平瀬たかのり 2014年3月3日15時55分から2016年8月16日19時10分まで ---------------------------- [自由詩]よび覚ますもの/平瀬たかのり[2014年3月3日15時55分]  目を閉じてください  そして  駆けている  馬  を思ってください  西暦一九八三年  いちばん後ろから  ぜんぶ抜き去っていく  黒鹿毛を見た人は  叫んだのです  太古初めて  うま、を見た  ひと、と同じ声で  四肢は張りつめ  尻肉は盛り上がり  頸は垂直に空へ勃ち  いのちをまるごとさらけ出して  走る!  おお、走っている!  目を閉じましたか?  そして  駆けている  馬  を思いましたか?  そいつが  ミスターシービーです   (ミスターシービー) ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]完成させよう。/平瀬たかのり[2014年3月30日19時51分] 昨年春から、実在したサラブレッド、レースをテーマにした、競馬ライターかなざわいっせい氏の「ファイト!〜麗しの名馬、愛しの馬券」というショートショート集を、オリジナル作も混ぜながら、連作作品としてシナリオ化しています。 全20編中、14編ほどをシナリオ化する予定で、現在7編目の途中です。 シナリオ学校に通い専門的な勉強をしているわけでもなく、ナカナカままならない時間の中、書き続けるというのはやはりしんどいところもありまして。「これ書いてどうなるねん?」てな気持ちと闘う俺、後厄も終わってるんですけど。俺の明日はどっちだ。 昨年は「日本映画専門チャンネル」で放送された作品を中心に邦画200本近く鑑賞することができました。その中で気付いたのは、「ワタシが素晴らしいと思う映画(きっとドラマも)はどんなジャンルの作品でも『人間のおもしろかなしさ、かなしきおもしろさ、がきちんと描かれているもの、伝わってくるもの』だ」ということでした。そんなシナリオを原作の力、実際のお馬ちゃんたちの力を借りて、書きたいと、おこがましくも強く思っています。 ナントカ年内めどに予定どおり書き上げ、原作者のかなざわさんにお読みいただくことはできないだろうかと考えてます。 それでもやはり暗夜行路の徒手空拳、ダンスインザダーク(そんな名前のお馬もいたの)の毎日。折れそうになるココロのキックとして、場違いもわきまえず、恥ずかしながら開陳させていただきました。平にご容赦くださいませ。 一年後の今日、どうなっているか、どうなったか、ご報告したいと勝手ながら思っております。 頑張って完成させます。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]杉本清名実況十選/平瀬たかのり[2014年4月15日20時56分]  元関西テレビアナウンサー、杉本清氏の競馬実況を集めた愛読書『三冠へ向かって視界よし』(日本文芸社)から、特に好きな実況を十選し、ひとことふたこと述べさせていただきます。ワタシの蛇足はどっちでもいいので、「ターフの詩人」とも呼ばれる、氏の珠玉とも言うべき名実況をご紹介いたしますので、お時間ゆるされますれば、ぜひこの機会にお楽しみくださいませ。 ・「見てくれ、この脚、見てくれ、この脚、これが関西の期待、テンポイントだ!」                      (昭和50年 第27回阪神三歳ステークス)  中央競馬は関東と関西に分かれていて、当時は圧倒的に関東馬優勢の時代だったといいます。そんな時代に現れたのがデビュー戦を驚異のタイム、二戦目を9馬身差つけて勝ったテンポイント。だからこそ三戦目のこのレースで「関西の期待」という言葉が氏の口から出たのでしょう。  「見てくれ、この脚」叫びにも似たこの言葉は実況の域を越え、関西にいる競馬者が関東に叩きつけた挑戦状の意味も込められていたように思います。 ・「大地が、大地が弾んでミスターシービーだ」                     (昭和58年 第44回菊花賞)  個人的に氏の実況の中で最も好きなのが、ミスターシービーが三冠を達成した時のこれ。  三冠レースとは三歳馬(当時表記は四歳)のみが出走できる、皐月賞、ダービー、菊花賞の「クラシックレース」のこと。三冠達成はシンザン以来実に19年ぶりの快挙だったのです。  「大地を弾ませ」ではなく「大地が弾んで」と表現したところに凄みを感じます。偉業の達成は競馬史の必然だったかのような。  ちなみに「皐月賞は速い馬が勝ち、ダービーは運のある馬が勝ち、菊花賞は強い馬が勝つ」と言われています。   ・「雪はやんだ! フレッシュボイス一着!」                     (昭和61年 第33回毎日杯)   最高傑作といってもいいフレーズ。   レースが始まるまでは雪がチラチラ降っていたとのこと。また勝負が決した瞬間に本当に雪がやんでいたのか定かではありません。けれども、しかし。   強烈な追い込みで勝った馬の疾走を「雪はやんだ!」の一言で表してしまう恐るべき表現の瞬発力。そして続く「フレッシュボイス」という馬名の清新さが与えてくれる心地よさ。きっとその時雪は降っていたとしてもやんでいたのです。  よければ一度口してみてください。元気になれます(笑) ・「菊の季節に桜が満開。菊の季節に桜! サクラスターオーです!」                     (昭和62年 第48回菊花賞)  比較的有名なこのフレーズ。  サクラスターオーという馬は皐月賞を勝ったものの、故障によりダービーへの出走は叶いませんでした。つまりこの「菊の季節に桜が満開」というフレーズは馬名を言っているだけでなく「皐月賞(桜の季節)を勝った馬が半年ぶりに出走した菊花賞に勝った」ということをも表現しているのです。  勝利馬の脚色が良かったという4コーナーで思いついたという。菊花賞に「サクラ」の馬が出走するたび、これからも語り継がれていくことと思います。 ・「興奮するお客さん、真っ白なスタンド。あなたの、そしてわたしの夢が走っています」                     (昭和63年 第29回宝塚記念)  宝塚記念は、暮れの有馬記念と同じくファン投票によって出走馬が決まるいわゆる「グランプリレース」。だから「あなたの、そしてわたしの夢」が走るのです。  「真っ白なスタンド」というのは夏服の観客が多いから。それとこのレースに関しては一番人気のタマモクロスという馬が芦毛だったことをかけてのこと。  ちょっとケレン味もあってあざとさも感じたりするのだけれど、やっぱり夏、冬のグランプリレースを表現するのに、これ以上の言葉はないようにも思います。   ・「一週間遅れの18番です、一週間遅れの18番!」                      (平成2年 第15回エリザベス女王杯)  なぜ「一週間遅れの18番」かというと、この前の週にあった菊花賞で一番人気のメジロライアンに乗った横山典弘騎手が同じ馬番18番で負けてるわけですね。で、このレースで勝った横山騎手騎乗のキョウエイタップも馬番18番。その事を瞬時に思いだし生まれたのがこのフレーズ。騎手が雪辱を果たしたことを、これ以上ないほど端的かつ的確に言い表しています。 ・「負けるなマックイーン、負けるなトウカイテイオー」                      (平成4年 第105回天皇賞・春)  このレース前、トウカイテイオーに乗る岡部騎手が「地の果てまで駆ける馬」と言えば、メジロマックイーンに乗る武騎手が「僕の馬は天まで駆ける」とやり返し、春の天皇盾をかけた一騎打ちムードは日ごと高まっていました。(この頃のことはよく覚えています)。  実際のレースは4コーナーでテイオーの脚色が鈍り、最後の直線での一騎打ちとはなりませんでしたが、主役二頭を引き立たせようとする氏のアナウンサーという立場を越えた、演出者、かつファンの代弁者としての「どっちも負けるな」は微笑ましくも胸を打つがあります。 ・「うわ〜、差が開いた開いた。これは強いわ強い。差が開いた、開いた。ぐんぐんぐんぐんゴールへ向かう。トウショウボーイ、拍手がわく、拍手がわく、これは大楽勝、トウショウボーイ1着!」                       (昭和51年 第24回神戸新聞杯)  トウショウボーイが「天馬」の異名を持つ名馬だったからこそ「貴公子」テンポイントとの競馬史上に残り続けるライバル物語が生まれました。これもぜひ口にしていただきたいフレーズ。伸びやかにゴールへ向かう馬、そして大拍手が聞こえてきます。  ちなみにトウショウボーイの「トウショウ」は冠号で牧場名「藤正」のカタカナ表記。でもやはり個人的には「闘将」の文字を当て「闘将少年」と訳したい。 ・「テスコガビー独走か、テスコガビー独走か。ぐんぐんぐんぐん差が開く、差が開く。後ろからはなーんにも来ない、後ろからはなーんにも来ない、後ろからはなーんにも来ない」                       (昭和50年 第35回 桜花賞)  勝利馬が二着に10馬身以上(!)の差をつければいくら名実況者としても「言うことはなくなる」と苦笑せざるを得ないでしょう。でもそれを逆手にとって「後ろからはなーんにも来ない」と三回繰り返すことで、強さのリアルが見事に表現されました。「歴代最強牝馬はテスコガビー」というオールドファンがいまだに存在するのも、この実況が一役買っている気がします。  ・「テンポイントだ、テンポイントだ、テンポイント! 中山の直線を、中山の直線を、流星が走りました。テンポイントです。しかし、さすがにトウショウボーイも強かった!」                      (昭和52年 第22回有馬記念)  今後競馬がどれほど続き、レースがどれほど繰り返されようと、この有馬記念を越える「競走」が現出することはない、そう断言できるほどの永遠不滅のマッチレース。関西テレビのアナウンサー、杉本氏が中山競馬場で行われるこのレースを実況することになったのは、テンポイントの海外遠征に備えてのことだったといいます。これもやはり「縁」というものでしょうか。けれど翌年「流星の貴公子」は雄飛を叶えることなく、逝ってしまいます。  流星とは、馬の顔面に流れる白毛のこと。それを愛馬の疾走に重ね合わせることにより、その栄冠をいっそう際立たせた言葉の魔術。  そして最後に「天馬」トウショウボーイを讃えたことにより、このレースが「競走」であったことを満天下に知らしめることにもなりました。  不世出の競馬に、一世一代の実況。  日本の競馬にはテンポイントがいた。トウショウボーイがいた。そして杉本清がいた。  最後に元祖競馬怪人、寺山修司が著作「旅路の果て」の中で、トウショウボーイとテンポイントについて述べた喩えを転記し、稿を終わらせていただきます。  トウショウボーイ     テンポイント   叙事詩--------------------抒情詩   海------------------------川   祖国的な理性--------------望郷的な感情   漢字----------------------ひらがな   レスラー的肉体美----------ボクサー的肉体美    橋または鉄骨--------------筏またはボート    影なき男------------------男なき影    防雪林--------------------青麦畑 お読みいただきありがとうございました。       ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]ボクの名画座〜映画あ〜じゃこ〜じゃ〜第一館/平瀬たかのり[2014年11月13日10時11分]  『ポエム座』三連投以上出来ないのね…ならば場違いは承知の助、このようなカタチで 鑑賞映画の感想などを、詩を書く皆様にお読みいただければと思い立った次第。  月単位で区切って、作品ごとに加筆していこうと思っております。大きなネタバレは基本なしってことで。  フェイバリット作、感銘を受けた作品、『オレデミー賞』作についてウダウダ書いていきたいと思っていますが、いずれ「責任者でてこいっ!」と叫びたくなる『マイ・ラズベリー賞』受賞作なんかも。  コメントとかいただけたらもちろん嬉しおますが、返信遅れちゃうことがあると思いますので最初に謝っておきます、ごめんちゃい。でも、紹介作についてあれやこれやお話できたらいいなぁ、とも思っております。  てなわけでどんなペースになるのかいつまで続くのか全く未定、館主映画そんなに観てるわけじゃないけど「ボクの名画座」見切り発車で勝手に開演! 「ブ〜〜〜〜〜ッ!!」 ?『竜二』(1983)〈監督=川島透 脚本=鈴木明夫(金子正次)>    記念すべき一作目は伝説の俳優、金子正次がシナリオを書き主役を演じ遺作となった『竜二』とさせていただきます。  ヤクザ渡世に疲れた男がカタギになろうとするが上手くいかず、やはりヤクザに戻る、ただそれだけの話し。ただそれだけの話しだからこそ、主人公がきらめき脇役が生きた。もちろん金子正次の圧倒的魅力と存在感を忘れてはならない。文字通り命を削りながら(公開初日に入院、十日もしないうちに亡くなる)素晴らしい「主演映画」を完成させた金子の恐るべき執念。  傑作かつ佳作、の両面を持つ稀有な一本だと思う。生きていればどんな役者になって、どんな映画に出ていただろう。  ボクはこれからもボチボチと映画を観るつもりでいるけれど、この作品がMYベスト3の一つから絶対にはずれることはないでしょう。 ?『遠雷』(1981) 〈監督=根岸吉太郎 脚本=荒井晴彦>    永島敏行、石田えりの演技はこの時点でそう上手ではない。どちらかっていうと下手かもしれない。んがしかし、だからこそ立松和平原作の泥臭い作品世界に見事ハマった。  一瞬ドキュメンタリー観てるみたいに感じられる瞬間すらある。こんな二人、当時の栃木に絶対ウヨウヨいてたと思う(笑)。  ダメ親父のケーシー高峰、その愛人の藤田弓子、奔放な人妻の横山リエ、そのちょっと壊れた夫の蟹江敬三(カニエ感全開!)、破滅に向かう友人のジョニー大倉……お見事というより他ないキャスティング。過不足なくキレとコクのある荒井晴彦のシナリオ。ロマンポルノと言っても違和感ない根岸吉太郎の大胆な演出。  すばらしい原作を脚本化、映画化するっていうのは、こういうことなんだよっ!  タイトルにもなってる遠雷鳴るラストシーンも印象的だけど、その前の結婚式で永島、石田が『わたしの青い鳥』をデュエットする場面は邦画史上に残る大傑作シーンだと思います。 ?『櫻の園』(1990) 〈監督=中原俊 脚本=じんのひろあき〉    原作は吉田秋生の漫画。読んだことあるんですが、この作品が女子高生の間でこれからも読み継がれていくことを願うわ、おっちゃんは。そしてもちろんこの映画においてもそれは然り。  まず物語の中の時間と鑑賞時間がほぼ変わらないっていう構成がすばらしい。観てる自分もあの演劇部の中の一人になってるような気持ちでずっと観ることができるんですよね。  つみきみほの女豹の子供のようなかわいらしさ! そして中島ひろ子と白島靖代のスローモーション記念撮影シーン! 観て!女の子観て!全然古びてないから観て!  あえてひっかかった点を記すなら、文化祭公演本番当日ってのは、もう少し全体にピリピリした雰囲気があるんじゃないかと。ちょっと部員リラックスしすぎじゃなかろうか。ここは評価の分かれるところですね。  でもエバーグリーン的な青春映画として、今後も残り続けていくことは間違いないでしょう。ていうか残らなきゃ嘘だ。白島靖代、つみきみほ、もうあんまりテレビで見ないけど、開店休業状態なのかなあ。惜しいよなあ。大人になったあなたたちを観たいよ。 ?『ソナチネ』(1993) <監督、脚本=北野武>  この作品、公開当時劇場で観てるんです。客席ものの見事にガラッガラだったのと、観終わった後、衝撃にボー然としつつ京都市街歩いてたの覚えてます。  シナリオをほとんど使わないアドリブ演出で撮影が進んでいったそうなのだけど、そのくせシナリオがめちゃくちゃしっかりしてるっていう北野演出のもの凄さ。最初から最後まで飽きさせない。  去年北野映画はけっこう観ることができたのだけど、ボクはこれがいっとういいんじゃないかと思うなあ。ベネチアで賞取った『HANA‐BI』なんかよりよっぽどいい。  ストーリーそのものは単純なのですね。身内に嵌められて沖縄にいったヤクザたちが抗争に巻き込まれ次々殺されていって、最後主人公が復讐してテメーも……っていうただそれだけの話。  ただそれだけの話が、各キャラが立ちまくってるのと、数々の印象的な場面により彩られ「特別な話」になってるわけです。でもいい映画って基本的にそういうものなんですよね、きっと。  ヒロインの国舞亜矢もよかったなあ。この人も全然見ないなあ。惜しいわぁ。  そして殺し屋役のチャンバラトリオの南方師匠!これがもう最高の配役! 砂浜でハイビスカスの花をパーっと撒きあげるシーンは鳥肌もの! この映画は「世界のキタノ」の映画であると同時に南方師匠の映画であるとも思います。  なんで客入らなかったのだろうか。公開当時、難解っていう意見が大勢しめてた覚えがあるのだけど、全然そんなことなくって、良質のエンターテインメントとして十分楽しめる作品だと思います。 ?『コミック雑誌なんかいらない!』(1986) 〈監督=滝田洋二郎 脚本=内田裕也、高木功>    正直内田裕也って嫌いです。変人きどりの芸能界に巣くうヌエみたいな男だと思う。  ただこの作品の彼は素晴らしい。下手くそだけど素晴らしい。言うなれば「味」まみれ。突撃りポーター、キナメリは彼以外考えられない。中学生のときにテレビで観た『十回のモスキート』の彼もいまだに強烈な印象を残している。なぜ映画俳優としてそのまま進めなかったのか。  内田が書いたというシナリオはダメ。起承転結がグダグダ。まあ当時実際に起こった事件や社会現象を羅列していく構成になってるから、仕方ないといえば仕方ないんだけど。ただそのダメさを超える力と熱が本作にはある。  ラスト、豊田商事の永野会長襲撃事件をモデルにした場面の、ビートたけしの鬼気迫る演技を観るだけでも鑑賞の価値あり。(あれ、中坊のときだったんだよなぁ。犯人がドアバンバンとパイプイスでぶっ叩いて、窓から部屋に侵入するところとか普通にニュースで流れててねぇ。血まみれで犯人の二人が出てきてねぇ……子供心にホント怖かったの覚えてる)  公開からずいぶんたった今でも、いや、メディアリテラシーが問われてる今だからこそ、特に若い方々にはゼヒ観ていただきたい作品。 ?『TATTOO〈刺青〉あり』(1982) 〈監督=高橋伴明 脚本=高橋伴明、西岡琢也>  実際にあった三菱銀行北畠支店強盗殺人事件の犯人梅川昭美をモデルとし、その事件発生までを描いた作品。  