空丸のおすすめリスト 2020年8月11日21時16分から2020年10月17日6時37分まで ---------------------------- [自由詩]反国家/ナンモナイデス[2020年8月11日21時16分] 香港の「民主の女神」ちゃんも逮捕されちゃって… うなぎのぼりに気温も上昇 夜でも30℃だとよ それでも自粛しろというのかい それでもカネを落とせというのかい 開戦も 終戦も 自分のような戦後反戦教育を鵜呑みにさせられた者 にとっては「平和」こそ善であり 国家間における「戦争」は悪なのである その意味において 自分は反ソクラテスとなる 自由でもない自民党よ 破滅せよ ---------------------------- [自由詩]記憶1/ひだかたけし[2020年8月12日21時46分] 折り重なる記憶の襞が 一枚一枚剥がれ落ちては色褪せ 何の感情も伴わずに 震えている、震えている  脱力して 欠落はせずに 只々遠く平板になっていくもの 反芻される記憶の渦に 今在る己を重ねては 問い質している 麻痺しているのは何故か、 消失点は何処なのか、と ---------------------------- [自由詩]即興曲/こたきひろし[2020年8月13日7時24分] 詩は底無しの沼だ 一度足をとられると 一夜が眠れない夜も来る 私の心の何処かに 掘られた運河 水が溢れて 堤防が決壊した 私の知らない街が 洪水に飲まれても 私の詩は底無しの沼だ 私は首まで水に飲まれながら 苦しみもがかなくてはならない ---------------------------- [自由詩]お盆の夜/ナンモナイデス[2020年8月14日13時38分] 青い陶磁器に 蜜豆かぞえ 星屑流そう 還ってくる 両親が 自転車は 二人乗り ああ 怖 ---------------------------- [自由詩]二月の夜に/Giovanni[2020年8月20日9時49分] 子供のころ ある 二月の夜に こんな    ふ     う      に       電        線         を          伝           っ            てどこまでも遠くへ行きたい                        と                        思                        っ                        た                       し                      か                     し           結 局 行き着けるのはしょせん高圧線の高さまで    位 そこで それに気付いた僕は 地 べ た に 寝 転 が っ て 恨 め し そ う に 空 を 眺 め た                  空はどこまでも青く                  空に心を吸われた                  白い少年の神話も                  嘘ではないと思われた                  一人 寂しくなると                  公園で横になり                  透き通る空を眺めた                  空は 僕みたいな                  プータローの心も                  青々と吸ってくれるかな                  そう思いながら 草むらに横になって僕は僕の四肢が空と一つになる夢を見た    大人になって  ずいぶんと経った  ある 二月の夜に  僕はもう空にも  地べたにもいないことに  ふと 気がついた  僕はどこに立っているのだろう  僕はどこに行けばいいのだろう  二月の夜空は寒すぎて  二月の地面は凍てついて  帰りたくとも帰れない  行き場のない僕たちは  ただ 言葉にならない  行き場のない言葉を  あてもなく あてもなく  紡ぎ続けるばかりだ   2007.2.20 ---------------------------- [自由詩]That's all./鵜飼千代子[2020年8月21日20時21分] 家族だから、ですって 家族か否かって昔馴染みな軸だよね。 