ナンモナイデスの秋葉竹さんおすすめリスト 2019年10月31日22時29分から2020年5月12日22時11分まで ---------------------------- [自由詩]ちっちゃく咲いた白い花びら/秋葉竹[2019年10月31日22時29分] 君と僕の手と手を合わせて 世界の光を反射させよう カゲのある微笑みでささやく 今朝の起きぬけの君の愛の言の葉 とても遠くから聴こえて 美しく透きとおっているかと思った 君を守るために 立ち上がった秋の虫の一匹は ここに鳴き声をあげて ガリガリガリガリと 僕の胸の骨をかじる 動かない肋骨を 削るみたいなものですから 言い捨て なにも持たずに美しい君の顔を思い浮かべる 真実の光がその夜のちいさな祭りのあとに 悪い心に変わった僕の希望を ひかり輝かせてくれたにしても 意地悪ということではないだろう 人生に終着駅なんてないからねって あたたかな風が吹く ちいさな失望の疼きを覚えつつ 明るい雨の中で ずっと生きていきたいと願う僕は その落ちる雨の速さに追いつけない ちっちゃく咲いた花びらみたいに白いじゃないか なんといってもね 動く心臓を棄てる狂気も僕のものですから 僕は君の持っている すべての世界の哀しみを 代わりに感じ取って 幸せも不幸せも 笑い顔も泣き顔も 喜びも寂しさも 君の歌いすぎで掠れた 色っぽいけど幼い声を思い出しながら 大切な君をやさしく抱きしめるためだけに 世界を救おう そして君の哀しみを消してしまおう ねぇ 君と僕の手と手を合わせて 世界の光を乱反射させよう? ---------------------------- [短歌]鳴る心/秋葉竹[2019年11月4日21時19分] みずうみに おれんじの泡を沈めたら 柑橘しぶきのみずうみ夕闇 葉の落ちる ソファーの上に西陽さし どくどくどくと心が鳴ってる 一匹の 星座の名前を知ったあと 僕の本棚から探す猫 一杯の 光を飲んで西をみて 飛行機雲みて、虹の橋みて 朝になる まえに愛とか伝えなきゃ 透きとおるから、みえなくなるから 胸の奥 生まれてすぐにシャボン玉 みたいになって、割れて、流れた 寝息聴き 寝てるあなたの瞼の上 そっとキスして起こしたくなる 言の葉は 紐に連なる過去からの恋 知らない浪漫が、綴られていく 夜、座る わたしの彼であった聖夜 その想い出の画像を消し去る 風よ吹け おおきな樹々、揺り、動かして 悩みをどうでもいい気にさせろよ ---------------------------- [自由詩]しのせかい/秋葉竹[2019年11月17日9時08分] つかれはて このままいきてゆくほどの 希望もないからしにたくて しぬのもこわくていきている だけ。 おれのすむ このまちじゃ しびとがへいきではいかいしてるぜ おれもそろそろそいつらの なかまになって しまうだろう ひとって そういう いきものだ ひとりでうまれて ひとりでしんで しんで なにものこせない ただ風がふき、 わすれさられる ---------------------------- [自由詩]空白の闇の少女/秋葉竹[2019年11月19日23時55分] その呪いの 暗い ほんとうをしっている 赤い血のゆめを吸い込んだ少女 街をさまよう顔のない亡霊 聴こえない声が 君の名をよぶ気がする しろくつめたいガードレールは どんなに飢えた獣の叫びからも 君を守ってはくれない もう終わりなどない 死者どもがもういちど 墓へ帰ってゆくのだとしても 屋上から 天へとびあがる キズついた魂をやさしく 撫でて癒してあげるのも 君を守るための 闇の少女の 裸の心の 献身なのだから もう なやまないで ---------------------------- [自由詩]可笑しな切なさ/秋葉竹[2019年11月25日23時30分] べつに嫌いだとか そんなことではないのです。 