梅昆布茶 2015年4月22日11時36分から2015年8月19日10時18分まで ---------------------------- [自由詩]地図/梅昆布茶[2015年4月22日11時36分] 心と身体が離れている その隙間に不安が滑り込む いちいち手足に呼びかけないと 動作しない人間型ロボットみたいで いろんなものを詰め込んだ 底の抜けた南京袋 唇から直腸まで 排泄物や消化途中の 20%引きの 焼き鳥レバーも僕 缶チューハイの空き缶で 家を造ったら30坪ほどの 二階建ての家になるだろう それはかつての僕の家で 家族もいたことだろう 記憶も曖昧で そんな軽いステージで 家族を養えるわけはない そう言いながら 樺太産のししゃもと鳥レバー ほんとうの地図ってあと何枚めくったら 僕の地図になるのか でも国土地理院にも無い地図を あなたは描いている だからたぶん僕もそうしたいと 想っている訳なんだ ---------------------------- [自由詩]迷子のうた/梅昆布茶[2015年4月29日11時33分] 日々のおおまかな動線や微細な素描に こころの絵の具の淡彩で色をちらしてほっとする ビュッフェのようなリトグラフの陰翳の鋭い世界も良いが ちょっと太陽のぬくもりをもらったような なにげない淡彩画が好きだ 颱風で根こそぎもっていかれることもあるが 人生ってそう悪くはないとおもえる 素直に時間やものごとを受け入れることができること できごとの明確な定義あるいは曖昧な境界を理解できる人間になりたいなんて ずっとそう想って生きてきた というのは真っ赤にちかい嘘ではあるが いいんだと想う ときに迷っても いい歳をして迷子だなんて 誰も保護してくれないぜ 回転木馬にのっているあの子はだあれ 係がそっとおしえてくれるだろう あれはね。。。 あなたの敵 あなたの恋人 あなたの親友 あなたの級友 あなたの家族 そっかみんな迷子だっったなんて いまさらに気づく だからあなたの歌がきこえるのかもしれない そんな耳がいつもあったなら そんなきもちでいられたら それをじぶんのものにできるのならば いつか迷子の同盟が いっしょに親をもとめるならば その社会運動に参加しようとおもう いつまでも迷子ではいられない そのうちに死んでしまうかもしれないし せめて一生の最期にでも ひとめ親にめぐりあいたいものだ 迷子札も老朽化して 母でさえ読めなかったものを 誰に読んでもらおうとおもうのか そう僕らはいつでも母のない子のように 回転木馬にのってめぐるリズムを聴いている 誰かが係にといかける どうして誰ものっていないの? ---------------------------- [短歌]半音下がった5月/梅昆布茶[2015年5月8日16時22分] 半音下がった5月に 飛行機雲とポケットの中のちょっとしけた煙草 わかったつもりの自分に言い聞かせてまた あらたなる接触をこころみる深さをはかる浅瀬で 風のなかにきざまれているもの それを聴くことができるなら風になろう種子にも 忘れなくてもいいのかもしれない どうにもできないなんて自分だけの都合だから 感情をにぎりしめ缶詰にして階段に 蹴転がしたらばこころのどこかが反転する 不思議の森にうまれ透き通ったかいがらをまとい 秘密を共有する蝸牛になるのだな 稀薄があたりまえの存在感 揉め事もなくしめやかに咲く蝋梅に盲いたまま 存在することがあなたの愛 ただある事でよいのですこのきれぎれの 世界の街角でワーグナーを聴いて チューニングできないギターを弾いている午後 10個めの幸運をあてにして 人混みのない夜をあるくややくすんだ街を ---------------------------- [自由詩]桜の散り染める夜に/梅昆布茶[2015年5月15日2時46分] 遥か雑踏を離れて 孤では在りえない存在を確認する 収拾のつかない順序をゆっくりと整理する いきることは水底をしらない漣 序連で奏でられていた通奏低音は 変化しまどろみ羽化すべき朝を 想いついたように 手帳に書き込むのだ たとえばサルトルが実存とはなじまない 華やかなパリでの生活を送っていたこと 特攻で散華した若過ぎる飛行士の 最期のことばを聴き続けた帝国海軍の無線技師 