梅昆布茶 2020年8月18日3時35分から2021年3月30日7時16分まで ---------------------------- [自由詩]歴史/梅昆布茶[2020年8月18日3時35分] すべてのものに歴史が有り 呼応しあって一編の詩を編む すべてのひとに歴史と生命誌がありときには 愛情の経歴書を携えて空に放たれる すべての空虚に名前はない 風や雲や雨のようにあかるい すべての銀河に名前をつけるとしたら それは地球のすべての言語を動員しても 足りないかもしれない だから名前さえもなくても あるがままに生成し消滅し 個々のレクイエムはいらない 沈黙の海底からうまれて 損益分岐点を無視しては姉にどやされて いつしか生まれた時の自由になれるのかもしれない ---------------------------- [自由詩]むき甘栗食べながら書いているのでごめんなさい/梅昆布茶[2020年9月6日10時09分] とても間違った言いまわしが ひとに伝わってしまったとしても とてもお気に入りの財布が 型崩れしていくように しょうがないことだ 人はエンジンのまわる間は やすみなく動き廻って 1970年の僕は世間が安保で揺れるように 恋に揺れていたのかもしれない ぼくが幼い頃 常に音楽がながれていた 貧しくても間借り生活でも 母はピアノが弾けるひとだった 石坂洋次郎の若い人のモデルの 函館のミッションスクールでフィギュアスケート の選手だったらしいが 1970年の僕はラリー・コリエルの はじめてのアルバムを手にした 大学受験で浪人し 中央大学を中退して 3浪で早稲田に進学した意味があったとしたならば 寺山修司に或いは太宰治に津軽や賑やかななかで 革マルの高原女史に民青の歯の綺麗なお姉様 革マルの大好きな娘と 私服を逃れて 日比谷公園のデモのあとを 逃亡計画をうちあわせて 僕たちはいつも逃げているか 調子に乗って踊っていたりも どの方向かはわからないが 僕たちは一瞬一瞬をスパークさせて生き延びてゆく 栄養学は 生命には大した足しにもならなくて 牧畜のように無駄な延命をしいられてゆくのだろうか 春色からコロナ色した夏模様 コロナ後の秋の風はどんな音色 ---------------------------- [自由詩]豊饒の海に浮かぶ僕の不毛/梅昆布茶[2020年9月6日22時04分] 豊饒の海に浮かぶ僕の不毛 回想の店が改装するので 僕は暫く不漁だった 恋の意味がわからなくて むりやり女史に懇願して いまはとりあえず一緒だ すぐに飛び去りそうな 小鳥に なんの 担保もない僕はちょっと萎縮してしまう お金が あっても買うものがわからんし お金がなくても必要なものはよくわかる 自由という夢想には 常に不自由の定義がついてまわる 鉄道のダイアグラムのようには 僕らの日常は組まれてはいない ロープと砂 珊瑚とみなみじゅうじ座のアルファ星 いつかハッブルの銀河の何処かで 僕は暮らしたいと思っているのです ---------------------------- [自由詩]トリフィドの日/梅昆布茶[2020年9月11日11時33分] どうせ狂ってるなら詩人ぐらいが適当だ アメリカは暫くは大変な様子だろうけど 妻は何時も歳時記をかたてに句をひねり 僕は使いっぱで夜金を稼ぎ汗をかくんだ でも良いこともいっぱいあって内緒です ちいさな苦しみはいつも数倍の恩返しを 多少ふられても気にせずに恋しましょう だって僕だけはきみがだいすきなんだね いつか詩人になれるなら一緒になろうね この柔らかな地球の薄皮いちまいの生命 僕はときどき品川駅前で夜中に荷降ろし しているからよろしくおねがいしますが コロナ禍でみんな夢を再考しているんだ この価値観は一瞬のもの僕と君もちがう 柳田邦夫さんの母の言葉でしようがないっしょ 現実を肯定してそしてなんとかなるっしょこの 岩手と青森の境ぐらいの温もりのあるひびきが ぼくをちょっと元気にしてくれたのはほんとで 曲った根をたしなめてくれるあたたかい言葉で 僕はダンボールの人生をダンボールのことばで 大好きなたむらしげるのファンタスマゴリアは 絵本も3000円なのででもいつか再びてにしよう 