la_feminite_nue(死に巫女)のこたきひろしさんおすすめリスト 2019年8月15日3時08分から2019年10月13日7時20分まで ---------------------------- [自由詩]時間が足らない/こたきひろし[2019年8月15日3時08分] 時間は鏡に写らない 写す事はできない だけど 今こうしている間にも 刻々と経過している 人間はそれを計測するために 時計を発見し発明した 日時計 砂時計 などの原始的な時計から始まって 遅れない 進んだりもしない 要するに 狂わない 正確一途な時計を機械にして追求し続けてきた しかし果たしてそれが 人間にとって幸福か 否かはわからない 百メートルを競う走者が その勝敗よりも 前人未到の時間の壁を突き抜ける事に 全力を集中させる 事の意味って 私には理解できない 以上はさておき 人はこの世界に産まれ落とされて 死に至るまでの個々の時間に その長さに相違がある 果たしてそれは 人それぞれに与えられたものなのか それとも 人それぞれが自らの力で引き寄せたものなのか 答えは それぞれの命に 生まれる前から記入済みなのかもしれなかった しかしたとえそこに 同じ文字が記載されている者同士でも 充分に足りていたか それとも足らなかったかは きっと背死に横たわるまでわからないだろう それぞれが生きた道に違いが有る限り 人はそれぞれが苦しみ悩み 泣いたり笑ったりするから 命の時間をはかる時計なんて 存在しないんだから ああ 私にはもっともっと 時間が欲しい 時間が足らないんだよ ---------------------------- [自由詩]蝶々が宇宙を/こたきひろし[2019年8月17日21時26分] 雄と雌の蝶々が交尾しながら 日向臭い宙を飛び回っていた 周囲はいちめんの花 公園のベンチ椅子は壊れかかっていた 私もいつか死ぬに違いないが 今は死にたくない 壊れかかったベンチ椅子に か弱い男の体で おそるおそる座っていた もし 私の側に知らない女の体がすりよってきて 耳元で囁かれたら きっとブレーキは効かなくなるだろうな そこで人間の雄と雌が交尾を始めたら それはそれで 綺麗だと思うけどさ 浮世絵にしたくなるくらい 神秘的で破滅的で 美しい絵画が仕上がるかもしれないな 私はすこぶる情緒不安定 感情の山川が起伏にとんでいる 妄想が好きで 荒唐無稽の物語を創るのが好きだ 蝶々が交尾しながら 生殖の宇宙空間へと飛んでいった ---------------------------- [自由詩]砂漠のど真ん中じゃない/こたきひろし[2019年8月20日7時00分] そこは砂漠のど真ん中じゃなくて 海辺の砂浜だった 人影まばらな晩秋の海 無性に海が見たくなって家族を連れてきた 幼い娘二人と 二人を産んだ母親と 四人できた その時 長女が何かを見つけて拾い上げた 「お父さん、これは何?」 側にいた私は それを見て吃驚した それは 性具だった でも それをためらいなく拾い上げた娘は 何も悪くないのに 私は思わず叱りつけてしまった 「子供は知らなくていい」 そして強引に彼女の手から取り上げると 海に向かって放り投げた 下の娘とその母親が 駆け寄ってきた 長女が泣き出したからだ 「どうしたの?」 母親が訊いてきた 父親である私は 「何でもない」 と答えるしかなかった 「何でもないわけないじゃない」 母親は強い口調になった 「ここでは答えられない」 と言って 「後で話すよ」 と言った それはもしかしたら 娘が一人の女になってからかも しれなかったが ---------------------------- [自由詩]美しいものが/こたきひろし[2019年8月21日23時42分] おにヤンマを捕まえて その片方の足に糸をくくりつけて 飛ばした それは ほんの遊び心だった 子供の頃の 無邪気だったから その残酷さに 何も気づかなかった そうこうしている内に 大人になってしまった 毎日は 時計回りに 過ぎて 去っていく それに逆らって 生きてはいけなかった どこまでも 臆病で弱虫だったから ある日 街で 公衆電話ボックスを見つけた まるで化石みたいに忘れ去られ 取り残されていた いきなり 激しい雨が降ってくる 雨を 強風が煽ってきた 公衆電話ボックスに 僕は逃げ込んだ 街は たちまち洪水に飲まれる 僕は公衆電話ボックスから 抜け出せなくなった 公衆電話ボックスは みるみうちに 水槽になってしまった 洪水に沈んだ街は 美しい絵画のように なってしまった それは地獄を写し取っていた なのに 救いの手は 何処からも延びて来なかった それは絶対的神の ほんの無邪気な遊び心 