la_feminite_nue(死に巫女)のおすすめリスト 2019年10月5日22時10分から2019年10月13日12時42分まで ---------------------------- [自由詩]顔(改訂)/ひだかたけし[2019年10月5日22時10分] 灰色の街道沿いの 深く暗い井戸の底、 白く円かな女の顔が 微細に揺れ動きながら 切れ長の目を閉じ浮かんでいる 死んでしまった死んでしまった! わたしは戦慄のうちそう悟り 隣で無表情に立っている、 愛娘の手を取り強く握る [ママは死んでいるから うちも一緒に焼いて下さい 納骨堂はもう買ってあるから] 久々に聴く娘の声、 この十月残暑の初夢の どんよりした空気を切り裂き きっぱりと訣別の意を響かせる )灰色の街道沿いの古井戸は )いつまでも女の顔を揺らし浮かべ )飛び込む男を今か今かと待ち受けている 顔と顔の 終生続く隔たりを保ち ---------------------------- [自由詩]巡礼/こたきひろし[2019年10月6日9時47分] 私は一千九百五十五年の生まれです 歴史の示す通り 十年前の四十五年に世界大戦が終結していますね この国は ポツダム宣言を受諾して 敗戦を向かえました 学校で教わったよね もし 一億総玉砕なんかされてたら 私はこれを書けてません 父親は戦争に招集されて 無事に生還しました 戦死してたら 私はこれを書けてません しかし 父親の弟は 南方の島で死にました 兄と弟の運命は 二つに分かれました 私はその運命の分かれ目から 運良く零れ落ちたしだいです そうでなかったら 私はこれを書けてません 子供の頃 私が生まれて育った所には まだまだ戦争の爪のあとが残っていました 東京から疎開してきた家族が 帰れないままになっていました 戦争で片腕と片方の眼球をなくして すっかり生きる気力をなくしてしまった 男の人もいました 食料不足でした 砂糖は貴重品でなかなか手に入りませんでした かわりはサッカリンでした 私は田んぼや畑の草むらから スカンボなんかで空腹を誤魔化してました 決められた曜日ごとに 点在していた農家を歩いて回る親子がいました 二人は無償でしあわせを配って歩いてました でも その姿はみすぼらしく汚いものを着ていました だから 住人たちは不憫に思い 食べ物や僅かな小銭を 施してあげました そんな親子を子供だった私は しあわせを配って歩く 巡礼じゃないか と思っていました ---------------------------- [自由詩]火/クーヘン[2019年10月6日12時24分] 夜半、防犯カメラの死角を縫って駆ける。 あの子のハートに火をつけにいく。 ---------------------------- [自由詩]秋口/ひだかたけし[2019年10月6日13時48分] 秋口が開き 無辺の静かさ、響く 赤々と彼岸花咲く土手の向こうから 手招きするように ゆっくりと、ゆっくりと )もうはっきりとは )思い出せない過去がある )色褪せながらジリジリと )胸を疼かせていく鉛の想念 ただ懐かしく、ただ哀しく 秋口が開き 無辺の静かさ、響く 赤々と彼岸花咲く土手の向こうから 手招きするように 深く、深く ---------------------------- [自由詩]窓からながめる満月の夜/秋葉竹[2019年10月6日20時16分] 夜に 仔猫が出没しなくなって 2週間? 虫の声が聴こえはじめて 1ヶ月? 新しい時代になって 6ヶ月? 私うまれて 何十年? 秋は、紅葉 秋は、満月 秋は、いろんな欲 夜に 仔猫が出没しなくなって 夜明けまでに 毎夜アルコールを摂取するけど かるくダイエット中なのに ダメじゃないのかな 夜に 仔猫が出没しなくなって 2週間? 私、もしかしてだけど とても、さみしいのかな ---------------------------- [自由詩]クリームパン/クーヘン[2019年10月7日12時17分] 端っこまでクリームの詰まったクリームパン。 そういう幸せが、君の人生に沢山ありますように。 ---------------------------- [自由詩]もっと私に詩を書かせて/次代作吾[2019年10月8日1時11分] 玄関の前で斜めになってカメムシが死んでる 斜めになって題名を叫んでいる 詩は叫ぶものとは 言いたかぁないが 耳に突き刺さる 詩は突き刺さるものとは 言いたかぁないか 聞こえるものは しょうがないじゃないか ---------------------------- [自由詩]マグネット/クーヘン[2019年10月8日12時34分] 冷蔵庫にお土産のマグネット、大群。 小さな磁力で日本各地から集まってきた。 ---------------------------- [自由詩]牛乳を むねにこぼすの/秋葉竹[2019年10月9日7時09分] 恋割れた 悲しい夜は ひとふたり つみによごす このむねの 黒さがいやで 牛乳を むねにこぼすの 牛乳を よるのむからさ かまわずに 消えてほしいの かいわない 冬の静かな 白い息 ふたりはきだす いまはもう希いはしない いまはもう戻れもせずに ふたりきりの孤独におぼれる ───────── つみびとを 裁くかがみ ためらわず 割ってしまった ─────────── ---------------------------- [自由詩]珈琲カップ/印あかり[2019年10月10日10時07分] 注がれて、熱くなって、割れちゃった 苦い液体をよくわからないまま漏らしている シャリシャリ割れながら天井を見回したわたし あなたはふわりと電気を消した ---------------------------- [自由詩]麦茶/クーヘン[2019年10月10日12時18分] 思い出は胸の奥でセピア色。 夏休みのドリルに溢した麦茶の色。 ---------------------------- [自由詩]ム/あおいみつる[2019年10月10日21時28分] こころを からっぽにする 意識して からっぽにする 悩んだり こだわったりしないで こころを からっぽにして 無心になる 弓で的を射るように ひとかけらの 邪念もない ただ 私がいるだけ 無 ム そんな時が あってもいい ---------------------------- [自由詩]樹木の声〇森の思考(改訂)/ひだかたけし[2019年10月10日22時08分] [やあ] [なんだ?] 森はもう こんなに涼やかに 静まり返っていたのか [なあ] [なんだ?] 此処に来ると、 君たち樹木の我慢強い無言の意識を感じるんだよ 僕の脳裡にはね、 ここいらを駆け回っていた 子供たちの声が響いて 時折どうしようもなく切なくなるけれど 君のように此処を住家に生きられたら なんて思ったりもするのさ ほら、 梢の先の青い天蓋に 僕の思考が全く独立に 漂い出すのが見えるかい? [ふん!つまらん] [どうしたんだい?] そんだけ抱えた欲望やら哀しみが、あんた ちょいと鬱陶しくなっただけだろ 忍耐も欲望も物もこの世界にある総てが あの青い天蓋から降って来る 俺たちはその意志に従って生きているだけさ この世界は只の巨大な鏡に過ぎない あんたはその鏡に映っているものを 自分の物と思っているだけなんだよ 総て自分の物にできるって錯覚してね いずれにしろあんたは先に進むしかない 先に進んで行って俺達のこの受苦を取り払うんだ だってあんた達が俺達をこうして取り残していったんだからね 俺達はあんた達であんた達は俺達なんだ 森は相変わらず涼やかに静まり返り その沈黙は、 二度とヒビキを発さなかった。 ---------------------------- [自由詩]台風前夜に/こたきひろし[2019年10月10日23時05分] ひっそりと静まりかえっていた 台風前夜の市街 もしかしたら明日には 街中が粉々に砕け飛んでいるかもわからない 不安と胸騒ぎ 備えたい 備えたい 食べ物 飲み物 車のガソリンを 満タンに お風呂に水を貯めて 空のペットボトルにも水道の水を 思い出してしまった 震災の時の恐怖 あの時は 断水 長期停電 地震は前触れもなく来て 余震に怯えた しかし 台風は発生から 勢力の発達も 進路の予想も 逐一情報が得られる なのに何でやねん 早めの避難とテレビが言っても ずるずると家にしがみついては 離れたくない 命を守る行動したいけれど 守れないかもしれない この静寂が 意味するものは 神様 仏様 死んだ父ちゃん お母ちゃん その存在を 普段はないがしろにして 申し訳ありません 私はどうなっても言いなんて思いません 家族を いっびきの猫を お守りください 助けてください 拝みます ---------------------------- [自由詩]花嫁は夜汽車に乗らない/こたきひろし[2019年10月11日0時32分] あたしの新婚初夜はどんなだったかな? すっかり忘却の彼方へと行ってしまったけど 手をどこまでもどこまでものばしたら 届いた その時 二人とも緊張してた それ以前に 特訓に特訓をかさね 練習しててもね 結婚式の夜はさすがに疲れてたから ほんの触りだけで 気がついたら二人共寝てた それはよくあるパターンらしい 翌日はハネムーンへと旅立った すべては夢こごち の一週間 最初の一夜が あらためての 新婚初夜とあいなりました えっちょと待ってよ あたし 旦那様以外にも 彼氏いたんだわ 