梅昆布茶 2021年3月30日7時16分から2021年11月24日8時58分まで ---------------------------- [自由詩]ニュートンの運動方程式/梅昆布茶[2021年3月30日7時16分] 原稿用紙100枚400字詰めで4万語描かなきゃいけない 100年の生を貰ったとしたらそれを埋めなければならない 嫌だと言ってもたいした選択肢もないので 義務教育ですくすく育ちすぎたのに 生来へそ曲がりなのではみ出してしまったらしい 結婚でもできたならば つまらぬ遺伝子でも残そうか 天体に引力があるように 人間にも引力があるようだ f=なんとか分の揺らぎなのでしょうか 斥力もはたらいてるようで どうもあいつと居ると気が滅入るとか 馬があわないとかいう言葉は嫌いなんです いちばん薄い奴がよくつかっていたから それって独裁的なひとの自己弁護だとおもうのです それよりか 大瀧詠一でも聴いているほうが よっぽど気が効いているって言われそうだ グリコのおまけの文化力 予定調和を破壊しながらも 生きることがおんぼろなアートで反体制で つねにサブカルでローカルでちょっとだけ革新の 秩序と無秩序の境界を巡回してゆこうとおもう スエズ運河でタンカーが座礁しただけで 凍結してしまう世界の灰皿をごみ箱に捨てたならば もう一本の缶チューハイの朝を迎えようかともおもうのです ---------------------------- [自由詩]ぼくはクマ/梅昆布茶[2021年4月5日10時05分] 市井の凡人でそれが理想です 理想の人生で たまに挫けますが 時々休んではまた 歩いてみようと思うばかりで 宇多田ヒカルの 僕はくまが大好きで この詩の結論を 煙草一本だけ吸って 考えようかとも思うのです でも僕はくまで良いかもしれません でもそれが僕の結論なので許してください ---------------------------- [自由詩]うた/梅昆布茶[2021年4月20日3時14分] ちょっと寂しいけれど熱っぽい宇宙 ワンダークールな時間の始原をゆめみる いつも隙間だけで君を愛せたのだろうか それともそれはただの幻想だったの いつも反論がむなしいように そのひとがそのひとで あるように これでよいのかとは どこにも書いてはいなかった 永遠という年輪をかさねた樹のほとりで 瞬間で消える生命をいきのびてゆく 樹々は谺をそらに還し 都市は人びとをさまよわせて それでもうたおうとおもいますでも うたはどこにかえってゆくのでしょうね ---------------------------- [自由詩]サーガ/梅昆布茶[2021年4月25日21時50分] かつてこの星には100万の 小世界があった 1億の集落と1千の都市国家 黄金の旗がなびくここちよい風が すべてのサーガがいまでも生きている きみは英雄でもなくパーティーもなく 大河の岸辺にひとり佇んで あたらしい風はひとりの若者のたずさえたこころ 邪心と純真といくらかの戦歴の証のための用意を きみはいつか自分の英雄になるのです じぶんをちいさく感じているだけなので この世界の理由のたいはんは ちいさすぎてみのたけに合わないだろう また創世することを夢見て欲しいと 想うのです ---------------------------- [自由詩]えくぼ/梅昆布茶[2021年5月18日0時08分] そこの誰でもが背びれや尾びれをもっている 幼年時さかなだっただけなのだけれどね そこの誰でもが哀しみを抱いている それは すでに干物になるまで のこるのものかもしれないんだが でもそれはそれで人生の大切な 標本でも言葉でもない無色の枯葉なんだ この世界の理由のたいはんは 結局ものごとはマイナス方向にゆきませんでした 主張しない哀しみがだいすきで 肯定的なまいなーなそれでもちっちゃなえくぼ ---------------------------- [自由詩]ゆっくりと解凍する日々のうた/梅昆布茶[2021年5月25日11時00分] 僕のぽけっとの紙片には 