かもしれなかったから その時初めて 僕の中の時計は 逆さ方向に 回り出していた 溺れていく僕は 視力だけは 失わなかった 街は僕の妄想の中で 美しく もがいていた ---------------------------- [自由詩]悪魔の囁き/こたきひろし[2019年8月25日7時13分] 悪魔の囁きをきく事がある て 言うよりか 私の正体そのものが実は悪魔で 普段は人間の囁きに耳を傾けながら 生活していると言うべきなのかも しれない 当然 私の中では たえず悪魔と人間が絡み合って 辛味あっていたりするのだ 具体的に それを文字にしてしまうと 私の人間性は著しく損壊していると見なされ 社会から排斥されかねないので 保身と保守を優先している 私は私の女体の卑猥を隠避するために 清楚と清潔を絶やさず 化粧を欠かさない 私は 美しいケモノになっている 優秀な遺伝子に狩られる為に ああ娘よ 成長したお前を直視できない俺は 上に掲げた詩の一編に お前を括ろうとしている ---------------------------- [自由詩]涙腺をゆるめられる事のしあわせ/こたきひろし[2019年8月29日22時38分] 子供は泣くことにためらいがない 対して 大人は泣くことにおおいに躊躇してしまう 男は泣くことに恥じを覚える 比べて あえて、女は男に泣き顔を見て貰いたいところ あるのかな? 涙ってありがたいと思う 洗い流してくれるからさ 人間の悲しみや痛みを そして涙を流したあとには お日さまといっしょになって爽やかな風が吹いてくれば、 段々に 少しずつ 悲しみや痛みがやわらいでいき そして時が解決してくれるのさ ああ 俺って演歌体質だからさ 残念ながら 現代詩体質じゃなくて 涙腺を簡単にゆるめてしまうんだ 涙腺を簡単に即座に ゆるめてしまうんだ 水道の蛇口みたいに でも それって理屈抜きにして しあわせじゃね ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]makeloveがしたくて/こたきひろし[2019年8月30日23時39分] 目的地は海。休日に彼氏の運転でドライブした。 海はいい。いつ行っても広くておおっきいわ。 彼氏もあたしも季節外れの海が好き。でも誰もいない海はなかった。 海にはサーファーが波に乗ったり飲まれたりを繰り返していた。それを眺めていたら、自己責任の軽さを感じてしまった。 あたしは彼氏にサーファーになんてなって欲しくない。 多少カッコ悪くても普通がいいんだよ。 お互いに分相応の相手を自然に選んでくっついたんだからさ。そこはちゃんと世の中の空気を読んでいるから。 その内に海にも飽きてしまい、車に乗った。 彼氏の運転、ちょっと怖いけどあたしよりはましかな? 「お腹空かない?」 あたしが彼氏に言ってみた。 「減ったな。」 彼氏がそう答えたから、どっかで食べて行こうよ、と素直にわたしは言った。 「そうだな。どこがいい?」彼氏が訊いてきたから、ファミレスあたりでいいよとあたしは答えた。 彼氏の財布の中身に配慮しなければいけないし、あたしは最初から奢って貰うつもりだし。 高級レストランとか回らないお寿司屋さんなんかは求めてないから。 どうせあたしなんか安上がりの女なんだから。それ相応の男を選んだんだから。 ファミレスでお互いお腹いっぱいになれた。 お酒なんか飲めたら最高なんだけど、彼氏運転するし、あたしだけって訳にはいかないから。 それから店を出てふたたびドライブした。 まだ帰りたくはないから。しばらく走っていた。 その内にいつの間にか周囲は暗くなってきた。 彼氏もあたしも疲れを感じはじめてきた。 お互い会話がなくなってしまったのがその証だ。 そこで彼氏が言ってきた。 「どこかで一寸休んでいかないか?」 あたしは一言で答えてしまった。 「そだねー」 あたしは内心それを期待し待っていた。 結局、ドライブの最終目的はmakeloveで。 すべてはそこに至るまでの過程だったのかな? 年頃の若いおねえちゃんとおにいちゃんの理性を崩壊させるまでの。 ---------------------------- [自由詩]口内炎が出来てしまって/こたきひろし[2019年8月31日22時23分] 好きでこの世界に産まれて落ちた 訳じゃない 俺を産んだ母親も 選んで産んだ訳じゃないんだからよ いくらこの世界の居心地わるくて窮屈でもさ 今さら母ちゃんの腹には戻れないさ 本人とっくに 死んじまったし 口内炎が出来てしまってさ 痛いのなんのって 何を食べても飲んでもしみるしみる イライラするよ 好きで口内炎になった訳じゃない この世界のいきものたちの口に蔓延ってなくならないから 俺もこの世界の一員だから 年中なってしまうんだ 嫌だよ本当に嫌だ 口内炎は人に感染しないのかな それが心配で ヒリヒリする痛みや そこからわき上がる苛立ちを抑えながら それを黙って 婚約者と明かした夜 せがまれたキスを 俺は拒否したよ ---------------------------- [自由詩]昼と夜が交互に繰り返されている/こたきひろし[2019年9月1日9時04分] どうしても 無欲には なれない なれる訳がない それどころか この心も体も欲望が満載で 特に体は 時には自制がきかない 選ばれた一握りの人間にはなれなかった 俺は 満載の欲望を乗せて 公道しか走れない トラックかもな アクセルが重いぜ なのにブレーキが不安だ この先どっかで ハンドル操作も誤りそうだ その際 自爆するから 人を巻き込んだりしない けど そのつもりさ もし 選ばれた一握りの人間になれていたら 豪華客船で安眠貪りながら 世界をこの手に入れたかもな どこまでも自分の手は汚さずに いやそんな訳ないか そいつらは そいつらで 俺には想像つかないアブナイ海を 渡っていくに違いねえべ 昼と夜が交互に繰り返されている いつからだ そんなの知らない 知っても意味がない 俺は 一般極道 じゃなくて 国道 ちんたらちんたら走っていくから 気に入らねえなら 抜いていってくれ 後ろから煽られても 鈍いから どうにもならねえからよ ---------------------------- [自由詩]耳を塞いで/こたきひろし[2019年9月4日1時05分] 耳を塞いで 音楽を聴いている 心をいっぱいに開かないと 聞こえてこないメロディ やさしさ とか 愛しさ とか 切なさ とか 刹那さとかが 入り交じって この胸の奥底から たちのぼってくる音楽 命の欠片に 息を吹きかければ 何処か 遠くから 聞こえてくる 囁き 愛する人の体の中心に 唇を這わせて 狂おしくみだれ そして 果てた 夜に ---------------------------- [自由詩]お刺身の正式な食べ方/こたきひろし[2019年9月6日0時07分] お刺身の正式な食べ方は 刺身の上にお好みの量のわさびを乗せて 醤油につけて食べる らしい それは とても美しい作法かもしれないけれど 田舎生まれ田舎育ちの俺には それを受け入れられない 田舎者の俺は わさびを醤油でとかし 刺身をつけて 食べる これが一番 だな 誰かの嫁さんが 急性心筋梗塞で倒れて救急車で運ばれても 口では色々言っても 内心は他人事だから そんなのどうでもいいやって 言う本音が見え隠れ してしまうのが 人の常だな それが自分の嫁さんだったから 天と大地がひっくり返さえされたような 気分になっちまった 人間って良くできてる存在だよな たとえ どんな目にあっても 腹はすくし 性欲は頭をもたげてくるんだから でもそれもまた人の常 だよね たとえ こんな風に辻褄の合わない詩を平然と書いて ネットに投稿するのは 果たして 詩のレベルを著しく低下させる 結果になっても ワンダフル ナイスフル って 有頂天になっていられるのも 今のうちかな それはたとえるなら やがてさびしき鵜飼かな って感じ ますます わからない わからなくなるう ---------------------------- [俳句]祭り/こたきひろし[2019年9月6日6時36分] 山車御輿笛も太鼓も耳障り お祭りが男と女のはってんば 打ち上がる花火阿呆ら口開けて 露店にはその場限りの商いが あっちこち喧嘩はじまる祭りだぜ ---------------------------- [自由詩]台風が許せない/こたきひろし[2019年9月9日4時02分] 夜中 外がやけに騒がしい 雨が降りやがる 風が追い討ちをかけてくる ウルサイ うるさくて眠れねぇ 台風のヤロー いい加減おとなしくしねぇと ただじゃおかねぇぞ さっさとどっかへいっちまえ クソヤロウ 俺の奥様も たいへんご立腹だ 俺同様うるさくて眠れねえとよ これ以上暴れるなら 俺にも考えがある 夜の夜中だが容赦しねぇ 今から外へ出るから 勝負しろ 「あんたうるさいんだよ。さっきから訳のわからない一人言口走って、頭おかしくなったの?」 「えっ?俺なんか言ってた?なんも覚えてないんだけど」 「もしかして寝言?なんでもいいけど台風より騒がしいし気味悪いからやめてくれる」 「ごめーん、おかあちゃんごめーん」 ---------------------------- [自由詩]未読のままに/こたきひろし[2019年9月10日7時20分] LINE 「突然、ごめんね。こんな事本当は直接会って話さなきゃならないのに、どうしても勇気がわかなくて。  