田中修子のるるりらさんおすすめリスト 2016年12月6日11時01分から2020年9月19日9時54分まで ---------------------------- [自由詩]陽鳥/るるりら[2016年12月6日11時01分] 陽鳥  きのうのことのようだ 逃げ出すように ひとり列車に乗り 海を目指した 行き先は 宮島 宮島のカラスに逢いたくなったのだ 途中 かあかあ 二度ほど 鳥が鳴いた 外を見ると 鳥はどこにもいなかった ぼんやりと あたりを見ると 見慣れた地名に見たことのある山の稜線 そっと目を閉じると 牡蠣打ちをする私が見えた  あのときも かあかあ 二度ほど たしかに鳥が鳴いた まだ保育園にも通っていなかった頃かもしれない カラスが鳴いた場所で 母は私を連れて牡蠣打ちのパートをしたことがあった まわりにいる おばちゃんが「お母さんより 上手だねぇ」と言ってくれたが 嬉しさは、だれにもさとられてはいけない お母さんへの いやがらせかもしれないのに ぐっと力を込めて 牡蠣の殻に金属を押し当て なにごともなかったかのように 牡蠣を開いた あの時の鳥 あれは きっと 太陽の鳥だ 太陽は たとえ 直接見ずとも 背中で いまも わたしを励ましている ---------------------------- [自由詩]さしいろに 虹 /るるりら[2016年12月16日15時21分] ちぎれた 火の粉を雫の中にやどした言葉たちを超えて鳥が謳う ほととぎすは 夜通し歌をもやし カッコウは霧雨を もやし 溶接工は 鉄を燃やして繋ぎ合わせノアより巨船を創り アリアは 魂をすくいとり 天界に謳いあげ星を示す 四つの季節の花々は 透明な火を 発している 山を覆う その紫の霧の微細な火を 吸い 生まれたての双葉のように両手を広げ 翼の思いのたけ遥か彼方のあなた あなたの胸の内に ほむら立つ 夜の帳が落ち 空を赤く染め 褐色大地の鼓動が聞こえ 赤さ橙から黄色緑青紫 赤から多彩に変化し 赤よりも熱く静か あなたは 星々       橙黄緑青紫 黄緑青紫   緑青紫 青紫           紫           一 粒の 涙の中 収斂する 虹があるよ 雪のひとかけ 早朝の 霜柱に ひかりの 指し色 紫青緑黄橙赤が涙に スペクトルにハジケテる 大空に輝く虹と同じ色彩の あなたの発露が にじませる たぎる あなたの私の魂のマグマ 大きなものしかみようとしないときも 小さなものにとらわれているときですら わたしたちは 虹の指し色を もっている 巣立ちの日の鳥の両翼のように 両手を広げ 山を越え海を越え 曙の陽に温もる大気を吸い 四つの季節があたらしく循環しはじめるのを軽く 鎖骨に問いかける 鳥と同じ構造が私にもあるのだ 飛べるさ 遠くで歌っている あなたに 逢いに行くのだ      以前書いた作品を おおはばに 加筆しました。 http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=291528&from=listbytitle.php%3Fenctt%3D%25E8%2599%25B9%25E3%2582%2588 ---------------------------- [自由詩]粉糠雨の街灯 /るるりら[2017年2月22日9時02分] 都市は 心の模倣だろう 粉糠雨に 街灯が燈る 心の溝にも 点在した明るさが次第に道になる 見えない糸で繋がる送電線 車のように動きまわる明かり しずかに一人きりの夜をともす蝋燭 すべての明かりが繋がることを想うと 星座が現れる ひとつひとつの星々の歴史を 理解することはできなくとも 無数の明かりに わたしは抱かれて 朝だというのに 薄暗く 空気も凍り付いているけれど あなたを想うと 私の心は 星座になる あなたの歴史と わたしの歴史を超えて ---------------------------- [自由詩]青い鳥の飛来/るるりら[2017年3月4日0時50分] 聡明な目が おきゃんに くすりと笑ってる 黒板の端から端へと 飛び回るプリマドンナ 人差し指のプロジェクタースイッチが効かないときの パソコンに急ぐ あのお方のご様子は マドンナなの 羽根ペンのように ひらりと しゃがんで またひらりと 浮き上がるみたいに お話をされるの 見えるということの水晶体が 掻き曇る様子や 見えていない事実にも 希望があるという方法論は 鳥のように尊く遠くをみつめながらも  隣に寄り添ってくださるの 羽根のペンの空洞に蓄えられた かつてのインクのような 高い高い場所から見下した言葉は 生かそうとしていない 見えない未来と 見えたようなきがしている過去のはざまで 効き手ばかりが肩こりを起こす閉鎖的な被害妄想に 苛まれた片翼の論理では 飛べない空がある  だって ほら 清くあの方を想うと 隣に希望が 小鳥のように飛んできたわ しあわせは あるいてこなくてね ふわりと飛んできたわ きのうと あしたの ほんのわずかな場所の小枝で ことりが  このこころにむかって 囁いているわ   ---------------------------- [自由詩]おせなかまるいね/るるりら[2017年3月14日14時34分] こどもたちは みな せなかをまるめて せなかをまるめていないのは みみずのこどもくらいです どのこも せなかをまるめて 卵やおなかの中で すごします 拡張現実を手に入れた にんげんのこどもも せなかをまるめています ようちえんの おいもほりの日 こどもたちは りょうていっぱいに おいもほかかえて 坂道の上にある ようちえんから かけてきます こぼれおちる おいもの ごろごろ けたけたわらいながら