DFW のこたきひろしさんおすすめリスト 2019年5月25日6時11分から2019年8月25日23時36分まで ---------------------------- [自由詩]天井と天丼/こたきひろし[2019年5月25日6時11分] 夜中に目を覚ましてしまい それから朝まで眠れなかった 夜が明けた頃 カラスが鳴き出した そのぶきみな鳴き声に 何だか不吉なものを感じた 以前 道に放置された猫の轢死体の内蔵を 食べている姿を見た事がある 真っ黒い鳥が 通勤の途中に車で通りかかり 遭遇してしまった 一人ぼっちの朝食でした 邪魔しないように避けて走り抜けました そんな事を思い出しながら ぼんやりと天井を見上げてたら いつの間にか気づかない間に 天井に大きな染みが広がっていました そして間もなく とんでもない現実が目前に起こりました 天井に広がっていた染みを突き破って カラスが部屋に入ってきたのです カラスはあろうことか 寝ていた私の上にとまって羽をやすめました そのとき運悪く 私の上に布団はかかっていませんでした 仰向けに寝ていた私の心臓の上辺りにカラスの爪が 刺さりました もう生きていられません 私の体から血が噴水のようにのぼりました カラスはその鋭い嘴で急所をつついてきたのです もう 死ぬ以外方法は見つからなくなりました たかが一羽のカラスに私の内蔵は食べ尽くされてしまいました 私の大好物は海老天丼なのに もう食べるチャンスを失いました 残念です ---------------------------- [自由詩]冬がくる前に/こたきひろし[2019年5月26日7時50分] 日が傾き日が落ちるまでの間の時間帯が好きだったよ 中学の頃さ 家から学校までは十キロ近くあって 毎日自転車で通学した きつかったな ほとんどが急な坂道で上ったり下りたりした 冬場は体が暖まったが 夏は死ぬほど辛かった 学校の校舎は高台にあって周囲は林に囲まれていた 私は内向的な性格で無口だった 栄養が不足していたから体は痩せていて背は低かった 運動が苦手で駆け足が遅かった だから 体育の授業と体育祭は大嫌い 特にリレー競争は地獄だった 私がメンバーの一人になったチームは大概は最悪の結果でゴールしてしまうからだ 自然 私は疎外され憎悪の的になってしまったよ そんな私に友達はいなかった 友達はできなかった もし私と友達になってしまったら 周囲からつまはじきにされてしまうに違いなかった だから けして孤独を愛していた訳ではないけれど 私はいつも孤立していた 当然 教師からも見放された存在 クラスを受け持つ担任にとっては お荷物になった 教室内の空気を潤滑させるには障害物に見られてしまった 全体の中に異質な個体が紛れ込んだ場合 取り除くのがベストな選択だ しかしそれは著しく正統性を欠く 憚られたから 教師はその存在の無視を選ばざる得なかったのだ 先生もまた働く労働者の一人なのだ 自分を自分の生活を守らなくてはならない 幸い 問題の生徒はひ弱でおとなしい 従順で目立たない 無視は何ら問題にならないだろうと 担任は都合のよい結論を導き出した 私はクラス全体から酷い苛めにあっていた 言葉による虐待 暴力による虐待 さすがに担任の前ではなかったが 授業と授業の間の休憩時間 お昼休み 放課後の掃除の時間 などなど 苛めの標的にされた 勿論 教師は 気づかない訳がなかった ある日 私が授業と授業の合間の休憩時間に立ち上がりトイレに向かおうとした時 女子生徒の一人がわざと私の前に足を出した 私がバランスを失い転倒した時 その場にいたクラスメートたちは嘲笑と歓声をあげた 私はその時左目が机の角に当たりそうになった 危なくそれたが 激痛を感じて目を手で押さえた それを見て誰一人駆け寄りいたわる者はなかった 間もなく休憩時間は終了し 担任があらわれたが何事もなかったように クラスメートたちは席に着いた 担任は席から離れ立ったまま目の辺りを手で押さえ痛そうにしていた私に気づかない訳はなかったが 何も見ないふりをして私に自分の席に着くように促した その直後私は激しい怒りを感じて教室を飛び出した しかし 誰も私の後を追いかけては来なかった 私は全力で校内を駆け抜け自転車置き場に行った その時 私は私自身の運命を呪った 救われる事のない自分が哀れで可哀想になった 目をあげて空を見ると 日は傾いていた 晩秋の空気が充満し 非情な冬の気配がしていた ---------------------------- [自由詩]写真は真実をどこまで写せるか/こたきひろし[2019年5月30日22時15分] 写真を撮られると いっしょに魂を吸いとられると 誰かに教えられたか 何かの本で読んだ事がある わたしは 嫁入り道具の箪笥の引き出しの中に 一冊の 集合写真のアルバムをしまい忘れていた そんな事は誰にでもある違いなかった 一組の男女が どんな形でもくっついて離れられなくなって 同棲したり結婚したりすると たとえそれが狭い殺風景なアパートの暮らしから始まったとしても お互いがそれぞれの思い出の物を