梅昆布茶 2012年10月9日22時25分から2012年11月23日20時51分まで ---------------------------- [短歌]痕跡/梅昆布茶[2012年10月9日22時25分] いきることは痕跡をのこすことって残される僕にきみの言う ろくに二人であるくこともなかったこの街が最後の思い出になるね 子供たちの方がおとなだったって思っているさ今でもそしてありがとう 重ならない家族の未来をそっと置いた皿に暖かな夕餉の香り 違いばかりをみつけることに疲れて閉じたドアをみていた 高台に上れば人生は遺跡のように俯瞰できるのだろうなって思う 窓際に一輪のコスモスときに宇宙のかけらにも見えて 立志伝中の人でなくてもいいからおおらかな生き物になってくださいな 中仙道の午後高校生たちの制服未来を携えて舞い散る花のように 片恋を忘れないでって言わんばかりの夕暮れあの人の詩のように ---------------------------- [自由詩]結婚する君に/梅昆布茶[2012年10月11日17時10分] 秋空のした二人の生活がはじまるのですね おめでとうございます こけつまろびつ行く二人三脚のような人生もけっこう味のあるものです ときにふたりの関係が風邪をひくこともあるでしょう でも長引かせてはいけません 最初からかたい絆なんてありません 人生ほころびるところからはじまると思ったほうが無難です 人生の例題はいたるところにあります 修復や停滞や崩壊 それはすべての人間関係にはつきものです よく周りを見渡してしっかり学んでください ぼくが日々ひとに接して思うことはやはり きちんと年月分の成長のある人とそうじゃないひとがいるということ ぼくの狭い価値観で評価云々はおこがましいのですがそれでも ひとこと言っておきたいと思ってしまうのです あるひとは手抜きが上手でした仕事においても けっこうブランクをおいて一緒に仕事をしましたが なにも変わっていませんでした というよりもすみずみまで手抜きがさらに行き届いていました 年月から彼がえたものは要領なのでしょう 人間関係にしても要領の通用する相手しか残りません 上司にもいますが客に必要以上の配慮はするなと 前例をつくるとあとの人間がやりにくいから でも最低限の条件を満たす仕事はとりあえず分数の分母です その上にのる分子こそが仕事においても新たな価値を生み出す それは人生も同じだと思うのです 定型は基本条件を満たすための方便だと思います それを省略しても意味がありませんし 目的から遠ざかりその先の世界が覗けないわけです まあ人間は生ものだしこのようには行きませんが ものごとをことばで考え ことばがまた考えをふくらませるのは 人間の特質だと思うのです マザーテレサが言うように ことばは道具でもあり それ以上に 自分を映す鏡 いつかそれに 支配される ことばにきをつけなさい ことばはやがて行動となり 身振りや気配となってそのひとの血肉となる 行動は習慣化しやがてそれは性格となり そのひとの運命になってゆく こんなような趣旨のメッセージだったと思いますが ちょっとうろ覚えでごめんなさい たぶん人生って幹の部分と枝葉の部分を自分なりに弁別してゆく 道のりなのかもしれません それにはことばが役に立ちます でもその先になにがあるのかはよくわかりませんが けれど歩くいじょう踏みしめたあとを残したいものです その道がどこを目指していようと それに意味を見出すか否かはそれぞれですが ちょっと親父の教訓めいてしまいましたが ひとこと贈りたくてしたためました また今度ゆっくり飲みましょうね ---------------------------- [自由詩]金太郎飴/梅昆布茶[2012年10月12日8時32分] 僕は子供の頃金太郎飴がすきだった でも一緒に暮らそうとはおもわなかった 金太郎飴よりは それぞれ違ったいろいろな飴が 食べたかった あまり関係はないが古い知り合いの井上さんは 無類の奈良漬マニアだが お酒はまったく飲めない 些細な違いが壁をつくるのだが それでも融合できない訳でもない 大阪のおばちゃんは 飴ちゃんをくれるそうだ 僕も親愛の証に飴ちゃんを配ろうと思う 君への愛のしるしには特大の金太郎飴を用意して