 何よそれは悪い夢じゃない あたしが見た夢と比べたら雲泥の差ね そうでもなかったよ 私は言った 何処かにさらわれて行方不明になったおまえを 危機一髪の所で救ったんだから 誰が? 妻が聞いてきた 勿論と言って私は自分の顔を指で指した 西銀座の宝くじは他で買うより当たるらしい 妻が言った 買う人が多ければそうなるよ 私がそう反論すると いいからさ今度の休みに宝くじ買いに東京に行こうよ と言って結論を口にした 早朝の電車内は空席が目立っていた 妻は座席に座ったが私はその前に立ってつり革をつかんでいた 妻が何度も横に座ったらと言ったけれど 断って立っていた それは心のなかに隙間の多い私のあるべき姿のような気がして ならなかったから ---------------------------- [自由詩]小さな散歩/そらの珊瑚[2019年1月18日11時51分] いとしいといわない 愛しさ さみしいといわない 寂しさ 祖母と行く畦道 ふゆたんぽぽを摘みながら 手は 手とつながれる 枯れ野には 命の気配がして 墓所には 命だったものの気配がした ささやかなあの時間が 遠くなるほど 近くなり 見えないどこかに 無言のままで宿っている ---------------------------- [自由詩]いただきます/夏川ゆう[2019年1月19日5時15分] 手を合わせて いただきますと言う 感謝して 美味しくいただく 自然のままの味 いただきますは 大切な言葉 食材に感謝して 周りに感謝して 両親に感謝して いただきます 料理の良い香りが 食べたい気持ちにさせて お腹が何度も鳴る 感謝して食べ終わったら ご馳走さまでしたと言う ---------------------------- [自由詩]冬の雨/立見春香[2019年1月19日7時28分] 寂しいのは怖いんです 心や 言葉まで 寒くなってしまうから 寒いのはいやなんです 子供のころの 冷たい雨に打たれた 終業式の日が思い出されて 通知簿を仕舞い込んで 悩んでいた小学生が 風邪をひいたのは 自業自得だったでしょう ザクザクと 砂利道を歩いている ためらうことなく 君はひとりで わたしとつながれた絆など 希望を断ち切るように切ってしまったわけだから そういえば君は早朝から 辛すぎるカレーライスを食べていたなぁ もう わたしの心からは死んだけれども つまびらかにされた罪を 痛みに変えて 泣きだす 打たれたほおが夢を こっぱみじんにしてくれるけれども ---------------------------- [自由詩]しあわせは、好かれるんじゃない、好きになることのほう。/秋葉竹[2019年1月19日9時54分] むっかしね、 書いたことがあって、 あたし最近記憶力バカになってるから、 どこで、どんな文章で書いたか、 まるで思いだせないんだけど、 書いたフレーズだけ、 アタマの何処かに残っていて 海馬ってえの? でも、うみのうまって、なぜ? なぜ、脳の中に、海馬って呼ばれるものがあるの? まぁ、ただの疑問だけど。 疑問だけ、だけど。 答えは求めず、つぎいくね? で、アタマに残っている むっかし書いた、とある詩のフレーズの話ね。 人はたしかに人なりに、 人の望みが、ありまして。 確かこんなフレーズだったような。 で、だ。 その通りでしょ? 人には、望みがあるでしょう? あたしの望みは、なにかしら? べつに、とくに、大きな望みは、 なにもないかな?ないよなぁ? ちっちゃな望みは、それこそ山盛り。 いっくらでも、ある。 持ちきれないほど。 そんななか、たったひとつの 小さな望みを叶えて欲しいというはなし。 笑って、暮らしたい。 それは、生きていくかぎり、 イヤなことや、苦しいことや、悲しいことが、 あったりする、それは そこは、普通で、必然で、越えなきゃいけない ハードルでしかない。 それはそれとして、甘受する。 から、 笑って、暮らしたい。 