梅昆布茶 2013年6月1日19時13分から2013年6月26日15時08分まで ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]ある親父の日記/梅昆布茶[2013年6月1日19時13分] 最近疲れがとれない。 なんだろうこの疲労感は? 運送業なので確かに休みの少ない職種ではある。 もともと凧みたいなフーテン振りで妻にも離縁された駄目男ではあるが 以前はもうちょっと覇気があった気がするのだ。 カラオケ仲間のおっかないショーコ姐さんには年中あんたは猫背で首が前に出て姿勢が悪いんだ爺いだと罵倒される。 数年前はグループ交際の仲間やお姉様たちと朝まで飲んでも平気だったのだが。 人生に対する好奇心が衰えている気がするのだ。 所謂センスオブワンダーなのか。 たぶん人間は何かを志向しなければならないとか結果を出さないととかある縛りに囚われはじめるとそれが拘束服のように感じてしまうのかもしれないが。 佐藤春夫のように都会の憂鬱とか田園の憂鬱とか影を帯びたかっこいい括りで表現できればいいのだが。 そう人生はいつもこんな重さを抱えながら進行してゆくもの。 さまざまな軸が時空の中で交錯してさ綯い交ぜな糸を織るものだ。 そうさ僕はエリッククラプトンにはなれないけれどもでも。 まだまだ何かになれるはずだって自分に言い聞かせる。 僕は僕であっていいのだがそれでも死ぬまで僕以外の僕に向かってゆく。 最終的に死という結果が待っているわけだがそれは当たり前のこと。 死は最大の友。 生はそのおまけなのかもしれないな。 ---------------------------- [自由詩]調整中/梅昆布茶[2013年6月1日19時44分] 人生において僕は様々な役を求められて来た今もね もちろん卒なくこなせる人間ではもちろんないその対極だろう 何かと何かをアジャストすることで随分磨り減ってしまった感性を想う アウトサイダーになれない落伍者は疎外感を言葉にする 僕に詩があるとすればそんなことだろう でもね詩は大切な血流だとも思っているんだ 枯れ果てても一編の詩を歌を伝えられる様に そんな生き様でいいと思っている たぶんその時点で誰にも必要なものは違うんだ 同年代でも友達でも異世代でも異邦人でもそれはあたりまえのことさ 僕達は価値観よりも幅をもちたいとねがうんだ 上っ面な個性なんてあまり好きじゃないしね いいんだと思うそれで 僕だっていつもね調整中だし チューニングして生きてゆく その中から何かをもらってゆく 社会も世界も君も僕も 世界の看板は 調整中 ---------------------------- [自由詩]コストパフォーマンス/梅昆布茶[2013年6月1日20時19分] コストパフォーマンスではない自分が欲しかった でも生きるためにはある程度のコストがかかるが 父や母はその中からコストを僕にくれたんだっけ 愛情と共にねでも父はずるい やっぱ女の子可愛いんで姉貴には結構いいお土産 俺はおまけでもね12の時ネックの反ったたぶん店頭で ずっと売れなかったギター 嬉しかった チューニングは合わないが最初のギター 輝いていたさ もちろんロックンローラーにはなれないけれども詩人でもないし 蟻にも蜂にもなれないけれどもストンと僕にだけはなれるそれでいい ボブディランが一曲で変えた音楽や世界観やそんなものの百分の0.001 あるいはもっともっとでも変われるさ意志が有ればね コストは誰がはかるのかすでに神ではあるまいし 神仏もまあまあはかれまい たいがいの詩人は無駄を詩にしているし詩的だ コストパフォーマンス考えたらやれない 人生は商売かとも思う コストのわけあいが資本主義だがそれでも反発している爺い一人 詩にもならないが ---------------------------- [短歌]風合い/梅昆布茶[2013年6月2日3時21分] ちりじりになった自分をまた集めそれも自分かと問う日々さ 大局の見えない眼でもね生きてきたでもねちりちりと良心が病む 風合いが善かれと思い探し出すこの懐の狭い生き様 