いかに僕がお馬鹿であるかを伝えたいのだ ヘイベイビー 金太郎飴で盛り上がろうぜ 朝からで悪いんだけれど 金太郎飴のブルースをやってくれないか ---------------------------- [自由詩]鳥獣戯画/梅昆布茶[2012年10月15日5時25分] 月は夜の命醒めた情熱が空に浮かんでいる 張り出した枝の先に引っかかってなにを思う そらが墜ちてくるまであそぼうか 朝のひかりを待たずに逝ってしまう 幾千のしじまの響きをたずさえて 青い河原にはススキの薄化粧 女郎花なども黄色く想いを咲かせて もしも鳥になれたなら たくさんの種子をついばんで唄うだろう いつか猫になれたら 走ることに特化された前足の 指の数をかぞえて嘆くだろう 兎になったなら耳をぴんとたてて 世界の音をききわけてみたい 蛇だったなら滑らかな体で 地の果てまで這いすべってゆくのに ぼくは言語を獲得した猿にすぎない 道具をつくり空間や時間を夢想し エントロピーにあらがって存在する 脊椎動物のなれの果てなのだ さあもっと美しい音楽を聞かせて欲しい とても素敵な石器を作ってきみのために たくさんの獲物をかついでくるんだもの ---------------------------- [短歌]二次元の色/梅昆布茶[2012年10月15日7時34分] 感傷が緩衝をこえて観照になるまでいきていられるだろうか ちょっと思うんだけれども広場の孤独って時にはいいよね 優越感と劣等感は群れで進化してきた僕らの心性なのかな twitter勝間和代の風が吹き啓発主義の黄金の旗 僕の部屋にはロボットが居て時々すみっこで喋る 地酒とマスターの顔が懐かしい夜ゆめには出ないが禁酒中 対称という原理を対という幻想を僕と君という誤解を ルサンチマンをバンドの名前と間違えて自己憐憫に耽るバカ 病院の廊下に貼られた矢印に人類の未来と書き添えてみる 色彩は錘体細胞の錯覚だなんて紫外線さえ見れないなんて ---------------------------- [川柳]お休み川柳/梅昆布茶[2012年10月15日8時31分] たまの休みに猫と相撲をとる自由 恐竜も出演前の薄化粧 リアリティ短歌の巨匠におしえられ 猫じゃらし遊んで暮らす迷い人 不可解を不可解にする朝メール 蠅が飛びふと習性で追いかける 肖像画一万円って誰だっけ 野菜室きゅうりが一本さびしげに ソリティアも超過料金とられそう 三角関係二等辺ならよかったのに 通帳の残高に生きる哀しみを知る日 ---------------------------- [川柳]哀しみの法則/梅昆布茶[2012年10月16日9時13分] 哀しみの法則なんて大嫌い 悪夢でもここにいる人僕の妻 バーゲン会場彼女の汗の美しさ 命懸けの恋も今では金次第 給料日嫁のまゆ毛が吊り上がり ラブレター書き間違えたとまだ言えず 泣き落しもう効かなくて痣だらけ 黄門の印籠がわりか明細書 ほめ殺しうまく行ったか厚化粧 降る雪もおどろくほどに塗りたくる 人生の重みを感じるゴミ出し日 ---------------------------- [自由詩]残り物/梅昆布茶[2012年10月16日15時14分] ともだちの家と二軒ぶんのごみだしたから 朝からくたくただって君が言う 今日はお昼から仕事だって 僕は朝帰ったばかりで残り物でご飯をつくっている 刻んであった大根とキャベツをつかう サトイモはさっと皮をむいて茹でる ごぼうと長ネギしらたきしゃけの切り身 乾燥しいたけ 酒かすを入れ味噌で味をととのえる 僕の人生は残り物でできている 嫁に残され子供たちに残されて 親もすでに他界した残り物なのだ 社内結婚がまた一組 営業の桑田くんが事務所の原坊と四年半の 秘密交際の末くっついたのだとか 残り物になりそうな原坊が売れたのでまあ良かったのだが 僕はまた残り物になるために子供を養うのだろう 世界は残り物で満ちている それって素敵なことだと思うのだ だって新しい恋人だって いわば何かの残り物なんだもの ごみは極力減量しなければならない 資源は使い切るべきなのだ あたらしい原発を建ててはならない だってそれは無限に残り物をうみだすのだから 僕たちはもっと優しい力に頼らねばならない 