虹村 凌 2007年9月18日17時47分から2008年3月12日9時06分まで ---------------------------- [自由詩]創書日和「淡」/虹村 凌[2007年9月18日17時47分] 僕がいるこの街について 君が知る事は殆ど無い 僕がここにいる理由のほかに 何を知っているのか聞きたいくらいだ それは僕も同じで 君がいるその街について 僕が知る事は殆ど無い 君がそこにいる理由のほかに 何も知っている事なんて無いんだ ねぇ あの街のあの喫茶店を覚えてるかい? 二人して適当に選んで入ったあの喫茶店は なかなか良い雰囲気で 美味しい珈琲を飲ませてくれるお店だったね 珈琲に砂糖をミルクをとかしてかき混ぜる仕草を 今でも覚えているなんて 少し変だよねぇ 僕も時々だけど 珈琲に砂糖とミルクを入れるようになったよ そうだ 今度どこかに行こうよ 季節が変わったのかどうかもわからないような 苛々するこの街を抜け出して 名前も知らないような場所に行こう もちろん夜行バスか深夜の列車で行くんだ 行き先なんか何処だっていいんだ 北に向かう何処かで途中下車したっていいんだ 僕は持てるだけのノートとペンを 君は持てるだけのカンバスと筆を 小さなカバンに詰め込んで何処か遠くに行こうよ 苛々するものは全部置いていこう 携帯電話も免許証も銀行のカードも ねぇ トンネルの中を照らすあのオレンジ色の光は きっとあの街を照らす朝日よりも綺麗だよ 二人であのオレンジ色の光の向こう側に出て あの街とは少し違う匂いをかぎに行こうよ 月も太陽もきっと探さないでいてくれるから ずっと北へ北へ 冷たい匂いをかぎに行こう 真夜中の匂いはきっと綺麗で 少し膝が笑っちゃうだろうけれど あの苛々する街の匂いとはきっと違うから そうだ 水筒には暖かい珈琲を入れていこう ミルクと砂糖を溶かして きっと僕らが降りる街は雨が降っているよ 駅の外は雨が降って 僕らはそこで二人ぼっち 淡い光を放つ夕立が 僕らを駅に二人ぼっち ねぇ 僕はまだ眠れないでいるよ 君はまだ起きてるの? ---------------------------- [自由詩]ジョビジョバ/虹村 凌[2007年10月5日15時09分] ジョビジョバ ジョビジョバ こぼれ落ちてゆく ふたつに割れた夕陽から 大切な何かが ジョビジョバ ジョビジョバ シンクに沈んだスペアキーが 物言いたげに冷たく鈍い目を向ける またやっちまった 薄いコーヒーはもうすっかり冷め切って 細かいほこりが浮かんでいる 火の消えきらない煙草は未だに 曲がりくねった煙をあげて 換気扇に吸い込まれていった またやっちまった いつの間にか眠っちまったよ 人もまばらな午前二時のファミレス 遠くの席で誰かが電話越しに喋ってる 聞こえない このままもう一度眠っちまおうか ジョビジョバ グラスの中の氷は音をたてて溶けてゆく ジョビジョバ ジョ ジョビジョバ 氷みたいな炎みたいな 銀色のゼリーが口からこぼれていく ジョ ジョビ ジョ ジョバ 自分だけが不仕合せだとカン違いしている 帰りたくない 鍵をなくしたから 帰りたくない ---------------------------- [自由詩]ヌーク/虹村 凌[2007年10月5日15時15分] 「い、イナゴ」 「ご、五右衛門風呂」 「ろ、六甲おろし」 「し、衝撃波」 「は、はなふだ」 「だ、だ」 「だ」 「大好き」 「き、キスする?」 「なぁ」 「ん?」 「あの夜みたいに楽しくやれないかな、また」 「何言ってんの?あンた馬鹿じゃない?」 「…」 「あの夜より楽しくやろうよ」 薄暗い喫茶店の隅で 大きな声をたてて笑った ---------------------------- [自由詩]ピンクダーク/虹村 凌[2007年10月5日15時23分] 散歩しようよ夕暮れの街を 改札を出たら 何時もとは逆の 左の商店街へ 教会の前を通って 遊具の無い公園に着いたら 名前も知らない煙草に火をつけよう ピンクダークの空が ねぇ あなたの髪の匂いが忘れられなくて ついつい不仕合せなフリをしてしまうよ いつかミルク色の夢から覚めて 泣いて泣いて涙が止まったら また笑顔を見せて欲しいんさ 美味しいコーヒーも チーズケーキもあるよ ピンクダークの空が見える 眠くなったらベッドでお休み 僕は乾いたバスタブで眠るから もうどうなってもいいなんて言わないで 冷めた目つきで慣れた手つきで どっか行かないで ピンクダークの空が見える遠くに 空が明るくなり始めても眠らないのは 煙草の煙が目にしみるからじゃない 悲しいのがあまり好きじゃないから 気のふれたフリを続けるよ 別に大した事じゃないだろ ねぇ でも少し変かな? ---------------------------- [自由詩]おっぱい/虹村 凌[2007年10月10日13時11分] トイレの中で泣いた事はあるか? 声を押し殺して 友が過ぎ去るのを待ちながら 泣いた事はあるか? 悪臭にゲロを吐きながら 泣いた事はあるか? 