ひとつかふたつ それ以上を持ち寄るものだろう 持ち寄りながらも お互いそれを見せ合ったり 確かめ合ったりを わたしも彼も一度もしてはいなかった 正直 わたしは彼の思い出の品物を 見るのも見せられるのも怖かった 同様に わたしは自分の思い出を 見せるのも 見られるのも嫌だった なのにどうして わたしは思い出を引っ越しの荷物の中に入れて 実家から出てきたのだろう 集合写真のアルバムは わたしが一番最初に働き出した職場での 社員旅行の思い出をカメラに撮されたものだった わたしはその中の写真から 特定の人物のところだけ 鋏で切りとっていた もしそれを彼が見たら 何故だ と言う疑惑を生むに違いないと思いながら まるでわざと地雷をしかけて それが 爆発するのをたのしみに待つみたいに 彼に理由を聞かれたり問い詰められたりしたら 素直に答えられない自分と それを 極度に怖れる自分がいるのに わたしは嫁入り道具といっしょに 実家から持ってきたのは何でだろう もしかしたら 彼に 貴方は代用品と言いたかったのかもしれなかった いまだにくすぶる思いがわたしの中にあるからかも しれなかった 青春の思い出って ものに 写真を撮られたり 撮ったりすると 魂を吸いとられるらしい そんな非現実を わたしは信じていた頃 わたしは初めて男の人を 体験していた ---------------------------- [自由詩]づきづきと心が痛んで/こたきひろし[2019年6月1日1時41分] づきづきと心が痛んでいました 正体はぺらぺらの心なのに その時僕は十四歳 正男君も同い年でした 僕が正男君に近づいて仲良くなろうとした本当の理由は 三歳年上のお姉さんがいたからです 清楚で綺麗で女性的な人でした まだ女子高生なのに 大人の女性の香りがしていました 驚いた事に 正男君は顔立ちや言葉遣いやふるまいがお姉さんそっくりでした 彼は弟と言うよりも まさに妹と言っても過言ではありませんでした とは言っても 普通に男の子の服装はしていました ただ普段からなよなよしていて 周囲も僕も違和感を覚えていました 正直 表面には出さずにいましたが 僕は心の中でそんな正男君に不快感を抱いていました 相手が女性なら抱く筈の好感が 戸籍の上では男性の正男君にはどうしても 受け入れられませんでした 僕はけしてそれをしませんでしたが わきあがる偏見や差別の心から 周囲から苛めの対象にされていました 僕がその仲間に加わらなかったのは ひ弱な体と気弱い性格がわざわいして 僕もまたいじめられる立場だったからです しかし けして僕は善意と正義の少年ではありませんでした ただひとえに臆病だっただけでした あれは 正男君が何日か学校を欠席していた日でした 担任の先生から僕に 学校の帰りに様子を見にいってくるように言われてしまいました 僕は心の中で「それって先生の役目じゃないですか」 と主張したかったのに それが言えずに引き受けてしまいました 同時に 僕は内心 もしかしたらお姉さんに会えるかもしれないという期待に ときめいてもしまいました 僕も正男君も自転車で中学校に通学していました 正男君の家は大きくて広い庭でした 僕はいつもそばを通り過ぎるだけで 一度も立ち寄った事のない家を初めて訪問しました 玄関の近くに正男君の自転車は止まっていました 僕は正男君を呼びました 何度も呼びましたが返事がありませんでした なので僕は家の裏側に回りました 窓がありました 少し開いてました 僕はそこから覗きました 正男君のお姉さんが見えました セーラー服を着ていました そばにもう一人女の子がいました 中学の女子の制服を着ていました お姉さんとそっくりでした お姉さんのおさがりを着ているに違いないと僕は思いました 僕はその時 見てはいけないものを見てしまった と 思いました そして言葉を発してしまいました 正男君 と ---------------------------- [自由詩]夜中に母親が現れて/こたきひろし[2019年6月6日7時02分] 昨夜は死んでいる自分の夢を見た まだ息を引き取って間もない自分の体だった 死んで間もない自分の心は 遺体から抜け出していた 遺体から抜け出した自分の心は 直ぐには天国へは昇れなかった て言うか その先天国へ昇れるか 地獄へ落ちるかは 自分では決めれないんだろう それから先の自分の遺体の推移を見守らなくては ならなくなった 何の前触れもなく 女の人が突然にあらわれた どなたですかと訊いたら お前の母ちゃんだと答えてきた 何言ってるの 母ちゃんはとっくの昔に死んでいるから と言ったら お前こそ何言ってるの お前も死んでいるんだよ 死にたてだけれどさ 母ちゃん それは違うと思うな あんたの息子はまだ焼かれていないんだ もしかしたら 自分の遺体の中に 心が戻れるかもしれないじゃないか そう思うんだったら やってみな やってみればいい 復活してみせるよ と俺は母親に言った けれど その方法が皆目わからなかった その方法を探し回って 夢のなかで苦しみもがいた そして覚めた 