空丸のおすすめリスト 2019年11月25日21時29分から2020年1月1日23時23分まで ---------------------------- [自由詩]夜間飛行だけ着けてる/もとこ[2019年11月25日21時29分] ふしだらな鱗粉を撒き散らして 夜の中を飛び迷うアタシたち シーツの海原は遠く霞んで 二人の罪状も曖昧になっていく 「アタシたち遭難者みたいだね」 「むしろ亡命者だと思うんだけど」 戯れに中指の先を曲げれば キミは荒馬を真似て首を反らす きっと、その恥知らずな曲線には 大切な意味が隠されてるのに 早くなるリズムに思考を殺されて またしても秘密は唇に溶けてしまう 「ねえ、方角は間違ってないよね?」 「大丈夫、何もかも間違ってないから」 世界の果てで燃え続けるという 赤いロウソクの聖なる焔に 抱き合いながら焼かれるため 夜の中を飛び迷うアタシたち ---------------------------- [短歌]生暖かさ/夏川ゆう[2019年11月26日5時04分] 渋滞し夕暮れ時の街赤い仕事疲れがどっと出てくる 昔からチーズの匂いと味が駄目苦手意識が高まるばかり 感謝して愛し愛され生きている不要なものが存在しない 南風生暖かさ連れてくる北風との闘いに負ける ---------------------------- [自由詩]谺/梅昆布茶[2019年11月26日5時22分] 問い返すたびに僕が増えてゆく ジミヘンのファズノイズでもあるまいに あるいはピンクフロイドのエコーズ 探す程に海は深く遠く風ばかりが吹いている 僕のこころの荒涼が優しく増殖してゆく やわらかな定形が好きなのかもしれない 人間ってそんな感じかなあと思ったりもする 骨格にささえられふわふわと生きている僕たちの領土は何処にあるのかと考えると 領土が逆にに借りを かえせと要求してくるような きがするのです 何もかもかなぐり捨ててなんてできなっかったのかもしれない ---------------------------- [自由詩]LOVEらぶラブ/こたきひろし[2019年11月29日6時06分] 極めて良質で純度の高いLOVEと そうでもないLOVEの度合いを計測する有向なキカイがあらわれたら 世界は大きく揺らぐだろう もし そんなキカイがあらわれたら 相当 世界は混乱するだろう だとしても 男と女の体の欲求は滴りおちてくるから ひとつに重なって 理性の裸電球は粉々になって飛び散ったら そこに心なんて実体のつかめないものが 入り込んでくる隙間は埋まってしまうのに 変化はないだろう と推測される そこには 生殖と言う厳然とした法則が横たわっていて 男はおのれの遺伝子をばら蒔きたいし 女は遺伝子を選択して受け容れようとする 自然を基本的には拒否できない 筈だったが 人間だけはバスコントロールを神から与えられて 避妊をゆるされている だから、 LOVEらぶラブ たとえ 男と女の関係にひとかけらのLOVEが 存在しなくても うふふの境地にたどりつけるのさ たとえそれが 行きずりの恋 わんないとLOVE だったとしても 誰にそれを咎める資格があるんだ なんて 書いてはみたけど 俺には どこまでも ないものねだりさ ---------------------------- [自由詩]偽物の光と影を借りにゆく(nested) /AB(なかほど)[2019年11月29日17時37分] 君が笑ってるなら 偽物でいいかと思う 君も偽物だったならばと あお あお  と子供のように泣いた その涙も偽物だから まだよかった 僕のことばが偽物だという のならば 君が本物なんだろう それでいい ---------------------------- [自由詩]郷(さと)/「ま」の字[2019年12月7日22時38分] 風がどっとおろし 茶と黒のふとい縞がうねりあがる 「おーい」 影がよぶ なんだ陽とくらがりとが罵り、奪いあう場に誰もいない 草の実は野をとび またとび つぎつぎととぶのに 純潔な実も 描いた軌跡ひとつひとつも (裏かえり遠ざかってゆく鳥の影も わたし以外の者はすべて忘れる 「おーい これは誰の記憶、誰の視界、時は誰の持ち物 立ったかたちを置き去りに  一気に堤を駆け下りた  血の色透けたら みぎ ひだり  在るか 無いかの そら思案 ほおお! サムライの世はとおに去った 土酋ののぞみ儚くも帝国の時代(みよ)も過ぎ いまの辺鄙の地はいたずらに冷却し 山岳は厳然とたかく 町も、路も、ひとの気配も、時にするどく時に鈍く光っている ここしか知らないここ 「おーい 少年だった。