梅昆布茶 2019年12月11日4時32分から2020年8月10日14時58分まで ---------------------------- [自由詩]亡命の星/梅昆布茶[2019年12月11日4時32分] 死ぬまでに全てを抹消してしまおうと 無駄に生きていても天球は確実に回転して とても言葉が軽い時に やっぱり訃報と交換なのだが Resetすることを恐れてはならないと想う リセットで救われる魂が沢山あるのだから いずれ 廃棄されようともまえに進むこと 僕は廃棄 されるまえに語り尽くしてしまおうと たいして変わらず描くものもないのだけれど 散文作家になりたいのです それでご飯が食べれるものでなくても ちょっと朝日がさしこむ部屋でエッセイを醸すのです 文学はよく知りません 芥川賞 直木賞 ヤマハのポプコンなら多少知っていて 第2回の赤い鳥がグランプリだったときに 次席だったドラマーが飲み友達でした 僕はいまリアルタイムで ロードムービーを演じているところで 背景には音楽もちょっと流してみたい 小林秀雄がモーツアルトを礼賛しているそばで ラフマニノフやチャイコフスキー わざと勘に触る音楽を流したかったなあとか想うのです やわらかな定形が好きなのかもしれない 人間ってそんな感じかなあと思ったりもするのです 骨格にささえられふわふわと生きているような ---------------------------- [自由詩]記憶/梅昆布茶[2019年12月17日21時48分] 記憶ってなんだろう 僕の記憶って 記録は嫌いなんだ 風にまかせて書き留めたほうが たぶん素敵だから ---------------------------- [自由詩]のんだくれ/梅昆布茶[2019年12月24日9時28分] のんだくれ男とやさぐれ女 とぎすまされた場所にはそぐわない だれも無関心のふりの都会で 新宿で乗り降りするほどの乗客 手を繋ぎたい天使が裏帳簿に記帳されて 探している煙草は違ったポケットに入っている だいじょうぶ僕はなんとかやっていくから 自分なりのおもしろさを大切にして ガールズバーのいつもの彼女が 歌舞伎町の寒い真夜中に生足で素敵にアルバイト とんがった事はないがある意味いま いちばんとんがっているのかもしれません ---------------------------- [自由詩]冬籠り/梅昆布茶[2020年1月1日11時00分] そう、 僕たちはいつも現場にいる 破片 最低の言葉遣いをする低脳だ たとえ親が死んでも現場にいるし 無縁菩薩の教えなんてしらないし 5百ミリリットルのお茶が欲しいなんて 誰にも尋ねられないしそれでもね あたらしいダイスを振ろう こざかしい輩は目の端において 売ってしまったレコードみたいに 過去は混沌として楽しいものだ とても手軽に音源が手に入る時代に もし一月の休暇がもらえたら ぼくは音楽で冬籠りして 彼女は嫌気がさして 逃げてゆくに決まっているのだけれどね ---------------------------- [自由詩]花散里/梅昆布茶[2020年1月15日9時24分] 花散里 僕の小さな世界史が 源氏物語だったら 次元を超えて愛を語れるものなら あるいは1970年の山下洋輔だったり アルバートアイラーだったりするのかもしれない 僕は何に対して誠実だっただろうか 社会あるいは誰かに対して 少なくとも外宇宙に徴税吏はいないし 想像力を縛るものはないのだけれど もしも流行作家ならば 締め切りと枚数に追われて 僕は何に対して誠実だっただろうか 社会あるいは誰に対して 家の仔猫が世界を認識してゆくように ぼくもあらたに認識してゆこうと想う ---------------------------- [自由詩]パーティー/梅昆布茶[2020年1月21日23時26分] 空っぽのパーティーの肉料理 こんもりとぶ厚い太腿 276,000回のキッスと 体裁のよいオードブル 雑誌のポケットにしまわれたゴシップ記事 インデントされたままの挨拶文みたいなラブレター 