無頼派に憧れ生きて半世紀もう半世紀も子を育てる 生命の姿は様々虫にだって教わっているさ今も明日も 人から見えないデリケート抱えながらも顔が赤らむ 完璧な生き方はできないが保護色ではない自分を感じるそれでいいと思う ろくでなしふたことめには余り物今世のよすがと粋がってみる 欠片を補ってゆく生き方もいいのかと思う今日この頃 ふんわりと風に乗ったらそれでいいそのままの姿で生きてゆく ---------------------------- [自由詩]ツインテールな風に乗ったら/梅昆布茶[2013年6月3日1時09分] 揺れるツインテールまばゆい光の中で踊るそのままに 大好きなツインテール木漏れ日のように優しく あの日の午後の坂道で出会った奇跡が嬉しいんだ そうさ僕と君の時間が始まったんだよね ツインテールが揺れる時僕の心も揺れる まるでメリーゴーラウンドのようにぐるぐる廻る 世界も僕らもぐるぐる廻って目も廻ってしまってあはははって笑ってしまう 太陽のもと僕らも樹々と共に育つんだまるでカリフォルニアシャワー ひまわりのように咲いて笑うんだね 骨太の男になるってわめいてた夜君がゆらりと揺れた 僕はスタンプが好きでやたら押してる君色のスタンプさ ツインテールは呪文なんだろう僕の馬鹿を治してくれる 聡明な夢だってたまには見たいんだぜ ツインテールな風に乗ったら僕は夢見心地 ツインテールブルース ヘイ君も乗りなよこのカート 潰れそうな夢のよすがさ ヘイベイビーマイツインテール 腰つきがたまらないんだぜベイビー マイツインテール ---------------------------- [自由詩]孤独な亀/梅昆布茶[2013年6月4日7時50分] インディペンデンスを望んだ亀は地平線に向かって歩む 燃え尽きない幻想を追って疾走する夢を見ながら 彼に自嘲は似合わない悲壮がよく似合うのだ 孤独な亀は金色の月をのぞむそして嘆息する 世界は彼に流転と無常を強いる 長い間その胸を焦がしたものそれは生きてゆく意味なのだが 彼は自分が何者なのか知りたかったのだ 輝いていたい荒れ果ててもみたいやさぐれていたかった 苦悩という平和を愛という不実を風の音に聴きながら うつらうつらとまどろむ午後もあったが 大概は心がさざ波だって我にかえって目醒める 孤独な亀は蒼い地平線をのぞむ ちっぽけな爬虫類は 今日も甲羅の中に 世界を秘めているのだ ---------------------------- [自由詩]絶対零度/梅昆布茶[2013年6月4日10時21分] 氷結の果て薔薇が粉々に砕け散るように君は振舞う 北氷洋に落ちた水夫のように僕は凍えているのだ あるいはさまよえる鯨のように冷たい海を泳ぐのさ 冷え切った心は容易に癒されはしないさ 氷の華咲く心は君の世界だ僕に冷たい息を吹きかけないでくれ ブリザードなんていらないさ僕は温もりだけが欲しいんだもの 少なくとも僕には血肉を分けあったおんなでいて欲しかった 絶対零度の孤独は生命の原点でもあるのか 暗黒のなかで育まれ孤独を成長して来たそしてまた暗黒に溶けてゆくのだろう 太陽系の歴史を縦断して普遍の原理に生きたいのだ たかがアフリカ原産の種ではあるが温度を忘れないように 赤道を通過する難破船のように今も温度を求めて生きる 爬虫類のように進化の途上の仲間や死滅した種やすべての哀しみを抱えて だから今発信するすべての世界に温度が伝わるように そう君に僕の体温が汗が脈拍が命が伝わるように 祈っているだけなのです いつかまた会うために ---------------------------- [短歌]ちょっと相聞歌 未有花さんのおまけ/梅昆布茶[2013年6月4日10時41分] 僕って何ってききながら優しさ求めて彷徨ってでも結局は君の膝に居る 誰が好き僕が好きって言ったらば散々ぶたれて玉砕日 相聞歌相手がいなくて空っぽのメールを送る遠い宇宙へ もう親父恋も終わりとわかっているが最後の言葉を壁に刻む 紀元前愛した彼女がしぶとくて今も生きてる長寿社会 ---------------------------- [自由詩]遠く美しいもの 憧れ/梅昆布茶[2013年6月4日22時37分] 大切なもの すてられないもの こだわって でも時はすべてを 風化させてゆく砂 眼に焼きつけた君の横顔 しなやかな指の運び 密やかな息遣い 階段の手摺を 君がもたれかかっていた重みを ちょっと揺れていた心も 失いたくないすべてのもの ぼくはただの木偶の坊だ ちっとも気が利かない 生きてゆくことに迷って ただ忘れたかったんだ その場しのぎさ 憧れは手にすることで壊れるのだろうか それとももっともっと遠くへゆくの そして 遠く美しいものになるの 憧れになってしまうの ---------------------------- [俳句]虚空/梅昆布茶[2013年6月4日22時53分] 虚ろならむしろ業を引き受ける 虚ろでも空を仰いで恋もする 虚ろなんて酒の肴にしてしまえ 時を知る空っぽの心響く足音 虚空蔵菩薩になれないろくでなし ---------------------------- [自由詩]研ぎ澄まされた/梅昆布茶[2013年6月6日7時16分] あるいは鯨の骨 沈殿物 太古の海辺 神殿の蛇 翼竜達の叫び 彫刻のまどろみ 忘れ掛けた部屋 壁にかかったタペストリー 美しく研ぎ澄まされたもの 日常を剥ぎ取る鋭利 独占された愛 失望の日々 凋落の都市 修復の呪文 憂鬱な原理 白昼夢 うちあげられた流木 ガラス瓶のなかの未来 輝かしい喪章 契約された哀悼 朽ちかけたタイムマシーン 時の回廊 神々の紋章 プロミネンス 最後の月齢 あるいは泣く心臓 廃墟 永遠の窓際 錆びた自転車 日記 懐かしい太腿たち 退役した駆逐艦 置き去りにされた哀しみ 美しく研ぎ澄まされたもの それは繰り返し それは生きてゆく そして また 滅びてゆくのだ ---------------------------- [自由詩]ずっとさがしてたもの/梅昆布茶[2013年6月6日10時20分] 遠くて輝いていた ちくちくと心に刺さってる 手の届かない哀しみが 僕を打ち砕く 苛まれる心で生きてきたさ 宇宙はとても遠くって 星ばかりが波のように漂っていて 君がそんなに側にいたなんて 想像もつかなかったんだ けど嬉しいよ 空が笑ってるほら ゆらゆらと蒼く 僕のようにね ずっとずっと探してた いつもね笑ってる君の そんな佇まい 株の乱高下なんて関係ないさ 僕達は証券じゃあないんだ 僕達は星のかけら 引力で結ばれる運命にあるんだ 宇宙は僕たちなんだ ずっとずっと笑っていたい つまらないネタで 永遠に 仮想空間で恋するより 君とおでんが食べたかった 辛子の効いたやつだよ 君のプランターのなかが僕の世界だ そうそれでいいんだ 永遠にね だって君にはもう会えないから 宇宙が壊れても 世界が崩壊しても ずっと探してたもの 暖かくて大好きでさわれないもの 君という小宇宙 僕という銀河が いま会いにゆく 嫌ならほっといてくれ 僕は確かめねばならないんだ 君がそのものかどうか ずっと探してたものになって欲しいんだ 無理は言わないから 美しくしなやかにね よろしくね ---------------------------- [自由詩]はぐれもの/梅昆布茶[2013年6月6日10時55分] 真っ暗で何も見えないが もう泣かないよ もう子供じゃないさ 不安は日々成長して何かを損ねる ただそれと闘う 何が僕を存立させているかは僕が決めること 遺伝子だって取り替えっこしてるんだ 笑って見ててよ この日この時だけ 僕は無限に自由だったと思う お袋が死んで天涯孤独 支えはないのだが 君を支えに想う いいだろう 前から好きだったんだから もう僕の恋はぶっ飛んでる 本当は君が良かった いつもね好きだった 世界が終わるまで愛そうと思っている とてもとても手に余るのだが こんな形で終息するものでもないし 永遠ってなんだろね 詩って無様な航跡 はぐれものはいつもね ちょっと奥まってさ 場所をうかがっているんだ ---------------------------- [短歌]青葱/梅昆布茶[2013年6月6日21時46分] 