俺はあるよ 今もそうしている だからお願いだ その白く柔らかいおっぱいを 信じさせてはくれないだろうか 名声なんて信じてないけど そのおっぱいを信じたいんだ 俺が信じてた事の全てが 作り話だったとしても構わない でも俺が今置かれている状況から抜け出すには そのおっぱいが必要なんだ これは俺と君に課せられた問題で 別に特別な事じゃないと思うんだ いずれ俺達より苦しむ人が増えて おっぱい以外に覚醒しちまったら それを悪夢とも呼べないから だからそのおっぱいを 信じさせてはくれないだろうか ---------------------------- [自由詩]おっぱい(マシンガン・クオーター)/虹村 凌[2007年10月10日13時36分] 1  その小さなおっぱいを隠そうとするけど  俺が「大きければいい」何て言うとでも思ったか? 2  敗者には栄光も名誉も敢闘賞もピンスポも何も無い  だからせめて優しくしてやろうと思うんだ  もし俺におっぱいがあったら  の話だけど 3  君のおっぱいから視線を外す俺の動作を  君が気にするだろうと思って釘付けてある 4  ひとの「おっぱいを求める」と言う本能  おっぱいに近づくことで安心と同時に快楽と興奮をもたらす 5  俺が悩んでいるように  誰もが悩みを抱えている  言い方こそ違えど言ってる事はみんな同じ  結局みんな  おっぱいの事しか考えてない  大きさとか小ささとか  そんな事はどうでもいいんだ 6  大きすぎても小さすぎても  ハートさえあれば  それだけでラッキーだと思うんだ 7  1/30秒でシャッターを切りまくって  ぱらぱらマンガみたいにならべてしまいたいくらい  この柔らかさに埋もれてゆく 8  君のおっぱいを証明しようとして  逆に俺のおっぱいを証明してしまった  申し訳なくて  手を置くだけにとどめる 9  コーヒー安藤シガレット  緑茶と煙草  君のおっぱい 10  少年はナイフじゃない  けれど少年は日本刀だ  君はいっぱいじゃない  けれど君はおっぱいだ 11  おっぱい is not dead 12  おっぱい will Rise Again 13  無為鼻炎  でもおっぱいの為に 14  僕以外の人におっぱいを意識させないで下さい 15  ダモクレスの剣  君のおっぱいで眠る遅刻しそうな僕 16  神々の死んだ後に生まれたから  僕たちは生まれた事を祝福すらしてもらえない  だから  神々が知らない君のおっぱいで 17  梔子の花は死人に捧げる花だってさ  君のおっぱいで見た夢で  知らない人が言ってたんだ 18  僕の指がまどろみの中  おっぱいの上で痙攣してる 19  シリコンを入れるものはみんな虚しい  彼女達の喜ぶところの者は  結果なんの祝福ももたらさない  非おっぱい信者は何かを見る事もなく  また何かをしる事もない  故に彼らは恥すら知らない 20  自分で生み出した言葉の海に溺れるなんてナンセンスだ  でも君のおっぱいで溺れるのなら  僕は君の心臓にキスしてこようと思う 21  天国に一番ちかいおっぱいで  四散した僕の生死をかき集める 22  唯一の現実は君のおっぱいである  私はおっぱい信者であるが故に  そのおっぱい自体よりも  そのおっぱいの可能性が意味を持ち  最終的には帰属の対象となるのです 23  私がおっぱいなのか  またはおっぱい星人であるかはわかりません  しかし悪夢と言うべき  おっぱい反対論者を蹴散らしつつあるのは確かです 24  私のおっぱいを求める本能こそが悪夢だとしたら  君のおっぱいはその悪夢の立役者  本当に私を殺すのは君のおっぱいで  私は不本意にも助けられたのでしょう 25  だから今夜はそのおっぱいで息をさせて欲しい ---------------------------- [自由詩]創書日和「酒」/虹村 凌[2007年10月18日12時19分] 破れぬ夢を引きずって 銀色の夜明けにたどり着いたら 大きな花火を打ち上げよう ただ黙って抜け出した真夜中の後に 大きな花火を打ち上げよう リタのダイナーはようやくシャッターを開けて 眠そうな顔の店員がテーブルを拭いている 50セントのジュークボックスでは ストレイキャットが歌ってるよ 銀色の雲はまだ眠そうで 昼行灯 呼ぶ声が聞こえる 便所の100ワット 聞こえないふり 北極でゴキブリホイホイ 肩を掴まれて 真っ青な木枯らしに 疲れ果てた入道雲が蹴散らされるみたいに 生ぬるいアスファルトに横たわる 何時か忘れたけれど 聞こえていたアスファルトの鼓動が聞こえない 通り雨がアスファルトを匂い立たせて 少し酔ったような気分 昼行灯 酒は要らない 便所の100ワット 飲んで寝るくらいなら 北極のゴキブリホイホイ ずっとこうしてる 遠くの方で動きの危うい車が見えた気がした 昼行灯 何も聞こえない 便所の100ワット 何も聞こえないフリのフリ 北極のゴキブリホイホイ 轢かれた気がする 昼行灯 何も聞こえない 便所の100ワット 酒なんて要らない 北極のゴキブリホイホイ 何だか暖かい 目を覚ます もう真夜中だ ---------------------------- [自由詩]空き缶/虹村 凌[2007年10月18日13時46分] シリカゲルの砂浜に打ち寄せる波間に ひとを仕合せに出来る鐘が見えた気がした それは瞬く間に沈んでしまったけれど 少しだけ笑顔を取り戻したカモメのジョナサンが 何かを叫んで実家に帰ったんだ 眠くなるような早さで 風が肩の上を通り抜けていく 「人間は地球の癌細胞みたいなものだけど 同時に宇宙のスパンコールみたいだと思うよ」 何時だかジョナサンは言っていた 「明るすぎてよく見えないのなら 世界を黒いカーテンで覆いつくしてみればわかるよ 重たいビニール袋をぶら下げる主婦ポエム オッサン仕事帰りレクイエム 路上のギター弾きレジェンド 電信柱に隠れて見えない女子高生ブルース ほら見えただろう?」 