入籍した旦那様は 両親がとりもってぐれたご縁 学歴よし お家がらよし お仕事よし 収入よし だけど 残念なから 見た目よしにはならなかった だけどその足らないところは お人柄がカバーしてぐれた だけど 本来の彼氏は イケメン お仕事はアルバイト 他に大きな夢をかたってぐれた あたし迷いに迷ったわ どっちを選ぶかで でも親のしいてくれた 幸せのレール選んでしまった だけど 本来の彼氏 最後にメールをくれた 花嫁を奪ってやる 結婚式の夜に 今夜の汽車で旅に出るから ついて来てくれ 駅で待ってる 駅で待ってる あたし行かなかった あたし行けなかった けど 本来の彼氏は待ちぼうけのまま? もしかしたら駅で待ってる 熱い 熱い 男だったから あたしが あたしの初めてを あげたあの人 ---------------------------- [自由詩]嵐/ひだかたけし[2019年10月11日14時52分] 雨が盛んに降っていた 暗い空から降っていた 俺の心は憂鬱に 蒼く震えるネギ畑、 踏んづけながら 進んでいた 何処にも行けないと知りながら それでも踏んづけ進んでいた )この嵐の果てはどうなるのだろう? )この嵐の果てに何が待ち受けるのだろう? そんな尽きない問いだけが 頭の中を渦巻いていた 胸を抉って沸き出ていた 雨が盛んに降っていた 暗い空から降っていた 俺の心は憂鬱に 蒼く震えるネギ畑、 踏んづけながら 進んでいた 何処に辿り着くかも分からずに とにかく夢中で進んでいた ---------------------------- [自由詩]哀しみ一滴(改訂)/ひだかたけし[2019年10月11日23時00分] 雨の一滴が右手の甲に 落ちた ズシリと 重たかった ミシリと 胸の空洞が鳴った 私は慌てて滴を振るい落とした 軋む胸が一瞬、 張り裂けそうになって ---------------------------- [自由詩]時間がなくなるって/こたきひろし[2019年10月11日23時47分] 時間がなくなるって 時間って減っていくんじゃないの 減った分足されていくんじゃないの 俺の考え方変かな やっぱり変かもな 暗いが段段に掬いとられて 夜が明ける のかな たとえ 雨でも曇天の日でも 空には 太陽が昇ってる たとえ 雨でも曇天の日でも 空に昇った太陽は 段段に傾いて そして日は暮れる でしょ だよね 俺の頭の中 大丈夫かな 大丈夫っしょ 晴れた空は真っ青で 流れる雲は白い とばかりは 限らない 鉛色だったり 鼠色だったり 気味悪い色だったり 昼と夜を比べたら どっちが 好き どっちも好きだし どっちも嫌いだし 神様から頂いた時間は 永久不滅じゃない 時間は限られているから 減っていくんだよな 減った時間は 戻らない 減った分だけ 足されていくなんて 俺の妄想 そのうち なくなってしまうし なくなる前に 貯めて置けないから 刻々と過ぎていくから 刻々と 刻々と ---------------------------- [自由詩]真夜中、出て行くなよな、バカ/秋葉竹[2019年10月12日7時34分] 一人、枯野を駆ける つまり、 蛇の心を、知るか? おそらくその心に なんの悪意もなく あすに向かう希望の光が 灯っているにしても 一人っきりでは生きられない 愛することは罪なのだと 知らされた 午前2時の悲しみ 出て行ってって言った私の 心が見えなかったのなら仕方ないけど こんな嵐の夜に 出て行かれた私はそれでも 君を好きなら どうすればいい? ただれる愛を捧げたつもり 君の舌には 甘すぎた? つまりそういうことなの 愛には限りがないが 賞味期限があるとか 陳腐な 歌声 聴かすなよ。 私、一人っきりだ この狭い部屋が 冷たくてだだっ広いほどの一人 かつて膝かかえ 涙をこらえていた 悲しみはやって来て 少し我慢すると いつか消えて行った そんな幸せな まとわりつくむかしばなし そんな、罪な、はなし。 バカみてぇ。 我、一人、 枯野を駆ける しかして、蛇の道を歩むか かつては幸せだった 今はもう偽れない 幸せな振りをしない しかして、 蛇の心を知るか? 知るか! そんなもん。 ---------------------------- [自由詩]警戒レベル4/あおいみつる[2019年10月12日18時25分] よどんだ部屋の空気 水道の蛇口から水がしたたり落ちる ポテトチップスを頬張り麦茶で流し込む 判断能力 自己管理能力 欠落 仕方なく破れた地図を広げる 非日常な週末とテレビジョンのニュース 氾濫する河川とラクビーファンの落胆と期待 日々の享楽の計画が奪われたと嘆いたり 風が吹けば桶屋が儲かるだろうと目論むもの 台風は記録的のものなのだろうが 人の思いもそれぞれ 何もこのタイミングでと溜息をつく 湿度の高い部屋は居心地が悪く 流動しない暮らしはクリアとは言えない 意外にもろく崩れやすい現代社会 破れた地図を眺めながら途方に暮れている ---------------------------- [自由詩]疲れたり干からびたりしてしまいました/こたきひろし[2019年10月13日7時20分] 人人人 人ばかりです 人間の社会ですから無理ないです 電車は人でいっぱい 駅のホームも人でごった返し いい加減うんざりです 駅の階段を人が雪崩のように先を 急ぎます 雪崩に混じって 彼氏とあたし、しっかり手を握ってました お互いがはぐれたりしないように それはきっと愛情のなせる事に違いありません 私も人でした 雪崩の中で階段から一段足を踏み外しバランスなくして前に倒れ込んでしまいました 誰かが後ろから押したんです あまりの出来事に驚く暇もありませんでした それが故意なのか 偶然の結果なのかわかりません 犯人はそのまま消えてしまったか、どうなったかは 見当もつきませんでした 何人かが巻き沿いをくいました その内の何人かが怪我をした様子でしたが 幸い私は前の人におおいかぶさる結果になって 事なきを得ました 私は素早く起き上がり その場を立ち去りました 一組の男女が悲鳴をあげて立ち上がれなくなっていました 私は何も悪くありません 悪いのは私じゃありません 私を後ろから押した誰かです と必死に心の中で言いながら 逃げました 何らかの責任を押し付けられるのが怖くて しかし 私は普段は責任感が強く誠実な男の筈でした 少なくとも 私の周囲の目はそう見ていると思ってます 私はその評価を得るためにそれなりに努力してきたつもりですから それが朝の通勤中の群集の中で思わねアクシデントに見舞われてしまいました 人人人に押し流されて私は 自分を見失いました 私はその場所にとどまらずに立ち去ってしまいましたが、もしかしたら防犯カメラの目にしっかりと記録されて、その内に事故の元凶として逮捕されはしないかと、その後気になって気になって仕方ありませんでした その度に私は、私自身被害者なんだと必死に自分に言い訳していました 最悪、警察官の訪問を受けたらそれを説明して納得して貰えばいいと考える事で不安を打ち消そうとしていました しかし不安は払拭できませんでした それから何事もなく過ぎていきました ある休日に私は若い男女の訪問を受けました 二人は同じ階に住んでいると言いました 私は二人を知りませんでした 同じ階に住んでいても 私は二人を知りませんでした  フィクションです。ある女性シンガーソングライターの楽曲の歌詞から発想して書きました。未完です。 あえてそうさせて頂きました。 ---------------------------- [自由詩]みんな私のせいだけど/立見春香[2019年10月13日10時14分] 晩ご飯を作って 待っていたのは、かしこい? 部屋の掃除して 待っていたのは、かしこい? とても綺麗になったよ 鏡の中の私が笑って いやだからあいつのこと 忘れたいって、かしこい? もう、来ないって わかってるのに なにを待っているの? だれを待っているの? ひとりでご飯を食べて お風呂に入って眠る そんな日々で いいの? 悪かったら どうなるの? 夜はちゃんと眠る 眠れるときに眠る 晩ご飯のいい匂いがするなぁって 言ってくれた、優しく 思い出が重なり合って 暖かい毎日があったよ 今はもう、取り戻せない 夜が懐かしいだけ そしてあのころの私が 羨ましくて、ワガママだと思う そしてゆめのなかで あって、さめて、泣いて。 晩ご飯を作って 待っていたなんて、バカだ そんな思い出つくって思い出して 泣くだけなんて、大馬鹿女だ ---------------------------- [自由詩]アラート/梅昆布茶[2019年10月13日11時25分] 軋む夜に宇宙は静謐を装って 僕のアラートは適切には鳴らないようだ 優しい朝のひかりを浴びて 入浴したての君がいてくれればよい 絶対零度の幸福論と 肩のこらないレトリック アルマ望遠鏡の電波の眼が夜を探索する 君との密会も宇宙にばれてしまうのかもしれない もっと見ようとすると いつか なにかを曝け出さなければ ならないのかもしれない いつも星々は生まれ いつもまでも子供たちは 面倒臭いけれど愛しくて 今日のぼくは なるべく いらいらしないつもりなんだから ---------------------------- [自由詩]大雨/クーヘン[2019年10月13日12時42分] 大きな雨が一滴、地球へ落とされた。 ピペットでポタッと、宇宙の理科室から。 ---------------------------- (ファイルの終わり)