人間関係も愛も地層の表面にはりついた地衣類 トリフィドの日は近いかもしれないのですねえ ---------------------------- [自由詩]Stormy Monday /梅昆布茶[2020年9月13日17時35分] 遠くまで行く事にどんな意味があるのかは知らない 知る必要もないことがたぶん僕の人生を埋めていたって 愛の不毛に踏みだす為の飛翔でさえ 保障の無い冒険のはじまりだったり 誰もぼくのじゆうを阻止 できない いつ死ぬかは大概じぶんで決めるものだ だれを愛するかとおなじように命題なのだ ぼくのいる地層はよくはしらないが ぼくの地層は魂が磨り減るほどに知ってはいるのだが 馬鹿は死んでも治らないものなのだろうね ぼくのちいさな世界にも季節があり恋人もいて てにおえない猫と共存して生きてゆく オールマンブラザーズのstormy monday を聴きながらゆっくりと生きてゆくのが好きです ---------------------------- [自由詩]てのひらの宇宙/梅昆布茶[2020年9月20日11時35分] ぼくは時間と空間を手のひらで表現できる詩人か 舞踏家か器楽奏者になりたいと思っているのです ぼくは愛の不毛を説く説教師には決してなりません どんな世界もちいさな愛の集積でできているんだもの ぼくたちは生きる哲学の創始者となって生き延びてゆく その総資産は地表を離れてきらめいて星屑になるだけなのです でもね生きている間にやりたい事は山積です きみを愛することや誰かの為にちいさな努力をすること だってその為に生まれた天使の子孫 なんだろうからね でもねクレパスでそらを描くと妙に濁っていたりすることもあるんだ ぼくたちの 空はたぶん違った色で憂鬱と希望とを気まぐれに表現してゆく ぼくたちの 獲得した言葉は僅かにじぶんを表明するだけで ぼくたちは自然界のシフトのなかで僅かに自由を得て終止する命なのかと あらかじめ用意された恋人同士の会話をできないぼく はふいに呼吸をわすれてしまうのだが ---------------------------- [自由詩]きみのスカートの裾について/梅昆布茶[2020年9月23日6時15分] この瞬間にこの音楽を聴けるのは生きている証なんです ちょっとだけ仙境を垣間見てそれでもやっぱり現実を改革する生命なんです 誰かを愛する合間に沢山仕事をしたいのですね 余計なことばっかして罵倒 されても平気なのでしょうね 彼女がスカートの裾を気にして大切なものを見失わないように 僕がきちん とパンツ をはいているかなんて たいした ことじゃあなくて そう なんだ人生 はねっとりしすぎているから 最後にまとめてきみのことを愛撫しようかと思って 歌舞伎町warpは 朝4時に解放されてナンパされた女たちが媚を売る あの夜は瞬きするあいだに消えさってしまうんだろうなぁ ---------------------------- [自由詩]ハッブルの宇宙論に添えて/梅昆布茶[2020年10月5日13時42分] 暁の空中戦では紅の豚がヒーローなんだが 真夜中の山手通りには椎名林檎しかいない 僕の雑草図鑑できみの名前はハルジョオン ユーミンの派手なステージとは違う質素な 神々の復活レオナルドダヴィンチはメモ魔 ぼくは頭の中のノートが整理できず昼休み 首都高5号線で22キロオーバー1万5000円 僕の窓辺あたり3連符でブラッドメルドー 妻と猫は一緒に股をひろげて寝ているし 僕は逢えなかった恋人をなつかしんでいる 天国の王国はすぐ目の前にあるというのに とうもろこしは甘くて切ない絶望の味わい きみといつか同じ言語を喋りたいんだ ネパールの彼女ともマレーシアのリムさんとも エルマタドール猛牛に刃を突き立て 恋する女にも誘惑の刃をやさしく 仏教経典は生命という詩篇を綴る スートラという糸なのだろう 文明のスパークを印す刻印 宇宙から見たらカーマスートラなんて 遊戯の絵本たむらしげるのファンタスマゴリア ---------------------------- [自由詩]秋の詩片/梅昆布茶[2020年10月5日23時32分] 音楽を聴く分析学的な時間が好き