最新のもっとも無駄な解答が記されている 人生に必要なものの殆どが木箱にしまわれて 博物館の収蔵庫の奥深くにおさめられているとしたら 菫や蓬の花のように路傍にさりげなく ささやかな展示場を設けてくれないとしたら 僕の胃袋はからっぽで遺伝子は誤配列のままで 僕の頭は冷たいカフェオレの缶のようなものなのだろう 僕の舌のさきは凍結した氷柱のなかのことばを溶かそうと 電気ポットで淹れた一杯のコーヒーを飲みながら 永遠に満額回答を待つ宇宙船の乗務員のように 収支が細かに印字されたレシートをまた一枚綴るように あるいはコックピットにベルトで固定された山羊に似て 日々のチューニングを模索しては病室の窓から望む世界を 分散和音で淡彩化してしまおうとたくらんでいるばかりなのだ ---------------------------- [自由詩]離島の夏/梅昆布茶[2021年6月14日5時54分] 離島に夏がくる 隣の猫は人間になりかかってきた この忌まわしい季節には 神経節細胞の痛みだけが秩序ある情報なのだ ぼくの離島は温存されて 真夜中に大陸とひそかに交信する 部屋のAI扇風機は サブルーチンの迷路で 実行されない約束事を ぶつぶつ語りながら風をつくり ぼくは太古の乗り物の手入れをしながら 楔形文字の粘土板を整理しなおしてゆく ときどき離島には海風と入り混じった 上海やニューヨークからの花の種がやってきて 持ち主もない空き地のようなこの島の叙情となり いつの日にかは風化して行くばかりなのだが ---------------------------- [自由詩]夜の変拍子/梅昆布茶[2021年6月28日20時05分] なんらかの収束あるいは 静かな夜の変拍子 子供達は混沌の外縁でガラス玉と戯れ 老人はじぶんの黒檀の棺を磨き上げる トロル達は住みなれた谷をはなれ いつか丘をこえて緑の祭壇にたどり着く 鳥たちはねぐらにかえり 繰り返される夢の支度をはじめる セブンイレブンで肉饅買い忘れて彼女に責められた日 ぼくが雲散霧消する前にやり残したことはなにもなかった 死んだこんぴゅーたあがゆいごんを残してゆくが だれもぼくのゆいごんを察知してくれないのです あいを発動してkoiを卒業して 結局ものごとはマイナス方向にゆきませんでした 微分方程式の明日はぼくの想像力の 延長にはなくて 僕のリペアーキットは 缶チューハイとYO-YOMAのチェロなのです ---------------------------- [自由詩]我が祖国/梅昆布茶[2021年7月5日4時26分] 僕の日本地図はけっこうゆがんでいる 大陸文化を隔てた極東の地理的条件 喪失するすべもうしなわれた子守歌 僕の世界地図はききなれない地名でみたされ 国際情勢は新聞の活字とTVのアナウンス ジャニスの新しい映画 ビリーアイリッシュのロックフィギュア ホーキング博士のブラックホール 僕の銀河帝国はワーグナーのながれる 庭園にもうけられた長期療養施設の小部屋 ときおりウディガスリーの我が祖国を 古びたギターで爪弾きに天使が訪れるだけなんだ ---------------------------- [自由詩]夏なんです/梅昆布茶[2021年7月20日13時14分] 今日もとりあえず元気で行こうハイタッチ いつも優しいばくだんを作っている そんなひとが好きだ ひらきなおれない中途半端な言い訳 落札できまる交換価値とは無縁ではなくても それでもやっぱり利用価値の手ごたえでいきる あまり言葉に厳しくなくてそれでもちょっとだけ 気にかけるぐらいがちょうどよいかとも 経験的なものは大切である意味先験的な 詩がだいすきかもしれませんでもね 詩を格闘技にするのは絶対アンチなんです 競技にのれない者のぼくも含めてそれでも 社会にコミットしてゆく最終手段として 牧水と酒酌み交わしてるそらの碧 海さえ蒼ざめるほど飲もうかとも 想う夏の日なんです ---------------------------- [自由詩]蛍/梅昆布茶[2021年7月25日23時21分] いのちをつなぐものを希望と名づけよう 