思い切ってLINEするね。 わたし、貴方の事、ずっとずっと大切なトモダチだと思ってた。でも、貴方がわたしの事どんな風に思ってくれたかは分からなかった。初めて会った頃からずっとずっと仲良くしてくれたから、きっときっとトモダチくらいには思ってくれてたと信じていたけどさ。 お互いそれを確かめあった事なかったじゃない。 本当はわたしの勝手な思い込みだったかもね。 今まではそれで良かったの。でも、わたし気づいてしまったの。 最近、貴方の事を思うと胸が痛くなってくるようになったのね。それも甘い痛みなの。 これって貴方に恋愛感情持ってしまった事なんだよね。そしたら、どうしても貴方の気持ちも知りたくなって、確かめたくなったの。 ごめんね。答えて欲しいのよ。」 未読 未読 未読 未読 わたし、? 間違えた。LINEしたつもりが、日記に綴っていたんだ。 ---------------------------- [自由詩]蝿になってしまった/こたきひろし[2019年9月12日6時59分] どう、ハエになった気分は?ついさっきまでは人間でいられたのにさ。 どうって?あんただって立派なハエになってるわよ。 鏡に写して見てみたら あたしの目にはハエになったあんたしか見えないわよ。 俺もお前もハエになっちまったんか? なっちまったわね。 この先どうやって生きていけばいいんだ? 簡単よ、ハエになって生きればいいのよ。 お前は強いな。呆れるよ。 強くなんてないわよ。 俺たち今まで通りでいいんだよな。ハエになっても。 そんな訳ないでしょ。ハエになったんだから。 あたしたちここで別れよう。 えっ?何でだよ これまで仲良くやってきたじゃないかよ。 それは二人とも人間だった時の話しでしょ ハエになったんだからハエらしく生きるわよ。あたしはね。 どういう事さ? あたし、あんたと別れて他に男見つけるわ。 だからあんたも女探してものにしなよ。 やだよ。俺はお前がいいよ。 やだよ。あたしはあんたに飽きてるの。 人間の間は我慢してきたけどさ。 もうハエになったんだから自由に恋愛するわよ。 そして沢山赤ちゃん産みたいの。世界中あたしの子供でいっぱいにしたいの。 だから あんたはあんたで他のハエの女に自分の子供産ませたら。 えっ? 女は子供を産むキカイなのか? お前はそれで幸せなのか。 あんたにそれ言われると胸に痛むわね。 考えをあらためるわ。 早いな。いいけどさ。どんな風に変えるのさ? 手っ取り早くあんたの赤ちゃん産むわよ。せっせとせっせと。 お前、頭のなかがハエだなぁ。 ---------------------------- [自由詩]悲しみからはじまる物語/こたきひろし[2019年9月13日5時56分] 人間の恐怖は死へと繋がっている らしい 昨夜は 怖い夢を見た と彼女が口にした ユニットバスのなかで お湯に二人は浸かっていた 夫婦和合の秘訣は 一緒に風呂に入る事だと 父親に教えられて以来 彼女が入浴出来ない時以外は いつも二人風呂だった 勿論 娘二人がちっちゃい頃は四人風呂だったけれど 今は二人共に成人したから さすがにそれはなくなった 彼女は私の髭を剃ってくれる お互いが体を洗いあう 子供が出来る前までは それが性的な興奮をもたらした ツガイの男と女になって その内に子供が出来ると お互いが 父親に母親に 普通になっていた 性と愛 情愛は 家族への愛に昇華してしまった 昨夜は怖い夢を見たと 彼女が口にした どんな夢だと 私は訊いた 彼女は死んだ夢だと 答えた 死んで火葬場で焼かれる 夢だと言った それは 無理もなかった 彼女はほんの一週間前に 急性心筋梗塞の疑いで 緊急入院したのだから 結果 心臓に繋がる血管が詰まってしまう寸前だった 医者に検査結果を伝えられた 無事退院したが 彼女は自身の体内に爆弾を抱えてしまった いつ破裂するやもわからない 自宅での投薬治療に加えて もしふたたび 心臓に痛みが起きた時は 舌の下で溶かして飲んで欲しいと ニトログリセリンを出された いつもその時に備えて 肌身離さずに この先 私は自分自身にも 取り外しのきかない爆弾を 仕掛けられたと 認識しない訳にはいかなくなった 死ぬ夢なんて 誰でも見るさ 俺だってよく見るよ 気にするなよ と 彼女に言いながら 私は心臓のざわめきを 感じない訳には済まなかった 人間の恐怖は死へと死へと 繋がってしまうのは 確かである ---------------------------- [自由詩]何処かの公衆トイレ/こたきひろし[2019年9月14日7時13分] 何処かの公衆トイレの壁にされた 落書きみたいに 俺の体の中から卑猥な文字が消えないんだ でも 男だって女だって誰だって それは自然だろ それにしても 女は化粧するし 丈の短いスカートはくし 男は刺激されるし 以前、家族で出掛けた時に 俺の可愛い可愛い娘が スゴいミニスカート穿いててさ エスカレーター乗った訳 俺が下で 娘が上さ 見上げたらしっかりパンツ見えてた 俺は父親として思わず言っちまった 娘ちゃん、下着が見えてるぞ って そしたら返ってきた言葉にびっくりこいた 「お父ちゃんに見せてるんじゃないよ。