空丸のおすすめリスト 2020年10月16日16時31分から2020年11月23日20時13分まで ---------------------------- [自由詩]泡になる/無限上昇のカノン[2020年10月16日16時31分] 私は明日、泡になる 私は彷徨い露となる 希望の欠片拾い集めて 儚い夢を探し求める ついに審判がくだされる時 私は哀しく散っていく 私は今日、泡になる 波に揺られて消えていく すべては自ら招いた種で 救いの道も残されてはいない ここがどこだかわからない わからないまま彷徨い歩く わからないまま散っていく 祈る言葉も虚しくて 謝罪はすべて言い訳で 赦しを乞うのが精一杯 波に揺られて消えていく 静かに静かに消えていく ---------------------------- [自由詩]予感/ナンモナイデス[2020年10月16日20時40分] たぶん、この秋にも、 たいせつな、なにかを、 書き忘れ、 なにも気づくこともなく、 日々を削り、抜けてゆくことだろう。 ページもめくれやしない、 錆びたナイフじゃぁ… ---------------------------- [自由詩]人には顔が有りまして/こたきひろし[2020年10月17日6時37分] 人には顔色が有りまして その三原色は 泣く 笑う 怒る でしょうか 他人の顔色の変化はたいがいは判断が付きますが 自分となるとどうでしょう いちいち鏡見てたら、たとえ泣いたり怒っていたとしても 可笑しくなって笑ってしまうでしょうね 何はともあれ 他人の顔色伺いながら仕事したり生活しなければ なりませんね 他人の顔色伺って 自分の顔色 曇ったり 雨降ったり 風吹いたりする訳ですから 自分の顔色で 相手を晴れにしてあげられたら それはそれで 幸せな気分になれるんじゃないでしょうか あくまで理想論 ですけどね この世界には 他人を困らせたり悲しませる事で 自分のストレス解消法にしている輩が横行してますしね そこの貴方 貴方に直接言えない事をここに書いて 私はストレス発散してるんですけどね ---------------------------- [自由詩]秋詩譜/梅昆布茶[2020年10月25日10時11分] 酔生夢死 僕はちいさな日常を積み重ね 彼女の愛を貯金して 彼女はこがねを貯金している ぼくは 字が下手で絵も下手で おまけにろくな詩もかけないのんだくれ ほぼ一直線でレールもルールも知らない 何もわからないままでも生きていく 知的生産の技術って僕にとっては重要な本で ぼくたちはいつもなにかを理解しようと でも理解をいつでもどこでも放棄して ときどきちゃらちゃらして我に帰る 普遍性は優しい いつも普遍性の子供でありたいとおもう 僕は自己責任の名の下に弱者を切り捨てる 国と政権を革命したいといつも思っているのだが 死ぬときはひとりで死のうとおもっています 彼女は一緒に死のうと言うが心中じゃああるまいし 人生って頭韻も脚韻も無くて只々フェイドアウトなんだろうな 詩人ってけっこう自分の工房を持ってる優しい人が多いなと想う 興味のあることは無限にある 死ぬまでそうありたいのだが 三国志からラップまで繋げてもしょうがないので 説明もなく好きか好きかもの範囲で 僕は詩人ではないので詩の終わり方がわからないのです あえてい言えば秋詩符なのかなぁなんてね ---------------------------- [自由詩]言語爆発2/につき[2020年10月26日13時22分] たとえば 並び歩く二人が 気を置かずに話している 一方が振り向くとき 他方も同時に振り向いている たとえば 双子が同じ夢を見る 電話でその話をするとき 互いの脳裏にはありありと 同じ景色が描かれている たとえば 突然の雷鳴が轟く 走行中の列車の車窓を震わせる 乗客が一様に首を竦めるとき 彼らはまったく一つである 言葉がいらないとき 互いが同期しているとき 言葉は忘れられている そして そのとき言葉たちは 微笑むように漂い 思い出すように見つめている 今という 物語が綴られていく たとえば 秋空は晴れている どこかで 金木犀が咲いている 香りは爽やかに空へ ひとりきりが嬉しいこと たとえば 昼下がりの光りに 形見の茶箪笥の 黒檀は艶めき 沈黙のまま微笑むこと こころは去らず失われないこと たとえば 冬が近くなり ハナミズキが赤い実をつけても なお大きな柘植が 真緑のままの葉でいること 冬の陽にも 岸壁の松が深緑に光ること 姿なく 形のないことを誰かに 伝えようとするとき 言葉に最初の火が灯る 小さく 或いは 思いもかけずに大きく 我らの言語はいつも爆発している ---------------------------- [自由詩]なぜヒトは生きるのか/フッカーチャンネルの子供[2020年10月29日2時46分] セックス セックスするためにヒトは生きるのだ 人間関係、社会問題、このような4字熟語はすべてこの文字で置き換える 「セクロス」 そうだセクロスだ! けしからん 