ジョナサンは唇だけを動かして言ってたんだ 懐かしい映画みたいに写る昔の日々は どんどん色あせて白黒に近づいていく あの頃の太陽にはヒビが入っていて あの頃の月はもう砕け散っていて 今にも飛び散りそうだった自分自身は 何がなんだか思い出せない でもあの頃は ジョナサンが飛んで行く方向には あんな高いビルは建ってなくて 季節は狂いなく変わって 何時も新しい冬がきてた どうしたらイカした人間になれる?って聞いたら 「世間が平和になったら詩人は飯の食い上げだぜ」 ジョナサンは煙草を咥えたままでこんな事を言ってた 「無責任が止まらないんだろうけど 無責任が止まったら詩人なんてやってらんねぇ」 煙草に火をつけずにまっすぐに目を見てこう言ったんだ 浜風が強い日はジョナサンは煙草に火をつけない 煙草の煙は風になびいて 後ろに過ぎ去ってしまうから 「後戻りなんてありえねぇよ どこかの民族じゃ背後に未来があって 目の前は過去らしいけどさ」 フィルターは噛まれて折れ曲がっている それでもジョナサンは煙草に火をつけない 「俺達の声はこの浜風にかき消されても 間違っちゃいないんだぜ」 ジョナサンは壊れたライターを海に向かって投げた 誰もがポケットの中に安心を隠し持っているから 爆弾が落っこちた時でも天使達は歌わない そしてジョナサンも僕も ナイフを持って立ち尽くしてるばかり 「ジョージブッシュみたいになってやろうぜ ビンラディンみたいになってやろうぜ」 ジョナサンは小さな声で呟いたんだ 「失うのが怖いから最初から望まないようにしてきた」 何万人もの絶叫現代人が間違ってる筈が無い なんて真面目に呟いて笑い転げた ジョナサン 侵食された時間を貪るように眠る もしも正義によって裁かれて サービスエリアの女子便所の列みたいに 長く長く罰せられるなら ジョナサン 甘んじて受け入れるけど ジョナサン 誰も裁けやしないなんて嘘だったね ジョナサン! 君の事を笑う奴が豆腐にぶつかって死んだんだ ジョナサン! 気違い扱いされた夜がいつの事か思い出せないよ ジョナサン! 昨日に何が見える?昨日に何が出来る? ジョナサン! 国民年金で見栄も吹っ飛んでしまったよ ジョナサン! 無知と偏見で何人殺してしまっただろう? ジョナサン! ジョナサン! ジョナサン! 街を埋め尽くす勢いで膨れ上がる邪な愛の夢に耐え切れず この浜辺に来たはいいけれど 結局は羨んで空き缶を投げる 群れていた雲は少しやつれて 背中に激しくぶつかる太陽が怖くなる ジョナサン 偉そうな詩人の言葉がいつも絶対じゃないと言うけれど ジョナサン 真冬の夜中を握り締めて 何か別の答えを見つけるよ 誰の声も届かない 何か別の答えを見つけるよ 放り投げた空き缶が溺れたみたいに沈んでいく 溺れているのは余計な物の海だろうか 遠くで誰も乗らない電車が通り過ぎる 灰色の夜明けの前を ただ黙って歩き抜ける ---------------------------- [自由詩]創書日和「酒」/虹村 凌[2007年10月23日9時08分] 冷たい金属のドアノブを回し 軽い色をした重たい木製のドアを開ける 笑顔で迎え入れてくれた先輩方は 僕の方に腕を回す 僕は震える手で小さなショットグラスを掴み ひと思いに流し込む 出したての精子のような 溶けた鉄のような 言い知れぬ熱さをもったそいつは 喉を切り裂きながら胃袋に滑り落ちてゆく 「ごちそうさまがきこえない」 天使のような悪魔の笑顔 満たされるショットグラス 指先に力が入る 「いただきますがきこえない」 天使のような悪魔の声 満たされるショットグラス 手のひらにまで力が入る 「一滴残ってる」 天使のような悪魔の笑顔 満たされるショットグラス 上腕二等筋が震え始める 「いただきますがきこえない」 悪魔のような悪魔の笑顔 満たされるショットグラス 肩がはちきれんばかりに力を込める 「一滴残ってる」 悪魔のような悪魔の笑顔 満たされるショットグラス 右腕の感覚はとうに無い 叩きつけるショットグラス 部屋に逃げ帰るも鍵を忘れて部屋に入れない うずくまって朝まで眠る ルームメイトは起きてこない 夜明けと共に目を覚まし 鍵を取りに部屋に戻るも 肩に担がれて廊下を引きずられる ベッドの上に投げ出され 土日はずっと戻しっぱなし あの喉が焼け爛れた痛さ 忘れようとも忘れられぬ ゲロにまみれて眠った毛布を 寒いけどゲロで塗れて冷たくなった毛布を離せない そんな悪寒と戦い続けた事を ドアの陰で俺を笑う飲ませた素敵な先輩方を 忘れようとも忘れられぬ 酒などいらぬ! 飲まぬ!酔わぬ!買いもせぬ! この俺の人生に料理酒と養命酒以外はいらぬのだー! 