梅昆布茶 2016年6月26日10時27分から2016年9月15日4時12分まで ---------------------------- [俳句]トッポギ俳句選集/梅昆布茶[2016年6月26日10時27分] 廃人が俳句をひねるNET日和 嫁も来ぬ風も吹かぬが生きている 一日500円生活が板に付きそうで怖い 愛しさの呪いを舐めてろくろっ首 フレッシュなものは食べて欲しいはずなんだが? 手がのびてそこは違うと妻の言う EL&Pのタルカス久しぶりに亡きエマーソンに逢う 夜の首都高で呪いがとける娘のおにぎり 醗酵を促す成分て恋の成分と似てない? 美人(。。)が俳句をひねるNET日和 ---------------------------- [自由詩]フィボナッチの夢/梅昆布茶[2016年6月28日22時24分] フィボナッチ数という概念以前に 自然は数理をすべて把握していた 僕の心の中で君との関係性の黄金比は 生物学的に柔らかく深くとても妖しく 揺れ続けているがそれでも 日常の僕はいつも不安定で ときどきハイリターンのレバレッジをかけても そんな容易く人生は微笑んではくれないものだ 自由と責任と愛 様々な要素を満たす数式を 導き出す過程が人生だとしたら その解答が自身のなかにあるなら 僕はまだいきてゆけると思っている訳だ ---------------------------- [自由詩]全力チャリダー/梅昆布茶[2016年6月29日13時18分] 風にのって走る 超人ハルクのようにニーチェの箴言を唱えながら走る 葡萄棚の下で交わした接吻をいつまでもわすれないように 市場で買い集めた食材で君との思い出の料理をつくる 部屋にはホッドロッドサウンドが軽薄にながれ TVでは大リーグの生中継と会社からの電話が入る 君の笑顔が連続して飛び去ってゆく マーブルチョコレートをもった女の子も飛んでゆく 僕は飛行機事故で死んだ大好きなバンドの歌をうたう FREEBIRD すべての母と子供達に平安がおとずれますように ---------------------------- [自由詩]新しい地平線/梅昆布茶[2016年7月3日20時50分] 路上生活者のように毎日が過ぎてゆく ランボーのように地獄の季節も創出できず 安吾のようにデカダンに遊ぶ余裕も無く 冷たい缶ビールで無聊を凌ぐ 僕の故郷であるペンギン村では あられちゃんが銀河鉄道の車内で 弁当を売っているとか 無駄に丈夫で長生きしそうな僕が 上海生まれのきみに恋をしている 消し炭にもたまには火がつくものである 古いアンプとスピーカーから 逝ってしまったジャニスのブルースが流れる部屋で 新しい地平線が望める丘に何時か立とうと思っている ---------------------------- [自由詩]君と話したい/梅昆布茶[2016年7月5日0時58分] ジムで軽く汗を流した後でも 僕は特別な人にはならない 僕の専門はロックだが 知性に裏打ちされた感性で生きてゆきたいと 思っている ジョーきみに言いたいんだ 書を捨てて街に出よう ひとは何時かは経験値に挑戦するものだ 僕も例外ではない 僕はいつも何かを伝えることを忘れちまって つい自分の乗りを強制したり だからみんな逃げてゆく そんなことはもうこりごりなんで 革命は望まないが いつも僕の前にはハイアーグラウンドが 待っている訳なんだ 誰もひとりでは生きられないが 誰かと死ぬことは出来ない だからこそ 今きみと話し続けたいと思うのだ ---------------------------- [自由詩]花形讃歌/梅昆布茶[2016年7月8日12時44分] 風の吹く丘に立ち 君の帰りを待つ 腰の抜けた生活は辞めて 君のがっしりしたお尻に縋り付いてゆこうとおもう 触ると怒られるが大好きなヒップだし もう怒った顔が可愛い歳でもないが それなりの貫禄があっていいなあといつもおもう いつも発情している訳ではないが実にいいお尻 君ではなく僕はあのお尻を愛しているのかもしれない だいたい花形さんを筆頭に現フォの詩人は 一見まともで相当へんな人が大部分だが ぼくもやがてか既にそうなりつつあるような気がするのだ ---------------------------- [自由詩]僕たちのために/梅昆布茶[2016年7月10日8時20分] 僕は継ぎはぎのコラージュ 君は端切れで出来たパッチワーク