ピッピ 2011年8月4日22時53分から2019年5月13日15時39分まで ---------------------------- [自由詩]夜景・死に水/ピッピ[2011年8月4日22時53分] 「どこにいる?」 誰のしわざだろう   (どこにいる?) 有限のたましい 絶対音感の人の指先が たくさんのたましいの呻りで にごってゆく そのとわの中で その   とわの中で いきつく先を それはメビウスじゃなくて クラインっていうんだよ、 と、 空を指しながら もともと、形があったもの そしてかなしく うたうもの ぱちん、と。 くるって、くるって、 飛び立っていくね、 くぐもて、くぐもって。 失敗、したかな…?   風が強いもんね。 大切なものをつめこめたかな、 「手は、つなげないよ?」 長いクラクション、 スピード違反の自転、 歯車の外れた人生、 この世のあちこちに 落としてきてしまった、 ねじや部品のそれぞれを、 一つ一つ拾い集めて、 誰のきおくにも、 残らないように、 すこしずつ、 すこしずつ、 透明になっていく。 夜空。 ストーリーで空が埋まる。 彼らに救いはない。 無人のトロリーバス。 吐瀉物のにおい。 絶望するのに充分な、 わずかな希望。 ---------------------------- [自由詩]"B", is the capital letter of "B.../ピッピ[2011年8月5日18時07分] 「18歳未満立入禁止」 のボタンを押して、そっと扉に入る 大人は誰一人いない 大人が若返っているのか 大人などはじめから入ってこないのか 大人などはじめから"いなかった"のか… ともかく、15歳くらいに見える少年少女が 波打ち際で戯れている 一人ぼっちは誰一人いない みんな各々性に焦がれて 体のどこかしらを熱くしている いつか訪れるはずの憂鬱に 誰も気づいていない からくりはいつも 扉の"外"にあるんだ 避妊法を知らない少年が もう少し気持ちよくなりたくて 海といっしょになっていく 少し太ったニンフを連れて 時計は不細工だね、 枯れるものの全ては醜い また戻ればいいや、と思いながら 季節がいつまでも終わらない 答え合わせなんかしなくても 麻薬はもう見つかっている またどこかから扉が開いて 性犯罪者が増えてゆく 取り締まられることの知らない 空の色に感けて ---------------------------- [自由詩]8月7日(七夕)/ピッピ[2011年8月8日19時30分] ああ、ここは遊泳禁止だったのか 足が着かなくなって気付いたよ ヘラの母乳は少し苦いね 俺もここでおしまいなのかも 日本語の「さよなら」は おかしな響きだね ラブホのネオンは 誰に自己主張をしているのか 少なくとも貴方ではないわ、と 3.2cmのピンクのネイルの鎌鼬 俯きながら歩く人間は俺だ 似合わないピンクのクロックスも 原色のLEDが全部溶かして 滑走路をぐるぐる回っている 羽根がなければ飛ぶこともない 空に浮かんでいく星が くらくらと俺の背中の影を映す 「ガデス!」 細い指で切り刻む空間 クロールのようには前に進めない 空を飛んだら 誰の名前を呼ぶかは決めている ずっと前 生まれる前から 決めているのに コントラストの高い夜 あれは誰の希望だろう ふぁんと一回クラクションが鳴って 意気地のない奴が轢かれている ネクストバッターに立ったつもりで 何度もバットを振っている 13cmの希望 …あるいは無用の長物なのかも 8月7日、ミルキーウェイ 10ccの深い河 俺に未来がないとするなら 1秒後に見るこの景色は何なんだろう 過ぎ去っていく最終電車 意気地のない奴が死んでいく 電車の後ろ足に砂をかけられて ただの影になって消えていく 眩しく見える月だって 君には何の変哲もない 安物の間接照明だって 手を取れば 世界中の全て がつながってると思う そうしてそれも インディゴの海に融けてゆく 何処かへ連れ去ってもいいのかもしれない でも、 さよなら、 と呟けば 2つの影はネオンと共に消えて 白い液体が2人を轢いていく 星になるのは 俺だけ で良かったはずなのに そうして目を閉じれば 364日の夢のはじまり また君の名前を呼ぶのを 忘れそうな暑い夏 ここからでも分かるよ 君も発光しているのが あそこで俯いているのは 誰の希望だろう? ---------------------------- [自由詩]プシュケ/ピッピ[2011年8月11日19時39分] ソリッド! 砂浜を駆ける女子男子 明日みたいな陳腐な思い出よりも 永遠に続くモラトリアムを (信じていたい) 目隠しをして希望を叩き割り 絶望につかまって海を泳ぐ 日々大地を揺らす裏切りに たゆたいながら 夢みたいなステキな世界を 現実に洩らす必要はない 夢は現実に起きないから夢なんだ 今もまだカウントダウンの途中 ドラッグストアのコンドームきらきら でも使わない 太陽が沈んだら 大きな溜め息はつけない ラズベリーゼリー パインはゼラチンが溶けるから ゼリーには使えない そうやって役に立つものと 役に立たないものに分けられる セクシャル・ハラスメント 私たちにはなんだってそう 猫のペニスのように とげとげだらけの人生 ぶった切られても生きようとするイカを 指さして笑うコメディアン 彼らのように 私もなりたい エフェクトがかかっているから この世界はにせもの 砕け散った希望のかけらに