甘やかしてもらいあざーすです。 ---------------------------- [自由詩]悪政の一応終焉/ナンモナイデス[2020年8月28日20時51分] 総理在位最長記録達成記念  たとえば「アベノオムツ」 なんていいんじゃないか なんてね 最後の最後まで いいかげんな政治屋でした ---------------------------- [自由詩]幸せを呼ぶ/夏川ゆう[2020年8月29日5時35分] 前向きな気持ち 屈託のない笑顔 幸せを引き寄せる その流れは見えないけれど 見えるぐらい明るい日常 色んな人に助けられて 今の自分がいる 嫌なことがあっても いつの間にか忘れていて 幸せなこと考えている 車窓から見える景色 どんどん変わる景色が 全て幸せに見える 一つの幸せが次の幸せを呼ぶ 日常は明るい ずっと明るい日々 ---------------------------- [自由詩]居場/ナンモナイデス[2020年8月29日12時55分] けだるい過去の一日 汗だるむ体の誘引にくらむ 性とは「力」か… あいかわらず 空虚に居る ---------------------------- [自由詩]インターネットに出会ってなかったら/こたきひろし[2020年8月31日6時48分] 本当はね 詩なんてどうでもよかったんだ だけどね 私は私なりに どうしても自己表現出来る方法が欲しかったんだ でもね 私にはこれと言って何も持っていなかった 絵は上手に描けないし 歌は好きでも音痴だったし 運動能力なかったから コンプレックスしか湧かなかったし だけどね 私は私なりに自己表現出来る方法が欲しかったんだ どうしても 私は子供だった頃から 一人でいるのが好きだった 一人であれやこれやと物思いに耽るのが好きだった だからって 「孤独をひたすら求めていた」 なんて嘘だった でもね そういう風に周囲に思われる事がここちよかったんだ それは正にひねくれた子供だったかも知れない 周囲には少なくともそういう子供に思われていたんだろうな でもね その実体は単純に他者とうまく繋がれない だけだったんだ 厄介な事に家族ともね だからこそ 私は私なりに自己表現をして 周囲にその存在を認めて貰いたかったんだ 本当はね 詩なんてどうでもいいんだよ ただ 私には他に武器が見つからなかったんだ やっと見つけたんだよ でもね そんな事誰にでもあるさ そしてインターネットに出会ったんだ 私は見つけた武器の銃口をインターネットの宇宙に向けて 引き金を引いて引いて 引き続けているんだ ただ それだけさ 他に理由なんてないよ たとえ あったとしても 自分にはそれが何なのか解らないから ---------------------------- [自由詩]Rebuild/1486 106[2020年8月31日22時24分] 一週間前から降り続いた雨のせいで 河沿いの家屋は今にも流されてしまいそう 避難したホテルの1階から不安そうに眺めていた 叩き付ける雨がガラスまで壊してしまいそうだった 晴れ上がった翌日の昼下がり モノレールで妻と買い物に出掛けた 向かい合わせに座った見覚えのある顔 ぎらついた笑顔の飲料メーカーの営業さん 断れるような理由など持ち合わせておらず そのままギフトの買い出しにつき合わされた 床に落ちたオリーブオイルの瓶の泥を払った時の 軽蔑するような妻の顔が頭から離れない ---------------------------- [自由詩]希望と絶望の炎/フリーダム[2020年9月6日2時10分] きみは希望の幼い炎 太陽へ向かって 希望と絶望を燃やす炎 息をしながら上昇する やがて雨つぶが落下し 一滴づつに絶望の灰を 閉じ込め 朝がもれ出す ---------------------------- [自由詩]羊/レオレオ[2020年9月8日11時13分] 夜は思考が暴走する。 早く逃げるんだ! 羊の大群は羊飼いに任せて走れ! 早く!早く!追い付かれるぞ! 目を瞑って早く走れ! 早く!早く!早く! 目を開けるんじゃない! 走れ!走れ!