お似合いのカップルだと思うのだがどうだろう 僕は季節外れの風車 君は糸を忘れた糸車 似た者同士のような気もするのだが もう雨は止んだし君にキスするにはちょうど良い天気だし それとも二人乗りの自転車で岬まで行こうか 灯台へ続く道はきらきらと不出来な僕たちを待っていてくれるだろう コカコーラを飲み干したら記念写真をとろうね 永遠に子供で 果てしなく年老いて やがて空になる僕たちのために ---------------------------- [自由詩]第六流星群に託して/梅昆布茶[2016年7月13日19時34分] 流星群は遥かな時の大河へと降り注ぎ 銀河の魚は朝の食事の最中だ 僕の骨は白く乾いた砂に埋もれて グレープフルーツムーンはたわわな君の胸のよう 僕はたぶん前より人との距離の置き方が上手くなった 独りの時間をより楽しめるようになった アキバには職にあぶれたあどけないメイド達が溢れ JKとおたく男子とサラリーマンとアジアン タピオカとグリーンカレーに牛丼とマクドナルド グーグルアースで世界旅行に出かけグーグルスカイで バルスームのジョンカーターとデジャーソリスを晩餐会に誘う 光と風がとどくところに僕は棲む 空虚の意味を喰らう屍になろうとも そうきみを ゆうかいしても  僕だって 精神離散しているんだから 誰も捉えられない愛を 串刺しにしてこれぞジャパンクールやきとり 僕たちは模索する 日常的な汚辱に塗れながら 美と真実と善き生き方を ---------------------------- [自由詩]僕の成分表/梅昆布茶[2016年7月13日19時42分] 僕の成分はわがままが70% 君の成分は愛が70% おっちょこちょいが20% のこりの10%がきみへの愛しさなのか うつくしく哀しくひとはいきてゆく ときに無情に打算にいきてゆくが いつも離れられないひとに混じっていきてゆこうとおもう いつも成分表を手にして エラーのない自分なんてありえないとか知りながら みんな素敵で孤独なランナーなんだな 長距離でも短距離でもかまわない あなたの距離と速度がここちよい Facebookのアプリが分析した わがまま70%の男の独白って とてつもなく退屈なものなんだ ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]子犬の歌/梅昆布茶[2016年7月13日20時31分] たぶん20代のころ東横線都立大学にあった中古レコード店「ハンター」あたりでみつけただろうシングル盤。 1994年に没したハリー・ニルソンの曲。 ジャケットとあいまってとてもキュートな埋もれた名曲だと思うのだ。 いささか古めかしいラグタイム風とでもいうのかあたたかい響きのピアノをバックに ニルソンのせつないけれど飄々とした歌いぶりが好きだった。 The Puppy Song もし子犬を飼えるなら 僕はとっても幸運さ だって仲間ができるんだよ 僕といっしょにお茶してくれる仲間がさ 僕と子犬はいつでもいっしょ 気にしないよ 人ごみは避けるから 「犬はお断り!」って看板を出すような人たちはね ああ、この子は絶対に僕を噛んだりしないさ 夢は願いにすぎない そして願いは、かなえたいと願う夢でしかない もし人生をわかちあえる友達がいたならば 月の光をともにあびて浜辺を散歩するんだ 僕と友達はいつでもいっしょ 気にしないよ 人ごみは避けるから 「友達はお断り!」っていうふうな料簡の人たちはね 生きているだけで幸せさ いっしょにいるだけで楽しいんだ 夢は願いにすぎない そして願いは、かなえたいと願う夢でしかない ---------------------------- [自由詩]モノトーンな朝に/梅昆布茶[2016年7月15日9時57分] 絶対零度を維持して推移してゆく君の機嫌は地球の天候を狂わしてしまう 朝食のトーストでさえテーブルの向こう端の原野に追いやられて僕は 親友の結婚式の引き出物のスプーンのようにこの家に居場所のない余計者らしい たった一つの約束を忘れたばかりに惑星が凍結してしまうなんてよくある事だ 僕の生命維持管理装置はときどきフリーズしたり暴走したりいまはいそがしい 忙しく激しく明滅するインジケーターがこの危機的状況を視覚的に証明している 破壊された調理器の残骸が飛び散る前に逃げなければならないだろうか