いつもの夜の交差点で またかとおもうほど抱き合って キスをかわす熱い男女 2日で完売する 新宿小田急百貨店の福袋 誰も来ないままで夜のバスは出発する 目的地はあなたあるいは僕が書き込んだ そんな曖昧な乗り物だ 夜のバスはゆく 観光地もすどおりしてあなたと僕の故郷へ 終連は蓮の華の咲く泥濘の沼地 どこからともなく灯っている光はたぶん命 感受性のげんかいを超えて あなたと僕が生きれるとしたら それはとてもたいせつなことなので 詩にしてほしいかとも想うのです ---------------------------- [自由詩]ある妖精編/梅昆布茶[2015年5月22日6時15分] いつか妖精と化すまえに あどけないふりをしてくれないか ひとけのない昼下がりに しどけない昨日の夢を見たいのだから 広辞苑にも大辞林にも誰の日記にも描かれていない ひそかな言葉で約束をしたいだけなんだ 太古に分割されたゴンドワナ陸塊の かたわれの住人として 女性たちよ自由にきままに 愛の着陸点をみつめよ 幼い頃こわごわに読んだ母の実家の岩波文庫 小杉天外の魔風戀風 中里介山の大菩薩峠 岩波大百科事典の海洋生物編の不思議 スーパーで買ったミックスサラダに ミニトマトとカリフォルニアレーズンをトッピングして ベーコンと黒胡椒のドレッシングでビールのつまみにする ドラッグと酒で死んだだろうジムモリソン 渋谷駅前の飲食店の二階席で女性と話し込む 混血の黒い青年 すべてが遠いと 書き残して消え去った 60年安保の左翼の闘士だった先輩 日常をドリップしてみる 汗臭いシャツと日向に置き去りにされたマイナスドライバー チェシャ猫とアリスのあたたかい蜜蜂入りの紅茶 (こんなの飲めるの?) インターネットコンテンツの森のなかで 子供達と葬った仔兎の眠るいまはなきイヌ森を想う 大井競馬場で次の出走を待ち構えている 血統と成績のわるいでも美しい四つ足のランナーのように 燃え尽きるまで駆け抜けようと想った ---------------------------- [自由詩]朝のマリオネット/梅昆布茶[2015年5月25日21時13分] 僕にみずみずしいコップ一杯の朝をくれないか 活力に満ちた生みたての卵のような生命を 天のフックから吊るされたマリオネットのように きょういちにちを微笑んで過ごしたいから ---------------------------- [自由詩]ロコモティブ/梅昆布茶[2015年5月27日15時28分] 雨上がりのそら 草原に敷かれた鉄路 長大な貨車を曳く機関車が ゆっくりと風景をよこぎってゆく 産業革命をささえた心臓が 風景のなかで鼓動している そんないまではめったに在り得ないシーン やはりじぶんの鼓動に近いリズムについ共感してしまう あなたとのリズムはどうだったのだろうか 窓のない部屋は独房のようできらいだし 窓をあけない部屋もとても冷たい 窓をあけて風をとおす 陽光が散乱した部屋を満たしたら 荷物を整理して 切符を買おうと想う まだ機関車が在る時代に ---------------------------- [自由詩]文化村通り/梅昆布茶[2015年5月28日12時20分] 渋谷文化村ミュージアムをくだって H&Mを左に見ながら 道玄坂下へ至るあたり 雑多な国籍の若者や 清掃するおじさんや僕のような納品車 いつものスリムな店長は つけまばっちりのかわいい小娘に惚れられて 弱っているようだが居座る彼女達の相手をしながら 納入の指示を丁寧にくれる そんなような日常がきらいでもない あまりに自分が濃くなったと想うとき あえて拡散していきてきたはずなのだ 価値観の行き交う街で揺るぎないものを夢見る たとえばロンドンやパリやイスタンブールやモスクワ 新興のニューヨークでもいいのだ 重層する民族や歴史を背景に持つ街と 較べて遜色もなく存在する東京 吉田拓郎が歌った故郷にささえられて 東京は今日も呼吸する ひとはいきてゆく 目的はしらない もちろんいいんだ 僕だってたいしてないのだから ---------------------------- [自由詩]息子へ/梅昆布茶[2015年6月1日11時32分] くたびれた我が身に 赤い旗がいくつも立つ 