なんだか可笑しすぎて 笑いすぎて苦しくて、涙が出てきます。 しっかし、寒いなぁ、 カラダだけならまだいいんだけどね、 ココロまで冷え切った 初冬の孤り寝の夜長。 なぜあの人は あんなに重たげな優しさを 自然なものだと嘘をついているの? 『寒すぎて寂しくなります』って いやいや、それを聞くこちらの方が 両足が地面につかない 風船に乗ってるみたい、 嘘で人を刺すことが まったくもって悪いだけのことと いうつもりは無いのだけれど。 あの人の 優しさに潜む重たげな瞼を 真っ白なハタキではたいてやりたい。 大真面目な舌でつかれた嘘は 聞けば聞くほど切ない明るさに 照らされていて。 それでもう、 この身は寒くてたまらないのに ただただ、 笑ってしまうしかないのです。 ---------------------------- [自由詩]北極星の猫/秋葉竹[2019年11月26日15時59分] 猫って、美しい? ビン、と伸びたお髭? ピンッ、と天向いたお耳? 月のない夜に 恋人求めてミャアミャア啼く声は お世辞にも美しい歌声とは いかないけどね、 わがままっぽいけど 白猫のブルーの眼なんて まるでお貴族さまみたいで 「そのままわがまま」でいいんじゃない、 とか 諦めてしまうし 愛を求めるそんな平和な生き物では ないのです、と あたくし、野生のかたまりなんですから ッて。 かててくわえて、 にくしょく系ですからッて。 哀しみが美しいなんて 言うつもりはないのですけどね、 だから猫は、 愛を信じないのさ。 天上輝く、幾百の星座のなかで 魔性の猫座をご存知か? 人生の絶望を星観るものに向けて 降り注ぐものです。 猫座は、片方だけ 瞳を光らせていて その瞳を 北極星と呼ぶのです。 私はかすかな声で言うんですけどね、 猫座って、猫の眼だけなら 星座じゃなくてただの 北極星、でいいんじゃない? ねぇ、そうは思わない? この瞳に、 出逢えなかったら 北極星でしょうけど 出逢ってしまったわたしやあなたは それを 北極星と呼ぶことは もはや出来ない 瞳のみ 光り輝かせる ひとつっきりの猫座と 認めるよりほか 猫のプライドが守れない。 なんて、「そのままわがまま」な 生き物なんだろう? 猫、って。 まぁ、嫌いじゃあ、ないんだけどね。 ---------------------------- [自由詩]かり〜ん くり〜ん かりんくりんこりん/秋葉竹[2019年12月3日0時17分] かり〜ん くり〜ん かりんくりんこりん イブの乳房で音がする アダムを殺して ガタガタ震えてる 金の指輪を捨てなくちゃ かり〜ん くり〜ん かりんくりんこりん 空っぽあたまに音がする 指が凍って ナイフも棄てられない いちばん好きなのはかれ? かり〜ん くり〜ん かりんくりんこりん 幸福はわたしだけのもの おまえなんかにわたしやしない そこに転がっている おまえなんかに 愛をおそれないならすべてを いってあげるけどね かりん くりん かりんくりんこりん 苦しみもない世界で かれの空っぽの胸で音がした わたしが殺した アダムの肋骨に 耳をあてて 血塗れになるわ 抱きしめるわ 抱きしめつづけるわ 体温が消えてなくなるまで 愛なんて ないというのに かり〜ん くり〜ん かりんくりんこりん ---------------------------- [自由詩]ほら、ここに、いるよ。