それともこの世界とともに消滅するのかもしれない たんに結婚記念日を忘れただけなのに ---------------------------- [自由詩]デッサン/梅昆布茶[2016年7月16日10時48分] すべての望みをかなえることができないように すべてのいのちをいきることができないように ぼくたちはあるフレームできりとられた風景を生きる ことばでそれらをデッサンする どうやったら頭のなかの陰翳を 鉛筆画のように定着させようか あるいはそれに淡彩で色づけしてみようかと 生きるためのツールとして からだをことばをスキルを獲得してゆく 人との距離をはかるすべをおぼえ 蓑虫のようにはなりたくないとおもいつつ ついつい殻をまとって生きる 国のかたちがみえないように 国境にはあきらかな線が引かれている訳もなくただ ひなげしがいちめんに咲きほころんでいる おなじ風のなかでおなじ大地にはぐくまれて 自然のあるいは社会の秩序にしたがうように 人もひなげしも場所はことなるが ただ生きていることや ただ咲いていることって けっこう素敵で美しいともおもう デッサンでいいんだ おおきな号数の大作なんていらない きみの日々の手の温もりを 確かめたい アメリカの中間選挙の結果よりも きみのデッサンのほうが よっぽど重要な気がするんだ ぼくのフレームのなかにかかせないもの 基盤に到達するデッサンを ときどきは 届けて欲しいとおもうのだ ---------------------------- [自由詩]夕暮れ2/梅昆布茶[2016年7月16日19時24分] 埃っぽい一日が暮れかける ゆくあてもない想いが影といっしょに夕闇に溶けて行く ちっぽけな哀しみを手のひらで転がして ため息にも似たつぶやきを繰り返す 幼い頃母に背を押されるようにして嫌々学校へ行ったこと ねじを巻かれたブリキの兵隊のように感じていた 布団のうえ温もりを残したままのパジャマのなかに まだ居る自分を想像する 夕暮れは様々な想いをつれてやってくる 日によって一日の長さが違う事や誰とも友達になれなかったこと 秋刀魚のわたの苦さのようにそういった味わいも 必要なものと今だからおもえるのかもしれない 濃縮された一日がくるりと翻って 新たな白い皿が用意される 上底+下底×高さ÷きみ=不可思議な森の妖女サイレン 表情のない皿の上に感情を並べる タグのないファイルのように のっぺらぼうの頁が埋もれ火「新たなるパート」の魁 ミステリーツアーを待つ ゆっくりと坂をくだる これいじょう滑らないように 祈るように ---------------------------- [自由詩]命の歌。。。(一発芸シリーズその1)/梅昆布茶[2016年7月18日13時01分]          僕の日記に焼き付けられたきみの刻印 空は犯罪的に青い     あたりには哀しみの歌が満ち溢れ       天使の微笑み                    人生はいつしか遠近法の森のなかに                       呑み込まれてゆく              ツインテールのきみは        やけに子供っぽくって       窓からは          いつか言葉で絵画を描きたいと思っている 地の涯や   海が遥かに望める             レヴィストロースの悲しき熱帯を読みたまえ それを求めるミツバチのはばたき そんなものだとも想う                 詩は原理ではない しごく単純な結論と                 それを求めるミツバチのはばたき そんなものだとも想う 生活は韻をふんでここちよい                      踏み外してちょっと迷う でもいいんだそれくらいは いつも想うのは                      空を見上げて言葉がちがう あたりまえなんだ                      それぞれの生命なんだからなあ 大雨洪水注意報            彼女に涙を流させてはいけない       そのあとですごく経費がかかるから 落雷警報                  電気ショックで何かが復旧するとは想わない方がいい 普通のひとは死ぬ ---------------------------- [自由詩]卑文/梅昆布茶[2016年7月18日13時21分] 