日々これ漂泊青葱を囓るように凡々と淡々と過ごすのみ 辞世の句考えながらも生きてゆくはみだし者の生き恥晒し 対流する魂ばかりが浮き足立ってただばたばたと地団駄を踏む 木瓜の花心のなかに抱きつつ今日一日の飯を食らう身 星と旅と流木とその傍らに僕の生があるような気がして ---------------------------- [川柳]さくらんぼ/梅昆布茶[2013年6月6日22時38分] 烏合の衆合言葉はさくらんぼ 僕の器官が君を好きだってちょっと揉めた ヒップホップのノリで生きてもいいななんて 縦軸と横罫が恋したりしてそれっていいかもな 自由をはき違えるなよでも自由が好き ハッピーデイハッピーデイどんなにだってなれるさ 金魚花火くるりとはじけてやはり夏の匂い 差し込んだ光とともに生きようか さくらんぼポッケのなかに小宇宙 僕と君一緒に生きれる気がするそうさくらんぼ ---------------------------- [自由詩]太陽の王国/梅昆布茶[2013年6月7日17時07分] その神殿は太陽に向かって開かれていた 聖餐に若い処女が捧げられた 雨が大地を潤す頃 僕の大好きな人は太陽に嫁いで行った そこは太陽の王国だった 神話は陽光に満たされ 北国の花嫁たちが掠奪され 太陽の種子を孕んでいったものだ 礼拝は人びとのこころを満たし 乖離したものを隠してしまったのだ 関係性を現す言葉は いつも風化して再現される 文明の階段は海底へと続いている 惑星は太陽の血を分けた子供 海は生命の発端 いつか大地と水は呼び合ってしまうのか 言葉は秘密を解き明かす呪文 生命は解答を求めているパズル 太陽の大陸は歴史をのみこんで 沈んでゆくゆっくりと いずれアトランティスと呼ばれることも知らずに 幻のアトランティス この街かもしれない 僕の故郷は 迷路の果ての酒場 安い女しかいない 太陽の王国は こころにある いつもある どこにでもある そんなもんさ ---------------------------- [自由詩]スイートジェーン/梅昆布茶[2013年6月8日15時54分] ジェーンは恋をする 素敵な恋 書きかけの日記のなか 彼との恋がはじまる スイートジェーンは恋をする 重いビートの恋なんだ 日々は韻を踏んでやってくる 軽いステップで春のように スイートジェーン 大人の入口を彷徨うんだね そう君は甘く切なく 綺麗になってゆくんだね 冷たい頬 艶やかな髪と その唇が欲しいんだ 白い指と耳たぶの 感触が残っているんだ 天使の轍が君を導くのさ 誰しも恋ぐらいはするさ スイートジェーン ポテトは待ってくれる スイートジェーン 誰もソーダのなかで恋はできないんだよ 手に触るものを信じよう いつも僕らは病気持ちだ 文明という微熱 ロックンロールだっていつまでも若くはないさ 歴史の滓なんだから 文学はおしなべて共同幻想ではあるが 個人幻想が原点 民俗的に アレンジ それもいいさ それでもスイートジェーン ロックンロールで蹴散らすさ 或いはパンクかラップか でも奴らはやばい 涎のたれたドラッグ みんなドラッグで死んで行ったさ スイートジェーン 僕は生きる 子供達がいるの スイートジェーン 君とは創れないが いちばん大切なものだ スイートジェーンもっともっと恋をしてくれよ 大切なものはいつもたやすく入れ替わるんだ あなたは誰を大切にしたいのか スイートジェーン僕は君の味方お節介な天使 隙間の空いた元彼氏さ スイートスイートジェーン もう誰もいらないから ---------------------------- [自由詩]サンデーモーニング/梅昆布茶[2013年6月9日1時16分] 日曜の朝 僕は生きていた 相変わらず 美術館に行こう そう思った とても縁遠い生活だ 生活もできていないかもしれない 僕のなかには整理されきちんとしたものなんて何も無かった 歴史さえも アナーキストにさえなれないやさぐれ者 つまはじきされて生きてゆくさ 自分に嘔吐する すべてを反故にしよう 仮説で生きていたんだ 日曜の朝 