希望のべつの名を祈りと名づけよう 祈りは清流にすまう虫のごとくに こころの闇に明滅し続けるのもの 祈りの幼虫が水中にカワニナをくらう 肉食の異形のすがたであろうとも 真夜中のベランダの煙草火にも似て 天球の高みにのぼってゆく想いの粒子に 仮託された願いを明滅させる 蛍であろうかとさえおもうのだ ---------------------------- [自由詩]さめたコーヒーのうた/梅昆布茶[2021年7月29日18時11分] 無限につらなってゆく世界の果ての階段を 親しげな不条理とうでを組んできみがのぼってゆく いつもおもうけれど 宇宙のなかの点にすぎないのに 点には面積がないのに 線にも幅がないのに ぼくには命があるようだ 果てしなく応用だけをもとめられる大洋に 骨組のない粗末な双胴船を操り銀の魚を釣る 惑星の酒場には非番の衛星たちが足繁くたちより 彗星の種子やら燦めく詩篇のかけらなどを交換しあうのだ かつて宇宙に浮遊していた現象の端くれが 訪れる夕まぐれにふと郷愁をおぼえるあてもなく 影のうすくなった実存におもいをはせては ちょっとだけぬるいコーヒーを飲めると言うのは すてきなことなのかもしれない ---------------------------- [自由詩]夏の四重奏/梅昆布茶[2021年8月8日7時02分] 生活に芯というものがあるとしたら 花を挿していなければいずれは緩んでくるものだ 日々の心のゆらぎは錆びた弦楽四重奏 山巓からの水脈が生をうるおしているのならば 堕落した駱駝は回文好きだが 療養所での生活はしずかなる音楽 柔らかな不自由はやさしい対幻想なのだろうか 聴こえない見えない 触れえないから あなたはいない どんな箱に閉じ込められているのかもしらない 時の振り子のながさを調整する術すらないから ---------------------------- [自由詩]柔らかな疎外/梅昆布茶[2021年8月13日19時49分] 水源と柔らかなことばにめぐりあう 船の舵取りは水辺の花を想いながら いくつになってもできないものはできない 今更のようにはぐらかして過ごそうか 永くゆっくりと関わってゆく事は大切だし 固く結ばれて解けないほどの不自由も たぶんほんとうは大切なのだろうと 嫌いな人間は少ない方なので助かるが ただしつけこむ奴は大嫌いなんです 環境との接点は少ない方が良いのですが 仙人願望とは無縁の今日に転送されて 僕は世界の卑小で愚劣な汚穢であり たまには優秀なこもんせんすみたい 自身を阻害するものは自身なのでしょう 僕を超えてゆくのも自身ならば僕にまかせましょう もう社会へ参加できる日々も少ないとおもうのです きみと会える力があるうちに逢いたいのです ---------------------------- [自由詩]旅人のうた/梅昆布茶[2021年8月19日6時32分] 身体感覚に素直に従って生きてゆきたいのですね 回答の得られない食べきりサイズの人生でもそれでも 新たな無限のドアを自ら鎖してしまわないように 太陽が遍照する微妙なバランスの不自由にありがとう ぼくも孤独なフリーマーケットで一瞬を再生産し続けます 価値観の違いを短絡的即物的に却下しないでおこうと 違和感という球根を大切に育てて発芽する前に 捨てるのはやめようとぼくも想っています すべてに起承転結はないとおもうのです 因果のそとに君を初めて理解できたぼくが 座敷ワラシのごとくちょこんと座ってて 自由とはたぶん精神の自己規律との抱き合わせで わがままとか恣意的とか不文律との協調力で 調整しない明日に旅立つ君にエールしながらも ぼくもいつかそこまで到達できれば良いと想うのです ---------------------------- [自由詩]発掘幻想曲/梅昆布茶[2021年8月27日6時06分] 哲学者と詩人と新宿のホームレス もしも資質があればなんにでも 応用数学者と宇宙物理学者あるいは ドビュッシーとツトム・ヤマシタ こんな問題意識で生き伸びても 