養命酒ワンショットで眠くなる男さ俺は さすがにそれで寝ゲロはしねぇけどな ---------------------------- [自由詩]ハードロックカフェで/虹村 凌[2007年10月27日16時56分] 便器の水面に浮かぶ吸殻が ジブラルタルを指している 生きる事は苦しむ事だと教えられた 人に生まれて幸福なのだと教えられた 善い事を重ねれば 来世も人として生まれると教えられた でも何処で教わった? 誰に教わった? 思い出せない 便器の水面に浮かぶ吸殻が あいまいな方角を指している 今日も何処かで人が生まれて 今日も何処かで人が死んでいく 今日も何処かで人が笑って 今日も何処かで人が泣いている いるのかわからないけど もしも神様って奴がいるのなら どうか願いを聞いてくれないか 鼻で笑ってもいいから 少しだけ聞いてくれないか この背中に翼なんて要らない 自分だけ 悲しみの無い自由な空に逃げたいと思わない だけど もし明日 世界中の子供達が泣かずに済むのなら この体なんて要らないから 世界中の恋人達が喧嘩をせずに済むのなら この体なんて要らないから 大切にすればするほど そいつは手の中から消えやすくなる 大事に金庫にしまったって 気付いた時にはなくなってる なぁ お前も何処かにいっちまうのか 便器の水面に浮かぶ吸殻が 危ない角度で沈んでいく 金は足りてるか? 美味い飯は喰えてるか? 友達増えたか? 感じの悪い奴はいないか? いじめられてないか? 毎日笑えてるか? 泣かされてないか? 生きる事は苦しむ事だと教えられた 人に生まれて幸福なのだと教えられた 善い事を重ねれば 来世も人として生まれると教えられた 笑える事は仕合せなのだと知った 泣く事は哀しい事だと知った だから神様 ちょっとだけ聞いてくれないか 明日の朝になったら 世界中でみんなが笑えるように 一粒の哀しい涙も流す事のないようにしてやってくれないか まるで暗闇に輝く虹を架けるように そうしたら みんなにはごめんけど この体なんていらないから ボストンのハードロックカフェで聞こえた あの歌が大好きで 今でも頭の中で鳴り響いてるよ まるで暗闇に輝く虹みたいに 便器の水底に沈んだ吸殻が 心のずっと奥の方を指してた ---------------------------- [未詩・独白]NEOPAN400/虹村 凌[2007年11月6日15時18分] まだ憎しみの火がこの心から消えないのは あの時に費やした愛の反動だろうか それはもし人生に於いて費やす 愛の量と憎しみの量が同じだったら と言う事なのだけれどね そんな事はどうでもいい ただ眠るのが怖いだけの ちっぽけな男が震えてるのだよ 36分の1枚 その写真が収まった一眼カメラを机の上において 少し離れたベッドから眺める 閉じ込めた笑顔を思い出して どうにか眼を瞑る ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]「風呂と便所とウンコと俺」/虹村 凌[2007年11月10日13時35分] ウンコネタ多数。カレー食ってるヤツ注意。 俺は、風呂に入る時、風呂場の空気が乾燥しているのが好きだ。 ほら、一番風呂の時の、風呂場の感じってあるじゃん。 二番目以降だと、風呂場の空気って凄い湿度だけど、 一番風呂の時って、何だか乾燥してて、気持ちいいじゃん。 あれが好きなんだよなー、俺。 今ルーミーが出たんだけど、 あのジメジメしたユニットバスで、ウンコする気にゃならんなぁ。 このまま寝るか。 あ、ちなみに俺は風呂は結構早い。 シャワーは特に早い。湯船につかる時間も、結構短めである。 ただ、お湯は熱めである。ジジィか?俺は。 たまーに、ぬるま湯に長々と入る事はあるけどねー。 合宿とかだと、そこまで熱くないし、 遊んでるので長いと思う。うん。 風呂コミュニケーションはいいよね。 銭湯にみんなで入ったりするの、凄く楽しいよな! 「おい!湯船に手ぬぐい入れてんじゃねぇよ!」 便所。 親戚の家の便所がでかいのだ。3畳くらいあった気がする。 とにかくでかい。…お、おちつかねぇんだこれが! 無駄に広いってどうなのよ。意味がわかんねぇって。 便所は狭いと落ち着くよねー。 個人的には、SA等の和式でウンコする緊張感もたまらん。 あの汚い便器に、衣服が一切つかないように気をつけつつ、 開放に向けて…ッ! 最近では、和式でウンコできないヤツもいるみたいだね。 「おい!金隠しにケツ向けてんじゃねぇよ!逆だよ逆!」 そうそう。洋式だと、跳ね返り水がケツにかかる事があるよね。 あの冷たさに、私は結構驚くのだ。えひゃい!って感じで。 ただ、臀部につくならかまわぬが、穴につくのはちょっと…。 なので、出しながら「こりゃやべぇ!」と思ったら、 ケツの位置をずらしたり、腰を浮かせたりする。 ウンコ中の奥義だ。 「南斗ウンコ拳最終奥義!断固臀部移動!」 間に合わないと、レイみたいな事故になる。 ウンコがしたいとき、それも結構な我慢をしてる時と言うのは、 得てして便所紙の残量を確かめる余裕は無い。 便器の綺麗さを見て、座るかどうかを決めるのである。 