僕は生きていた 整理されずに 余った人生を考えていた 日曜の朝小鳥が鳴いていた まだ飛べそうな気がした 軽い羽根になる もう重さはいらないさ いつもの自分でいいんだ 自由なんてたんなる幻想なのかもしれないが でも僕はその種族だ ポスト資本主義を考える 小鳥は飛べるだろうか 存在論と資本論と運命論と詩論 寸断されたものを抱えて生きてゆく 裁断された端布で構築するのはもう嫌なんだ サンデーサイレンス 僕の親しい友 もう夜はいらないんだ 本質は変わらないのかもしれないが 静かに進化したいんだ そう死ぬまで意志を持ちたい 無駄なものなんてないんだ 裏切りや殺戮やもろもろの 自分の罪を負いたいんだ いつか聖者になれるならね それもいいさとってもね ---------------------------- [自由詩]夕まぐれ/梅昆布茶[2013年6月9日1時59分] 赤とんぼ 無数に浮かぶ 夕まぐれ あの石切り場 遊び呆けて つまづいて ちょっとこころをおいてきた 指切り忘れて ふりかえる 鼻水垂らしたあいつやら しょんべんちびったあいつやら みんな子供の自由さで 自分を素敵に歌ってた こころを忘れたいまごろは いつも夕暮れ思い出す 友ととんぼと石切り場 帰るところもないままに いつもいつでも思い出す あの夕まぐれのやるせなさ そのままあなたにつたえたい あのせつない美しさ ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]海と風と僕のねじれたこころ/梅昆布茶[2013年6月9日20時54分] 幼い頃から海が大好きだった。 道産子なので北の大地も僕の遊び場だったが函館という港街に長く住んだ。 洋風の風が吹くこの街で潮の香りが好きだった。 朝市のような活気に満ちあふれた世界はとても心地よかったものだ。 いつかこころがねじれて生きるようになった。 ねじれた人と会いねじれたこころでつきあってそれをあたりまえだと思うようになった。 海と風はいつも変わらないのに僕は変転してゆく。 夜の横浜を疾走することが好きだった。 オイルの焼ける匂い。 2サイクルの鋭い叫び。 バイクと一体になって走り続ける。 僕の青春の地図は迷路のように真っ直ぐに屈折していた。 エントロピーとの闘いが生きることならばそれを自分の闘いとしよう。 人と闘うのではない。 醜さはいちばん自分のなかにあるものだから。 彼女を深く傷つけたのは俺。 最低なマザーファッカーさ。 海と風と僕のねじれたこころ。 そのままで時代を走り抜けるんだ。 そうそのままでね。 ---------------------------- [自由詩]ラフマニノフの夜/梅昆布茶[2013年6月12日0時04分] 遠くしじまを想う 夜がもたらすやすらぎ 優しい眠りの精のおとずれを待つ ラフマニノフの楽の音にのせて しめやかにさすらう こころのままに 繊細なしろい指を想う 懐かしい夜のかおり 流れる髪を想う 月光を映す小川のよう いくつの夜を数えたことか もう忘れてしまった せめてこの心を鎮めて欲しい その旋律で そしてまた優しいしぐさで抱き締めて欲しいんだ 豊かに深くその夜の翼で ラフマニノフの調べにのせて ---------------------------- [自由詩]ほどよく立ち枯れる/梅昆布茶[2013年6月13日0時16分] ほどよく生きる 風にまかせて 古木のように悠然と大地に根を深くはりめぐらせて生きれたら 若木のようにしなやかにすっくりと空をめがけて伸びれたら どんなに素敵なことだろう でもいまの自分のうつわは たったこれだけだ それでも良いとおもわねば とうてい生きては行けない もちろん棘有る荊のようには生きたくない 萎れた花でもなく ほどよく立ちつくして枯れてゆきたいと思う せめて意志ある姿のままで立ち枯れて行ければよい やり残したこと放り出してしまったもの ぼくの人生は懺悔の山だ でもやりたいことつたえたいものが まだ待っていると思うんだ 急ぎ過ぎてもだめなんだ 振り向いてばかりいてもしょうがない