脳力もないのに戸惑うだけ 僕の前に道はある 孤独なランナーは 空虚で退屈な日曜日の 小公園のちっちゃなブランコで 女の子にお手玉を教えたり 生きることは累積とちっちゃな進化と 何かを発掘する作業場なのかもしれない すべての孤独とぼくはリンクしていたい すべての孤独を感じたいのです 山好きの仲間が死にました 未明の東北自動車道路で 大型トラックに追突して山へ還りました 僕もどこかへ還りたいのです それはジュラ紀の草食竜の発掘現場かもしれません ---------------------------- [自由詩]僕たちの/梅昆布茶[2021年9月1日15時58分] 僕たちは妄想を充分に知ってしまった 僕たちは世界中の女性に憧れてしまった 僕たちは愛されない苦痛を知っている 僕たちは自分であることにときどき疲れてしまう 自分の番地を持たない君とは友達になれるかもしれないんだ だれも賢者の石なんて持っていないのだから 僕たちは許されない自分を持て余して それでもじゅうぶんに生きてるような気がするんです 僕たちは定義の曖昧なままでも生命なのだろうと 君だけが特別に僕の心を支配するわけでもなくて 僕たちはたぶんいつまでも 君が許容する限りは僕たちでいると ---------------------------- [自由詩]丘の上/梅昆布茶[2021年9月9日10時56分] 閉塞してはいけない 開脚もしてはならない 同じ条件のなかでプログラムするならば 遁走する豚の尻を追わなければならない 複雑なきみはミニマムな自己を取得したかい 僕はきみをいつまでも尊敬しているし 毎日は準備したように波打って僕たちを嘲笑うが 僕たちの進化という乗り物は永遠に無料化されない 何処にも欺瞞はないのだが不条理は遍満している 誰のせいでなくそのまま不条理は歴史と呼ばれる 僕は団地裏の小公園で通年のラジオ体操を 妻とふたりから始めようと想っている馬鹿者 丘のうえのお馬鹿さんで生きて行けたら あとはたいしたのぞみは無いようにしたいのです ---------------------------- [自由詩]きみに/梅昆布茶[2021年9月17日1時49分] もういいのです きみは鼻血をださないように 恋も科学なのです かったるいものもぶっ飛ばして でも恋は愛よりもましかもしれません たくさんの恋の集積と 未知の涙や動揺とともに 初めての喜びを忘れないで 恋だって分析的或いは統合的だったり 証明を伴わない個人の証明なんです きみの恋はとても正当で きみの理念も理解できるから やってみれば良いさ結果は出るから 分からないものはいいんだ わかる部分からはじめよう たわわに実る秋ばかりではないかもしれないけれど 時には愛されないつよさも必要かなっておもうんだ そこからたぶん新しいきみが 創世されてゆくのかもしれないのだから ---------------------------- [自由詩]詩人の肖像/梅昆布茶[2021年9月23日9時48分] 詩人の肖像は 誰にもわからない あるときは 長く執拗な夏 異教徒の祈り 暮色の岸辺の苫屋の 清貧という夕餉 園遊会での貴婦人の 緊密なコルセットの誘惑 屋根裏の経済学と 鼠算的な妄想の自由落下 詩人の魂魄を煮詰めてみても なにも残らなかった化学室 片隅の人体解剖模型と 将来について語りあかす 誰からも詩人と認識されないまま 登録されないし抹消もできない だから詩人なのかもしれない ---------------------------- [自由詩]スーパーカブ讃歌/梅昆布茶[2021年10月3日10時03分] 人生の走行距離はもう僅かかもしれないが スーパーカブ程好きな乗り物は無いと思っている 角栄大臣の日本列島改造論で大陸との現実の橋ができていたら スーパーカブに跨って日本のあるはずもない誇りなどふりはらって 一か月休みを取って北京の天安門広場で民主化のデモに参加したい 適温のなかで適当な知見で物事を判断するしかない自分 看板だけ共産の偽装権力が香港や澳門を覆い尽くし人心を搾取してゆく 