きみと過ごす解析学的な時間 深く沈潜してゆく愛情にも似た雪のよう 罵られる騾馬のように時間が過ぎていっても 愛撫する隙もないきみと暮らしているぼくは 無聊をかこちそれでもはてしない時間を夢見る かつて遠い戦さがあって詩人が沢山死んだ時から 詩はみずから立ち上がって歩きはじめたのかもしれない 12月の曲がり角はちょっと先にあって詩人をいざない 今月の支払いに困窮しているぼくは詩人に似ていると 10月の詩人はいつも寂しい 11月には借りを返そうかと思っても すぐに新年が来てしまうので ちょっとした賀詞を用意していても 友人は遠のき妻は咳き僕は曲がった臍の 隣で詩でも描いていようかと思うのです ---------------------------- [自由詩]スパーク/梅昆布茶[2020年10月18日22時15分] 互いにスパークする宇宙で起きた出来事があり 誰も入り込めない花園の君がいていつか僕は叙情になる 面倒くさい真実ばかりがまかり通って 優しい嘘はにぎりつぶされて疑問ばかりが生き残る レノンの夢は皆に引き継がれてパンキッシュな歌が 普通に流れている街が嫌いではないが棲めないでしょう 僕は彼女の言うように毛布を下にして寝ているが 渋谷のように再開発されすぎた夢のような未来が待っているとは ちっとも思ってはいない 死にかけた道玄坂にバイクをとめて 今はない伝説のロック喫茶にウヰスキーのこびんを 忍ばせて通うのが大好きだった時代 僕の妻がいいお尻だなんて ついつい言ってしまうお世辞だが 真夜中をぶっとばしてしまうほど 僕は真剣に生きてきただろうか 誰からも愛されないほどに 真実を語ってきたのだろうか ---------------------------- [自由詩]秋詩譜/梅昆布茶[2020年10月25日10時11分] 酔生夢死 僕はちいさな日常を積み重ね 彼女の愛を貯金して 彼女はこがねを貯金している ぼくは 字が下手で絵も下手で おまけにろくな詩もかけないのんだくれ ほぼ一直線でレールもルールも知らない 何もわからないままでも生きていく 知的生産の技術って僕にとっては重要な本で ぼくたちはいつもなにかを理解しようと でも理解をいつでもどこでも放棄して ときどきちゃらちゃらして我に帰る 普遍性は優しい いつも普遍性の子供でありたいとおもう 僕は自己責任の名の下に弱者を切り捨てる 国と政権を革命したいといつも思っているのだが 死ぬときはひとりで死のうとおもっています 彼女は一緒に死のうと言うが心中じゃああるまいし 人生って頭韻も脚韻も無くて只々フェイドアウトなんだろうな 詩人ってけっこう自分の工房を持ってる優しい人が多いなと想う 興味のあることは無限にある 死ぬまでそうありたいのだが 三国志からラップまで繋げてもしょうがないので 説明もなく好きか好きかもの範囲で 僕は詩人ではないので詩の終わり方がわからないのです あえてい言えば秋詩符なのかなぁなんてね ---------------------------- [自由詩]ひとつの約束/梅昆布茶[2020年11月3日1時46分] いつかどこかで彼女に許されたことがあったのだろうか 約束された自由から疎外されたまま生き続けることが 人生という名に値しないとしても 未完成が日々の完成である人生なんてね 小学生の頃から疎外はきみとぼくとの友達だったね 経験は未知を 未知は経験を求めて互いに補完できない 内緒の関係者なんだから 普遍性は優しい いつも普遍性の子供でありたいとおもう 僕は自己責任の名の下に弱者を切り捨てる 国と政権を革命したいといつも思っているのだが 死ぬときはひとりで死のうとおもっています 彼女は一緒に死のうと言うが心中じゃああるまいし 人生って頭韻も脚韻も無くて只々フェイドアウトなんだろうな 詩人ってけっこう自分の工房を持ってる優しい人が多いなと想う 興味のあることは無限にある 死ぬまでそうありたいのだが 三国志からラップまで繋げてもしょうがないので 説明もなく好きか好きかもの範囲で ---------------------------- [自由詩]20%値引きのポトフ/梅昆布茶[2020年11月16日19時55分] 下高井戸の狭い駅前商店街は なんだか昭和の生き残りみたいで 美しく整理された学園都市よりも ジャニスジョプリンみたいな親しみやすさ スポティファイみたいな狡猾と先見性 いまだに覚えている未来のわすれもの そこに到達するまでの時空間をいま生きている 表現の自由が保証されているかぎり 詩を描いてみようとも思っているのです みちばたの幼な子がせかいを理解しても それは僕の理解と同列と猫は言うがそうなのだろうか? 