庄野潤三の素敵な古本を手に入れたんだ つぶれかけた地方の片隅の古書店 たしか芥川賞作家さんだったような気がして とても優しい風路に世界がある 弾劾のない優しい知性であってほしい ---------------------------- [自由詩]越冬猫/梅昆布茶[2020年1月29日8時46分] めまぐるしく生成する ふてぶてしく存在する 世界を威嚇して こんもりと丸まった猫 安普請の家作には いつか花が咲くだろう ただいま越冬中につき Don’t disturb となりの森までは遠いから うちのちいさな庭を散歩する とぎすまされ磨り減って やっと詩みたいなものに 近づけるのかと想う ---------------------------- [自由詩]テーブル/梅昆布茶[2020年2月6日20時51分] とてもちっちゃなテーブル だけどぼくのテーブル 幼い日は僕のテーブルなんてなかったんだ いまは大切なものをそのテーブルに展げたりして 東京下町大衆酒場ノ味 と銘打ったトーキョーハイボール 大正浪漫っぽい夢二風のアルミ缶 もう昭和もレトロらしいのです いつも新しいページが 欲しいと思っています なるべく正しいものに近づけることを想いながらも 失敗して世間の評価ではまあまあ無害だから看過していただいています とても優しいテーブルに ぼくの朝ご飯が載っているって ときどきそういうAIの夢を抱きしめて 僕は自分で握った梅おにぎりが 大好きなのでした ---------------------------- [自由詩]あさ/梅昆布茶[2020年2月18日7時48分] とても良い朝には きみに電話をして かわいい化け物の話とか 食べきれないピザの大きさなんかを 評論してみたいんだ ときどき売りにゆく 柱時計がボーンと鳴り 寺山修司が競馬新聞を持って 渋谷場外で馬券を買っている んだけど ---------------------------- [自由詩]教室/梅昆布茶[2020年2月25日19時26分] きみの空にはいくつもの風がながれ きみの血流はいくすじかの未来につながっている まいにちは規定された演技をたずさえて きみをいざなってゆくちょっとだけ厳しい教室 でもさ きみの壁をとりはらってくれる 優しい先生がひょっとしているかもしれないね ---------------------------- [自由詩]時間と夢/梅昆布茶[2020年3月3日2時51分] 天体望遠鏡で垣間見る宇宙は逆さまで ときどきのぞくだれかの素顔に似ている 必要のない事と 必要があってもままならない逆さまが 混在している毎日が好きです 僕たちの情報はトイレットペーパーで封印され 学校も封印され給食もどこかで止まってしまって でもねDNA に支配されてはいけないと想いながらも ウイルスは宇宙線で変幻してゆくのかとか 小さな毎日の知見だけでもね 充分生きて行ける筈なんだね ---------------------------- [自由詩]腰掛け/梅昆布茶[2020年3月16日19時12分] 遥かなる文明の端っこに腰掛けているのです なんだか大切な靴も失くしてしまいそうで 雨も止んだようなのにぽつねんと一人で腰掛けているのです 忙しい新聞記事を時々は読みたいとおもいます 3年ほど通電していないTVもたぶん生きているのでしょう 久しぶりに手紙を書いてみようと思いつつも ついつい乾いたメールで済ましてしまう神経も嫌いです 自分をリサイズする痛みなんてあったんだろうか 人間は乾いた喉を潤す時だけ幸せを満喫するのだろうか 物理学や数学の美学や原初の言葉の成立ちとDNAに刻まれた毎日 万物は流転するってよくわかるのだけれど うちの猫が去勢するさいにどう償うかとか 今日も透明度の高い日でありますように願います 僕のしこりをまいにち解いてゆく腰掛けなんです ---------------------------- [自由詩]原初の森/梅昆布茶[2020年3月23日22時46分] 原初のもりのなかには 原初の夢があったのだろうか 生命ははじめて声をだしたときに 詩を綴っただろうか 曖昧な系統樹のはてに僕たちは 何の権利もないことを知るが それが自由なのかもしれないとおもうんだ 所有権なんてなかったんだ 誰の愛も所有できない 未だに誰ともあっていない原初に また 帰ろうかと思ったりもするんだ ---------------------------- [自由詩]E.