小さな望みじゃないじゃない? そうかもね? でも、 いったってこれ、わたくしごとの、はなしです。 いわゆる、せかいや、 てんかこっかを、どーこーする、って、 はなししてんじゃ、ないでしょう? ま、ちっちゃかろうが、おおきかろうが、 どっちでもいいんですがね。 ただただ、笑って、暮らしたい。 それがあたしの望みだと、 あたしにゃたしかに、あたくしなりに、の、 あたしの望みがありまして。 べっつにね、 人のことなどどうでもいいの。 人の望み? 知らないからね。 あたしは、ただただ、あたしだけ、好き。 そして、しあわせに、なりたいわぁ。 でも、知ってた? 自分しか見えないとか、 自分しか好きになれないとか、 自分、自分、の人生って、 とっても虚しく、 儚(はかな)いものなんだって。 知ってた? 儚い人生って、死に場所もないんだってさ? いうでしょ? 『お墓のない人生は、ハカナイもんですなぁ』 ねっ? ちょっとは、笑えた? のなら、あたしと仲良くしてよね。 お、ね、が、い、し、ま、す、 ね、だめ? ---------------------------- [自由詩]推移3/ひだかたけし[2019年1月19日17時34分] 在るもの在るもの ゆっくりと静止し佇む 夕暮れ時、 宇宙の巨大な静かさ 降って来る降って来る ---------------------------- [自由詩]誰に弓を習ったの?/mizunomadoka[2019年1月20日2時07分] はじめて書いた文字は まどかの「ま」だった うれしかった 母がほめてくれたから 不思議の国のアリスを読んでもらって 気に入った言葉を 画用紙に集めて色を塗った コタツに入って クリスマスカードを書いた 住所が母で、イラストが妹 Merry Christmasが私 夏休みの工作で 雲の上に住んでるネコの絵本を描いて 銀賞をもらった 共同墓地のスケッチは 校長室に飾られた チェストーナメントのジュニアの部で 2位になってDCに行った 恋人ができて星のようだった日々も その子が死んだ12月23日も 過ぎてもう大人になった あんなに好きで楽しかったのに 今は文字を書くのが怖い 悲しみや後悔や孤独を塞ぐのに 使ってしまったから プラスのエネルギーが無いんだと思う 枯れたオレンジの庭を出て 冷たそうなモナ川に沿って歩く 老夫婦がベビーカーを揺らして ロボットの子供をあやしてる 目が覚めると飛行機の中だった 真っ暗で乗客は誰もいない 歪んだ鉄柵に繋がれて 抱き合う姉妹 どうして本当のことを話してくれないの? 嘘のほうが綺麗なのよ 竜巻から隠れて息をとめたとき 砂と海の匂いがした 幹線道路の車灯 岩に積もる雪、死者たちの声 絶対に私を忘れないで もう食べたいの ギリギリジージー お母さんっ! 泥濘に跡が残らないくらい ゆっくりと這いながら沈む たぶんもう私はいない ほら空をみて オリオンの火も消えてる ---------------------------- [自由詩]正と負を抱えているんです/こたきひろし[2019年1月20日7時45分] 好きと嫌いの二つの感情 お互いを強く意識してしまうのが自然だよね 好きだらこそ それを相手に悟られたくないって思いに支配される事もあるし 嫌いだからって それを相手に見透かされたくはないよね 人間ってヤバイよ 正直になれないんだ それに比べたら猫なんかはっきりしてるよ 好きならすり寄って甘えてくるし 嫌いなら近寄っていかないし 下手をすると攻撃していく 人間ってめんどくさい生き物だよな そのめんどくささに 人間同士が翻弄されてさ 磁石になればいいんだよ 人間の心と体は 引っ付きあったり 反発しあったり 磁石にならなくても 誰だって 正と負は抱えているけどさ ---------------------------- [自由詩]りんごの神様/そらの珊瑚[2019年1月25日11時17分] りんごを 横にスライスしていくと 星の形が現れた こんなところに ひっそりと 神様がいたことを 