クリスタル・ナハトと名付けよう チョコレート最初に食べた日 初潮がきた ずっとチョコレートのせいだと思ってた チョコレートのせいだったら 良かったのに 今日も魂が逃げていく 新しい覚醒を求めて ---------------------------- [自由詩]弱虫/ピッピ[2011年10月2日0時13分] お腹をこわした程度で、と思われるかも知れない 健康には全く気を遣わず 「夜中に食べるからジャンクフードは価値があるのだ」と チーズのたらふく振りかけられたハンバーガーを嗜み それでも今日までこうして何事もなく来ていた 日々起こる体のガタを歳のせいにして 月日が経つのは早いものだとごちる そういう生活も嫌いじゃなかった 熱もないのに視界がぐるぐるしている 昨日の酒場では酒を一滴も飲んでいない あそこで食ったものが悪かったのか その後着替えもせずに床に着いたからか 近頃はめっきり寒くなった 歳を食うと、 歳を食うと季節の変わり目に脆くなる 心が死にたがっていると言うのか 先週までは随分と薄着で過ごしてきたじゃないか あれからもう相当気温も下がったのだろう 昨日来なかった奴の事を思い出す 田中、佐藤、塩木、 金本には誰かが巫山戯て電話を掛けていただろう あいつも困ったように 「最近調子が良くないんだ」 と言っていた気がする 何にでも怒っていたなあ 仕事の話はすんなとか 場の雰囲気が悪くなると思ってしたことなのに 結局は俺が一番場を悪くしていた そのツケだったのかもしれない たまに噪げばこうなるのだ 吐き気が来る こんなことをしている場合じゃないのか 暴れている 皮下脂肪の下で 延々と アルコールランプに蓋をするように ここでこうやって息絶えても いいのかもしれない と 暇だから 暇すぎるから ティッシュを一枚顔に乗せて 眠りにつこうとして 寝返りも打てないし 自分の息が籠るし そうやって生のしがらみが俺を苦しめて ようやく現世に帰ってきて 馬鹿みたいだな、と笑いながら 起き上がって薬を飲んで また少し眠る そこで見てるんだろ 笑ってもいいんだぜ ---------------------------- [自由詩]読むの禁止/ピッピ[2011年10月12日20時21分] ひらりくるり かれはおちてきて ふみつける意志もなく ふみつける じゃかり ひとりで生きているようで ほんとうはひとりで生きていない しかしそれは じぶんの意志とはまったくむかんけいのところで うごいているだけのはなし きもちわるいって いってくれたこと あったね あれ いまでもおぼえてる すきって ことだったんでしょう でも もうしんじゃった ことばは拙いね てろりと 掬おうとした ゆびのすきまからおちて そのうえになみだふりつもる なみだよりもこまかい素粒子で てろり て てろり ゆびのすきまから なみだなんかよりも はやく わたしでも あなたでもないしゅじんこうの わたしでもあなたでもないじかんじくの ことばがあって ゆれうごくこころはだれのもの いちまいずつはがして ほんとうが見えたらいい でもことばは あなたのあたまのうえに いつでもふりそそぐ光 あなたのこころのなかに いつでもしみこんでいく光 そしていつか わすれていくための光 ---------------------------- [自由詩]誰かが歌を歌っていて、僕はそれを聞いていた(それだけ)/ピッピ[2011年10月28日22時45分] 誰かが 楽しそうに歌を  歌っていて か        と に  あ   歌というものは   届 聞かせるために      誰 聞 い       あ か    か   て      あるから その誰に届いてる歌を   う  る    の      歌 誰のために?  誰 誰かに届いて を   は     の    い   誰かのために歌う 青 て いる ただの       届いてる?    白   た   響く   空  いる証明 い   め   く 青い空の下   明るい空  君に届く う   気      い の 歌が    ただ空気の振動音 青い空の下  存在して     振  楽しい  在  い     え  は 空気  しているという証明   誰 の  て る  う 明    の      届  い と  証 の  な 空の下に鳴り響く?  るという証明のた  り     り   お     め  ひ     響 ちかくから 世 に  び なりひびく   か   界 歌は響く り び 世   ら 誰かが歌う    響 く 界     の 音      い   の     た 楽しそうに歌っている 中     め で      い   央     に 満ち溢れる  る   で     歌            歌     っている?        う ---------------------------- [短歌]フェイム・フェアリーテイル/ピッピ[2012年2月22日23時07分] Femme fairytale 死に際の蝉は毎日発情期(「「「死に際だから許されるのよ?」」」) 