この陰惨な立てこもり事件、ボクが小学校一年の時に起こったもので、閉じられた銀行シャッターが延々と映され続けるという異様極まりないテレビ中継の様、そして隠し撮りされた立てこもり犯、ウメカワのシルクハットにサングラスで不敵に笑う新聞掲載写真は、幼心に強烈なインパクトを与えました。犯罪報道の最初の記憶です。  語弊があるかもしれないけれど、アウトサイダーに光を当てることにより、そこから見えてくるものを探ろうとしていた、そんな時代が邦画界にあったのではないでしょうか。  そして関根恵子。「男をアカンようにする」本作ヒロインは彼女にしかできない。俗っぽい美人さに引き込まれて観るんだけど、観終わったあとは聖なる清らかさを残す、そんな感じでしょうか。この聖俗混然一体感は彼女にしか出せないものだと思う。 ボクの中では邦画界のセックスシンボルは彼女なんですねえ。 ?『瀬戸内少年野球団』(1984) 〈監督=篠田正浩:脚本=田村孟>  これはですね、個人的な作品評価としてとても高いってわけじゃないんですけどね。話しとっちらかってる感もあるし、もうちょっと戦後の野球を濃やかに描いてほしかったって思いもあったりするんですけどね。あ、でも十分素敵な作品なんですよ。  それより何より惚れちゃったんですよね、美少女ヒロイン、波多野武女(はたのむめ)を演じた同級生の佐倉しおりちゃんに。でね、白ブラウスの駒子先生は夏目雅子様なわけでしてね。もう小6のボクは「何やこの気持ちは…どうしたらええんや…」てなもんですよ。あの切ない気持ち、今でも抱えていますよ。これも映画の力なんだろなあ。  雅子様には永遠に逢えなくて、しおり嬢もずいぶん前に結婚引退してしまって……  永遠の「胸キュン映画」っす。 ?『BU・SU』(1987) 〈監督=市川準:脚本=内館牧子>  こういう陰影のある青春映画が今の時代もっと作られなくっちゃならないと思う。  クライマックス、文化祭の「八百屋お七」には驚いたなあ。ネタバレになるから書かないけれど、あれですよ。あの痛みを描いてこその青春映画なのですよ。  田舎から独り出てきて、芸者修行しながら高校通ってるっていう主人公、麦子の設定もいいんですよねぇ。また富田靖子のちょっと暗い影がよく合ってるんだ 麦子に。  もっと若い時に観ておきたかった一本。ボクが女の子だったら10点満点、生涯の一編になってたかもしれんな……ってなんだそれ(笑)。 ?『台風クラブ』(1985) 〈監督=相米慎二:脚本加藤祐司>  好き嫌いがはっきり分かれる作品かもしれません。 「なんじゃこりゃ?」な場面もけっこう出てくるし、終わらせ方に納得いきかねるところもあったりする。それでもこれは80年代邦画界に大きな爪痕を残す名画。  台風襲撃直前の学校に取り残された少年少女たち、そして街をさまよう一人の少女…ってこの設定が素晴らしいと思うのです。そんな状況に置かれたら、そりゃこの年代の抱える危うさ、もどかしさ、やりきれなさ、全開するってものですわ。やっぱり映画って最初の設定がすごく大事だと思います。  あるいは「映像詩」と呼んでもいいのかもしれないですね、この作品は。解釈は各々に委ねられてる。でもこの「説明しようのなさ」こそ監督が撮りたかったものなのかもしれないなあ。 だって青春なんて誰にも説明できないもんな。  観賞会開いて、一晩中語り明かしたい、そんな作品です。  バービーボーイズの『暗闇でダンス』で開幕!!! ?『麻雀放浪記』(1984) <監督=和田誠、脚本=和田誠、澤井信一郎>    麻雀を知らなくても十分楽しめる娯楽作。実際ボクは麻雀知りません。でもこの作品は本当に面白い。  特定のジャンルを描いて、門外漢を納得させ、楽しませることができてるってのは、結局人間がきちんと描けてるってことなんだなあと思う。  阿佐田哲也の原作も読んだことがありますが、見事にその世界観を壊さず生かしてたと思います。  坊や哲、ドサ健、女衒の達、上州虎、出目徳…出てくるたちキャラの立ちっぷりたらない。誰もが心から楽しみながら役になりきってるのが伝わってくるのです。特に出目徳を演じた高品格さんのうらぶれた老博打打ちの演技はこの作品を支える大きな魅力の一つと言えましょう。   ちょっとラストの勝負に比重置きすぎの感がなきにしもあらずだけれど、過不足のない省略効いたシナリオ、あざとくないモノクロの画面、昭和邦画史に残る娯楽映画、かつ18、19の少年がいろんな痛みを覚えながら少しずつ大人になっていく青春映画の傑作でもあります。  そして加賀まり子、大竹しのぶ、さすが! ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]ボクの名画座〜映画あ〜じゃこ〜じゃ〜第二館/平瀬たかのり[2014年11月16日16時04分] ★第一館での紹介作 『竜二』『遠雷』『櫻の園』『ソナチネ』『コミック雑誌なんかいらない!』 『TATTOO〈刺青〉あり』『瀬戸内少年野球団』『BU・SU』『麻雀放浪記』  第一館はこれでもかというくらい私情でまくりで(いや、今後もその方向性なんですが)ちょっと年代的に70、80年代のもの中心になってしまったので、今回はなるべく近年のものをご紹介させていただきましょう。 ?『歓待』(2010) 〈監督、脚本=深田晃司>  「招かれざる客」ストーリー。父の知人だったという、うさんくささ全開の男が、なし崩し的に家に棲みついてしまい、そのうち外国人の嫁さんもなし崩し的に同居しはじめ、それまで平穏を保っていた一つの家族が、各々がかかえる秘密を男に知られることにより徐々に崩壊していく。男がこの家族に入り込んだ目的とは果して……というようなお話。  特筆したいのは男に入り込まれる家の後妻役で出演している杉野希妃。本作のプロデューサーもやっており、映画監督でもある彼女。経歴みたらまぁスゴイ。こういう女性を「才色兼備」っていうのだろうなあ。  まだ30歳。若くして才を認められ世に出た女性ってのは、どうしても周囲がチヤホヤするだろうから(女優さんなんてなおのこと)天狗にならず、これからもいい作品を世に送り出してほしいなあと、凡人のボクなんかは思っちゃいます。  まぁでもプロデューサーというのは各方面に頭下げるのも仕事のうちってところもあるのだろうから、きっと大丈夫でしょう。監督、杉野希妃の作品もぜひ観てみたいです。 ?『接吻』(2008) 〈監督=万田邦敏、脚本=万田邦敏、万田珠実>  凶悪殺人事件の死刑囚、死刑囚を愛してしまい獄中結婚までする女、女に惹かれていく死刑囚の弁護人。 「究極の愛」などという惹句は映画宣伝文句としてありがちですが、確かにこれは平凡な地平からは遠いところにあるラブストーリーでしょう。でも、主人公の女性にとってこの死刑囚を愛することは「普通」のことだった。彼女の「普通」に対して違和と共鳴を繰り返しながら物語にどんどん引き込まれていきます。  そして「えっ!?」となるラスト。たぶん作り手も演じ手も答えが分かっていないラスト。あのラストの自分なりの答えを見つけるために、近々再鑑賞しようと思っています。  しかし主演の小池栄子。とんでもないことになってます。『八日目の蝉』観た時に「あれ、こんなに演技上手かったんだ」と思ったんだけど、上手いなんてものじゃない。目が完全にイってる場面も多々あった。役に憑依しきってたんだと思う。これからの邦画界を背負って立つ女優さんになるのではないでしょうか。 ?『海炭市叙景』(2010) 〈監督=熊切和嘉、脚本=宇治田隆史>  本当に素晴らしい作品。オムニバス形式でストーリーが進んでいき、そのすべてが静謐で真摯に描かれる。  生きるということはこんなにも切なく辛く、時に酷い。けれど人は日々の地平をのたうちまわりながら歩んでいかなくてはならない。声高にメッセージを伝えているわけではない。それでもこの作品からは「それでも生きろ」の声が確かに聞こえてくる。  何か一つカラッと明るいエピソードがあってもよかったのではとも思うが、もしそうしていたらそれが傷にになっている可能性もある。  加瀬亮、竹原ピストル、小林薫、南果歩…演技陣もみな素晴らしい。ことに谷村美月。「映画女優」と呼ぶにふさわしい実力と存在感は、この年代の女優さんの中では抜きんでていると改めて思った。  鑑賞したことを誇りにすら思えた、これから何度も観返すだろう作品。 ?『おっぱいバレー』(2009) <監督=羽住英一郎、脚本=岡田惠和>  とっても爽やかな青春映画。  最初ちょっとザクザク話が進み過ぎて「岡田さんの脚本好きなんだけど、これは漫画かなぁ……」と思うんだけど、そこを救い作品世界に引きずり込んでくれるのがのがすばらしい挿入歌の数々。いいですか、全曲いきますよ〜。 ピンクレディー「渚のシンドバッド」 チューリップ「夢中さ君に」 荒井由実「ルージュの伝言」 矢沢永吉「ウィスキー・コーク」 浜田省吾「風を感じて」 甲斐バンド「HERO(ヒーローになる時、それは今)」 尾崎亜美「オリビアを聴きながら inst.」 荒井由実「卒業写真 inst.」 ツイスト「燃えろいい女」 永井龍雲「道標ない旅」 キャンディーズ「微笑がえし」 (主題歌はフィンガー5「個人授業」のカバー)  どう、どうよこれ! もうこの曲のラインナップだけでおっちゃんおばちゃん血沸き肉踊るってなもんですわ! 居酒屋の場面で「HERO」流れた時なんか「うぉ〜!」って叫んだもんな(笑)。こんなに挿入歌が効いてる作品観たのって初めてかも。  設定を1979年にしたの、ホント大正解。でもって物語が進むうちに岡田さんの脚本もきっちり笑わせて泣かせてくれて、満足満足。  みんなで観て、もっかい観直して、一時停止くり返して、ニヤニヤ笑いながら語り合いたくなる、そんな作品に仕上がってると思います。  おっぱーい、ばんざーい! ?『さんかく』(2010) 〈監督、脚本=吉田恵輔>  鑑賞前は「あ〜ラブコメかぁ…」って全然期待してなかったけど、これ、面白かったんですよ。やはり映画鑑賞において先入観持つのはは禁物です。  高岡蒼甫と田畑智子が恋人なんですけど、これがまぁとにかくバカップル!   かたやいい年こいて車の改造に400万かけるバカ。かたや友人のマルチ商法に見事にハメられてるバカ。もう二人ともホントにバカ。で、そのバカ二人の間に年の離れたロリロリむっちんな天然バカの妹が同居し始めて、いずれのバカにも拍車がかかってさぁ大変(笑)。  でもねぇ、そのうち笑えなくなってくるんですよねぇ。愛しく感じてきちゃうのですよ、この三人が。特に高岡君。あなたが演じた本作でのおバカっぷりは、本当にお見事でした。 ?『川の底からこんにちは』(2010) 〈監督、脚本=石井裕也>  これはけっこう鑑賞されてる方多いかも。  「どんなジャンルの作品でも、映画は人間のおもしろ悲しさ、悲しきおもしろさをきちんと描かなくてはいけない」っていう個人的な思いが強くありまして、そういう意味ではこの作品はまさにホンモノの映画なんです。  全世界の諦め、ダメダメ、投げやり、捨て鉢を凝縮して煮詰めたような主人公が開き直って突き進んでいく様はまさに『人間賛歌』と呼ぶにふさわしい。そして主人公演じる満島ひかり、本当にすばらしい。  新作『バンクーバーの朝日』も大期待の石井裕也監督、83年生まれ。ホントに才能ある監督だと思うのですが、この作品に代表される彼の作品の「目線の低さ」はいったいどこからくるものか。その理由として、これは全く推測なんだけど、卒業制作『剥き出しにっぽん』を撮るために、友人四人と働きまくってみんなで400万円稼いだそうなんですね。以降も自主製作映画をコツコツ作り続けてきた。その時きっとキツイアルバイトもたくさんして、額に汗して働いて働いて頑張ってる人間にたくさん触れたんじゃないかと思うんです。その労働体験が監督としての血肉、核になってるんじゃないかなぁ、と。これはホント、全くの憶測、推測なんですけども。  この映画のコピーは「人生…もうがんばるしかない」。いや、ほんまもう「がんばるしかない」ねんな、人生って。 素直にそう思わせてくれるんですよこの映画。  これ公開当時劇場で観た人はきっと大いに泣いて笑ってね、「あぁ、ボクの、ワタシの人生もこんなことの繰り返しやなぁ。けど明日からもがんばるしかしかたないやんけっ!」って胸張って帰路についたんじゃないかなあ。  まだこの映画のホームページ、公開されています。そこで『木村水産・社歌』が聞けます。聞いてください、笑ってください、元気になってください。そしてできればこの映画、ぜひご覧になってください。 ?『キューティーハニー』(2004) 〈監督=庵野秀明 脚本=庵野秀明、高橋留美>  しょうもないリメイクだったら三十分以内に観るのやめ! と心してかかって観たんだけど……  おいおいおい、おもしろいやないかい、これ!  作品を敬愛敬慕しながら、原作の設定借りたオリジナルになってる。オリジナルだから、原作、アニメのハニーのイメージとは違うんだけど、サトエリちゃんで全然かまわないんだな。  効果的に使われる実写とアニメを融合させた「ハニメーション」も生きてて、出てる人みんなが楽しんでかぶりものの特撮やってるのが伝わってきて、観てるこっちも楽しくなる。意外と多いんですよね、演じてる側だけが楽しんでて観てるこっちはほったらかしっていうこの手の作品。  興業収入振るわなくて、製作会社潰れるきっかけにもなったそうなんだけど、なんでかなぁ。でも秀逸な娯楽作品として今から評価高まっていくと思います。  例えばですね、何の予定もない連休の初日にね、休みなのに早く起きちゃってね、家の用事とかパパッとすませちゃってね、ちょっと早めのお昼ごは〜ん。満腹満腹。ああ、もう早いけどお昼寝しちゃおう。で、目を覚ましてもまだ午後一時前。時間はまだまだたっぷし。明日も休みだうふふのふ。さてこれから何しましょう。あ、そうだ映画観よう!何観ようかなぁ……てな気分の時に観るのが最高の鑑賞のしかた(笑)。でもそういう「幸せな作品」ってね、映画の本質ついたとっても優れた作品だと思うのです。  この作品からもう10年経ってるんですね。最近のリメイク作はほとんど観てないのですが、何本か観てこの作品と比べてみたいですね。 ?『木曜組曲』(2002) 〈監督=篠原哲雄、脚本=大森寿美男>  鈴木京香、原田美枝子、富田靖子、西田尚美。はいっ、全員好きな女優さんですっ! 「映画は女優で観ろ」って評論家の秋本鉄次さんが言ってるんだけど、ボクももろ手を挙げてその意見に賛成。彼女たちの女盛りの美しさを鑑賞するだけでも観る価値あり。その上浅岡ルリ子と加藤登紀子がビシッと締めてて見応えもたっぷり。 「彼女はなぜ死んだのか?」を五人が推理し、互いに疑心暗鬼になっていきながら、真相を探っていく、その三日間の出来事を描いているストーリーなのですが、こんなふうに作品の中で経過する時間は短いほうが、その世界に入り込めるように感じています。「三年後」とか字幕で出されるとどうしても「その間のコイツの人生の中にドラマはなかったんかいな」とツッコミいれたくなっちゃうわけで。  ただ、本作でのパスタソースの場面。あそこ、分からないのですよねえ。「じゃあ本気の殺意があったってこと?」になってしまうし…ネタバレになるのでこれ以上は書きませんが、これ読んで鑑賞されて分かった方おられましたら、あの場面の真相、ご教授くださいませ。 ?『リンダリンダリンダ』(2005) 〈監督=山下敦弘、脚本=山下敦弘、向井康介、宮下和雅子)  ちょっと最後昇華されすぎなんですよね。同じ文化祭のステージがクライマックスの作品でも、ひねくれ者のボクはやっぱり『BU・SU』のあのやりきれなさを支持したいんだな。急ごしらえのバンドがそんな上手くなるもんか? って思ったりもする。  でもやっぱりこの作品は近年の音楽映画、青春映画としては出色の出来だと思うんですね。ブルーハーツを女子高生に歌わせるっていうのがいいんだよな。でもって、ボーカルは韓国からの留学生。「えっ、そう来ます?」っていうのが基本設定として二つあることでグイグイっと世界に引き込まれちゃう。  トイレの手洗いでのね、香椎由宇とぺ・ドゥナのシーンがいいんですよ。「ああ、そうだよな。いろいろあるけど、そう在りたいよな」って思う名場面なんです。 ?『かぞくのくに』(2012) 〈監督、脚本=ヤン・ヨンヒ>  気になっててずっと観たかった作品。  25年ぶりに兄が「あの国」から帰ってきた。脳に病を抱えて、監視役の男と共に。その時家族は、友人は……  期待に違わず素晴らしく、大きな余韻と痛みを残す作品でした。  ネタバレになるので多くは書きませんが、主人公の兄といっしょにに一時帰国する女性がいるのですが、その設定が設定だけに、本編ストーリー以上の悲しい顛末になってしまっていて…辛かった。彼女を全くと言っていいほど描かなかったのは、「敢えて」なのかなぁ。  深く、重い一本。かぞくで、ひとりで、ぜひ。 ---------------------------- [自由詩]吉田茂のラーメン/平瀬たかのり[2014年11月21日13時02分]  本日はお待ちかねの映画館である  空見上げれば花曇り  いかにも上天気  これぞ絶好のシネマ日和というもの  イッツァビューティフルディ  おなかはペコちゃん、まずは腹ごしらえっと  こういうときは愚図愚図考えていてはダメよダメなのよ  えいやっ、ラーメン屋へダイブ!  うわっ、途端に目に入る  我が店を紹介する記事! 記事! 記事! 記事!  壁にペタペタ新聞タウン誌週刊誌  ありゃまあご亭主賑やかね  とりあえずさ  「いらっしゃいませ」はもっと大きな声で言ってくれない?  え、もしかしてボク今睨まれてる?  あ、何か頼まなくっちゃね  じゃあね塩ラーメン  ていうかもう何だっていいわ  昼下がりのトぺ・スイシーダ  ご亭主は何やら難しい顔をしてズンドウ鍋を見つめておられる  ズンドウ鍋はそうにも難しい顔をして見つめるべきものなのか  難しいお顔にひとつ訊ねたい欲求  ご亭主  ペタペタ壁に記事を貼りつけるとき  はたして正露丸をかみ砕いたようなその顔は  いかようになるのでありますか?  あなたの肥大した自意識を  壁に貼りつける、その時  ボクは思い出す  阪急梅田駅高架下の吉田茂のラーメンを  吉田茂が食べたという伝説のラーメン  というわけではもちろんない  衛生管理者の札にその名が書かれていたのだ  ということはすなわち店主は吉田茂だったわけだ  「ニイちゃん、吉田茂っていうんか?」  