初めて知った 冬の日 湯気みたいな嬉しさを 胸であたためて いっとき 死を忘れてみる 砂糖と檸檬を ふりかけられて 今 りんごの神様たちは 鍋の中で煮詰められてます ---------------------------- [自由詩]牡蠣/夏川ゆう[2019年1月26日5時39分] 広島の牡蠣が美味しい 栄養豊富な川の水 牡蠣小屋が人気 広島の三カ所にあり 良い香りを漂わせる 身が大きくて 食べ応えがある どんな料理でも とても美味しいけれど 焼き牡蠣が一番好き 牡蠣の味が濃くて美味しい 場所が変われば 味も香りも違い 違った牡蠣に出逢える 色んな街に訪れて その街の牡蠣を食べたい ---------------------------- [自由詩]狂った花の恋/立見春香[2019年2月11日14時22分] ずっとずっとかかわっていたい 気持ち 痛い 腐れ縁とかいったっけ ふたりがふたり 好き同士でも ふたりの ためにならない 好きもあるものね そんな恋って しっくり来なくって のんべんだらりが心地よくって でも 燃えつきるみたいな目に遭ったり でも けっこういい加減に好きだから けっこう冷たい水に流されたり 糸のような細い恨みが 毒のような呪いにかわるとき それでもいい もう少しでもいっしょにいたい からっぽみたいな感情に それでも無くならない『好き』 それをそのままに『好き』って。 ひとりはさみしいからダメとか 冬の孤独は寒いからイヤだとか いっしょにいてくれるだけでいいからとか そんな どこへも行けない 世界といっしょに腐って行く 気なの? いっしょにいたいのも、痛いし、 わかれてあげたいのも、痛いよ。 でもないものねだりの反対でね あるけど捨てなければいけないものも あるよね こころ千切れて血を流してもね 狂い咲きの花が咲いたら 狂ったままで散るしかないんだものね ---------------------------- [自由詩]ほほえむ 顔/立見春香[2019年2月12日22時39分] うす汚れた けだものの涎が熱い この顔に 塗りたくられる 情熱の匂いがする ねばつく息がくさい それを 好ましいと思ってしまった わたしの心臓が早い いだきたい背中に 致死量に達する血の針の爪を立てたい わたしの気持ちが重い だれか 助けて 自由に手に入れることができる 愛する気持ちとかなら まだ良いんだけど 無理矢理押し付けられる 淋しいけど言うことをきかせる 獣の声で叫ばれる 奪イタイ! ってヤイバだけは 突き刺さるし 慣れないし 拒絶したい けど だれか 助けて どんどん煙は そちらがわへも 流されて行きたがってるのを 知ってしまう 訳? それを そんな 好きとか 言葉だけじゃ 納得いかない もっと いやらしい 認めたくない なにかに染まった 顔 だったり することが 耐えられない 恥ずかしい そんなこと 知らないけだものは けだものの理屈で 熱い想いを わたしに ぶつける 拒む ことさえ 楽しげな けだものめ そんな けだものの皮を被った 人のために わたしの中へ 冷たい愛情を 芽生えさせる なぜ こんなやつ 求めてしまうのと 問えど 自明な 笑い声がする みずから あざわらう 笑い声がする でも それを 自嘲 って わかっているなら それですべては闇におさまる ああ、なんだ これは ふつうのひとなんだ 《ほほえみ》 って こういうときに する顔なんだ スーッと ほおをつたう、 あたらしい 針は やさしく すこし あたたかい ---------------------------- [自由詩]俺が歩かなくても/こたきひろし[2019年2月14日0時31分] たとえ 俺が歩けなくなったとしても 路は途切れないさ たとえ 俺に朝が来なくなっても 街路の樹木は立っているさ たとえ 俺が夜に溜め息をつけなくなっても 繁華街の立て看板に明かりはつくさ たとえ 悪酔いした知らないおっさんが電信柱にゲロを吐いたって 俺の経年劣化した手足の痛みはどうにもならないさ 捻れてしまいそうな俺の心 歪んじまったかもしれない俺のたましいってやつ 生きているって 厄介なんだけど 死ぬって全く理解できないでいる ああ 天才になりたかった 俺は馬鹿野郎だ ---------------------------- [自由詩]だいじなことはそこにあること/秋葉竹[2019年2月15日3時31分] あなたが好きなのに あなたの姿をみながら 交差点で右折するバスに乗ってるみたいに、 永遠に逢えない。 