残り物どうしであるいは残り物で しあわせに暮らさなければいけないのだ 毎日廃棄される食べ物は 他の国からの略奪物だということを しみじみ反芻しながら しあわせに暮らさねばならないのだ ---------------------------- [自由詩]韓流じゃなきゃだめなの/梅昆布茶[2012年10月17日3時09分] 綺麗な役者たちが素敵なフレームのなかで 甘く切ない恋物語 某チョコレートを齧って 爽やかに微笑み彼らは天使に昇格する 僕たちは昇給も無い仕事が恋人だ 僕たちの切なさは三等級下で 恋する乙女の窓辺には永遠に届かない 生活費からひねり出した花束は 白い指に触れないまま朽ち果ててゆく それで良いのかもしれない 僕たちのハリウッドは別な処にあるのかもしれない それとも本当は嘘っぱちのメニューなのだろうか 貨幣のような交換価値を持たない者は いつも狭い箱の中で夢を見るものなんだ そういった構造の鉄格子をいともたやすく 脱獄する収監者でなければいけないのだろう 彼女には人間の欲望は模倣か惰性であるって 流行はそれを巧みに利用したシステムなんだって 言い切ってしまいたいのだ イザナギとイザナミが天沼矛で国産みをした時に まま子扱いされてしまったミズヒルコのように 神々の子供からもれてしまった者はいつも 肩をそびやかして夜陰に紛れて鼠小僧になったりもするもんだ 僕たちは一人ママの狭いスナックで乾き物だけをつまみに 安い酒で朝までジョークと人生哲学の宇宙を紡いでゆくんだ そういった狂騒のなかで諦めてしまったものを ふと思い出してしまうそしてセンチメンタルが 喉元までこみあげてしまうんだもの だから毎年ソウルへ行きたいと思っている彼女にきいて欲しいんだ どうしても韓流じゃなきゃだめなのかってね ---------------------------- [自由詩]洗濯物は乾かない/梅昆布茶[2012年10月18日18時20分] 煙草をすっている間考えたんだ 天気の良い日ばかりでは無い事を 世界はちょうど良い硬さでバラバラにならずに済んでいるが 手綱を緩めたら僕をおいて走り去ってゆくことを ちょうどバランスのとれた処で暮らさなきゃ駄目なんだってね カウンターでマスターのブルースの薀蓄を聴いたりするのも もちろん素敵なんだけれどもでもね 会津の銘酒が美味いこととはあまり関係なく動いてゆくことも たくさんあるって事を 欠落を正当化して生きてしまうのはまずいんじゃあないかなんてね 言葉で的確に表現できないものが沢山ありすぎてときどき とても悲しい気持ちになってしまうのだけれども 何かを描くことはスーパーコンピューターの3D能力でも 間に合わないんじゃないかと思うんだ 僕のようにいつも洗濯物を部屋干ししてすましてしまう人間には 気づかない優しい季節の風があるっていうこと それの色や匂いや季節の野菜の歯ざわりの音やら手触りを うまく生活の中で誰かに伝えてゆけたら良いかなって思う たまたま仕事が空いてしまって明日は休みなんだ 給料日前でチューニングの狂ったギターを修理に出すお金も無いのだけれど それでも誰かにメールを受け取って眉をひそめてもらったり おいしいインスタントコーヒーを淹れてミルクとのバランスを考えたり ナウマン象の愉快な曲芸の夢をみることだってできると思うんだ にんげんの赤と緑と青の感知能力の混乱が 色覚異常になってしまうのかもしれないがそれでも怯えないで 色を見分けてゆきたいと思っているんだ 朝飯を作る間に洗濯機をまわして 自分も世界もぐるぐる廻って つい値段で買ってしまった白菜の白さに ざくりと包丁を入れて 一日をはじめようと思うんだ ---------------------------- [短歌]窒素またはアルゴン/梅昆布茶[2012年10月18日21時52分] 銀翼の先が震えている絶対零度の闇のフライト 期待値の乱高下近似値の生活相対値の憂鬱 固体にもなりきれず水のようにも流れない不活性な期待 城砦のかなたにかかる月澄み渡る理想液体の夜 デカダンという夢想の階段昇りつつ太宰の恋の月見草に似て 乱切りの食材楽し寝乱れた夜を溶かして味噌汁の湯気 薄墨にながれるままに暮らしつつふと生きづらさ歌に託して 朝まだき街の寝起きのゆるやかに夢を断ち切るきみの唇 組曲と一日をつなぐ通底のモチーフになってよ澄んだ魂 天文薄明地平線の下には世界の淵の坩堝があって ---------------------------- [自由詩]朝の天使が見えるなら/梅昆布茶[2012年10月20日16時02分] 抱きしめたくなるような朝だ 今日の空から当番の天使が降りて来て鐘を鳴らす 空色のビイドロ細工の世界はいつものようにカーテン越しに 光の言葉で瞼を押し上げてひと時の旅を促がし始める こんな日は人生が不思議な色あいで さらさらと流れてゆく気がする 昨日のコンビニでの諍いなんてシルバービームの魔法で雲散霧消 とっておきの約束を今日だったら出来るだろうさ 打刻された封印は僅かな心のちからで外し得るもの 不毛の夢はいつか遠ざかり 忘れた歌をとりもどすほら 無常の岸辺を洗うさざなみを知っている君は 寸断された闇の記憶をたずさえて 生きてゆかねばならない それでもこんな朝だってあるってことさ 今日も自分のためにミルクたっぷりの インスタント珈琲をいれてあげるのだ 整理のつかないままに生きてゆく そんな毎日だって結構なのだ 生活の過不足を問う前に自分の比重ははかったか 朝の小鳥のうたの意味を語れないまま生きていないか ときどきは考えてみるんだ 大したことじゃないっていうかもしれないけれど うまく言えないけどとっても大事なことかもしれないって 思ったりもするんだ 舳先に砕ける波濤は海の領域の広さを 知らしめるもの 夜の夢を忘れないででも その虜にならないで珈琲の 渦の中に今日一日を 溶かし込んでゆくんだ ---------------------------- [携帯写真+詩]田舎の虹/梅昆布茶[2012年10月20日16時49分] 田舎だからといって 素敵な虹が出ないわけではない 田舎だからといって夢がないわけでもない 田舎だからといって人っ子ひとりいないわけでもないのだ 田舎の虹が素敵なように田舎の恋だって 負けてはいけない 秋枯れの大地にだって根を張って生きて行けるのだ 虹は優しく分け隔てなく田舎の空を飾ってくれるんだもの (写真はちょっと夏っぽいけどごめんなさい。) ---------------------------- [自由詩]レインボーブリッジを渡る風/梅昆布茶[2012年10月23日20時28分] きょうレインボーブリッジを2度とおった ゴールデンゲイトブリッジは世界有数の橋だが カリフォルニアの海風は太平洋を渡ってきっと お台場の空を見ているにちがいない つかの間サンフランシスコ湾への想いがよぎる 行ったことのない夢のカリフォルニア 葡萄やオレンジやカレッジガールズの日なたの匂い そう雨の日なんて無いんだよ こんな雨の日なんてね ジムモリソンのクリスタルシップが燦然と陽にきらめいて空を渡ってゆく それは死にむかうひとすじの夢幻の冷たい炎 ダンシングスクールの悲劇のニュースがモハメッドのラジオからながれてくる ヴァインストリートではソングサイクルが金色に咲き誇って ミュシャの神秘とアールヌーヴォーと乾いた農場の午後 レインボーブリッジに風は強く吹いている 僕のこころの裂け目をもふきぬけてやがて大気圏を循環するながれになってゆくんだ 空気を震わすグッドバイブレイション 彼女はとてもクールだし カリフォルニアサンシャインそしてフレッシュエアー 宇宙に気流があるとしたらそれはきっと 無数のこころの隙間をすり抜けて火の鳥になってしまった 風の形見なのかもしれない ---------------------------- [自由詩]沙漠と薔薇/梅昆布茶[2012年10月25日19時14分] さらさらと無限にかたちを変えてゆくもの どくどくと体の中を対流するもの ぼそぼそと語りかけるもの ろうそくの科学で薔薇の庭園を飾る   スズメバチの襲撃を警戒しながら僕たちは生きている  空から降りてくる言葉に翻弄されて 穴のあいたバケツを打ち鳴らしながら 僕たちはまたフランス革命を起こさねばならないのかも知れない せつないラブソングが街に流れまたクリスマスがやってくる エルトンジョンがピアノのうえで踊るように また今宵も踊ってみせるだけ 定義を定義する作業はもう沢山だ 