さかを おりるとき こどもたちは みんな おいものすがたになっていたことを たしかにみたのです ころげおちてきた おいものひとつが すっくと たって 「お母さん みみずいたよ」と いいました 翌朝 絶滅が危惧されていた人類が復活したという記事を載せたのは みみずのお母さんのブログでした ※2015/02/06 メビウスリング掲示板に初投稿 ---------------------------- [自由詩]黒曜日に/るるりら[2017年4月3日12時07分] かれは、いま 叫んでいる 遠くを見ている人々にむかって かつては 矢じりを誓う猿だった人々にむかって 現代という うつつに居る私にむかって かれは ごみ捨て場で 半透明の袋にいれられたまま すこしの気配が動いただけで、かれは怒る 「アンパン ぱーんち」 袋小路のせかいから異論のパンチを繰り出している 城郭もきずかれたこともあっただろう玩具に埋もれて かれは あれからかれこれ二週間は叫び続けている おそらく かれの顔は 赤い。 おなかがすいてないかを 聞きたがっている。 おなかなんてすいてない こどももいた。 おかしな猿だと言われた こどももいた。 かなしみと おかしみの間で多くの人が ほうけている かれは、戦っている かれのパンチが 矢じりのような私に当たり わたしはアスファルトに立ちすくむ 突然 のっぺらぼうだった私の影が黒曜石になった かすかに 虹色を帯びて脈をうっている ---------------------------- [自由詩]いくちゃんも はたはたパイ 食べろ /るるりら[2017年4月18日14時27分] 前略 いくちゃん お元気ですか? さて、いくちゃん 突然のオープンメールでごめんないさい。 あなたは、いまでも私にとって秋田の素晴らしい女流詩人のひとりですが。メールアドレスなどをなくしてしまいました。 昔、いくちゃんに私が 秋田弁に翻訳してほしいと お願いした【はたはたパイ】の詩を覚えておられますか?時を隔てて あの詩を改編したものを新しいサイトにアップしたところ、 管理をしている方々が、べつの媒体に掲載してくださいました。チャかシズム Vol.2: B-REVIEW特集号 詩誌チャかシズム https://www.amazon.co.jp/dp/B06Y4R2BDG/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_Dig8ybGC65FGQ アマゾンのメカのある方は安価で 読むことができるようです。 私は 新しいなあと 素朴に感動しています。 しかし、これは いくちゃんの住んでおられる土地を思って描いた作品なので、なんとか いくちゃんに お知らせしたいと私は思いました。そこで この現代詩フォーラムにも載せることにしたわけです。 なお、広島の私が改編したので 方言がへんなことになってしまってるようです。 秋田弁をほかの方に指摘していただいたので そちらも共にここに 載せさせていただきますので、いつか 現代詩フォーラムのみなさんと一緒に いくちゃんにも 読んでほしいです。 では 作品を載せますよ。 草々 【はたはたパイ 食べろ】  るるりら作 旗は はためく 鰰(はたはた)の 旗      はたと 立ち止まって    しょげたままで いいがら    ハタハタパイ 食べろ 海を 休めろ 鰰の 海に 鰰 来ぬぐなったこともあってな 三年我慢すっぺ 鰰ぬぐなってしまうべと取り決めたんだ 漁をしない三年に 船を捨てるやつもいたんだ だがよ 三年待ったらな 雪の中に雷ひかり 鰰の群れの銀色が 船は大漁 神といっしょに大笑い   な あせるな   ほれ このハタハタパイ食べろ   おまえの海にも    神がいっぱい群れだって育っているど  ***************************** 上記の作品が私の詩ですが、澤あづささんが 秋田弁の指南をしてくださいました。 ▼澤あづささんが 修正してくださった秋田市の言葉は こちら ↓ 旗 はだめぐ 鰰(はだはだ)の 旗      はだど 立ぢ止まって    しょげだままで いいがら    ハダハダパイ 食(け) 海どご休めれ 鰰の海さ 鰰 来ねぐなったごどもあってな 三年我慢すべ 鰰ねぐなってしまうどって取り決めだ 漁さね三年に 船なげるやづもいだ だども 三年待ったっけ 雪の中さ雷ひかり 鰰の群れの銀色が 船だば大漁 神どいっしょに大笑い   な あせるな   ほれ このハダハダパイ食(け)   おめの海にも   神いっぺ群れだって育ってるや ****************** 澤あづささん、方言指導 ありがとうございました。 ---------------------------- [自由詩]クリミイ ふくろう /るるりら[2017年5月10日17時48分] あまやかしても いいのだ けして つめたいだけの人ではないのだから 心のかよわない言葉しか 今は ないけれど こどものころの私に あの人が教えてくれたレシピ ビスケットケーキ ミルクでひたしたビスケットと 生クリームを交互に重ねて しばらく置いておくだけ それだけでケーキみたいな食感になる ふたつのドリルタイプの撹拌機を 生クリームに つっこんで スイッチをいれると ウィンと動いて  生クリームは ふわふわと生き物になり 二つのドリルの中心だけが黒く瞳のよう 生クリームの動きは もこもこと あらわれる 風になびく羽毛の白い ふくろう 穴のような ふくろうの目が わたしをみている やるせない人のことも あまいにおいのふくろうは みつめてる ---------------------------- [自由詩]しじみ/るるりら[2017年5月26日19時33分] 