昨夜は死んでいる自分の夢を見た それは悪い夢か いい夢なのか 判断がつかない いずれにしても 生きている間にしか 夢を見られない 現実 認知症にかかって 寝たきりになって そして死んだ 母ちゃん 申し訳ないけど 悪いけど 言ってはいけない事だけど 俺は 母ちゃんみたいな 最期は 嫌だよ ---------------------------- [自由詩]自分で自分を殺したりはしないさ/こたきひろし[2019年6月9日6時26分] 女 男 女 女 男 私の父親と母親の間には五人の子供がいた 一番上の姉と一番下の私とは十歳離れていた 長女が二十歳を過ぎた頃私は小学校の五年生だったと思う 実家は農家で 母親は農婦父親は農夫だった 生家は貧乏で それに相応しく貧相な藁屋の家だった 田んぼからは米 畑では葉煙草の生産 冬場は山仕事 夫婦は働く事に必死だったから 長女が家事の大半と弟妹の面倒をみていた だから末っ子の私にとって 実質的な母親は一番上の姉になっていた 親身に面倒をみてくれた 時には風呂場で私の頭髪を洗ってもくれた 躊躇いもなく体も洗ってくれた その時は姉も真っ裸だった きっとそのせいだろう 私は母親には感情がわかなかった 自分でも怖いくらい 冷たくてよそよそしい気持ちしかわいてこなかった そんな私の気持ちを母親は鋭く感じとっていた いつの日からか 母親は私の存在を疎むようになっていた 勿論 母親と私はお互いの心の底を推し量りながらも けしてそれを確かめようなどとはしなかった そこには根底に肉親の絆があって 切るに切れない血の繋がりがそれを辛うじて拒否していたからだ しかし 親と子供の間にも相性がありそれを否定する事はできない たとえ肉親同士でも愛情の密度は公平に保たれてはいないと 私は子供の時分からすでに悟ってしまっていた 私は母親にとって可愛げのない子供であったに違いないだろう どんな切っ掛けと悪しき原因が重なったとしても 自分から生まれた子供が自分になついてくれなければ いくら母親といっても それが長い時間続いてしまったら 愛情も思いやりも失せていくのを止める事は至難だと思わざる得ない とは言っても 私は私なりにその事に悩み苦しんではいたのだ 長女が二十一歳で嫁ぎ 二番目の姉は就職して家を出た 三番目の姉もまた就職して家を出て行った 家には 最初から反りの合わない兄と 両親だけになって 私は深い孤独感を感じない訳にはいかなくなった 姉三人は私に一様に優しくしてくれた 三人が家からいなくなって家の中はまるで火がきえてしまったようになってしまった 私は 話し相手も心の拠り所もなくなってしまった 私はよく思い出す 姉たちは私がまだ小さい時に よく私に女の子の服を着せて遊んでくれた そのせいではないだろうけれど 私は女々しく優柔不断な男に育ってしまった そして物事を悲観的にみる癖がついてしまった その延長線上で 高校時代はやたら自殺願望を強く持ってしまった 自分のなかで死をいたずらに美化してしまった 手首を自分で切る姿を想像しては興奮してしまった なぜかそこには性的な興奮も混じっていた 生と死と生殖と性の密接な繋がりを発見してしまった だけど死への願望の正体は 単純に自分で自分を美化しているに過ぎなかった 演じているに他ならなかった 私は女々しく優柔不断で臆病な愚か者だった それはいまだにかわらない 自分で自分を闇雲に愛しているだけで 自分で自分を殺せたりは しないのさ ---------------------------- [自由詩]依存症とその末路/こたきひろし[2019年6月11日5時31分] スマホを肌身離さず持っていないといられない 電話なんて滅多にかけないし かかってもこないのに 友達も仲間も失う不安はなかった なぜなら 生まれつき 友達を作れないし 仲間には入れない 著しくコミニュケーション能力が欠けていた だからと言って 孤独感をこよなく求めている訳でもない 本当は寂しがってる 自分の触手で自分の内面を探ると 四方八方冷たくなってるから だから どうしても 心の隙間隙間を断熱材で埋めたい 俺は インターネットに病み付きになってしまった 検索しないといられない 掲示板に書き込まないといられなくなった それは 渇いた喉に冷たい炭酸水を染み込ませるみたい なのかもしれなかった 置き去りにされた砂漠のど真ん中 それが俺にとっての社会の印象だ そこから抜け出せずに 逃げ出せずに インターネットの蜃気楼に ひたすら 依存していた ---------------------------- [自由詩]得体のしれない不安と得体のしれてる不安が/こたきひろし[2019年6月15日0時19分] 私は終始 得体のしれない不安に付きまとわれていた なんてね そんな言葉をずっと文字してみたかった まるで売れない純文学作家の小説のテーマみたいだな 学校とか職業とか 異性遍歴とか 過去を振り返れば たいしたことない私には 得体のしれない不安なんか 宇宙にころがる星屑の中の砂漠みたいなもんさ そこで 砂嵐をみるようだ 