聞き給え 男女の喘ぎ 存在感 外ですけべなことをしていると一目で分かるんだものなあ みつを −−−−−−−−− 汚いこの星空に一筋のアソコ やあ、僕はアイドル「性の悦びを知るもの」の青姦担当だよ 僕たちは星の下で子づくりをしているのさ つまりは星の子 星空に浮かべるのは女性器だって男性器だっていいんだぜ ほらみて 僕が見つけたあの星と、君のお気に入りの星を結んでごらん 怖がらなくてもいいよ 大丈夫、僕を信じて ほらできた 子宮 ---------------------------- [自由詩]彗星と空想の際/カマキリ[2020年10月30日21時59分] たよりなく点滅する街灯 いつかここはけものすら通らない 道だったものになって 雑に置かれた石のひとつひとつ 大いなる妄想を抱かれるのだろう そのときぼくは 薄く伸ばしたセンチメンタルに 足を取られてしまったり 飽きるまでひっぱってみたりを きっとするだろうから 通り過ぎた橋の欄干にぶらさがって かすれたなまえを思い出して 風邪をひかない程度まで風にあたっている ---------------------------- [自由詩]記憶/草野大悟2[2020年10月31日9時30分] 季節があわただしくすぎてゆく いま、どこにいるのだろう さっぱり わからない わからないから歩いている ながいあいだ歩いてきたような気もするし ついいましがた歩きはじめたような気もする たしかなことがひとつ ある 風だ 心と体をふきぬける風だけが実感される どこからか、それでいい、という声がする 声は 耳ではなく おれそのものを震わせる ………青い空がある 逝きそびれた蛍がひとり ふりしきる風花のなかを 緋色にけぶりながら 天へと昇っていく………… ---------------------------- [自由詩]どよめき/ひだかたけし[2020年10月31日19時52分] 日々がどよめいている 宇宙が波打っている 『遠い遠い』と手を振る君 )何かが湧き起こり )何かが沸騰して )すべてが終わり )すべてが始まろうとしている )名状しがたい何物かが流動し 日々がざわめいている 無限が波打っている 『さようならさようなら』と手を振る僕 そのとき 大空は金色に輝き     黒い穴を穿ち貼り付く太陽 やがて 天は奥まり    辺り一面の灰白色に還っていく ---------------------------- [自由詩]炊き込みご飯/クーヘン[2020年11月1日12時27分] 実家の方角から、炊き込みご飯の炊ける薫りのしたような。 晩秋の寂しそうな母の背が、硬い根菜を刻んでいたような。 ---------------------------- [自由詩]晩秋/Giovanni[2020年11月3日20時47分] 光一つない 山の中で 炭をおこした 闇夜をほのやかに 照らす燠を見ていると 忘れたものが 思い出されたものが くるくると 火花のように 散っていった 刹那! 火が燃え上がる 燠火の暇から 白々と叫びを上げる 熱の宴が 輪舞と剣舞が 凍てつく雨の空を 神々しく照らす ---------------------------- [自由詩]独りぼっち/無限上昇のカノン[2020年11月4日9時07分] 運転手のいない車の助手席で 心細さを感じてる エンジンはかけたまま 独りぼっちは悲しい 目当てのものは買えなかった 独りぼっちだから 静かに明日を待つ 運転手はいないから この車は動かせない いつまで待てばいいのか分からない 1歩ずつ歩いて行こうか 誰かの敷いたレールの上 突っ走るのは容易い 道なき道を歩むのは決して楽ではないけれど 誰かに連れていってもらう未来は 独りぼっちより悲しい ---------------------------- [自由詩]死ぬのが怖くて/こたきひろし[2020年11月6日7時10分] 死ぬのを怖がるのは生きているあかし だけど生に執着するのは ただ死を恐れるからだとばかりは 限らないと思います 永遠には眠れない 死ぬ事は 眠りの延長じゃないから 命の終わりは 死の始まりでもないような 気がしてならない ああ 肉を食べたい 野菜も食べたい 果物も もしかしたら 死ぬって 絶対的に永遠に何も食べられなくなる事 食べる必要を 失ってしまう 事なのかな それとも 食べて排泄の繰り返しから 解放される 事なのかな ---------------------------- [自由詩]分解する/道草次郎[2020年11月6日9時11分] 細胞壁には鍵を掛け 咎の走幅跳にいそいそと臨み 歳月に鞣された呼吸と律動をたくわえ 中空はどこまでもうつくしく しかしその全貌は中空の為に須くそれを欠き 一朶の有意の他者を穹に飼い 詰まる所の精神優位主義的な餌を与え 暗がりでは星に呟き 毎朝復活する乾涸び果てたマリオネットの幼体を 軌条に寝かしつけてはよしとする 既にして骸 立って居てしまうのは 生存の海が持つ浮力の控訴にちがいなく 附記され 区分され