「ええ、はい」  「エエ名前やなあ」  「子供の頃からからかわれてばっかりです、ははは」  「エエ名前やがな、親に感謝せなアカンで」  「ははは」  「よっしゃ、そしたら味噌ラーメン」  「はい、味噌ラーメン」  「ニイちゃんのラーメン食べたらワシもいまから総理大臣になれるかな」  「はははは」  なんてやりとりはあったのかなかったのか  ご亭主は正露丸顔のまま  麺の湯切りを始めるバッサ、バッサ  まるで歌舞伎の型のようでありますな  そのままロッポウ踏んでどっか行ってしまうんじゃねぇか  いよっ、ニッポンイチ!  梅田高架下もずいぶん変わってしまったと聞く  吉田茂もいなくなって彼のラーメン屋もなくなってしまっただろう  屋号はハナから覚えていない  カウンター五席ほどの店だった  はっきりと小汚い店だった  電車の音がうるさかった  そんなに足しげく通ったわけではない  吉田茂は今のボクより若かった気がする  何もかもがもうおぼろげであいまいだ  吉田茂のラーメンがとびきり旨かったこと以外は  今日の映画よ  素晴らしいものであれ  塩ラーメンは  正露丸の味がしなければそれでいい ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]ボクの名画座-映画あ〜じゃこ〜じゃ-第三館/平瀬たかのり[2014年11月23日23時00分] 第二館での紹介作 『歓待』『接吻』『海炭市叙景』『おっぱいバレー』『さんかく』 『川の底からこんにちは』『キューティーハニー』『木曜組曲』 『リンダリンダリンダ』『かぞくのくに』  映画を観るボクの中には女の子が一人住んでいましてね……というわけで(どういうわけだ)、第三館目は「女の子バンザイ」映画。まぁその最高峰は第一館で紹介した『櫻の園』なんですけどね。 ?『Wの悲劇』(1984) 〈監督=澤井信一郎、脚本=荒井晴彦、澤井信一郎>  薬師丸ひろ子が女優としておそらく一段あがったであろうと同時に、角川映画にとっても一つのエポックとなった作品なんじゃないだろうか。ミステリーの部分は劇中劇で描き、そこにあまり重きを置いていない構成もいい。  何より劇中劇以外の部分を書いた(全編の7割)という荒井晴彦さんのシナリオ、セリフがスゴクいいんです。今をときめくクドカンさん? いやぁゴメン、映画作品何本か観ましたが、荒井さんの足元にも及んでいませんわ。映画じゃ小ネタは通用しませんからねぇ―という私見(笑)  ただ「死体、どうやって別のホテルまで運んだんだよ」ってツッコミどころは残る。あそこちゃんとクリアしてほしかったなあ。  とまれ本作は、老若関係なく女性の心に切ない甘さを響かせる作品になっていると思います。  角川春樹が仕掛けたメディアミックスという手法の一つの到達点ともいえる作品ではないでしょうか。   「顔、ぶたないでよ! 私、女優なんだから……」 ?『ひみつの花園』(1997) 〈監督=矢口史靖、脚本=鈴木卓爾、矢口史靖>  銭ゲバOL、五億円とともに銀行強盗に拉致さる! んがしかし、逃走途中で強盗の車は大破!強盗死す! 銭ゲバOLは生き残る! んがしかし、五億が入ったアタッシュケースは樹海の「ぽっかり池」へドッポーン! さあどうする銭ゲバOL? 決まってるじゃん、免許を取るのよ、ロッククライミングもスキューバもモノにするのよ、大学入って地質学も研究するのよ、でもって「ぽっかり池」へ突撃だぁ〜〜!  ぶっきらぼうで投げやりなんだけど、こと「お金」に関しては異常な執着心を見せる主人公、咲子のキャラを演じるのは西田尚美。彼女を演じられるのは彼女しかいなかった、絶対。薄幸な役が多かったりするんだけど、平成私情最強のコメディエンヌは彼女なんですね。(ちなみに昭和私情のそれは伊藤蘭)  あなたの大事なお友達がしょんぼりしてたりなんかしたら、ゼヒ、この作品鑑賞をを勧めてあげてくださいませ。 ?『二代目はクリスチャン』(1985) 〈監督=井筒和幸、脚本=つかこうへい>  ケレン見たっぷり。たっぷりすぎてちょっと閉口する部分あったりもするんだけどそこもまた本作の魅力(笑)カドカワ映画の成功例。  志穂美悦子がねぇ、もう本当にキレイ。耐えて堪えて我慢して、そして最後のド啖呵!出入りの場面はもう大興奮。 あなたのために悦っちゃんは啖呵切ってます。  柄本明、室田日出男、北大路欣也、蟹江敬三(ここでも全開カニエ感!)これだけのメンツで脇を固めりゃそりゃ面白い作品になりますわ。  こういう良質な「大人の漫画映画」が作られなくなったっていうのは淋しいことだと思うんですよねぇ。 ?『ココニイルコト』(2001) 〈監督=長澤雅彦 脚本=長澤雅彦、三澤慶子>  恋に仕事に傷つき、一度は膝を屈した女性が、新天地で再び立ち上がるという古くからの王道ストーリー。ちょっといかにもすぎるなぁ、という感もあるのですが、そこを本作が映画デビューとなる堺雅人がひょうひょうとした演技によって気にならなくしていきます。彼の「ま、ええんちゃいますか」という台詞に救われていくのは、作品であり主人公であり、かつ鑑賞者でもあるのでしょう。  主役は真中瞳(現・東風万智子)。気持ちが真っすぐ伝わってくるいい演技をされる女優さんだなあと思いました。せっかく改名されたのですから、もっともっと活躍してほしいところです。 ?『鬼龍院花子の生涯』(1982) 〈監督=五社英雄、脚本=高田宏治〉    これ、最近鑑賞の機会に恵まれたのですが、高校生の時にテレビでやってたので観たのが初見なんです。もちろん夏目雅子様が目当てで。ちなみに雅子様は主演ですが「鬼龍院花子」役ではありません。 「女子力」? そんな言葉本作の雅子様の凛々しさを観てから言ってくれ。  ダイナミックなストーリー展開の中に、日本的エロチズム(エロティシズムとは書きたくない)がふんだんに散りばめられた五社監督真骨頂の作品だと思います。 「あては、高知九反田の侠客、鬼龍院政五郎の…鬼政の娘じゃき…  嘗めたら……嘗めたらいかんぜよっ!!」 ?『恋人たちの時刻』(1987)  <監督=澤井信一郎、脚本=荒井晴彦>  脚本家の荒井晴彦さん。この方は本当に素晴らしいシナリオを書かれる方なのです。監督、役者に台詞の改変は一切許さないのだという。それほど自分の仕事に自信と誇りを持っておられるのだろう。  そして監督の澤井信一郎さん。若者が抱く普遍的な悲しみを見事に捉え、スクリーンに活写することができる監督だと思います。 『Wの悲劇』でも組んだ「澤井―荒井コンビ」の本作。切なく大きな余韻を残す作品に仕上がっています。  野村宏伸、河合美智子とも正直演技は上手いとはいえませんが、その素人っぽさが登場人物のキャラとリンクして観る者を引き込む。永島敏行、石田えりの『遠雷』パターンですね。とりわけ河合美智子の大胆な演技は特筆もの。彼女の見事な脱ぎっぷりをもってここにこそ紹介したい。  青春映画は若さゆえの痛みをきちんと描かなくてはならないというのが、わたしの持論。そしてこの作品の持つ痛みこそが青春の痛み。  角川映画のみならず、邦画史上に残る青春映画といってもいいと思います。 ?『おもちゃ』(1999)  <監督=深作欣二、脚本=新藤兼人>  原作、脚本=新藤兼人、撮影=木村大作、監督=深作欣二、これで面白いものに仕上げってなきゃ嘘だよな、と思って観はじめたら、やっぱり面白かった。  女優陣は生き生きと体張って演技してるし、かつての京都の色街の裏側もしっかり描けているし、作品世界にどっぷり浸って観ることができました。  主人公、時子の憧れの男性役で月亭八光が出てるのですが、これが意外や意外よかった。水揚げされる前に時子が彼に会いに行く場面があるんですが、そこがすごくいいんですよ。  ラスト、少し乱暴に終わり過ぎてる感があるのが難。それでも花街の人間ドラマとして十分楽しめます。  主演の宮本真希、元はタカラジェンヌだったのね。もっと活躍してほしいなあ。ラスト、見事な彼女の肢体には「むちむちぷりん」という言葉が脳内に浮かんでしまいました(笑) ?『自虐の詩』(2007)  <監督=堤幸彦、脚本=関えり香・里中静流>  漫画史上に残る業田良家の大傑作大河4コマ漫画の映画化。  もちろん映像化に賛否はあると思うし、その出来にも納得できない人も多いかもしれない。 ただ、ボクとしてはこの作品は認めたいのです。主演、中谷美紀の主人公「幸江」をどうしてもやりたいという気持ちが、映画化への第一歩だったという話しを記憶しています。きっと「幸江」は彼女にとって「誰にもやらせたくない役」だったのです。その気持ちがビンビン伝わってくるのです。幸江が彼女でよかった。  正直原作には負けてます。でも負けるの覚悟で挑んでます。その気概を買いたい作品です。まあ、この手の人情ドラマには評価が若干甘くなってしまうのかもなぁ。 ?『ハラがコレなんで』(2011)  <監督、脚本=石井裕也>  石井裕也監督はまだ若いのに本当にたいしたもんだなぁと思う。そら満島ひかりも嫁になるわ。  経歴的にはエリートみたいなんだけど、目線は凄く低い。自分の作品で観てる人をどうやったら元気にさせることができるだろうってすごく考えてる人だと思う。ちょっと松竹新喜劇のテイスト持ってるぞ、この監督。 〈妊婦ヒーロー〉仲里依紗もキャラに合ってて、ここに紹介する由縁なのですが、何より爆笑するのが石橋凌と中村蒼の伯父-甥が中華屋の厨房でたたずんでるシーン。都合三回くらい、二人が並んでボーっと立ってるだけの場面があるのだけど、あそこホントに爆笑しました。笑かしよるわぁ〜あそこ。その場面みるだけでも価値ある一本です。 ?『キューポラのある街』(1962)  <監督=浦山桐郎、脚本=今村昌平、浦山桐郎>    本稿トリはこの名作にて。  戦争は終わったぞ繁栄に向かっていざ進め、みたいな作品ではけしてありません。貧困や離別ゆえのやりきれなさ、痛み――それらを抱えて、それでも人々は日々をどうにかこうにか歩まなければならなかった、そんな時代だったからこそ、吉永小百合の清楚で健気な美しさは「戦後の希望」であったのだと痛感させられました。 結論=いつの時代も女の子が元気な映画は面白い!! ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]ボクの名画座?映画あ〜じゃこ〜じゃ?第四館/平瀬たかのり[2014年12月9日14時19分]  前回、女の子が元気な映画をご紹介させていただきましたので、今回は私情に残る男の子が暴れまわる映画を、ご紹介。最初はそういう意図はなかったのですが、結果的にそうなってしまったわけで。  高倉健さん、菅原文太さんへの哀悼の意も込め、第四館<男汁噴出編>開演! 行くぜ野郎ども!! ?『どついたるねん』(1989)  <監督・脚本=坂本順治>  シナリオとして復帰戦にいたる経緯が乱雑に描かれすぎだと思う。そのリアリティーの不満は残る。ストーリー自体とても荒っぽく流れて行きますしね。  けれどこの作品は、ボクシング、ボクサーに対する愛と熱に満ちている。観ている者を「どついたるねん!」と作品が言っている。それは映画という表現形態にとって、いや、どのような創作ジャンルにおいて最も大事なことじゃないだろうか。  復帰戦直前、赤井を実際に再起不能に追いやった大和田正春とのシャドーボクシングの場面の、鳥肌たつほどのカッコよさ! このシーン観るためだけでも鑑賞の価値ありです。 ?『ダイナマイトどんどん』(1978)  <監督=岡本喜八、脚本=井手正人、古田求>  映画で漫画を作ってる、その見本のような作品。  ヤーさんがドンパチの代わりに野球で決着、オトシマエつける映画です(笑)。まあ派手なドンパチもやるのですけどね。  荒唐無稽の中にも人情の機微あり。 脳ミソ空っぽにして楽しめます。 とりわけ北大路欣也の投球フォームの美しさったらない。  文太さん追悼として、これこそ地上波でやってほしいんだけどなあ。  さあ、みなさんも落ち込んだときは足踏み鳴らして言いましょう。 「ダイナマ〜イト! ど〜んど〜ん!!」 ?『幸福』(1981)  <監督=市川崑、脚本=日高真也、大藪郁子、市川崑>  海外ハードボイルドの巨匠、エド・マクベインの原作を、邦画界のこれまた巨匠、市川崑が監督した作品。ハードボイルドというよりも、日本的な哀切や人情を押しだした作品になってて、それが成功しています。本筋のストーリーはちょっと二時間ドラマ的ではあるのですが。  主人公の刑事は、嫁さんに実家に帰られた「クレイマー・クレイマー」な状態(喩えが古い……)。その描写が濃やかで実にいい。水谷豊って名優だよなってつくづく思う。子役二人の演技も上手くはないんだけど、本当に胸に迫ってくる。あざとさが全くない。 「父親って、親子って、家族って、恋人って、夫婦って、正面から向き合うと、きっと、こんなに切なくって愛おしいものだよな」と思わせてくれる、巨匠が作った一大佳作。 ?『青春デンデケデケデケ』(1992) <監督=大林宣彦、脚本=石森史郎>  これ、確か学生時代に観てるのです。二十年以上ぶりに観返して思いました、「こんなに面白かったか!?」って。  実はこれ再鑑賞するまで『ねらわれた学園』『彼のオートバイ、彼女の島』『ふりむけば愛』などを観て大林作品には正直いい印象持ってなかったのですけれど、いい意味で裏切られました。  海水浴の場面なんか何回観てもときめくな。このトキメキはたぶん男の子として正しいはずだな。  控えめなヒロイン役の柴山智加さんは現在も役者として頑張っておられるようで、嬉しいなぁ。こういう女優さんこそもっとメディアに出てほしいのだけど。  舞台を原作通り観音寺市にして、ちゃんと讃岐弁使ってる。そういうリアリティーが観る者に響くんです。タイガースのメンバーだった岸部一徳が理解ある教師役やってるのも観ててニヤッとします。  デンデケデケデケ! 若き日の浅野忠信もピカピカに輝いてて、いいぞこれ。  まっとうな音楽映画って、やっぱりいいわぁ。 ?『トラック野郎〜御意見無用〜』(1975)  <監督=鈴木則文、脚本=澤井信一郎、鈴木則文>  本作だけじゃなく『トラック野郎シリーズ』全てに言えるんですけれども、ひとことで言うと「B級映画」なんですよ『トラック野郎って』。  全編エピソード詰め込みすぎだし、ヒロイン登場場面の<バックでお星様キラキラ>なんて陳腐極まりないったらないの。くだらないギャグに下品、お下劣満載だしさぁ。  でもなぁ〜、でもなぁ〜。やっぱりエエのよ。何回観てもエエんですよ。  こんなさぁ「人情に篤い」映画、今こそもっともっと作ってくれよ。観に行くよみんな。  これはですね「映画は誰のためにあるのか、批評家や作り手のためにあるんじゃない。日常の地べた毎日はいずり回ってるアンタのためにあるんだ」って高らかに謳ってる作品だと思う。  夏休み、毎年民放でジブリもいいけれども、これをこそ放送するべきなんじゃないかなぁ、今こそ。でもトルコ風呂(あえてそう書きます)の場面とかブツブツに切られて放送されても腹たつばっかりかぁ。  しんどいことがあっても「明日の休みは、録ってる『トラック野郎』観よ」と思ったら、生きていける…そんなふうに思える作品ってスゴイですよ、やっぱり。 『トラック野郎』は走り続ける。文太さんがいなくなったって、この世に男の子の純情と勘違いと、どんぶり飯とレバニラ炒めと、脂汗と脱糞が存在する限り走り続けていく。 ?『八甲田山』(1977)  <監督=森谷司郎、脚本=橋本忍> 「上層部と現場の乖離問題」が大きな一つのテーマ。その上に「現場に上層部の人間が入ったときに起きる悲惨な結果」も描いています。これは近年の『踊る大捜査線』シリーズにも共通する普遍的なテーマだと思います。 「天は我々を見離した……」北大路欣也の名台詞とともに語られることの多いこの大作ですが、もう一方の部隊長、高倉健が部隊全員整列させて命じる場面があるのです、秋吉久美子演じる農家の娘案内人へ「案内人どのに、頭、右!」って。で、秋吉久美子恥ずかしそうに頭下げて笑って去っていく。  浪花節的ではあるけど、あそこが本当にいいのです。あの場面で「大事なのは現場なんだよ、現場を知ってる人間なんだよ。そして人の気持ちってやつは立場を越えて大事にしなくちゃいけないんだよ」ってことが伝わってくるのです。 ?『日本の黒幕』(1979)  <監督=降旗康男、脚本=高田宏治> ロッキード事件の際、その黒幕とされた児玉誉士夫をモデルにしたであろう作品。たぶんにフィクションの部分があるんだけど、でも明らかに「あいつが、あの事件がモデルだ」と特定できる作品を、年月さほど経てないうちに作ってしまう「訴えるなら訴えてみやがれ」的なブチ切れた「東映パワー」には圧倒されてしまいます。  主役の佐分利信の重厚な演技がすばらしい。全体に同性愛臭がそこはかとなく(明らかにか?)漂っていて、それがうまいこと作品のキワモノ感を救っています。 ?『県警対組織暴力』(1975)  <監督=深作欣二、脚本=笠原和夫>  脚本‐笠原和夫、監督、深作欣二コンビというのは、ヤクザとか警察という「強いもの」の姿を借りて、人間の弱さをきっちりと描いていると思うわけです。 「仁義なき戦い」シリーズでヤクザとして暴れまわる面々を、警察官として揃えたこのキャスティング、見事な企画の勝利。 「わしゃぁこの目で極道見とるんで! 上だけ見とるオドレに何が分かるんどっ!」文太さんのこのセリフに象徴される<現場と上層部の乖離問題>というのは、やはりこの時代から脈々と受け継がれる邦画の重要テーマ。  この作品で特筆すべきは川谷拓三、拓ボンの取り調べ室での文太さんからのやられぶり。伝説の名場面と言っても過言ではありません。彼ほど痛めつけれぶりが絵になり画になった役者はもう出て来ないでしょう。ボクの中では重要無形文化財レベルに達しています。 ?『ヒポクラテスたち』(1980)  <監督、脚本=大森一樹>  ずっと観たかった作品で最近ようやく鑑賞かないました。  ストーリー展開も冗曼なところがあるし、群像劇としてもやや弱いように思う。  だけどこの作品には、大森監督の「熱」がほとばしっている。「俺はこういう映画作りたかったんじゃ! おれは医学生だったけど、こういう映画を世界に叩きつけたくて映画監督になったんや!どや!」という青春の熱に押され最後まで観てしまったように思う。  名画、佳作というより「熱画」ですね、ボクにとって。今の医学生が観たらどんな感想抱くのか、興味があります。  みんな若い。蘭ちゃん(伊藤蘭ね)は自然な演技でホント上手いなぁ。そりゃ普通の女の子で収まりつかなかったはずだわ。そして古尾谷さん、あなたがいないことが淋しいよ。こんな熱い映画の主役張ったあなたが自ら死を選んでいい理由なんて何一つなかったよ…… ?『蒲田行進曲』(1982)  <監督=深作欣二、脚本=つかこうへい>    これまでの人生の中でたぶん一番観返してる作品。『竜二』とこれが私情ベスト5から外れることはきっとないでしょう。  二十歳前後のころ、嫌なことがあったり、やりきれなかったりしたら、決まってこれ借りてきて最後の階段落ちの場面で大泣きして、無理やり元気出してた。