老いた。  (少年だった。 去った。 喉にすこうし血の匂い (病弱な子だった) そのころは世界のどこなりとも通り路があり 路を継ぎ換え継ぎ換え ひくい家々の軒を抜け 今では露わの胸と腕を伸べた記憶(おのれ)を追い抜いてゆく (殷賑なれ 華やげる土俗 外れさびた街) やがて草の実の飛びかう野のさきに うっすら海にくちをあけたものは現れる 暁まえの様子に似て うす昏い輪郭も美しゅう  おれは死んでしまいたいか! 生きてしまいたいか! (おーい こたえろ そのさきの海に走りこめば (言ってみろ! 沖の堆に群れる黒ぐろとしたいきものたちの影に あたたかの日は溜まり 「おーほ! 行ける 行ける 行ける いつかは行けるのだと 歓びが 湧きかがやき しらしらとさわにさやぎ またさびしく ---------------------------- [自由詩]低温火傷/鵜飼千代子[2019年12月9日15時54分] デイサービスをやめて 寒くなってきて身体が硬くなってキツいから 寝る時に貼らない簡易カイロを左肩に敷いて寝た。 低温火傷していたなんて気づかなかった 次の日の夜背中が痒くて孫の手で掻いたらヒリヒリするから 家族に見てもらったら 火傷していて皮剥けて汁出ているって 土曜日の夜だし家にあった火傷の軟膏で対応して月曜日の今朝病院に行った ホームドクターで、脳出血起こすまでパートしていたクリニックだけど 「火傷は深夜でも急患で病院に行け 低温火傷は深くまでいっているから、カイロの直付けはいけない」 って、センセは言うけど 「変な外科に行くよりセンセに診てもらった方が火傷きれいに治ること経験しているから、月曜日の朝イチで来ました」と治療してもらったけれど、センセも「それはそうだ」と センセからみて可愛いわたし、かわいげに慣れているけれど、センセがいなくなっちゃったら次に火傷した時どうしたらいいの?と不安。 だってインスタントラーメンを作った鍋からの熱湯をかぶって足に大火傷ズルムケ治療、この度はホッカイロで水膨れな火傷って、頭硬いDr.なら、いい加減にしてだよね そろそろ老年仕事仕舞になりそうで頼りっぱなしのわたしは今後の人生に脅威すらかんじるのだわ センセ、わたしを不安にさせないで 頼りにしています 「うろこアンソロジー」2019年版 所収 ---------------------------- [自由詩]かくれが/「ま」の字[2019年12月15日10時13分] みつからないところで寝ています ---------------------------- [自由詩]今朝傘の中で/TwoRivers[2019年12月17日20時38分]  ぽつぽつ   ぽつぽつ  雨が降る  ぽつぽつ   ぽつぽつ  ついた嘘  車が轢いて  過去も未来も  じゃーっと鳴った  消えて浮かんで  また消える  巡る季節に  また憶う  ぽつぽつ   ぽつぽつ  言っていた  雨は確かに   言っていた ---------------------------- [自由詩]天使はみんな恩知らず/もとこ[2019年12月17日21時54分] 「わたし壊れてるから優しくしてね!」 って微笑みながらナイフで切りつけるスタイル 抵抗してはダメ、声を出してもダメ 水気の多い果実を切った匂いが部屋に満ちる (ほうら、やっぱりそんなオチ) 割安のサービスランチで昔日の栄華を反復する かつてわたしはショーウインドウの中で着飾り ガラスの向こうの世界に媚を売っていた 王子様のお買い上げだけを夢見ながら (どうせなら中指を立ててやればよかった) 「鏡よ鏡、世界でいちばん美しいのは誰?」 一日の始まりと終わりには必ず 鏡の中の肉塊に問いかける 「今さらそれを知ってどうするんだい?」 