なにものかへと顔面神経それを貶め 他人行儀な愛撫を 頭蓋内ビオトープへ唾棄する 肩には虜囚の霊が あ 笹舟を みつけるそして指を 切る つたう青いろの砒素 喪われた赤色のネガティヴ 私はそういう 泪袋の 化膿変転体である ---------------------------- [自由詩]切実な下心/おろはげめがね[2020年11月7日10時32分] どうにかして世界を変えたい どうしても全世界を救いたい それくらい人間でいたくない 恥ずかしくなどない 涙も忘れる 水音を聴いて 静かにそこを動かない 軽やかな沈黙とぎこちない目線 どちらもファミレスのドリンクバーくらいの気安さで ありふれたものだと思っていた この世界に生まれて 目の前には自分じゃない誰かがいて 今日も空は青くて 目を閉じても空は青いままで 息が止まっても空は青いままで その程度にみな孤独で ただ当然のように太陽は去っていくだけで こうやって日々を綴るインクの壜には月夜と書いてあるように 世界は無意味で美しい 愛しています きみが好きです ---------------------------- [自由詩]はなうらら/田中修子[2020年11月8日4時10分] 夜風 白銀色の月光り かじかむ指先の、爪に落ちて、ちいさく照らし返す 甘い潮の香 はなうら 花占 花占ら 月明りの浜辺に咲き 揺れている花々を 一本一本摘んでは花びら千切り 時を湛える浦いっぱい うずもれるほど 白の花びら揺蕩っている 白鳥の羽に違えるほどの 飛び立ちそうな  死のっかな 生きるって でたよ  笑おっかな 泣こっかな わかんなくってさ 分岐点の連続 石けっぽってさ 痛くってさ うまれた真珠の浜に来て 指折るように 花びら千切り もうこんな 「うまれる」って決めたんだっけ かすかに忘れ物のにおいがしたんだ 浦が花びらであふれ返ったときに 私の息は静かになります 青い蝶や銀の蝶やが泳いでいるよ。海のした ---------------------------- [自由詩]彼は十代が終わりに差し掛かる頃に/こたきひろし[2020年11月8日7時59分] 彼は十代が終わりに差し掛かる頃に 初めて お酒と女性が売りの店に入った 入口の重たげな扉は引いて開けると鈴が鳴る仕掛けになっていた 照明が落とされて暗くなってる店内には 酒の匂いと酒を呑む客達の吸うタバコの匂いが入り混じっていた 接待する女性と 接待される男性客の声が暗い店内を占領していた 換気の行き届かない空気と光を抑制された空間は何処か隠微でそこに湿った黴の匂いのようなものが入り混じっていた 初めて体験する場所に 彼は少なからず緊張し少なからず興奮を覚えながら店内に目を走らせた いた 彼女を見つけた 昼間見ている彼女は清楚な身なりをして大人しげな雰囲気を身に着けていた 髪の毛を伸ばしていて、それが黒く美しい なのに 夜に酒場で見た彼女は派手な衣装に身を包んでいた だけど持っているしなやかな肢体は何も変わらなかった そのしなやかな肢体に引き寄せられて彼は夜の店に来てしまった 彼と彼女は立場が入れ変わっていた 昼間 彼女は彼の働く小さな洋食屋に週に何度か食べに来る客だった 来るのは決まってランチタイムが終わった後の暇な時間帯だった 小さな洋食屋は二十代半ばの主人とその雇われ人の彼と二人で切り盛りされていた ランチタイムが終わると二人は交代で休憩に入った 暇な時間帯はほとんど店番をしているようものだった だからたまに来客があっても一人で応対し料理を作り運ぶ事ができた 彼女は不思議にいつも一人で来客した 普通、女性客は一人での来客を嫌うものだ 大きな店舗ならともかく席数の少ない小さな洋食屋なのだから 若い女性客と店員が二人だけになる店内で彼の気持ちが昂ぶるのは仕方なかった 料理を運び終わると会話したくなってしまった 勿論 最初の頃はその欲求を抑えたのは書くまでもない 会話を客が望まなければ、直ぐに来なくなってしまう事を怖れたし、それがきっかけで悪い評判が立って客足が遠のかないとも限らない だけど時が経つにつれてお互いの間に自然と会話が生まれて自然に弾むようになった ある日に 彼女が初めて言ってくれた  わたしこの先に有るスナックで働いてるの。良かったら飲みに来て? 彼女はけいこと言う名前だった 名字は教えてくれなかった けいこが彼に気づいてくれた お絞りを手にとって近寄って来た 着ていた衣装は大きな乳房を強調していた そこからスタートするかも知れない物語に彼は期待して 震えた ---------------------------- [自由詩]雨/由比良 倖[2020年11月8日9時54分] 冷たい雨 青い雨 ノイローゼのように震える雨垂れ 記憶を宿した暗い雨 金色の雨の音 昆虫たちの巣に流れ込んでいく雨 秋のやらずの雨 湿った車の音 国境に降りしきる雨 知らない国に降る雨 活字の行間に滲みていく雨音 裸で踊る人たち 音の無い雨 気配 降りしきるH2O 青い青い青い雨 ---------------------------- [自由詩]突然変異/TwoRivers[2020年11月8日19時27分] 花が咲いた わたしの頭に きれいな花が とりえのない わたしに とりえのない あたまに 人は近づき はなれていく 花に近づき はなれていく わたしは わたしの名前に 意味をなくした なくした意味で 咲いた花 寂しくなった わたしは枯れて 花は咲いてる きれいな花が 咲いている ---------------------------- [自由詩]過記憶/ナンモナイデス[2020年11月13日21時01分] 昨夜の夢で、「文政四年」だけが、 あざやかに目覚めたのちでさえ、 記憶に残ってしまった。 ---------------------------- [自由詩]こころに詩/ナンモナイデス[2020年11月14日21時06分] 名声をえたとしても、 人類はほろびるだけである。 子孫なんて残せやしない。 親と同じく死ぬだけである。 詩を書けるのは自分だけである。 いい詩が書きたい。 こころに。あなたのこころを出せ! ---------------------------- [自由詩]希望/ナンモナイデス[2020年11月16日13時26分] いつか未来の空の下で、 人の生という事象を、 回顧してみよう、 などとおもっています。 多分何事も選ぶ世界など、 ということは忘れられ、 明るみの中で、 精神と環界が融合されて、 いるような、 もはや世界を意識せず、 開示されている自分。 復活・輪廻・進化など、 ただの言い訳に過ぎなかった、 のだと嗤う自分。 ---------------------------- [自由詩]孔雀/アラガイs[2020年11月17日5時17分] 生まれたときは黒曜石のかけら 溶け出した粘綿のように 光の粒が眩しかった 唐突に  知覚らは認識の文字を学び 記憶を辿ればただの生き物と叫ぶ そこはかとなく 溜まる泥水のよう              浸るままに              人はそれをこの世界と詠む  単衣にふりかえる ふりかえると幾人ものわたしがいて                 朦朧と痕跡にゆれる羽織 やわらかな錫    波の気配に打ち消された                ※ 世の中は狭い、空間だらけでオノレと言うからにはオノレでなくてはならないのに俺は何を血迷ってしまったのか跳べもしなければ翅も拡げられない 幾筋もあるアタマに流れる血管はセメダインのように固まってしまったどれが俺なのか、ああ泣けよ泣くなよ、オノさん。オノさんのように跳べるメタルな頸を持ちたい。 ---------------------------- [自由詩]ザッツ*ユーチューバー/アラガイs[2020年11月18日5時20分] 鼻が詰まる季節にはガソリンに気をつけなさい 「こ、この腕、ぃ一本、ぉおいくらでしょうか」? 宣伝(CM)の前には障害のある子にそう言わせている これが世間的には欲望の話題の対象になるのだ。 宇宙には底がない。 動物言語学者。そして人気者のユーチューバーでもあるわたしは異星人なのだ。 この断定的な口調が人々の顰蹙(ヒンシュク)を買い、中には真に受けてとる輩もいたりして、おもしろいからとメディアの連中には受けているのだ。 人々の眼には代弁者の烙印を焼きつける。 このことは?国の大統領から学んだ美学だ。 昨日の夜、動画にあげた大型犬との会話を見てさっそく子供たちからやんややんやと質問攻めの投稿がきたね。   (どうすれば犬や猫と会話ができるのでしょうか? 動物たちはいつも何を考えているのか教えてください。だとか犬や猫たちにも方言ってあるのでしょうか?などとet cetera) クワンクワンニャン、ハハハ 周りにはサクラの動物たちにもちゃんと頷かせては返答をさせている  (ここだけの話し、犬はできるだけうるさいよく吠える犬を集めているのだ)。まあ一緒に見ている親たちは信じちゃいないだろうが、そこがまた狙いなんだな。そう、アレだよ。逆にトークセールスのテクニックって術に嵌めてやるのさ。  「信じないからこそ信じたくなる」 ?「あのう、ちょっと、本当に異星からやって来られた方なら何か、例えば乗り物とか、証拠を拝見させてもらえませんかね」。 そんな容易い質問ならば返答は想定内なのさ□ ◯いま質問しているあなたはいまのわたしと話していると思っておられる。しかしそれは実際に過去のわたしを見ているに過ぎないのです。つまり、えー(゚Д゚)と、いまのわたしは過去の姿に過ぎないのでありまして、ではいまのわたしは一体何処に居るのでしょう? これは誰にもわからないことなので…… つまり証券マンのあなたならわかるよね。  「あのう、こ、この右脚一本、おいくらでしょうか?」 直角に曲がった肘に哺乳瓶を挟ませて、障害のある女性にそう言わせている 生まれつき障害のあるこの女性は一児の母親で、生死をさまよう難産の末に男の子を出産したようだ。 明日の0時刻まえ夜空を見上げてごらん 晴れていれば赤い流れ星が堕ちてくるよ   動画で儲けたらマンションと車を買うよ。