欲しいのは小粋なひとつの歌 風を孕んで星を歌うのさ 沙漠が美しいのは何処かに井戸を隠しているから 言葉が美しいのは心の井戸にふれるから 言葉が酷いのは空しさを知らないから 手のひらが暖かいのはきっと 誰かの手が凍えているから たった一本の薔薇を見つけるために 僕たちは5000本の薔薇を育てているんだ そしてそれを沙漠に植えたりするんだ 君に貸した本の間にこっそりと挟んでおいた ラブソングを聴いて欲しいんだ 人生が美しいのは たった一篇のラブソングがあるからなんだ ---------------------------- [自由詩]緑の丘を越えて/梅昆布茶[2012年10月27日21時20分] 僕らはやって来た 山脈を望む高台で自身の未来を仰ぐべく 正中する太陽の指し示す影を追って 南の肥沃な低地には生命の修羅があって 過剰な欲望が溢れていた 充足の幻影が従属であること 薔薇の庭園はいつか死滅すること 言葉は何も伝えないことに想いを馳せて 敢えて北を選んだ そこには正当な死があり それに反照される生もあることを 望んでいた 絶望は選択ではなくただ自分の流れを 放棄することにあるのだと信じていた 等高線で塗り分けられた世界は今何を求めて 静まった夜に発光し続けているのか アクターばかりが演者ではない舞台は たやすく他意の無い悪意で暗転し 路頭に迷う役者ばかりが右往左往して それでも晴れやかな午後をまっているというのに 沢山の反戦歌があって 申し訳程度の慈善があって 一族の末裔かもしれない僕はというと でもねハードロックカフェで酔い潰れていた魂を 乞食の晩餐で踊っていた馬鹿な自分を なんでもなくどこにでもあるような 着衣のランチに誘ってみたかったんだ 無常のなかで家族とか大好きな他人とか いつもつまづいている彼女とか 僕はこの世界のあるいは自分の視点を得るために 言葉をたぶんつづっている でも結局さ いつも大好きなのは あなたの仕草なんだって ---------------------------- [自由詩]教訓2013/梅昆布茶[2012年11月1日19時35分] 赤字国債という名の鳥 誰かの晩餐のフルコースが 過剰に国家予算に計上され何かを詐取してゆく 零細な階層があるとすればかつての巨大な墳墓の地下 王が黄泉の国でも安穏に暮らせるよう生きながら埋められたであろう 毎年生まれる百万人のゲットーの私生児たちは 母の子守唄を聴いたのだろうか あるいは帰らない恋人への嘆きのうたを 悲しみに名前がない様に貧しさにも棲家がない どこにでも転がっている流木のように 陽に晒されたひとりひとりなのだ 美が均衡と静謐にむかって穏やかに充実すべきものなら 心が悔悟のない判断者だったなら 時間が公平な略奪者であったならば 二万五千年前の遺跡から発掘されたもの 全身を美麗に装飾されて埋められた子供は すでに残酷な違和で飾られていたのだ 言葉であえて混沌を表現することは 帰結と終息を孕んで次なる階段をも示唆する 狂気は解決を求めるあまりに逆流した正気なのかもしれない 極東の片隅に浮かぶ美しい国 人々は笑いさざめき手に手に花を持ち 礼節を重んじ学を尊び朝夕の挨拶を喜ぶ 友の為には敵と差し違え親と子の為には心臓をも差し出す 街という街は美しい言葉で飾られて不穏な歌は 子供でさえも歌わない 港には希望という名の船が様々な宝を満載して 時を待たずして入れ替わる権力者の冥土の土産となる 国も故郷も場末のスナックで使い果たしてしまったキリギリスは もう何も憂えないでただ冬にむかって鳴くのさ そう今日も黒い鳥が電信柱の上で 僕らの貧しい屍骸を待っているんだもの ---------------------------- [自由詩]アゲインスト/梅昆布茶[2012年11月4日5時34分] 歩く 胸を突く風 あなたは以前のようには僕の女ではないのだ 不躾にちょっと悲しいへの字の眉を見る 触れる優しく疼くようにでも のこるのは思い出だけ きっとわかっていたんだよね でもねいつだって風はアゲインスト もうあなたの季節が過ぎて 懐かしい癖が僕のくせになって そんな風に時は溶けてゆくんだね 朝から韓流見るなよな 子供捨てて韓国に行けば 僕はと言うと 