/秋葉竹[2019年12月3日22時28分] 花をみつけて おくれ 水をかけて あげて 朝になれば 花を 咲かす咲かす 咲かす 花はどこに いるの 夜の闇で みえず 罪を知った 世界 眠る場所も なくて 花はどこに 咲くの 夜の街は 寒く 夢でみたの 花を とても綺麗 綺麗 あなた死んじゃ ダメと 言ったけれど 死んだ わたし死んで いいの 花はどこに 咲くの 花をみつけて おくれ そして笑って みたい あなた死んだ だから わたし死んで いいの それを知って 欲しく 花を花を さがす けれど眠れ なくて 安いお酒 すがる そんなわたし ダメで 花をみつけ られず 街はいつか 夜明け 寒い夜の おわり けれど寒い 朝が 朝が来ても 寒い 花をみつけて おくれ 花は花は 綺麗 朝の道は 苦手 明るすぎて こわい だから花が 欲しい こころ隠す 言葉 花は花は 花は いつもちゃんと いるの だからわたし だから 花をさがす さがす ---------------------------- [自由詩]万華鏡が、砕け散っても/秋葉竹[2019年12月6日0時06分] まっくらな 無臭のまなこに火がともり 京の都に棄てる片恋 起き出すと 地の街あかりと天の星 君とシャワーと鏡とパジャマと 橋の上 届かない未来の水平線 眺めましろな手を伸ばしてみる   その一夜 怒っているような言い方で あなたに好きと告白されたい   ぽつねんと ゆくあてもなく白昼の 鴨のほとりに孤影を落とす 恋人と 呼べるほどには近くない 手もつなげないまま幾とせ過ぎたか そのまぶた 寝ているすきにキスをして 窓に映った自分と目が合う   思慕という せつなさをまだ胸にもち ほおに冷たい、夜、別れのキス ひとひらの 雪が静かにふる夜は なぜか天使に逢える気がする 阪急の 時計の下で待ち合わせ 天使の翼を広げていた君     恋を知り ひとりがさみしくなったとき 孤独の意味がわかるのです 捨てないで 恋する苦しみ我慢する 万華鏡が、砕け散っても   ---------------------------- [自由詩]冬のプラネタリウムを想う/秋葉竹[2019年12月7日21時09分] 寒ければ プラネタリウムがある 星座が喧しい 水鳥が鳴いているのか かきむしられる尖った声が聴こえる 寒ければ 空を飛ばなくていい 見下ろすと小さな橙の灯り 死の象徴としてのともしびか 魚が魚を信じているのだから 神殿から神殿へと泳ぐ影が見える それは黒い絶望に追われているのか かなしみを幸福の色に変える呪術を求め 死んだからわからなかったけれど 魚たちは星座の名前が欲しいらしい 寒ければ プラネタリウムも震えるかな 寒いけれど プラネタリウムの星座の まだ知られていない名前を くれてやっても よい と 想う ---------------------------- [自由詩]粉雪のように/秋葉竹[2019年12月8日21時23分] いつまでも、眠っていたい 冬の朝のことです じぶんから逃げ出した ふりつもる悲しみから、 追いつめられた仔犬でさえ それでも牙を剥き 過去と戦おうとしますが、 私は、さみしく、 朝の布団にくるまり、眠りつづけます 雪のふらないはずの街に 虹をくぐり抜けた粉雪が、 さらさらと、さらさらと、 風に吹かれて舞っています もし、あのけがれ果てた罪を 神さまだけは、赦してくれるのなら、 そうして、いつの日か空に昇れたら たったひとりでこの街をみおろし そうして、そののち、 雪になって、 この街にふりつもりたいのです それまでは、さみしく、 朝は布団にくるまりつづけます ---------------------------- [自由詩]サーカス サーカス/秋葉竹[2019年12月11日0時18分] サーカスとは ライフル銃の回転もなく ただ無防備に 悲しみの心が ただこのサーカスに舞うころ 流されている こころぼそさが ふたりの身体をひとつに溶かすけれど そのときうまれた美しい風は虹をくぐり ほほえみながら空たかくじざいに舞う サーカスとは そんなところ かくされた心の夜を もう1度投げナイフで 突き刺し 抉り取り 切り裂いて