クラプトンの休暇/梅昆布茶[2020年4月3日10時16分] トルコとギリシャでの休暇って 僕にはありえない夢なのかもね ささくれていきているのかもしれない やさぐれていきていないとはおもうけど 裏切ったものはかずしれず 愛したものも多少はあるが 顔のみえない接触不良のなかで 誰かを信じようと思ってよいのです その力を蓄えれば大丈夫なんです たぶん僕にとって トルコとギリシャへの 心の旅は大切なんです でもね 僕には必要な大事はなにもなくて 妻と猫とを可愛がってそれでも 愛の遺伝子があるとしたら 頑なな自我を放棄して 僕は「ぼく」に戻るだけなんです トルコとギリシャでの休暇って 僕にはありえない夢なのかもね 顔のみえない接触不良のなかで 誰かを信じようと思ってよいのです たぶん僕にとって トルコとギリシャへの 心の旅は大切なんです トルコとギリシャでの休暇って 僕にはありえない夢なのかもね ささくれていきているのかもしれない やさぐれていきていないとはおもうけど 裏切ったものはかずしれず 愛したものも多少はあるが 顔のみえない接触不良のなかで 誰かを信じようと思ってよいのです その力を蓄えれば大丈夫なんです たぶん僕にとって トルコとギリシャへの 心の旅は大切なんです でもね 僕には必要な大事はなにもなくて 妻と猫とを可愛がってそれでも 愛の遺伝子があるとしたら 頑なな自我を放棄して 僕は「ぼく」に戻るだけなんですt ---------------------------- [自由詩]なにもなかった昭和に寄せて/梅昆布茶[2020年4月21日3時25分] 夜更けに僕の勤務は始まる 夜明けに僕の勤務は終わらない それとはあまり関係ないが 夜桜ばかりが散りかかる明治通り では大正通りはないのかと考えたりするが 昭和通りはたぶん各地に点在するのだろう 上野から新橋まで昭和通りの下をよく走る 貫通するトンネルはとても大好きなドライバーの穴場 僕にとってのツールドTOKIOなのは内緒でもないのだが 誰も関心をもってくれそうもないので それならば築地場外で海鮮丼を食したのち 晴海通りをお台場に抜けて海に逢おうか そうなんだ みんないっぱい自分のことを好きで そのうえで いつも通ってる〇〇通りを しっかりさっぱり好きになってもらいたいんだ アニミズムみたいに いまある呪詛を滞りなく空に放って いつかプラトンの国家論みたいに あるいはマルクスの理想のように 紅い花よりも波長の長い色は不可視なんだね 紫が尊い色だとしてもそれより波長の短い色も視えないし 鳥は人間よりも紫外線領域の世界を感知して はなむぐり風の糸をつたわって 春の歌くぐもってうたう機関車に ここだけの話を紡ぐ翻訳機 窒息しそうに大好きな人がいたあの日 失速する日々を整理しようと思ってたんだけど ぼくはうまれた時はちいさな塊だった こころを吹き込まれいのちの融和をおしえられ でも誰も愛せない時はなかったとおもうんだ 今も大好きなひとを いつも好きなひとと I’m going back home And You can just come over here ---------------------------- [自由詩]五月の歌/梅昆布茶[2020年5月5日7時15分] ちいさくてとってもちいさな貝殻があった 優しくてとってもやさしい友達がいた時もあった 幼いころ姉がひらがなの練習をしていた たぶん卓袱台で宿題でもしていたのでしょうか 対面でそれをみていたらしい僕は しばらくは ひらがなを逆さまに書いていたそうです いまは同じ社内のひとの名前さえ出てこないときがあって