走れ! ---------------------------- [自由詩]栞/白島真[2020年9月12日9時11分] 許されるならば 喜怒哀楽の頁にはさみこんだ しおりをほどき 薔薇のトゲのように 愛は血まみれの行為であったと 旅立つひとに告げたい 愛は規範をもたない むくんだ背すじに頬をあてて はるかな心臓の音を聴いていた あの日、たしかに 脈動する心の聲を聴いたのだ 街から歌声があふれる 〜きみを守りたい〜〜♪ だが、どうしたら? 翳りゆくものと ともに在ること 在りつづけること 喜楽の頁のみをとりだし 千年の年月をかけて あかるい花びらの しおりをはさみこむ ---------------------------- [自由詩]再帰する秋/ナンモナイデス[2020年9月15日13時27分] やっと 眠れぬ 暑苦しさも 終わったらしい 空は ひたすら 秋です 鳥肌です 風が吹けば ページを めくれば 忘れられる 苦しさなんて ---------------------------- [自由詩]夕焼けのやさしさ/フリーダム[2020年9月20日3時18分] きみが好きだと言った 夕焼けのやさしさが ぼくの瞳から 体の端までしみこみ ぼくとsekaiの隔たりは なくなる きみはさくらんぼを 舌先で転がす そして夕日が沈んでいく ---------------------------- [自由詩]ラム、ふたつ。/ナンモナイデス[2020年9月25日21時10分] 肉の焼ける、脂のかおり。 喉が焼ける、酒のかおり。 胸を焦がす、秋のラム… ---------------------------- [自由詩]夜の通過待ち/七[2020年9月26日2時54分] 秋の虫たち るうるう 無残に刈られた草むらの 最果てみたいな端っこで 透明になる身体 開いた扉の まっくらやみの先を 眼をつむったわたしは見ている 姿なき虫たち 愛でも希望でもなく 破滅を刻んだ翅を立てて 寒くもないのに震えるのは あのひとが置いていったサンダルから 陽炎のように立ちあがる心残りを 冷やさないといけないから お腹が空いたね この電車 闇を照らすには足りない灯火 夜の通過待ちに 考えなければならないことがたくさんありすぎて ようやくすべきことが見えたかのように ひとりだけ スマホの電源を切る ---------------------------- [自由詩]曇天/レオレオ[2020年9月30日11時38分] 童貞が 洒落で道程を読んで見る。 どの程度理解するか。 曇天の下ふと思い出す。 重い 重い! 重い!! 振り返るな! 私の詩は詩なのでしょうか? どなたか批評お願いします。 ---------------------------- [自由詩]朝、外出前に恋/レオレオ[2020年9月30日11時48分] 朝の気温が違う。 ほんの少し、昨日より低い。 汗をかく量が昨日より少ない。 窓の外の景色が少し違って見える。 風が変化する。 においが少しずつ変わっていく。 こうやって季節が動いていく。 暑い温度がもうすでに恋しい。 あぁ、雲が変わって行くよ。 ---------------------------- [自由詩]三河高原/Giovanni[2020年10月2日20時32分] 炎は薪から放たれた 銀色の薪台と 明々したランタンと 椅子に寄る僕を 確かに捕らえたのだ 星明かりの下 ただただ 炎が爆ぜるのが 天頂に突き落とされる 太古の爆風に思えた 舞い散る炎が グングニルのように 青白い星霜を 一息に貫いた気がした そして 僕の命も 束の間 激しく爆ぜた気がした でも いつしか 熾は 焚き火台の中で 暗く白く縮んでしまった 虫の声に満ちた 秋の三河高原で 一人コーヒーを啜るけれど いつまでもいつまでも 暖かくはならない ---------------------------- [自由詩]地平線の広がり/フリーダム[2020年10月4日5時13分] 地平線の終点のない広がり 始まりも終わりもない線 見えないもの達が存在する 海は空と交わることはなく 永遠に夢みる この広がりは僕が消えても いつまでも存在する ---------------------------- [自由詩]酔いざまし/レオレオ[2020年10月4日8時20分] 研磨?