最近は眠れない夜ばかり引き当てる ダイヤルを適当に回して出た相手に 今までの反省点と今後の決意を報告すると 「手遅れね……もう火葬は始まってるよ」 眠そうな声が告げて電話は切れた ---------------------------- [自由詩]おやすみ/あおいみつる[2019年12月20日21時17分] 夢のように過ぎてゆきました 何も築くこともできず 何も成さず 夢のように過ぎてゆきます ただ暮れてゆきます 風吹きぬけ とまどい惑い怯えています 遠くから聞こえてくるような 懐かしい あの潮騒は もう ああ 眠りたい すべて忘れて 愛の懐に抱かれ 赤子のように甘えたい 日々 決して思わず 思いわずらわず 考えることもなく ゆっくりと丁寧に生きたい くりかえす暮らしの中 ゆっくり無心で 光を見つめ 闇にふれ 神に祈り 指を絡め ぬくもりを感じ この冬を 越えて行く 一瞬を凝視して この時代を生き抜いて行く 今夜は 星がきれいだ ---------------------------- [自由詩]無題/朧月夜[2019年12月20日21時22分] 七色をしたイルカが、 妥協を許さないスピードで海の中を進んでいく。  ああ、わたしたちは誰の子供たち?  皆、神の子供ではないのだと、  そのことを知っている。  皆、神の子供ではないのだと気付いている。 七色をしたイルカが、 妥協を許さないスピードで海の中を進んでいく。 ---------------------------- [自由詩]おでこ/次代作吾[2019年12月20日22時54分] おでこキランとひかった おしるこがはなたれで まゆげがピクっとなって まえがみが まえがみが ぱかんと まっぷたつ すだれのばけものが うっすら みえたような みえないような てっぺんから ずどーんと おでこがキラーンとして 星屑のマイケルジャクソン 前傾姿勢の ぱかんとした存在が れいしんすとらぐるして まいしんして のいちきれすきころてんして 忘年会の手前の 喫煙所の うどんの先の そのロッカーの鍵の 先の 爪先の こおろぎの爪先の 火を灯すような 祈りのような 柿の種が落ちとる かけらの たましいの かけらの 堅揚げの お餅のかげから こんにちは ぽろりんちょ ぽろりんちょ ---------------------------- [自由詩]無題/朧月夜[2019年12月23日12時35分] 空疎な空をかかえながら、 掌のなかに空色を握っている。 機械仕掛けの古城に、 冬の点し灯が灯るのはいつのこと? 荒野に風は吹き曝しになって、 人々にマントを被らせる。 皆希望や欲望でその顔を彩らせて、 わたしは呆けた顔を一つ首の上に乗せている。 誰もどこかへ行くことはせず、 わたしも行くあてのなさを一人抱いている。 あの、冬の点し灯が灯れば、 この哀惜を吹き飛ばしてくれるのだろうか…… 君と一緒に歩んでいた時に、 その道が二人別々であったことをわたしは知っていた。 だから、いつか冬の点し灯が灯れば、 わたしは雪の中に隠されることを知っている。 誰もどこへも行こうとはせず、 わたしも一人きりでじっとしていられるのだと。 機械仕掛けの古城では、 冬越しの準備に人々が忙しい。 誰も、この荒野に流れていく空のことを、 気にも止めず、見もしない。 今、君の手に何が包まれているのかを、 わたしは考えようともせずに感じている。 いつか、春は来るのだろうかと、 君は悩み抜いているのに違いない。 この季節の果物を一つ、わたしは買った。 それを誰に捧げるでもなく、氷の柱を踏んでいく。 機械仕掛けの古城に、 冬の点し灯が灯るのはいつのこと? 空疎な空を見据えながら、 掌のなかの空色を持て余している。 ---------------------------- [短歌]通学路/夏川ゆう[2019年12月24日5時05分] ピアノには弾く人の心乗り移る弾く人の世界形成される 生き物のように街並み変化する毎日何処か工事している 通学路その周りには家ばかり児童の安全守るグループ 近道があればいいなと思う日々通学路から離れる冒険 ---------------------------- [自由詩]のんだくれ/梅昆布茶[2019年12月24日9時28分] のんだくれ男とやさぐれ女 とぎすまされた場所にはそぐわない だれも無関心のふりの都会で 新宿で乗り降りするほどの乗客 手を繋ぎたい天使が裏帳簿に記帳されて 探している煙草は違ったポケットに入っている だいじょうぶ僕はなんとかやっていくから 自分なりのおもしろさを大切にして ガールズバーのいつもの彼女が 歌舞伎町の寒い真夜中に生足で素敵にアルバイト とんがった事はないがある意味いま いちばんとんがっているのかもしれません ---------------------------- [自由詩]仕事納め/夏川ゆう[2019年12月28日5時11分] 一年はあっという間だった 振り返るとそう思う どんなに忙しくても 楽しんで仕事が出来た 大好きな仕事だから ストレスを溜め込むことはなく 何でも言い合える環境に感謝 やり甲斐のある仕事だから 嫌な思いはしないし 楽しさしか存在しない 仲の良い仲間しかいない雰囲気 残業は殆どない 忙しい時期と 仕事納めの時期だけ 温かい環境があるから のびのびと仕事が出来た ---------------------------- [自由詩]自由/クーヘン[2019年12月28日12時59分] 自由という字には7つの部屋があります。 