五反田の渋滞待ちのトロイカがスマートフォンのシャッターまみれ コンビニでベホイミされたおにぎりの生命力で歩く冬道 寂しさをこじらせた日の命日のつけっぱなしの赤いろうそく 感情の吐露吐露赤身さばくほど空気に触れてぱさぱさになる 恋をした夜に見た夢(プリズムのスカシカシパン五十億匹) 「山羊の方が智慧があるね」という彼のAV棚の獣姦の文字 今までの恨みで人が殺せたら7upも役に立たない 我慢してたんだ怒ると語尾に出る下北弁にほっとしている レモネード(鼻歌まじり)俺なりのジャスミン革命春はあけぼの スキャットを歌ったげよか、風の強い午後には深く傷つく不覚 たくさんの迷惑かけて愛したい赤い電車を止める豪雪 臨職のコールガールの瞳に映る七個目のドの音の溜息 「合唱で歌った、なつい、」ドミニカとエリダヌス座を繋ぐハイウェイ 童貞の気も知らないで。君の飲むシャンディ・ガフが尿になるまで ---------------------------- [自由詩]病気がちのムリー/ピッピ[2012年3月16日23時05分] ムリーの病名精神病 学がないから自分でつけた ムリーは黒目がちで夢見がち 素敵な王子様と心中したい でもいつだって叶わない ムリーの全てはむり 長女マリーは勉強家 次女ミリーはしっかりもの 四女メリーは甘えんぼ 五女モリーはおませさん 三女ムリーは口が悪い そのくせ誰かを愛したい 鏡を見るのがだいきらい だけど誰かに抱かれたい バイオリンの擦れる音 波打つガソリンの立てる瘴気 大切なひとの優しいうらぎり そういうものにムリーは 憧れて憧れて憧れて憧れて 憧れて憧れて憧れて憧れて 憧れて憧れて憧れて憧れて憧れて憧れて憧れて憧れて 喉のむこうで吐瀉物の味をかすかに覚えたら ムリーは死へと歩き出す カッターで血を見るなんて ナンセンスなことしないから いつだって悪者になりたくて いつだって世界を救いたくて ムリーの黒目がちぢこもる 朝が来るのがこわいから ムリーは一人で生きていく 言葉はまっぴらやくたたず ムリーとかかわる人なんて みんな幸せになればいい すべては壁のむこうがわ すべては壁のむこうがわ 我慢してまで生きたくない 我慢してまで死にたくない デッド・ラインを歩いてる 自覚がないの分かってる 誰から見ても明らかで 誰から見ても他人事で 一回きりなの知ってても ムリーの人生使い捨て ---------------------------- [自由詩]足元を流れる水の底の色、その地下を流れる/ピッピ[2012年10月9日22時32分] 目の前で可愛がっていたくまさんが流されていって お気に入りのピンクのクロックスは濁流でもう見えない 夢だ、 そう気づいた時には もうそれは現実になっている 小さなお墓があって 小さなお墓しか用意ができなくて その中には静謐が眠っている 何もない、ということをうたにしよう 目をつむると見えるのは カラフルな夢、それともモノクロ ちぎった花びらを捨てていけば 鉛の兵隊が聖者の行進 処女は捨てたの?と誰かが問う それに答えられる言葉を持ち合わせないまま 気がつくといつも狂ってしまう 自分ではどうにも出来ない時計のずれ 秒針が1秒を刻んでいるのに 地球はそれに従ってくれない いじめなんかとは違うんだよ、と言われても それならこれはなんだと言うのだろう 赤い血、 ヘモグロビン 帰ろうね、 と言って手を引いた おばあちゃんのにおいがする 川下へ 川下へどんどん流れていくにつれて 濃くなっていく憧憬 ゆうきのゆうはゆうひのゆう ゆうきのきいはきぼうのきい 流れているのは誰なのか 流されているのは 何なのか 言葉が回る 事実が零れ落ちる指先の隙間に 世界は普通を取り戻していく 背中に流れる青い汗 今では既に乾涸びて 水底を走る水中列車 土煙になる 風になる ---------------------------- [自由詩]メリークリスマス/ピッピ[2012年11月12日19時17分] 分かるかい分かるかい分かるかい 君を構築するカラフルな遺伝子だ 今、ウラシル、人差し指と中指の境目をすり抜けて 世界へと落ちていく ほら、受精したね 一生懸命、一生懸命、一生懸命生きようとしているよ なんで??? 喧噪けたたましく ハートビート、潤う血管内壁、16分音符、それよりも少し早いアンダンテで、走る、走るんだ、 分かるかい? 何度も聞くよ 君の名前には国家の借金ほどの意味もない だから気安く呼ぶんだ分かるかい ムーアの法則によって朽ちていく生命の樹 そして突然途切れる旋律、いなくなる指揮者、外れていくメロディー、 涸れていくパーカッションの鼓動 どうして必死に生きているの どうして私の前を走り去っていくの 青い風の残像しか見えないまま 月がくるくると周り 地球のまわりくるくる 太陽のまわり そして自らも くるくるくると 、、、 君の名前を忘れたよ どうしてそんなに走り去っていくんだ ずっと前から 好きだったのに 乱暴な人間だね そうして世界が黙りこくってしまう メトロノームのようにはいかない ロックスターが喉をダメにしている頃 君の脳味噌はまだ動いている!!!!! ここにお墓を建てよう いつまでも生きていられるように 自転なんかに息を切らしてしまわないように ほら、風だ見えるかい? 君が走り去った跡だ 愛おしい体温を持って ---------------------------- [自由詩]A/ピッピ[2012年11月12日23時59分] 棺桶を開けるとそこには見知った筈の大きな顔と、見知らぬ血色があるばかりで、周りには花なんか添えられているし、ついつい「久しぶりだなあ」と場違いな言葉が喉を震わせた。