chiharuの梅昆布茶さんおすすめリスト 2014年5月9日3時39分から2018年10月8日10時42分まで ---------------------------- [自由詩]猫でした/梅昆布茶[2014年5月9日3時39分] 猫でした まちがいなくねこだったと思うのですが 定かではありません 幸せだったかもしれませんし そうじゃあなかったかもしれません 宿無しだったのはたしかです いまでもたいして変わりはしませんが 濡れそぼる夜はなくなったようです また猫に戻りたいかときかれれば まああれはあれで良かったかなと思うだけです よく遠くのそらをながめていました 腹も減るものですが別の何かもさがしていたものです からっぽの街で風の行方を追いかけては 光のあふれる季節をみつけようと彷徨いました そう猫でした いまでもその記憶が残っているのです ---------------------------- [自由詩]風景/梅昆布茶[2014年7月3日22時07分] 生きるたたずまい 気配だけではない 所作もふくめたその人の 生活感の座り具合とでもよぼうか こころにはかたちがない 言い換えれば生きるエネルギーが そのまま立ち居振る舞いとなって 表にみえてくるものだ それは気付かないままに それぞれが発している 生の信号なのかもしれない 見える見えないにかかわらず 変化しないものはない もちろんひとのこころも例外ではない こころをつなぎとめることはできない かたちが無いものに鎖はつけられないのだ 光の当たり具合によって 風景の輪郭が変化してみえるように みえないところでひとは 刻々と変化してゆくものだろう でもその奥にあるたたずまいを 僕はそのひととして感じていきたいのだ そしてそれがとらえにくいこころの うつろう陰影を映すそのひとの風景で あろうかともおもうのだ ---------------------------- [自由詩]金と銀のスニーカー/梅昆布茶[2014年8月3日10時20分] 季節をいいあらわそうと思っているうちに それは過ぎてしまう 足跡と想いはいつのまにか 季節をすり替えて行く 君と金と銀の スニーカーを交換して なんか安っぽいねって笑った 僕の足は頑丈な靴を好んで 君の足はたぶん 羽根のように飛びたかったのだろうね いいんだ季節も物事も変わる 自由に飛ぶがいい ただ君も僕も 自由はかなり重い鎖で繋がれているってことは 忘れないでいよう それが僕が君に最後に贈る言葉だ ---------------------------- [自由詩]包装紙/梅昆布茶[2014年10月11日6時00分] なにが入っていたのやら わからないのだけれど 綺麗な包装紙や箱 おふくろが いただきものの 高島屋なんかの包装紙なんぞを ていねいに折ってあるものが 押し入れの隅からときどき 出てくる 彼女でもない女友達からの 電話はくるが もと妻やぼくとおなじく おやじになっただろう息子達からは 風の便りもなくて やむなく自分の居場所を確定する 誰かのソネットが 風景をそっとゆさぶる 高島屋の包装紙が ふわっと揺れる 母がほほえむ しょーもない息子のために 写真フレームのなかで ---------------------------- [自由詩]ある四季/梅昆布茶[2014年10月20日12時32分] 地軸のかたむきが季節をもたらすように こころのかたむきは炎のまわりを公転し くるくると自転し陰翳を刻みつづける 同乗したドライバー仲間と 仕事は5月と10月がいちばんいいね あとは暑いとか寒いとか 一年中ぼやいているなんて話す すべての生き物が違った時間をいきているのなら あなたと私の時間は微妙にずれてゆく だからそれぞれの四季をいきる 違った季節が交錯して蜜柑の実がたわわな つかのまの風のなか空の高みを夢みる それぞれの 地軸のかたむきでいきてゆく いつかそれは法則や光速までも超えてしまう そんな巡りもあっていいとも想うのだ ---------------------------- [自由詩]いつか失ったものたちへ/梅昆布茶[2015年11月3日0時23分] きみが奏でるインプロビゼーション 太陽がさししめすデスティネーション 私はずいぶん整理されたのかもしれない まるで骨格のように洗われるだけになりたいと 素朴な島人でありたいと心底おもったことはないが いまはすこしだけ離島に棲んでいる ときどきは足が病みすでに老眼である視界は狭窄しつつ それでもなにかを追ってさらにちょっとだけ失ってしまう それが心地よいのかもしれない 乱反射する歴史のたくらみや 閃くたびになにかしら痕跡をのこしてゆく 人間という不可思議の森 老廃物のうえにさらなる なにかをかさねてゆくことで じぶんがたったひとりの 難民であることに気づく しかし私の敬愛するひとびとから ひきついだ卵を暖めてゆかなければならない 誇張も縮小もできない無垢を ちょっと薄めて生きること あなたに教わった生き方だ ---------------------------- [自由詩]菌類図鑑/梅昆布茶[2015年11月10日0時18分] 深井戸を掘り水脈を探り当て 始原の意味を飲み干そうとする ひそかにかくしもっている消しゴムで 日々の痕跡を抹消してゆく 整理できないものを片付けてゆく生活 アクチュアルな墜落が気持良い トマトを齧る 残されたものを数えるのをやめる 減ってゆくだけだから 地衣類のように地表をおおいつくそう 菌類のように醗酵しながら えたいのしれない茸になろう いまもただのデクノボー これからもたぶん ちょっとだけ 痕跡をのこして ---------------------------- [自由詩]孤独の断章〜アレンジメント/梅昆布茶[2016年5月10日8時42分] 孤独はいまも継続中だ それが常態となってしまえば たいした痛みも感じないものだ ときおり非日常にきみがやってくる それは僅かな恩寵でもあり かすかな煩悶でもある きみは花をアレンジメントする もう心の探り合いなんて要らない 単純な美しさを夢想している それは天の星の配置のように 緩やかな時の解れのように この素敵な世界のやさしい 地図なのかも知れない これはただの夢だとは わかっているつもりなんだ 孤独ってしぶといぼくたちの根幹なんだから あたらしい娘とであうような顔をして ちょっとO型にしては繊細な上海生まれのきみと 吟遊詩人にもなれないし 友情だけでも生活できないし 新宿の北海道メインの居酒屋で 僕はかってに北方のジムモリソンみたいな シャーマンを呼び出して きみのアレンジメントに少しだけ 自分の花を紛れ込ませる もうドアーズみたいには いきてゆけない時代だし だれもいつも混沌をなかなか 整理できないでいるみたいだ リザードはちょっとだけ 冷たい床をさわって そしてじぶんの生活にもどる そんなようなことだ ---------------------------- [自由詩]ショッピングセンターにて/梅昆布茶[2018年10月8日10時42分] 月曜日は買い物日和だ 砂漠の中のショッピングセンターへゆこう 遠くの部族が集まる日曜日よりはましだから きみの前髪を上手にきってくれる人をさがそう くだらない思想でこころを壊さないように ついでの買い物が時系列を並べ替えてしまわないように たいせつな宝物をさがそう 自動販売機で缶入りのおでんとオイルサーディンを買おう そしてゲームセンターでちょっぴり魂を売ろう 好きだと言う前にたいてい想い人はいなくなってしまうから きみといっしょにフードコートで銀だこをたべようとおもう 夕方になったら帰りの靴をさがそう 闇にのみこまれないようなかるい靴を そしてどこからもダウンロードできない夜想曲を ふたたびさがしに行こうかともおもっているのだ ---------------------------- (ファイルの終わり)