愉快な夢ばっかり見てる 今日も空ビンがあいたそう 安ウイスキーがね どうだっていいことだろうけど ---------------------------- [自由詩]夜半の雨/梅昆布茶[2012年11月6日16時46分] 刻まれてゆく季節 夜半の雨は痛みをともなっていた 言葉で綴られる感情には限りがあるのか ややもて余しているこの存在と日々 ただのスランプなら人生にはいくらだってあるさ いままでやってきたじゃないか 肩の荷を降ろせない 背負い込むこともできない 彫刻のような街に透き通ってちょっと凍えて それでも煙草の赤い火にちょっとは 暖められるのだ いつかは話し合わなければならない現実に 捨ててゆかなければならない塊に 選択せざるを得ない日常に また会いに行くのだ そう混沌には慣れているのさ 引き受けるのは自分だって事 もちろん知っているから またいつものコーヒーを入れて 一息ついたらスターターのキーを回すんだ ---------------------------- [自由詩]はずれた音/梅昆布茶[2012年11月7日6時35分] 家にどうしてもチューニングのあわないギターがあって まあ中古のフェンダーステージキャスターというやつのアンプ内臓ミニギター 先輩のショーさんにきいたら直すとけっこうかかるんじゃないって答え その人は自分でギター調整できる人なんだけど 大宮ロフトの上階にある楽器屋に頼もうか でもそんな余裕も無いままここ数年生きていた 時々いたずらにギターをかき鳴らすだけのど下手なお馬鹿ではあるが やはり音のあっていない楽器って微妙に気持ち悪いものだ 思うんだけれどチューニングのあった生活ってあるのかな あわないままで生きてしまっているけどその違和感て いつも頭の隅でごそごそうごめいている つきあうのに慣れればって言われちゃうとそうなんだけれど 確かにいつもは日常に紛れてそ知らぬ顔もしてくれるんだけれど いずれにしても歪みのかかった音はすきじゃあないようなんだ ヘビーロッカーじゃあないんだし たまにはアランフェス協奏曲のような ほどよく静謐でととのった音色が聴いてみたいだけなんだ ---------------------------- [自由詩]見分けるちから/梅昆布茶[2012年11月8日16時22分] 美しさがある見えない糸の整列にあるなら その糸の端っこをちょっと引っ張ってみたい その僅かなゆるみが美しさを引き立てるのだろうか 謎解きが残された人生が美しいように 言い切らない余韻も言葉を美しくみせる あるいは時の彼方のノスタルジアを優しく呼び寄せてくれるもの 激しく輝くもの魔的な誘引力のあるもの そうなにかを喚起するものたち 目を惹き付けるあなたの仕種や秩序と統一や静謐に満ちた庭園 ある完成に近づいてゆく気配 真実とはそういったものすべての総合点のことなのかもしれない われわれが心地よさの別な側面を善とか美とか呼ぶように そういった求心力は独善とはまたちょっと違って 柔らかで力強くもあって欲しいと思う 光を見分けるちからが欲しい 魂の計画書や星座のエピソードのように 意味を与えてゆきたいのだ 花や岩や風の声を 読んでゆきたいと思うのだ ---------------------------- [自由詩]上手くいかないこと/梅昆布茶[2012年11月9日1時56分] いっぱい有りすぎて涙も出ないのさ 彼女に子供ができてでも僕に仕事が無いこと あるいは仕事はあってもやつらとうまくやれないこと 詩の題材ならいいが現実は どこにでも有る歌の通りだ ぼくは歌わないそんな暇もないし ただね それがいい状態だとは決して 想っていないんだってこと わかって欲しい 僕らはどうすればいいのか 立てのりで パンクの世代の その子供なんだぜ 僕らには愛と差別しかなかった 国って はじめて聞く言葉だ 無法ってなんだい それを取り締まる国境はあるのかい 俺たちの土は誰のものなんだ 飯も無いひとびとは いったいもともと 誰の親だったのか そう 僕のじいちゃんだったんだ 死んじゃったけどね そのサイクルを ずるく使っちゃいけないんだよ 責めるわけじゃないけどね ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]僕たちは何ものなのか/梅昆布茶[2012年11月11日1時35分] いつもスポーツとメカニズムにはコンプレックスを持っていたと思う。 