私はもっぱら得体のしれてる不安にいつも追い回されてるよ それはまるで世俗的かつ現実的な事柄 いちいち文字にするまでもないから どうぞ自由に想像して欲しい この国の雨季と表現していいのかな 近年世界中に起きている異常気象の中で突然変異は起こらなかった 今年も来たよ 鬱陶しい雨が降り続いていた 抱えている得体のしれてる不安に蝕まれながら 黴がはえてくるような気分になっていた まるで空虚な毎日 それでも仕事に出掛けなくてはならない 働かなければお金を手で触れなくなる だからお金の収集によねんがないんだ お金は人間の生殺与奪の力を持っているからね いったい口は言葉を話す為にあるのか 食べる為にあるのか それとも愛する異性の柔らかい皮膚を舌で舐める為にあるのか もう 訳がわからない 得体のしれてる不安が蛞蝓のように這っていて ---------------------------- [自由詩]鏡の中の砂漠/こたきひろし[2019年6月17日0時23分] 朝 歯を洗い 顔も洗い だけど 洗面台の鏡は覗かない 自分の顔や頭髪 見たくない 清潔でも綺麗でもない 日々美しく老いていない それどころか 老醜が鼻をついてくる でも 朝がくる度に 洗面台の鏡の前に立って 歯ブラシを使い 両の手で顔を洗う それは習慣 だから 顔だって 歯だって 髪の毛だって 時が来れば 燃やされて灰にされて しまうのにさ ---------------------------- [自由詩]否定する/こたきひろし[2019年6月18日0時47分] どんなに練習しても 練習の成果は得られなかった 鉄棒の逆上がり 何度も挑戦したけれど 出来なかった だけど そんな子供はクラスに何人かいた 何人かの一人に私も含まれていた 夕日は沈み 朝日は昇る 逆上がりの出来なかった子供は 大人になっても 大人になれなくても 鉄棒にぶら下がったきり空を見上げたままだ 夕日は沈み 朝日は昇る 何度探しても太陽は一個しかなかった 一個しかないお日様を追いかけた お日様が地平に隠れてしまうまで 必死に追いかけた そんな 子供の心は 何処にいってしまったんだろう 放課後の校庭 落日の空の下 誰一人いない校庭には 錆のついた鉄棒があった 鉄棒の近くには砂場があって 逆上がりの出来ない子供の 悔しさと泪が埋まったままだった ---------------------------- [自由詩]ココロにアイがなくても/こたきひろし[2019年6月20日6時46分] ココロにアイがなくても差し支えは何もありません ココロにアイがなくても何の不便もありません ホントです アイしてないし アイされてないし アイしあってもいない ワタシですから 夕方 狭い道沿いの空き地に 女子中学生が数人 車座になって語りあっていました 全員体育着でした そんな姿が夕闇に溶け込んでいました 仕事帰り私は車で通り過ぎました それを見て 私の頭の中に 「ココロにアイがなくても差し支えは何もありません」 と言う言葉がまるで産まれて間もない蛇のように現れました 何でだろ 説明できませんが 私の詩作りはいつもそんな風にして始まるのです 私はけして愛に飢えてはいない筈なのに どうしてもネガティブな方向に言葉を歪めてしまうのです 私はノーマルなタイプの人間じゃないのかもしれません ポジティブに逆らう事で ある種の快感を欲しがってしまうのです ココロにアイがなくても差し支えは何もありません ココロアイがなくても何の不便もありません ---------------------------- [自由詩]社会への不安と社会への不満が/こたきひろし[2019年6月22日8時51分] 社会への不安と 社会への不満が たえず燻っていても 燻っているだけで 火はつかないから 燃え上がらない 夜に娘と話していた この国は平和過ぎるから 結局はそれを受け入れて諦めてしまうんだよ 娘よ なかなか言うじゃないか 父親は年金だけじゃ食っていけない から 毎日 体に激励して必死に働いている 地と汗と泪が 汚れたオイルになって 体を潤滑している 何が何だかさっぱり理解出来ないが 国には少し税金納めてる 働いているから 七十まで年金納めなくてはならない それもこれも皆の為だし 自分の為だ 社会への不安と 社会への不満が 益々老いに滲みてくるんだけれど だけどこれは まさしく現代詩にはそぐわない内容だな もっと難解な言葉をペンにして しまわないと きっと詩人は現実から 目を背けたい人ばかりだから 言葉遊びの好きな人たちだから ---------------------------- [自由詩]孤独とは闘えないよ/こたきひろし[2019年6月26日5時36分] 孤独を愛してるなんて 自分に大きな嘘をついてる しかしそれは ただ単純に自分以外の人間と うまくやっていけないだけ そして好きな人と 嫌いな人間とをはっきりさせてしまい 上手に自分に言い聞かせられずに 線を引いて円をかいて その中に自分を閉じ込めてしまう 弱くて脆い愚か者 なだけ 子供の頃には すでに生きてる事に何の意味もないと結論を出してしまっていた それはもしかしたら生まれる以前から解答欄に答えを記入していたのかもしれない けしてそれは突然変異ではなくて まれな存在とも言えないだろうと思う 実に可愛げのない可哀想な子供だったに違いないが 母親には見抜かれていた だから 祖母がいきなり倒れてその日の内に息をひきとった時 その遺体の側で泣き出した孫をみて 集まった親類の一人が「おばあちゃん子だったからな」と声に出した時 母親は独り言のように周りに聞こえないように それでいて私にはちゃんと聞こえるように冷たく言ったのだ 「この子供はそんな子じゃない。