いくつになってもしなやかな感性をもちたいものだ 内部に星をいだくように 誰に会ってもやあ元気かいと声をかけたい 好きな人にも嫌いな人にも みんな無常を生きる同志であるのだもの 憎しみや怒りの連鎖はもうたくさんだ まだ人生を整理するには早いのかもしれないが でもいつでも立ち枯れるように消えてゆけたらよいとおもっている ---------------------------- [自由詩]ギャング/梅昆布茶[2013年6月14日20時44分] 北の果てのとある国 閉ざされた凍えた大地 流氷漂う暗い海峡 灯台の灯りさえ今にも夜に飲み込まれそうなそんな港街 幾人かの荒んだ風体の若者達が流行りのリズムにあわせて からだを揺らせながら焚火を囲んで暖をとっている 炎に浮かぶその相貌は 鬱屈した退屈した あるいは絶望に近く見えたのだ 時に議論し煙草をせわしげに吸っては また暗いリズムを追っている 戦争という磁場は この若者達にどういう理念を育てるというのだろう たまに散らつく粉雪は 炎にあたって音もなく溶けてゆく ざんばらな髪に降りた雪粒は 暫しの若き戦士の花飾り なにに対する闘いなのか 戦略は戦術は そこに大義はあるのか かつて南方では人民を犠牲にした悲惨な戦争があった ただ覇権のために 武器をためこんでなんになろう 戦争の後であがる旗は 希望や喜びという名の美名にカモフラージュされた 権力の移譲に 過ぎないのかもしれないが 確かに変革の基点ではあるのかもしれない だから 次の権力に 渡さないために 奴らから歴史の進路を奪うために 家族や仲間や 無数の散華したすべての同志のために ラップにのせて 闘うのだ もちろん限りなく鬱屈した フリーダムのために 路上には 相変わらず 粉雪が舞っているが 彼らの見ているものは 限りなく近くて そして 遠いビジョンだったのかもしれない ---------------------------- [自由詩]幻想の未来/梅昆布茶[2013年6月16日1時00分] すべては大概まるくはおさまらないものだ 三角や四角や多角形 角と角が紛争を起こす まるになるまでには時間がかかる ただたまたま角のままで素敵に嵌ってしまうと それが基点になって すべての回転運動を動かしてゆく 世界がこういった図形だったら 僕はパズルのように並べ替えるだろう 回転しない独楽のような上司 角も何もない平板なあなたは まさか直線ではないですよね 遺伝子でさえ複写の都合により 二重螺旋なんですから いつも不等号の世の中 それが資本の原理とは知らずに 民主主義ばかりを 余地なく信じていました 管理されたものは民主主義とは呼べません 歩いて生きないとそれは 腐ってゆきます 世界は円環ではないのですから それなりのイメージを持ってゆくのです まあ私的な感慨だと思ってください 雑多な角度や曲がりは その道のプロフェッショナルがどこかにいます 僕らは矢印を とりあえず 進むのです でも万全ではありません もう蝶になっても 花になっても どうでも良いのですが 結果は僕らが引き受けることが 大原則なのですね 誰も自分の嫌いな姿には なりたくないでしょう 時にちっとも自分に合わない職業 とっても嘘の仕事 あるいは要求に答えられない自分 異和は当たり前 でも世界は廻る どこが中心点なのでしょう 特に何かを回転させたいわけではありません いまさらですが 回転が必要かどうかから 議論して見ませんか ---------------------------- [自由詩]不思議の杜/梅昆布茶[2013年6月16日8時15分] 不思議なんて忘れていた頃 ときどき肩をたたかれる 遊ぼうよ あの頃のように あんたはどうせ枠にはまれないさ だったらいっそ逸脱の限り 尽くしてみたらいかが? なにも担保にならない 自分さえも ため息ばっかりついてんなよ 改行も忘れた詩は 似非詩人の証拠なんだな 人生をひきうけろよな 不思議って僕のともだちだったのかなあ とっても好きな時もあったさ いいんだどうせ人生はじゃんけんで決まるようなもの あんたが負けたって あんたのせいじゃないし