DFW のはるなさんおすすめリスト 2016年7月8日23時58分から2019年8月8日10時46分まで ---------------------------- [自由詩]制服/はるな[2016年7月8日23時58分] まぶしい半袖たちがはしっていくので 道が喜んで反射をする かつてわたしも制服をきていたが この道はくすんだように黙っていた もうしばらく前のことになるので よく覚えていない 駅前にあったパン屋の名前(オレンジ色の、プラスチックのトング) 雨の日のぎゅうぎゅう混みのバス(おもたく湿ったウールの匂い!) やわらかく馴染んだローファーの踵を踏む甘やかさ、 「指定外」のくつ下を履いていると没収された、 校舎が一体何階建てだったか(二階の踊り場には倉庫があって) 誰が誰を好きだとか(始終めまぐるしく入れ替わる) だからもう、 裏庭の沈丁花が白かったことも 自分の帽子だけが最後までみつからなかったことも 3階の端の教室にだけベランダがついていることも そこから身を乗り出すと すこしだけ海がみえたことも ぜんぶ忘れてしまった ---------------------------- [自由詩]ゆめゆめ/はるな[2017年3月1日2時03分] ゆめの在りようを忙しなく描いては 愛おしく汚れて色付く指指 あたしたちは性懲りもなくなんども見つめあっては 数秒ずつの恋を終える この世の輪切りを飾って悦に入るなよ どんな隙間にも羽根は生えて あらゆる壁に根は伸びる 飛びたつさまを予想しては裏切られ その鮮やかさにひれ伏すこれが 恋でなくてなんと言うだろう 力強く広がるはだ色の地平に、 まっ暗なゆめが灯るとき かちりとからだは傾いて また落ちていく、 世界に、あるいは恋に そうでなければまばたきのすき間に そして羽根が生えて 根は伸びて 性懲りもなく見つめあっては 数秒ごとの永遠を終える ---------------------------- [自由詩]布巾/はるな[2017年3月8日19時46分] きみがいつまでもいないあなたをみているので ぼくは一塊の埃になってしまった 埃になってもなお消えない思いで ぼやっと燃えてしまった きみが布巾をとりにいく それで些細な焦げを拭きとると 部屋着をぬいで洋服を着る 靴したを履いて きれいな髪どめをつける そうして扉をしめて出ていくと 部屋はたちまち青くなり やっと僕はいなくなる どこにも 君の中にも ---------------------------- [自由詩]たんぽぽ/はるな[2019年4月18日9時15分] 季節はつぎつぎ仕舞われて ま新しいシャツの朝、とびはねた分だけ沈む靴 いつ吹雪がきてもいいように準備しておくんだよ。 たんぽぽを乾かして瓶詰めにして 転んでも泣かないように、いつもすこしだけ傷ついておくといい そう、 死ぬのがこわくなくなるように、少しずつ死んでおこうと思った。 それからわたしは16歳で、庇護されて、甘やかされていたけど、 それでもだれも一緒に転んではくれなかった シャツ、ビル、自転車の影がゆがんで動くのがおかしかった。 指定された服をきちんと来て、 いつもすこしだけ傷つこうとしていた ---------------------------- [自由詩]なつのいちばん平なところ/はるな[2019年8月8日10時46分] なつのいちばん平なところへ わかい鳶がよりそって 切り裂くようにとびたったなら さんざんひかりに照らされて 得体をなくしたさびしい熱が 誰か誰かと呼んでいる 正直なものが高くとび、 嘘つきものが飛ばないならば ひまわり畠をぬいとって、 やさしいかげへはいろうか。 そうしてふたりひとかたまりの たいらな土になったなら あさってに来る大きな雨に ながれて夜にかえろうか。 ---------------------------- (ファイルの終わり)