見ないで。イヤらしい。もう明日から口きいてあげないから」 その言葉と言い方に凹んでしまった俺はそれ以上何も言えなかったが、心の中では聞きたかった いったい誰に見せてるんだよ。広く一般大衆にか? って それが何処かの公衆トイレにされた 卑猥な落書きみたいに 今でも俺の記憶の壁から消えてくれないんだ ---------------------------- [短歌]悪行/こたきひろし[2019年9月14日22時51分] 悪行の限りは尽きぬ欲尽きぬ仕上げに政治 屋を目指し 悪徳の専業主婦は家事しない育児もしないパチンカスかよ 魔が差したその言い訳の便利さに罪の意識が麻痺してる 悪い癖人の男が欲しくなる周りにふこうばらまいて 悪人が蔓延る街にも一輪の可憐な花がそれ守りたい ---------------------------- [俳句]俳句をひねる/こたきひろし[2019年9月14日23時55分] 句を詠みに公園の道徘徊し 眼鏡してメガネを探す我が老化 季語季語と探し回ると句を詠めず 俳人と廃人の読み同じなの? 捨てられた拾われもした世の中に 人格を否定されてもくじけない 力んだらうんちみたいな俳句出た ---------------------------- [自由詩]果樹園/こたきひろし[2019年9月15日9時14分] くだもの畑に産まれて大きくなった 訳じゃないの ヒトに産まれて女に育った あたし 中学校では 天然なのに縮れた髪が 校則に違反していると何度も注意された 髪色が黒くないからって 先輩からいじめられた 天然なのにさ 学習塾には通えなかった 周りはみんな行ってるのにさ おうちはいつも お金に困ってた あたしは何もわるくない そして あたしは天然の馬鹿だから 授業についていけなかった だから あたしは学校から弾き飛ばされた あたしは 何もわるくない 不登校 引きこもり ある日 クラスメートが家にきて手紙を置いていった 中身は登校を促していた でもそれは 担任に頼まれたからに違いなかった クラスメートはみんなあたしをはぶいていたんだから ある日 民生委員を名乗るおばさんがたずねてきた あたしは両の耳をふさぎ 母親は玄関のドアを開けなかった あたしは果樹園に苗木を植えられて 育った林檎じゃなかった 背中に羽がはえてもいなかった ヒトに産まれて女に育っていく その課程に ちょっと黒い歴史があっただけ 黒い歴史があっただけ ---------------------------- [自由詩]家庭内悲話/こたきひろし[2019年9月19日5時38分] 女は男より先に起きて 朝食の支度して 出来たらまだ寝ている男のところにいって 耳元で甘く囁く「時間よ。あなた起きて朝ごはん食べて」 言いながら男の口に接吻した そしてためらいながら「昨夜は良かったよ」って余韻を匂わせた それがね それがね 結婚前の男の想像に過ぎなかったなんてあんまりじゃないか 炊事洗濯掃除 そしてちょめちょめをつつがなくすませてくれるのが 女の役目 家庭を維持する最重要なサービスの提供の上に成立すると信じてた 確かに結婚当初はそれが実行されていた それがずっと実行されると 男は信じてた しかし その内にひとつふたつとほころびはできて段々に増えていって そこから先は文字にしたくない 家庭内の悲話 卑猥じゃなくて 女は子供を産むと一変する 鎧をきた戦士になって 男を従える 恋愛詩からはほど遠い 家庭内悲話 ---------------------------- [自由詩]コンビニのレジで/こたきひろし[2019年9月20日6時28分] コンビニのレジで その人は買い物の会計をしてもらいながら 周囲にわからないようにして 店員の女のこに 小さく折り畳んだ紙を渡した という 女のこは一瞬困惑した表情をしたけれど 直ぐに空気を察してくれて 着衣していた制服のボケットに 素早くそれを隠してくれた という そして何事もなく 動揺する様子も見せず 会計をすませてくれた という  突然で申し訳ありません。以前から貴女の事が気になって気になって仕方ありませんでした。  どうにもこうにも気持ちの抑えがきかなくなってしまいました。迷惑は承知の上で手紙を書いて渡しま  す。