等速運動をつづけているうちに鳥は羽根をもがれて 上腕二頭筋と三頭筋間のしがらみに別れをつげる 慣れない歌をうたいつづけて喉が嗄れたよるは 冷蔵庫のかたちをした夢をみる B♭ないちにちの終わりに半音あがった きみにあってキーを調整する 洗い晒したジーンズと擦り切れたカーゴパンツと 下着と靴下を干した部屋に狂った女友達からの電話がくる レッテルを貼ることに忙しい缶詰工場で 僕はこっそり彼女のすきなヤスキヨの漫才をつめている モペットの燃料にカストロールの えらく高価なレーシングオイルを混合する ぼくの日常をフラッシングするために 柳田国男の「蝸牛考」 でんでん虫とかまいまい あなたの呼び名が時とともにかわるのですね ---------------------------- [自由詩]猫だった頃/梅昆布茶[2016年7月18日21時57分] 「眠り猫」 眠りたかった 眠り猫のようにまるくなって 幸せな眠りの世界に入りたかった 好きだった すべてを合わせても足りないぐらい そのぶん言葉にできなかった 「猫の眼」 こころは瞬間から瞬間へと変化してゆく 外界の縁に触れて限りなく色をかえて しあわせが柔らかな羽毛のように浮かんで見えようとも それは微細な瞬間の集積なのだ 瞬間を充実させる努力がすべてであるのだとおもう 眼で見る 聞こえるおと 薫りを嗅ぐ 舌で味わうこと 身体で圧力や温度を感じる そういった五感を綜合して 心として認識する われ思うゆえにわれがあるのではないと思う 想いを喚起するのは感覚器官だ 猫の眼のように変わる それが世界でありこころであり 瞬間をきちんとつなげて維持する力は 人によってちがうのだろう こころは常に汚れてゆく 洗うことは難しいが やさしく洗う流れがあるなら それに従えばいい それでも誰かを愛せるのなら いつでも時間はやさしく 誰をも助けてくれる筈だろう アベノ橋不思議商店街という古本コミックが好きだった 現実の大阪の阿倍野は再開発され スカイタワーができたらしい 猫の眼のように変わる それは素敵なことなのかもしれない そういずれは広辞苑だって 流れに曝されて 変わってゆくのだもの 「猫でした」 猫でした まちがいなくねこだったと思うのですが 定かではありません 幸せだったかもしれませんし そうじゃあなかったかもしれません 宿無しだったのはたしかです いまでもたいして変わりはしませんが 濡れそぼる夜はなくなったようです また猫に戻りたいかときかれれば まああれはあれで良かったかなと思うだけです よく遠くのそらをながめていました 腹も減るものですが別の何かもさがしていたものです からっぽの街で風の行方を追いかけては 光のあふれる季節をみつけようと彷徨いました そう猫でした いまでもその記憶が残っているのです ---------------------------- [自由詩]Hey Joe/梅昆布茶[2016年7月26日18時35分] 恣意的にはなす術も無いがときに僕のマックが代弁してくれるだろう 僕のOSは古すぎてもうあたらしい言葉を紡げないから 内緒話しを夜通ししてみたいんだ       ケンタウロスの四肢にちりばめられた夜          HEYジョーきみはいつ新しい地平線に辿り着くのか 源氏物語五十四帖      AKIBA系の夜メイド喫茶に癒され                                   岩波文庫版の細かい字でぶあつい 全何巻なのだろう                  忘れてしまったが いいんだ挫折してしまっったんだから                           それでも鼻の紅い末摘花あたりは読んでいたらしくて 自分の姉か妹のように感じた でも紫の上に恋してしまった僕は                         古典に関してはいつもミーハーである                         北海道函館市 旧本籍を中心に土砂災害に警戒が必要です 人間はけっこう生きてゆけるものです                      寸断されたプラナリアがすべて再生するように ただ意図をもってそのバランス                        人生の苦労なの 折り返し点の見つからないレースを走る ---------------------------- [自由詩]ソングライター/梅昆布茶[2016年7月29日12時11分] いま歌っているのだろうか心から 