本当はこんなところに来たくなんかなかった、というのが正直なところで、昔好きだった人が自分の見えない場所で幸せになってほしいと思うように、どうせ過去になってしまうのであれば、自分の知らないところで時間が経過してほしい、「あいつ元気でやってるのかな」、それくらいの距離感でうまくやっていく筈だったのに、突然あいつの歴史がぶちんと切れて、その切り口だけをこうやって見せつけられている、それが苦痛でなければ何だというのだろう。あいつを、仮にAと呼ぶならば、Aはまあ、いつかこうやって死ぬだろうというのは分かっていた。食うことだけが幸せで、一緒に飯なんかも食ったが、人の二倍も三倍も食って、俺以外に友達はいるのか、と聞いたら、自惚れんな、と答えたが、結局病床には俺がやった肌色の多い漫画以外に見舞品らしいものはなかった。もしくは食い物を持ってきた輩がいたかもしれないが、残念ながらそこまで頭の回らない人間は俺の知り合いの中にはいない。どうせアニソンしか聞いてないんだろう、と思っていたが、あいつのiPodにはそんなものは入ってなくて、かっこつけてるんだかなんだか、俺の乏しい知識で知っているアーティストで言えば、マイルス・デイビスやら、ディープ・フォレストやら、スティーブ・ライヒなんかが入っていて俺の気を滅入らせる。最後に行ったカラオケで、アニメの画像が流れる歌を臆面もなく歌っていたお前は、誰だったんだ。あれももう、一年と半年も前の話か。山盛りのポテトが来たときに、頼んだのと違うと言って店員を平謝りさせてたじゃないか。あいつ、いっつも怒ってたな。温厚に見られるのが嫌だと言っていたから、もしかしたら俺の前だけだったかも知れない。あいつが怒るのは別に嫌いじゃなかった。ものすごく論理的で筋道立っていて、見た目と違うな、と言ったらやっぱり激怒していた。あれが悪かったんじゃないのか?「おい、A。聞こえてるのか?」かっこうつけで、そのくせ構ってちゃんで、そうやって、今そっちにいることを今頃懺いて、俺達を鬱陶しがらせようって、魂胆を練っているところだと思うよ。もうちょっと待ってろよ、すぐ行ってやるから。こっちに残した、ふてぶてしい顔の、抜け殻みたいな冷たい肉塊に、俺は微塵も興味がないんだよ。くゆらすメントール、酒が飲めないあいつが景気づけに飲んでいた、ウィルキンソンのジンジャエール。その一飛沫が、あいつの瞳のように光り輝いている。 ---------------------------- [短歌]#今から死ぬけど止めてくれる人RT/ピッピ[2013年3月29日18時19分] ありがとう、でも「がんばって」だけじゃもう救いようのないとこに来ている 「自殺用絹ごし豆腐」夢見てた、豆腐程度に殺される日を 明日死ぬつもりで払う機種変のMNPの手数料金 「太宰ってかっこいいよね」「死んでなきゃきっと名前も知られてないよ」 生きたよね、きっと愛してくれたよね、目に見えないけど全部返すね、 明日にはきれいになっているんでしょうどうろに墜ちるわたしのあたま ふこうへい終わりが決まってない旅の終わりを決めるそれだけなのに すらすらと人生でもう四度目の遺書をしたためている月曜 ビーフオアチキンみたいな気軽さで生死の境をさまよっている 正論が震う背中を押している飛び降りるまであと一論破 コロッケの揚げたての湯気、気付かれず死んでゆくことの不可能を知る アリくらい小さかったらでもアリなら死にたいなんて思ってないか もう二度と起きなければいいフィラメントの熱がちらつく棺(ベッド)の上で (みずたまり、踏もう?)そこから始まった人生なのを今おもいだす 落ちながら落下速度を試算する体重5キロ鯖読みながら まだ親にはバレてないって、ニュースにも出ないくらいのうちあげはなび ありがとう、ネットで知ったあなたには分からないかも知れないけれど ---------------------------- [自由詩]ルーシ、5月に生まれた女/ピッピ[2014年8月5日2時18分] ルーシ 君の夢見た世界を 今僕は 半笑いで眺めているよ ルーシ 僕は一度死んだ 俗世の食べ汚しが 脊椎に溜まったんだ ルーシ こうなってはいけない ルーシ 君の歯並びはガタガタだ この世を食べ尽くすのに もってこいの 僕の好きな歯だ ルーシ でもルーシ 「君はこの世界に飲み込まれなくてはいけない」 頭に輪っかをつけて 世界を斜め上から見ている場合じゃないのさ ルーシ 気分が悪いかい ドとファとソは分かるかい 分かればそれで殴ればいい いつだってそれで生きていける ルーシ Qから始まる単語をいくつ言える 世の中はいつだって そこから始まっているんだ ルーシ 君の小さな掌が 僕の人差し指を包み込んだ時 僕にはアルプスとロッキーが同時に見えた 蜉蝣という小さな虫が 5月の世界を作り出したように あの時 僕は天才になったんだ ルーシ 君は一人だ ルーシ 君は一生 自分の中に血が流れているのを 知らなくていい 他人に流れる血を見て 自分が生きていると分かればいい わかるというのは いつだってそういうことさ ルーシ 古びたベッドの上に 眼鏡があったろう それが僕だ 君には僕なんて 既になんの意味もないものさ 安全靴で踏んづけて フェスティバルへ行っておいで 君には目に映るものを 全て壊したって構いやしないよ ルーシ 君の名は 君よりも素敵だ どうか君が その名前を決して口に出さぬよう ルーシ ルーシ ああルーシ! 