毎朝ここへ来る度に貴女のやさしい笑顔に心が癒されます。いつも明るい「いらしゃいませ」の声が  胸に響きます。  でも、誤解しないで下さい。この手紙をきっかけに何かを期待してる訳ではありません。  けして期待している訳ではありませんから安心して下さい。 その後 その人の手紙はその人の密かな期待を裏切って何事も起こしてはくれなかった なぜなら その人が勇気を奮い立てて渡した手紙は読まれる事なくコンビニ内のゴミ入れに棄てられたのだから 夜 家族の団らん 娘が言った 「今日ね、コンビニのバイト中にお客さんから変な紙を渡された」 「男の人?何?ラブレターか何か?」 母親が聞いた 「男の人だよ。ラブレターかな?読まないでゴミ箱に棄てちゃった。怖いし気持ち悪いし」 「それがいいわ。それでいいわ。お前可愛いいから、気をつけなさいよ」 と母親が言った すると父親が口を挟む 「悪い男が沢山いるから騙されないようにな」 と釘をさす 言った父親だって若い頃は、悪い男だったかもしれないのにさ ---------------------------- [自由詩]貧と富/こたきひろし[2019年9月26日6時15分] およそ人は 算数に支配されて 生きている らしい 私に 数学は役に立たない ワルい人 ワルくなってしまった人 ワルくなる可能性を秘めた人 そしてワルくなれない 善良な市民 皆が知ってる 無限に等しいかもしれない お金のチカラ 豊かに生まれ 豊かに育ち 豊かに生きて ある日 豊かに閉じる 豊かな葬儀に 豊かな死後 そんな人生 現実には ほとんどないだろう 貧と富の比率 極貧と富豪との 間の距離感 ワルい人は簡単にお金に目が眩むのかもしれない ワルくなれない人だって お金には目が眩むさ 時と場合によって 人の心だって お金で買えるから ああ 夢も希望も壊してしまう こんな詩は書きたくなかったな もしも 私が富豪になっていたら 詩をかまっていられなかっただろうな 手に入れた富を失うまいと 必死になるばかりで ---------------------------- [自由詩]感情の昂り/こたきひろし[2019年9月30日21時36分] 俺の家から歩ける範囲には コンビニ スーパーマーケット 俺の家から歩ける範囲には 学校 郵便局 等がある なのにどうして 俺の家から歩ける範囲に 天国と地獄がないんだよ 何を寝ぼけた事書いてんだよ 天国も地獄も歩いて行ける訳ないだろう 第一に 天国までは延々と梯子を昇るんだが 永遠にたどり着けないんだぜ 地獄へは あっという間に転げ落ちるんだよ 火炎の海に どっちも似たようなもんで どっちもややっこしいんだよ そうなんだ 初めて知ったよ ところであんたは誰だよ 俺か 俺はもう一人のあんただよ そうか もう一人の俺か それが本当なら 鏡を覗いて見れば会えるんだな 会えないよ もう一人のあんたは 鏡に写らない もう一人のあんたは あんたの脳みそに寄生している虫なんだよ いくら虫が嫌いなあんたでも 自分の脳みそに蠢いている虫を つまみ出して 踏んで殺せないからな 死ぬまで寄生しているんだから 死んだら一緒に 天国をめざして昇り続けるか 地獄に転げ落ちるんだからよ ---------------------------- [自由詩]ぜんぜん面白くない/こたきひろし[2019年10月3日6時48分] 道端に彼岸花が咲いている 家の近くの細い道に 道端に曼珠沙華が花を咲かせている 家の近くの畑と畑に挟まれながら通り抜けてく農道に 車一台やっと通れる道に 工場の屋根の煙突が 白い煙りを吐いていた 目が痛い 鼻を突いてくる変な匂い 工場の隣の物流センターの屋外で 私は煙突の煙をその匂いを嗅いでいる 私は屋外で午前八時から十七時まで働いている 一人作業に明け暮れているパートタイマーだ 物流センター内の道路には ひっきりなしにトラックが出入りしている 食品や飲料水やお酒等が トラックで運ばれてくる 運ばれてきた荷物は スーパーマーケットや小売店の注文に応じて店舗ごとに仕分けされトラックで運ばれていく 倉庫内はいつも大量の段ボール箱と それをピッキングする大勢の作業員がいた 社員は少数で その大半は派遣と主婦のパートタイマーだ 私は定年退職後の再就職で採用された 面接の時に 息子程の幹部社員に条件付きで採用された 「倉庫内の仕事はさせられない。外でパレット整理でよかったら使ってあげるよ。