磨耗?朦朧 朧 老 労 牢 朗 ウロ うろ ウロ うろ ウロ うろ彷徨う。 あんよは上手 あんよは上手 酔う 陽 酔狂な今日。 今日も今日とて今日もうつろう? 陽炎 ゆらゆら 膜をはる 牢屋のようだ ---------------------------- [自由詩]秋の詩片/梅昆布茶[2020年10月5日23時32分] 音楽を聴く分析学的な時間が好き きみと過ごす解析学的な時間 深く沈潜してゆく愛情にも似た雪のよう 罵られる騾馬のように時間が過ぎていっても 愛撫する隙もないきみと暮らしているぼくは 無聊をかこちそれでもはてしない時間を夢見る かつて遠い戦さがあって詩人が沢山死んだ時から 詩はみずから立ち上がって歩きはじめたのかもしれない 12月の曲がり角はちょっと先にあって詩人をいざない 今月の支払いに困窮しているぼくは詩人に似ていると 10月の詩人はいつも寂しい 11月には借りを返そうかと思っても すぐに新年が来てしまうので ちょっとした賀詞を用意していても 友人は遠のき妻は咳き僕は曲がった臍の 隣で詩でも描いていようかと思うのです ---------------------------- [短歌]大雨/夏川ゆう[2020年10月6日5時13分] 大雨で川の流れが早くなる日本の何処かで今日も大雨 大型のスーパーばかり作られる近いエリアに幾つも完成 大好きなスウィーツの店完全し行列が出来るほど客が来ない 隠れんぼ子供の頃によくやった相手を探すのが得意だった ---------------------------- [自由詩]愚かこそ生きる肥やし/こたきひろし[2020年10月7日23時56分] 便箋一枚惚れた女の名前書き綴る 封筒に入れて封をして切って貼って 郵便ポストに投函した 惚れた女の住所と名前を表に書いて 裏側の差出人の住所も名前も書かなかった 俺はなんて意気地なし 愚か者だった 次の日に 惚れた女と会ってって挨拶して それ以上 何も言えなかった 惚れた女に何の変化も感じられなかった 俺は心臓が破裂寸前だったのに それを必死に隠して平静を装ったのに 惚れた女はいつも通りだった 雑居ビルの三階にはサラ金の店舗があって 美容院があって歯科医院があった そこはビルの最上階だった 一番奥の一室は二階のパブレストランの倉庫兼休憩室であり 出勤時退勤時のタイムレコーダーが置かれていた 俺は偶然を装い惚れた女を待っていた お互いの退勤時間は三十分ずれていたのに 度々それが続けば幾ら鈍感な相手でも勘付いている筈だ だけど惚れた女はずっと素知らぬ振りを重ねていた その夜 俺は彼女の後に付いてエレベーターに一緒に乗った それは初めての事だった 俺の行動に惚れた女は驚いた様子だったが終始無言だった 俺はその沈黙にたえられずに口が滑ってしまった  今度一緒に映画でも見ませんか? すると惚れた女は聞いてきた  今度っていつですか それは長く苦しい恋愛への始まりの一歩だった ---------------------------- [自由詩]人体実験/ただのみきや[2020年10月10日16時26分] ネズミ ネズミが死んでいる 毛並みもきれいなまま 麻酔が効いたかのように横たわり 玄関先のコンクリートの上 雨に濡れて隠すものもない 死んだネズミは可愛らしく 人に害など決して与えない 童話の中のやさしい動物か ビーズの目鼻を縫い付けた よく出来たおもちゃのようにも見えた あの欲求と運動 引っ切り無しに揺らめいた 生命現象の鎮火により じっくり鑑賞できるのだが 果たしてこれは 死を枕にすやすや眠るネズミそれとも ネズミの中でまだ寝ぼけ眼の死なのか するといつもの煩いがやって来る まるで季節の挨拶でも交わした後 こちらの出方を待っている 問うような 促すような沈黙が 面倒は先延ばし わたしは仕事へ向かう 生ごみに出すか 土に埋めるか 鴉が持ち去ることを期待して 詩は方便 わたしの生は詩へと瓦解する 虚構として再構築され 前世のように匂い立つもの 詩と呼び馴らす 棺あるいは墓石に宿るもの 真実と 口にした途端偽りとなり 鏡の国で無限増殖する その夢幻的変換 主観的幽霊を 詩と名付けて可愛がる つまり方便 