個人的には、何で便座にウンコが付着するのかわからぬが、 おそらく、 「学校の便所の便座になんか座れるか!」と言う人間が、 中腰で用を足したのであろう。 んで、話を戻せば、紙が無かったりする時がある。 紙が全く無い!と言う状況におかれた事が無いので、 俺はどうとも言えぬが、ギリギリだった事はある。 ポケットティッシュあったー!的なね。 あー!紙!と言う、ろくブル的状況に陥った人、 体験談希望ヌ。 どうでもいいが、知人男性が海外で登山中、 ウンコがしたくなって公衆便所に入ったところ、 物凄く汚い便所で、本格的登山用品フル装備のまま、 仕方なしに中腰でウンコをしたそうだ。 想像するだけで、面白い光景である。 映画だったら、100%笑えるシーンだ。 さらにどうでもいいが、小学校の頃、 卒業の際に図書館通信みたいなヤツを書く、 クラス代表に勝手に選ばれた事がある。 まぁ、その頃は結構な読書家であった為に、教師に選ばれたのだが、 そこで書いた「思い出の一冊」は、 椎名誠の「ロシアにおけるニタリノフの便座について」であった。 あんまりな小学生である。ウンコ。 そういえば、小学校低学年の頃まで、 ズボンとパンツを脱がねば、ウンコが出来なかったなぁ、俺。 誰だっけ、芸能人でいたよね。上島の竜ちゃんだっけ? 何時から装備したままウンコ出来るようになったんだっけなぁ。 俺がブリーフからトランクスに移り変わったのは、 中学入ってから、親戚のおじさんに、 トランクスをプレゼントされたからだったのを覚えてる。 最近は、トランクスとボクサーパンツだけどさ。 ブリーフ履かなくなったなぁ。 あぁ、非常にどうでもいいが、 下痢ウンコを限界まで我慢した事がある。 高校二年の頃、祖母と同居していたのだが、 祖母が便所に入った直後に、鋭い痛みを腹部に感じ、 祖母が出るのを待ったが、生憎祖母もNo2(大)で、 俺はアパートの一階事務所脇の便所に行く事にしたのだが、 何とエレベーターはその週は工事中で使えず、 やむなく階段を下りる事にしたのだが、これがしんどい。 下痢の為に、激しい運動が出来ず、ロボットみたいに降りる始末。 漸くにして辿りついた頃には、 もう括約筋が活躍し過ぎで疲労の色を見せ始め、 コンニチワ寸前の茶色い野郎共が飛び出さんばかりであった。 実際、数滴垂れてたかも知らん。 とにかく俺は便座を綺麗にする余裕も無く、 ケツを突き出すと、漫☆画太郎の漫画バリにどひゃー☆っと。 脂汗ダラダラの格闘技であった。辛勝でしたねぇ。 そういえば。小学3年の頃、初の林間学校の時、 友達の前でウンコをするのが嫌で、 一週間近く、ウンコをしなかった記憶がある。 よくためられたもんだ。エスキモーじゃあるまい。 まぁ、多分、友達や女子の手前、 ウンコをしなかったのだろうなぁ。 そうそう、小学生の頃は、学校でウンコをすると、 最低で一週間は「ウンコマン!」と言う名誉階級が与えられるのだが、 中学生になると、やたらウンコをしたがるようになる。 授業中に「先生!ウンコしてきていいですか!」と言う奴もいる。 ずっと前から疑問だったのが、学校の便所でよくみた、 ウンコだけが残ってる状態ってのが凄く疑問だ。 「おい、ウンコあるぜ!」と教室で叫ぶヤツがいると、 みんなしてウンコを見に行くんだが、何故かウンコだけが綺麗にある。 紙は水に溶けたのか?でもそんな少ない枚数で足りる? 俺が使いすぎ?ヲシュレットは人類が発明した偉大な機械だけどさ。 それとも他の便器に持っていって流した?うーん…。 と言う便所ネタ、ウンコネタで盛り上がれる女の子とか大好き。 酒は要らぬ!便所話とウンコ話とチョコと牛乳でいいじゃない! 煙草も欲しいね!その晩はカレー喰おうぜ! 「お前ウンコ喰ってる時にカレーの話すんなよ!」みたいなね! 俺は飯中にウンコとか言われても全然平気です! 一応反応するし突っ込むけどね! あ。 どうでもいいウンコ話を思い出した。 高校二年の林間学校で、同室の男がウンコをした。 俺が先に入ろうとしたら、俺より先に入りやがったのだ。 丁度、外でキャンプファイヤー開始近い時間で、 俺は諦めて外に出たのだ。 んで、帰ってきて、俺はすっかりウンコのことを忘れてたんだが、 遅れて帰ってきたそのウンコマンは、 トイレに入るなり「うおー!お前のウンコくせぇ!」と言い出した。 哀れ、俺がウンコしたと思って、自分のウンコの臭さを露呈したのだ! あまりの素晴らしい自爆っぷりに、俺は腹筋が割れる程笑ったぜ。 そうそう。 コーン食った次の日のウンコで、コーンをそのまま見ると、 その後15秒くらいは、 「よし、これからは飯を良く噛んで食べよう」と思うが、 いざ飯のときになると、そんな事はすっかり忘れているのである。 エミネムのアルバム「アンコール」収録のスキットで、 「あー、今ウンコしてんだよー」と言うエムの声が聞けるのだが、 便所でウンコしながら電話とは如何?と思ってた。 しかし、学校の便所でウンコしてる最中に、 携帯に電話がかかって来た事がある。おぉ、これだ。 それと、ウンコしながら小指で鼻糞ほじってたら、 手のひら攣った事がある。あの、手の平の小指の下の筋。 鼻の穴に小指突っ込んだまま、「あがが」となってて楽しかった。 ウンコでこれだけ話が出来る。 