馬鹿ですねぇ我ながら(笑)つまり自分にとってそういう作品なわけですよ、これは。  大好きな作品って、語ることはできてもその良さを書き言葉で伝えるのって本当に難しいなぁとつくづく。つまるところ「とにかく観て!」に収まってしまうわけで(笑)。 「人間の面白悲しさ、悲しき面白さを濃やかに描いてこその映画」という映画鑑賞者としてのボクの基本的スタンスは、この作品に出合ったからこそ確立されたのだと思ってます。  以下、忘れられない台詞をボクの記憶に残っているままに。 ★「このバカでかい階段途中からぶった切ってぇ! 平和ニッポンにふさわしいセコーイ階段に作りかえますか」 ★「馬鹿野郎、キャデラック乗るのに免許がいるかよ!」 ★「この倉岡銀四郎が飲んでる店は何てんだって聞いてんだ! 答えねぇと火ぃつけるぞこの野郎!」 ★「何が気にいらねぇんですか銀ちゃん! 監督ですか! 立花ですか! 俺今から行って殺してきましょうか!」 ★「……灯り、消して……」 ★「これが、コレなもんで」 ★「大事にしてね。わたし、むちゃくちゃ甘えるからね」 ★「うちはかまわんよ。おなかの子が誰の子でも」 ★「ねぇ、銀ちゃんってどんな顔してたっけ。忘れちゃった……女って薄情ね」 ★「後悔するわよぉ! でも、さよならぁっ!」 ★「戸籍は屁よりも劣るのかっ!」 ★「お前を好きになればなるほど、哀しいんだよ、この心が…、切ないんだよな…」 ★「ねぇ、帰って来てくれる? 帰ってきてほしいんだなぁ今夜は」 ★「とうとう俺を人殺しにしやがって……」 ★「生まれたいか。もう少し待つんだよ……」 ★「俺にも一生に一度、役作りってやつをさせてください……」 ★「どうしたヤス! 這ってこい! 昇ってこい! ここまで!」 ★「銀ちゃん、かっこいい……」 ★「あんたぁぁっ!」 結論=男の子のココロを熱く、篤くさせる映画を、いまの時代もっと! ---------------------------- [自由詩]父よ憤怒の河を渉れ/平瀬たかのり[2015年1月10日15時28分]  お父さんは近頃おもしろくない  洋子の微笑が何よりおもしろくない  あらためて増えてもみた透けてもみた消えてもみた  しかしそのたびに穏やかに見つめてくる  かの慈母のような微笑が  はなはだおもしろくない  洋子はそうであってはならないはずだ  我が変態にはいつもぷんすかしていなければならぬ  お父さんは常かように思っているわけだが  洋子は既さように思っていないわけであり  それは現場と上層部に横たわる溝以上の乖離問題  まさに男と女の間には深くて暗い河があるローエンドロー  お父さんは怒っている  たかが恋のひとつを経たくらいで  慈母の笑みを獲得するなんて  やめなさいそんな目で増えたお父さんを見るのは!  何が「もう やぁだぁ(笑)」だ!  何が「あはは おっかしい(❤)」だっ!  お父さんはおまえをそんな娘に育てた覚えはありません!  お父さんは下戸であるが飲まなきゃやってられない  だから一週間前から養命酒を飲み始めた  もうお父さんは不良になってしまいそうだ  だから昨日エレキギターを買ってみた  けれど養命酒はお父さんを健康にするばかりで  エレキギターで不良になれる時代はとうに過ぎ去ってしまった  見えるかお父さんの流す血の涙が!(養命酒くさい)  お父さんは上り框に立っている  もう増えも透けも消えもしない  変態に頼りはしない  振り返るなロー、ロー!  ドアノブが回るのをひたすら待っている  洋子の「ただいま」をいじらしく待っている  コートの下すっぽんぽんのお父さん  のどぼとけがごきりと動く  父の字の上半分を無理やり吊り上がらせて   (二連六行目・五連四行目      能吉利人作詩『黒の舟歌』より) ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]2015鑑賞映画採点及びひとことふたこと?(1/1〜1/18)/平瀬たかのり[2015年1月18日23時23分]  今年から時間的、気持ち的に余裕があるときにこんな感じでまとめてこちらにて。  公開年、監督などは割愛させていただきます。  なるべくネタバレはないようにいたしますが、その限りではないことも。  鑑賞作は基本的に「日本映画専門チャンネル」及び「イマジカBS」で放送されたものになっております。  採点は作品力(5点)・余韻力(3点)・再鑑賞魅力(2点)を合わせた結果という形をとっております。 ○バンクーバーの朝日(劇場鑑賞)6.5 ○そして父になる 3.5 ○クヒオ大佐 7 ○白雪姫と鏡の女王 7.5 ○ワンダとダイヤと優しい奴ら 7 ○シックスティナイン 5.5 ○どろろ 5.5 ○メゾン・ド・ヒミコ 5.5 ○スローなブギにしてくれ 4.5 ○ベスト・キッド 6.5 ○憑神 5 ○チ・ン・ピ・ラ 7.5 ○スパルタカス 8 ○マネー・ピット 6 ○太陽がいっぱい 8.5 ○ブラス! 7.5 ○出所祝い 5.5 ○ベスト・キッド(リメイクver) 6.5 ○バンクーバーの朝日  「舟を編む」観た時も思ったんだけど、これ石井裕也監督が撮らなきゃならない作品だったかなあ。早くも巨匠チックに落ち着きすぎちゃってる気がする。まだまだお若いんだから、自身のオリジナルの脚本で暴れ回っていいと思う。 ○そして父になる  カンヌで審査員特別賞取って、国内の評価も高いこの作品ですが、ワタシ的には全然ダメ。実子を引き取った後、学校どうしたのかという部分を全く描いていないのは、お受験の場面から始まる作品だけに、シナリオの破綻以外の何物でもない。ラストも余韻を残してるのではなくただ「尻切れトンボ」なだけでした。是枝監督作品は「誰も知らない」「歩いても歩いても」がたいへん好きな作品だけに、とても残念だった。 ○クヒオ大佐  実在した結婚詐欺師「クヒオ大佐」(日本人)をモデルにした作品。「そんなんで引っかかるかぁ〜?」と思うんだけど、実際にひっかかった女性がいるんだからしょうがない(笑)。満島ひかりと安藤サクラという今をときめく若手演技派女優二人のマッチアップも観どころ。 ○白雪姫と鏡の女王  「アナ雪」は観てないんだけど、小学校高学年の女の子が観るならたぶんこっち。子供にとって映画なんてちょっと背伸びして観るものなんだからさあ。あの強い小人さんに出会うだけでも価値ありますよ。 ○ワンダとダイヤと優しい奴ら  最初退屈なんだけど、途中から一気に面白くなります。  目撃者の老女殺したいんだけど、何回スナイプしても連れてるテリア犬ばっかり殺してるおバカがいましてね、そこがもうね、何回観ても笑っちゃう。 ○スローなブギにしてくれ  山崎努、原田芳雄、室田日出雄、そしてヒロインは浅野温子。大好きな80年代カドカワ映画ってこともあり期待したんだけど…名優ふんだんにつかった浅野温子のプロモーション映画の感ぬぐえず。 ○憑神  赤井英和はカツゼツ悪いなあ… ○ベスト・キッド  ガキの頃に観とけよと思いつつ初鑑賞。少年成長物語として楽しめましたが、ちょっと主人公女の子と上手いこといきすぎ。もっと叩きのめされてそこから立ち上がっていく姿をみたかった。 ○チ・ン・ピ・ラ  「竜二」の金子正次のシナリオを元に、同じく「竜二」の川島透監督がメガホンを取った作品。「ホンモノ」に成りきれない(成りきらない)チンピラ二人の哀歓を柴田恭平とジョニー大倉が活き活きと演じていて「俺もこいつらといっしょにこんなノミ屋やりたい」と思ってしまう。あぁ、切なく終わるのか…いやいや(笑) ○スパルタカス  「シャイニング」は好きじゃないけど、これは堪能しました。キューブリック万歳。 ○マネー・ピット   わはははは! ひっでぇ家だなぁオイ!  トム・ハンクスが若い! そして嫁さん役のシェリー・ロング、そんなに映画出てないみたいだけど、めちゃめちゃかわいくて上手い! ○太陽がいっぱい  ボクに画才があったらこの作品のいろんな場面を描いてみたい。本当にありとあらゆるいろんな場面を。  美しい風景や調度品、小道具の配置、色遣い、光の当て方、その中での俳優の撮り方、それらがきっと完璧なのです。  名「画」という意味では私情空前にして絶後の作品でしょう、きっと。   ○ブラス!  最後、ちょっと甘かったなあ。あそこまでお国にケンカ売ったのなら、サッチャーの前でのご褒美演奏なんてケレン味あるラストでもよかったんじゃなかろうか。でもまあそこまでしちゃうとフィクションになりすぎかな。でもいい作品ですよこれ。 ○ベスト・キッド(リメイクver)  本家よりこっちの方が好き。ジャッキー・チェンもいい味出してます。  主人公の年齢をより幼くしたのも功を奏しています。ただ「そんな子供に防具なしでどつきあいさせてええんかい?」という疑問は残るんですがね。そこだけクリアできたら「ボーイ・ミーツ・ガール」な作品として女性にも十分楽しめる作品に仕上がってると思います。  今回で特筆すべきはやっぱり「太陽がいっぱい」ですね。  皆様へ。とりわけ若い方々へ。  「太陽がいっぱい」をぜひ! ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※ <後からナマイキ感想その?> 「桐島、部活やめるってよ」   4点(?作品力2.5 ?余韻力1 ?再鑑賞魅力0.5)  近年、邦画界の話題をさらった「桐島、部活やめるってよ」ですが、わたしの評価としてはそれほど高いものではありません。 もちろん見るべきところはありました。特に同一日時をいろいろなキャラクターの視点から捉えるという始まりの手法はなかなか斬新で作品世界に引き込まれていきます。  だがしかし、引き込まれはするがどっぷり浸かりきることはできない。それは何故か。答えは簡単「主人公が美男子すぎる」んです。  この作品は高校という幼い狭い世界の中での「持てる者、持たざる者」を描いた作品なわけです。で、その持てる者の代表が勉強も運動もできて女の子にもモテモテの桐島くん。逆に持たざる者の代表が映画オタクで気弱な前田くん。前田くんは当然女の子になんか縁のない設定。で、その前田くんを演じてるのが神木隆之介くん。神木、隆之介くん。神木、隆之介、くん・・・・・・・・・・・・。  神木くんが女の子にもてない設定って、それ、無理ありまっせ! 想像してみてくださいよ、神木くんみたいな男の子が学校にいてですよ、仮に気弱な映画オタクだったとしてもですよ、彼が女子からワーキャー言われないなんてことあり得ます? 彼がパンツかぶって登校するのが好きとかの変態少年か、その年でけっこうな犯罪歴の一つ二つ背負ってる犯罪少年でもないかぎり「そんなヤツおらんやろぉ〜〜」ですよ。  もちろん映画ですから美男子、美少女を起用しなくちゃいけないことは分かる。これが恋愛ものとか、青春サクセスストーリーとかだったら神木隆之介主演でもちろんよかった。でもこの映画は「持たざる者の逆襲」をはっきり打ち出してるわけですよね。なのにその主演に神木隆之介はない。勉強もイマイチ運動もダメ女の子にも持てない、だけど映画だけが生きがいでそれだけは誰にも譲れなくって・・・というキャラを作りたいなら、「ああ、こいつアカンなぁ。アカンけど俺も高校のときそんなやったわ。昔の俺見てるみたいや・・・」って見た目で思わせてくれる役者使うべきだったはずなんです。そんな役者が前田くんを演じてくれてたら、「青春の逆襲者」を演じてくれたら、ラスト快哉を叫べてたかもしれないのです。  テーマと主人公役者のルックスの乖離。この一点においてこの作品は登場人物にも物語にも浸りきることはできませんでした。  もう一点、もっと乱暴な感想として「親の金でメシ食うとるガキどもが何を生意気なことばっかりほざいとるねん。一人で生まれて一人で大きなったんと違うんどっ!」という思いが残りましたね。これをクリアできる青春映画とできない青春映画があるのですが、この作品は残念ながら後者でした。 ---------------------------- [自由詩]恵女羅流怒・洋子/平瀬たかのり[2015年1月22日14時37分]  洋子は旅立った  蛍光グリーン一色ビシギメ  聖子ちゃんカット逆風になびかせ  ラメの瞼で睨みをきかせば  誰もが慄き道を開ける  (くそ親父のラジカセくそ重いし)  ハラジュクにたどりついても  ホコ天はもうなくなってしまったし  竹の子族なんて昭和大衆史の徒花  思い出す人すらいない  今や孫のお守りに忙しい彼、彼女たち  (うっせえ 関係ねぇよ 出番だくそ親父)    スイッチ押せば擦り切れかけのカセットテープから  アラベスク ヴィレッジ・ピープル ジンギスカン  ジン ジン ジンギスカン!  さあStep Stepping now洋子!  そうとも人は抱えきれない思いを抱いた時  太古から踊ることに決まってる  そうだ太陽を拳で撃ち抜け  いいぞ大地を踵で蹴り上げろ  マブイぜ洋子ハクいぜ洋子いかしてるぜ  アバヨ、変態くそ親父  わたしはこのまま旅を続ける  日が暮れて、星  降ってくる星  洋子を照らす  洋子のダンスステップを照らす  零れる涙、振り切る涙、千切る涙  エメラルドに変わって  闇に煌めき飛び散って  幾々粒も煌めいて  (やだわたしこんなことできるんだやっぱりお父さんの娘なんだねわたしっ    てば)  踊れ洋子、時をこえて  今夜ひとりぼっちの  トーキョー・アラビアン・ナイト           (『恵女羅流怒』=実在した「竹の子族」チームのひとつ) ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]2015鑑賞映画採点及びひとことふたこと?(1/19〜1/30)/平瀬たかのり[2015年1月30日19時32分]  採点は(?作品力5点 ?余韻力3点 ?再鑑賞魅力2点)の10点満点にて採点。 なお今回より「総合的にみてあと0.5ポイント付加したいか引きたいかどうか」を基準として(+)(−)を加えます。 ○鬼の詩 6(−) ○華麗なる一族 7.5(+) ○ノーボーイズ・ノークライ 5(−) ○キャリー 7.5(+) ○鉄道員 5(−) ○バード・オン・ワイヤー 5(+) ○レッド・クリフpart1 6.5(+) ○レッド・クリフpart2 6(+) ○月夜の傘 4.5(−) ○花の降る午後 6.5(+) ○サイタマノラッパー 7(−) ○愛のむきだし 5.5(−) ○白い家の少女 7(+)  以上13編 ○鬼の唄  藤本義一原作。天然痘にかかったことを逆手にとり、グロテスクな顔面芸で高座に上がり続けた実在の落語家の生涯を描いた作品。芸人の業を重く深く捉えたATGの佳作。天然痘って「ミッチャ」って言ってたんだなあ。 ○華麗なる一族  山崎豊子原作の社会派大作を佐分利信、仲代達矢、田宮二郎、京マチ子・・・圧倒的重厚な演技陣で映像化。これで堪能できないわけがない。ラスト、虐げられてきた本妻が我が物顔でふるまっていた妾に言い放つ一言には鳥肌がたった。 ○ノーボーイズ・ノークライ  どうして最近の邦画はこうも「尻切れトンボ」なものが多いのか。余韻を残す、と中途半端で終わらせてるっていう違いが分かってないんじゃないのか。「アジアの純真」のデュエット場面はよかったです。 ○キャリー  映画史上に残る恐怖映画であると同時に一級のアメリカ青春映画でもあると思います。  クライマックス「いけーキャリー! ぶち殺したれぇ!」って思っちゃうんだよなあ。でもやっぱり悲しく切ない。陰気なキャリーがどんどん美しくなってく様もみどころ。シシー・スペイセク、おみごと。 ○鉄道員  名画であることに疑いの余地はないが、正直今のボクにはあまり響くものがなかったんだよなあ。いや、名画だとは分かってるんですよ。これは評価できないボクに問題があるのかもしんない。 ○バード・オン・ワイヤー  「ブロンド美女」の代名詞はボクの中で『チャーリーズ・エンジェル』のファラ・フォーセット一択だったのですが(笑)本作鑑賞によりゴールディ・ホーンも追加させていただきます。作品は男女バディもののアクションエンターテインメントものとして楽しめる仕上がり。 ○レッド・クリフpart1・part2  戦闘の場面は前篇の地上戦の方が迫力、臨場感ともにあったように思う。これは後篇の水上戦に、前篇のような俯瞰の映像がなかったからだと思う。だから勝ち負けの様子がイマイチ伝わってこなかったんですよねえ。夜の場面だから仕方ないんだけど。  まあでも男心をくすぐる血沸き肉踊る作品になっています。   ○月夜の傘   戦後日本の少年時代、東京に田舎が残っていたころのお話。実際この時代に子供時代をすごした人が観たらすごい感慨深いものがあるんだろうなあ。「おけいこ事は六つのときの六月六日に始めるのがいい」んだって! へーえ! ○花の降る午後  「バブル時代に作られたダメな方のカドカワ映画かも・・・」とおそるおそる観たのだけど、いやいや面白かった! さすが大森一樹監督。恋愛ありサスペンスありアクションあり人情の機微あり。ピシッとお話も終わらせてくれていて納得満足。ケレン味もたっぷりで、やっぱりカドカワ映画はこうでなくっちゃ! ○サイタマノラッパー  正直ヒップホップは苦手なんだけど、この作品のダサい「埼玉のラッパー」には観てる間中寄りそえるわけです。そこが『桐島、部活やめるってよ』との圧倒的な差。市の公務員、お偉いさんを前にしてのパフォーマンス、その後の質疑応答の場面なんて「ひー、これ何の罰ゲームやねん! もうやめたってくれぇ〜っ!」って辛くなりますもん。  そしてヒロインのみひろ。うまい。たぶん堀北真紀なんかの百倍うまい。AV女優? それがどうした。鑑賞者にとって女優の意味は「その作品の中でどれだけ輝いてみえるか、伝わってくるか」だ。この作品のみひろ、ビンビンきたわ。 ○愛のむきだし  この作品については後日改めて書きたいと思います。  評価の詳細については(?作品力3 ?余韻力2 ?再鑑賞魅力0.5=5.5)ということになります。  感想を一言であまりに乱暴に述べるなら・・・「ものすごくきれいで丁寧に行われたカエルの解剖を見たような感じ」とでもいいましょうか。 ○白い家の少女  白い家に一人で暮らす少女をめぐるサスペンスドラマ。主人公を演じるのが少女時代のジョディ・フォスター。とにかく彼女が綺麗。ちょっと心臓撃ち抜かれてしまった。とにかく画面の中の彼女から目がずっと離せないんです。上手だしねえ。中学時代にこの作品観てたらどうだったろう。勢いでムチャクチャな英語のファンレターとかジョディに出してた可能性あるぞ(笑)  作品ももちろんおもしろい。秀逸なシナリオに美少女が主人公(しかも彼女は今や大女優)。けして大作じゃないけどもっと知られていい作品だと思ったなあ。  今回は「キャリー」のシシー・スペイセク、「白い家の少女」のジョディ・フォスターにつきますね。