誰かに伝える努力をしているだろうか 僕はソングライターではなかったのだろうか きちんと生きているだろうか きちんと本を読んでいるのだろうか ドラッガーのマネジメントを ニーチェの詩的な箴言を 立原道造の高原の詩と 岡林信康の望むものは 有る意味孤立して生きてゆくことはあたりまえ ハンディキャップのある友とも同視線で それが理想だ 僕はソングライターだ コードを自由には操れはしないが いつか届ける為にギターをチューニングして いつか出会う為に微笑みを用意して きっと出会う為に 歌うのだろう ---------------------------- [自由詩]新しい朝に/梅昆布茶[2016年7月31日20時17分] 物事はゆっくりと変化し続け ふと気づいてみると以前とは違った自分がいる いつか不毛の季節は終わりを告げて また新しい子供の眼で世界に逢いに行こう 昨日の彷徨いの庭に朝の陽光がさすひと時に 生まれ変わることに決めているから また君とあたらしい約束を交わそう この命が終わるまで夢を紡ぎ続けることを 物事はこれからもゆっくりと変化し続ける 自分も新しい世界に出逢うことだろう 死と老いを含めたすべての新しい世界に 自分が生まれ変わることが出来る朝に ---------------------------- [自由詩]オニオンサラダ/梅昆布茶[2016年8月6日8時47分] 僕は毎朝オニオンサラダを食べ続ける 家庭菜園で作った玉葱をもらったから いつものスーパーの袋入りコンビネーションサラダではなく ドレッシングは胡麻ときどき和風ときにはゆずポン酢がいい アメリカの対中国貿易赤字の内実は 日本韓国台湾の技術的供与であること 心の中でちいさな補償をたくさんかかえて それをかえしつづけていること つながりのないつながりのあるすべてのことがらを まいにち理性に相談してたまに感性の海まで良い友をさがしにゆく 言葉の天使は意外な速度で走り去ってゆく ジョンレノンがかすかな光芒を残してきえさるように いつか僕が去る国の冬を想うそして夏を 人生は遠くからやってきてヒューズのように燃え尽きてゆく 僕は毎朝オニオンサラダを食べ続けるだろう 家庭菜園で作った玉葱をくれる人が存在するかぎり それって素敵な朝だと思わないか? ---------------------------- [自由詩]原始のままに/梅昆布茶[2016年8月9日1時13分] 演繹と帰納 対象化と止揚 ナボコフとアンヌ・ヴィアゼムスキー ダーウィンとジグムント・フロイト 様々な世界観が駆け巡る 数学者は数理に没頭して あまり感情の処理に脳の活動を割かないが 詩人とはどういう人種なのだろう 言葉を組み替える遺伝子学者 大切なものを拾い集める考古学者 それともおっちょこちょいの文筆好きに過ぎないのか サーカスは終わらない永遠に 帝国の逆襲はいまも続いているし 戦場のアームスーツは美しく累積し 平和の歌は遠くで響いている 安寧の日々はいつか風化する 誰もチキンにはなりたくない 君とコーヒーを飲みたいから 暖かく柔らかい君の肉体を 不安定な僕の精神生活を 阿倍野橋魔法商店街を 遺伝子の配列が解明されても いきなり誰かを理解できる訳でもないのだが それでも接触を試みる 僕は自分に満足していないが 満足している友と働く 夜の静寂がかろうじて安定させるもの 僕の細胞をいつの間にか入れ替えてしまう時間に 新たなる反逆を試みる 文明なんてつい最近のことだ 僕はいつも通り原始人のままだ ---------------------------- [自由詩]忘れ物/梅昆布茶[2016年8月12日18時47分] 雨女の君が颱風を呼び寄せる前に     忘れ物          ルシファーお前の本当のなまえを ちっちゃな落とし物を捜している                       言語の獲得はきみとぼくにどう関わってくるのか         教えてくれないか 逃げることにしたんだ          忘れたままの写真           進化の過程で忘れ物をしているんだ            誰も棲まない家には じんせいは      96粒の君の涙を      誰も棲まない家のなかで ちっちゃな落とし物を捜している                        