もっと不思議を増やしたい できれば栽培して出荷したい ださいたまの特産品だんべ 地消地産 自画自賛 アナーキストだって 思想を持ちたいんだな 不思議はいつも僕のともだち 優しくひっくり返されて くるんと着地して そんな風に生きてきた でもさ ちょっと疲れる時もあって 休んだりもするんだけれども 漁師が網を打つように 僕は 人生から何を 獲得するのか あるいは人生は 喪失の営みなのか 誰も教えてはくれない 不思議は僕のポケットにいつもはいってるんだ 人生の携行品さ 不思議の森は僕の中にあるんだ ---------------------------- [自由詩]夏の贈りもの/梅昆布茶[2013年6月17日23時12分] 小麦色の肌に濡れた瞳 花びらのような唇 流れるような亜麻色の そんな君は夏の贈りもの 僕の目の前で踊っているのは やわらかな奇跡優しい愛の歌 しなやかな腰のくびれが 眼に残像を焼きつけてゆく 君と過ごした夏を数えていた ソウルの夏 ダブリンの夏 京都の夏を たおやかな息遣いを 軽薄な愛の言葉でつづられた 僕の日記帳を 気高い魂の 在処を焼きつけて僕にも教えてはくれまいか 真夏のしんとした森の中で 君の歌声だけが僕を震わせていた この世に妖精が存在するとしたら それは君のことだ 夏のニンフよ 風は山野を自由に吹きわたってゆく まるで此の手なかからするりとこぼれてゆく君のよう それは世界からのプレゼント 夏の爽やかな贈りもの この瞼のうらに この夏の匂いを閉じ込めてしまいたいほどさ そう素敵な贈りものは 素敵な夏のこころで受け止めたいものさ ---------------------------- [自由詩]たった一人のこの部屋で/梅昆布茶[2013年6月18日20時47分] 壁にピンナップされた僕らの写真を見ている 時々締め付けられるように過去が蘇るのだが 時間の不可逆性は 僕の味方ではないようだ 一人静かに時を消費することにも慣れてしまった もちろん本意ではないのだが 孤独とつきあうのがうまくなったかもしれない もともと孤独な性癖だったから 幼稚園の入園写真や 運動会の写真 そう言えば亡き母のアルバムに貼ってあった姉と俺の写真 セピア色で 姉はしっかり者 僕はひょろひょろに映っていた でも貧しいながら寄り集まって 北海道で生きてきたんだ 時代という風のなかを寄り添って生きてきた気がする いまは亡き若き日の母が 僕らと食卓を囲んで微笑んでいる 零落した地主であったらしい母の実家にも いまは亡きバイオリニストであり化学者でもあった叔父の 税理士であったその兄の 生涯独身をとおした叔母の 気配をいまも感じる 商家であった父の実家で母と父は縁をもったらしいが すべては霞のように遠い その遠景のなかに 僕と妻と三人の子供が重なる 三人ともに分娩に立ち会った なんだか血みどろの肉塊が ほぎゃーとこの世の第一声を発する 一人ひとり産まれた時から 見目かたちは違うもんなんだなあって思ったものだ 長男は僕に似ている おっとりして不器用でちょっと神経質だ 次男はけっこう天衣無縫 母親似かもしれない 発想が豊かな子だ 三男も僕に似ている なんだかいるんだかいないんだかわからないんだけれど 自分の好きなことを 物静かにやっているようだ いつか僕も誰かの遠景になるのだろう せめてあまり邪魔にならない遠景であって欲しいのだが 風は時代を引き継いでゆく それは自然な摂理だ 誰も抗えないもの 時は蓄積された記憶を いつか風化させ 拡散する 家族の記憶も いつか古びて いつか自分は離脱してゆく もうすでに 僕の記憶は 子供達にとってずいぶん薄くなっているはずだ それでいいとも思う 僕は宇宙に還る いつか星屑に戻りたかった それも遠くないいま それでも家族を想っている たった一人のこの部屋で ---------------------------- [自由詩]君の中の花/梅昆布茶[2013年6月22日15時29分] 可憐だったり清楚だったり 或いはとぐろを巻いて見せたりする君の中の花が好き 薄紅色だったり萌黄色だったり 