リングを整えてから もう一度万雷の拍手をいただくために ただ風はほほえみながら 空高くじざいに舞い踊るものだから サーカスとは そんなところだから サーカス サーカス サーカスが好き ---------------------------- [自由詩]冬の獣/秋葉竹[2019年12月16日21時52分] 独りでいる 冷たい部屋の板の間で ニャ、と小さく鳴く 猫も寒いのだろう ぼくたちの 朝はいつまでも 明るくはならないままで 口の中は 鉄の味がするままで ふと気がつくと 鉄の涙を流していたりする 板の間に 置かれた畳に座り込んで 猫を抱きしめている 嫌がられながら そして寝転ぶんだ 重力に負けて ヒゲも垂れ気味だし 朝日がいま ようやく カーテンを鮮やかな オーロラみたいに揺らして この猫を 放り出すほどの純粋な怒りもなく すこし軽めのウインクをするだけ ヒゲは触ると怒るけど ちょっと野生が目覚めるみたいな 牙も剥く 冬のバルコニーに 雪のふりした花が咲き この部屋からもう サラバといってみたいけど そこに猫がいるだけで 獣の声で泣きたくなるんだ ---------------------------- [自由詩]一夜、すぎ/秋葉竹[2019年12月17日22時16分] 一夜、すぎ 油の匂いのする聖水の 油膜を 洗い、すすげない、 その匂いにキャンキャン鳴いている かしこい顔の犬を追いはらい、 泣きそうな君を バス停までだけどね 見送ったのに、 君の、 うしろ姿はしぐれていった、から 山頭火か、と 見まごうばかりの 寂しさがあったりね、 柔らかな髪が長いのが 復活記念の証しだという、 風の吹く渓谷にある 新しい竜の影絵に向かい、 君はしな垂れ掛かりにゆくの、かね? 電気バスは音を殺して、 よからぬ想いの僕を見棄てて、 スーッと走ってゆくの、かね? ふて寝して ふたりっきりの、あの 青空のような時間を 小刻みに震えながら、 想いかえしては、感じるの、かね? それとも、返して、欲しいの、かね? なにも、棄てないさ この手に握った突風の跡には、 君の笑顔の写真しか、 残されていないのだから。 それさえ、幻の蜃気楼だと 嗤う、かね? 《ソンナ訳ニハ、イカナイ》 一夜、すぎ ほんとうがあった、ことは ずいぶんと昔から知っていたし、 いまも、知っている、 ものなのだから。 ---------------------------- [自由詩]艶姿/秋葉竹[2019年12月21日14時53分] くちのなかで飴玉転がし 立ち消えた、 甘酸っぱい感情を 想い返す 作られた梅の酸味は さらに人工的な丸い味がする 冬は、寒いから、嫌いだ 死んだ人のことも 忘れられない あの人の肌の味は どんなだったけ? 窓の外には、白雪がふる 私は、舌先で 小さくなった飴玉を 転がしながら あの人のアルバムを みている、去年の 正月の着物姿の くちのなかで飴玉転がし 立ち消えた、 甘酸っぱい感情を 想い返す ---------------------------- [自由詩]お正月/秋葉竹[2020年1月3日22時53分] アリバイは、崩れない、 紙飛行機は、落ちていた。 雪だるまが、崩れていた、 見渡す限り、雪景色。 お正月の、少し寂しい 公園に行って、冬空をみた。 あとで、ミカンを、食べたあと、 炬燵で、眠り込む。 アリバイは、崩れない、 私は、死んでいても。 元旦に、お雑煮を食べたけど、 今年は、白味噌にしてしまった。 鏡もちも買わずに、済ますつもり だったのに、安い小さいヤツ、買った。 じゃあ、私の、心を殺したの、だれ? 真っ暗な、部屋での、年越しだったわ。 あなたを待って、幸せに、 なれないみたいで、殺したの。 これも、自傷行為というのかな、 アリバイは、崩れない。 あなたは、実は、犯人ではない。 どんな、証拠もない。 