民衆の駆動力はスーパーカブの原動機と連動している 単純だけれども優しいメカニズムで燃費良く壊れず勤勉で いつかの僕に似ているかもしれない ヨーロッパの中世を支えたロバみたいに 日常の荷役をおおかた肩代わりしてくれる 温厚でいちばん忍耐強い乗り物なんだなこれが 人の手のはいらない耕地は荒れてゆく 自然や野生の支配は確実かつ迅速で 素早くスマートな文明的決済の哀しみと 新宿のアルミ缶を集めるホームレスとの落差を 木偶の坊政権から金権政権へ移ろうとも スーパーカブは決して疾走(もともとできないのだが)しないで ろくな舗装もされない路面と対話しながら 主人への愚痴を排気とともにゆっくりと吐き出しながら 言語技術などいらない歌でもうたって 走り続けるのかもしれないのだから ---------------------------- [自由詩]ゆうだち/梅昆布茶[2021年10月6日9時13分] 石地蔵と夏 ゆうだち 金木犀のこぼれる石畳 空に続いてゆく秋 ちゅーはい飲みながら豆を摘んでおもった 僕をつまんでくれたきみを摘んだ僕 ---------------------------- [自由詩]居場所のないうた/梅昆布茶[2021年10月15日4時06分] 居場所のないことにすっかり慣れてしまった 居場所があったのはたんに周りが優しかっただけ 革命の年にテントとシュラフを積んで やさしい風景を捜しに行った訳なのです いまも漂泊中の修羅猫みたいにこのありさま 家でも連休の1日は家にいないでくれって 微妙なだけにハラスメントっぽいでしょ 想像しない蛙は蛙にすぎない 純真な兎はどこにでもいるものです 不都合な蛙と屏風絵のなかで戯れていたり 健やかな夢想はいつのまにか 塗り潰されてしまうのでしょう 白い鳩は焼いて食べると美味しいらしい 赤い犬も美味しいとは仄聞の隣国のこと 誰も理解していない宇宙に 誰も誤読していないのに存在すること 言語は歴史的一瞬に定位したのかもしれない サピエンスが想像力の幼翅を広げてゆく黎明のある契機に 天職は星の瞬く時間の孤独の配達人であるのだろうと 生きる手法が違うだけで人はすれ違ってしまうのでしょうか ---------------------------- [自由詩]神さま 。ありがとう/梅昆布茶[2021年10月26日23時48分] ちゅうとはんぱに知っているふりをしない事 無知はゆめの入口のようにきみを待っているのだから 神さまに出逢ったら日頃の礼を言ってみよう 少しはこの世界の愚痴をこぼしてもいいとおもう そして懺悔を一生分したいのだけれどと申し出たのだが そもそも懺悔って何って返されたのだった 私はたまたまこの宇宙の管理人で他の宇宙も兼務しているので 懺悔とかいうものは更なる上のレベルに報告しておきましょうね ただあなたの心がやすらかにあらんことを 神さまは何処の聖職者よりもざっくばらんで 機能的なボディスーツを纏ったフィットネスジムの インストラクターのようでありながら この小宇宙の神という役割を的確にこなしているのでしょう 神様ありがとう広瀬香美も含めていつも傍らにありがとうです ---------------------------- [自由詩]エチュード1/梅昆布茶[2021年10月27日19時23分] 夢ひとつ羊雲のように 愛はひとつも翻訳されないままに 出版されない無数の文学たちが ちいさな夜に点滅しては消えてゆく すべての作品の消失点が世界を成すならば 僕も世界の一部なのかもしれない 定義は変遷しても詩人もどきは 死人同様に雨後の筍状態で だから死人のような詩人もどきに まだまだならないように夢を見たいのです すべての役柄をこなすことは不可能なので すべての人事を制御するのは不可能なので 本当は優しいニーチェのように 自分を震撼させて本来を取り戻したいと ---------------------------- [自由詩]幸福論。きみへ。