整えられた本棚のなか しょくぶつ、と、てんたい、の あいだにはさまれた しかも隠された、てつがく、の、栞の 艶めかしい葉脈のうずきを 寂しい魂の鼓動とする。 私だけの。 私のことが好きって 証明してくれるんだ 亡霊になっても もう、逢えないけど白い花を咲かす 常世の森の中で 道に迷い、転がり、進む、 手折り花束とする言葉は純然たる真実 ではないけれど 私だけにくれるなら。 嬉しい気持ち。 私だけの。 幸せになるための鐘は鳴る。 あちこちの 不幸を踏み台にした 選ばれた幸せが訪れるとき 最後には 見つめ直す心のカタチを ハートにしてくれる。 鐘は鳴る。 そこにはお金さえあれば 汚い笑顔ができる みたくもない星の瞬きがみえる。 鐘は鳴る。 落花盛んな桜の下の歌声が聴こえる。 鐘は鳴る。 輝いているのに そんなことより因果律の糸でからまる 現実をみせろとか どうせ関係ない夢物語さと 白いてのひらを諦めてみている。 鐘は鳴る。 天使のふりをする。 鐘は鳴る。 嘘ばかり降り積もる。 鐘は鳴る。 この地の底にたゆたう。 鐘は鳴る。 このかたくなな街であなたと暮らしても 思い通りにならない静かに微笑む星の下、 悲しく ゆずる。 神経の爛れたコンプレックスには もう、謝ることもできなくて 刹那の涙さえ禁じていたけれど 遠くから届けてくれる孤独な雨の匂いは こんな夜を秘密にする最後の魔法なのか? だから、あなたは。 夢をみるふりをするのか? ああ、明日になれば終わってしまう 虚ろな前夜の雨は降りつづく いまはまだ そんなにひどい、夢をみている。 このこころがだれにもに伝わらず ひとり諦めかけている疚しい、夢を。 悲しく ゆずる。 だから この嘘に 傷つき直して すべてを終わらせて すべてを狂わせる。 悲しく ゆずる。 ---------------------------- [自由詩]すっと孤独に留まりながら/ひだかたけし[2019年2月16日4時03分] この深夜、 独り在ることに寛いで 宇宙の時流に乗っていく すっと孤独に留まりながら この隙間だらけのあばら家に 雷鳴が轟くのを待っている 境界の門が開く、その時を ---------------------------- [自由詩]トンネルの向こう/夏川ゆう[2019年2月16日5時12分] 薄暗いトンネルを抜ければ 明るい陽差しが待っている トンネルの向こうに 理想とする現実がある 徐々に見え始める 闇は続かない 抜け出せばそこは 光溢れた場所 トンネルを出る瞬間 眩くてつい目を閉じる 色々なトンネルをくぐり抜ける 見たことのない景色 感じたことのない感覚 新しいもの見せてくれる トンネルの向こうの輝き 楽しみが膨らんでいく ---------------------------- [自由詩]まるで人生って!/立見春香[2019年2月16日5時21分] まるで白昼夢だ 満月の頃 青空に黒い月が浮かんでいるように 胸には小さな宇宙のような穴が開いていて 埋める星の金平糖を探し続けていた 潮の香りの染みついた 大きな河の静かな照り返し 目的もなくひとり川面を眺めて あくび あくび あくび 鉄の交差する 橋の運命の一点で その震えて泣いている 仔猫と出会ったんだ 夏が終わっても 髭をビンビンと過敏に震わせて 花火を懐かしんで探しているように 太陽を暖まるためみたいに浴びようとして 尾を口に含みながら 丸まった足をあしたに向けて あのだれも知らない花の名前を探すように 目を細めていた 野生は すっかり痩せこけて でもね ちゃんと爪も牙も折ってなかったんだ でもね 猫生(人生じゃないよね?)