神田神保町の成城石井で20%値引きのポトフ 60分300円のパーキングスペースに15年物のラパンを停める すぐそこに僕の1970年があるのだろう 時間軸に沿って生きているつもりがいつのまにか マルクスの貧しいロンドン時代など思いながら なぜ一部の人って権力を志向するのかと考えたり マーラーの交響曲のふたつめを想ったりあるいは いつか鴨長明みたいなミニマリストになりたくて 空想は4次元に属するもので僕の棲家なのだろう 組んず解れつの愛なんてとっても大好きなんだが 詩も人生もいつかは整理されなければならない それは生命も同じでそういう圧力のもとに生きてゆく ---------------------------- [自由詩]minimum/梅昆布茶[2020年12月7日18時04分] ぼくと直交するものすべてが好きなのだ 遮るものが弾き出す座標に抵抗して 鉛直する何かがあれば良いのかもしれない 古い団地の一階の北向きの僕の寝室 書斎でもありギター2本とキーボード イレブンの海老グラタンと缶チューハイ 不安定な夕暮れははやぶさ2号の軌跡のように 小宇宙に散らばってゆくように 僕はせかいでいちばんのミニマリストになろう ---------------------------- [自由詩]サブスクリプト/梅昆布茶[2020年12月22日11時03分] 破片が総合される月には 僕はたぶん接ぎ合わせるために ちっちゃな経理係を呼び起こして ちょっとだけ仕事をしてもらう 小欲知足 サブスクリプション 仮説と証明と検証 とっておきのドイツワイン 葉祥明みたいな風景 ベートーベンみたいな ウイーンの ロックスター だれも彼女を クーリングダウンできないさ 完結できない時代から かんけつする棺桶も見込めないので じまえの洗濯機でも頼もうかとも 誰も自分を洗えないのかもしれない 大好きな人だって自分と同じように 穢れているのかもしれないのだから ---------------------------- [自由詩]隼/梅昆布茶[2020年12月28日19時30分] かつて僕らが古代人だったころ 山々は鳴動し天は雷をなげおとし 血は逆流して生命というものを からだで感覚していたものだ かつて僕らは父母を畏れ慕い よるべない人生の光と思った 何もなくて良いのかもしれないんだ 僕たちにはそれぞれのきみがいるし うたかたの流れのなかで出会えたのは ほんの奇跡 とちゅうけいかの輪廻 隼2号が理想かもしれません ---------------------------- [自由詩]窓辺/梅昆布茶[2020年12月30日12時53分] 海の見える窓辺に ちいさな灯火で本を読む 誰もいない部屋は暖かくすこしだけ湿っている 昼間にはここから木枯らしを耐えるしなやかな小枝がみえて 優しくて透明なものだけを感じようとしてみる 触れられなくとも親しいものにこたえを求めて ---------------------------- [自由詩]詩猫/梅昆布茶[2021年1月5日7時26分] おしゃべりな猫と 沢山の言葉を持っている猫は違うみたいだ 沢山の言葉を持っている猫のなかには 的確なことばを伝え得る猫もいるとおもう 時宜にそって言葉をつかいこなせる たぶん詩猫って猛獣使いみたいな猫なんだ ---------------------------- [自由詩]単音/梅昆布茶[2021年1月11日19時16分] 単純な答をぼくはたぶん知っているのだろう 人生って単純だけど優しい遊園地だなんてね 知性あるいは悟性とかいろいろあるけど 現実を処理できなけばとりあえずぼくだ 珍しい動物新しい道具予測外の事態にて 