薄く なまめかしい生を 朧にたずさえて キミは 呼吸している しみじみ キミは 黒曜石だ 意識する外界に ぶしゅと 放出させたものは どんなにか甘美な夢でしょうか  キミは黒々とした硬い殻の内側の透明な体をもてあましている  ぎんぎらしたアルミホイールで闇を つくってあげましょうね ほら覚醒なさって 銀のボールの中で ギンギラのアルミをかけられては すこしの明かりが さし込んだけで 光は溢れかえり  キミには抗いがたい睡魔の誘惑が やって来ることでしょう 覚醒とさらなる耽溺との誘惑の間で  あえぎあえぎ呼吸する しじみよ もう なにも 考えなくていいよ わたしは瞼を とじましょう キミの なまめかしい夢が 開くことでしょう  ---------------------------- [自由詩]時鳥/るるりら[2017年6月5日19時07分] 【時鳥】 ある一時  保育園のときのセリフは  小鳥の役柄だった  「ニュースだよ ニュースだよ たろうさんのお宅に あかちゃんができたよ」  小鳥役の私が 時空のかなたからやってきて、二十四時間後には だれかれ関係なしに おおきな声で 宣言するだろう ある二時 鳥のように生きることを夢想する。 いちじは 卵のようだった  にどめには 親鳥に守られ 三度めには成鳥のように生きる  ある三時 空の高さを鳥が示している 声は高くまで響いても 声の向こうにある天空は さらに はるか。  きままな鳥が、私のことを「ピープル」と呼んだ。トンビにも「トンビぃ」と言ってあげたいが 私の返事は鳥には届きはしないだろう ピープルだという鳥の声だけが リフレインする  ある四時 清潔に あらためられたカーテンを 風が部屋のこころを ゆらしている  ケサランパサランの寝床をととのえるかのように シーツも 取り込む あまい匂いがするのは 近くに パイナップルミントが群生しているから ある五時 こんどは ホトトギスが 鳴いた 新築の窓辺にも あの鳥は きっと訪問するだろう  タンポポの綿毛は まだ 飛び立ってはいないが 植物だって鳥になる日がある ある六時 げいじゅつてきだね。 ああ ホトトギスが 「げいじゅつてき」だと言っている  夕方の花の水遣り。ホースの先で 虹が現れたことが「げいじゅつてき」 蕗の葉のやわらかいところだけを虫が食べ跡は うつくしいレース模様なのが、  げいじゅつてき げいじゅつてきだね げいじゅつてきだね ほら あなたにも聞こえるでしょ ある七時 すこし日が影に あしもとに差し込む光 しずかに うまれるながい影 鳥のように生きることを夢想する 飛沫を思わせるような囀りで愛を語るのだ 囀りに きがつかずとも さりげない思い遣りのような言葉が しじまを彩る ある八時 そして ある九時 あるいは十時 ホトトギスが鳴いている 少女は いつしか絹をまといピアノフォルテの音楽の中で 大人となり クロスする時計のことを忘れていても ホトトギスは歌い続けている ある十一時 瞼をとじれば どんな生き物とも心を通わすことができる  なにものでもない自分に もどるための歌を ホトトギスが聴かせてくれている ある十二時 一組の恋人同士が 同じ夢をみた。 ふたりが 翼の両翼ように羽ばたいたとき ぷっくりとあたらしい命が芽生えていた ---------------------------- [自由詩]おかえりなさい/るるりら[2017年8月28日10時37分] 廃線になった駅のベンチに行ってください コスモスが揺れているのがみえますか だれもこない駅の伝言板に 「おかえりなさい」とだけ 書いておきました ベンチの下に 海の紙でできた封筒を隠しました 草の中にありますよ みつけてください みつけましたね。そうです。 中には、公園の地図が入っていることでしょう。 おさなかった あなたのために書いた地図です。 子供向け雑誌を切り貼りして作りました。 しようぼうしょの隣が公園です。 はしごしゃの絵も 貼ってあります。 目を瞑ってください あなたには滑り台もブランコもジャングルジムも見えるでしょう? トイレの位置まで書いています。 いま居る駅のベンチから 公園のベンチに移動してください。 そこに ぷれぜんとがあります。 わたしが いつも座っていたベンチへの道順を歩いてください。 なんども あなたと 辿ったように歩いて、 座ってください あなたが おなかのあかちゃんと一緒にみる景色は、 どんな風ですか? どなたがくださった風景なのか 母さんにも わかりません ---------------------------- [自由詩]私のなかの/るるりら[2018年4月25日13時26分] グレーチングに足をとられて 突然 目の前の女性が転んだ 最強の赤いピンヒールは 雪の中では 通用しない 美しさが万全なら どんなことも快調な街が ひっくりかえった 蛭みたいに艶やかな唇が 泥雪の上に重なっている つかまりますか?止まり木になりましょうか? 声をかけようとしたら こちらも すってんころり 馬鹿馬鹿しいくらいに 顔が地面に近い さあ踊れイグアナ 人生まずは、立ち上がれ 私の中で丸の内線が球状になり 無数の線路が透明な球の中を駆け巡る 新宿の本社に行かねばならない さて、どうやって 街の人はヌケガラ 光輝く交通手段が遮断した ねえ私の中の中野 答えてよ 新宿へ行きたいのよ すこしの距離だというのは本当なのでしょうね 私の中の中野 私の中の東中野 私の中の中の中の ※ 書き換えスレッド参加作品です。https://po-m.com/forum/threadshow.php?did=196983 以下の作品の書き換えを行いました。 