石川和広 2004年6月6日13時52分から2004年6月15日10時56分まで ---------------------------- [自由詩]公園の汗/石川和広[2004年6月6日13時52分] まぼろしは 青空の下 児童公園の、ねむたげな 楓の木陰の ごむぼーる 夏がくる あつくなる 汗をかく ひや あせをかく 誰にも届かないと思っていたごむぼーる あついあたまあつい ペットボトルのフランスの みずをのんだら 一息つけた 赤色の  つめたい コドモオニの頃 が かえってきた ふうううううう ひゅううううう さ ---------------------------- [自由詩]おもいだしたこと/石川和広[2004年6月6日18時39分] ひろびろとした 大学の教室の 誰もいない こと たしかめて 侵入した 空調は消されていた七月の ブラインダーの降りた その場所で 母の作った弁当を 箸の音 なるべく立てず 白く長いのっぺりと いつまでも 不気味に続くつくえの 下にもぐりこんで 丸い形で 清い躾の、残さず食べた ひとに 会う ことの 沈黙に耐え切れずに もう病に倒れたかったけど お母さんの弁当は妙にうまく、簡単には倒れなかったカラダ あれから かなりたった けど まだ倒れてない 不思議に あたりまえに まとめずに あの大学にいくバスは あのころから 三十分に一本のままだ 苦しいのは 過ぎこした 余念の ぬけがら 今 足を引きずって 食卓へ ---------------------------- [自由詩]あめもよう/石川和広[2004年6月8日17時28分] どこか いま どこか 知ってるけど雨 降ってるけど 存在感覚かな あんまり ない 傘あるけど ひとあるいてるけど ねこ 首筋かいてるけど おとこ あくびしてるけど ない ない 気体がない 九苦 期待ばかり してる 書けない 頭掻く 字かいてるけど なにかいてるのと 云われても 洞くつだ ホラ穴だ あなだ あなだ 死んでいて生きている ぼくのことばの 濁点 それ すこし 紙魚みたい に 感じる 白い 白い 視野に 濁点がついた あなた だけ 気になる模様 ---------------------------- [自由詩]方角/石川和広[2004年6月9日15時56分] 男の子 女の子 ころぶところ ちがうところ きづつくこと 砂の山みたい に それぞれ スコップで 積み上げる日々 泣くのをこらえて たまじゃり踏んで 数珠を下げるお母さんの手首揺れて ゆれて ふれて ふれて おとうさん車のキーをさしこんだ どこへいくの あの子 いっしょに つくったすなのやま はしりだした車 青い海 ひらひらのスカート とんでくの? あっち? どっち? こっち? くも ---------------------------- [自由詩]目覚めのお茶/石川和広[2004年6月10日14時57分] 疲れて食卓にたどりつく おやじは定年退職した おやじがつくった飯を食う 箸を落とす 拾おうとする かがめる腰が、まげにくい どうも おもいどおりに体動かん ものわすれる あれも これも 空気を吸ってることも タバコをすいかけてたことも 灰が落ちそうなことも あぶない あぶない 母の声 ゆうぐれに 救急車のサイレンの音 どこだろう みんなで気にかける どこかな お迎えきたか 父 まだまだ 母 ぼくはいつ頭がはっきりするんだ? 死者に刻まれた 木の裂け目のような さざなみの 岩礁の 無限に この夕暮れに しずかな 顔を思い出し 一時間震えて 少し気が確かになり 母に お茶をたのむ ---------------------------- [自由詩]火の気持ち/石川和広[2004年6月12日17時32分] 全身が あの世へ行きたがっていた いつものことなので ただ床に寝ころんでいた さすがに涙も出るが しょうがないなとおもった 昼から夕暮れそして夜へと 寝ころびつづけた 部屋がくらくなった たばこが見つからず しょうがなく電気をつけた キャビンのめんそーる 新しいやつ 箱の緑が ふかく まぶしい 火をつけた 窓辺の 遠い夜空 赤い透明な花びんのくちさきに 蝿が おひとり 留まっていた テレビ やきゅうつけた すぐ 消した ---------------------------- [自由詩]さいきんことばあそびをすることがすくない/石川和広[2004年6月12日21時24分] いっぴきの魚が 泳いでいる 水 の表面から 雫が 、 、 点と とんで ぼくからみて 左の方へ 流れていくすじは    無限の     きらめき へと 息絶えていく ぼくの意志     か     わ ぼくは魚になりたい 銀のひかりを空へ贈りたい 硬い意志を 透明なウロコにして 身を くねらせたいけど ぼくは魚になるのが苦手な魚 抜き手 もとい 手抜きが苦手 いま おもったが なぜ 手が苦いか? どういうことか 手が苦いときには 汗がふいて 手が滑って  その 汗が苦くて 中国雑技団よろしく には ことばの 逆立ちが怖い 強すぎて力む  のもぼくの属性 である せつない 正直に言うと 泳ぐのが苦手であり 下手である!  どれもこれも    「手」ばかりだ 今おもえば  苦い手がぼくの驚異 せんりつ  かくしても  かくしても 手の内の汗塩のにがりを  なめて  なめられることは戦慄 ぼくの旋律 手が   だらりと下へさがる 下手に出ていたんだろうか、なぜ今になって気づく! ということは ぼくは下手人! 下手な人は つかまるしかないのか? この悪いことばのくだりを 止められないのか 釣り針にアゴを   捕えられて それは 自由に泳ぐ魚であることを やめる 摂理がみんなに内在して、いる?    生存は競争なの?  いやや    避けられないの?  へたな泳ぎが  遊びと感じられる世界が    協奏をし始める日へ ---------------------------- [自由詩]いつものいつもの、いくつもの、ひとつの、/石川和広[2004年6月13日21時41分] ことばは 見ず 寄らず 逆立ちせず ことばは 水 壊す すべて 危険がある 殻 から りゆう りゅう の ように のびあがって消える なぞ など ないの、お ある ものは 積み重なった どしゃ ながれ かかる はねる みんみん みんな ことばは なに も も でもある もも でもある はねつける たしかめる こっぷ さわる とって にぎる もちあげる いくせんの ほしの しょうめつの めいめつの いっしゅん あふれる あふれそうになる おどろく じょうしょうする くちびるまで あと少し りんごじゅーす のめる仮名? いきていれ いきていて 生きている その時来る 声 「おまえ 生きているだけ 威張るな、イバル ナ、イバ ルナ イ バルナ イ ば 流 名 いつもどうりのへや 一口飲んだ すずしいノドの あまずっぱい りんごジュースの声か、さっきの すっぱくて あまくて 飲めていた ことば ---------------------------- [自由詩]カポエラ/石川和広[2004年6月15日10時56分] 大学でて、いちねんかん 訳わからんかった へやは本と服で山積み かたづけるには 災厄、むしろ最悪だった りれきしょをかけないので、父は 求人チラシをときどき見せた どちらも同じ屋根の下、キョリをとった 次の年 工場で派遣バイトした とうとう天井走行クレーンで 五百?の荷物は運べたまでになって なんだか暑い職場だった 200℃のゴム成型の機械を三台操った けど失敗もしたけど、みんな最高にクールに働いてた ぼく、すぐやめたけど 汗拭いても夏は無駄であるから 休み時間は夏は 外にでて風に当たった きもちいい 星空の下で 中島らもの「超老人かぽえら」 薄明かり読んだ かぽえら、踊る格闘技 風と踊るあしくび 最悪で、すてきなおもいで 青春かもしれない 超老人みたいに 回し蹴り、さかだちで、かましてやりたい 今 ---------------------------- (ファイルの終わり)