に 合格しようと濡れた目を思慮深げに 可愛く閉じたり薄く開けりして だれかが置き去りにした 丸みをおびた白色の小さなバスケットで そっと生きようとゴロニャンコ ニャン ニャン ニャン 仔猫いっぴき 満月に泣く 胸には小さな宇宙のような穴が開いていて 埋める星の金平糖を探し続けている 人生みたいだ まるで波瀾万丈系? 猫の鳴き声の染みついた 小さな白いバスケットのなか覗きこみ それにも飽きたら 青空と 目的もなくひとり川面を そして それにも飽きたらまた 大きな白昼夢を待って とても可愛らしい興味を持って ずいぶん長い時間 飽きもせずに彼女が髭を引っ張るのを ボーっと ボーっ ボーっ ボーっと 汽笛を鳴らす 沖合に傾きつつも弧を描く船を 眺めながら仔猫があしたの橋を渡ると信じたのだ 私が夢の虹をよじ登るのと同じくらいにね そこだけは キリッ! っとね ---------------------------- [自由詩]旧作アーカイブ1(二〇一五年十二月)/石村[2019年3月11日13時36分] (*筆者より――筆者が本フォーラムでの以前のアカウントで投稿した作品はかなりの数になるが、アカウントの抹消に伴ひそれら作品も消去された。細かく言ふと二〇一五年十二月から二〇一七年二月までの間に書かれたもの。これを随時アーカイブとして投稿し、フォーラム上に保管しておかうと思ひ立つた。実際に目を通して下さる奇特な方は少なからうと思ふけれど、私の手元に死蔵しておくより僅かなりとも人目に触れる可能性のある場に晒しておけば、まだしも作品の生命が保存されることにもならう。どれほどみすぼらしからうが貧しからうが、書かれたものにはひとに読まれる機会を得る権利があり、作者といへどその権利を封殺すべきではない。)   菫(すみれ) やさしい人たちから遠く離れて 忘却の季節を通り抜けて ひややかな秋の角笛に心ざわめかせながら 胸に深くつき刺さる微かな痛みだけを なぜか大切にもち歩いてきた 黄昏時の懐かしい路地裏で 捨てられた昔の時計が今も時を刻む 神々の幼な子たちが告げる一瞬の永遠は 貧しい心にはすみ切つたかなしみの形でしか響きはしない 悲しいことばかりだつた どこにも正しい言葉はなかつた 惨めな魂にばかり遭ひ その誰よりも僕が惨めだつた 美しかつた神殿が崩れ落ちた時 たれもがそれを悲しんだ いつかその人々も去り その悲しみたちも忘れられた その片隅にあどけなく咲いてゐた ひと叢の菫(すみれ)の行く末を 見守つてゐたのは君だけだつた ため息の中で数億年が過ぎ その頃と同じ青さの空の下にゐる 僕はまたここに戻つてきた ほんたうに大切だつたただひとつの言葉を 今なら 君に云ふことができる 星々のめぐりは もう 終はろうとしてゐるのかもしれないけれど やさしい人たちは いつか帰つてくる いつでもそこの木蔭で 黄菫たちに囲まれて いとけない眠りを眠つてゐる 君のもとへ (二〇一五年十二月三日)   小さな風 麗かな春の日に 星をめざして一心に飛んでいつた燕が 今朝 そこの丘の端に落ちて死んだ たれも知らなかつた お前がどれほどそこに近付いたかを あとひと飛びといふところで力尽きた お前の望みの気高さを 思ひ上がつた科学にも 卑劣な物理法則にも 屈従を説く哲学にも耳を貸すことなく お前は一心に突き抜けた その広大な空間を ただひとつの約束を 果たすために ほんたうにあとひと飛びといふところで 残された最後の羽根が しづかに燃え尽きた たれも知らなかつた 仲良しだつた森の妖精が  一緒に歌をうたつて過ごしたあの丘の外れで  しめやかな春の雨に濡れた亡骸を見た その悲しみを 妖精は丘の外れで いつまでも泣き暮らした 季節は幾度となくめぐり それでも妖精は泣き暮らし