いいじゃない。ウンコは世界を救うねきっと。 ---------------------------- [自由詩]GAME BOY/虹村 凌[2007年11月10日14時01分] さて どんなふうに君を射止めようか 作戦を練って振り向かせよう なんて 手の平で転がしていると思ったら 君の手のひらの上で転がってた ---------------------------- [自由詩]サボテンオレンジ/虹村 凌[2007年11月14日6時14分] 浅い眠りから目を覚まして とりあえず煙草に火をつける 目覚めた原因である上の階の部屋から聞こえるベッドの軋みに 苦笑って煙を吐き出す 壊れて下がらなくなったブラインドは 皮肉にも健全なオレンジ色の太陽の光を取り込んでいる 机の上のサボテンのトゲが半分程茶色いのは 一体いつからだったのかも思い出せない トゲは少しずつ柔らかくなって ゆっくりと指に沈んでいく オレンジ色の太陽はゆっくりと高層ビルに溶けていって 僕は再び脳味噌を自閉モードに切り替える ---------------------------- [自由詩]Fly to the Heaven/虹村 凌[2007年11月28日10時12分] 今日も街には危険な香り 七色に輝くこの街が 俺を何処かへ走らせる 倒れる訳にはいかないのさ 例えどんなに苦しくても 誰かが俺を待っている Fly to the heaven みなに希望を与える為に Fly to the heaven 愛で悪を蹴散らすのさ ※ アゲハ!(しゃおっ!) モンシロ!(とりゃっ!) オオムラサキ!(でやぁっ!) いざと言う時に手を差し伸べられる それが強いという事さ さぁ君もその手を 誰かに貸してやるのさ今 さぁ君も ※※ 飛んでWhiteButterfly 俺の勇気と愛の全てが 世界の闇を明るく照らす 飛んでWhiteButterfly 俺の希望と夢の全てが 心の闇を明るく照らす 暗い明日など必要ないのさ 涙の昨日も必要ないのさ 今日も何処かで危険な香り 七色に輝く危ない光が 俺のこの血を熱くする 許す訳にはいかないのさ 例え小さな悪だとしても それで誰かが泣くのだから Fly to the heaven 君に勇気を与える為に Fly to the heaven 勇気で悪を叩くのさ ※ ※※ 昨日の事だけ輝いてる そんな暗い明日は飛びたくない ---------------------------- [自由詩]創書日和「指」/虹村 凌[2007年11月29日16時27分] 誰かと約束をしていた気がする 明け方に目が覚めた 理由はわからない 悪夢を見たわけでも 喉が渇いたわけでも 催したわけでもない ただ唐突に 目が覚めただけなのだ 手をめいっぱい伸ばして 指先に触れた煙草を引き寄せる 気付いたら爪が剥がれていた 小指の爪が綺麗に いつ剥がれたのか覚えていない ただ逃げ出したように 綺麗に剥がれていた 羽毛布団を蹴り飛ばして ベッドの上を探すつもりはない いつまでも小指が重く痛む まるで気でも違ったみたいに 鈍い痛みが忘れられない 何時までも慣れることは無い まだ女の小指だけが ゆびきりをした形のまま 爪の無い小指に絡まっている ---------------------------- [自由詩]風船/虹村 凌[2007年11月30日15時36分] オレンジ色の太陽が 真上から覗き込む とても明るい駅前広場で 足の長いおじさんは 子供達に風船を渡していた 沢山の風船に その足の長いおじさんは 今にも飛ばされそうで まるで味がしないかのように 缶コーヒーを飲み干すと 面白くなさそうに そのおじさんを眺めたまま 銀色のケースから煙草を取り出して 金色のライターで火をつけた君を 黙ってみていたんだ 「小さい頃は風船で空を飛べると思っていたわ」 君は突然に微笑んで言った 「あの子達も、きっと風船で空を飛べると思っているわ」 赤い口紅がうっすらとついた煙草のフィルターを 僕の目の前に突き出して言った 「吸わないの?」 子供達は風船を手にジャンプを繰り返す 無邪気に空を飛べると信じ込んでいるのだろう それが彼らの仕事なのだから 「きっとあなたは 風船で空を飛ぶ詩を書いたでしょう」 僕が手を伸ばさないでいた煙草を 君は再び口元に戻しながら言った 僕は黙ったまま 風船を渡し続ける足の長いおじさんを眺めている 「風船で空を飛ぶなんて とても素敵で詩的だものね」 彼女はまっすぐ前を向いたままで言う 詩人はペンを手にノートに書き込む 純粋に空を飛びたいと願いを込めながら それを叶えるのが自分の仕事だと信じて 君は煙草を空き缶の中にしまうと それを僕に手渡して少しだけ微笑んだ 「ねぇ 本当に風船で空は飛べるのかしら?」 