こたきひろしの両性具有さんおすすめリスト 2019年6月25日0時45分から2020年2月10日0時11分まで ---------------------------- [自由詩]/両性具有[2019年6月25日0時45分] ぼくらは 絵本のなかで セックスなしで生まれた子どもです エラ呼吸も陸呼吸もできて どんな指よりも愛撫に長けた 艶やかな二枚舌 恍惚の高波に血を滲ませて 噛みしめた肌に刻んだ詩が 白い雪に残る静謐な足跡になって 足跡の先には 空になった狼の巣があり 雪解けの春を待ちわびて 情交に耽る二匹の雌がいた ぼくらは 御伽噺に見捨てられた あまりに放埓で無知な いじめ踏みにじられて昂る 灼熱の仇花 ---------------------------- [自由詩]太陽/両性具有[2019年7月5日20時12分] やっと 太陽をつかまえた つかまえた腕のなかで 少しだけふるえていた 唇をかさねると 少しだけ悲しそうな顔をして それから 眠るように目をつむった 抱きしめた腕のなかに 太陽のにおいがした 春の木かげにとけのこる 静謐な雪のにおいがした 目をつむった闇のなかに 太陽の光があふれはじけた やっと 太陽をつかまえた つかまえたぼくの腕も ふるえていた 君が目をつむると ぼくも目をつむって それから、ふかくふかく 息を吸い込んだ 陽の落ちた部屋の闇に 狂おしい 太陽のにおいがした ---------------------------- [自由詩]満月/両性具有[2020年2月9日23時43分] 散らかる部屋で ぼくも散らかる物のなかに 転がって 散らかってみる 明るくて冷たい夜だ 今日は満月だ 見なくてもわかる 何も言わない 声が聞こえても 名前を呼ばれても ぼくは散らかってる物だから 灯りのない明るい夜だ 窓の外は満月だ 見なくてもわかる 玄関が開く音がする 廊下の明かりが点く気配がする ぼくは息を潜める 君が部屋に入ってくる 君はぼくを拾い上げて 顔を覗き込む それから 箱の中にぼくを押し込んで 家の前のゴミ捨て場に置いていく それっきり 夜は更けてゆく ああ、やっぱり 窓の外は満月だ ---------------------------- [自由詩]退院/両性具有[2020年2月10日0時11分] 山のおくの ごみ処理場のごみの山で 捨てられていた人形のぼくは 捨てられていた人形のきみの手をとって 月明かりのなかを どこまでも歩いていく 夜が明けるまでに 海にいけたら きっとふたりで イルカになれる ---------------------------- (ファイルの終わり)