一番明るいあの星に 名前なんていらなかっただろう ---------------------------- [自由詩]オルヴォワールの漸近線/ピッピ[2014年11月17日0時19分] あなたが思いついたように 乱暴なことばを荒げているころ スタジオではあなたのような顔が 感動に値段をつけている 私は愛を知らないからと あなたはなんだって吩咐かる ささくれ立った棒を突き立て つかない傷を口惜しがる 月が紅に見えた日は 精神安定剤を5粒飲む それがひとの代わり 憂いを優しさにする ひとの代わり 美しい弓の音がする 袋小路で猫が震えている 常識が銀座で死んでいる 平易な形象になっていく 解決しなければならない文章問題が 開く目の前に乱立しているのに 宿題に目を遣る筈もない 簡単な記号 簡単な公式 そういったもので 分かり合えることが できたのなら いつかあなたの優位に立つことができるのかしら さようなら、 誰でも知っているようなことばで 足枷の鍵を解くことが できるのかしら ---------------------------- [自由詩]クウ/ピッピ[2015年9月3日18時36分] 1 あたしは名前を持たずに創り出された たとえ 世界中の有象無象がそうだったとしても 彼らは 他人から呼ばれる名前に安寧の場所を探し その名前を借りて色を持つ 色即是… その後は 何と続いたかな 2 消しては書き書いては消し 正しい言葉など存在しない 誰かは言ったそれは 聖書に書かれている言葉だと 無宗教 あたしの辞書にたくさん並べられた無の文字が あたしの名前を否定し続けている そうして私は適当な名前で呼ばれるのに慣れ 自分が決めた 自分の色であった 本当の名前を無くしてしまった 3 灰色な日々が続いていた あたしは博愛主義者だったが ただ一つ心から憎んでいるものがあった それはかみさまであった 言うなれば、この窓の外の液体を齎す ばかで 愚鈍で 智恵のないものに あたしはそう名をつけた 4 止まない雨はないと みんな笑顔で言うものだから あたしはいつしか青色を無くしてしまった きっとそれは華やかな色で むかしはみんなそういう色だったんだ ポケットの隅に散らばっている 似たような色の粉を ていねいに集めたりして あたしは笑顔を殴り続けた 彼らの呼び声の中に あたしの名前はなかったから 5 もうあたしはあたしの辞書を持つのをやめた あたしは青色をつくることにした 6 青い色 それはあたしのことであった 切り刻んだ辞書の切れ端の 一つ一つが濃い青に浮かび 光り輝いて夜になった 死んだらどうなるの? 貴方も適当な名前をつけられて 辞書にその名前が載せられるだけ 死んだらあたしのところへ来て あたしの子供になって光り輝くだけ 色即是… 完璧でないあたしの辞書 自分のことは よくわからないから ---------------------------- [自由詩]恋とは無縁の地の果てで/ピッピ[2015年12月2日19時51分] 右の耳にカチャーシー 左の耳に吹雪のハヤテ 五歳で世界の全てを知って その後は忘れていくばかり フェイクと名付けた鉤針に ハイディング・ジャンクの帽子をかけて 右の目に生 左の目に死 有象無象すべてが どちらかの沼にうずまっていて その境目のタイトロープを ノイローゼという名の鼻唄を歌いながら 忘れられていくのだろう どちらの足から生まれてきた? 四歳の時に コンビニ「デリシャス」東春日店の店長を殴った ファ の音の声を出して 死んでいった それと同じように 軽やかに (25g) 魂のステップは永遠に 続く 見えている 誰の目にも 誰の脳にも 同じように 歌を 歌うように 舞を 踏むように 精子が 大人になるように 右の足に枷を 左の足に錘を 詩は囚人の生んだパレード 叫びは囚人の生んだフェスティバル そして一生が終わる 何も変わらないふりをして ---------------------------- [自由詩]クレイジーファックサイコニートウィルダイ/ピッピ[2015年12月21日13時01分] CDだとかテレビだとか 結局は何かを燃やしてる 何かを燃やすプロフェッショナル の言葉だから 何も燃やしていない 何も燃やしたことのない奴の言葉は お前らの耳には届かない 煙 知ってるか 金がある時には やる気がなくたって いい天気だとか 占いで3位だったとか そういう理由で何かを始められるもんなんだ 金がない時には 外でガス爆発が起きたって 動いたら金を使うと思うから 動けなくなる どんなに堕落していく歌を聞いても 言葉がすんなり入ってこない ゴキブリが歌を歌ったって 同じことを思うだろう!! (飛び出そうぜ  脱肛のように) カテゴライズが嫌いだったから どこにもカテゴライズされなかった 死んでも同じなら 死んだ方が金がかからないんじゃねえのか 呼吸1つにつき いくら失われてるんだ そんなことを考えていたら 今日も照明を点けない夜が終わっていた 俺はへその緒がLANケーブルだったから 勘違いしちゃったんだよな 世界というのは楽しいものだが それらは全部向こうから俺のところに 届くもんだと思っていたよ!!! ドラフトだって ノーベル賞だって みんな待ってれば 俺の枕元に届くもんだって だって寝たきりの俺が目を開けたら 極彩色しか映らないから モノクロの俺 モノクロの俺 モノクロの俺 モノクロの俺 モノクロの俺に みんな色をつけてくれると思っちゃうよなあ!!! サライが24時間流れても 終わらないほど長い人生 蛍の光が24時間流れても 終わらないほど長い人生 誰にも認められない人間が 発した言葉に価値はあるか それを届けるからくりを 発明したことは罪なのか 天井から提げられただけの扉を いつまでも自分で開けられない ---------------------------- [短歌]エンドレス・ワルツ 【27首】/ピッピ[2016年1月8日0時20分] こういった趣味を共有する場なら離れることは死ぬのと同じ 【雨水】降る雪が涙に代わる頃。