いつしかその姿は淡くなり ―― 薄れゆき ―― ―― 丘々を吹き渡る小さな風となり ―― 麗かな春の日に あの人のために野花を摘んでゐた 少女の頬に そつと触れた 少女は 知らなかつた なぜ自分が泣いてゐるのかを   (二〇一五年十二月二十日)   花束 遥かな、遥かなむかし 時がうまれて間もない頃 夢見がちなひとりの天使が まだ小さかつた宇宙のかたすみに いつまでも枯れることのない 花束を投げた この宇宙をどこまでも広げていく あらゆる命たちが ひかれ合ひ 巡り合ひ 触れ合ひ 心通はせる そのよろこびを 絶やすことのないやうに ―― 彼らが心を向けさえすれば いつでもそこから 色とりどりのいとほしさが薫り立ち その心をみたすやうに ―― と その命たちは かなり愚かではあつたが 素直でやさしい心映へをしてゐた やがて彼らは 降りていつた 小さな青い星に 丘の上で 川のほとりで 薫る風の中で しんしんと降りつむ雪の中で そぼふる温かい雨の中で その花束をたずさへて 彼らはそれぞれに巡り合ひ 触れ合ひ 心通はせた ―― その笑顔の美しかつたこと! 花束はいつまでも 枯れることはなかつたが 命たちはやがて 人と呼ばれるやうになり 愚かにも 互ひを傷付け 自らを憐れみ 蔑み 貶め 犯した罪にふさはしい 非道な獣にならうと決めた もちろんそれは嘘だつたので 彼らの心は安らがなかつた 花束はいつまでも枯れずに そこにあつた 人はなほも むなしい努力を続けた  たれもがみな 非道な獣であることが いかに正しいかを示すために 互ひに非道な行ひを 重ね続けた 互ひを憎み 恨み 傷付け 責め苛み 何万年も同じことを繰り返したが もちろんすべてが嘘だつたので  彼らの心は 安らがなかつた 花束はいつまでも枯れずに そこにあつた 花束に心を向けることは いかにもたやすいことであつたので さうしないためには 英雄的な苦心が必要だつた 人は必死だつた ありとあらゆる偽りを考え付き 実行し 複雑な上にも複雑な思想を築き上げ 何万巻もの書物をまとめたが もちろんすべてが嘘だつたので  彼らの心は 安らがなかつた 花束はいつまでも枯れずに そこにあつた 花束はいつでも そこにある 君が心を向けさえすれば いつでもそこから 色とりどりのいとほしさが薫り立ち 君の心をみたす 愛するひとを想ふとき 友のしあはせを願ふとき 君の心に いつはりがないとき 君の笑顔が美しいとき 嘘をつくのは止めよう 君のまごころ  それが君だ 枯れることのない花束をたずさへて 僕らはどこまでも生きていく この宇宙を ちよつと愚かだけど 素直でやさしい命たち 丘の上で 川のほとりで 薫る風の中で しんしんと降りつむ雪の中で そぼふる温かい雨の中で この花束をたずさへて 今日 僕らは巡り合ふ  こみ上げてくるやうな笑顔を向け合ひながら そしてふたつの心が安らぐ 夢見がちな天使がほつとため息をつく (二〇一五年十二月二十五日)   雪が囁く しづかな 夜に きこえない 音で 或るかなしみが お前の心に かさなつた 雪の上に もうひとつの雪が ふれ ひとつになるやうに 僕は何も 囁かなかつた  何ゆえに 僕は出て行くのだらう そして 何処へ 忍び入る 恐れ お前はすでに 僕から遠い ひとびとは ああ ああ はなれていつた ふたつの想ひに 欠けてゐたものはなかつた それでも 雪は ふり続く 古い儀式のやうに かへる場所のない 子どものやうに ひとはたたずむ お前が見たものを 僕は見なかつた さうして絆が 解(ほど)けてゆくと どうして お前に わかるだらう どうして 僕に わかるだらう? (二〇一五年十二月二十九日) ---------------------------- [自由詩]( 椅子 )/墨晶[2019年3月12日20時14分]     めざめ また往ぬ  途上の椅子 ひとり  とほきこころ とほきねむり  ふと おぼえたる  すわるしぐさ  だれとふけはいなき  