それは脳の鮮度のせいにするしかないのです 個人の記憶は個人のものである反面 ちょっぴり 社会の財産でもあるのかもしれません 紅い花よりも波長の長い色は不可視なんだね 紫が尊い色だとしてもそれより波長の短い色も視えないし 鳥は人間よりも紫外線領域の世界を感知して 四月になれば彼女は 優しい髪をなびかせ ちっちゃな牙をかくして 居留地からにげだすんだ 約束なんてなかったとおもいながら 約束がほしかったのかもしれない 五月なんていらないと思いながらも カレンダーをかってにかきかえて ---------------------------- [自由詩]海にたどりつく/梅昆布茶[2020年5月11日19時14分] いい加減に書き散らした日記を死ぬまでつけようか 時間と空間が混乱しては想いは惑い腹も減るだろう 冷たい朝の空気が夜に萎えた神経に障るあさは 棄てられた男は塵箱のように 女を浄化できるのだという くだらないジョークをひとりごとのように唱えて だれかが誰かのこどもである事はあたりまえなのだろう 生物学的にそういうことになっているらしいのです 孤独は免疫力を低下させると 予防医学的に言われているが 孤独の自画像は哲学を超えて 社会学を迂回してまでも海にたどり着く ---------------------------- [自由詩]遺伝子のうた/梅昆布茶[2020年5月18日18時13分] 遺伝子というつづれ織り きみとぼくを区別できなくったって たいした支障はないのにね ぼくの遺伝子はときどきエピタフを聴きたくなる 螺旋状の階段をのぼりおりするうちに 階数がわからなくなった訪問者のように 成分表示によると エネルギー 残り少ないが大切に使いましょう たんぱく質 33.195kg 脂質 15.195kg 炭水化物 17.195kg 食塩 0.195g 違反点数 ? 清浄な魂 僅か アルコール 過剰 Delete はできません 進化にエラーはつきものです ---------------------------- [自由詩]マルコポーロの旅/梅昆布茶[2020年5月25日13時09分] 抒情という故郷にはもうかえれない 父母を墓苑に棄てた罪状は計り知れない 閉ざされた街に住むと 誰ともつながれないようになる パッケージされた夕食が配信で済んでしまうのなら 目玉焼きとか魚の焼けた匂いは 何処へ行ってしまうのだろうか グレゴリオ聖歌が多声の合唱に変貌してゆくように ヨーロッパも細長い国の日本も変わってゆく 自分だけが変わらないつもりでは生きられない だれかの返事を待つ必要はないのだとおもいながらも 体をかわすズルさだけは残っている 叙事しかつづれないおとこ 叙情に溶け込んでゆくおんな 聖マルコ寺院 マルコ・ポーロの旅 ベネチアンマスク 寛いだ部屋 いつも一次試験で落ちた自分を想い出す ---------------------------- [自由詩]間伐/梅昆布茶[2020年6月2日7時27分] まいにち鉛筆を削る 一本でいいんだ無心に削る まいにち本を読む 一頁でもよくてジャンルも問わない カレンダーがひとつづつ塗りつぶされてゆく でも鉛筆を削らないと本を読まないと墜ちてゆく この重力社会を変えようと思うのです ぼくたちは時間軸と空間軸におきかえられる数式ではなく 米がちょっと足りなかったら 従妹んちに借りに走るって素敵じゃないかと 119回目の神経衰弱は欲しくないかい ひょっとして僕もAI用のデーター中毒ににかかって 共産主義のゆめをいだきながらのイデアリストみたいに 間男 間引 間借り こころのなかで間伐している ---------------------------- [自由詩]彼女の方程式/梅昆布茶[2020年6月9日2時07分] 婉曲な月が浮かんでいる 高橋留美子とつげよしはるが好きで 藤原新也と東京漂流する夢をみる 彼女の方程式は誰も試さないほうがよい ゆれうごく等記号の ちっちゃな解決なんてほっとけばよいのだ 方舟の未来は視えないが ひとと較べない樹木希林さんは