足の長いおじさんを眺める僕の視線を遮るように まっすぐに僕の目を覗き込みながら言った 「さぁ」 僕は少しだけ視線を逸らせて肩をすぼめる 「あなたならきっと 風船で空を飛ばせてくれるわよね」 君は自分の指にくちづけると その指を僕のくちびるにあてがった 気付くと足の長いおじさんはいなくなっていた 空を飛んだのだろう ---------------------------- [自由詩]寒桜/虹村 凌[2007年12月21日22時40分] いつか君の狂気が芽吹いて 僕の精巣から飛び出たら 君の子宮を突き抜けて 幾重もの肉壁を破って 栗の花を咲かせるだろうから そうしたらお花見をしようよ そのまま根を生やして 桜の木の下に眠る死体みたいに 真っ赤な栗の花を ずっと ---------------------------- [自由詩]シュガーレイが帰った後で/虹村 凌[2007年12月21日22時49分] タートルネックガール 毒殺ハニー 撲殺マドモアゼル つんざめく夕立 ざわめく人たち どよめく轍 サーカスはもう来ない サンタクロースも 真新しい朝も コンクリートの道でさえ眠っているのに 未だに眠れないまま 泣き出しそうだった僕自身の祝福の声を 思い出せずにいる 泣き出しそうな声を 思い出せずにいる あの星みたいに! あの既に消えて無くなった星みたいに ここから見える全ての光もいつか滅びるのに ここから見えるひっくり返った宝石箱みたいな 全ての光も滅びるのに ゴッドブレスユー ミス・アルカロイド タートルネックガール 君が死んだら金色のマルボロを供えるよ もう肌の事を気にしなくていいから 思う存分吸ってくれよ それもシュガーレイが 君の大嫌いなシュガーレイが帰った後で ---------------------------- [自由詩]おっぱい/虹村 凌[2007年12月21日23時24分] 嘲笑と自分で生み出した言葉の海の中で溺れて眠る 冷たい階段の踊り場で目を閉じて 眠る 通りすがりのブラザーが俺に聞いたんだ 「よォ兄弟、歌は好きかい?」って だから俺は答えたんだ 「天国のドアって聞いてヴァギナを連想できたら詩人だよ」 韻が踏めないネコも踏めない でもウンコと絵だけは踏めたよ ガムは踏んだ事が無いんだけどね 精神科の女医さんが俺に言うんだ 「セックスの不足があなたをそうさせるのよ」って どうしろってんだ バカにしてやがる 俺は彼女の乳首を噛み千切って診察室を後にした そう 俺はその診察室を後にしたんだ その筈なのに いつのまにか百貨店の大階段の踊り場で みんなの嘲笑と 自分自身で生み出した言葉の海に溺れながら マネキン人形の白くて冷たいおっぱいの中で 眠りに落ちつつあったんだ ---------------------------- [自由詩]CFHS/虹村 凌[2007年12月25日21時23分] グリーンピースに コークスクリュー 死人に梔子 詩人に朽ち無し 笑うシャレコウベ 貰う洒落おべべ 千切り捨て燃やす 喜びを悲しみが、包む、から、 そうなる前に、手を、振って、 反逆を夢見る! 暗い幸福! 安堵! 打ち砕く! そう僕は崩れ落ちる 加湿器に当てられて ドライローズが 一瞬笑顔を取り戻した と思うんだ そして僕は泣き崩れる 僕は何も言えずに ---------------------------- [自由詩]創書日和「鍵」/虹村 凌[2007年12月31日23時55分] 繰り返しエア拳銃自殺 繰り返し飛び散るエア脳漿と絶望 ショーンはエアBB戦争に行った 片輪な倫理 戦争は嫌いだけれどエアBB戦争は好きさ 繰り返し飛び散る片輪な倫理 ファンタスティックと言う言葉に垣間見た絶望的な気分 エアギターを振り回している エアベースで頭をカチ割る 絶望玉 世界中の元気よりも絶望を掻き集めてしまえばいいんだ 繰り返し飛び散る錆びついた鍵 ---------------------------- [自由詩]不真面目な果実/虹村 凌[2008年1月6日23時46分] 僕の中の男は、二度目の眠りについたまま、まだ微睡んでいる 鈍い渦が沈殿していく カーテンの隙間から差し込む光が 僕の足をゆっくりと 犯す 寝返った筋肉が軋んで いつか誰かとの曖昧なまぐわいを思い出す 絶望の片鱗は確かな角度で貫通して 僕は起き上がれないまま 咽ぶ 記憶の中の太陽は見事なまでに砕け散って 赤いジーンズの女、もう改札口にはたっていない 明け方の邪魔するよ、眠り姫 数々の雑多な現実を忘れたいから この部屋からそいつらを追い出す不真面目を 独り思い出す 独り、思い出している ---------------------------- [自由詩]ロッキンポにつけるクスリ/虹村 凌[2008年1月7日20時19分] ロック吠アグラ、勃ちっぱなしロック、 スタンディングオベーション、 スタンディングマスタベーション、 スタンディングバック、スタバ、 後ろから、貫け、 その、鈍く、光る、 包丁ハサミカッターナイフドスキリで、 骨が軋む程、強く、強く、 抱きしめるように、絞め殺すように、 ロック吠アグラ、 ロッキンポにつけるクスリ、 僕のクスリ、 あれ、僕ロッキンポ? じゃあ死のう笑 (パァーン) ---------------------------- [自由詩]靴/虹村 凌[2008年1月23日7時58分] 電球の切れた部屋は薄暗く 机の上のランプだけが部屋の隅を照らす ゆれる煙草の煙 歪む視界の隅 眠気を切り裂く犬の遠吠えとクラクション 思い出すように右手で銃の形を作る エアギターエア合コンエア拳銃自殺 乾いた空気の中にしみ込む革靴の音 