思ひ出の  くらい道にならんでゐた  椅子    たち        ---------------------------- [自由詩]オイル缶の食料庫/mizunomadoka[2019年3月12日20時24分] 滞在時間が近づいて 右手からプラズマが出てる あなたの食べてるものを食べてみたかった あなたの飲んでるものを飲んでみたかった ひどい別れ方をすることになるけど それまでいっぱい、恋をしたかった きれいだったものにひとつずつ ずっと一緒にいたかったシールを貼った 次の宇宙でもその次の宇宙でも ハッピーエンドを探すから 私のヒントになってね ---------------------------- [自由詩]来たので/はるな[2019年3月12日21時36分] 来たので、 わたしは 行きます 黒ずんだ窓の向こう側 鳥たちが飛ぶその上を 沸きあがるようにして 来たので 窮屈な靴ばかり履いていた 厚ぼったい肌をしてがたがたふるえて 100の望みを書いた薄ぺらなノート 噛みあとだらけのえんぴつ 待つともなく暮れていく生活の糧に夢をあて 汚れた指を笑い コンビニの誘蛾灯に怯えたり 点数制の笑顔で表を作ったり 春には春の、 夜には夜の冗談をして この体の全部嘘にできたら良いと思ったりした けれど朝、 わたしは行きます 世界は来た つめたくて痛い速さで 黒ずんだ窓の向こう側 鳥たちが飛ぶその上を 沸きあがるようにして ---------------------------- [自由詩]孫悟空の八つ当たり/ペペロ[2019年3月12日23時05分] さあ悟れずに生きていく 線路に財布を落とすようなとき 駅員がひとりもいないようなとき ホームから降りて財布をとるようなとき だれかが非常停止ボタン押して大騒ぎ 平成は昭和のように終わらないあたりも 平成だとかんじるようなとき ふつうの日々みたいに終わるのか なんの悟りも得ずに終わるのか 孫悟空みてえじゃねえか 卑しいか さあ悟れずに生きていく 賎しいか さあ悟れずに生きていく さあ悟れずに生きていく 線路に財布を落とすようなとき 駅員がひとりもいないようなとき ホームから降りて財布をとるようなとき だれかが非常停止ボタン押して大騒ぎ 平成は昭和のように終わらないあたりも 平成だとかんじるようなとき ふつうの日々みたいに終わるのか なんの悟りも得ずに終わるのか 孫悟空みてえじゃねえか ---------------------------- [自由詩]3.11/ツノル[2019年3月13日0時03分] あの日あの夜、失恋した想いはちっぽけな星のようにわたしの胸から消えてしまいました。 ー幾年月が過ぎて あの日あの夜、多くの人々が悲しみとともに見上げた夜空には満点の星々が、 、それはいまでも輝き続ける星々のことでしょうか けっして忘れてはならない思いとは裏腹に、 それは、いつまでも人々のこころに遺る悲しみのことでしょうか。 ー幾年月が過ぎて 。 ---------------------------- [自由詩]イリスィリサイト/中原 那由多[2019年3月13日0時39分] かがり火を消し去る 純、潤、順 と 水が焼ける音 の、背後からは 翼をもがれた旅人が 一人 赤の渇望へと にじり寄る 旅人が その 赤の渇望の 窪みへと とく、っと流し込んだ 安い酒 赤の渇望は ぷくり、と 膨らみを帯びる 、 かと、思いきや 甘ったるい瘴気を ぷんと漂わせながら 塩辛い体液を ぐちょりと撒き散らしながら 縮こまり うずくまるかのようにして タンパク質の 膜を すぅっ、と張っている イリスィリサイト イリスィリサイト 旅人は 赤の渇望の その 行く末を 見届ける 、こともなく 捨て身の拳を 赤の渇望の その 蛙の卵であるかのような 生命力に振り下ろす イリスィリサイト イリスィリサイト ぶるり、と 震えた 赤の渇望の その 白玉のような 艶が 目玉に 見えてくるのだ その 目玉は ぐるりを 舐めるように 見渡してから 止まる イリスィリサイト 首筋 イリスィリサイト 痛覚 イリスィリサイト 雖牙ヲャ縺ォ迢ゅ▲縺ヲ豁サ繧薙〒縺?