晴れた日には海を見に行こう                          缶チューハイ抱えて テクノ日本 ときにダウンサイジング 海を見にゆこう いつもの自転車で 風と風景をコラージュして描こう ---------------------------- [自由詩]からっぽの空/梅昆布茶[2016年8月17日20時04分] たしかだとは言えないんだが風の音とも音楽ともつかない 遥か彼方より開いたドアからやってくるもの 空っぽのそらの高みに燃え尽きようとする太陽 響きが海岸に打ち寄せるところに遠くからやってくる僕の孤独が 沙漠のような部屋の床に転がっているさ 月日は読みかけのミステリーのように不可思議に費やされ 分解された僕が不規則な打音をたてて降り注いでいる 僕の人生がかつてどうだったか僕のこころがどうだったかを 忘れ去らせるようにあるいは何を選択してきたか未来に何を見ていたのかをも もう何も失う物もないのだがすべての死滅したあるいは生命ある者達のうえを 時はヒューズのように燃え尽き走り去ってゆき地球は廻り続ける 不確実な年月と生きる恐れ 僕の一部だったそれらが永遠の中で生き続ける それはとても僕にとって身近なものに過ぎないのだが 神のみぞ知る 本当に飢えた人びとはまだこの世に存在するのか? バビロンの壁の向こうにはどれだけの満たされない望みが待ち続けているものか すぐに壁を攀じ登り塔の高みを目指そうそれらが 音を立てて崩れ落ちるまえに僕の魂を穏やかに鎮める為に 天から降り注ぐ雨のように子供達の笑い声のように ---------------------------- [自由詩]アリスの夢/梅昆布茶[2016年8月20日23時10分] 運命は変えられるの? アリスは尋ねる 運命なんてありはしないさ きみが夢のなかで存在するように 偏在する夢が現在という一点に 結ぶ露のようなものが人生らしいんだが アリスは頷くと白兎とともに舞台の袖へ退く また不思議な夢の続きを永遠の子供達に伝道する使命に萠えて アリスに故郷があるように僕にもある筈の何かが解らなくて エンディングロールに答えを捜す 昔は夢だけでも結構2,3年は生きてゆけたものだが いまはブレードランナーのように日々を費やす愚か者 夢のなかで心理テストを繰り返す 新宿歌舞伎町の夜のように底なしの淵に立ってるみたいに 僕の人生はドライブレコーダーと保険で保証され 安い女と連れ子4人と古いオーディオシステムと ときどきの新しい地平線で構成されている 論理的解答は数理のなかにあって 文学的解答はあまりに広汎ではてしなく 解をもとめる必要性もなくて ランヴォーのの燃え盛る詩編と 僕のつまらない短詩を比較しようもないが いつも通りアリスに逢いに行く いつも通りに ---------------------------- [自由詩]四季/梅昆布茶[2016年8月26日20時12分] 失われた時を還せ 死んだ夢を呼び覚ませ きみのうなじの産毛が好きだから 僕の名前を風に聞いてくれ 最期の銅鑼が鳴り僕たちのバンドは退いてゆく 黄昏の中へ精緻な夜へと官能をつなぎとめる もう歌詞のない実体のない試験管のなかの闇を 夏の終わりの暗闇を歩こうぜ 僕は妄想が上手になったし きみともまだ続いている 苺のような唇をウオッカで満たし 艶やかなキスを僕にくれないか 波留 菜津 亜紀 不輸 きみが産まれたとき僕はそこにいた ビバルディなんて百年まえのぽんこつだが きみの四季を僕は聴いている 僕の品行方正はとうに失われて 髪も随分うすくなって愛から遠く もう孵化のテスト不合格で だんだん正直になってゆく馬鹿者にすぎないのだが 新宿南口のバスターミナルからの夜行バスでいつか きみに逢いに行くからそれまで待ってくれないか 僕は一時でも詩人かロッカーになりたかった いまだに誘惑するきみの唇に逢いに行く いまこのときもきみのメイド姿のゆめを これからも僕のちいさな債務の愛を 保ち続けようとおもっている ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]蔦屋のなかのタリーズにて/梅昆布茶[2016年8月27日6時09分] 花埋める愛した過去に追悼の土をかける 何時もとは違った日君とサーカスが一緒にやってくるだろう 君はいつもどこからどこまで急がしい奥さんにしたら疲れるだろうか 檸檬は梶井基次郎だがきみのキスの味でもある エリアコード190403ヒューマンコードF45982368146これが俺 僕はアメリカインディアンの言葉を理解したいと思った すべての言語がひとつであったとおい昔かれらと兄弟だったから もう孤独も摩耗して針のように突き刺す威力も失せて太陽だけが色を変えて毎日を照らしてゆくがいつも途上をこころがけている僕はそのうち猫の清志郎から金メダルを貰えるのかも知れない。 