高級車/スポーツカーがいいんだけど、フェラーリってお金があるだけじゃダメだって、なんか敷居が高いよね。 先日詐欺罪で捕まった証券会社の社長には4500万もする車/ 売ってたじゃないのさ yo! ねえ彼女、看護師さん、よかったら僕のフェラーリで遊びに行かない?                                  夢の 夜明けまえの明るさ  死ねない  底を見るのが怖いから !僕ならここだよ 若い看護師は必死の形相で未熟児を抱えたまま僕の背中を駆け抜けていく  院内の廊下に鳴り響く力強い足音……… …ポツリ  庭木の小鳥が言い訳をしながら枝から飛び去った。 ---------------------------- [自由詩]わらしべ長者/鵜飼千代子[2020年11月18日18時55分] 真っ直ぐなんて歩けやしない 平らなところで つまずいて ぬかるみで ぐっちゃりなんて いつものことだし おいしくない水だって 飲んでしまうし でもね 泣いたりなんか しない 転んだらね きょろきょろ見回して 何か落ちていないか 探すんだよ せっかく 転んでやったのに もったいないじゃない 拾うんだよ わらでも 石ころでも 1997.7.28. NIFTY SERVE 既出 ---------------------------- [自由詩]民間製/ナンモナイデス[2020年11月18日21時14分] 民間製ロケットが無事、 宇宙ステーションにドッキングできたらしい。 ついてみたら定員がひとりオーバーしていたらしい。 地上はコロナ渦で目まぐるしく回っている。 宇宙飛行士たちは大丈夫だろうか… 『ソラリス』でもみようか。 ---------------------------- [自由詩]純水メタル/アラガイs[2020年11月19日2時30分] 純水とは何も生み出さず何も破壊しない。   by 多児眞晴 含有量0,1パーセントしか含まれてはいない精液のことを精子と呼べるのだろうか。 みんな死んでいる。 これを愛の力強さで甦らせてみようよ。 愛はどこにあるの。 地上の愛は天上の愛 愛は名も知れずひとり歩きしていく ああ、この液体を愛に変えることができるのならば僕は故郷の石ころになってもいい。 昔天才と呼ばれた画家が吐いた言葉。 これは嘘のホントです。 液体って蒸発してしまえば粒になるの?それとも波になるの? きみは愛を知らないから愛されずに愛を追い求めては愛に裏切られまた愛を憎むようになるんだね。 その0,1パーセントの重力を星の重さに変えて新しい世界を作り出そうじゃないか。 やってる?やってる 。 石ころだって火に炙れば輝いて見える。鍛えられた鋼の意思が実は世界を滅ぼしていくのね。極めて煌めいた不実なこころ。 いきものはみんな不実さ。星は壊れまた生まれいく。はじまりの終わり。それでいいのだ。  by    天才バカボン ---------------------------- [自由詩]眠り姫/無限上昇のカノン[2020年11月19日9時32分] 眠りに落ちるまでの 時間を持て余す 今夜はどんな夢を見よう 眠れない夜は更けていく 不眠と過眠を繰り返し 私の日々は過ぎていく 王子さまのキスでは目覚めない 目が溶けるまで眠っていたい 誰も許してくれないけれど ダブルベッドの端っこで 眠りがくるのを待っている 抱きしめられたいわけじゃない 安らかな気持ちで眠りに落ちたいだけなんだ 不眠と過眠を繰り返し 私の夜は更けていく ---------------------------- [自由詩]かきもち/アラガイs[2020年11月20日3時26分] 血を捨てる人もいれば血を拾う人がいる。 否定された/言葉は宝物 どちらにせよいったん保留してしまえば人間であることに違いはない。 休憩時間になれば袋からピーナッツを取り出してポリポリと囓る男がいた。 大木のようなガタイをした、殺気立つ栗鼠の眉尻が吊り上がる男だった。 豆のことは豆屋に聞けばいい 男は仕事を終え帰宅すると手摺りに紐をかけて頸を括っていた 真っ昼間だったが、未だに理由は謎のまま誰もその話しはしない。 それから遺体をみた者もいない。 他人の血をもらったので性格まで変わると期待したのが間違いだったよ あれからどうも体調がすぐれない あいかわらず夜は眠れないし重い夢ばかりみてる(ネタがない) 出てくるのはいつも決まって同じような顔  (ならば酔ってやろう) お酒といっしょにおかきをバリバリ頬張るようになってしまうこれがいつも歯磨きの後なんだな。で、寝る前にお菓子なんていままで食べたこともなかったのに欲しくなるのは不思議なアラメルモちゃん  きっと炭水化物が足りていないせいだろうな、最近御飯の量も減ったし特にピーナッツ入りのあられ(かきのタネ)というおたねさんが付けた名前     これが止まらなくなるんだよ  アタマをポリポリと掻く癖に、     、こんなことまであいつ、、似てきてしまったじゃないか いつまでも忘れられないのは夢で創作する嫌な出来事ばかり   (あれ? 