https://po-m.com/forum/thres.php?did=196983&did2=152 どうぞ みなさんも わたしの詩を好きに書き換えてくださいませ  ---------------------------- [自由詩]即興ゴルゴンダ三部作【嗚呼  夢よ うつつよ】/るるりら[2018年4月26日17時46分] 【チンダルのはしご】 ●●●●●●●● ●●●●●●● ●●●●●●われ ●●●●●かい無 ●●●●つまりは ●●●てがかり無 ●●いままで苦労 ●るてんする悪口 よるの終が無い心               【2019年に起きたこと】  2019年印象的なできごとをかいつまんで書く 一月 アルビノの不死鳥が発見された 二月 各駅停車で、春に向かった 三月 祝 奈落を卒業 四月 ブリキの森と紙の古城とウルサい湖畔の魔法を会得した 五月 詩集「回遊魚」発刊 恋のぼりがハタメク 六月 福沢諭吉氏と懇意となる 七月 ゼリー色の夏を堪能 八月 そこかしこに愛があふれていた 九月 オーロラに包まれた 十月 ホスピタル・サーキット開催 十一月攻撃はいつも後ろからはじまった 十二月嗚呼 揺れる なまざしだった 【嘘つきの休日】 口、 虚に つき ご注意ください 目、やみつきにて しんこきゅうなさいませ ぜんぶ すてて よいのです はだかんぼうが ほんとうです はだかのこころは 満月のようです 闇の水平線から 浮き上がる月が 光の道を まっすぐに私の足元に降りてきています ねぇやさしい 口虚つきさん  あらあら お口が虎に なっちゃってますよ  耳をやすませてあげましょうといって あまがみしますと ほうら 心臓は 夢のような潮騒になりましたとさ ********************************* ただいま即興ゴルコンダ仮開催してます。 http://golconda.bbs.fc2.com/ お題は「2019年に起きたこと」デス。 申し遅れましたが、 なお「2019年に起きたこと」は、わたし自身の過去の作品群の題名から ほとんどの行が構成しました。即興ゴルコンダ(仮)に提出してくださった言葉も多数あります。 「回遊魚」って詩集は、ほんとに出せると良いです。 ---------------------------- [自由詩]蛸の触手は【悪魔の舌】か【天界の下】か/るるりら[2018年5月13日1時20分] 闇にすっかりなれたのか それとも 朝がきたのでしようか あまたの光の柱が  行間からまっすぐに 立っています 言葉は 今朝の朝靄のように低い場所に流れます  言葉が 祈りとはかぎりません限りなく   言葉は あてどないない旅をしつづけます    言葉は あの日の煙のようなものです 高い場所にも登ります     言葉は きな臭く饐えて息も絶え絶えに吐かれて それでも      言葉と言葉のあまたの行間のすべてから きんいろが現れ       言葉は 光柱をすりぬけ家屋の床下にも届きます        言葉を もぐらが みみずが 聴いています          言葉が 床板と床板の隙間にも降りていて眩しいのです あくまで          言葉が 悪魔の舌にも光を運びます 闇の中が一番光を感じるのです           言葉の悪戯な足跡に ふるえてるのは だれですか            言葉が 暗闇を欲するのは 光のせいです  蛸を 目の神だと言って ある男は 生涯、蛸を口に運びませんでした 男には娘がいました言葉のすくない男でしたが 蛸を舟の上でたとき 男は蛸と 見つめあい言葉でない言葉で、会話しました 医者は 娘が失明すると言っていたのです 男は まんじりと視線を離さない蛸に どうぞ娘の視力を奪うなと言いました 言葉ではない言葉で男は蛸と約束しました 生涯 蛸は喰いませんからと言いました 娘に多くのモノを見せてやってください 娘に 光がありますようにと 言いました 蛸は目の神様でした 蛸は様々に身をよじり見据えて 言葉を超えて、男の心の奥底を見ていたのです 網に掛かった蛸を神だと感じている言葉には 力がありました 大海原に放たれた蛸は 凧のように 言葉で天界と下界を 自由に泳ぎ歓喜し 娘にそして 私自身に光が与えられて 言葉で 誰かとなにものかがいたる場所で結ばれ 闇の中でこそ かすかな光の音が生まれ 輝かしい鐘として鳴り響く 今、 まさに ***** 【petit企画の館】/蝶としゃぼん玉での企画【祝言】として書きました。 該当コーナーと 内容が多少ちがってます。 ご愛敬として 手作り感覚の経緯も残してみました。https://po-m.com/forum/thres.php?did=320890&did2=670 ---------------------------- [自由詩]背後霊が水を汲みに行く/るるりら[2018年8月21日9時04分] 背後霊の手は長く 千手観音よりも多い ただ 多ければ良いという ものでも ない 人間の役に立つのは 人間の手と同じ数 つまり 二本の手がもっとも便利 背後霊にもイカのような触腕がある いびつな形の贈答品を持参するとき 着物の超絶技巧結びにチャレンジしているとき 雪山で遭難しかけたとき 二本の触手が伸びて手助けをする あるときは 傷ついた心に巻き付き包帯となる また ある時は さえないサラリーマンの首元で 目には見えないが蝶ネクタイとなったり 背中をまるめがちな少女の心にとりついて 少女の心にしか見えない真っ赤で大きなリボンになったりして  人間に 希望を 芽生えさせる そして背後霊は 夜な夜な ながい手で水を汲みに行く 人間のためにではなく 背後霊自身が潤うための一杯の水 透明な水が しみわたる ※即興ゴルコンダ(仮)時間外投稿作品 http://golconda.bbs.fc2.com お題は、ぎわらさん。 ---------------------------- [自由詩]ラ・ラ・ラ族/るるりら[2018年8月30日14時17分] お義母さま あきの こごえです 朝風に 精霊バッタの羽音が そっと 雫を 天に すくいあげています 何が終わったのでしょう もう はじまりはじめの空 むかしむかしの反対のはじまりのはじまり めちゃくちゃダンスを夢中で踊る子供らの真似をしたがる 私のからだは重いです けれど 私と共に たふたふと生き物のように動くものがあります 天女の羽衣が 頬を そっと かすめました 透けて見えたのは しろいレースのアンブレラをさした少女のような貴女 素足が 五ミリは 浮いています あなたの お父さまがいらっしゃいます どこへも 逝かず 六歳のままのあなたのそばに ずっといらっしゃったのです ゲンバクのことを人々が忘れると だれかが言っています わすれられるものなら忘れたら いい 口にしたくなければ 口にしなければ いい とてつもないひかり ただただ臭かった廣島の町 着ていた服どころか皮膚までも 剥ぎ取られて 食べるものもなく 彷徨う人々 毎日毎日 煎餅布団と寝た貴女は しつこいくらいに いつも わたしのふとんが ふかふかであるように心配してくれた 高窓から さしこむ光に 綿毛が舞い上がるように 浮いて かろやかに歌うのは 少女のままの貴女 うつくしい裸族としての朝 わたしも空をとぶ ---------------------------- [自由詩]よしっ。いや、ちょっと マテ。 /るるりら[2018年12月1日8時49分] めざめると同時に 自由の女神になっていた すっくと立ち 右手を挙げ 情熱の象徴を高らかに天に示し 頭の中に声が響いていた「走れ!」 いや、ちょっと待て 忘れられないぢぁないか あの家の事を わたしは おそるおそる鍵穴に鍵を入れた ぢぁりと鈍い音がして穴は開けられることを拒んでいる じぁあ家に入るのを止めようかと 後をふりかえると 今来た門柱までの距離には 私が なぎたおしたヨモギがうなだれて 悲しそうだ なにもせずに帰る気か  深呼吸し  ドアを開けることにした  扉の ぢぁりが、がちゃと開くまで力を入れた  が  扉は おもいのほか軽い  孤独死寸前で近所の人に報告された家の主は 今頃、病院だ  なぜ 食べるものも食べず衰弱したのか  詮索したいのは やまやまだが  痴呆なのか銀行印や保険証などのありかさえ覚えがないらしい  鍵を借りて、この家の主の貴重品をさがしに来た  かみ かみ 紙 カミ 段ボール カミ  ふんわりと かるく 紙でできた箱と箱  天井まで積み上げられている無数の箱を指でつつくと、ゆうらり  幽霊のように動く埃の館  この家の家主を証明するものを探さねば  彼女は、保証されるのに値するのだ  引き出しを開けると 引き出しの中が直ぐには見えない  衣類文具や生活雑貨 全部のひきだしの中身の上に  広告紙がおかれて 中身は遮断されている  すべてのものが繭ごもっている 冷蔵庫の食品のすべても個包装され  なにがなんだか分からないが昭和の日付のメモも有るから すべて捨てる   ワカラナイ   うごかない時間が                  ユックリ揺レテイル   カワラナイ   保存された時間が死んだまま   シッカリ動イテイル     なにやら光った!保険証通帳印鑑の発見だ!これで 家主を証明できる!  彼女は れっきとした 私の叔母様だと証明できた  おばさまは、わかったようなわかってないかのような透けたような微笑で  ありがとうと 言った  そのようにしてやっと安心し  ねむった   誰かであるかと保証がされている あなたとわたし                             そして、たった今 めざめると同時に  すっくと立ち 右手を挙げ 情熱の象徴を高らかに天に示し 頭の中に声が響く「走れ!」 坂道を駆け上がれ 山の間から朝日がでた  ひさしく走ったことのない重く冷たい両足が足元から照られ血が通う 自分の体重を両足に感じつつ「走れ!」 ---------------------------- [自由詩]新月/るるりら[2019年1月9日8時25分] 新月が穴のように開いている 月が巡ってくることをいのる いにしえの民のこころもちで 月の定めた晦日の夜に凍えて 聖なる薪としてくべた雑記帳 お気に入りの日記帳が炎と化すあの感じ 大切な人が私と結びつけていた写真を無造作に捨てたと知った あの感じ 筆圧の強い字ではちゃめちゃに書いた文字が涙の飛沫で溶ける あの感じ ふくみのふくらみを 口にすると朽ちてゆく みもだえたすえに 決心する すきなことをすきなだけしているつもりで すきなことがなにかをわすれ 穴のように開いている 新月 満天の空に ぽっかりあいた穴のよう 或るはずの天体は 時間と空間のなかに まっさらを示し わたしをふくらませようとしている みたそうとしている  わたしは いつも みたさそうとする月の力を裏切りながら きょうの新月と対話する すきなことをすきなだけするという軸ではなく できることをできるだけしていく軸で生まれ変わりますから だから月よ  明日の わたしを 満たしておくれ *********** http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=5957127#12689686 即興で詩を投稿するサイトに投稿した作品です。