わたしがそう呼ぶものを 他人にもそう呼んでくれなんて 端から思っていない 慰労会 もう長いこと世話になりっぱなし ずいぶん迷惑もかけてきました わたしも年を取り あなたも年を取り さあ 今夜はわたしのおごり とことん飲み明かしましょう もっと強いやつにしましょうか? どんどんやって下さい 肝臓さん 水栓を捻ると 蛇口から水が流れ出す 水は光を宿す 半分透過させ 半分滑らせながら    長い産道を通ってやっと生まれ出たのか       暗い死の陰を巡って再び生を得たのか         ゆらめき 踊り 落下して               排水口へと消えた                 なんと短い川                     ささやかな滝 この国の秋は 鮮血の木の実の下 幻の金貨が揺れている 尽き果てて剥離した蜜蜂の痙攣 光と影の象嵌細工 夏へ支払ったものの釣銭 吹き矢を放つ子どもたち 戦慄く影は忠実に踏まれ続ける花 裏切りを特権とする本体とは違い リボンを外して包み紙を剥がす 水耕栽培の根のように育った少女は ワッフルを枕にして子宮の吃逆(しゃっくり)を数えていた やがて不眠症の魚の水槽へと成長し 見つめる者の視線をすべて屈折させた 物事一つ一つは繋がりもなく別個の鍵を持っていた 一切の意味も疑問も必要ではなくただ鍵を挿して回す 社会は行為とその繰り返しを要求した 彼女は機械の教派と教義の信者のように無垢のまま 高所作業車が空の神経に咬み付くと 皺の寄った太陽は御守り袋を開いたままで沈黙した 時間は裸体で落下してミミズたちのSOSには答えずに 煌びやかな散乱でレジスタンスを鎮圧する 透明な隠蔽 忘却はすでに鬨(とき)の声を上げ 犯人は次々処刑され 紫陽花は色を変え 物事の重さは絵へと塗り込められてゆく ばら撒いては巻き上げる この国の秋は美しい光輪を帯びて 小火 今朝方胃の袋上部のアパートの一室で小火(ぼや)があり  強いラムを頭から被って焼身自殺した五  十代の男は不死身だったらしく以前は  スーパーマンとして人気を博していたが  人助けに飽き飽きして引退してからは  「ゾンビ」と呼ばれ近所から敬遠されて  いた男は散歩を日課としていてダンテの  ように地獄を巡ってはこれ以上死ねない  死者たちの悲惨な刑罰を眺め様々アフレ  コすることを唯一の楽しみとしていたよ  うで病院からの入院案内を無視し続けて  恋は後々燃え上るものと言いながら近所  の自動販売機と交尾を繰り返していた  そんな自分のみ愛するネッカチーフ常習  者不死身の自殺魔は明日も明後日も強い  ラムを頭から被ってジッポで火を点ける 今朝方胃の袋上部のアパートの一室で小火があり きみは きみは風に舞い上がる古新聞 四散する記憶と記録であって 虹を駆け上り滑り落ちる自他の区別を失くした心音 きみはビルの屋上に捨てられた靴の中のオレンジ 身体の断面に一つの眼球を持ち ゆっくりとだが正確にわたしを眼差す磁石 きみは香水瓶の中で溺れた蜘蛛 箪笥の中で下着に埋もれる香しい棺 互い違いに渦を巻く蝸牛の無限大に隠蔽された ひとつの舌による両性の囀り 絶えず愛に枯渇して死に続ける池の魚 きみは白紙のまま投函された言葉の処女性を 感光させる疫病にも似た赤い涙の滴礼 汎神論と構造論で世界を紐解きながら それらの外に在る唯一絶対の眼差しに焼かれて 大理石よりも白い塩の柱 崩れる刹那の風の微笑 言葉の一元論で背中から刺し止められた 虹色の蠅の標本であり苦悩と悪夢のゆりかご  性器に擬態したウツボカズラ 祭壇の直前で谷底へ落下する美しい滝 白く長々と裂けてゆく花嫁に似た鎮魂歌 マトリョシカ 幸福は心に溶けるけど 不幸は溶けず固い層になる どの年頃 どの層が語っても その口は今の自分の口でしかない 万華鏡 記憶や苦痛の切れ端が 幾つか落ちているだけ 出口のないうつろな心 華などひとつもありません 虚像だけなら差し上げます                    《2020年10月10日》 ---------------------------- [自由詩]かけない手紙を 他/道草次郎[2020年10月11日1時33分] 「かけない手紙を」 かけない手紙を くもにしたためたい