真冬のオープンカーみたいで楽しいかも 日々が大嫌いなインスタレーション 母を慕うちっちゃな67歳のぼくがいて いつも音楽のキーをさがしているのです 誰もキーをしらないようなのでとりあえず コンポーザーでもないのです 歌もしらなくてそれでもただひとつ とても自由を満喫しています いつも夢のしっぽを追いかけている モチベーションなんて関係ないのかもしれません ---------------------------- [自由詩]ストレイキャットブルース/梅昆布茶[2021年1月22日10時31分] 愛を1リットルをおくれ もしお金で買えるならばね ひもじさをもう一度おくれ 愛に満たされた後で 美しい言葉が降りてくる前に 本当の悲しみを教えてくれるかい ストリートファイトではたいした 金は稼げないから ストレイキャットブルースで 君のキュートなしっぽをつかもう ---------------------------- [自由詩]CR2032/梅昆布茶[2021年1月25日10時41分] どこまでもながされてゆく果てしない旅だ おみごとに円満する人生でもないし きみのいる風景にぼくは入って行けない 俯瞰するわけでもなくぽさっと眺めてる ぼくはコイン電池のCR2032で動いているのです いつも新しい生命とものが生まれ 必ず失われる生命とものもあって そしてコイン電池で存在を維持している僕は ときどき寂しかったりもするのだけれどね 時代の粘度が変わったらまた会おうね そうじゃなくてもまた会おうね 大好きな君へ ---------------------------- [自由詩]二胡/梅昆布茶[2021年2月9日11時54分] 僕の空腹はぼくのものだ ときどきカップ麺を要求するけど 必要は最良の教官ではあるが 不必要はより甘美な憩いなのかもしれない 罵り言葉でもないが 地獄に行こうぜ 僕みたいな人間の行為の罪 君みたいな人間のやさしさ 歌をつくるように生きてみたい 簡単には詩人になれないけれど ぼくのB5の自由帳には家計のちょっとした計算とか ねこのひげの落書きとか あんまり自由とは関係ないものばかりが記されていて 中国の彼女とした食事など 彼女の生地の上海の喧騒とか ちいさい接触ではある でもね二胡の弦の自由を感じたのかもしれない アバターではない僕キャラが欲しかった たぶん僕の空腹は次世代を育みあるいは ちょっとだけ余計なことばかり言う おじさんの独り言にすぎないんです ---------------------------- [自由詩]逃走/梅昆布茶[2021年2月12日11時08分] 個人の貧困は妄想なのだろうでも あるいはこの国が貧困なのだろうか いずれにせよもう描かないだろう ベランダで洗濯物を干すwifeみたいな詩 僕的にだけれどね アンチテーゼがつきるころ 国がほろびるまえにただ逃走しよう それが更に冷たく凍てついていても それが希望をはらんでいるならば ---------------------------- [自由詩]春のうた/梅昆布茶[2021年3月1日6時59分] あるいはがらんどうの街に棲む たまさかさびれた繁華街で遊ぶ 恋の歌は春の猫のように かなしいやさしい歌だろう 愛は重すぎていつも栄養学的に 分析できないものなのでしょうね 失われたものを数えるだけでは生きてはゆけない 生まれた子供を数えるだけでも生きてはゆけない 僕はときおり何かに気づくのだが飲むと忘れてしまうので 詩論の蘊蓄にはぶ厚い単行本があるが読了していないのです よくわからないのですがでも 会話は鳥のさえずりのように 意味よりも反応なのでしょうね 愛は地球を救わないだろうと思うのです それが名辞にすぎないのだとしたならば ---------------------------- [自由詩]誕生日のきみに/梅昆布茶[2021年3月6日12時05分] 古代はひがないちにち風を吹かせて 日捲りはやがて春を忘れてしまうだろう 肩甲骨のあたりの憂いは上等な娯楽あるいは ながれついた憎しみをも拭い去ってしまうのかもしれない あの娘はときどき薄く引いた眉に化粧箱をとじこめて 