楽しかったことなんてあったっけ)               たまには好みの女とセックスをしてる   マツコ・デイブ・大久保 知らないうちに餅なんか買ってきて仏壇に置いているのは もちろん面倒くさいので飾り餅なんか食べはしない。(餅論)これ下手な駄洒落ね。笑。 ガチガチに固く紐で括ってテラスにぶら下げてやろうかな きっとカラスや鳶なんかが突くんじゃねーの        ポリポリ  ポリ 今日も夢 止まらないね。 おたねさんが付けた、(嘘だろ)                それにつけてもおかきは。 ---------------------------- [自由詩]そこへ行きたい/道草次郎[2020年11月20日6時34分] 遠くで どこかで 風が吹いている 耳たぶをさわりながら 少し冷静でいよう 三つ葉のクローバーを 親指と人差し指のあいだで やさしくしよう 生きている だけで 何かをよごす 黙ったゴリラに憧れる ヒト族でありたい そろそろ終わりたい そろそろおしまいの鐘をきこう どこか 遠い場所で そこが何処かはわからない 風は 吹いている そこへ行きたい ---------------------------- [自由詩]どこまでも透明なルビー/アラガイs[2020年11月20日23時51分] ドアは開いたままにしておいた 大型の遺体処理装置が台車に引かれ入りやすくするために 小さな窓からレース越しに薄く幅を調整したLEDの光が差し込んでいた 朝だ!ピクセル形式に時間は感覚に標す。肌触りのいい合成素地のシーツ 今日も大気は赤茶色に染まるだろう 息もなく仄かにアーモンドの香りを携えてアランは眼を閉じていた 摂氏30度を下る体温の、青白い肌に浮かぶ赤黒い火列の脈筋 生き急ぎ窪んだ骨、その間接の狭い軋み、それは春の乾ききった氷河のように硬かった  あと数時間後に彼の生命は尽きる  ありがとう わたしは流れおちていく涙で指先を湿らし、もうピクリとも動かない唇に押し付けた 冷凍保存のまま精子から生まれた第1世代初期型クローンのわたし その時にこれは使命なのだと自分には言い聞かせていた しかし永遠の別れなのだ、意識すればするほど、この哀しみを抑えるこのできる人間はいないだろう これが感情という電気信号を自ら遮断した想像上の悪魔ならば話しはべつなのだが アランと名付けたのには意味がある。 その昔叔母の好きな俳優の話しを母から聞かされたことがある わたしが生まれてまだ地球にいた頃だった クローンは生まれてわずか10年でその生涯を閉じる 否、生まれたときからその生涯を閉じる日は決まっていたのだ。 Aiにつながれたシナプスの空間 立ち上がると三年でわたしの知能を遙かに超えていた  ( ケン、なぜか深い海の生物が行き交う夢をよくみるんだ ) 1年前からそんなことをよく呟いていた    ( 僕は母体というものを知らないからね。) 同じ顔を持ち寸分と違わない肉体を持ちながらみる夢だけは異なっていたのだ     アラン   第一世代の記憶がどこまで遡るのか、わたしたちはまだ答えを見つけ出せてはいない 第二世代のクローンには人工母体という技術が添えられた ときどき在りもしない神秘的な体験の夢を吐き出しては人間たちを戸惑わせている 燃える惑星の冷たい塵から造り出された透明なルビー そろそろ時間だね。 赤茶色窓の外からエアーパーツの噴出する音が聞こえる 。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]ブナを植える/山人[2020年11月21日8時37分]  十一月十七日、前日まで杉林の除伐を行っていたのだが、その作業をいったん中断し、ブナの植え付け作業を開始した。あらかじめ秋口に植え付け面積を刈り払っておき、そこに一・五メートル間隔でブナの稚樹を植え付ける作業である。成長が活発でないこの時期が植え付けの適期だと聞いた。面積は二十五アールほどの箇所が二か所あり、一ヵ所目はかつて砂防工事が行われた盛り土痕の場所で、表面にはプラスチックの網が施されている。刈り払い後のヨシやススキが枯れたままそこに散らばり、灌木も殴り倒されたようにとどまっている。一・五メートルのスケールを持ち、大まかに長さをはかりながら唐鍬で植え付ける。唐鍬を振るうと、ほぼもれなく木の根っこや蔓部分、石が必ず存在する。ブナ稚樹とはいっても長さが五十センチ近くあり、根っこも長い物では三十センチ近い。それがしっかり収まるためには相当の穴ぼこを掘らないといけない。掘って根っこを入れて土をかぶせ、足でしっかり踏みつけるという作業を日が暮れるまで繰り返すのだ。   私たち生産森林組合の作業は、基本的に刈り払い機がメインで二割ほどがチェーンソーである。草を刈り、芝を刈り、灌木を刈る。枝を打ち、木を伐り、玉切る。主に機械を使って作業を行うのが主だが、このように唐鍬のみを使い終日人力だけの作業は珍しい。  十七日から晴天が三日続き、記録的な季節外れの暑さであった。