判で押されたように規則正しく近づいて遠ざかる その規則正しさは再び眠気を誘い 船を漕いで行く 霧の海の中を そうだ キスをしよう 魚的な意味で そうすればいいんだきっと 全て上手く行くに違いない 舵を取られて何度も目を覚ます 相変わらずこの部屋は暗い 煙草は全て灰になっている 押入れの向こうで笑う奴がいる 右手の指の形は銃のまま エアギターエア合コンエア拳銃自殺 引き金を引きまくる 何もでない 引き金を引きまくる 何もでない 引き金を引きまくる 舵が折れて目を覚ます 左手の煙草は半分が灰 右手は銃 引き金を引きまくる 窓の向こうの乾いた革靴の足音が止まる ---------------------------- [自由詩]二階のベランダ/虹村 凌[2008年1月27日18時11分] きっといつか小さなアパートの二階のベランダから この世で最も醜い青と橙の冷たいグラデーションを眺めながら 冷え切った珈琲を流し込んで ゆっくりとベッドに沈む とても美しいその一連の仕草は シーツにくっきりと形と体温を残して もう殆ど見えなくなった夕陽にそっと溶け込んでいく 薄紫色の煙と混ざりながら ゆっくりと溶け込んでいく ---------------------------- [自由詩]創書日和「月」/虹村 凌[2008年3月6日17時29分] 明けない夜は無いらしいから 幾つかのあの夜達を積み重ねたら いつか朝を迎える事が出来るだろうか 冷たく張り詰めていた空気が少しだけ緩む 肩の筋肉は若干だが弛緩する あぁそうだ 閉塞とか孤独とか もうそんな話はしなくていいのか そうだ 幾つものくだらない話をしようか 赤い洗面器を頭に乗せた男とか アルパチーノの台詞の発音の事とか 昔は昇竜拳が出せなかった話とか 小さい頃はコーラの泡が飲みたくても飲めなかった話とか でも実際に飲んでみたら別になんて事なかった話とか 親父が何であんなにビールの泡をおいしそうに飲んでたのか そんな下らない話をしようよ 今まで明けなかった夜はないし 来なかった朝も無いんだけど 後悔した夜は沢山あるし 繰り返したくない夜も沢山ある だからそんな夜達を積み重ねて いつか朝を迎える事が出来るだろうか 薄暗い部屋の隅にもかすかに光が差し込む 昨日と変わらない筈の部屋が若干明るむ あぁそうだ 暗闇とか恐怖とか もうそんな話はしなくていいのか そうだ 幾つもの下らない話をしよう ツンデレの話とか 髪の短い女の子が好きだとか 胸の小さな女の子が好きだとか 一人で何でも出来るような女の子が好きだとか そんな話をしようよ 明けない夜は無いらしいから 幾つかの夜を積み重ねて いつか朝を迎えようよ 真っ青な空に白い月が見えるような そんな朝を迎えようよ ---------------------------- [自由詩]不惑化毒素振りまき/虹村 凌[2008年3月11日7時34分] あぁ俺はロッキンポでクリスタルヴァージン乙女でした つける薬は無いけど飲み込む薬ならどこかにあったかも ばぁーン ファックユー あなたが僕の日々の仕合せを祈る100倍以上の願いを込めて 僕はあなたが仕合せになれる事を祈ってるという事実を、笑う 笑う 嗤う 哂う 嘲、笑う 痣、笑う 助けて下さい どうして欲しいってのは見えないけど助けてくれ 助けて もう脳味噌腐って らんらんるー らんらんるー ドナルドがバットマンのジョーカーにしか見えなくなって レジャーのジョーカーはジャックのジョーカーよりも相当危なくて 俺は生まれる時代を間違えたと思ったんだ らんらんるー 立直一発らんらんるっ… ばぁーん ---------------------------- [自由詩]誰固め/虹村 凌[2008年3月11日7時43分] 男爵ディーノの得意技 マウント状態から、相手の顎部を片手で抑え付け 「鼻が邪魔にならないかしら?」と言いながら、 もう片方の手で相手の鼻の穴に指を挿入し、 自らの口で相手の口を押さえる大技。 精神的打撃も与える事が出来るが、 相手によっては反撃に出られる事もある。 嘘に決まってんだろバーカ 遅刻気味で急ぎながら学校へ行く途中 街角で「遅刻遅刻〜」と言いながら フィレオフィッシュを食べながら ローリングクリスタルフラッシュで転がってくる女学生にぶつかり 僕はそれ以降らんらんるー出来なくなってしまいました もう何がしたいのかわかりません ---------------------------- [自由詩]me, chain her, chain/虹村 凌[2008年3月12日9時06分] 一万年と二千年前からは愛していないけれど 「真夜中のカーボーイ」になって マッハ10で君をルパンしにいけたら 大変なものを奪いに行けたら 海老で釣った鯛で 気を引く必要もないのかも知れない もう一度 キスをしよう 一億と二千年後も愛せる筈もないと思うけど 「気狂ひピエロ」になって 銭形される前に君をルパンしにいけたら 大変なものを盗みに行けたら 洗い晒しの髪に 口付けても怒られないですむかも知れない もう一度 いや もう何度でもキスをしよう もちろん 魚的な意味で ---------------------------- (ファイルの終わり)