70年代洋画の底力、女優の凄さを見せつけられました。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]2015鑑賞映画採点及びひとことふたこと?〈1/31〜2/10〉/平瀬たかのり[2015年2月11日20時29分] ?作品力=5点 ?余韻力=3点 ?再鑑賞魅力=2点(?には鑑賞後に歓談を誘発する力があるか、?には保存価値があるかも考慮) 総合的な印象として0.5ポイント加えるか否かを基準として+、−を付加。 ○ぼくのエリ 200歳の少女 8(−) ○真夜中のカーボーイ 7(−) ○櫻の園 9.5(+) ○サボテン・ブラザーズ 5.5(+) ○櫻の園―さくらのその― 5.5(−) ○シザー・ハンズ 6.5(+) ○アバウト・ア・ボーイ 5.5(+) ○バベル 3.5(−) ○天国の門 6(−) ○清作の妻 8(+) ○ブラック・ダリア 2.5(+) ○ロング・グッドバイ 3(−) ○灼熱の魂 8(−)   以上13編 ○ぼくのエリ 200歳の少女  スウェーデン映画。とてもいい作品でした。個人的に「ボーイ・ミーツ・ガール」ものが好きということもあるのですが、気弱な主人公の男の子が出会う少女(?)が人間の血を飲まないと生きていけないヴァンパイア。その設定がすでにこの作品の成功を保証しているといっていいのかもしれません。少年少女に与えられた「枷」はやはりお話を盛り上がるわけですよ。  スプラッターホラー的描写もあるのですが、それが作品上不可欠なものだから違和感もなく、気になることは全くありませんでした。とにかく主人公の男の子とヴァンパイア少女の交流があまりに切なく美しい。  ラスト、あの二人はどこへ行ったろう。どこに住んだろう。見事な余韻を残して物語は終わります。 ○真夜中のカーボーイ  冒頭イントロだけで「あ〜、この曲知ってるぅぅ〜っ!」ってたぶん誰もが思うはず。  アメリカン・ニュー・シネマっていうのはこっちのATG映画に似てる気がした。あ、ATG映画がアメリカン・ニュー・シネマを意識したのかな。ダスティン・ホフマンはさすがに上手い。 ○櫻の園  今回で三回目の鑑賞。前観た時は録画機器持ってなかったんだよな。ブルーレイでバッチリ録りました。死ぬまでに何回観返すかなこれ。もうそれくらい好きだわ。  マイナスは「舞台本番当日っていうのはさすがにもうちょっとピリピリした雰囲気があるんじゃないのかなあ」というところのみ。けれどそれも大きな瑕疵になっているわけではありません。  観返すことができる作品ってそのたびに新たな発見があるんだよなあ。今回気づいたのは ?カメラワークの素晴らしさ ?つみきみほは声もいい ?ヴァーリア・アーニャ役の二人がかわいすぎる ?あのアイスクリーム俺にもいっしょに食べさせろ  あえて「少女映画」と呼んでみよう。けれどその最高傑作、金字塔ともいうべき本作は四十男に乙女心を呼び起こす力すらもっているわけなんだな。 ○サボテン・ブラザーズ  都合良くおバカ。おバカだから都合がよい。さすがジョン・ランディス。まあ「ブルース・ブラザーズ」ほどではなかったけれど。これから落ち込んだときは前出の「ワンダとダイヤと優しい奴ら」と続けて観ようと思ってます。 ○櫻の園―さくらのその―  「桜の園」のリメイクというか同監督による「同名作」。  「やりやがったな、やっちゃいけないことやっちまいやがったな」と攻撃的な姿勢で鑑賞したのですが。思っていたほどひどくはありませんでした。思っていたほどはね。一言でいうなら「アイドル使った今どきの女の子映画」ですな。  まぁツッコミどころは多々あるんですがね、「そんないきなり部員集まらへんだろ〜」とか「杏ちゃんは陸上部員でもないのに毎日走り高跳びやってたんか?」とか「福田沙希は閉じ込められて鍵かけられた旧校舎からどうやって出てきたの?」とか。  どのみち負け戦になるんだから、同じ監督で撮るんだったら「犬神家の一族」みたいにキャストだけ換えるような感じの同設定でやってもよかったんじゃないかなあ。たぶんボロボロに負けてるだろうけど、いっそそっちのほうが潔かったかもしれない。   ○シザー・ハンズ  ずっと観たかったんだよなあ。期待通りに満足。「ぼくのエリ〜」でも思ったのだけど、異界の住人と人間の恋物語っていうのは鉄板ネタだなあと。 ○アバウト・ア・ボーイ  「マン・ミーツ・ボーイ」もの。クライマックスのコンサート場面は気弱な少年一人でラップ歌ってほしかった。大人の助け船に頼るんじゃなくて。   ○バベル  やりたいことは分かるんだけどさぁ……さすがに観る者置き去りにしすぎだろう、これ。一丁の銃がひき起こす悲劇を三つのお話として多角重層的に描いてるわけなんだけど、再鑑賞されることを前提に作られてる気がするのねこういう作品観ると。パズル的な映画はあってもいいけど、パズルそのものじゃないんだから映画は。あまり策を弄すると観る側は辟易しちゃうわけですよ。 ○天国の門  膨大な制作費とあまりの不入りにより老舗の映画製作会社をぶっつぶすことになったハリウッド史上最大の呪われた作品。その逸話だけ知っていて覚悟しつつ楽しみにして観ました。  確かにしんどいわ、これ。もっとコンパクトにアメリカの暗部「ジョンソン郡戦争」を描くこともできただろうに、無駄がありすぎ。それに始め三十分くらいの華やかな大学卒業式場面からいきなり二十年後に飛ぶっていうのも「待て待て待て〜い!」です。  ただ大作なりの鑑賞価値はあると思います。でも二回目観るかというと「ごめんなさい、こらえてください」なのです。 ○清作の妻  自身不勉強でこうして映画ちょっと気合い入れて観るまでその名を知らなかったし、その作品は「曽根崎心中」「黒の超特急」始め数本しか観ていないのですが、増村保造というのは凄い映画監督、映像作家だとつくづく思った。人間の業を見つめる視線は低く、かつどこまでも深い。新進の監督にしてプロデューサー、かつ女優もこなす杉野希妃嬢が好きな監督として彼の名を挙げているのは何とも嬉しく頼もしい。  夫の出征を回避するために妻がとった究極の方法とは…! そして二人は生きて行く。周囲の蔑みの中で。今日も畑を耕して。 ○ブラック・ダリア  名作「キャリー」のブライアン・デ・パルマ監督のサスペンスものということで期待して観たのですが……退屈!! 登場人物多すぎ! 話しややこしすぎ!  ミステリーなのに犯人分かっても爽快感1ミリもなし! さすがの巨匠もヤキが回ったのかなあ。 ○ロング・グッドバイ  若いころ大藪春彦とか大沢在昌とかのハードボイルド小説に耽溺したことがありまして。でもそれも本格的にというわけでなく、海外作品に挑む前に熱が冷めてしまったのですが。だからこそレイモンド・チャンドラーの傑作といわれる作品を映画化した本作を楽しみにして観たのですが。  残念ながらツボには来ず。これも「ブラック・ダリア」同様犯人分かっても「あぁ、そう」な感じでした。  シナリオが平板だったなあ。ハードボイルドというのは「文体」に依るところが大きいから、お話の中にその原作の文体をちゃんととりこめないと、(とりこんでいるように思わせてくれないと)こういう結果になってしまうような気がするなあ。 ○灼熱の魂  カナダとフランスの合作映画。母の死、その遺言をきっかけに双子の姉弟が彼女の人生を辿り、探っていく旅に出るという作品なのですが、素晴らしい作品でした。  大きな場面転換ごとに章名が画面に赤文字で大きく表示される手法も、観てる者をないがしろにしていなくてとてもよかった。  次第に明かされていく母の過酷にして苛烈すぎる人生、そして衝撃の事実。途中でその事実は「たぶんそうだろうな……」と思って観ていくのですが、姉弟が知る(鑑賞者にもはっきり明かされる)場面の絶望たるや……  重く、深く、強い作品です。そして面白い作品です。ぜひもの。      「桜の園」の素晴らしさを改めて痛感。  そして今回は「ぼくのエリ 200歳の少女」と「灼熱の魂」ですね。この深く重い余韻こそ現在の邦画にも求めたい。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]2015鑑賞映画採点及びひとことふたこと?<2/11〜24>/平瀬たかのり[2015年2月24日15時27分] ?作品力=5点 ?余韻力=3点 ?再鑑賞魅力=2点(?には鑑賞後に歓談を誘発す る力があるか、?には保存価値があるかも考慮) 総合的な印象として0.5ポイント加えるか否かを基準として+、−を付加。 (7.5点以上は+、−表記はなし) ○非情の罠 5(−) ○パラノーマル・アクティビティ 4(+) ○寝ずの番 7.5 ○蜜月 4.5(−) ○ファインド・アウト 6(+) ○夜の大捜査線 8 ○ハート・ロッカー 6.5(+) ○太陽の墓場 6.5(+) ○リンダ・リンダ・リンダ 7.5 ○愛を乞うひと 7.5 ○ナイル殺人事件 6.5(−) ○シティ・スリッカーズ 5.5(+) ○黒い十人の女 4.5(−) ○マスター・アンド・コマンダー 7(−)  以上14編 ○非情の罠  キューブリックの初期長編作。ラスト、不気味なマネキン置き場での決闘場面はいかにもこの監督らしい作劇。 ○パラノーマル・アクティビティ  実録風ホラーっていうのでしょうかね、こういうのって。低予算にして、記録塗り替えるような動員果たしたそうなのだけど、ボクにはピンとこなかったなあ。確かに今時のムスメさんならこういうのが怖いんでしょうね。でもこれだったら正直昔正午のワイドショーでやってた「あなたの知らない世界」の再現ドラマの方が百倍怖いよ。 ○寝ずの番  中島らも原作、マキノ雅彦(津川雅彦)初監督作品。  いやぁ、面白かった! もう猥歌のオンパレード! ちんぽ、おめこおかまいなし!  師匠、兄弟子、師匠の妻が順番に亡くなっていって、その都度弟子たちが通夜の席で、思い出話ししながらとんでもないバカ騒ぎを繰り広げるお話なんですけど、観てるこっちは完全にあの通夜の一員ですよ。通夜なのに楽しくってしかたない。さすが津川さん、「人生の泣き笑い」のツボをしっかり心得ておられるなあと。  R-15指定になってますけど、子供に見せて聞かせて大笑いさせたらエエんですよ。それでね、「死んだ人間は絶対に生き返らない、残った者はこうやって偲ぶことしかできない」ことを感じさせてあげたらいいんですよ。  ボクからしたら、死者が生前の姿で蘇ってくる作品のほうがよほどR-15です。死んだ人甦らせるの子供に見せるほうが、あの猥歌の何倍罪深いかわからない。それは映像表現の死に対する冒涜だし、敗北です。どんなに「感動作」と謳っていても基本丹波さんの「大霊界」と同じなんです。 ♪ぽっぽっぽー ハトにわとりー にわとりクソこいてケツ拭かんー   それでもタマゴはおいしいなー ○蜜月  立松和平原作の自伝的恋愛小説の映画化。  昔ボクがまだブンガク青年をきどってたころ、現代文学でいちばん読んだのが彼の作品でした。たぶんこれも読んでるはず。  シナリオも立松さん。うーん、やはり小説とシナリオは似て非なるものなんだなあ。小説では尻切れトンボに終わっても余韻が残るけど、映画じゃ消化不良感が残るだけだもん。  主人公はまだ「三國の息子」の冠詞が必要だったころの佐藤浩一。青臭くて主人公役にはハマってました。 ○ファインド・アウト   アマンダ・セイフライドは劇場で「レ・ミゼラブル」観たときから、画面映えする女優だなあと思ってたのですが、本作でそれを再認識。小顔、くりっとした二重の目はどんな役を演じても存在感を際立たせます。  リベンジのオチもピタッと決まって鑑賞後感もよしのサスペンスです。 ○夜の大捜査線  このクラスの作品に点数をつけるこ自体が間違ってるというか、おこがましいというか……言わずと知れた名画です。  ずっと悲しみをたたえているシドニー・ポワチエの瞳。ガムをくちゃくちゃ噛み続ける不敵な面魂のロッド・スタイガーに漂う孤独の影……「大捜査線」と言えば「踊る」しか頭に浮ばない若い方々にぜひこの作品を観てもらいたいものだなあ。そして名画、名俳優の風格に触れてもらいたい。 ○ハート・ロッカー   現代の戦争、戦場の過酷、苛烈さを描いて秀逸。 ○太陽の墓場  大島渚監督作。売血、戸籍売り、愚連隊など、ふた昔前までくらいなら「そういうこともあったのね」的に観ることができたと思うのだけど、なんだかこれがイヤな実感を伴って迫ってくるのはボクだけだろうかはたして。  しかし伴淳三郎はホントに名役者。ホンマもんの小汚い大阪のオッサンにしか見えなかったもんな。 ○リンダ・リンダ・リンダ  再鑑賞。やっぱり好きだわこれ。最初観たときは最後ちょっと昇華されすぎかなあ、と思ったのだけど、あのコンサートの熱唱がなけりゃそれまでいったい何だったのよ、ということになっちゃうものな。  80年代後半のバンドブーム、いろんなバンドがいたけど、当時の熱のまま今も残り続けてるのはやっぱりブルーハーツなんだよなあ。  ペ・ドゥナと香椎由宇の手洗いの場面はとてもいい。ペ・ドゥナの台詞がとてもいいんです。「いろいろあるけど、そうありたいよな」と心から思えるのです。 ○愛を乞うひと   不満に思うところもあるんですよ。あまりに簡単に台湾行きすぎとか、自分も子供を虐待するんじゃないかという葛藤に触れていないとか、亡夫を全く描いてないとかね。でもそれ差っ引いてもこれは邦画史に大きな爪痕を残す作品。淀川さんが激賞したのも頷けます。  間違いなく原田美枝子の代表作。鬼気迫る彼女の演技をぜひご覧ください。邦画のみでオールタイムマイベスト50を選ぶとしたら多分残る作品です。 ○ナイル殺人事件  本格ミステリーはトリック分かってもそれをただの「後づけ説明」と感じるか「見事な種明かし」と感じるかで成否が別れると思うのですが、これは後者でした。犯人、トリック分かったので、後日それを踏まえた上でもう一回観てみるつもりです。 ○シティ・スリッカーズ  カウボーイ体験(予想外、予定外の展開大あり)を通してオッサン三人組が「自分」を回復するお話。まあ、面白かったです。過酷な現代社会、地上波で放送したらけっこう視聴率取りそうな気がしますけどね。 ○黒い十人の女  巨匠、市川崑監督作品ということで期待してみたんだけど、正直期待外れ。  チャンネルのHPには紹介文として「オフビート感覚」って言葉があったのですが、確かにオフだな、オンではない。一言でいうとこの手の作品になくてはならない「スリル、サスペンス、ダイナミズム」がないのですよ。なんとなーく本妻と愛人たちが集まって、なんとなーくわちゃわちゃして男殺す事に決めて、なんとなーくだましたのかだまれたのかいなぁ……って眠たいわっ!!  まあ、男と女の性や業といったものは描かれてたように思います。 ○マスター・アンド・コマンダー  歴史海洋戦争もの。なかなかに男の子の血を沸騰させる出来栄え。  最初、突如現れたフランスの新鋭戦艦にイギリス軍艦がボコボコに負けるところからストーリーは始まります。でもって最後にはフランス軍艦負かすと。ベタなんだけど、<敗北、ダメ→努力、葛藤→勝利>という「ロッキーパターン」は外れがないんだよなあ。少年成長物語の側面もあります。  帆船軍艦の戦闘シーンも大迫力。そしてどこをむいても男、男、男!女性が出て来るのは水上の物売りの場面でチラッとだけ。あとはひたすら男ばっかり(笑)  作品力で4点つけました。観終わって「あー、面白かった!」とはっきり言える作品です。出て来るのは男ばっかりですが、女性もぜひ。  今回のゼヒモノは「寝ずの番」「愛を乞うひと」そして「夜の大捜査線」。 ことに「夜の〜」は鑑賞時より余韻力0.5点アップです。いい映画って日をおいていろんな場面がふと思いだされたりするんですよね。クインシー・ジョーンズの音楽もめちゃくちゃいいんですよ。 They call me Mister Tibbs!(ミスター・ティッブスだ!) ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]2015鑑賞映画採点及びひとことふたこと?〈2/24〜3/9〉/平瀬たかのり[2015年3月10日21時14分] ?作品力=5点 ?余韻力=3点 ?再鑑賞魅力=2点(?には鑑賞後に歓談を誘発する力があるか、?には保存価値があるかも考慮) 総合的な印象として0.5ポイント加えるか否かを基準として+、−を付加。 (7.5点以上は+、−表記はなし) ○狂った果実 6(−) ○大空港 5.5(+) ○ミスト 5(+) ○帰郷 8 ○嵐が丘(前・後) 5.5(+) ○屋根の上のバイオリン弾き 6(+) ○がんばっていきまっしょい 7(+) ○蝿の王 5(+) ○フィラデルフィア 7.5 ○がんばれ!ベアーズ 8 ○悪人 8 ○大人は判ってくれない 8 ○WATARIDORI 7(+) ○ひまわり 8 ○シャンハイ 3(−) ○ジャガー・ノート 6(−) ○無法松の一生 5.5(+) ○ゼア・ウィル・ビー・ブラッド 6.5(+)                     以上18編 ○狂った果実  中平康監督の作品なら、同じ無軌道な青春を描いたものとしては加賀まり子の「月曜日のユカ」の方が好きだなあ。しかし津川雅彦の若い時ってのは彫刻刀で彫ったみたいな顔だ。 ○大空港  パニック群像劇としてよくできているとは思うのだけど、いかんせん飛行機飛ぶまでが長い。それにあんな大きな穴開いてちゃんと戻ってこれるっていうのは、リアリティーの点で疑問が残るわけで。 ○ミスト  バッドエンドっていう知識だけはあったんだけど、確かに・・・。まあ後味悪い悪い。「これも映画かなあ」と思うし、密室パニックものとしてよくできていたので目くじらたてることもないのだけど、ただ怒髪天を衝く人がいるであろうことも容易に想像がつく後味悪さであった。 ○帰郷  言うなればベトナム帰還兵と人妻(二人はハイスクールの同級生でもある)の不倫物語なのですが、それぞれを演じるジョン・ヴォイドとジェーン・フォンダが実にいい。こういう作品観ると、戦争の悲惨さ、後々まで個人に残る悲劇や苦しみを映画こそ描いていかなければならないと強く思う。  ビートルズ、ローリングストーンズ、サイモンとガーファンクル、ジミー・ヘンドリックスなどの名曲も惜しみなく使われ、それが作品によく合っていて効果的なのであった。 ○嵐が丘(前・後)  おそらくテレビ映画として公開されたもの。メロドラマの原点、世界文学史上に残るヒール、ヒースクリフの哀しき悪漢ぶりをそこそこ楽しめました。 「嵐が丘」は作品読んだことあるのですが、血縁関係がゴチャゴチャしてて、「誰が誰の息子でムスメだったかなあ」と本編と相関図何度もいったりきたりした覚えがありまして、実は今回もそんな感じでした。 ○屋根の上のバイオリン弾き  素晴らしいミュージカル映画だとは思うのだけど、これはやっぱり舞台劇で観てナンボの作品なのではなかろうか。「レ・ミゼラブル」にそれは感じなかったんだけど。まあ両方とも舞台作品観てなくて言うのはダメなのだけど。 ○がんばっていきまっしょい  二回目の鑑賞。堂々と女子スポ根もの。意外と後述のベアーズと似てたりもする。田中麗奈が初々しい。  親がきちんと描かれてるのがよい。こういう未成年ものはやはり彼、彼女らが「親の庇護下にあること」をちゃんと押さえないとリアリティーが出ず、クソ生意気な妖精どもが戯れてるだけの映画になってしまうのだ。(そうなってるのが「桐島、部活やめるってよ」)  ちなみにクリーニング店を経営する主人公の父親は、白竜。しぶい。渋すぎる。ものすごくいいアクセントになってるんだな、白竜とうちゃんが。 ○蝿の王  十五ならぬ二十四少年漂流記。ただこちらの方は、彼らの姿を借りて極限下における人間の本質をあぶり出していきます。  原作どおりなのかもしれないけれど、こちらも人物十五人くらいにして、もっと群像劇みたいにしたほうが、より強く伝わるものがあったかもしれないと思った。 ○フィラデルフィア  全面に押し出してるわけではないのだけど、無償の家族愛に涙するならこの作品だなあ。トム・ハンクスとデンゼル・ワシントンの共演観れるなんて、やっぱり贅沢なことだと思うのですよ。裁判劇としても一級品です。 ○がんばれ!ベアーズ  ここまで最後の決勝戦に比重置いた作りになってるとは思わなかった。でもその描き方が濃やかで、ちょっとドキュメンタリーみたいに感じられるところもあったくらい。助っ人二人入ってチームが一気に強くなるのは、映画的演出として許容範囲です。(うち一人はテイタム・オニール演じる少女剛腕ピッチャー)まあそれも少年野球における投手の比重はすごく重いのでリアリティー無視というわけではけしてない。  こういうポンコツ集団が頑張って最後には本当の勝利を掴む、その中に笑いも涙も散りばめられていて…というストーリーはありきたりかもしれないけど、やっぱりすごく好きだ。ボクとしての映画の保守本流はこういうお話です。 ○悪人  満島ひかりは張り上げた声が少し掠れる。あの掠れ声が実にいい。あれはどの女優さんも持っていない必殺の武器だ。  宮崎美子の「オカン感」も抜群の安定感。安定しすぎて逆に違和感感じるくらい(笑)。  演技上手をそろえてしみじみとよかった近年の邦画でした。   ○大人は判ってくれない  公開当時、この映画のラストのストップモーションを観た日本の批評家の大部分が主人公自殺の決意を読み取った(監督のトリュフォーは否定)そうなのですが、なんでやねん!今も昔も批評家アホばっかりか!ボクは希望をみましたよ、あのラストに。ていうか希望だろあのラストは。  昔の映画とか、モノクロとかいうことで敬遠せず、若い方にぜひ観てほしい作品だなあ。特に詩を書かれる若い方などには。   ○WATARIDORI   見事な映像美。どうやって撮ったんだろうという渡り鳥たちの飛翔、生態の数々。大画面で鑑賞できた人が羨ましいなあ、これ。 ○ひまわり  ソフィア・ローレンって美人女優というよりも個性派だな、ボクの中では。  戦争が引き裂く恋を描いたものとしては「シェルブールの雨傘」に軍配を上げますが、こちらも名作であることにかわりなし。 ○シャンハイ  ストーリーがイマイチ伝わってこなかったことだけでも致命的なんだけど、それより何より「画面が暗い」。だんだんだんだん眠たくなってしかたなかった。  1941年当時の上海租界が舞台なのですが、すごく扱いが難しいと思うんですよ。それぞれの立場によって歴史認識が今でも異なってるところも多々あるわけだから。「戦争渦中」を描くのってホント難しいと思う。 ○ジャガー・ノート  海洋パニックもの。あまり知られてないけど十分に楽しめる作品があったりするから、70年代の洋画は油断ならない。B級作品といっていいかもしれないけど、戦争の影がしっかり描かれているのですよねえ。 ○無法松の一生  1943年のオリジナル版。  正直ここまで時代遡った作品になると、鑑賞眼が追いついていかないという問題が出て来る。確かに初めて観るバンツマの演技は迫力あったし、最後の太鼓の乱れ打ちは圧巻だったけど、ストーリーとしてはどうなんだろう。なんかはしょり過ぎみたいな気もしたし、正直もっと泣かせる人情ものだと思ってたのだけど・・・。  鑑賞したことに価値がある、そういう作品かもしれないですね、今のボクにとっては。 ○ゼア・ウィル・ビー・ブラッド  石油を掘り当てることに一生を賭けた男の一代記。  火災を起こす油井の迫力は圧巻の一言。  そしてこの作品で特筆すべきは主人公の大山師を演じたダニエル・デイ・ルイスの名演技。さすがにオスカー三度受賞した唯一の俳優。ストーリーを俳優が食ってしまった作品といえるかも。  今回のゼヒモノはやはり「がんばれ!ベアーズ」ですね。   「監督、この試合は勝ちたいからぼくを出さないでほしいんだ…」 「…おまえはベンチを温めるために生まれてきたのか?」 「……(首をふる)」 「よし、さっさと行ってベストを尽くしてこい!」 バターメイカーはロッキーに匹敵する負けるもんかキャラだ! ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]2015鑑賞映画採点及びひとことふたこと?〈3/10〜20〉/平瀬たかのり[2015年3月20日22時24分] ?作品力=5点 ?余韻力=3点 ?再鑑賞魅力=2点(?には鑑賞後に歓談を誘発する力があるか、?には保存価値があるかも考慮) 総合的な印象として0.5ポイント加えるか否かを基準として+、−を付加。 (2.5点以下また7.5点以上は+、−表記はなし) ○股旅 7.5 ○現金に体を張れ 8 ○勝利への旅立ち 6.5(+) ○酔いがさめたらうちに帰ろう 6.5(+) ○卑弥呼 2 ○東ベルリンから来た女 5(−) ○最強のふたり 6(+) ○博士の異常な愛情 8.5 ○人間蒸発 8 ○サイコ2 6(+) ○若草物語 7(+) ○エリン・ブロコビッチ7(+) ○サンダーアーム/龍兄虎弟 5.5(+)                     以上13編 ○股旅  市川崑監督作品。渡世人へと身をやつした三人の若者の敗残を描いて秀逸。シナリオは同監督とともに谷川俊太郎御大の名前も併記されています。おそらく渡世人が切る仁義の口上などは谷川さんが書かれたのではないでしょうか。  時代ものではありますが、描かれているのは普遍的な「青春残酷物語」。おすすめします。 ○現金に体を張れ  スタンリー・キューブリック、初期の傑作。チームによる現金強奪という、サスペンス上ありがちな話しですが、これまで観たその手の作品の中で最も興奮したかもしれない。 やっぱり話は単純でいいのです。その中に起承転結がキチッと決まったエピソードを過不足なく収めることができるか、そして美しい結末に持っていけるか、それがやはりサスペンス映画のキモなのです。 ○勝利への旅立ち  弱小バスケ部が敏腕指導者によって強くなり勝ち上がっていくという王道熱血スポ根もの。悪い作品ではありません。爽快感もあります。ただやはりボクは「ベアーズ」のような泣き笑いがもっと散りばめられた中でこういうお話を観たいのだなあ。  メンバーそれぞれのキャラがイマイチ立っていなかったのと、試合の場面でシュートシーンばかりがスローモーションでクローズアップされていたのが難点だと思いました。ただ鬼監督にジーン・ハックマン、アル中コーチにデニス・ホッパーという配役はもうお見事というより他なし。あの二人が組んだらそりゃ弱いチームも強くなろう。 ○酔いがさめたらうちに帰ろう  西原理恵子原作で同テーマの「毎日かあさん」も以前観ましたが、こちらの方が好きですね。永作博美、浅野忠信、二人ともモデルのイメージに合ってたと思います。「毎日〜」の主演は小泉今日子。なんだかあまり好きじゃないんだなあ、キョンキョンの演技って。下手ってわけじゃないのですが、なんかあざとさを感じるのですよね。   ○卑弥呼  ……ハァ、これがあるからATGの作品観るのって怖いのだよ。  もちろん日本の古代を描くことに映像表現としての意味はあると思うけれども、篠田正浩監督、これじゃあ嫁さんの岩下志麻のプロモーションビデオだよ。そういや「悪霊島」でも同じこと思ったな。  あとねえ、これは作られた時代ゆえのことでもあるのでしょうが、全身白塗り男女が舞をする場面が頻繁に出てくるのです。いわゆる前衛舞踏ってやつなのだろうけれど、あんなの見せられたってワシャわからんよ。そりゃ生で観たら迫力あるのかもしれないけどさ、スクリーンやテレビ画面通して伝わる力ってほとんどないですよ、あれ。立松和平原作の「蜜月」でもこういう踊りが出て来るのだけど、やっぱり「作ってる人たちの自己満足」にしか見えなかったもん。  最後に「台詞 富岡多恵子」ってテロップ出たときはひっくり返った。そんなの初めて見た。共同脚本で、詩人で小説家のセンセイが台詞の部分だけ書いたってことなのか。それをわざわざ画面に載せるのかよ。自意識肥大に笑っちまう。小説の「……」とシナリオの「……」は似て非なるものなんだ。そんなの基本的なことだろう。だからこんなに台詞が響いてこないんだよ。  カンヌのパルム・ドールにノミネートされた? はっ、知らんやん。勝手に選ばれてりゃいいじゃん! ○東ベルリンから来た女  映像的筆致が重すぎ。まあ東西ドイツに別れてる時代設定で、越境がテーマとなるとこの重さも致し方なしか。 ○最強のふたり  最近のフランス映画ってこんなハートフルな作品が主流になりつつあるのかな。  介護の部分をもう少し丁寧に描いてほしかった。  観て楽しく、時間を損しない作品ではあります。   ○博士の異常な愛情  イエーイ! キューブリックばんざーい!!  タイトルだけは知ってたけど、まさかこんなに面白い作品だったとは。不覚。  トチ狂ったアメリカの将軍がソ連への核爆撃命令を戦闘機に命令しちゃったよ。戦闘機は連絡不可能モードに入っちゃったよ。どうするどうする大変だよ大統領!  テーマがテーマだけにちょっと不謹慎だとは思うのだけど、えらいさんが集まって右往左往するさま(自分の都合とかむきだし。女から電話でせっつかれて早く帰りたいオッサンとかいる)はもうおかしくて仕方ない。  ラストの映像と音楽のギャップがこれがまた恐ろしくも見事。  いやいやこれ以上は言いますまい。プーチンさんが何やらきな臭いお言葉おっしゃられた今、ぜひこの作品をご覧ください。 ○人間蒸発  失踪した婚約者を探す女性を主人公にした今村昌平監督のドキュメント映画。  すっごい作品。おしっこちびりそうなった。  現在では絶対に無理。プライバシーも何もあったもんじゃないです。  だんだんとむき出しになっていく人間の「業」は真実だけに寒気すら感じる。  結局解決しないまま終わるのだけど、分からないままでいいよって気持ちになりました。  やっぱり人間って面白い。主人公のお姉ちゃん、シラ切りとおしたまんま終わるんだもんなあ。これは多くの方に観ていただいて、意見交わしたい作品です。   ○サイコ2  ヒッチコックの名作「サイコ」の続編。屋上屋を重ねることになってないといいけど…と思って観はじめましたが、これはこれで単独の映画として楽しめました。アンソニー・パーキンスも「それから二十余年後」を見事に演じてさすがです。鑑賞においては本編をまず観られてからご覧になることをおすすめいたします。  びっくりしたのは、ヒロインのメグ・ティリーという女優が鈴木杏に似てること。もう本当にそっくりで、途中から鈴木杏が演じてるようにしか思えないくらいでした。他人の空似とはいえそっくりすぎ。どこかで血が繋がってるんじゃなかろうか。 ○若草物語(´94ver)  えーごほん、ワタクシのココロの中には14歳の少女がひとり住んでおってだな、まあ彼女を大好きな「櫻の園」と応援しているセレッソ大阪から「桜子ちゃん」と名付けているわけなのであるが、さすがに彼女が反応したわけなのだな、この世界文学史上に燦然と輝く原作の本作にはな、うむ、ごほん。 「ちょっと後半駆け足すぎなのよね。でも観終わって原作読みたくなっちゃった。ということはいい映画なのだと思うのよね。四人姉妹を演じた彼女たちのプロフィール後で調べたりして、へぇ、なるほどねえ……ってなっちゃたったりして、てへっ」   ○エリン・ブロコビッチ  ジュリア・ロバーツっていうのは美人女優というよりやっぱり個性派、実力派女優だと思う。まあ「ファック!」「ファッキン!」の台詞の似合うこと。  実話を元にしてる作品なのですが、うまいことおいしい場面だけ切り取って映画にしているように思いました。シナリオの勝利ですね。  ちょっと「女版ロッキー」みたいなところもあり、好きな作品です。いろいろしんどくなってる女性が観たらきっと元気がもらえる作品。 「ジュリア〜っ! チクビチクビ!」 「るっさい、分かってやってるんだからほっといてよ ファッキン!」 みたいな場面あり(笑)   ○サンダーアーム/龍兄虎弟  ボクたち世代の男の子にとって「ジャッキー・チェン」という俳優は特殊な存在でありまして、「酔拳」とか「木人拳」とかテレビ放送される日はちょっとしたイベントでした。(そういえば「プロジェクトA」のテーマソング完璧に歌える同級生がいた)。  久々に観たジャッキーはやはり元気いっぱい、アマゾネス軍団ぶちのめして、崖からダイブして熱気球の上に着地したりしてました。ラストのメイキング、NGシーンもお約束で「そうそう、これこれ!」ってなものです。B級映画は作品力3点が満点ですからね、総合5.5(+)でいいんです、はい。観せたいなあ、今の中学生男子にジャッキーの映画。テレビでやってほしいなあ。  今回のゼヒモノはまあ「博士の異常な愛情」ももちろんそうなのですが、やっぱり「人間蒸発」ですね。今村監督のものは「復讐するは我にあり」をずっと観たいと思ってていまだ叶ってないのですが、それより先にこの隠れた名作を鑑賞できて、嬉しいといえば嬉しいのだけど、単純に嬉しいといってしまっていいのかどうか・・・。  同じドキュメンタリー映画でも「ゆきゆきて神軍」は対象者のキワモノ感が半端じゃなかったのですけれど(あれはあれで凄い作品だと思う)、こっちは「市井の人」ですから、その分「人間の怖さ」がいっそう身近なものとして伝わってくるのです。というわけで「人間蒸発」ご覧になられたらお知らせください。感想述べあいたいです(笑) ---------------------------- [自由詩]親父八景洋子戯(おやじばっけいようこのたわむれ)/平瀬たかのり[2015年3月23日23時54分] お父さんセンサー稼働中 んがしかし やっぱりポンコツはたしてアナログ 溜息で曇るカレンダー ようやくつきとめた洋子彷徨う大阪   西中島南方 北方面東出口は見つからない 最初増えたんだよね意味分かんないし ていうかここどこ 立売堀 こんな都会でまとわりつくイタチ アンタは爆発しないでよ こびりつくのはもうゴメンなの 野江内代 のえうちんだい の〈ん〉はどこだ いやだお父さんってばスケスケ〜 ってか バ〜カっ 放出 中古車センターでプリンを食べてみた プッチンっと ポッチを折って はなってん  なんちゃって 天下茶屋 てんかじゃや でなく てんがちゃや だと知るワタシ 『戦国自衛隊』の戦車を海に沈める場面で泣いていたよね 十三 実は十三人のお父さんが迎えに来ている 知ってるけどね 見えないのは知らないのと同じだし 喜連瓜破 きづれかっぱ? 紋次郎の道中合羽の親戚とか? え、キレウリワリ? 何それ笑っちゃうんですけど でも逆から読んだら何だかエロくないですか 夢洲 お嬢ちゃん何泣いてるのん 何でもない ねぇオバチャンその服どこで売ってるの オシャレやろ天神橋筋商店街で買うてんよ 豹より豹柄 あはははは なに泣きながら笑てんねんよお嬢ちゃん ほらミルキー飴あげる ありがとうオバチャン ミルキー飴は噛んだらアカンで 歯ァにニチャニチャするからな あ 虹 (ミルキーってこんなに甘かったっけ) はよぉ帰りや お嬢ちゃん お家の人心配してんで  うん ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]完成させました。/平瀬たかのり[2015年3月31日14時41分] 《昨年春から、実在したサラブレッド、レースをテーマにした、競馬ライターかなざわいっせい氏の「ファイト!〜麗しの名馬、愛しの馬券」というショートショート集を、オリジナル作も混ぜながら、連作作品としてシナリオ化しています。  全20編中、14編ほどをシナリオ化する予定で、現在7編目の途中です。  シナリオ学校に通い専門的な勉強をしているわけでもなく、ナカナカままならない時間の中、書き続けるというのはやはりしんどいところもありまして。「これ書いてどうなるねん?」てな気持ちと闘う俺、後厄も終わってるんですけど。俺の明日はどっちだ。  昨年は「日本映画専門チャンネル」で放送された作品を中心に邦画200本近く鑑賞することができました。その中で気付いたのは、「ワタシが素晴らしいと思う映画(きっとドラマも)はどんなジャンルの作品でも『人間のおもしろかなしさ、かなしきおもしろさ、がきちんと描かれているもの、伝わってくるもの』だ」ということでした。そんなシナリオを原作の力、実際のお馬ちゃんたちの力を借りて、書きたいと、おこがましくも強く思っています。  ナントカ年内めどに予定どおり書き上げ、原作者のかなざわさんにお読みいただくことはできないだろうかと考えてます。  それでもやはり暗夜行路の徒手空拳、ダンスインザダーク(そんな名前のお馬もいたの)の毎日。折れそうになるココロのキックとして、場違いもわきまえず、恥ずかしながら開陳させていただきました。平にご容赦くださいませ。  一年後の今日、どうなっているか、どうなったか、ご報告したいと勝手ながら思っております。 頑張って完成させます。》 ※     ※     ※     ※     ※     ※     ※           以上「完成させよう」と題した拙文をこちらに投稿したのは昨年の三月三十日。あれから丸一年、休みの日に少しずつ書き進め、誰に頼まれたわけでもないのに亀の歩みで書き進め(笑)、珠玉の原作のシナリオ化を思い立ってから丸二年近く、本年明けて暫くしてようやく脱稿までたどりつくことができました。 (結局十編+エピローグとなりました)  オリジナル作品でコンテスト応募ってのが本当なのだろうけど、でも書きたかったんだからしょうがない。  去る三月三日、原作者のかなざわさんにお手紙を書き、お読みいただけないかと依頼しました。数日後メールが届き、「読むから送ってくれていいですよ」とのお返事が!  