同じ題名で詩を書き、みなが認めた作品を書いた方が 次の題名を示すサイトです。本作品の課題は、みうらのばでぃすきー様が 2019/01/01 (Tue) 18:42:00に出しておられます。 しかし、どなたの御投稿がなかったようです。大幅に指定時間をすぎましたが、今朝 本作品を投稿させていただきました。 ---------------------------- [自由詩]シティ/るるりら[2019年1月15日16時41分] 線路はどこまでつづくのか トンネルの向こうに 白い世界が見えるが ちかづいてくると どうやら画布だ トンネルの出口は大きな世界地図で塞がれている 列車は べつだんなんのアナウンスもなく 地図に突入してゆく 息をのんでおもわず目をつぶるまぎわに つり革の人の革靴の足に力が入り すこし屈伸したのを見たと同時に 風圧とともに画布の破れる音がして世界は広がった なんという地平だろう なんという明るさだろう しばらく列車は陽気に前に進んでいたが ふたたびトンネルにさしかかった トンネルの向こうに 白い世界が見えるが ちかづいてくる こんどの画布には 日本地図が描かれている 列車は とりたててさわぎたてるものもなく 地図に突入してゆく もう呼吸をあらだてるほどのことではない  すこし余裕ぎみに窓の外を見ると 風圧とともに画布の破れる音がして なにやら故郷の文字を確認した気がしたが、はて  日本のことを忘れた なんという水平線だろう なんという清々しさだろう 列車はより一層加速して またまたトンネルにさしかかった 列車の中に短い音楽が流れたあと アナウンスが入った 「いつも ご乗車ありがとうございます。 この列車は、あなたの心の中に向かいます。 つぎは こころの中 こころの中」 バシュという音がして列車は 自宅の家の近くの駅に止まった 遮断機があがり 家路に向かう 突き当りの家には 薔薇が咲きそうだ 今日は見慣れない車が止まっている  車体番号には【遠くから来た】と書かれていた。 表札をみると【薔薇は蕾】と、立派な明朝体で掲げられていた。 はてと思いながら そのお隣の表札を読んでみると【地域猫在中】と書かれている。 なんという名前の猫だったろう みんなちがう名前で呼んでいるはず 家にたどり着く前に 隣の人とすれ違って 聞いたことのない名前で私のことを呼んだが まちがいなく不思議なその名前が私の名前だということが、分かった *************** 即興投稿板参加作品です。 お題は、はさみさんです。まだ まだ 時間ありますよ。 http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=5961091#12698062 ---------------------------- [自由詩]ゆび /るるりら[2019年1月18日20時54分] 水面の雲がながれるように 素足で湖の上を歩きたい  つめたく 人をさす ひとさしゆびのことは 忘れてしまいたい わたしは くつしたをぬいで はっとする わたしの あしのひとさしゆびは だれのこともゆびささずに まえだけを見つづけてくれていた 人をゆびささない ひとさしゆび 私を にくんでおられる あの方も きっと 持っていらっしゃるに違いない指 ひとささん指 ---------------------------- [自由詩]みつまたカノン/るるりら[2019年3月18日17時28分] A 光とパッションで あい わず ぼおおん おもわず ぼんぼぼん 三叉路のような枝先に 咲いているのは紙様の花 花の名は みつまたで なぜだか知らぬが いにしえの人は紙を梳いた 枝が三つに分かれているから みつまた 紙に神がやどりますようにと 咲いている B はる一番の すっぱだかさで あい わず ぼおおん おもわず ぽんぽん ボールのように咲いてます 三つの枝の先で みつまた咲いてます 春は三叉路分かれ道 思考は みつあみ なぜだか知らぬが いにしえの人は紙に書いた 現在を過去を未来で書いて 花笑う わかれても また別の形で会いましよう C 仄見える あなたのビジョンに たまゆら ゆれて 風光る 雲足の速さのままに髪を梳かし 結んでは開いて手を打って また開き ひろがっていく こころ映えは 春霞 もう悩むのはやめ歌い始めました  AからBへの歌を歌い  BはCの歌を聴いています CかAと重なってきたらカノンです ほら耳を澄ましてみて                    はるが おんがくのように ながれている ---------------------------- [自由詩]ほね/るるりら[2019年3月22日9時28分] もしも 三人が しゃれこうべになったら 三人は親子だと すぐにわかる  なぜなら 同じ頭の形してる。 と、言われ ハチマキ姿のタコの絵のような 立派な おでこを 三つ つきあわせて 婆さんと母さんと娘が、声をたてて笑った あかんぼうの髪の毛は ゆでたてのトウモロコシのヒゲのように やわらかく 繊細に おつむを守っている 新米の母親と お婆さんとが 交互に おつむをくりくり なでるほどに  ずいぶんと違う性質の三人なのに ほねは とても似ているのが おかしい 皮膚のようなものを除いてみるスケルトンな眼識を与えられ 本質的に同じものをもっているというだけの ほねたちの わかちがたい ふくよかな笑い ******* http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=5978980#12741981 即興で詩を書き合う 即興ゴルコンダ(仮)参加作品。今回の題名は、こうだたけみさんの出題です。 ---------------------------- [自由詩]かわるもの、かわりゆくもの/るるりら[2019年4月1日15時15分] むかしむかしあるところに大正という村で育った少女がいた 彼女は いつしか百歳を超えて 「敬老会に行っても 最近は若いモノばかりで つまらん」と言い 八十を超えている若い衆が ぐっと笑いをこらえた むかしむかしあるところに昭和という町で そだった少女がいた 「最近の若いもんは 車ばなれしてて つまらん」と いいながら どこかしらない美しい世界に いつまでも少女のように憧れていた むかしむかしあるところに平成という街に そだった少女がいた 彼女は 万葉集におさめられているという梅の話を いにしえの言葉のまま覚えようとしていた そして いまも すべての少女たちの すこし赤らめた頬が 春霞の向こう側に かすかに見えている ********** 即興ゴルコンダ 参加作品。お題は こはらあきさんです。 http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=5982233#12750585 ---------------------------- [自由詩]くだる/るるりら[2019年5月8日10時08分] 【さかくだり】       あの懐かしい橋を渡れば 蛙のひしめく道がある いきものを ころさないように 体が傾むく川下にむかって 足をゆっくりと あるく  あの懐かしい橋を見下ろせば 大雨の日に流れていた大木が見える 身を乗り出して声を立てて笑いながら 激しい濁流を眺めてみると大人は怒る あの懐かしい橋のむこうで こどもたちは 喧嘩して仲直りもせず こどものままで いまも 住んでいる きょうもあの子は言う 「おまえんちの家の前の空き地は むかし なまくびがならべとったんど じゃけえ おまえんち のろわれとるんじゃ けけけ」 妖怪のような いたずらを 風のように じようずに うけ流すこともしないで こどもたちは いまも あの橋のむこうに 手を取り合うこともなく 住んでいる 【さらに くだり】 花のようでありたくて 親指と親指とをあわせて 小指と小指とをあわせて あわせた手のひらをひらいて花をかたちづくる 無骨な十本の指を 天にむけて ひらけば 指が エナジーを放つ 縄文土器のように 焔立つ 平成 という時代は  ほかのどの時代とも違って 時系列に古い順番に並べるのが 今の私には まだ難しい たとえば 平成土器は このような土器ですよと見せることはできない だが、小渕さんが たからかと掲げた あの 平成 の ボードを 逆さにしてみる。と  まるで縄文土器のようぢゃあないか 無骨な十本の指を 天にむけて ひらき 平成も知っているこの指が まるで縄文土器のように無骨なエナジーを放つ 平成の文字は まだまだなまなましいエナジーを放っている わたしは無骨な指で土器のような形をおもいながら わたしは しずかに花になる こどもたちは いまも あの橋のむこうだ 手を取り合うことがなくても 花のように 住んでいる ---------------------------- [自由詩]きっと はなせる/るるりら[2019年6月3日1時19分] 目が覚めて一番に 口にした言葉は くちなし 薫り ゆたかな色彩の白 しずくを 湛えた光沢の葉 無垢を 口にするときの ふるえる くちびる くちなし きょういちにち なにを はなすことだろう なにを 話す  なにを 放す 町が動きはじめる いらっしゃい いらっしゃい 店は 品を自慢し テレビがスマホが 自信たっぷりに 優れた人や物を教えようとし そこかしこに昨日をコピーしたかのような言葉が あふれようとし 昨日のままに すべてを押し流そうとする すこし くちなしになったら きっと 花せる しばらくは なにもいわず 耳を かたむけ 昨日とは すこし違う口調で はなせる きのうとは ちがっている友に 昨日の蕾が そっと ひらくかのように はなす きのうとは ちがう季節の風に 身をゆだねながら おもいを はなす  ---------------------------- [自由詩]本と雨のはなし/るるりら[2019年7月2日12時54分] いかがおすごしでしたか ほんと おひさしぶりですね あなたのことを 得体のしれないエネルギーだという人の話を ほんと何度もききましたよ 人々はあなたに出会うと ほんらいの姿を取り戻すだの心洗われるようだの わすれていたものを ほんきでみつめることができただのと称賛して居ますわ とうめいにんげんのわたしが 本だのに掲載されるきっかけは 雨の日しかないと思うのですわ私の本体が水にあたることで輪郭が現れますもの 写真でも映像でもだめよあなたが本手を得ているのですスケルトンの私を描いて メジャーにおなりなさいな 本でしか私が人に知られる術はない じゃあじゃあと滝のような雨 本性があらわれるのは驟雨のときのみですわ 今は全身に雨の律動バチバチ 翻弄されてはなりません 刹那をのがしてはなりません 翻訳するのです素直に無と向き合うのです 忙しいひとが涙をながす時を失ってしまいそうです 翻意を促すのです だめ 傘をわたしに かざしてはだめ わたしに触れようとしてはだめ ほら 雨がないと みえなくなったでしょ でも あたたかいわ あなたって ********************************* http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=6007805#12819892 ※ 即興で詩を楽しむサイト 即興ゴルコンダ(仮)参加作品です。 ※題名は かんなさんが お出しになりました。 ※現在 この題名でやってます。そこのあなたも ぜひ参加しましょう! ---------------------------- [自由詩]たいふう/るるりら[2019年11月30日23時54分] 私のメールボックスに詩編をくださった方がいらっしゃいます。今年は災害の多い年でしたが、いつも通っておられる教会も被害をうけておしまいになった方から、一遍の詩が私のメールボックスにとどきました。 たいふう        白鳥美紀 わたしのいっている かみさまのおうち おおきなまほうのいたずらで たいせつななかまたちがみんなたおされてしまった きおくのなくなった ほん ないている つくえといす きれいなこえの ピアノが こえがでなくなって かなしくてかなしくて うえをみたら 十字架が ぴかりとひかった ************** この詩を頂戴して わたしは どのような声かけをさせていただくべきかわかりませんでした。ですが、この詩をいただいた翌朝 わたしは海の夢を見て 朝を迎えました。 穏やかな海でした。 ※これから書くのは、そのときにおもいついたことです※ ************** たいふうのあと       真清水 るる その十字架のそばを 船がゆれています よく見渡すと 十字に光っているのは 海の上の太陽でした 朝日が海にうつりこみ その光は わたしの足元までまっすぐにのびています ひかりは しだいに さらにあかるくなってきます 流木が 立派な机におもえてきました ポケットにあった 貴重な紙もあります  うしなうことのない かがやきが わたしをつつみこんでいます               ---------------------------- [自由詩]だから会いたくない/るるりら[2019年12月22日10時36分] 光に照らされ 透けて見える川底 流線型の魚影が うつくしい フォーメーション 薄雲が川に陰りを与えると 失われた魚の影 代わりに現れたのは 鱗の煌めく魚たち わたしは、だれとも 会いたくない 美しい魚影を見ていたかった あふれんばかりの 光の中で ときおり 融合しあう魚の影を 影を、慕って いたかった ****************** http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=6062041#12969449] 即興詩の試みのサイトへの、参加作品です。 題名は、こうだたけみさんです。 みなさまも ぜひ 即興を こころみてほしいです。 ---------------------------- [自由詩]花束と折り鶴が少しだけ風に揺れる、ように/るるりら[2020年8月7日1時10分] この星の何人かは ちいさめの正方形の紙を見かけると 戦争が終わった後だというのに 戦争のせいで病み 快癒を折り紙に託しながら 亡くなった少女のことを思い出す 紙の角と角を 合わせて 鶴に嘴をつけるときは 微妙に個性的な表情がつく そして 均整のとれた形の中央に 繊細に 息を吹き込む 少女の折り鶴は ガラスケースにいれられて うやうやしく 原爆資料館に保存されているが いままさに うまれようとしている 折り鶴も 最後に息を吹きこむと完成だ 細心の注意がそそがれて 紙は息をうけて すこしだけ ゆれる ふくらみに とどまる息が やはり生きたいと言っている ************************** http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=6127351#13133744 即興詩の試みのサイトへの、参加作品です。 題名は、ABさんです。 ---------------------------- [自由詩]あたかも 森が海を恋しがるかのように/るるりら[2020年9月19日9時54分] トイレに 貼られた関門海峡の写真 そのくせ 見る事のできない生まれ故郷 「もし そこにいるのなら返事して」母は言う 補聴器をしなければ何も きこえず わずかに光だけを感知する あなたの手は まるで森の木々が とおい海を恋しがっているかのよう 煩悶しかない日常 けれど、あなたは むかし おさない私を 極端な怒りの人や悲しみの人から あなたは まもってくれたのかもしれないね 怒った顔の人のことを、あなたは 十時十分だと言い かなしみの人のことを、あなたは 八時二十分だと言った 喜怒哀楽を記号化して へっちゃらにしようと してくれたのかも しれないね もはや 時計をみることも 音を聞くことも難しくなった 暗闇で とうさんを呼ぶあなたは まるで 森が海を恋しがっているかのよう 私の顔が十時十分だか八時二十分だか  あなたには 知る方法がない たとえ一メールの距離に居ても 解らない そして どなってしまうのです 「ごはんができたよ」とか そんな些細なお知らせを どなってしまうのです 煮える喉 からみつく私の思いに  鏡にうつった 苦味ばしった苦痛の顔に 教えてあげよう 「わたしの感情なんて ただの記号です。」 エモーションよ 風に なれ 海に なれ *********************** 即興ゴルコンダ(仮)という即興詩のサイト参加作品です。 このサイトは同じ題名で 詩を提出しあいます。今回のお題は、わたくし るるりらが出させていただきました。ふるってご参加くださいませ http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=6137556#13156123 ---------------------------- (ファイルの終わり)