そのかわり雨風、暑さ寒さに晒されるけど、それでもよかったら」 私は定年前は工場内でフォークマンをしていた トラックへの荷積みと荷下ろしをしていた その経験を買われて面接させて貰っていた 否も応もなかった 選択肢はない このチャンスを不意にしたらもはや就職先はない 家族は路頭に迷うし 間違いなく家は失うだろう その先には人生の 最悪のストーリーが待ち受けているに違いなかった その時の私の心中は、上から目線の若造に土下座をしてもかまわない心情だった その日から三年半近くがたっていた 年齢を重ねるばかりのこの私に 作業はキツさを増すばかりだ 猛暑でも極寒でも耐えに耐えた 台風の日も大雪の日も仕事場から逃げる訳にはいかなかった 老後破産の現実と紙一重のところで歯を食い縛った まだ死んでしまう余裕はない 妻と我が子に負の遺産を残す訳にはいかない 負けられないのだ 闘わなければならないのだ こんなの文字にしても ぜんぜん面白くない 詩としては評価される訳がない ぜんぜん面白くないから リアル過ぎて笑って貰えないだろう リアル過ぎて涙も頂戴できないだろう オッサンの悲痛な叫びは 聞きたくないだろうから 読み手は芸術を求めてさ迷っているんだからさ 車で通勤する毎日 家の近くの畑と畑の間の細い道 片側の畑が切れると土手があらわれて 雑草が鬱蒼と生い茂っていた 土手から車が転落しかねないぎりぎりの幅だった 何だか私の人生を暗示している そこは坂になっていた すぐ先に左側に登る急勾配の道があって 四軒の建て売り住宅の共有になっていた 道は四軒の家の駐車場にそれぞれ繋がっていて 私の家と隣の家で道は行きどまっている そこまで辿り着く途中の雑草を混じって 所々 彼岸花が咲いている 別名曼珠沙華が咲いていた この胸の中が切り裂かれるほどに 赤く赤く咲いているのだ ---------------------------- [自由詩]巡礼/こたきひろし[2019年10月6日9時47分] 私は一千九百五十五年の生まれです 歴史の示す通り 十年前の四十五年に世界大戦が終結していますね この国は ポツダム宣言を受諾して 敗戦を向かえました 学校で教わったよね もし 一億総玉砕なんかされてたら 私はこれを書けてません 父親は戦争に招集されて 無事に生還しました 戦死してたら 私はこれを書けてません しかし 父親の弟は 南方の島で死にました 兄と弟の運命は 二つに分かれました 私はその運命の分かれ目から 運良く零れ落ちたしだいです そうでなかったら 私はこれを書けてません 子供の頃 私が生まれて育った所には まだまだ戦争の爪のあとが残っていました 東京から疎開してきた家族が 帰れないままになっていました 戦争で片腕と片方の眼球をなくして すっかり生きる気力をなくしてしまった 男の人もいました 食料不足でした 砂糖は貴重品でなかなか手に入りませんでした かわりはサッカリンでした 私は田んぼや畑の草むらから スカンボなんかで空腹を誤魔化してました 決められた曜日ごとに 点在していた農家を歩いて回る親子がいました 二人は無償でしあわせを配って歩いてました でも その姿はみすぼらしく汚いものを着ていました だから 住人たちは不憫に思い 食べ物や僅かな小銭を 施してあげました そんな親子を子供だった私は しあわせを配って歩く 巡礼じゃないか と思っていました ---------------------------- [自由詩]台風前夜に/こたきひろし[2019年10月10日23時05分] ひっそりと静まりかえっていた 台風前夜の市街 もしかしたら明日には 街中が粉々に砕け飛んでいるかもわからない 不安と胸騒ぎ 備えたい 備えたい 食べ物 飲み物 車のガソリンを 満タンに お風呂に水を貯めて 空のペットボトルにも水道の水を 思い出してしまった 震災の時の恐怖 あの時は 断水 長期停電 地震は前触れもなく来て 余震に怯えた しかし 台風は発生から 勢力の発達も 進路の予想も 逐一情報が得られる なのに何でやねん 早めの避難とテレビが言っても ずるずると家にしがみついては 離れたくない 命を守る行動したいけれど 守れないかもしれない この静寂が 意味するものは 神様 仏様 死んだ父ちゃん お母ちゃん その存在を 普段はないがしろにして 申し訳ありません 私はどうなっても言いなんて思いません 家族を いっびきの猫を お守りください 助けてください 拝みます ---------------------------- [自由詩]花嫁は夜汽車に乗らない/こたきひろし[2019年10月11日0時32分] あたしの新婚初夜はどんなだったかな? すっかり忘却の彼方へと行ってしまったけど 手をどこまでもどこまでものばしたら 届いた その時 二人とも緊張してた それ以前に 特訓に特訓をかさね 練習しててもね 結婚式の夜はさすがに疲れてたから ほんの触りだけで 気がついたら二人共寝てた それはよくあるパターンらしい 