嘘をついてるだけだよきっと」 私はずっとずっとその声と言葉が耳の中で蝉の時雨みたいに聞こえて来ることがあるのだ でも そんな子供は案外沢山産まれていて ある種の欠陥を備えながら それなりに成長して 社会の中に紛れこんで 生涯を終えていることに 周りはほとんど気づかずにいるだけなのだ 腕力も 財力も 知力も 学力も 孤独には無力 孤独とは誰も闘えないし 闘うなんて ナンセンス 勝てる訳ないんだよ ---------------------------- [自由詩]約束/こたきひろし[2019年7月2日0時47分] 死ぬのは怖い 死ぬのは怖い 死ぬのは怖い なんとしても死ぬのは怖いから 何とか死を回避する方法はないものかと あれやこれやと思いを巡らしながら 何とか今日まで生きてきた 死ぬのは怖い 死ぬのは怖い 死ぬのは怖い 死んだ人の焼かれた骨を拾って壺に入れる度に 自らの死後の姿を想像をして身が震えてしまうんだ 死ぬのは怖い 死ぬのは怖い 死ぬのは怖い そんな私にだって 死ぬ以上に 生きる事を怖れた時代が たしかにあった でもそれは ずっと ずっと 思いだしたくなかったから いつのまにか 都合よく忘れてしまった 死ぬのは怖い 死ぬのは怖い 死ぬのは怖い どんなに死を怖れても  死なずにすむ方法見つからない 果たして私は その死の直前に 混沌として朦朧としてしまう意識の中で 死の一瞬を確かめる事が出来るだろうか わからない わからない わからない まだ 確実に生存権を 主張してやまない 私に 解る筈がない ---------------------------- [自由詩]相合の傘の下には/こたきひろし[2019年7月4日7時00分] 相合の傘 二人は肩を並べて歩いていた その時 勢い後ろから車が走り過ぎた 何の配慮もなく 水しぶきをあげて通り過ぎたから 外側を歩いていた人は水を被ってしまった お互いが好きあい 愛し合う関係だったとしても 片側の人だけ被害をこうむってしまった 二人とは無関係な私だが 偶然に見てしまいとても切なくなった それで それが原因で まさか 二人の信頼と愛が揺らぎだして その関係にヒビが入ったりは しないだろうけれど 傘を持つ人の手と 持たせる人の気持ちが気になってしまった 夕暮れ時の雨でした ---------------------------- [自由詩]詩からの解放/こたきひろし[2019年7月6日5時32分] 落ち着かないんだ 四六時中空気のある所にいないと 落ち着かないんだ 公衆トイレで用をたしていても ついつい詩が思い浮かんで 落ち着かないんだ 彼女とメイクラブしてたのに 急に詩から呼び出されて 逝くにいけなくなった 途中だから彼女は不機嫌になるし 申し訳なくて 復活戦に挑むが すっかり萎えてしまっていて 言い訳に 言い訳を重ねる羽目になったが 彼女はついに怒るし 私は焦るし 落ち着かないんだ 本当に 落ち着かないんだ 空気のある所にいると いつだって どこでだって 詩があらわれて 私の前にペンをつき出すんだ もういい加減にしてくれ 私を解放してくれ 詩のない世界へと でも 先天性詩依存症の私が 詩を失ったら どうなるんだろう きっと脱け殻 人間の残骸になってしまう かもしれない ---------------------------- [自由詩]フォークリフトは俺の愛馬/こたきひろし[2019年7月12日7時08分] フォークリフトは俺の愛馬だ 手綱はハンドル レバー操作で 馬はいななく 俺の愛馬は屋内じゃなく 屋外だけを走る 馬なんだから当然か 雨が降っても たとえ 槍が降っても それはかわらない 六十過ぎの再就職は パート採用 だから 贅沢は言えない 不平 不満なんてもってのほかだ それが社会 冷たくも あたたかくもないさ フォークリフトは俺の愛馬だ こんな詩をいつか 書いてみたかった ---------------------------- [自由詩]要らないものと足らないものの比率/こたきひろし[2019年7月13日13時51分] 空模様は空の気分しだい なのに わたしの毎日は単調 わたしの選んだ生き方は単純 わたしの肉体構造は しいて言うなら凹 ずっと同じ男と 一つ屋根の下で暮らしていた その間に 子供が産まれ育つ 家族になった 家族が雨風をしのぐ家は いつの間にか そこに棲む人間と同化して 食べては排泄を繰り返していた 日々の暮らし 家には要らないものが増えていき その分足らないものが増していく その比率の中に 日々の生活がある のかも ---------------------------- [自由詩]失業者になってしまった/こたきひろし[2019年7月13日19時55分] 何ら事前の相談もなく、いきなり現れて解雇通知を渡された。 