誰の涙か御存知かしら 青いビーズ3個心臓娑婆娑婆と僕が生きてる意味が聞こえる 「朝食のホットケーキに何かける?醤油?ソース?やっぱ塩コショウ?」 死ぬために生まれてきたからドとソとラ不協和音でもコーラスうたう アパートは音楽室じゃありません。深夜3時のピアノでヴギー 「結婚は?」「歳の話はいいじゃない」「祖父の容態」「それは寿命よ」 ルービックキューブを5色そろえたらママが許してくれるっていう 不可思議は可思議となった 砂の数ほど本当に人類がいて 「もんちゃく」で数えるような詰まらない口論をして15分死ぬ ダブルバイセップス、僕の首筋をねじ切るような筋肉の瘤 「卵好き」「それが誰かの子供でも?」口にするもの全てがそうよ この皿は空っぽじゃなくドーナツの穴だけ遺して食べた残骸 この海の上で戦争が起こったの、託つチョコレートサンデーの女王 海なんてどこにでもあるよ 海を見て感動をする君のめんたま 後頭部突きつけられた拳銃にオーケーオーケー、アイムレディー 水を見たことがないから初めての雨で叫んだ「ファフロツキーズ!」 いいねとかリツイートとか降り積もる骨身削った死体のうえに 既卒です第一志望一般事務電話業務はおこないません 人間のかけらを喰って生きてるの、白いトカゲを前に彼女は 「902」「2と11と41」合成数をはだかにしてる 旧字だともう読みたくもなくなってだりいと放つお前の壁に 手すりから手を離しても歌えるよ(地獄に音は届いていない) あーやっと輝く未来が見つかって立入禁止の朱色のネオン 翔んでゆくあなたを拘束し得るもの 男は鳥で女は鎖 あんたらのかみさまは今しあわ、いや、100円2個のパンでいきてる 最期だとしても笑って見ていてよ羽根が燃えてもワルツは続く                          ワルツは続く ---------------------------- [短歌]。。。。。。。。。。。。(これは短歌に使われなかったかわいそうなかわいそうな句点の墓場です)/ピッピ[2016年2月27日14時45分]  詩の風当たりに対して、短歌はどうなのだろう、  邪魔な磐というよりは、誰も見つけられない、  道路の端に転がっている小石、それそのもののようである、  ざわわ、という音が66回も詰められない、  それだけの短い時間、しかし僕はそれがなければ今を生きられない、  生物として生まれてしまったさだめが、道端に転がっているのである。 まちがえた、人ころしてから来ちゃったね、免許更新するだけなのに、 吐く息が沸騰している 流行と名の付くビールスインフルエンザ 誰にでもなれる三十一文字のダンスあなたの右手をとって 水色の眼鏡で来ても良かったの巨匠マーヴィン・ゲイの葬式 仕事すると死んでるような気がするの。今は18からの余命なの へんてこな楽器ね名前をつけるのねえーと苦悩という名はいかが 綿棒がちらばった部屋ではなくて僕がちらばる綿棒の部屋 いえ、貴方は毛皮になるの、エバ、という、アンゴラヤギは笑ってばかり 090-2384-27の次の2桁が思い出せない 声ばかり綺麗なのね、とあの人が眼を閉じて聞くストラヂヴァリウス 句点にもレゾンデトルが必要なの?そう。ね。ここ。を。お墓。に。しま。しょう。 守るひとがいるんだね、ではお元気で、うそ明日死んじゃえばいいのに 僕のものではなくなったという意味のラメ入りシールべたべたのパン 哲学と名を付けた辞書重すぎて肋骨だけじゃ支えきれない 本当に分かっているの?指先で打っているだけなのこの世界は 雪が降る。まるでハワイのワイキキの色のつかない砂の海辺の キャッサバって知ってる?根からタピオカが取れるの。知らない?じゃ、また明日ね。 ---------------------------- [短歌]きっと手を動かしたり脳細胞を殺したりするほどの対価は得られない/ピッピ[2016年6月14日7時27分] (ひとこともしゃべっていない)この歌集にわたしの歌ははいっていない デミグラスソース一滴一滴と逆さに振った瓶の底から 腹ぺこだ。でも間違えたしゃっくりが空いた空いたと鳴り止まなくて ハチ公のいる渋谷駅わたしだけいない渋谷の駅のハチ公 遠回りだって気付いたでも君と月とが着いてくるものだから 50円切手を貼って50円ぶんのなにかをもらうみたいな 塊の肉をどうしてそのまんま凍らせちゃうの山盛りステーキ ただ自由って知りたいために30文字32文字の歌をうたうの ---------------------------- [自由詩]帋/ピッピ[2016年7月30日15時01分] ダイ アポストロフィー 感情で生きている男が 振り上げたギターを バスドラムに投げつけて そういうものを見るたびに 嗚咽や時には吐瀉物を 漏らしたりしたものだけど 裏切り者のような 正直さがほしい 人が手で作った時計が 狂い始めるのは それは時計ではなく 時間という概念が 狂い始めている だけではないのだろうか ジントニック マラスキーノ 