/梅昆布茶[2021年10月31日9時13分] きみの幸福のために宇宙が誕生した きみの幸福のために宇宙は存在する きみの幸せは永遠のひかり きみのステージはいまこの瞬間 きみの幸福は結果なんてもとめてはいない ただ待っているだけなのです ---------------------------- [自由詩]ちいさな宇宙にて/梅昆布茶[2021年11月3日7時03分] たとえばきみを大切におもうこと 難破する世界では猫ときみだけが 僕の救いなのかもしれないのだ 神田神保町一冊100\のコミック 表紙の朽ちかけた神霊全集と世界地図 ひとの周波数は様々で 好きなラジオはなかなかきこえない きみの孤独のために宇宙は誕生した きみの幸福のために宇宙は存在する 孤独は永遠の珠玉 ぼくらの舞台はこの瞬間 きみは宇宙でただひとつの果実 孤独を内包する幸福はきみを常に待っている 僕の無骨な手はしあわせだろうか 僕の言葉は孤独だろうか きみの音楽はどこまでも流れてゆくだろう きみのシチューはたぶん誰もが感嘆して味わうだろう ---------------------------- [自由詩]エチュード2/梅昆布茶[2021年11月10日20時40分] ときどき本の下から食べ物が出てくるのが怖いのだが それでも生きて行けることがもっとこわいのかもしれない 知らぬ間に親がいて勝手に子と呼ばれて地球人になりました 先週までのシフト表がゴミ箱に捨てられて また新たなシフトでぼくは働いてゆく 太陽は燃え尽きるまで輝いてゆくのだろう 燃え尽き症候群とか言われないようになっても 順番に消えてゆく世代だけれどもね 幸福論を読みたいのです幸福になるまで ヒルティとアランとラッセル ぼくにわかるのはこれくらいで 内容はこれから咀嚼してみようと 猫ときみと僕がいきてゆく為のミニマムは 古い本に託された知恵のなかにあるのかもしれない 優しいとか強さとかの背反する理解と 現実に対処する能力がとてもアンバランスなので 解体して組み替えた住み慣れた街並み 智恵子抄はぼくの副読本なのですね ---------------------------- [自由詩]1。Cのうた/梅昆布茶[2021年11月17日8時18分] たった1。Cの寒暖差で きみと僕のこころの隙間が 埋まらない 君と僕は似ていても 1。Cの差をゆずらない 修辞学を駆使しても水溶性の会話は 多様性の海に拡散してゆく ノルウェーの森は僕らのよりどころかもしれない 無駄な個室ばかり増やしてゆくこの世界のなかで 相乗りしなければ滅びてしまうわけではないが 僕らの社会性はとりとめもなく減らされてゆく YouTubeでカーディガンズと 大好きな工場労働者の貧困映像を視聴して 僕は豊かで貧しいすべてを愛していたい 醜いものには必ず権威の匂いがするものだと 花の蜜はさびしい労働者が介在して 豊かな食卓に到着するのだと思ってほしい 1。Cの孤独は人によって生まれ 人によって解消されるものであると デカルトは言ってはいないであろうが 多様性のベクトルが 逆の方向に向かないように これからもサブカリストで生きるのでしょう ---------------------------- [自由詩]平均値のうた/梅昆布茶[2021年11月24日8時58分] 素晴らしい朝は 岬の鴎たちが啼き交わす言葉までわかる 遠い希望は持たないほうがいい ただ一瞬の充実が幸福論のすべてならば そこに集力してそれが結果になる方がいい それからが始まりだと思う 努力しても不可能はあるが 自分の燃焼を感じていたい 大好きな美文堂書店は閉店するが 読み続ける事を教えてくれたのは此処です 平均値から外れても良いのですただ それがあまり意味ないことを覚えよう もしも自分というものが有ると仮定して この世界の一隅を借り住まいしていても 細胞は日々入れ替わり 毎日瞬間別人になってゆく 37兆個分の責任はとれないので ある意味自由に生きて行こうとおもう 魂だけが僕ならば 身体は余計な荷物だけれどもね ---------------------------- (ファイルの終わり)