¢ イリスィリサイト 破裂 翼をもがれた旅人は 泥で 顔を 洗う かのように 開き直って 先を 行く 曇天 その 隙間 から 差し込んだ 差し込んだ 絶対 から ずるり、と 漏れ出す 怪物の 舌先は 桃の 果汁を 含み、笑っている きのこ が 胞子を 飛ばしたように 赤黒い 皮膚が 風に 張り付き 錆になる 千 切 れ る 、 これが 切れ端 切れ端 から 蔦が するり、と イリスィリサイト イリスィリサイト 赤の渇望は 紙一重 イリスィリサイト イリスィリサイト ---------------------------- [自由詩]アンビバレンス/涙(ルイ)[2019年3月13日4時37分] 死にたいと思いながら 同じ時間に目を覚まし 死にたいと思いながら リンパ浮腫になる心配をし 死にたいと思いながら ラジオ体操をしたりする 死にたいと思いながら お茶を飲み 死にたいと思いながら パスタを茹でて 死にたいと思いながら 内さまを観たりする 死にたいと思いながら ライブ情報をチェックし 死にたいと思いながら 中島みゆきを観に行き 死にたいと思いながら 拍手を送っていたりする 死にたいと思いながら 森田童子を聴き 死にたいと思いながら 海を見に行き 死にたいと思いながら 冷たい風に煽られてる 死にたいと思いながら 風邪を引き 死にたいと思いながら 病院へ行き 死にたいと思いながら きちんと薬を飲んだりする 死にたいと思いながら 昔の友達に連絡して 死にたいと思いながら 会おうよと誘って 死にたいと思いながら 断られたりする 死にたいと思いながら 簿記の勉強をはじめ 死にたいと思いながら 編み物をはじめ 死にたいと思いながら 部屋の片づけをしはじめたりする 死にたいと思いながら お気に入りの服を着て 死にたいと思いながら 髪の毛なんかもアレンジして 死にたいと思いながら 雑貨屋めぐりなんかしたりする 死にたいと思いながら 詩のことばかり考えて 死にたいと思いながら 死にたいとさえ描けなくなったら 死にたいと思いながら 詩を描く意味なんてどこにあるのかと 死にたいと思いながら ひとり思案に耽ってみたりする 死にたいと思いながら 辛い事件に心を痛め 死にたいと思いながら ネットニュースはくだらなくて 死にたいと思いながら 情報を求めてる 死にたいと思いながら 死ねない自分をなんとする 死にたいと思いながら 後悔だけはしたくない 死にたいと思いながら 死にたいと思いながら 生きる意味とか理由なんてどうでもよくて 死にたいと思いながら 活きてると思える瞬間がくるのを ホントはずっとずっと 待ち続けてる ---------------------------- [自由詩]しぶとく生きようぜ/こたきひろし[2019年3月13日5時08分] しぶとく生きようぜ たとえその生きざまがどんなにぶざまで惨めったらしくても 怯む事などない しぶとく生きようぜ しぶとく生きようぜ たとえペンが剣より強くても インクが切れたら役にたたない 世界の地図の上は点々と焼け焦げて 未だに燻っている ふたたびこの国が火の海になっても 逃げるが一番 しぶとく生き残ろうぜ しぶとく生きようぜ たとえペンが剣より強くても さすがに核爆弾にはかなわないけど だとしても 書く爆弾で必死に闘おうぜ しぶとく生きようぜ たとえ夜空に打ち上げられる花火が綺麗でも 美しいのはあっという間だ そんな人生 選んでどうする しぶとく生きようぜ しぶとく生きようぜ 何があっても 負けずに 悲しみに打たれたら 涙で洗い流そうぜ しぶとく生きようぜ しぶとく生きようぜ しぶとく生きようぜ たとえ最期は呆気なく死んでも それはそれだよ しぶとく生きていこうぜ ---------------------------- (ファイルの終わり)