宣告は容赦なくて不要物に なる日もとおくはない 息子達のために生きているつもりでも やつらからはなんの音信もなくて CSN&Y ぼくたちの家は ずいぶん前から他人が住んでいる でもだいじょうぶあなたを信じている あまり豊かな資産は残せないし 立ち止まってかんがえるひと せめてそうなって欲しいから 立ちあがるための過去も未来もすべて いま一瞬のつみかさねだってね そんな助言もできなかった 幼稚な父親がいたことも 忘れて元気にやってほしいのだ ---------------------------- [自由詩]でんでんむし/梅昆布茶[2015年6月3日11時01分] 配達中にラジオで聴いた でんでんむしを歌うあいだしょうこ WIINKのあの娘だとおもった つのだせやりだせあたまだせ でんでんむしが言うには そんなのわかってる あんたこそ元気だせ こころは6がつのなみだ雨 シンプルな童謡を ピアノと言葉ですっとぬりかえる そんなクリエイティブが 心地よかった ---------------------------- [自由詩]海月通信/梅昆布茶[2015年6月5日2時55分] わたしは海の月 波間を漂うお月様の影です 仲間があなた達を刺すこともありますが JAWSほどの脅威でもないので許してやってください ときどきあなたがたの住む都市という 人工世界を遠望することもあります 明るい世界も嫌いではないのです 人間にも会ったことがあります なんだか流木のようにごつごつして わたしたち浮遊する動物には 遠い存在なのかもしれません 発光するおびただしい海蛍のように 眩しく夜を彩る色彩が文明とかいうものなのでしょうね あまり変化がないようにみえて はげしく生成し消滅する生命の海に浮かんでいます 新しい発見は少ないのかも知れません でもちいさな素敵な発見も数々あるのものです ただたのしいけれどそれが いつまで続くのかはわからないのです わたしたちには死という観念がありません もともと自我という考え方と馴染まない茫漠とした海月という生命なのですから たぶんあなた達以外の生き物達は自分が死ぬなんてしりません あるいはそのほうが健全な生命観なのでしょう 学校なんてもともとないのです ゆえに直接生きることから学ぶしかないのです 鯨というおおきなさかなの言葉も少し覚えました 知合いの駱駝からメールがありまして 今度の統一地方選挙に出馬するとのこと ラクダが出馬するとは普通は言わないでしょうね 一般的には 駱駝はアラビアのロレンスの映画の中あるいは御宿海岸の 銅像とか動物園にしかいないのですから でもがんばってくれたまえ駱駝くん 万が一当選してもそのあとがたいせつなのですからね やはり議員バッジがなければねなんて言わないで それでしか手段がないなら手に入れればいいんだ 僕はと言えば浮遊する海月のままで生きるだろう 時間と歴史 感情と愛情 文化と文明 知性と芸術 産業と経済 あなたたちはちかくて遠い世界観の中で生きる 僕は茫洋とした海の摂理に生きる それでいいのだと思うのです 命あるあいだにまたお便り差し上げましょうね f ---------------------------- [自由詩]振り返りもせずに/梅昆布茶[2015年6月5日10時30分] 振り返りもせずに愛は逝く 小さな誤解を積み重ねて塔のうえに登る そこから遠望する世界を胸に抱いて おびただしいビジョンを想い描いて 立ち止まりもせずに愛は逝く 高邁な殻を脱ぎ捨てて脱皮する蝉のように ---------------------------- [自由詩]ソート/梅昆布茶[2015年6月11日23時15分] だれにも語れないメロディー ソートする必要もなくながれている 言葉とか想いはソートできるのだろうか ---------------------------- [自由詩]ブリューゲル/梅昆布茶[2015年6月11日23時49分] ブリューゲルがすき 野間宏が「暗い絵」と表現した世界 描きこんだ風景を解釈する自由 それっていいかも ---------------------------- [自由詩]海/梅昆布茶[2015年6月17日10時45分] こころに海が在る 潮騒もときどききこえてくるし いつかのくちづけも 