生き残ったガガンボのような小さな生き物がふわふわと飛び、エナガも集団であちこちの灌木の堅果を啄んでいた。着衣も三枚から二枚になり、最後は肌着一枚で作業を行った。三日かかって、ようやく二十五アールと言う僅かな面積を植え付けた。  ブナが意図的に植え付けられていることを知ったのは、森林組合に勤め始めたころであった。どこそこの現場でブナの下草刈りをやるという事で出向いたのだが、ススキがぼうぼう生い茂る中にブナの稚樹が点在しており、その周辺を刈り払うという作業だった。当時は雑草と見間違えよく誤伐した。八年前にも新たなる場所に地拵えし、ブナを植え付けたのだが、目印テープを着けず植え付け、刈り払い時期にはことごとく誤伐した。当然である。ブナの稚樹より周りの雑草の方が大きいからである。それ以来、植え付けの時点で赤テープを巻いてから植え付ける習慣が始まった。  昨年、新たに五十アールほどの荒れ地を地拵えし植え付けた。赤テープを巻き、湿気の多い、水が浮くような場所などにも精魂込めて植え付けた。一冬越し春になり、梅雨時期に一回、八月末に二回目と下草刈りを行った。目印を付けたブナ稚樹であっても、周りの草の成長が早いところは誤伐してしまうし、当然湿地のようなところに植え付けたブナはすでに枯れてしまっていた。それでも、しっかりと葉をつけて生きついてくれているブナも多くあった。  十一月二十日、別な場所へ移動し、ふたたびブナの植え付けを開始。元の地形は山岳からの崩落地で、クサソテツなどの山菜が多く出ていた場所であり、多くの巨石がたくさんある悪場だ。大まかな目印線をナイロンロープで引っ張り、植え付けを始める。下方の現場に較べると人工的なナイロン網もなく、比較的良い土のようで作業ははかどった。  昼からは残念ながら悪天となり、大雨の中植え付けを行った。老朽化した雨具はじわじわと雨水が背中に染み、ひどく不快だったが、気温は高く我慢できるレベルであった。四時少し前には薄暗くなり、早めに声掛けし現場を後にした。 あと二日ほど植え付け終了までかかるであろうか。  地味な仕事である。そして森林組合の中では最も嫌いな仕事でもある。しかし、ここのところ、毎年ブナの植え付けを行い、夏に二回の下草刈りを実施し、ブナの生存を確認する。ここは良い土ではなかったはずなのにしっかり根を張って葉っぱもつけてくれている。それがひどくうれしいのだ。そして、注意はしているものの、うっかり誤伐してしまったブナには、もう一回幹のどこからか葉っぱをつけてくれ!と祈るのだ。  向こう何年かはこうして下草を刈り、意図的に成長を促すのだ。  ここ何年か、当森林組合所有の山林から用材用の樹齢百年以上のブナが伐られ搬出されている。しかし、機械力(重機類)のない当該組合は伐り出し作業や搬出作業はできないのが大変残念ではある。  私たちが植え付けたブナの稚樹が収穫期を迎えるころ、私たちはこの世に存在しないし、話題にすら上ることもないだろう。百数十年後、ブナの大木がゆさゆさと梢を揺らし、無数の野鳥が群がり、樹幹から流れ落ちた雨水が団粒構造状の豊かな土で濾され、未来人の健康に役立つ水を提供してくれていることを願いたい。   ---------------------------- [自由詩]機械の気持ち/ナンモナイデス[2020年11月21日13時12分] 過去をつくる 慣れてしまえば 私の額から 表象を消せばいい プラグは抜かれては いなかった 電子は送られて なにかにいらだっている 亡霊となれない 機械たちに 羨望している ---------------------------- [自由詩]無花果の木に無花果の実がなる頃に/こたきひろし[2020年11月22日9時48分] 柿の木には柿の実がなる 栗の木には栗の実が 畑には麦や蕎麦が 田んぼには稲が米を実らした 貧困を絵にしたような暮らしの家は 藁葺きの古くて粗末な佇まい それでも庭はそれなりにあった 庭の隅には手作りの小屋があって 何羽か鶏を飼っていた 鶏は卵を産む 年の最後辺りには父親はその内の一羽を潰して 夕飯のご馳走にした 周辺は痩せた土地にしがみつくみたいに 農家が点在していたのに 細い道の通りに沿って三軒は並んでいた その並びは 本宅 新宅 分家 と言う格付けに呼ばれていたが 何代も前の起源で当時は単に隣近所に過ぎなかった 他にも周辺の家々に屋号みたいに付けられて呼ばれていた たとえば桶屋に石屋 これも何代か前、葬式があると棺桶作ったり、墓石に名前彫ったりしてた家の名残りだったらしい 他にも、いわぶり 上 なかみち 観音様などがあった いわぶりは三姉妹の一番上の嫁ぎ先だったがその由来は意味不明だった 他に男二人がいて合わせて五人の子供がいた 私の所の三軒は瀧屋と呼ばれていた 瀧屋の内の本宅新宅分家と言う訳だ ちなみに本宅は地主様 新宅は製麺所と精米業を生業にしていたのに 分家の我が家は単純に貧農に過ぎなかった 家の前の細い通りの先は堀があってすぐ近くの川から水が引かれて流れていた 水は新宅の水車を回しこうばの機械を動かしていた 