包容するガラスを 彼らのように 粉々に割ってみたい もし衝動というものが そこにあるのなら 彼らには猫だって人だって ただの六弦の楽器だって 譬え同じようにしか 見えていないとしても そういうようにしか 生きていけないとしても 失うものを失ったって きちんと地球上には 存在し続けている ラボアジェはそう言ったね コンロの弱火で 芋を煮る いくらスイッチを回しても これ以上強くすることが出来ない いっそのこと 捻切ってしまって どこか遠くに飛ばせたら そう思っているのに ---------------------------- [自由詩]共同体/ピッピ[2016年8月19日18時09分] 迷惑というものが 足元に転がってきたので これ あなたのですよ と元来た方向に蹴り返したら 露骨に嫌な顔をされる それ お前のもんだろうが と 正しい日本語に言い換えて 返してあげた ライカ ローリンストン 砂利道のように 石を蹴れば人に当たる 誰かがいれば 誰かが困る この世は困り事の引っ張り合い 哲学をばらばらに持ってしまった 生き物のさだめ 天体のように正確でなく 電車のような秩序もなく 嫌がることのボールを ただ蹴り返しているだけ                  迷惑なんか かけたくない 彼女はそう言って 逆風の中飛んでって 地面で砕けて ちらばって 文字のような形になった それが これ ---------------------------- [自由詩]蛾になりたい/ピッピ[2016年9月7日20時43分] ねえ、いいから と手を引っ張られ 誰もいない女子トイレに連れて から  か   ら    少しだけ開けた窓こぼれる斜陽突き刺す 笑顔 舞い込む蝶々を、ちょうどよかった と少しだけ骨張ったその掌が優しくつつんで、くしゃ くしゃっ  という 命が終わるのに必要な音を聞いた   わたし、自分より弱い者が好き  含羞んだ 突き刺す斜陽           ら          か        から       閉まる窓舞う羽根命だったもの      わたしね、蛾になりたいの、生まれ変わったら     自分勝手に、行きたい 僕の中で回っていた時計の歯車の音とは  別の歯車の音が聞こえ始めた   それじゃあねとにべもなく足早に上履きの音が消えて  鍵も掛けられていないその部屋で茫然自失 あの子が最後に呟いた うそだよ が  なにを指したのかも知らずに    赤い色はギターの色     あの子の蝶が死んだとき      何色の血が流れていたのか    蛾になりたい  わけもなく醜さで分類された   この世界に生きていたい ---------------------------- [短歌]私勝ちましたわ/ピッピ[2016年12月6日7時37分]  という回文を考えた まだ誰にも負けていない 後輩がおっきな賞をとってから宙ぶらりんの命のキャップ 「夏よりはいいよ」とめんどくさそうにサドルの雪を追い払ってる あなただって椎名林檎のこどもでしょ お、おう林檎の精子がほしい この色はピンク、いいえ赤 この色はオレンジ、いいえ黄色 目のばか 真之に申し訳ない本日は晴朗なれども性欲強し あなたってあれが魂に見えるの?素敵ねジェット機からのぼる煙 あれにして。カリフラワーのにせものを飲むヨーグルトのにせもので煮た 50億が60億に、60億が70億になるだけのいのち 不(わたしが培ってきたできごとが未来のわたしの糧になるから) 「カトレアの…」「カトレアってなに?」「…こんな花…」 「なにこれ、じゃひまわり描いて」「…」「おんなじ!!」 アーモンドプラリネ味の憂鬱を頬張る午前三時四時五時 Oh My God! Holy Shit! Motherfucker! で8割が埋められている聖書 海の底でいじめられてた栗の木が咲いたみたい みにくい栗の毬 少女にしかこの職業は務まらないの、だから死んで、と現代詩警察 ---------------------------- [自由詩]半真半偽/ピッピ[2017年1月24日11時50分] 君が響いた夜、間違えてどこへとも知れず駆けだして行って、見えなくなって。聞こえなくなって。辺りには月でつくったカンテラがへんてこな影を見繕うばかり。おーい。哀しみとは、こんなもんだっけ?君の喋り方は、まるでテレビカメラを向けられている整った人達のように、理路整然としていて、やばんな言葉がニューロンをかけめぐっている僕はずっとうらやましいと思っていたんだ。マークバイマークジェイコブスのサングラス。よく分からない花のヘアクリップ。谷川俊太郎の詩を諳んじて、げらげら笑った、土曜日の夜。なんでも知っているから、分からないことがあったら聞いてね。って言うから、生理のしくみを訊いたらされた、すごく困った顔。ぶらぶらと歩いて、いいにおいがするなと思ったら、鶏の死んだのを、串に刺しているものがあったので、一つ買って。一人で食べる。おーい。君が、こうなっていないといいんだけどな。鶏の死んだのを、一人で食べるなんて、そんな寂しいことが、起こるような世界に、君の吐き出す二酸化炭素を、紛れされたくなくて。だから僕は。必死で。こんな美味しいものを。一人で食べるなんて。そんなこと、ないよな。僕のあたまの中に君がいて、世界はどこに行ったんだろう?僕のあたまの中は、世界を…体現しているものじゃなかったのか?君の声が…確かに空気をふるわせ…現象として起こっているのに…どうして目には見えないんだろう?