深いうみの香りだった 瞳にうつる雲をとらえようとしても いつのまにかかぜに溶けてしまうから つねに移ろうものに自分を仮託してはいけないのかもしれない 変わろうとするものを誰もとどめられない 自分の蓄積された年月は書き換えられない いままで永遠という刻印はみたことがない だからあえて誓うのかもしれないのだが じぶんの両耳をふさいでみると心音がきこえる それは自分のなかの潮騒だとおもう 死ぬまで鼓動するこころのうみなのだろう ---------------------------- [自由詩]リモートコントロール/梅昆布茶[2015年6月17日11時33分] 戸棚の奥からでてきた何のものだかわからない古いリモコン 我が家ではときどきあるのだこういうことが ためしにあちこち押してみる わずかな振動が空気を震わせて とつぜん世界が半壊 するわけはないのだが 買い物にでるときに遭った隣の親父さんが やけに愛想がよすぎて頭がくらくらした だって普段は仏頂面の見本みたいな人なんだ それ以降グッドラック?の目白押し 道端で100円拾った 100円はおおきいので また頭がくらくらした こじれていた彼女から仲直りのメール 田舎から米と野菜がどっさり送られてきた 近所の嫌いな犬がなぜか吠えない 会社の上司がしきりに気色悪いヨイショをしてきたり 通勤電車のつながりが良すぎたり 世界がまるで僕にウインクしているようにも 感じられたんだ いま考えればあれは僕のこころの ちいさなしあわせスイッチだったんじゃあないかとおもうんだ 人間はささいなことで様ざまなスイッチが入ってしまうものだ そのリモートコントローラーでさえ どこにあるかわからない始末なんだろうなきっと きみも戸棚の奥を捜してごらん わけのわからないリモコンが出てきたら ためしに押してみるといいよ ただその結果世界が半壊しても 僕は保障しないからね ---------------------------- [自由詩]言葉/梅昆布茶[2015年7月2日22時52分] 言葉はなぜあなたにつたわるのだろう あなたの脳内で維持されている 概念に呼応する音声あるいは文字列を 話し手と聞き手が相互にいれかわりながら 違和もさしてなく理解できる不思議 中国の友と手のひらにボールペン 漢字をかくことであるていどコミュニケーションできたこと 沖縄の友に特有のイントネーションを感じ 彼にヤマトンチューには 沖縄のいたみは何もわからないといわれた 文明の加速は とっくに言葉をおきざりにしているとおもうが それでも言葉は ぼくのたいせつな社会とのつながりなんだ こころはなかなかほかのこころと 繋がりにくいものかもしれない 社会って変化の集積だ 自分さえも変化する 誰も待っていない隙間でギターを弾く いつもの居酒屋で借りた古いガット弦の置きものだが たった一回だけゆきずりの娘さんから感謝をいただいた 誰も愛を自由には獲得できない 誰も愛を操作できない いいんだいつまでも彼女で それが素敵なんだ 失うことを哀しまないで それは普通のこと いつでもつきまとうできごとにすぎない ぼくはモラルアドバイザーにはなれないだろう 太陽の表面に白班や黒点があるようにいつも異物を孕んで ぼそぼそと人生をつぶやくだけなんだから 野菊がいつか鋭く美しい刺をもつ薔薇になる そんな変化はいつもあることなんでたいして影響はないさ ぼくはいつも通り野蛮でそして あたらしくて古い言葉をさがしている ---------------------------- [自由詩]生あるかぎり/梅昆布茶[2015年7月8日21時58分] 生あるかぎりです だれしも遮れない旅をしているとおもうのです たぶん滅びるのもちかいのかもしれません ちょっとなにかを選択するのもめんどうくさいのですが いつも可能性と不可能のコードの端を ずるずる引き摺って歩いているような 過剰なことばと過多な映像 容量にかぎりがあるぼくのちっぽけな脳に はいりきらない世界なんです また来る夏を待っていました つぎの夏もくるでしょうぼくがいなくても ダンシングシューズはいつも白く光っています 大好きなサマーウォーズの監督が新作をだしたようで 渋谷駅前のおおきな看板にでていました ぼくはもうちょと生きるために 