或いは血を流したり 君の六十兆の細胞の隅々まで僕を行き渡らせたいのだ 君がどこにも逃げられないように 僕は腸内細菌となって君の身体に棲み付くんだ そして時々光って見せるんだ蛍みたいに 僕の詩は君に届くかい 君のストイシズムはまだまだ続くのだろうか 僕は禁欲の鎧に飽きてしまった 僕の毒針は自分を刺すんだもの 時計の針が重なるように幾度となく重なりたいんだ こころをわし掴みにされたままでは どんな屈強な男でさえ生きれまい 花弁の中に秘めた想いを 蕩ける蜜をそっと分けてほしいんだ 君の身体の恒常性を維持しているのは ひょっとして僕の愛 ちょっと照れるが 僕だってちょっとは学んでゆくさ ダサい男の見本だなんておっかないしょうこ姐さんに言われ続けている 現状打開 国民みなラフマニノフを聴けば心が休まるのになあ まあいいか どうせ俺はトラックドライバーでしがない古本屋の店主 でもね君に好きな本を送れるんだ それって最高に素敵だと思うんだ たとえ君が僕に好意を持ってなくともね 太陽は空に半日しかいない 残りの時間は月と繁殖の時間だ 或いは星影のステラなんて 素敵な名曲を女を口説くてだてにつかうやつ等の時間かもしれない 僕は歌う いちおうギター弾けるんで たぶんまったく似ていない尾崎豊の歌だって 心を歌うんだ ミスチルでもスピッツでもいいんだ みんな大好きだもの 僕の人生は停電している たむらしげるのようなエネルギーが欲しいなー ファンタスマゴリア たぶん幻灯機 人生って そんなものさ とつぜん大阪弁ですが ええやないかい 楽も苦もいっしょやねん さいさいでいこかー。 あのこれは僕が大好きなサイレントサイレンというガールズバンドのことです。 ---------------------------- [自由詩]小さな幸福論/梅昆布茶[2013年6月25日1時48分] 僕の小さな幸福論 TSUTAYAでアランの幸福論を探した もちろんヒルティの幸福論でも良いのだ 幸福な気分になりたかったんだ しばらく味わっていないような気がするんだ 幸福は乾いた日なたの匂いがするのだろうか それとも母の乳房のように懐かしい匂い 僕の幸福論は単純だ 生きてさえいればなんとかなるものだ 幸福になるのは案外たやすい ギター一本と酒と時間があればそれで事足りる そんな些細なものなんだ でも心に波風が立っている時は どうもそういう気分にはなれない 僕が遺失してきたものはなんなのだろう それは幸福と関係があったのだろうか 過去は陽炎のように儚いものだ ソシュールの言語学のようにかたちのつかみにくいもの 逃げ水のように あるいは水面の月のように追えば遠く駆け去ってゆくもの 僕の盟友でもあり 遠い縁の薄い親戚 血の繋がらない 地の果てに住む兄妹なのかもしれないが それでも時々はその名を呼んで見るんだ 君の愛らしい名前に託して そう幸福って 可憐な素敵な名前なんだね まるできみのようにね ---------------------------- [自由詩]南十字星/梅昆布茶[2013年6月26日15時08分] 竜骨座の主星カノープス 大小のマゼラン星雲 月に遊ぶ人魚 南天の星々は僕を魅惑する 散文的な日常 それも嫌いではないのだが 僕はほんらい空の生き物らしい ただ地上では羽をもがれたバッタのように 無様にしか生きれないのだけれど 北半球の過剰を冷静に鎮めるのは 南半球なのかもしれない 微妙な地軸の傾きは四季をもたらす だから僕も君を思いだす そんな静かな時間が欲しかった せめて流星群になって 君に降り注ぎたい いつまでも 老朽船の舳先は南を指している 羅針盤は僕たちを遥かな海洋へと誘う こころの行方はわからないが 少なくとも北半球の冷酷さには沿わないだろう 南十字星はともしび この世界のぬくもりの星 僕の魂のよすがなのか 歴史と世界というキメラが 咆哮する今宵 合成された生き物は空にのぼって星座となる 南十字星は僕の墓標 南十字星は憧れ 南十字星は僕の魂なのかもしれない ---------------------------- (ファイルの終わり)