出来不出来はともかく、原作者にお読みいただくことがとにかくの目標だったので、これはもう本当に嬉しく、かつさすがに緊張しつつ、お返事に書いてあった通り、メールの添付ファイルで全10編+エピローグを十六日に送信しました。  よい感想いただけたらなあと正直思うし、なにか「次」に繋がっていけたらなあとこれまた正直思いもするのですけれども、まあ、そんなに甘いものではないですからね。過度な期待はしないよいうにしております。二年かけたとかたいそうなこと言うても素人仕事なんでね〜。あとは野となれヤマザクラ。  ボクは歌謡曲人間なので、勝手にエンディングテーマなんか設定しちゃったりしましてね。対象としたお馬ちゃんとともにご披露いたします。まあここで皆様にこういうカタチでご報告するのもひとつ目標であったわけでありまして。 1・ヒシアマゾン(オリジナル)‐『オトメモリアル』パフィー 2・サニーブライアン‐『ヤングブラッズ』佐野元春 3・メジロドーベル‐『レイン』甲斐よしひろ 4・ピルサドスキー/エアグルーヴ‐『破れたハートを売り物に』甲斐バンド 5・サイレンススズカ‐『月の爆撃機』ザ・ブルーハーツ 6・ノースフライト‐『知りたくないの』菅原洋一 7・エルコンドルパサー‐『ロンドンデリーの歌』土井裕子version 8・ステイゴールド‐『Stay Gold』ZIGGY 9・アグネスタキオン(オリジナル)‐『この愛は始まってもいない』真心ブラザーズ 10・オグリキャップ‐『荒野に針路を取れ』イースタン・ユース でも、結果どうあれこれからもシナリオ書き続けていこうかなと、思ったりなんかしちゃったりして。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]2015鑑賞映画採点及びひとことふたこと?〈3/21〜4/4〉/平瀬たかのり[2015年4月8日15時05分] ?作品力=5点 ?余韻力=3点 ?再鑑賞魅力=2点(?には鑑賞後に歓談を誘発する力があるか、?には保存価値があるかも考慮) 総合的な印象として0.5ポイント加えるか否かを基準として+、−を付加。 (2.5点以下また7.5点以上は+、−表記はなし) ○豚と軍艦 5(+) ○ブレードランナー 4.5(+) ○ミッドナイト・エキスプレス4.5(+) ○二十日鼠と人間 8 ○翔んだカップル 5(−) ○若草の萌えるころ 7(+) ○青春PART? 7(+) ○声をかくす人 8 ○花よりもなほ 5(+) ○フルメタル・ジャケット 8.5 ○約三十の嘘 5(+) ○奇跡の人 7.5 ○グロリア 8 以上13編 再鑑賞作品 櫻の園 ○豚と軍艦  人間のどろどろした業を真正面から描く今村昌平監督作品としてはややものたりなかった。(『復讐するは我にあり』を早く観ないとなあ)クライマックスの豚を解き放つ場面はさすがに強烈な印象を残してますが。まあ「人間蒸発」観たあとではねぇ。 ○ブレードランナー  すごい楽しみにしてたんだけどガッカリ。確かに映像表現は斬新で、時代経ても色あせておらず、評価すべきところもあるのだろうけど、何せストーリーがゆるゆる。なかなか盛り上がらず、ようやく盛り上がりかけたらダレ、盛り上がりかけたらダレの繰り返し。そのゆるさを目新しい映像でカバーしている、そう思えてなりませんでした。 ○ミッドナイト・エキスプレス  脱獄モノ。実話をもとに作られてるらしいけど、国家間の駆け引きにほんろうされる主人公にシンパシーいだけないまま話が終わりました。 ○二十日鼠と人間  未読なのですが、きっとスタインベックの原作が素晴らしいのです。その素晴らしい文学作品を簡潔かつ丁寧にシナリオ化、映像化しているのです。  足りない男、また彼を見捨てることが出来ない男、二人の哀しみが画面からずっと伝わり続けてきます。 ○翔んだカップル  80年代アイドル映画。ピチピチの薬師丸ひろ子と石原真理子を観ることができます。まあ、それくらい。相米監督作品ですが、名作ラブコメ漫画を映画化するのはとても難しいという見本のような出来栄え。 ○若草の萌えるころ   思春期の少女が大好きな叔母の危篤で不安定な精神状態になり、夜の街を彷徨う中でいろんな人と出会い、そして・・・というお話。ドラマ性には欠けるのですが、特に今の10代女子に特に観てほしい作品です。  主演のジョアンナ・シムカスが瑞々しく美しい。どうも撮影当時、監督と彼女は恋愛関係にあったそうで、なるほど。何かそういうものが伝わり続けてたんですよね、観てる間中。「惚れた女の『若草の萌えるころ』を映画化してやるぜ」観たいな感じが。 ○青春PART?  これがあるからATG作品は油断ならない。競輪選手を志す若者のお話なのですが、まず当時の競輪学校の中を観ることができるだけでも得した気分。汗が飛び散り、挫折の痛みが伝わる「青春熱画」。『ヒポクラテスたち』をほうふつとさせるものがありました。 ○声をかくす人  リンカーン殺害に関与したとして、死刑執行された下宿屋おかみが主人公。彼女はアメリカで初めての女性死刑囚でした。  素晴らしい人間ドラマですが、法廷劇としても一級品。勝者が敗者を裁く、その理不尽さに疑問を抱いたまま話に引き込まれていきます。  そしてラストに訪れる安堵、しかしすぐさまの絶望。実話だけに思わず目を閉じ「ああ・・・」と呻いてしまった。  いい作品だけに、邦題は何とかならなかったかと思う。別に法廷で喋らないわけじゃないし、主人公。 ○花よりもなほ   忠臣蔵の外伝的なお話でもあったのね。あ、そういや「花よりもなほ」は赤穂の殿様の辞世の句の一節だわ。人情ものとしては、まあこんなものかな。 ○フルメタル・ジャケット  二十年ぶりくらいの鑑賞。大好きなのですこの映画。  二時間ぴったりの中で「戦争が圧殺する個人」を見せるキューブリックの職人技。彼はどんな悲惨、苛烈な状況を描いても観客に「笑い」をよびおこすことができる映像作家なのです。あのバカ教官の罵りなんて、きっと字幕なくても大爆笑ですから。ラストのミッキーマウスマーチも、寒気感じながら笑うんだよなあ。戦争の悲劇を描いてます。でもこの作品は最上級のファルス(喜劇)でもあるのです。彼と新藤兼人さんには大喜劇を一本撮ってほしかったと思う。 ○約三十の嘘  詐欺師集団のワンシチュエーションものという設定に大いに惹かれて期待して観はじめたのだけど、ならばもっとドキドキさせてくれないと・・・。元は舞台劇。べつに映像化しなくてもよかったんじゃないの、これ。  重要な役割を担う伴杏里が下手。。マッチアップすることになる中谷美紀が上手いだけに彼女のお遊戯会レベルが際立ってしまった。 ○奇跡の人  ヘレン・ケラー物語です。大感動作でもあるのですが、それ以上にこれは、<ケラー家離れ>を舞台にした、赤コーナー・ヘレン対青コーナー・サリバンという「女vs女」の凄絶なるフルコンタクトバトル映画です。ボクは途中からそういう観方をしていました。だからこそ最後のヘレンが「事物−意味−言葉」を獲得する場面で快哉を叫んだのです。 ○グロリア  おばちゃんハードボイルド。ジーナ・ローランズ演じるこのおばちゃんがただものではないのです。主人公グロリアは「組織」に追われる子供を連れてやむなく逃避行をしてくのですが、始めは「なんでわたしが・・・」みたいな感じで子供置き去りにしたりするのです。でもだんだんと母性に目覚めていくのですよね、彼女が。この過程と心の揺れは、主人公が生粋のおばちゃんだからこそ伝わってくるのです。シャロン・ストーンで99年にリメイクされたらしいけど、当時の彼女ではねぇ・・・。まあ観てみたい気持ちはありますが。  女優の、いや、もっと言うと女性の輝きは年齢じゃ測れないのですよ、そういうことをボクに気づかせてくれた記念碑的アクション映画であります。 再鑑賞作 ○櫻の園  やっぱりまた観てしまった(笑)。部員のひとりのお姉さんがアイスさしいれにやってくる場面がいいのですよ。やはり未成年が中心の映画は、どこかで家族との繋がりを提示しないと、作品に深みが現れないのです。    今回のゼヒモノは「フルメタル・ジャケット」と「グロリア」ですね、やはり。  もしもあなたがしょんぼりしている女性なら、「エリン・ブロコビッチ」と「グロリア」を観て元気になってください。   ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]2015鑑賞映画採点及びひとことふたこと?〈4/5〜4/22〉/平瀬たかのり[2015年4月24日23時22分] ?作品力=5点 ?余韻力=3点 ?再鑑賞魅力=2点(?には鑑賞後に歓談を誘発する力があるか、?には保存価値があるかも考慮) 総合的な印象として0.5ポイント加えるか否かを基準として+、−を付加。 (2.5点以下また7.5点以上は+、−表記はなし) ○ロビンとマリアン 5.5(+) ○デルス・ウザーラ 6.5(−) ○シャーロック・ホームズの冒険 5.5(+) ○武士の家計簿 6.5(−) ○プロジェクト・イーグル 4.5(+) ○シャイニング 6(−) ○黒の駐車場 6.5(+) ○スラムドッグ$ミリオネア 8 ○昼顔 6(−) ○死者の学園祭 5.5(+) ○エル・シド 6.5(+) ○インビジブル 5(+) ○野獣死すべし〈1959版〉5(−) ○マークスの山 5.5(+)    以上14編 ○ロビンとマリアン   初老とよんでもいい年齢になったショーン・コネリーとオードリー・ヘップバーンの時代恋愛もの。ロビンというのは「ロビン・フッド」のことなのですが、やはり若き二人のロマンスを観たかった。まあ味わいはありましたが。 ○デルス・ウザーラ  「世界のクロサワ」の撮った洋画。きっと彼独特の作家性ゴリゴリ出して来てるのだろなあという先入観あったのですが、けしてそんなことはありませんでした。野人デルスの逞しくも悲しき生きざま。中学生とかに映画の入口として観せたいような作品。 ○シャーロック・ホームズの冒険  ビリー・ワイルダーは好きな監督なのですが、これは今一つ。ネッシー出してきたりしたのは公開当時の時代に迎合してたのかも。 ○武士の家計簿  森田芳光監督作品はこれまであまり自身の性に合わない感があって、独特のインテリ感を感じちゃうというか。でもまあこれは嫌みのない現代の邦画でした。  ただおばあちゃんになった仲間由紀恵の顔、ツルツルすぎだろう。あんなむき卵みたいな顔したお年寄りいてたら怖いぞ。 ○プロジェクト・イーグル  ジャッキー・チェン主演、「サンダーアーム/龍兄虎弟」の続編。  あれ、どんなストーリーだったっけ(笑)。でもそれでいいんですよ、ジャッキーのやつはね。 ○シャイニング  十年以上前に一度観てます。キューブリックの才能には改めて驚いているのですが、この作品はボクとしてはあまり評価高くないのです。ちょっと自身の映像センスとイカレっぷりに酔ってお話そのものがグダってるように思えてならない。 ○黒の駐車場  田宮二郎という俳優は、軽妙、中庸、重厚、その全てを見事に演じられるまさに名優であったと、作品を鑑賞するたびに思うのです。でもよほどの映画好きでもなければ、お若い方はその名も知らない人がほとんどとなっているかもしれない。それが本当に惜しく悔しい。  「黒の超特急」と同じく、彼の実際の伴侶となる藤由紀子との共演作。彼女も本当に美しい。この二人を観るだけでも価値があるといえる社会派の佳作。 ○スラムドッグ$ミリオネア  「トレインスポッティング」観てダニー・ボイル監督のブチ切れっぷりに大喝采送ったのですが、いやぁ、これもやってくれましたねぇ。どうしようもない薬漬けおバカたちのオンパレードだった「トレイン〜」と本作の共通点、それは「目線が低い」ということ。そして「現場」から逃げていないということ。そして「俗」を肯定していること。この三点って、ボクがココロ震わせられる作品の基本的な条件でもあるのです。 ○昼顔  ドヌーヴは綺麗。そのファッションも素晴らしい。上品なスケベさにもゾクゾクする。名画であることは疑いようがない。だけども、イマイチ響いてこなかったのはなぜかなあ。ボクにとってはオシャレすぎるのかもなあ、これ。主人公が抱くエロ妄想もやっぱりおフランス的オシャレ感満載なのよねえ。 ○死者の学園祭  赤川次郎という作家は、ボクらの世代にとってはちょっと特殊な意味を持つ存在かもしれなくて、読書に興味を持っていない中学生にも「本を読む楽しさ」を教えたとんでもない作家だと思うのです。たぶんこの原作も読んでるのじゃないかなあ。  2000年代前半に深キョン主演で、赤川次郎原作の王道カドカワ映画が作られただけでも意味あることかもしれません。  筒井康隆が生き生きと役者してます。そしてやはり無駄に演技が上手いな、このオッサン(笑)。 ○エル・シド  戦争スペクタクルものとしては、キューブリックの「スパルタクス」の方が上だと思う。ただ、大人数での行軍、戦闘場面はやはり圧巻。大画面で鑑賞すべき映画であることは間違いないところ。気持ちいいだろうなあ、こういう作品映画館で観ると。 ○インビジブル  暴走透明人間ストーリー。クライマックスで暴れまわるのは研究施設という閉じた空間。この設定が作品を小ぢんまりとしてしまったように思う。やっぱり透明人間は街に飛び出して暴れまくってナンボのもんでしょ。 ○野獣死すべし〈1959版〉  仲代達矢主演。これははっきり松田優作のリメイク版の方が上。59年当時の風俗も知ることができて、面白くなくもなかったんだけど。何せ優作版のラストと「リップ・ヴァン・ウィンクル」の場面が強烈すぎますからね。 ○マークスの山  全体の三分の一過ぎてもストーリーの概要が伝わってこないというのは、シナリオに問題があるのだと思う。邦画界の名優これでもかっていうくらい出してるだけに、残念。  今回は全体的にやや低調。その中でもゼヒモノは「スラムドッグ$ミリオネア」。欲にまみれたクイズ番組を叩き台に、人間を、生きざまを、業を、スクリーンにぶちまけたダニー・ボイルに拍手、拍手。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]2015鑑賞映画採点及びひとことふたこと?〈4/23〜5/14>/平瀬たかのり[2015年5月15日22時53分] ?作品力=5点 ?余韻力=3点 ?再鑑賞魅力=2点(?には鑑賞後に歓談を誘発する力があるか、?には保存価値があるかも考慮) 総合的な印象として0.5ポイント加えるか否かを基準として+、−を付加。 (2.5点以下また7.5点以上は+、−表記はなし) ○キサラギ 6.5(+) ○クロワッサンで朝食を 4.5(+) ○アイ・アム・キューブリック 5.5(+) ○サウンド・オブ・ミュージック 7.5 ○サラの鍵 8 ○シラノ・ド・ベルジュラック 7.5 ○探偵はBARにいる 6.5(−) ○探偵はBARにいる2 5.5(+) ○さよなら、みどりちゃん 3(−) ○魍魎の匣 6(−)   ○日本のいちばん長い日 7.5 ○大列車強盗 5.5(+) ○アパートの鍵貸します 8 ○白と黒 7.5 ○外事警察 5(+) ○うた魂 6.5(+) ○ぼくたちの家族 7(+) ○2001年宇宙の旅 4.5(−) 以上18編   ○キサラギ  ワンシチュエーション・コメディとしてはなかなかの出来栄え。密室に集まったそれぞれの実態が徐々に明かされていくという展開はやはり面白いですね。 ○クロワッサンで朝食を 「突然炎のごとく」の名女優、ジャンヌ・モローがわがままな金持ちおばあちゃんぶりを好演するのだけど、「如何なく発揮」とまではいってなかったように思います。 ○アイ・アム・キューブリック  スタンリー・キューブリックの名を騙り詐欺をくりかえしたという実在の人物がモデル。でもひたすらマヌケなんだよなあこいつが(笑)。「クヒオ大佐」のときも思ったけど、騙される人間見るのって面白いんですよねえ。それは騙す人、騙される人のトンチンカンぶりにこそ「面白うてやがて哀しき」人間のありようが象徴的に表わされるからじゃないでしょうか。 ○サウンド・オブ・ミュージック  見事な音楽に、美しい映像にただただ満喫。もっと教育的な感じの作品かなあと思ってたんだけど、けしてそんなことはなく、後半スリル感もあったりしてたいへん楽しく鑑賞できました。 ○サラの鍵  ナチス占領下のパリ、弟を小部屋にかくまったとき、少女サラは両親とともにナチに拘束されてしまった――。一人の女性が送った過酷な運命が、その小部屋と縁あった現代の女性によって解き明かされていく。  後半少し駆け足過ぎではあります。でも傑作であることに変わりなし。 ○シラノ・ド・ベルジュラック 「二十日鼠と人間」「若草物語」でも思いましたが、こういう文芸大作を上手にシナリオ化してる作品に出会うと、原作を読みたくなりますね。 ○探偵はBARにいる ○探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点 もしかしてもしかすると、このシリーズは 「釣りバカ日誌」の終焉で終わってしまったと悲観してた〈大衆娯楽としての邦画〉を復権させるかもしれない。「釣りバカ」ほど老若男女万民受けを狙ってるわけではないのだけれど。大泉洋―松田竜平の二人もなかなかのコンビぶり。 ただ2でやや失速の感は否めず。おそらく作られるであろう三作目が正念場だと思う。 ○さよならみどりちゃん  期待してたんだけどなあ……車でいうとずっとノッキング起こしてるような状態。主人公が勤めるスナックの場面で「あ、のれそう」と思うんだけど、恋愛場面になってグダグダってなって、その繰り返し。星野真里もいい女優さんだと思うのだけど、「観てる男客へのごほうび」的に最後の最後に脱がせるのなら、最初からちゃんと脱がせてあげないと。あれじゃ逆に可哀相ですよ。女の子が観たらまた印象違うのかなあこの映画。ただボクの中の中学生女子「櫻子ちゃん」は反応しなかったっす。 ○魍魎の匣   京極夏彦原作。近年のオカルト作品としてはまあまあの出来でしょうか。中国ロケも生きてました。  ボクの一押し女優、谷村美月が出てくるのですが、やっぱりこの人、八年前のこのころから上手過ぎて話を展開させるような役回りで、可哀相な結果になっちゃってたりするのですよねぇ。ドカーンと代表作ほしいものですねえ。 ○日本のいちばん長い日  1945年8月15日、玉音放送録音レコードを強奪しようとした一部将校たちを中心に描いた作品。監督は喜劇に本領を発揮する岡本喜八。この重いテーマを喜八監督が撮ってこそ伝わる作品、遺る作品に仕上がってるのだと思います。  アナウンサー役で若き日の加山雄三が出てます。今までボクはこの人を「過大評価されてる人」と思ってたのですが、本作で初めてこの人を評価しました。戦後を生きようとする青年の意志の強さ、それはこの人にしか体現できなかったものなのかもしれない。