そういう人だったらしい 東方見聞録 青函連絡船 遠く触れない肌の人間どうしでも あざやかなコラージュに なりうるかもしれない世界を やさしい気持ちで迎えるためにも 彼女の方程式を 冷たい方程式を 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だったら記号の多い難解で数学的な詩人としてなら 理解できるかもしれないと思う ちいさな日常のことばを紡ぐ詩が いつか宇宙の涯までとどくのは確実なのだと 世界が成立していることがらの総体だとしたら 宇宙はきみの吐息を誰かが何処かで観測しているのかも 君の吐息が宇宙を変えるんだろうな 君が機嫌よければ宇宙もいつか機嫌をなおして だってすべてこれは 君の宇宙なんだものね ---------------------------- [自由詩]表?/梅昆布茶[2020年7月25日18時08分] 夢の中の家から 神田神保町への通路があったなら もちろんあるわけもないけれど 毎日サブカル系の書店にゆくだろうな 1970年代のSFマガジンが1冊200円だった 渋谷道玄坂百軒店のSAVという 道頓堀劇場の隣だったような・・・ jazz&rock喫茶の素敵な店ももう無くて どちらかというとヨーロピアン・プログレだったかな 御茶ノ水あたりの小洒落た喫茶店で彼女と待ち合わせ 聖橋やdisk union それもカフェレーサー風の単気筒のバイクが似合うかなぁ 友達がアテネ・フランセに通ってた ---------------------------- [自由詩]レインダンスのまち/梅昆布茶[2020年7月25日21時04分] 水たまりだらけのいちにちを 病院のベッドから眺めている 何冊めかの本をてにとり 2日めも暮れなずんでゆく 痙攣していたてあしが痛みから解放され 滞っていたからだの中の運河がながれて 点滴の歌が聞こえる夜には ぼくの内臓のハミングが響く 一本の木あるいは一本の糸でも良いのだ 君にゆかりのあるものがあるとしたらそれは コケティッシュな落雷と 尻尾のきれた蜥蜴 とても辛いみちを歩き続けたとして それが自分の人生だったりもしたら 精神はいつか反逆するのかもしれない ---------------------------- [自由詩]ロバの話/梅昆布茶[2020年8月2日6時19分] 痩せっぽっちのロバと ながらく友達だった僕は マッチョなイギリスの 粋なボーカリストが好きで ついにはオペラ座の怪人の 私生活を知ってしまうのだろうか 拘束されない言葉ほど 大切でいたましいものはないのだけれど つぎはぎだらけの ブルージーンズと ちっぽけな美学 そう明日はまたやってきて 僕はいつまでも それに対峙するんだな ---------------------------- [自由詩]8月の不思議/梅昆布茶[2020年8月6日19時21分] 幼い頃から不思議でない ものには 興味がなかった そのものが不思議を 孕んでいるときには ときめいたものだ 大洋や星 深海生物や ジュラ紀の森 型紙のないものが 不思議だとしたら それはいまの手のひらから いちばん漏れおちてゆくものに ちがいない ぼくは次の駅でおりようと思う プラットホームのないその駅は いきなり不思議へと 通じているかもしれないから ---------------------------- [自由詩]仮説/梅昆布茶[2020年8月10日14時58分] ぼくたちはいつも何処かに落ち着こうと ぼくたちはいつも誰かに愛される為に 莫大なエネルギーをつかいながらも それでも せめて自分だけでも保持しようとしている 腸内フローラと循環器と脳に管轄されながらも ふわふわした個体を必死で管理している 神のつくりものにすぎないかあるいは アミーバの感覚器官の進化論的敷延にすぎなくて 希望への仮説はたくさんのこされている それは個人と希望の連携あるいは 一本のギター あるいはきみの一編の詩 ---------------------------- (ファイルの終わり)