分家の前の堀の土手には下へおりる道があって母親はよく水を使って農具や野菜を洗っていた そして 土手には私の好きな柿でも栗でもなく、無花果の木が一本植わっていた  私の子供の日の記憶の中では  無花果の木に無花果の実がなる頃に  ばあちゃんが便所の近くで倒れた  まだ日の明るい内で家にはばあちゃんと私の二人だけだった  大きな物音がして同時に悲鳴がした  私は吃驚してしまった  こわごわ便所迄見に行くとばあちゃんが不自然にひっくり返って倒れていた  顔色が普通ではなくその体は痙攣を起こしていた  私はどうしていいかわからなくなったが  泣きわめきながら家裏に飛び出すと畑で作業している両親を呼びにひたすらかけて走った  当時電話はなかった  地域限定の有線電話はあったが隣村の診療所迄は繋がらなかった  どうやって医者に連絡がついたのかは記憶になかった  周辺は隣村との分岐点近くにあったので村営の診療所が一番近かった  医者と看護婦は一人ずつそれぞれが自転車漕いで到着した  頃にはすっかり日が暮れていた  ばあちゃんがすでに息を引き取った後の事だった  無花果の木に無花果の実がなる頃  ばあちゃんの遺体を納めた棺桶は担がれて先祖代の霊が眠る墓の土に埋められた 無花果の木に無花果の実がなる頃に   ---------------------------- [自由詩]ベーカリー/クーヘン[2020年11月23日12時31分] 古書店の角を折れると、そこには煙突の何とも可愛いベーカリー。 この界隈には酵母菌がふわりと漂っていて、よって古書も芳醇に。 ---------------------------- [俳句]ぽんぽん/道草次郎[2020年11月23日14時42分] 冬菊のぽんぽんのよな陽の屯(たむろ) ? 湯豆腐や小窓一箇所開けている ?? 冬麗にすすれば洟(はな)も空の筈 ( >д<)、;'.・ハクション! 書きかけで来客年賀に西陽射す ? 肉球は無料(ただ)に非ずとそっぽ向く ?? 冬将軍まずは薄氷夢で割り ?? 蒲団からはみ出る青空(そら)や冬うらら ??.°?? ---------------------------- [自由詩]この世の地獄上る天国下る悲しみ東入ル/TAT[2020年11月23日16時17分] 西大路五条のロームのイルミネーションが クリスマスを飾る季節が来ると 僕らはいつも冷たい空気に 羽を震わせながら巣籠もりして ローソンの食糧を買い貯めて ぷるぷる震えながら やがて来る春を待ったものだ 今じゃ5Gな8Kな世界だけれども 今もなお太陽は東から昇る 鬱とか言うなよな 貧乏がなんだリストラがなんだ いじめがなんだ 生き延びて笑え生き延びて笑え生き延びて笑え生き延びて笑え ---------------------------- [自由詩]酔いどれ共の歌/ひだかたけし[2020年11月23日19時47分] 月は夜空に煌々と 波は浜辺に打ち寄せて 酔いどれ共が歌っていく 銀の夜道に眩めきながら 酔いどれ共が歌っていく 波は白波 満月の 光に照らされ 行くあてなく 土塊と化した酔いどれの 哀しく暗い頭揺り 海辺の夜は更けていく 潮(うしお)は満ちて潮騒と 磯の香漂う午前二時 酔いどれ共の歌声は 月光に蒼く透き通り 木霊しながら郷愁の 天のみちへと還っていく ---------------------------- [自由詩]眠り姫のシンデレラ/月夜乃海花[2020年11月23日20時13分] 「どうか私を起こさないで」 最後に姫は言いました 「夢ではきっとあの人が助けてくれるわ」 姫の周りには沢山のぬいぐるみがいました 白い部屋に響く呼吸音 心拍数がぬいぐるみと仲良く歌い出す 独りで姫は夢を見る 右手に父、左手に母 手を繋いだあの日々を 誰も迎えに来ない病室に 男がぽつりと現れた 「貴方が僕の母ですか」 姫は眠り続けて夢を見る かつて愛した人はとうの昔に消えたの そんなことも忘れて眠りにつく 「もう、お別れは近いのでしょうか?」 息子の声は聞こえない 「もう、目を覚さないのですか?」 医者に問うても首を振る 「ねぇ、パパこの人だあれ?」 小さな少女が皺だらけの手に触れる 「パパの大事な人だよ」 「どうして眠ってるの?」 「見つけるのが遅かったんだ」 「じゃあ、起きないの?」 じっと男と少女は眠る姫、老婆を見つめていた 「今日でさよならなの?」 「そうかもしれないね」 「そっか」 少女は姫の横に白い花を 玩具の宝石とごっこ遊びのガラスの靴を 「わたしのたからものあげるね、しあわせになってね」 姫の周りはぬいぐるみと宝石 そしてガラスの靴で華やかになった 「もうお別れだね」 「うん、わかった」 男と少女はその後何も言わずに去って行った ちょうど零時になりかけた頃 眠り姫は目を覚ました すると男と少女が車の中で 泣いているのが見えた 眠り姫だったシンデレラ ガラスの靴を履いて 目の前にある光の階段を登り続ける ---------------------------- (ファイルの終わり)