だからこそ彼が「若大将」になったのかもしれません。 ○大列車強盗  犯罪モノとしておもしろくないことはなかったけど、タイトルの割にはスペクタクル感に欠けました。 ○アパートの鍵貸します  ずっと観たかった名匠ビリー・ワイルダーの作品。自分の部屋を上司たちのあいびき部屋に提供する男のかなしくもおかしい物語。とにかくシナリオがすばらしい。完璧といってもいい。そして人物がそれぞれかわいい。ひたすらにオシャレで愉快。こういう作品、現代が舞台じゃもう作ろうにも作れないのじゃないかなあ。どうぞ観て幸せな気分になってください。 ○白と黒  橋本忍脚本、堀川弘通監督のサスペンスもの、かつ法廷劇。二転三転するストーリー、小林圭樹、仲代達矢の重厚な演技。そして意外な結末。なぜこれが未ソフト化なのだろう。 ○外事警察 その男に騙されるな  NHKで放送されたテレビシリーズの映画化だそうですが、それ以上でも以下でもない感じでした。 ○うた魂  「リンダリンダリンダ」「スウィングガールズ」「がんばっていきまっしょい」と同じく女子部活もの。やっぱりこういう〈女子高生ガンバリ映画〉っておっちゃんは無条件で1点プラスです(笑)。ただ『ぼくがぼくであるために』の見せ方はもう少し工夫がほしかった。 ○ぼくたちの家族  邦画史上に残る傑作、「川の底からこんにちは」を撮った新鋭、石井裕也監督作品。 「舟を編む」「バンクーバーの朝日」よりもこちらのほうが断然いい。オカン脳腫瘍で余命一週間の宣告。そのオカン借金まみれ、オトンの会社も火の車。長男嫁サン妊娠したばっかり。次男はぐーたら。おいおいどうなるんだよこの一家。  やっぱり目線が低いですね、石井監督は。そして「希望」を信じてる。人生は生きるに足るってことをはっきり謳いあげてる脚本家であり監督さんだと思います。  お医者さん役の鶴見辰吾、1シーンしか出てこないのだけど、ごっそりおいしいところ持っていってます。「ずるいわぁ〜」と言いながら号泣。 ○2001年宇宙の旅  やってしもた。キューブリック大好きなんだけど、これはやってしもてたわ。  どうして中盤の宇宙船コンピューター「HAL9000」の反乱だけに焦点当てて描かなかったのだろう。前半、後半を「映像」で魅せようとしてるんだけど、はっきり言って「ちゃっちい」。伝わりませんよ、あんな原始人が骨放りあげたり、ショボイCGの宇宙船飛行なんか。関西弁でいうと「何をいちびっとるねん」てなもんですわ。何をどういうふうに解釈しろというのよ。鑑賞後に粗筋読んで「ああ、そういうことだったのね」って…どれだけ上から目線なわけよ。キューブリックは映像よりも物語の監督さんだと思ってます。  でもいろいろ難解な部分も含めての「天才」なのかなあ。「?何じゃこれ→?うわ、面白い!→?だから何やねんこれ!」みたいな映画でした。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]2015鑑賞映画採点及びひとことふたこと?〈5/16〜5/25>/平瀬たかのり[2015年5月26日22時46分] ?作品力=5点 ?余韻力=3点 ?再鑑賞魅力=2点(?には鑑賞後に歓談を誘発する力があるか、?には保存価値があるかも考慮) 総合的な印象として0.5ポイント加えるか否かを基準として+、−を付加。 (2.5点以下また7.5点以上は+、−表記はなし) ○野性の証明 8 ○わたし出すわ 3.5(−) ○のぼうの城 6.5(−) ○野良犬 7.5 ○鍵泥棒のメソッド 7(−) ○ラスト・ソルジャー 5.5(+) ○13階段 6(−) 以上7編 (ちょっと今回は短いスパンで) ○野性の証明  二回目の鑑賞。ザ・カドカワ映画。何回観ても面白いモノは面白い。  キャスト、調べてみてください。ゾクゾクする顔ぶれです。しかしこの薬師丸ひろ子はかわいい。自分史上『ぼくらの七日間戦争』の宮沢りえの次にかわいい。  松方弘樹が自衛隊員従えて双眼鏡構えて立て膝ついてる場面あそこ好きなんですよねぇ〜。でも何か笑っちゃう場面なんですけどね。 ○わたし出すわ  結局主人公が何で人のために金出すのか、その心情がボクには伝わってこなかった。やっぱり森田芳光は性に合わない作品が多い。 ○のぼうの城  戦国モノとしては及第点いってるんじゃないでしょうか。それぞれキャラ立ってたし。  ただ主人公船上の踊りが長すぎ。やっぱり狂言師に花持たせたってところなのでしょうかね。 ○野良犬  クロサワ作品。  作品としての出来もさることながら、「巨人―南海」戦やレビューショーなど、戦後当時の風俗、町並みが優れたカメラワークで撮られています。それを今観られることの幸せよ。ああ、大画面で観てみたい。 ○鍵泥棒のメソッド  うむ、評判通りの面白さ。たいしたシナリオですわ、これ。監督、脚本の内田けんじは海外の映画の学校出身。やっぱりいい仕事しようと思ったらある程度の「基礎」は必要なのだな。他ジャンル(歌手とか芸人とか)で成功したからといって、簡単になれるものじゃないのですよ、映画監督は。 ○ラスト・ソルジャー  ジャッキー・チェン主演の歴史モノ。なかなか深くラストなんか感動的なのだけど、それでもエンディングはお約束のメイキングNGシーンあり! さすがジャッキーの映画はこうでなくっちゃ! やっぱり嬉しいじゃあ〜りませんか! ○13階段  深く、重い作品であり、かつミステリーの要素もあって楽しめたのだけど、被害者殺害場面の描写がなかったのは、圧倒的に画竜点睛を欠く、の感でした。 <雑感>  常々思ってるんですけど、高校の視聴覚教室とかで、放課後映画の上映会とかできないものなんですかね。「映画鑑賞部」とか在ってもいいし、そういうことやってくれる先生がたくさんいるべきなんじゃないかなあと思うんですよね。衛星放送や録画機器の発達でそういうことすごくやりやすくなってると思うんだけれど。  どうしてそんなこと思うかって言いますと、やっぱり十代の時に観る映画って特別なんですよ。  邦画洋画問わず、ちょっと前はテレビでも今よりずっといい作品やってました。「刑事ジョン・ブック/目撃者」のハリソン・フォードとケリー・マクギリスのダンスシーンのステキさとか、「泥の河」のカニ燃やすシーンの残酷な静謐さとか、「時代屋の女房」の夏目雅子の神がかった美しさとか、「バーバレラ」冒頭でジェーン・フォンダが披露する〈無重力ストリップ〉のドキがムネムネ感とか(笑)。もう今でも鮮烈に胸に遺ってます。  ボクは別に映画少年でもなかったし、昔も今もクソ田舎在住だから映画館で映画観ることなんてほとんどありませんでした。でもそういう「たまにテレビで観る映画」の遺りかたが半端じゃなかったのです。  今なんか「あ〜これ高校生のとき観ておきたかったなぁ〜」って作品の連続ですよ。理解度とか余韻ということにおいては年齢経てから観る方がより深く感じられるのでしょうが、こと作品が与えてくれる衝撃度という点においては、やはり映画は十代のうちに観ておくべきなんじゃないかと思うわけです。  あ〜、ボクがなぁ、キヨシローが歌う「ぼくの好きな先生」みたいな先生だったら放課後の視聴覚教室は毎日名画座だな。「野性の証明」とか凄く観せたい。「戦国自衛隊」とかもね。あ「トラック野郎」シリーズもいいな。心臓爆発しそうになりながら借りた「窓からローマが見える」はさすがに首が飛ぶかもな(笑)。  そんなことを夢想妄想してるわけなんですよ、はい。 ---------------------------- [自由詩]荒野に針路を取れ/平瀬たかのり[2015年6月19日13時09分]  映画を観てのことばは  批評や感想ではなく  あくまで実作において  綴らなければならない  実作すなわち脚本、そこに  書くことの時間全てを当てよう  カタルシスの意味において  きっとそれはいっそうな苦闘だけれど  目の前に果てなく広がる闇、そこは  お金も時間も若さも才能も機会も  ぼくよりふんだんにあるひとびとが  さまよい歩いている荒野だ  だからぼくは一歩を踏み出せず  慄いたままでいた  けれど決意の時はふいにやってくる  それはいつもの朝だったりする  「いくら落ちたってイノチまで取られるわけじゃない」  ひとあし、ひとあし、ペダルを強く踏み込む  向かい風が立ちこぎをふらつかせる  だから詩よ  いつだって愛憎半ばしたおまえよ  今、とりあえずのさようならだ  けれどわがままなお願いだ  詩よ  題名に、ト書きに、台詞に、人物名に  しとやかな雨となりふりそそぎ続けてくれ  暗い荒野を歩くぼくの  一条の灯りとなり足下を照らし続けてくれ  ずっと、ずっと    (タイトル=イースタン・ユースの同名曲より) ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]城戸賞、落ちました(笑)。/平瀬たかのり[2015年9月30日16時35分] お久しぶりです。 皆様の玉稿、全然読めてなくてごめんなさい。 タイトルどおり、シナリオコンクール「城戸賞」に果敢にも無謀にも応募したのですが、やはりというべきか当然というべきか、一次選考通過なりませんでした、ショボーン。 いや、実はショックはあまり感じてないのですよ。まあ全然感じてないかっていうと嘘になりますが。でも今回は一本書きあげて、応募することに意義があるって思ってましたから。送付してから原本読み返してみて「あ〜ダメだろうなこりゃ」って思う自分もいましたし。 今回書きあげて感じたのは、シナリオは〈推敲と書きなおしの世界〉であること。書きなおすためには自作に対しての厳しい客観的な視線が必要なのだということ、でした。だからこそシナリオ教室がたくさん存在し、そこの出身者がプロとして数多く活躍されているのだと思います。他者のアドバイス受けられるというのはすごく大きなことなのですシナリオ執筆において。 んがしかし、ワタクシの場合シナリオ教室に通えるような環境にもなけりゃお金もない。だからとにかく独学でガンバローと思って一本書き上げたのですが、その限界を感じてしまった。つまりやっぱり〈自作に対しての厳しい客観的な視線〉を持つ、その鍛錬をするってことは、ひとりじゃ本当に難しいんだなあと痛感したのです。 そこでこれから先、お前の書いたもの読んでヤローじゃねぇの、キツイアドバイスくれてヤローじゃねぇの、というご奇特な方もしもおられましたら、メールの添付ファイルでの作品送信、メールでの以降のやりとりになることをご理解いただいた上で、こちらにメッセージか私信いただけたらありがたいです。 作品、ここに公開するようにしようかとも思ったのですが、そうなるとどこのシナリオコンクールにもある「未発表作に限る」という大原則規定にひっかかってしまいますので。 落選作はしばらくしてから改稿の上、こちらで公開させていただくこととして、現在だいぶ書きすすめているものを送付できればと思っております。 アドバイスいただくことも目的なのですが、やっぱり書き上げたものは巧拙に関わらずどなたかに読んでいただきたいというのが、人情というものでありまして。 なんとも場違い勝手なお願いとなりますが、いいよという方おられましたら、よろしくお願いいたします。 あ、みなさまの作品もまたちゃんと読ませていただきます(汗) あ〜落ちた落ちた! 今夜は軽くひとり残念会っす(笑) ---------------------------- [自由詩]ドS洋子の帰還/平瀬たかのり[2016年1月4日13時20分]  帰ってきた洋子はおもしろくない  しばらくはまあそんなもんかと思っていたが  いつまでたっても父は自分の前で変態しない  何がおもしろくないって  それをおもしろくないと思う自分が  何よりおもしろくない  と、ここで洋子はこちらを向く  怜悧な刃物のような瞳で作者を見る  そもそもアンタが悪いのよね  ネタに困ったからって  変態お父さんを違った意味での変態にしたでしょ  あのあたりからおかしくなっちゃったのよ  そこんところわかってんの?  ふんだ、ぷいっ  おかんむりの洋子ちゃんにやつあたりされ  作者もいささか戸惑いを禁じ得ない  洋子はそもそもおもしろくない  お父さんが変態しなくなったかわりに  友だちの千恵ちゃんが変態するようになったからだ  その頻度とレベルは日に日に上り  もうお父さんとさほど変わりなくなってしまった  爆発だけしかできなかった彼女が  この頃はあっという間に増えたり消えたり紋次郎になったりする  戦車の操縦すら覚えてしまった  洋子は知っている  夜ごと公園でくりかえされていた  一徹、飛雄馬親子の如き二人の  変態養成ギプス装着による猛特訓を  明子姉さんのように木の影から見ていたので知っている  あの夜洋子の瞳から涙が一粒零れ落ち  それはエメラルドに変わり  洋子のささやかな変態は静かに終わりを告げたのだ  それから洋子の涙は涙のままだ  と、ここでまた洋子は作者を見る  もはやヤンキーがメンチを切るような目だ、怖い  何がエメラルドの涙だばかばかしい  言ってあげるわ、ネタ切れなのよねぇ  こんなしょっぱい楽屋落ちや  いんちきメタフィクションに逃げ込んだりしてるのがその証拠  シナリオコンクールで一次選考も通らないのも当然よねぇ  今年も書くつもりらしいけどまぁせいぜい頑張んなさいよ  気づいてる? あんまりおもしろくないわよ、こういう試み  おい、久々に現れたと思ったらこのザマか  ネタ募集って書いた紙でも背中に貼って  電脳世界の中走り回ってろ、このブタ野郎が  ああ、ここまでくるともう作者は手をつけられない  わたしは洋子ちゃんをドSにしてしまった  いや、洋子ちゃん自らドSに成長したのである  彼女を救えるのはたぶんお父さんだけだ  あなたは洋子ちゃんを叱りつけなければならない  洋子ちゃんの前でますますの変態を見せねばならない  そして彼女のなおいっそうの怒りを  あなたが、あなたこそが浴びねばならない  お父さん  作者の知らぬ多元宇宙のどこかで  千恵ちゃんと新春変態合戦で盛り上がっているのなら  もはやそんなことしてる場合ではありません  早く帰ってきてください ---------------------------- [自由詩]〈サンライズジャーニー〉GLIM SPANKY - SUNRISE JOURNEYより /平瀬たかのり[2016年2月11日18時33分]  お昼からの仕事はひとりきりの惣菜部  体はきついがおばちゃんおらずで気は楽なのだ  過去的現在的将来的に  考えなければならないことは  山ほどあるのだけれど  五時半までに終わらせないとならない仕事も  山ほどある  BGMは流行り歌の有線放送  ずっと恋は甘くて明日はいい日だ  自己啓発セミナーの講習を受けているのですねぼくは  「責任者出てこいっ!」  脳内に棲む人生幸朗師匠にボヤかせるのにも  そろそろ疲れてきたから  ぼくが時代にあわなくなったのサ、と  時代にピッタリ合った非正規雇用者のぼくが  うそぶくのも皮肉なもんだね、ははん  なんて嫌みな笑いを浮かべていたのだけれど  まさか出会った君たち  ドスの効いた歌声とブルージーなギター  過剰ならりるれろの巻き舌こそ  きっと世界への宣戦布告なのだろう  もしかしたらぼくがこれまで聴いてきたミュージックは  君たちに出会うために在ったのか  だからぼくはもう流行り歌に腹を立てない  何だったら口ずさんでやってもいいくらいだ  若い君たちの旅は今始まったばかりだ  日ごと大きくなる喝采と共に  その旅は続いていくのだろう  おんぼろバスはいつかキャディラックにかわるだろう  だけどぼくの旅はもう始まらない――  なんて誰が言った  いや、ぼく自身が言っていたのか  自転車通勤するぼくの右上方向には  晴れた日ならば朝陽が昇りつつあって  君たちに出会ってからそいつが  やけに眩しく見えてならないんだ  本当だぜ  あちっ、イカ天揚げてて油跳ねちゃった    ※(GLIM SPANKY のファーストアルバム「SUNRISE JOURNEY」に収録されている曲をモチーフとし、いわゆる二次創作として、各曲と同タイトルの作品を自分なりにボチボチと書いていこうと思っております) ---------------------------- [自由詩]佳日邂逅/平瀬たかのり[2016年5月20日19時34分]  ぼくは今日ハローワークに行った  あさっての面接の段取りをつけ  神社にお参りをしてうまくいくように祈った  (苦しいときの神頼みだね)  帰りのバス停ベンチに座って  コンビニおにぎり二個一九八円のパックを開けた  ぼくから少し離れたところで   女子高生がひとり  立って教科書を開いていた  一生懸命読んでいた  ぼくは梅おにぎりを  〈お〜いお茶〉で流しこみながら  彼女を見ていた  「わっ!」  「きゃあ! もうびっくりしたぁ!」  ともだち登場、笑顔の花が咲く  ぼくは鮭おにぎりを  〈お〜いお茶〉で流しこみながら  彼女たちを見ていた  ぼくも二人も同じバスに乗った  スポニチを開いて  昨日のタイガースサヨナラ勝ちを読む  後ろで二人は楽しくきゃらきゃら話している  もちろんぼくはエロ面に目を通したりなんかして  バスが止まる  教科書の彼女が席を立つ  「じゃあ 明日がんばって」  「うん ありがとう」  二人手をふりあって  教科書の彼女がバスを降りていく  「わっ!」の彼女も終点までに降車してしまった  ぼくは二人の会話に  聞き耳立てていなかったことを  少し後悔しながら、スポニチをたたんだ  あさってが  今日のような佳い日でありますように ---------------------------- [自由詩]「大人になったら」GLIM SPANKY<SUNRISE JOURNEY>より/平瀬たかのり[2016年8月16日19時10分]  その問いかけはまったく正しく  答えられないって知ってるくせに  問いかけたキミたちはずるいぞ  でもね、世の中ってやつは  答えられないことや応えられないことばっかりで  できてたりもするのさ  四十五年生きてきて  ちょっと解ったことかも知れない、それは  世界はパートタイマーのサービス残業でできている!  なんて言ったら  君たちは笑うかな  ぼくはようやく正社員の仕事が決まったんだ  試用期間の二週間を乗り越えられたら本採用  勤務時間は長いけれど  交通費全額支給社会保険完備ボーナスあり転勤なし  そいつのありがたさが君たちに解るかい?  なんちゃってね  あと少ししたら終バス乗って自転車乗って  帰ってくる生活が始まる  「大人になったら解るのかい?」  君たちのロックを  ペダルこぎこぎ  ぼくの突き進む闇に  ずっと響かせていこう ---------------------------- (ファイルの終わり)