くもはながれながれてあの街へ 読めない本で 眠りたい 夢見の国はほろんで咲いて さみしい人と さかなになりたい 海底火山へ遊覧飛行 1人の部屋を 2人にしたい 部屋は部屋の外で待機中 かなしみよりも やっぱり風とあなたの八重歯 井戸のそこには 青い鳥 「アンガーの詩」 時計へ おまえは態度がわるいぞ だっておまえは時間なんてちっとも知らないんだからな チクタクチクタク それがおまえの仕事なのは分かるが もう少し態度を改めろよ でなけりゃ打ち壊してくれるぞ 人間は死ぬんだから ほんとは怖いものなんてこれっぽっちも無いんだ それをゆめゆめ忘れるな 星の光へ おまえは遅いぞ あんまりここに来るのが遅すぎる 広いことを言い訳にするなよ そのくせ ここいらではえらい威勢がいいじゃないか 飛んだり跳ねたり 全くどういうことだ 世の中じゃな そういう遅刻してきたのに満塁ホームランを打つような奴は一番嫌われるんだ 覚えとけよ 猫へ いい加減にしろよホントにもう そうやっていつから猫のふりをしてる? 人間との付き合いが始まったのがエジプト時代なら クレオパトラもうまく騙しやがったのか まあ敵ながらアッパレではあるが 仕草や性格、尻尾の角度に至るまで ぜんぶ計算ずくなのは知ってる おまえらが夜の空き地で 夜な夜な会合を開いてるのを知らないとでも思ったか 人間へ ふざけるなよ全く おまえにはホトホトあきれた お前に比べたら時計も星の光も猫もまるで聖人君子だ 頭がでかすぎるぞまず それから毛量が少なすぎる 筋力をどこに置き忘れた? 指ばかりうようよとああ気持ち悪い 喉の具合はどういうことだ なんであーだこーだと 用でもない言の葉を散らかすか ほら箒だ さっさとそれで綺麗にするんだ そしたらおまえはずっと静かでいろよ それがおまえのためだ 心しろよ 「時間噺」 22時27分を一言で表してください うーん、うーん、うーん 「干潟のビー玉」 では22時28分は? ちょ、ちょっと待ってよ。これじゃあええっと、60×12=720個も言わなきゃならないってこと? OKじゃあ節目節目でいこう 4時57分は? 「まだ騙せる」 7時36分は? 「特になし」 10時07分は? 「10時07分か」 13時03分は? 「今から始まるんだ」 16時46分は? 「いや、まだまだですよ」 17時30分は? 「さようなら」 18時33分は? 「ナタデココいらない」 19時45分は? 「光陰矢」 21時09分は? 「爪切り」 では最後に、時間というものを一言で 「クソッタレで非道な伴走者」 ……ちと、ながい 「左手があがらない」 銀河の とある惑星 とある国 とある地域の とある一角 人間 というのがいる 神様の目 からすればちっぽけすぎて やれやれ ゼロに限りなく近い 存在 みたいなもの その人間が 右手をあげようとしたら その 右手があがった のをみて 神様 愕然 青ざめる なんだあれは あんなもの みたこと ないぞと いわんばかりに 人間 今度は左手を ……あげられない! 左手をあげようとしても 左手が あがらない! 神様 ニヤリとして または ホッとして もとの 仕事にもどる 次はえっと あの 星にするか 銀河の とある惑星 とある国 とある地域の とある一角 人間 というのがいる 神様の目 からすればちっぽけすぎて やれやれ ゼロに限りなく近い 存在 みたいなもの どうも最近 その人間の 左手が どうやらあがらない 「1度でいいから言ってみたい」 1度でいいから言ってみたい 右も左も分からないと 1度でいいから言ってみたい 親父にも殴られたことないのにと 1度でいいから言ってみたい (淀みなく)承りましたと 1度でいいから言ってみたい 山田くん、もう一枚!