でも好きなのだ。 たとえば本当はクイーンがとかカレンカーペンターが大好きなのにあえて反骨のかたちを 繕っていたのだろう。 だってポールモーリア好きだなんて言ったら革マルあの怖いでもちょい好きな姉ちゃんとか 民青の女子衆に白眼視される恐ろしさ。 だって今でもそうだけど世界の半分は彼女たちなんだぜ 大きな声では言えないけど彼女たちが本当は世界を創出し支配している筈なんだ。 男に渡してる企みでいずれ母体の無いものは衰退する。 男が能書きをいうわりに女は黙って(?)主張する。 言葉の多さではない。 社会的に認知されるかどうかなのだと思う。 例えば詩に方向性を設定するのは結構だ 枠組みで括るのも自由と思う でも何か枠組みができそうな時に警鐘を鳴らすこと 流行り歌のワンフレーズで 気づかないけどちょっとポケットかなと思ったら ちゃんとつたえて欲しい だってそれが詩人でしょ。 ぼくはアイルトンセナが永遠のヒーローで 鉄道の陸橋を撮影スポットにしている世界って大好き。 それを否定するとがたいの大きな後輩が ちなみにやつの趣味ってガンプラ 僕は詩を愛しているが だって近所には そおいう曖昧な言葉で ものを買える店もないので。 でも 大好きです〜。 ---------------------------- [自由詩]辻音楽師/梅昆布茶[2012年11月11日22時29分] ゼンマイ仕掛けの時間は 古い鳩時計みたいに装飾されてさ 彼女だって珍しくつけまつげをしてる 僕はピンクのカーテンの裏側は何色か考えてる 演奏者の孤独と陶酔 空から蜘蛛が降りてくるなんてまるで デビッドボウイかブライアンオールディーズみたい 月が周回をやめてその闇を埋める巨大な蜘蛛が 行き来しているそんな世界 僕や君はサイバーに管理され試験管で生まれる たぶん悪夢ではない現実なのだろう いま沖縄の高齢者がPTSDだって おふくろもいつも函館の大火の想いでが夢にでてくるって 本人は死んじゃったけど たぶん人間ってバランスで生きてるんだろうな 進化の過程で僕らは記憶あるいはそれにともなう感情のありかを 微妙にバランスをとって生きてきた でもこころのネガに焼き付けられた物ってあるんだろうな 戦争の是非を問う立場ではない でも悲しみだけは共有できるかも あした配達する会社は倒産した でもみんな社長も奥さんも息子知ってるけどさ そういった処理の膨大さに打ちのめされてしまったり 僕は誰にも心的外傷を与えたくない 誰にも愛されなくても そんなものだ ヘイベイビー大好きな海見に行こうぜ ---------------------------- [自由詩]サラダそば/梅昆布茶[2012年11月13日15時05分] いちおう様々な料理らしきものは食べてはいるが いつも冷蔵庫の残り物から逆算してメニューが決まるような気がする この前は大根一本が処理しきれずおでん風の鍋 その前は残った豚コマですきやきみたいな鍋 ときどきは茄子とピーマン にんじんと長ネギ入りのマーボー豆腐 もちろん何食分かまかなえるように嵩ましして なるべく一鍋分つくる 独り者のやもめは自炊する場合には 極力省力化をはからねばならない だってけっこうやる事って多いのだ かなり手抜きはしているのだがそれでも いつも無限に家事がのこっているような気分だ 今日はサラダそば 冷凍のそば一玉に期限の切れそうなキャベツと長ネギあぶら揚げちくわなど それにレタス海苔大葉をお好みでトッピングしてマヨネーズ わさびすりゴマ七味などでアレンジしていただく それなりにゴキブリよりは豊かな食生活をしているつもりだ 野蛮ななりに料理哲学もあったりして ただ客観的に評価してくれる第三者がいないのがちょっと怖いのだが そうこのままどんどん怪しい方向に偏向していってしまうかもしれない もうそろそろ社会的にはまったく認知されていない怪しい料理教室も あらたな方向性を見出すべきなのかもしれないのだ ---------------------------- [自由詩]アストロナビゲーター/梅昆布茶[2012年11月15日21時49分] 