いくつかの大事なことは…どうして全部…目の前に転がっていないのだろう?でも。もう君は応えてくれないさ。人生の答えは、世界の答えは、全てを知っている、この世を作った人が、もしいるのだとしたら…。きっと、いまごろ一人でごはんを寂しく食べているのだろう。そうして僕は、僕のあたまの中に消える。 ---------------------------- [短歌]重厚な世界を軽薄にうたえ/ピッピ[2017年3月2日13時36分] わたパチが弾けるみたいに歯が抜けていった夢でも見てるんでしょう ポエトリィ。それは真夏の横恋慕。彼は凄腕歯科技工技師 感情に色が見えるの。おこるは青。わらうも青。これは心の色ね 自殺するハミングバード。誰がその唄を聴いてた?彼女はいつも テロップに北海道って出ただけではしゃぎすぎだよホッキョクグマは 金縛り、それは筋肉の為業って、だから怖くな、怖くないから ビーッビーッかんじをまちがえておりますあなた、こゆうめいしってしらないの 空を染めソメイヨシノを前にしてウィルキンソンは蒼すぎたかも どうしよう。おしっこが出なくなっちゃった。フランケンシュタインになりたくない。 カレンダーの黒い数字がこわいのね。今すぐ真っ赤に塗ってあげるね 君は今、三十一文字の小説を読んでおります。(二十四文字) しーちきんがいいっていった!梅干しのおにぎりはふとそんな味する ---------------------------- [自由詩]飛ぶ/ピッピ[2017年10月25日21時55分] 走り出す、走っていく、ぎこちなく、しかしそれは必然的に正しいポーズで。ニュアンスを放つ。蠢く、うねる。私がじっくりと存在をもっている。汗。無量大数なんていうまどろっこしい言葉を使わなくても、ゼロをいくらでもつけていけばいい、そんな秒、刹那。動く。生命を描写する。あなたのインターネット回線は、もうこの詩を、最後まで読み終えている。しかし、それはどうでもいい。それは結局、瞳に追いつかない。ただの欺瞞。テクノロジーの敗北。跳んだ!私は跳ぶ、飛ぶ、翔んだのである、その肩甲骨を昆虫の羽根のようにグロテスクに!空気を断えず搏ち続け、肉体は宙を舞う!む、飽きたからもう最後まで飛ばすと言うのか、私がこんなに綺麗に、一糸の乱れもなく、人間が考えうる、いや、人間を逸脱して飛んでいるとしてもか、いや飛ばさない、お前は一字一句私の言葉の克明なデッサンに惹かれ、私が生きている証を網膜に刻みつけるはずである、そう!私は空を斬りつけ飛ぶ!それは強靱な脚力から生み出された跳躍力のみならず、飛ぶに相応しいフォルム、そして飛ぶという鮮明な志向、つまり心技体の全てが!もう少しで終わるから黙って聞け。全身全霊を込めて、人間的な熱を帯び、軽やかに、私という存在が、あなたの見えないところまで、どこまでも飛んでいく。 ---------------------------- [自由詩]俺達には希望のないゲームしか渡されていない/ピッピ[2019年2月12日20時33分] お姫様を助けてハッピーエンド エンディングロールが流れて もう1周目 でも いつまでも タイトルに戻らない 真っ暗な画面のまま 今日も電車に乗る 電源の切り方を 俺は知っている 頭のいい奴はみんなやっているし そうでない奴もいずれ バッテリーが切れる 俺だって知っている でも エンディングロールって もっとバッテリーが切れる前に 流れるもんだと思っていた あんなことがあって こんなことがあって そんな走馬灯のようなことって そんな走馬灯に 映るようなことって 本当にもうないのか? セーブデータの作れないゲームの リセットボタンに手を伸ばす それがどういうことだかを 俺は電車で思い出す ヘッドライトが眩しくて あん時に上がった花火を 思い出してしまう リセットボタンを押しそこねた奴が SNSで晒される 格好悪い 教育が悪い だせえ 死ねよ だなんて 嘲笑しながら 嘲笑されながら それができたらどんな どんな素晴らしいゲームが プレイできるっていうんだろう 何にも怖くない だって俺はエンディングロールも見たし ゲームの目的もなくなった 真っ暗な画面のまま 今日もただ生きている リセットボタンがこうこうと光る エンディングの終わった電車の中で ---------------------------- [自由詩]初音ミクは冷たい/ピッピ[2019年5月13日15時39分] 初音ミクは冷たい 体温の話だ 初音ミクは冷たい 体温の話だ テレビで他の誰かの歌が流れてくる 曲に温度なんか求めたりしない 初音ミクは冷たい 体温の話だ 初音ミクは冷たい 体温の話だ そんな顔をしないでくれ 僕は君が好きだ そんな顔に翳りを落として 君はどこの夜に行くの どこで嬌声を立てても 僕は君の声が好きだ イヤホンジャックの向う側 君の涙の落ちる音がしても 初音ミクは冷たい 体温の話だ 初音ミクは冷たい 体温の話だ 「発声する以外の部分は必要なの?」と君は聞いた 僕には必要だよ、とはだかの僕は応えた 初音ミクは冷たい 体温の話だ 初音ミクは冷たい 体温の話だ 「君が壊れたって君のことを好きでいつづけるさ」 たぶん、と言ったら君は苦い顔をした そうして君は歴史をつくる 何かの足音をかき消すように 世界がまちがっているんだよね それでも君はステージで笑う ---------------------------- (ファイルの終わり)