と 1度でいいから言ってみたい それでは来週のサザエさんはと 1度でいいから言ってみたい それでは皆さん良い一日をと 1度でいいから言ってみたい 大将マグロの上物二つお願いと 1度でいいから言ってみたい 1度でいいから言ってみたいと ---------------------------- [自由詩]シグナル/七[2020年10月12日0時43分] 終わったテレビが砂嵐になっても 続いている物語 今日ごはんを噛みました 敗北者の味がしました 必要なのは それでいいと言ってくれるひと それとも それでは駄目だと言ってくれるひと おしまいにすることが なぜできないのか 今夜もGoogleは答えない Siriは肝心なことをまだ言わない 降りそそぐシグナル たどり着くあてのない幾億のつぶやき 砂嵐のテレビモニターは配線をはなれて まよなかを渡って行く 画面に 無いはずのものが映っている どこへ向かうのか 知らない   ---------------------------- [自由詩]休職/TwoRivers[2020年10月13日19時20分] 低い山を時間をかけてゆっくりぐるぐる登りたい そんな自分を許したい ---------------------------- [自由詩]約束におは付けないで/こたきひろし[2020年10月13日22時43分] 同じ人間なのに 平気で約束破る人がいる 同じ人間だから 必ずきっと 約束守る人はいる 同じ人間だけど 約束交わす相手さえいない 同じ人間なのに 平気で殺す人がいる 同じ人間だから 殺そうとする人の前に立ちはだかって 盾になる人はいる 同じ人間だけど 見てみぬ振りする人はいる 同じ人間だけど 惨劇から眼を反らす 人はいる ああ この胸の痛み 痛みを止める薬が欲しい せめて痛みをやわらげてくれる 薬をくれ 愚か者よ そんなものはどこにもない 痛みから逃れるすべは たった一つしかない 愚か者よ それは自分で探せ 同じ人間なのに 簡単にしあわせ手に入れてしまう人がいる 同じ人間だから 悪い籤ばかり引いてしまう人がいる 同じ人間だけど しあわせをさっさと 諦めてしまう人はいる 同じ人間だけど 同じ人間だけど みんな同じ人間だけど 人間って いったい何なのか わからなくなってしまう人は 必ずいる ---------------------------- [自由詩]若気の至りとは言わない/こたきひろし[2020年10月13日23時46分] 仕事終わって家に帰れたら 明日の仕事に差し支えないつもりで呑み始めたが つい酒の量が度を超えた それでも呑みたりなくて 呑み続けたら 酒が切れた 切れたら繋ぐしかない   ビールでも焼酎でも何でもかまわないから、アルコールが入ったもの買って来てくれ と嫁さんに頼んだら  今夜はこれでお終いにしたら と嫁さんが止めたから  いいから買って来い お前は俺の言う事聞けないのか 誰のお陰で暮らしていられると思っているんだ! 普段は大人しいのに酒の勢いで怒鳴ってしまった そしたらすやすや眠ってた筈の まだ一歳の娘が目をさまし火がついたみたいに泣き出した   まったくうるさいんだよ! さっさと泣き止ませろ!お前は母親だろうが! と暴言を吐いてしまった 父ちゃんが悪いんじゃない お酒がキチガイ水なだけ 父ちゃんが悪いんじゃないから 子供の頃 父親は酒に酔うと見境なく暴れる人だった 母親も子供らも嵐が去って父親が眠るのをじっと待つしかなかった なのに俺も父親みたいになっちまたのか 父親みたいになっちまたのか 悲劇を繰り返し ---------------------------- [自由詩]遅いランチタイム/七[2020年10月14日0時31分] ぼやけた眼鏡のひとが わたしを連れていく とんかつのお店 ご飯は小盛りで と言うのでわたしも小盛りにする 遺伝子の特集をとりあげた雑誌をながめる ばらばらになったいくつかのしるしを  つなぎ合わせて ひとつのストーリーにするため 知恵を重ねる いろんな真実が見えてくる ひとは怪物かもしれない とんかつは逆 ひとつの塊をばらばらに刻んでいく 何切れ食べても飽きないので 飢えていると思う 言葉では現せないような欲望に駆られていることに お互い気づいて ふと目が合う くちびるの端からしたたる血 ソースだったか 支払いを済ませると 厚いレンズの眼鏡だったひとは ハンカチで丁寧に眼鏡を拭いて すこしはにかんで言う 美味しかったですねと ええほんとに そしてすたすた歩いていく ひとりぼっちのように その影はいびつな怪物にも見えて とてもうすい 踏まないように 関わりのないほどは離れてしまわないように とことこついていく   ---------------------------- [自由詩]秋/ナンモナイデス[2020年10月14日20時40分] 英語おんちでよかったよ。 