私を殺したのは、私だったんだ。 ポカポカの炬燵で、死んでる私は、 たぶん、二度と、 みらいの夢を、みれないみたい。 ---------------------------- [自由詩]冷たい花。/秋葉竹[2020年1月7日21時49分] その冷たい花が 君の心へ舞いおちて、 白雪みたいと思った 僕は、 そんな、おろかものだった。 ただ揚羽蝶を切るような 疾風が、 この野原に吹き狂う。 瞳が汚いヤツの 残された時間は、 血走った嫉妬心より 作られ始めたか、 罪のせいで 縦に振る首の白さが 真っ赤なセーターの中から 光った気がしたけれど、 雷鳴より、 速く傷つく気持ちを その光に向けている、冷たい花。 ---------------------------- [自由詩]茜/秋葉竹[2020年1月9日22時16分] ふたり、 そのメロディーを聴き 冬の青空を眺め、 とても たいせつな、 でもガラクタみたいな竹とんぼが、 紙吹雪みたいな軽さで ただ、 風に舞っている 悲しみを、知った。 あの、新しい絶望を、 その、孤独から掬い取ろうとするから ふたりぼっちの寂しさの数だけ、 孤独は凍りつくのだろうか? 安っぽくても、 ふたりっきりで生きて行くと、 誓ったんだが。 ふたりのあいだの涙を、 ぬぐってくれる優しさを、 世界の罰の渦から、 逃れるためのものである、 とするのなら この、 静かすぎる世界の隅っこでは、 終末の、 みわたすかぎりの茜色の風が、 ふたりのこころの奥に いつまでも消えることなく 吹きすぎて行くことだろう、 そのときは そのメロディーも、 茜色にほおをそめるのかも しれない。 ---------------------------- [自由詩]いさぎよい色づかいの蛇/秋葉竹[2020年1月13日7時10分] あたたかい色の 太陽の 朝、 心臓は 針金で 編んだ さみしさの色をしている。 すっかり 青ざめた 希望は、 真実の蛇の姿を晒して ゆらゆらと怯えながら揺れている。 朝露の涙、 蜘蛛の糸、 高い空の雲。 恨みながら泣きつかれた恋の歌も。 切り取られた瞳、 這いよる失恋のメロディー、 焼き尽くされる喉元。 幼き絶望たちは叫ぶ 世界の終わり ふりそそぐ希望の小雨の中 見上げる蛇の黒い目が光る 子どもたちの姿をした 神さまみたいに光る いさぎよい最後の時代 忘れずに ひっそりと 始まる。 ---------------------------- [自由詩]瞳の行方/秋葉竹[2020年1月18日9時29分] あの時計は今はもう札幌あたりに 転がっているだろうか 砂浜のボタンがまだ鳥取の近辺で 埋没しているみたいな世紀末 そういえば《少女》を革命するアニメが 20年以上前に流行ったけれど 20年経ったいま 《少女》は革命されたと言えるのだろうか? どんな嵐の夜も 眠れなかったまぶたも いつか綺麗な想い出に 変わる日がきっと来ると 尚も信じている、信じている 今日も信じている、信じている 正義の瞳はもう大阪あたりで 眠っているだろうか あゝ、僕は知っている 深淵の黒い月光を。 そういえば彼女の歌う 奄美大島の歌は青い光で 空と海を切りとっていた なにも知らせずに、ただ蝶も舞っていた ---------------------------- [自由詩]野良犬/秋葉竹[2020年1月25日7時15分] 青い制服が似合う学生さんが 足早に過ぎゆく川岸 うずくまる野良犬 声も出せずに いつだって逢いたい心に 吹く風は早くおいでと誘なう さいはての孤独地獄へ、とか ハハ。 今日だけは子供に戻り キラキラと輝く瞳を鏡で知る けれど明日はまた灰色 流れる川の水に憧れます、とか ハハ。 いつまでも鉄が錆びずにいられないように いつかは錆びつく失恋を何度繰り返すのか バッカみたいだあたし、ホント、バカだ バカ。 