お前はもう要らないお払い箱だと言うわけだ。 定年延長も再雇用も しないという訳だ。 年寄りに高い金払うなら、若い人材を安く使いたいと言うわけだろう。 いっぺんに世界は暗くなった 家のローン。病弱で働けない嫁さん。社会に適合 できない次女。 私は重い荷物を抱えていたのだ。 幸いに長女は非正規だったけれど働いていた。 しかし父親の抱えた重荷を負担させるにはいかなかった。 職場内の若い同僚たちは、表面上同情していたが内心は透けて見えていた。 他人は無関心で冷酷だからさ。 一家心中でもするんじゃないかと思っているに違いなかった。 二十年勤めた仕事を失って、私は無職になった。 僅かな退職金が振り込まれ、失業保険と合わせてしばらく食い繋いだ。 私はすっかり働く気力をなくしてしまった。 ハローワークには失業保険を受給の条件である求職の実績の為に月に何回かは足を運んだけれど、六十代の採用はほとんどなかった。 退職金は目減りしていき失業保険は期間は過ぎていくばかりだった。 焦りと不安に眠れない夜が続いてしまった。 ついにはハローワークへ毎日通い職探しをする自分がいた。 あれから四年。 私は生きている。 家も家族も失う事なく、その間に嘗めた辛酸を文字にはしないけれど。 できないけれど ---------------------------- [自由詩]都市の伝説じゃなくて/こたきひろし[2019年7月15日0時31分] 都市伝説じゃなかった。 文字通り、地方か田舎の伝説。だから、信じるもよし信じてくれなくてもいい。 俺の父親はちゃぶ台のひっくり返しが好きだったみたいだ。頑固一徹で癇癪持ちで我が儘で無類の酒好きと、悪い所申し分無しの男だった。 気に入らない事があると朝昼晩を問わずに家族の食事の団らんを平気でぶち壊した。 母親にはいつもねちねちとあら探しをして自分の鬱憤を解消していた。 当時はとても嫌いだった父親の口からその話を聞かされたのはある夏の日の夜だった。その日は夕方酷い雷雨に見舞われてしまい、近隣の店に焼酎を買いに行けなかった。 酒を切らした夜、父親はおとなしく静かだった。 まだテレビが出回っていない時代で娯楽は乏しかった。都会ならまだしも山あいの暮らしだったから無理もない。 我が家の子沢山もその辺に理由がありそうだった。 父親はぼそぼそと語り始めた。家族はちゃぶ台の回りに集まり黙って聞いた。 俺が餓鬼の頃の事だ。と父親は言った。 「今も貧乏だが、その頃はもっと酷くて、間引きが頻繁にあったんだ。つまりよ、予定外の妊娠はよくあったが、産んでも食べさせられないから出産と同時に可哀想だが、一思いに鉈を振りおろしちまうのさ。」 そんな話、俄に信じ難いが父親は真顔で言った。 「父ちゃんいくら何でもそんな事したら捕まって刑務所行きだろ」 と一番上の子供が聞いた。 すると父親は不適な笑みを浮かべた。 「そうはならないんだな。世の中には暗黙の了解ってやつが有るんだよ」 社会が状況を飲み込んで黙殺するのさ。 と冷たく言い放った。その証拠に俺のお袋は七人産んだが、その内の二人は死産だよ」 俺は父親の話に耳を傾けながら背中が震えだして止まらなかった。 お前たちは無事に産まれて育ったんだから、感謝しなきゃなと父親は言った。 そしてつけ加えた。「この俺に」 ---------------------------- [自由詩]六十四歳になってしまった/こたきひろし[2019年7月20日1時30分] 六十四歳になってしまった 今更 文学への高い志しなんて持ってないよ ただただ インターネットいう海に 言葉の葦の舟で漕ぎ出しただけ もしかしたらその行く末は 砂漠の果てに打ち上げられてしまうかもしれない だけど それがいいんだなア 言葉の雨で貯まった海に 浜辺で組んだ葦の舟 私の底に沈む泥 汚泥 愛欲とか性欲とか 金銭欲とか 憎悪とか敵意とか ありとあらゆる汚泥 それをすすぎたいから 浄化できるとは思えないけれど にわかづくりでいながら 嘘の扱いになれた 詩人になろうとしていた 六十四歳 ---------------------------- [自由詩]詩なんて書かない方がいい/こたきひろし[2019年7月21日5時23分] 詩なんて書かない方がいい 書いても 胃腸に滲みる訳じゃない 米粒ひとつわかないよ 詩なんて書かない方がいい それより自慰でもした方が なんぼか気持ちがよくなるよ 詩なんて書かない方がいい 詩なんて 一人でよがるだけだから 詩なんて書かない方がいい 下手すれば 誰かをむかつかせ 憎しみ湧かせる効果生む 詩なんて書かない方がいい 俺にはそれが聞こえて来るよ 詩なんて書かない方がいい ---------------------------- [自由詩]時間が/こたきひろし[2019年7月23日6時04分] pc 