新鮮な野菜と工場でつくられた保存食を買いにいきます ついでにお酒なんかも飲んだりしますが 白くひろがる夏がすきなんです ちょっと近年は暑過ぎるきもするのですが とても断片的な詩が好きです まとめる必要もないかもしれません そう 生あるかぎり あなたなんですから ---------------------------- [自由詩]電波時計/梅昆布茶[2015年7月16日1時34分] ちいさな夜想曲を想う ドイツの作曲家でもなく誰かの こころはとめどなく夢をさまよう 意味もなくいきているような きもするのだが いつでも永遠を信じて生きていようとおもう 体はくたびれてそのうちカラスの餌になるだろうが もとより主体のないマリオネット ぼくの電波時計が宇宙の波をとらえるように いつかリセットしたいとおもう ---------------------------- [自由詩]遺あるいは/梅昆布茶[2015年7月18日12時55分] 遺蹟 奈良の友人の結婚式に列席したついでに 飛鳥の遺跡を畏友のK士と巡る 石舞台 酒船石 猿石 高松塚古墳 でも駅前で立ち寄ったうどん屋の 出汁がしっかりきいて品よくかるく醤油の効いた 透き通った一杯に参ってしまった 北の人間はやたらしょっぱくて かみさんの実家に寄ると 秋田は男鹿出身の義母のみそ汁に けっこう抵抗があったことをおもう 結婚した奈良の友人がいうには 東京に来てびっくりしたのは うどんのつゆが真っ黒なことらしい 僕も函館生まれでほんとうは 真っ黒くろすけなのだが おそらくはとじこめられる冬を のりこえるために北の人々が醸成した 貯蔵のための食文化なのだろう 遺構 めったに散歩もしないが 毎日の労働が筋トレなのでまあいいか それでもたまにお天気に元気をもらった日には 大好きな荒川のあたりを散策する 釣りもいいが自分で食すのでもないかぎり あまりさかなには傷をつけたくないから 石戸城址 戦国時代に 武田信玄が 攻めあぐねたという古跡だが 話はとつぜん 変わるがうちの事務員さんがいい バツだが紛れも無くかわいいおとなの女の子 遺構とはかんけいなくなってきたので ここで斬るが ハッピーバースデイ だれも 楽しみにしていないような 親父ギャグを君に 椅子 30数年使ってきた船橋で買ったIKEAの折りたたみ椅子が。 壊れたのだがそれとおふくろが亡くなるのとどっちが先立ったか判然としない もちろんおふくろとはその倍ぐらい生活してきた 三回忌をむかえてあらためてそのぶんも生きようとおもう 余生なんてないいきているかぎり余りってないんじゃないかな 異端 20代のころコリンウイルソンというアイルランドの作家思想家の本なぞ読んでいた 「発端への旅」という自伝がすきで彼のベストセラーである「アウトサイダー」 がぼくの書架にあったこる神経症だったぼくはカウンセリングをうけた 大学のかたすみの小部屋でそのひとは僕も知っている 森田臨床理学を たずさえた やさしい先生がいうには まったくあなたはなんともないので普通にいきてゆきなさい えー。。 だってさ 普通の定義に迷っているのですがねえー 異端てどのへんだ だって新宿2丁目にゆけば 素敵な男子が腕くんであるいて ぼくの大好きかもしれないひとは バイででもとても素敵なひとで 鋭い詩人でディーヴァなので たぶんシンディローパーなのだろう ---------------------------- [自由詩]花園/梅昆布茶[2015年7月23日22時17分] 伝えんとする意志が世界をきりとるとき 言葉が生まれるのかもしれない 飲みにさそった結婚前のきみに きちんとこれからのぼくの計画を話そうと 想ったがなにもなかった あなたの推薦をうけないまま とってつけたような 理想で口説いて やっとなんとかかぼくの 奥さんになったのに金のきれめが 縁のきれめとなるように子供とともにかぜのように去った ことばは一輪の花になる 感じたものの味わいや響き かおりと肌触り そういったこころの一瞬をつみかさねて ひとはいつか生を終えるものだろう はるかな彼方に日常という虹がみえる 世界にはいつも風がふいている ブレークスルーする必要もなく すぐそこにある花園に迷いこんでみたらいいさ ---------------------------- [自由詩]フリマの夏/梅昆布茶[2015年7月24日16時17分] フリーマーケットにはまさかフリーダムは売ってはいないが 団地の夏祭りのフリマに無職の37歳 嫁に食わしてもらっている松岡君と出店することにした 家に眠っている書籍が主体で 売り上げの半分は日テレの24時間TVのチャリティに寄付する のこりは松岡家の生活費だ ひとの生活やこころには基本的に関わることはできない そんなことはわかっているつもりの阿呆だが それでもひとが好きでいきてきたきがする いつも吉田拓郎の祭りのあとのさびしさを想う わくわくする夏はくっきりと影を意識させる季節でもある 相撲と野球が大好きででもおっちょこちょいなドライバー仲間の大塚さん 長島引退の読売特別号を贈ったけれども 落語が好きな小柄なしばらくあるいはもう合えない友人 そんな移ろいを秘めて夏本番です 大好きなあの娘はとおい夏のそらにいます 紫式部はたぶんいまほど暑くはないだろう宮廷のかたすみで 源氏物語を真夏も執筆していたものだろうか もしか肌脱ぎでちょっと扇情的な姿態ならばとてもいいとおもう そんなこんな妄想もフリマで売りつくす いつか新鮮でやさしいあなたにであえるように コマーシャルとは無縁なあたらしい取引を 朝の露をわすれないひとは いつもとてもぼくのあさのサラダにむいているのかもしれない ---------------------------- [自由詩]ろくでなし/梅昆布茶[2015年7月27日11時32分] 「ろくでなし」 我がロクサーヌ 臈長けたその唇で いたぶるがいいさいつまでも でもときどきキスしてロクサーヌ 見た目なんてどうでもいいことさ 中身のない石炭袋のようなものさおれの日常なんて だからきみの童話を書き込んでくれないか 「ロケットマン」 どうして行ってしまうんだい きみは忙し過ぎるとはおもわないか 人間はよっぽど緊急のとき以外は ロケットを背負って 飛ぶようにはできていないんだ 「ロートレアモン」 だれかが彼のマルドロールの歌の 秀逸をほめちぎっていたが ランボーとかエリオットとか 天才を理解できないぼくは すべてBookOffに売ってしまったものだ 「労働者」 社会は相互の労働を交換して成立する あかちゃんも労働する 母を悩ませ喜ばせ成長させる とても素敵な労働だとおもう ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]花祭り/梅昆布茶[2015年8月5日11時05分] サイモン&ガーファンクルの「コンドルは飛んで行く」を聴くたびに 南米インディオのフォルクローレである「花祭り」を連想する ケーナのここちよい響きにつつまれた僕にとっては幸せな楽曲である スペイン語で「Fiesta de la primavera」 春の祭りとも称されるとのこと nonyaさんから花というテーマをふられて (投稿させていただいている*アルモニカ*という同人誌の話ですが。。。) 自分の中にはまったくない要素ではあるけれども世の中には花のあるひととか フラワーアーティストとか園芸家も多数存在し まったく縁もないのではあるが立てば芍薬みたいなひともいるようだし 調べてはいないのだが 生物学的に言うと種の存続のために 美学的に言うと検出の美 目立つことが花の役割らしいが 昆虫にも色覚があってそれぞれの 目的の花に集う あながち女性を花に例えることも それほど不思議でもないのではないか そんなことを考えながら まったく自分と違う感覚や世界観 花を愛でる情緒にいきあたる カルナバルと桜のちりそめる春 花から最も遠い無粋なひげおやじは 汗臭くてきつい自分の労働を やさしくてちょっと脱力した仲間と わかちあうことでいきている 花のような女性はいまも昔も尽きることなく産出されつづけて 世界を覆いつつある それでいいとおもう https://youtu.be/N3bOdETL3rk    ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]蝸牛考/梅昆布茶[2015年8月7日4時48分] 等速運動をつづけているうちに鳥は羽根をもがれて 