なによりもアメリカ人でなくてよかったよ。 柿をたべましょう。 秋晴れでよかったよ。 なんにもない一年でよかったよ。 ---------------------------- [自由詩]席/クーヘン[2020年10月15日12時04分] 窓側の席に座り、夜間部の君はどんな字を書くのですか? 昼のあいだに、秋の陽光をたっぷりと吸った僕の席に座り、 ---------------------------- [自由詩]幸福のリスクとデメリット/こたきひろし[2020年10月16日5時33分] 家庭を持って 家族が二人から四人になって 家を持って 車に乗って 可愛い猫を飼って それでも それでも それでも しあわせを100%迄 感じる事のない私は 何かが何かが 元々 欠落してるのかも知れません たとえ 100%のしあわせに一度や二度位は到達したとしても 人は直ぐに慣れてしまい その内に厭きてしまうんだと いつも冷めた気持ちで分析解読してしまうような私には 道理で 100%のしあわせなんて手に入らない 筈だわ もし 幸福を正確に計るレベルゲージがあったとしても その上限と下限の位置は人それぞれだと思います 上限いっぱいに達した人も いずれ下がるだろうし 上限と下限の間にあれば それでいいと諦める人もいますし ああ 何だろよくわからない。 色々考え過ぎて 前方が霞んで見づらくなってしまうんだ 私にはねじれ曲がった方向しかつかめないのかな ああめんどくさい どうせなら脆くて壊れやすい幸福なんて いらないよ 今のまんまこのまんま 不幸を抱えて生きて行こう その方が悩まなくて済む 下手に100%を手に入れてしまったら ふたたび不幸のどん底に堕ちたら 到底立ち向かえなくなるに違いないから きっと 這い上がれなくなるから ---------------------------- [自由詩]昼休みの両義性/道草次郎[2020年10月16日12時32分] 昼飯を食べて ぼけーとする いなくなったら どうしよう 自分が たいようの存在 ---------------------------- [自由詩]泡になる/無限上昇のカノン[2020年10月16日16時31分] 私は明日、泡になる 私は彷徨い露となる 希望の欠片拾い集めて 儚い夢を探し求める ついに審判がくだされる時 私は哀しく散っていく 私は今日、泡になる 波に揺られて消えていく すべては自ら招いた種で 救いの道も残されてはいない ここがどこだかわからない わからないまま彷徨い歩く わからないまま散っていく 祈る言葉も虚しくて 謝罪はすべて言い訳で 赦しを乞うのが精一杯 波に揺られて消えていく 静かに静かに消えていく ---------------------------- [自由詩]予感/ナンモナイデス[2020年10月16日20時40分] たぶん、この秋にも、 たいせつな、なにかを、 書き忘れ、 なにも気づくこともなく、 日々を削り、抜けてゆくことだろう。 ページもめくれやしない、 錆びたナイフじゃぁ… ---------------------------- [自由詩]人には顔が有りまして/こたきひろし[2020年10月17日6時37分] 人には顔色が有りまして その三原色は 泣く 笑う 怒る でしょうか 他人の顔色の変化はたいがいは判断が付きますが 自分となるとどうでしょう いちいち鏡見てたら、たとえ泣いたり怒っていたとしても 可笑しくなって笑ってしまうでしょうね 何はともあれ 他人の顔色伺いながら仕事したり生活しなければ なりませんね 他人の顔色伺って 自分の顔色 曇ったり 雨降ったり 風吹いたりする訳ですから 自分の顔色で 相手を晴れにしてあげられたら それはそれで 幸せな気分になれるんじゃないでしょうか あくまで理想論 ですけどね この世界には 他人を困らせたり悲しませる事で 自分のストレス解消法にしている輩が横行してますしね そこの貴方 貴方に直接言えない事をここに書いて 私はストレス発散してるんですけどね ---------------------------- (ファイルの終わり)