持ってないし 使えないし だから 詩はいつもスマートフォンで打ってる たいがいは 家族が寝静まった深夜に 寝床で寝ながら打ってる 都合のいい事に 家族は誰も 詩に興味も関心もない Pc 持ってないし 使えないから もしかしたら俺は 時代から一歩も二歩も遅れてるかな 今は 履歴書さえパソコンで作るらしい もっぱら手書きの俺なんか ダサいかもな だから 「今回は見送らさせて頂きます」 って 毎回返されたのかな 資格もスキルも学歴も 持ってないし低いから 企業の役にたたない粗末な人材である事が 第一の要因にあげられるだろうけどね それよりも 何よりも 肝心の若さを失っている時点で アウト決定だもんな それでも 必死に探し回ったから 最低賃金すれすれで 作業環境常時屋外の仕事にありつけたんだから サイコーです って 感謝しなければな 夏は 灼熱の太陽の下で 冬は 極寒の雪の中で 秋は 台風の暴風雨の中でも 春は 思いつかないけれどさ 働け 働け 働け って自分にムチ打ってる訳さ スマホに 詩を打ってるような気分じゃいられないけどさ 俺はいつも たえず時間を気にしてるんだ 午前中はひたすら正午になれって 午後からは ひたすら五時になれって 時間が前に早く進めって なんでもいいから時間は早く進めって 俺の老骨で支えられた体を 痩せた心を 一日の労働から 一刻も早く解放してくれって 俺が働くのは あくまでも生活のため 最低賃金すれすれでも なけりゃ 家族まとめて日干しになるからさ 微々たる年金も なければ日干しになるからさ Pc 持ってないし 使えないし そんな俺の頭の中は アナログだし 体内は血液流れて止まらないし 汗もかくし 流れるし こうして 詩を打ってる自分の目には 涙が出るし 溢れるし 笑いたくなるくらい 悲しい人生だからさ ---------------------------- [自由詩]その夜/こたきひろし[2019年7月25日22時03分] その夜見た夢の中では 終始一睡もできなかった。 真っ青な大空の下で 気が遠くなっていた 真っ青な大空の下で 空中ブランコのイスにすわっていた ブランコが大きく揺れるから 私の体は振り子になっていた その夜 私が見た夢は 空中ブランコの夢だった でも 夢の中では 舞台が直ぐに回る 私は 殺風景な部屋の中で 寝台の上に横たわっていた 私の側には もう一人の私が立っていて じっと私の顔を見おろしていた どっちの私が本当の私なのか わからない もしかしたら 二人の私がそこに存在していたのかも 夢の中だから 何でも有るだろう その夜 私は夢の中では 一睡もできなかった しかしそれは何の不思議もなかった と思う 夢はいつだって 覚めてはじめて夢だったんだと気づく仕掛けになってる ふたたび 夢の舞台は元に戻り 空中ブランコになった 私は夢の中の空中ブランコで 宙に放り出されてしまった 同時に私は 花火のように打ち上がって 粉々に砕け散った その時 はっと我にかえり 夢から覚めた 私は 身体中に寝汗をかいていた ---------------------------- [自由詩]刹那的に/こたきひろし[2019年7月28日0時21分] あの人は嫌い あの人は好き あの人はどっちでもない そしてその他には 興味も関心もわかない おおぜいの人 その他おおぜいの人 あの人は私に好意抱いてくれそうだ 顔を会わせる度に 素敵な笑顔見せてくれる あの人は私が嫌いなんだ 顔を会わせても 無表情 挨拶しても 返してくれない 好きな人には 好きになって欲しい 嫌いな人だから 好かれようなんて思わない その他おおぜいの人には 何も思わない 感じない 道端の石ころと同じ扱い 私だって誰かの その他おおぜいの人になったら きっと同じ扱い 人類皆兄弟 なんて信じない それを言い出したら ストレスをうむだけに違いないだろう 興味も関心もわかない相手の中に生きているから 疲れなくてもすむわけだし 好いたり 好かれたり その延長に 愛情の雲がわきあがるんだよな 雲が雨を降らしたり 風を吹かすから 人は悩んだり苦しむのさ ちかしい関係って 疲れるかもな 時には 憎悪に変形したり ねじれて歪んだり 扱い難しい でも でも でも 愛されたいよ たとえ刹那的でも 構わないから やっぱり 愛されたいよ たとえ刹那的で 明日は跡形なくなったとしても あれ? 