彼女に触り続けたかったバカ、 それに憧れた罰を受けよう 陽も高い鮮やかな土日に逢うと罪になる恋 闇の住人の、最後は燃え尽くす絶望しかない ありきたりな恋のエッジは悲しく ただ正しいのは彼女の方だろう、じゃね? くそ(下品ですみません)。 懐かしい田舎を想い 地平線のかなたを見る そんなまっすぐな眼差しで生きられたら、 なんてね、羨ましくて。 あたし、こんな匂いしてたかしら? って、悩むバカひとり、ばかり、ここにいて。 彼女の匂いがもうしないこの部屋の 優しい時間は終了していて そして『行きて戻らず』の旅に出るのが 彼女の最期の願いだとか? それは彼女に訊いてくれ、それは。 ---------------------------- [自由詩]浴室の鏡/秋葉竹[2020年2月21日15時28分] 青いタイル張りの 浴室で 貼り付けた鏡は不可逆にまで曇り あたしの顔が見えなくて 泣いているのか 笑いをこらえているのかも わからない 灰色がたちこめる世界だ 湯をかけてやっても ダメなものだから あたしも一枚の ブルーのタイルになる 二月二十二日 そこにはやはり 目に見える 十字架が突き刺さっていて ほかの三つの二は実は 君とあたしと 夜の君 三人の照れた笑顔の『ニッ』なのだ 浴槽に湯を目一杯張って 頭を突っ込んでブクブク言ってやった あとで短く口を突いてでる 言葉と思いやりの 欠片を いまも知っている「好きです」 ---------------------------- [短歌]この猫め、あたしを孤独と思うなよ/秋葉竹[2020年3月5日1時59分] 過ぎてゆく疾風が眼を切った冬、春を信じてただ走る君 見られるのが嫌だなんて言わないで正しい片恋なんて知らない あの雪で転んで笑われやけくそで手渡したチョコでも想いは通じた 今といふ時代をあそぶ蝶であれ艶なき日々など《をんな》の名折れ どす黒く染まった心を簡単に笑顔で君が晴らせば星空 この猫めあたしを孤独と思うなよはらはらはらとボタン雪降る 目のまえのガラスが吐息でくもるから迷いつづけるあの名を書こうか ほろよいでねむってるふりしてるからほっぺにかるくならいいよちゅって 大きめのじゃがいもみたいな父の背を追う路地裏ではカレーの匂い ---------------------------- [自由詩]魔女と月/秋葉竹[2020年3月20日14時40分] ひょっこり魔女がやって来て 箒でお掃除するでしょう、 帽子は中折れするでしょう、 夜はこれから更けるでしょう。 ビルの谷間を翔ぶでしょう、 その身を凍らすビル風は 魔性の心を呼び覚ますでしょう、 ──魔女が魔法に呑み込まれ。 月はすっかり素面でしょう、 けれどすこしは照れるでしょう、 魔女が月へと翔ぶときに 街は華やぎ祝うでしょう。 わたしはそのとき知るでしょう、 彼女の心の底の底、 ただれる闇さえ見るでしょう、 ──そして彼女を好きになる。 ひょっこり魔女がやって来て 箒でお掃除するでしょう、 帽子は中折れするでしょう、 夜はこれから更けるでしょう。 ---------------------------- [自由詩]まっしろなせかい/秋葉竹[2020年3月23日22時43分] 背中の影が みえないかなしみを染み込ませて 笑ったら 朝になった そんな ちいさな窓からは めにはみえない明るさが すんなりと射し込んで 失った色を思い出させた どんな不思議も信じた色だった お日さまは3分かん がまんして生きてゆく弥生の そらをとぶ かなしみにのみこまれないために いっそ 地を這う眩しいものに なりたかった そんな窓からは 時間の流れが うっすらと笑いながら 空気が流れるように まっしろになった そんな まっしろな せかいになった ---------------------------- [短歌]さまざまな世界で鴉が鳴いている/秋葉竹[2020年3月27日0時50分] 「好きでした」一行の手紙が時を止め君が綺麗な声で泣く春 きみの乗るスクーターにはあの頃のセピアの記憶をまだ積んでいる 弓なりに背を反りかえし喘いだらダメだとわかっているワンルーム 縁むすび風鈴が鳴り北風が窓たたくなか君といた部屋 儲からない自由がこの手にのこるから窓からながれる雲みる夕刻 こんなにも君のマフラーあたたまる雪も舞い込む待合室でも 春待たずたちまちなくした片恋に桜舞い散れ表参道 さまざまなせかいで鴉が鳴いているぼくは窓からすべてをみている ---------------------------- [自由詩]風の鳴る未来/秋葉竹[2020年4月5日12時13分] 風のつよい朝は こころの傷が浮かびあがる 神聖な朝日に触れられて 恥ずかしげに うずうずと傷がうごきだす 傷は しんぞうから流れる からだのなかの 赤い悲しみの出口で ほどほどの 生活を邪魔することはない だからほんらいなら私から 傷のことなど考えなくてもいい にもかかわらず 傷つけた刃物の持ち主を知るために つまり 私からあれを奪った者を知るために なんども繰り返して こころの傷を みつめることとなる すると そこに ゆっくりと死にそうになっている じぶんじしんを みつけたりして みるんじゃなかったと ふりかえっておもう そこには ただ ごおっ! と 風が鳴る未来が みえる ---------------------------- [自由詩]たそがれの神なき時代でも/秋葉竹[2020年5月1日3時42分]   神なき時代、 しかしもう嫌だって云わない 人は明るい明日へ向かって 向かって、行くものだ 私なんかいらない、 痛む内臓が嘘をつくよ? 忘れたころに昔に戻り、 言葉がまだ生きていたすがたを ちゃんと調べようか? 吐き気のする怖さ、 暑く、汗まみれの神なき夏の訪れを 空をまう 花びらのおちる 流れないドブ川で知るのなら、 その声で、 その言葉で、 夢を追う動物が、 地上を走りきるとも聴く なんとしても 走りきらなければ、ならない、とも、 たそがれの 神なき時代でも、 しかし二度と昔が懐かしいとは、云わない 人は震える喜びの待つ、 未来へ向かって 前をみて、 前をみて、走って行くもの、 なのだから。 ---------------------------- [短歌]風に舞う夢/秋葉竹[2020年5月9日12時42分] 恋愛をもうやめたのねきみひとり《幸せ》になれていいねと風吹く 愁あるおんなの仕草が試される《詩》を書く涙のわけとは無縁の 泣かないで強い大人になるんだろ、わかっちゃいるけど止まらない《夢》   ずいぶんと昔の《犬》を忘れずに想い出すのは添い寝した冬 風に舞うキラキラ光る《糸》をみた手の届かない君を想った   ---------------------------- [自由詩]きっと きっと《やぶれるこころ 改訂》/秋葉竹[2020年5月12日22時11分] わかれのよかんをかんじたら おんなはすばやくはんのうし あたしをどおしてきらうのと きっとつめよることもする うそだ うそです うそだといってと きらわれてもいい すがりつく しょせんはこのよのつねでしょう すきやきらいやほれるのはれるの しつれんをしてなくよるもある きえたくなってしまうよるさえ もういいんだとすべてをすてても さいごはちゃんとあさをむかえた わたしはこれから てんぽただしく りょうてをおおきくふりながら げんきげんきにあるくのです もうわすれたわとうそもつきます くだらぬことでもわらいます みらいはもうすぐくるはずですから げんきげんきにいきるのです ---------------------------- (ファイルの終わり)