翌日はハネムーンへと旅立った すべては夢こごち の一週間 最初の一夜が あらためての 新婚初夜とあいなりました えっちょと待ってよ あたし 旦那様以外にも 彼氏いたんだわ 入籍した旦那様は 両親がとりもってぐれたご縁 学歴よし お家がらよし お仕事よし 収入よし だけど 残念なから 見た目よしにはならなかった だけどその足らないところは お人柄がカバーしてぐれた だけど 本来の彼氏は イケメン お仕事はアルバイト 他に大きな夢をかたってぐれた あたし迷いに迷ったわ どっちを選ぶかで でも親のしいてくれた 幸せのレール選んでしまった だけど 本来の彼氏 最後にメールをくれた 花嫁を奪ってやる 結婚式の夜に 今夜の汽車で旅に出るから ついて来てくれ 駅で待ってる 駅で待ってる あたし行かなかった あたし行けなかった けど 本来の彼氏は待ちぼうけのまま? もしかしたら駅で待ってる 熱い 熱い 男だったから あたしが あたしの初めてを あげたあの人 ---------------------------- [自由詩]時間がなくなるって/こたきひろし[2019年10月11日23時47分] 時間がなくなるって 時間って減っていくんじゃないの 減った分足されていくんじゃないの 俺の考え方変かな やっぱり変かもな 暗いが段段に掬いとられて 夜が明ける のかな たとえ 雨でも曇天の日でも 空には 太陽が昇ってる たとえ 雨でも曇天の日でも 空に昇った太陽は 段段に傾いて そして日は暮れる でしょ だよね 俺の頭の中 大丈夫かな 大丈夫っしょ 晴れた空は真っ青で 流れる雲は白い とばかりは 限らない 鉛色だったり 鼠色だったり 気味悪い色だったり 昼と夜を比べたら どっちが 好き どっちも好きだし どっちも嫌いだし 神様から頂いた時間は 永久不滅じゃない 時間は限られているから 減っていくんだよな 減った時間は 戻らない 減った分だけ 足されていくなんて 俺の妄想 そのうち なくなってしまうし なくなる前に 貯めて置けないから 刻々と過ぎていくから 刻々と 刻々と ---------------------------- [自由詩]疲れたり干からびたりしてしまいました/こたきひろし[2019年10月13日7時20分] 人人人 人ばかりです 人間の社会ですから無理ないです 電車は人でいっぱい 駅のホームも人でごった返し いい加減うんざりです 駅の階段を人が雪崩のように先を 急ぎます 雪崩に混じって 彼氏とあたし、しっかり手を握ってました お互いがはぐれたりしないように それはきっと愛情のなせる事に違いありません 私も人でした 雪崩の中で階段から一段足を踏み外しバランスなくして前に倒れ込んでしまいました 誰かが後ろから押したんです あまりの出来事に驚く暇もありませんでした それが故意なのか 偶然の結果なのかわかりません 犯人はそのまま消えてしまったか、どうなったかは 見当もつきませんでした 何人かが巻き沿いをくいました その内の何人かが怪我をした様子でしたが 幸い私は前の人におおいかぶさる結果になって 事なきを得ました 私は素早く起き上がり その場を立ち去りました 一組の男女が悲鳴をあげて立ち上がれなくなっていました 私は何も悪くありません 悪いのは私じゃありません 私を後ろから押した誰かです と必死に心の中で言いながら 逃げました 何らかの責任を押し付けられるのが怖くて しかし 私は普段は責任感が強く誠実な男の筈でした 少なくとも 私の周囲の目はそう見ていると思ってます 私はその評価を得るためにそれなりに努力してきたつもりですから それが朝の通勤中の群集の中で思わねアクシデントに見舞われてしまいました 人人人に押し流されて私は 自分を見失いました 私はその場所にとどまらずに立ち去ってしまいましたが、もしかしたら防犯カメラの目にしっかりと記録されて、その内に事故の元凶として逮捕されはしないかと、その後気になって気になって仕方ありませんでした その度に私は、私自身被害者なんだと必死に自分に言い訳していました 最悪、警察官の訪問を受けたらそれを説明して納得して貰えばいいと考える事で不安を打ち消そうとしていました しかし不安は払拭できませんでした それから何事もなく過ぎていきました ある休日に私は若い男女の訪問を受けました 二人は同じ階に住んでいると言いました 私は二人を知りませんでした 同じ階に住んでいても 私は二人を知りませんでした  フィクションです。ある女性シンガーソングライターの楽曲の歌詞から発想して書きました。未完です。 あえてそうさせて頂きました。 ---------------------------- (ファイルの終わり)