どれを選ぶも、どれも選ばないも、君の自由です。 ---------------------------- [自由詩]遠い記憶(改訂)/ひだかたけし[2019年12月28日20時33分] 樹間から 覗く冬晴れの青、 ふるふる震え 落ち葉舞い散るこの夕べ、 時はすっかり透き通り 遠い記憶を辿りいく )何があったか )細かいことは忘れちまったが )ただ喜びと懐かしさだけ )浮き上がり湧き上がり )俺の心は充ちてゆく 樹間から 覗く冬晴れの青、 ふるふる震え 落ち葉舞い散るこの夕べ、 時はすっかり透き通り 遠い記憶の残響を聴く ---------------------------- [俳句]十二月に十七文字/こたきひろし[2019年12月29日9時45分] 切り分けた林檎が赤く錆びていく 季語は冬午前の雨にやぶれ傘 転んだよ雨の泥濘寒い空 転んでも直ぐ立ち上がる道師走 新年が来ても無口はかわれない 餅喰って喉に詰まらすお年頃 葬儀所に通夜の明かりが寒々と 大掃除わが身についた埃まで 嘴でカラスが漁る野良死骸 冬に詠む俳句は苦かな華がない 血液の廻り悪くて寒い脳 冬支度心は何も羽織れない ---------------------------- [自由詩]雪を、待つ/秋葉竹[2019年12月31日16時02分] もう寒くないのに この冬は寒くなかったのに、 雪を待ってるなんて、バカばかり あの日は、待っていたけれど ただの風邪のように鼻水を すすりながら、心も カビないのは寒いからって 重々、承知してるけど。 だから空を飛ぶ モズを見上げた。 視線よ、矢のように 刺されと願いながら。 ---------------------------- [自由詩]行く年くる年/石村[2020年1月1日0時11分] さだめなき世に 年古りて なにひとつ 新しくもない 年がまたくる 十二月 三十一日 午後十一時 五十九分 五十と 五秒 冬の雨が 雪にかはり 廃屋の時計が 目をさます ひとびとは美しい笑顔で 挨拶をかはし 除夜の鐘が遠ざかり 星がひとつ消える 行く年 くる年 どこへゆく そつちには なにもないぞ なにもなくても 止まりやすまいが 俺ももう お前さんを止める気は さらさらない のだが 年越し蕎麦の 残りづゆを啜つて 猫にあいさつ ――今年もよろしく と ---------------------------- [自由詩]時流/ひだかたけし[2020年1月1日22時35分] 新年 開けて、街 静か 枯れ葉サクサク踏む森も 川沿い遊歩道歩く人も 透明レンズの瓶底を 斜光に照らされ輝いて 無音無音、また無音 青く濃くなる天空を 見上げ私はベンチに座り ゆったりゆっくり瞑目する 遠い木霊に耳傾け ゆったりうっとり寛いで )この六十回目の元旦を )友人の飲もうぜを断って )独り静かに過ごしている )孤独に上手く嵌まり込み )静寂に潜む時流を掴み 新年 開けて、街 静か 枯れ葉サクサク踏む森も 川沿い遊歩道歩く人も 透明レンズの瓶底を 斜光に照らされ輝いて 無音無音、また無音 青く濃くなる天空を 見上げ私はベンチに座り ゆったりゆっくり瞑目する 遠い木霊に耳傾け ゆったりうっとり寛いで ---------------------------- [俳句]レイワ二年/こたきひろし[2020年1月1日23時23分] 西洋の暦もそろそろ元年に 口移し餅までするか新婚は 愛と性もてあましてる冬ラブホ 蜘蛛の子も寝室の陰巣をつくる 毒消し屋紙風船と置き薬 鬼灯の実が紅くなる庭の隅 結婚を前提にせず冬ラブホ 人は死ぬ時季を選べぬ年明けに コンビニで避妊具の他おでん買い ストーブを近くに置いて萌えサカル 新年の葉書に綺麗に女文字 あけおめをLINEでヨコス旧き友 詩やすめに俳句詠んでる冬の冬 ---------------------------- (ファイルの終わり)