肝心な私の愛は雲に隠れてしまったかな たとえよ たとえ刹那的でも 愛したいし 愛されたいのが 人の切なる想いじゃないの 一方通行 進入禁止なら 停止してUターンするのがベスト だよね それを暴走したら 大破するだけ ---------------------------- [自由詩]わたしは/こたきひろし[2019年8月11日3時24分] わたしはわたしを いちばんに思う人だから いちばんにしか 思えない人だから わたしはわたしが大切にするものを 失いたくないものを 全力でまもりたい わたしは 時に正義を口にするけれど それは自分を美化したいだけで けして正義に参加したい訳じゃない わたしにとって 書くという行為は 自分の正体を暴露するためのもの なのだ しかないのかもしれない そうする事で わたしはわたしの危なげな内面のバランスを たもっているのに 過ぎないのかもしれないのだ 要するにわたしは 馬鹿で阿呆で どうしようもない人間なんだ 朝 洗顔と歯磨きをしながら 洗面台の前の鏡を覗きこみ そんな思いを痛感している 愚か者なんです 果たして わたしの明日はどっちだろう 方角がわからない わからない わからない わからない わからないのです ---------------------------- [自由詩]夜明けがくる前に/こたきひろし[2019年8月16日23時00分] あたしが まだ赤ちゃんだった頃 産んでくれたかあさんの乳房は あたたかい海のようだった あたしが まだ赤ちゃんだった頃 とうさんは ただの一人の男の人だった あたしがまだ赤ちゃんだった頃 オムツを濡らすオシッコや オムツを汚すウンチは 夕映えの空のようだった そんな中で あたしは すくすくと育った 訳じゃない バランスの捻れた 心とからだは 愛情に飢えて いたと思う あたしには 反抗期なんて なかったと思う いつの間にか 反抗する相手を見失っていたから ただただこの世界に従順なだけの めっちゃ 可愛げのない女子になっていたんだ そして あたしは成長し ある夜に をんなになったんだ もしこの世界に 異性が存在しなかったら あたしはずっとずっと 美しい少女の ままでいられたかもしれないのに それは あたしの とうさんが あたしのかあさんに 初めてしたように とても綺麗な儀式だった そうやって あたしも 好きな人と いったいになれたんだ だけど それはあたしの錯覚 その錯覚に 酔いつぶれて 何も見えなくなっただけ いつだって あたしは 夜が明ける前に 目を覚ましてしまうのが 癖のように繰り返されてしまった 切ない習慣のように繰り返して しまった ---------------------------- [自由詩]美しいものが/こたきひろし[2019年8月21日23時42分] おにヤンマを捕まえて その片方の足に糸をくくりつけて 飛ばした それは ほんの遊び心だった 子供の頃の 無邪気だったから その残酷さに 何も気づかなかった そうこうしている内に 大人になってしまった 毎日は 時計回りに 過ぎて 去っていく それに逆らって 生きてはいけなかった どこまでも 臆病で弱虫だったから ある日 街で 公衆電話ボックスを見つけた まるで化石みたいに忘れ去られ 取り残されていた いきなり 激しい雨が降ってくる 雨を 強風が煽ってきた 公衆電話ボックスに 僕は逃げ込んだ 街は たちまち洪水に飲まれる 僕は公衆電話ボックスから 抜け出せなくなった 公衆電話ボックスは みるみうちに 水槽になってしまった 洪水に沈んだ街は 美しい絵画のように なってしまった それは地獄を写し取っていた なのに 救いの手は 何処からも延びて来なかった それは絶対的神の ほんの無邪気な遊び心 かもしれなかったから その時初めて 僕の中の時計は 逆さ方向に 回り出していた 溺れていく僕は 視力だけは 失わなかった 街は僕の妄想の中で 美しく もがいていた ---------------------------- [自由詩]悪魔の囁き/こたきひろし[2019年8月25日7時13分] 悪魔の囁きをきく事がある て 言うよりか 私の正体そのものが実は悪魔で 普段は人間の囁きに耳を傾けながら 生活していると言うべきなのかも しれない 当然 私の中では たえず悪魔と人間が絡み合って 辛味あっていたりするのだ 具体的に それを文字にしてしまうと 私の人間性は著しく損壊していると見なされ 社会から排斥されかねないので 保身と保守を優先している 私は私の女体の卑猥を隠避するために 清楚と清潔を絶やさず 化粧を欠かさない 私は 美しいケモノになっている 優秀な遺伝子に狩られる為に ああ娘よ 成長したお前を直視できない俺は 上に掲げた詩の一編に お前を括ろうとしている ---------------------------- [自由詩]自分が産まれたのって、いつだっけ?/こたきひろし[2019年8月25日23時36分] その産声も周囲の空気を震わせて その場に居合わせた何人かの鼓膜に音を伝えたに違いなかった その時の周囲の人間の喜びと安堵がどれ程のものであったかと想像しても、すべては遥か昔話だ 本日、選ばれたこの佳き日に 私は私の命の糸に鋏を入れられる もうすぐだ 思い残す事をあげたら、 数限りある それをここで いまわのきわで 申し述べる余力はありません もう 自分の誕生日さえ 思い出せないしだいです 意識がだんだんに薄れて、とても眠りたい気分です せめて最期は 雄叫びでもあげられたら 見送ってくださる皆様の 鼓膜を振動させてあげられるのですが ---------------------------- (ファイルの終わり)