プルーストのように長い切れ目のない文体で書いてみようかとも思うのだが。 チートスの激辛ハバネロ味とベビースターラーメンのお通しでしばしやすらぐ 僕は地の底から這い出してきた命無明から無明へ渡り行く ---------------------------- [短歌]ひらがな短歌  試作1/梅昆布茶[2016年9月1日9時50分] たいようがうしろからぼくをてらしかげをふんであるく    しんぞうがとまりそうになるくらいきみがすきだ じんせいのおわりからぼくをならべいんをふんでしのぐ    ないぞうがひっくりかえってもどるくらいじゆう じょうしのいないひっそりとしたへやでさくぼうをねる    やがてごみになるうんめいのばななのうたをかく ぼくのことばのりはびりはしんりょうほうしゅうがない    いつかあとらんてぃすのようにうみにしずむあさ うえののはーどろっくかふぇきてぃのてぃしゃつげっと    かたちのないげんざいのぼくはぶれすれっとだね はっしんできないむせんきがいつもぼくのなかにあって      そいつがいつもせつぞくさきをさがしてふるえる しごとあけのあさはいつもぱーてぃーぼくはぎたりすと    なきふぼとむすうのぼうれいのうたをおもいだす しんじゅくのいせたんちかくのわしょくのおみせでした    はじめてしゃんはいのむすめとでーとしてもらう いつかいすたんぶーるとんでいすたんぶーるおりえんと    きゅうこうではなくてとものすむがじあんてっぷ どあーずのじえんどをきいているもりそんほてるのよる    ぼくのひつじはかずをかぞえてもまよっています ---------------------------- [自由詩]朝が来ない理由/梅昆布茶[2016年9月5日20時18分] いつのまにか夜だけがふけてゆくが 僕の朝はいつまでたっても来ない 時間の止まったままの時計をぼんやりと眺め 時系列のなかの無限の選択肢に思いを馳せる ものごとを整理するには基準が必要だが 僕の本棚には雑然とした文字情報が果てしもなく列なっている 夏の面影が空に溶け込んでゆく日には 僕の好きな故郷の風景に似た草の道を歩いてみる 僕たちの生は限定されているが 精神はいつも自由な地平線を望み続けている 世界で一番役にたたないものを捜している 僕にとって醜くて懐かしいものがいつも自分の中に有る 幾何学模様の窓から僕たちの漂流する街へ 年老いた猫が僕の風景を横切ってゆく ---------------------------- [自由詩]タルカスの夕べ/梅昆布茶[2016年9月7日20時49分] 五線譜にのらない音楽 数学的解決を持たない生命 リズムもない詠唱 楽器を持たない自由 空から降りてくる精霊にキッスをして それでも抒情は余ってしまって腐る どこにも幸運な人間なんていないから ふと途切れそうになる現実との連絡 いつもの物干し竿は使えないので空に干す いつか宇宙に 僕のしみのついたパンツが 浮遊していることだろう 今はとにかくタルカスを聴いている それではまた ---------------------------- [自由詩]流民/梅昆布茶[2016年9月15日4時12分] 流民をへて流民にあう きみは遠い昔の記憶の中の文学少女 すべての物語を読み切れないように たとえばたった一人の歴史も解析できずに やはり僕はでくのぼうにもなれない半端者 きみの洗礼ををうけて一緒に流れようか レイクタウンの洋菓子店のロールケーキが せめてもの贈り物だが きみのつむぐ音楽を聴きたいとおもった ささやかな音色できみの得意なフルートのように 美しい季節はながれさり それでも残るものにちょっとだけ執着しているのだ 世界のそとにディズニーランドがあるなら その回転木馬にきみとのってみたいとおもうのだ ---------------------------- (ファイルの終わり)