田中修子のるるりらさんおすすめリスト 2016年7月4日18時24分から2016年11月28日0時10分まで ---------------------------- [自由詩]あたいずむ/るるりら[2016年7月4日18時24分] ある朝 ヒナのために批評している ツバメの雛が巣から落ちたのだ 百均の店員の みなでしつらえた 段ボール製ヒナ落下防止板の設置位置について ヒヒョウしている 作業が遅れ 巣からなかなか離れない人間に対して親鳥が 金切声で 人間を ヒヒョウしている 脚立をたたむと親鳥が巣にもどる ヒナたちが一斉に口を菱形にあける 親にとって巣穴にはいりにくくなった さけぶ さけぶさけぶヒナたち 旋回する旋回する親鳥たち ヒナのために批評する 制服をきた人間も とおりすがりの客も  みんな巣穴の暗がりを みつめていた   あたいは あたいに唖然とした なにげなく目に入っていた 小鳥の姿も子猫の心も どこかいつも 他人事 人様の気持ちなんて なおさら知らないわ 知らず知らずのうちに 風景を二次元に、カット割りしている と、 一縷の風が くちなしの香をはこぶ ひらかれる緑蔭に  リリリリリ ゆりのつぼみ  かぞえきれない ゆりのつぼみは紡錘型 茎はおなじような角度のカーブで たったまま なにかを待っている 咲いてしまうと ラッパのように しゃべりだしそうだ (真似すんな)とか(おまえとわたしは似てるけど違うんだ)とか いまは  ただ  五感をとぎすまして 待っている つぽみは舟となり  宇宙のことを 考えている りりりりりり りゆうをさがす ゆりのつぼみ あたいも重たそうなままで 宙に浮くさね ★しりとりスレッドに提出した自作作品を三作品を 一作品にしました。 http://po-m.com/forum/threadshow.php?did=35730 ---------------------------- [自由詩]真赤な太陽/るるりら[2016年7月18日8時49分]    太陽の匂いが漂うんです    懐かしいあの土手沿いの道の一画に    両手から    はみだしてしまう大きさの    おおきな亀裂のあるトマト    とうさんが トマトの真似をして    「やくざもんのトマト」と言ったのが おかしくて    七月の風に    とうさんの くつをはいて    ぶかぶかな足で かけだして     あの庭の あのトマトを    がぶりと やる    トマトをみかけるたびに    トマトの太陽が のぼるんです ---------------------------- [自由詩]紙屋町界隈/るるりら[2016年8月13日6時46分] 【紙屋町界隈】 ここには来れないあなたを さがしています わかりやすい たいどで わかりやすいことばで さがしてみます 街のあちこちにカメラを設置し あなたの陰を さがしてみます パン屋の前を 銀行の前を 人々が行き交うのが 見えます 美術館に モニターを置き、カメラでとらえた映像を映します モニター画面とともに今日の日付けと時刻が見えるように設置します それぞれのモニターの上に 町の名前を書いた紙を置きます。 猿楽町. 鷹匠町. 鍛冶屋町. 塚本町. 細工町. 材木町. 木挽町. 天神町北組. 天神町南組. 鳥屋町. 紙屋町. 塩屋町. 尾道町. 私の知らない町の名前がほとんどです。ですが ここは わたしの生活圏の町なのです モニターに映し出される雑踏は 色とりどりに急いでいます モニターでこの街の今を映し出すだけで きっと芸術です 真っさらな大地に上書きされた日常は これは きっと 芸術なのです 芸術なのですよ。モニターに町名を貼るだけで、芸術なのです。 紙屋町に 私は、立ちます。 うつくしい町名を くりかえしくりかえし 読み上げます 猿楽町. 鷹匠町. 鍛冶屋町. 塚本町. 細工町. 材木町. 木挽町. 天神町北組. 天神町南組. 鳥屋町. 紙屋町. 塩屋町. 尾道町. 雑踏で行き交う人々に 紙屋町以外の地名を言って  どちらに行けばよいかを尋ねます だれも こたえてはくれません  この街は、なにもかもが上書きされているのです。 ここは芸術なのだと いいかきせてはみるけれど 人のくらしを おもわせるような これらの地名の場所を、 紙屋町と隣接しているはずの地名を  紙屋町に行き交う人々が だれも知りません。 そうです。原爆ドームは すぐ近くです。 産業奨励館と呼ぶのが正しいのでしたね。 なんもかんも燃えても 紙屋町という町の名だけは 遺したんじゃね。 座標点の交差点に立つと 見えない町々が きっと   このあたり一帯には あるのです。 http://po-m.com/forum/threadshow.php?did=321034 しりとりスレッド参加作品です。一部、改稿をほどこしました。  ---------------------------- [自由詩]ゆくえしらず /るるりら[2016年11月28日0時10分] 今日も りゅうが 脱走した 「理由」なんて聞く奴がいるから 逃げだしてしまうのだ 話の尾ひれなんて無視して ゆらぎは水の色 ゆがむからだのまるみに いかす光彩くねらせて するりと あいつは  「理由」なんて しったことかと 逃げだした ばしゃりと 飛沫が わたしのこの顔にあたったとき なにかを 超えたんだよ ひとには ひとであることを越えて りゅうになる瞬間がある 泳いでいこう おそれずに からだに張り付いた光で こころがうかぶ 実は 君も りゅう でしょう おどりながら 舞いながら 飛ぶように 逃げよう さあ きようも あくびのような気楽さで  とおく泳いでいくさ ---------------------------- (ファイルの終わり)