上腕二頭筋と三頭筋間のしがらみに別れをつげる 慣れない歌をうたいつづけて喉が嗄れたよるは 冷蔵庫のかたちをした夢をみる B♭ないちにちの終わりに半音あがった きみにあってキーを調整する 洗い晒したジーンズと擦り切れたカーゴパンツと 下着と靴下を干した部屋に狂った女友達からの電話がくる レッテルを貼ることに忙しい缶詰工場で 僕はこっそり彼女のすきなヤスキヨの漫才をつめている モペットの燃料にカストロールの えらく高価なレーシングオイルを混合する ぼくの日常をフラッシングするために 柳田国男の「蝸牛考」 でんでん虫とかまいまい あなたの呼び名が時とともにかわるのですね https://youtu.be/zKYqpHUA02I ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]夏に/梅昆布茶[2015年8月8日12時23分] あなたは何処に生きていますか 過去に未来にそれともめちゃめちゃ現在ですか どこにいようと生きていてくださいね 高校野球もたけなわで猛暑のなかでもけっこう人間は 9回ぐらいの攻守もできるものです 僕が応援団員だったころ六大学リーグには岡田、山倉 東都リーグには藤波が在籍していたと記憶しています でもちっとも華々しくもないあなたの夏がたぶん好きです いつか飾り気のないあなたの真実に逢いたいとおもうのです だから詩を描いてくださいね いつまでもそして谷川俊太郎のようにとはいいませんが 僕のなかの夏のエリアにあなたという人間のかたちを 加えたいのですから https://youtu.be/m648v4s5sFc ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]僕がいつまでもつたえようと試みる大好きな詩友たちへなんてne/梅昆布茶[2015年8月10日11時26分] 人形の家のノラのようにように妻は家を去った 軽薄でもなく明るく出て行ったものだ 公証人のまえで離婚の書類を書いた そのあとでコーヒーでも飲もうと言い出して でも埼玉の東松山などにはマックさえも近場にある筈もなく そのままわかれた後によみがえった君と手をつないだ記憶 会社の設計室の廊下でこっそり手をつないで デートの約束をしたときに なんだか子宮がきゅんとなったって 言われてもボケ男子ではわかる訳もないが 捨て台詞が得意なひとだった 僕の前では見せなかった顔 「愛したことなんか一度もなかった」 僕の知り合いのマスターに言わせると 生涯で三本の指にはいる気の強い女性らしいが それはたいして障害にはならなかったし 気にもとめないでいいとおもう やっぱりあなたはあなただ それでだめならかんがえればいい とりあえずあなたが好きだ たぶんずっとこれからいつでも やくざなサッシ職人で社長の弟にいわせると つまんない女だよって とっても幸せだった 3人の息子の分娩に立ち会って なにも感じない男はいないだろう 明るいのだけれどもいつも異質をおぼえていた 狂った女ほどの脅威はないけれどもつねに圧迫を感じさせる そんなひとだったけれど もちろん嫌いではなくて大好きだから プロポーズしてちょっとした下ネタも言い合うようになって 僕も狭いし彼女も弾丸列車でまあ他の家庭は知らないけれども とりあえずできちゃった婚でもないし入籍した次第 その後の子供三人は微妙なのだ 後輩の庄ちゃんなんて5人目 延原んとこだって5人目だちょっと少なかったかな 誰も結果を予想できない そんな必要もないし 愛することに臆病にならないでりっぱに傷ついて どうせ死ぬんだからそのあいだになにかしようぜ もちろんです恋愛 ぼくはちょっとギター フリューゲルホーン チャックマンジョーネが好きだから そしていつもきみと ちょこっとでも 会いたいとおもっているわけなんだ 現フォも読めないので新しいひとにすべては激励できず 死ぬまでに絶対一回は読んでポイントやコメントを入れたい想い みんな ごめんなさいです 僕は人生に目的を求めすぎないように 挫折も沈滞もひっくるめて君のはなしを聴く用意のできる人間になろうとおもった きみの 別れた妻の ただ こころにのこる voiceなんてね https://youtu.be/20W4slP2PGg ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]もとかれもとかのに捧げる散文詩/梅昆布茶[2015年8月12日23時39分] 冷蔵庫の中でしずかになにかが貯蔵されているが それはけっして常温の空気のなかにはでてこないものかもしれない 陽光のとどかない深いうみのそこで 眼のないいきものたちが生命活動をくりひろげていても それはぼくらには見えない世界 ぼくたちはある幅をもっていきている それが相手の幅のどこかとかちりと噛み合ったときに だれかの一部を理解するのかもしれない 数理では1であっても きみは1.26385の時や無限のループや すべてをのみこむ太陽系の母であったりもする のどかな春の草原に ピクニックのシートをひろげる かつて小市民的と評されたパパでも じゅうぶんいいのではないかとおもうのだ ただし 陽光も季節も公平に巡ってくるものだが それを享受できない生命もあることを そういった仲間がいることも忘れないで 渋谷の道玄坂あたりに もとかれもとかのフリーマーケットが 出店されるそうだが もちろんもとかれもとかのが売りに出される訳ではない おもいでの品を想いを一筆添えてそれぞれの値段をつけて それを買う客との交流も可能だそうだ ぼくらはいくども季節や時間や恋人を捨てなければならない ぼくらは限られた時間の鏡の反射のあいだに光年をいきる そのあとは絶対零度のせかいの塵となってさいせいするのだろう ぼくらは協同で生命のうたをうたいつづけて死滅して また甦ってそれを永遠にくりかえす魂なのかもしれない               なにかが貯蔵されているが それはけっしてあなたでもないかもしれない 資本のとどかないくらい夜の都市で 戸籍のないおじさんたちが生命活動をくりひろげていても 戸籍もれはぼくらには見えない世界 ぼくたちはあるあまりをもっていきている それが相手のあまりのどこかとかちりと噛み合ったときに だれかの一部を理解するのかもしれない 数理では1であっても きみは1.26385の時や無限のループや すべてをのみこむ遊郭の女であったりもする のどかな秋の麓に ピクニックのシートをひろげる かつて小市民的と評されたパパでも じゅうぶんいいのではないかとおもうのだ ただし 陽光も季節も公平に巡ってくるものだが それを享受できない生命もあることを そういった仲間がいることも忘れないで 渋谷の道玄坂あたりに もとかれもとかのフリーマーケットが 出店されるそうだが もちろんもとかれもとかのが売りに出される訳ではない おもいでの品を想いを一筆添えてそれぞれの値段をつけて それを買う客との交流も可能だそうだ ぼくらはいくども季節や時間や恋人を捨てなければならない ぼくらは限られた時間の鏡の反射のあいだに光年をいきる そのあとは絶対零度のせかいの塵となってさいせいするのだろう ぼくらは協同で生命のうたをうたいつづけて死滅して また甦ってそれを永遠にくりかえす魂なのかもしれない        https://youtu.be/W03HlXkuokc ---------------------------- [自由詩]奈落/梅昆布茶[2015年8月16日21時03分] 堕ち続ける夢をみるのはこれがはじめてでもない ときどき浮遊する夢もみるが たいがいは堕ちている 奈落に底が在るとしたらいつそこにたどりつけるのか それとも俺は横方向に無限に移動しているのかもしれない でもおそらく死んでも天にのぼることはないだろうとおもう ---------------------------- [自由詩]しれっと/梅昆布茶[2015年8月19日10時18分] しれっとしてあなたは澄ましている いつもそんなことだ まあいいか べとべとのおんなよりは もとかののファイルを おとこは名前をつけて保存する もとかれのファイルを おんなは迷わずうわがきする それで平和がたもたれるならば 素敵なせかいだともおもう あしたまでに手品をおぼえて きっとハットのなかから鳩を出すんだから それまでしれっとしていればいいんだ ---------------------------- (ファイルの終わり)