海岸の無い街を歩くそして自分の影をさがしている きみはどうしているかと何時も想うが きみが誰だったのかいまだわからない気がするんだ 陽は翳ろうと世界が暗転しようと 無意味ならば言わないほうが良いのかもしれない 風がなくてもスーパーの幟は素敵に翻って YAMADA電機の修理品は無事に戻ってきそうだ またあたらしい或いは古楽が響くときにきみはいるのだろうか またあたらしい猫をそして猫の餌を心配しなければならないのだろうか 新しい誕生日のきみに ---------------------------- [自由詩]今日と明日の隙間によせて/梅昆布茶[2021年3月7日11時53分] 僕のグレたガラホは相変わらず寡黙なのだ やっと取り引きして得た隙間に僕は住んでいる 今日と明日が条約を結んで握手しても僕は拍手しないだろう だってやつらの隙間の全人代という茶番を許すのだもの 今日と明日は無国籍だ 僕もきみも結構無国籍なんだな 交代勤務で今日と明日をつくらないか それとも何処かに振ってごまかしてしまおうか それとも香港とかミャンマーこそ 安息の地なのかもしれない ---------------------------- [自由詩]天文少女のうた/梅昆布茶[2021年3月8日19時45分] 大好きな女と離島で暮らす 大嫌いな奴と仕事をする 愛情たっぷりの野菜を食べる つまらないことでも悩むのだけれどもね まあ確かにいいかなって とても酷薄な人生のやり口だ 計画経済や計画社会は 長続きはしないようだ 調和と平穏 危機管理という悪夢 人間がIT化してゆくわけもないので 2進法に慣れるしかしょうがないのでしょう 天文少女に逢う 無機質な電位の移動 言葉を扱えないくせに 意味をあたえられないのに 僕がここにいるのは何故 ---------------------------- [自由詩]海底99メーターの孤独/梅昆布茶[2021年3月11日11時13分] 海底99メーターの孤独 エヴェレスト単独登攀の孤独 子供が離れた孤独と 爺ちゃん婆ちゃんのいない孤独 不安に怯えても孤独と融和しようぜ もう子供じゃないんだから もし好きなことがあったら触れてみようって それは僕のことだけどね でもね 僕たちは不自由のなかの自由を得ている 震災10年の報道を謙虚すぎないで 強く受け止めても良いのではないか ---------------------------- [自由詩]所在/梅昆布茶[2021年3月15日23時06分] たぶん僕は悩殺よりも瞬殺派だ まわりくどい締めゴロシよりは死刑が良い ときどき趣旨を忘れたりするが 詩みたいなものを日記みたいに描く 僕にはまっとうな友達がいないみたいだ アビーロードの風の流れに身をまかせて すべては君のためにある はかない愛の所在さえも ---------------------------- [自由詩]ニュートンの運動方程式/梅昆布茶[2021年3月30日7時16分] 原稿用紙100枚400字詰めで4万語描かなきゃいけない 100年の生を貰ったとしたらそれを埋めなければならない 嫌だと言ってもたいした選択肢もないので 義務教育ですくすく育ちすぎたのに 生来へそ曲がりなのではみ出してしまったらしい 結婚でもできたならば つまらぬ遺伝子でも残そうか 天体に引力があるように 人間にも引力があるようだ f=なんとか分の揺らぎなのでしょうか 斥力もはたらいてるようで どうもあいつと居ると気が滅入るとか 馬があわないとかいう言葉は嫌いなんです いちばん薄い奴がよくつかっていたから それって独裁的なひとの自己弁護だとおもうのです それよりか 大瀧詠一でも聴いているほうが よっぽど気が効いているって言われそうだ グリコのおまけの文化力 予定調和を破壊しながらも 生きることがおんぼろなアートで反体制で つねにサブカルでローカルでちょっとだけ革新の 秩序と無秩序の境界を巡回してゆこうとおもう スエズ運河でタンカーが座礁しただけで 凍結してしまう世界の灰皿をごみ箱に捨てたならば もう一本の缶チューハイの朝を迎えようかともおもうのです ---------------------------- (ファイルの終わり)