狩猟民族としてのあるいは 遊牧騎馬民族の遠い遠い血が流れているのだろうか トラッカーだけれどカーナビなんて要らない iPadでGoogleMAPだけで探索し移動するのが得意になった いわゆるドライバーの地図見はあまりしない この前都内のコンビニで ここしばらく愛用していたコールマンのリュックを置き引きされたのだ なにも入ってはいないのだが 使い古した関東のロードMAPと 遠近両用のマイ眼鏡 不細工シンプルなコールマンの分厚いキャンバス地のごわごわが いつかトレッキングという夢を繋ぎとめていたのだ 人生に壁は無いと思っている だって壁作ってるのは人類自身なんだって 売ってもいくらもしないコールマンを けっこう必死で奪う人がちょっとせつなかった そんなのいつでも言ってくれればあげるのに ただその心根の在り処をきちんと 受け止めたいと思った 心や美意識や社会性 そういったものは幾多の文明から導き出した あるいは長い進化の過程で それは隣のおじちゃんチョット変な人かな なんてつまんないことの集積 心臓がバクバクする恋も政治も無いなら 僕たちがせめて馬鹿の火口をつくること それが幻想の ナビゲーターの 小ちゃな 灯りなのかもしれないんだ ---------------------------- [自由詩]ゆだねるもの/梅昆布茶[2012年11月17日23時00分] ぼくは誰の遺志でいかされているのだろう ふとおもったのだが 生物の基本原理は摂食と生殖 僕だって変わらない 人生や愛に聖書が無いように 僕たちは風に翻るのだ 遠く越冬する鳥たちは 自然と進化の哲学の翼を持っている 本当に風の力学や この惑星の心は あの岬のかもめにきいて欲しい いつだって僕たちは風にふかれている 優しかったりときに残酷だったり でもそれを自分の原理として受け止めなければ 生きては行けない 整合なんてないのさ 辻褄合わせが生きること それなくしては人も愛せない 何かを担ってゆくこと たとえそれが生であろうが死であろうが いまぼくにふさわしいこと ついやした人生にせめて 言葉の少ない詩人でいられればと 思うのだ ---------------------------- [自由詩]風と美術館/梅昆布茶[2012年11月18日10時32分] アクセルを開ける しだいに風景がうしろに遠のいてゆく 風だけの世界だ 僕はすべてから解放されている 一瞬彼女の指を想う 届かない距離にある白さ ただ優しい仕種で 微笑んで欲しかっただけなんだ 随分遠くへきてしまった かえるあてもないなら いっそ風になってしまおう 僕は画集の頁をめくる風だ マンセル表で色を見分ける必要はないさ 僕自身が色彩だもの 公園の噴水のまえでやすもう そして踊る君を見たいんだ 小さな声で 口ずさんで欲しいんだ 愛の色を ---------------------------- [自由詩]弥生会計/梅昆布茶[2012年11月20日14時31分] またささやかな給料日が来て しばしの間は 生き延びられそうだ いっそのこと 草間弥生さんにでも出向してもらって 赤い水玉の流通する世界で生きていたい 部屋の隅のワゴンには読めない本や あまり聴かなくなったブルースロックのDVDや なぜか使うこともなくなったのに すうねん前のスヌーピーのぽち袋が あったりする 縄文人のように木の実の採集や 遡上してくる鮭や小動物を狩猟して 火焔土器でもつくろうか ときどきぼーっと見ているテレビのイタリア語講座で ロッテリアというのは宝くじの意味なんだってわかった もちろんロッテ系列のファーストフードチェーンの意味も かかっているんだろうけど YouTubeに草間弥生vs荒木経惟の対談がアップされていた どうせわからないと思って見てはいないが こんどきちんと見てみたいとおもう 友人が送ってくれた草間弥生のグッズを ときどき眺めている 独特の世界と生命観が けっこう皮膚感覚のようにやってくる 岡本太郎も然りだが なにか根源的なエネルギーをもたらす 呪術的なオブジェでも 部屋に置きたくなってくる 後輩から貰った初音ミクの 可愛らしいフィギュアよりは いまの僕にはよっぽど必要なものだと おもえるのだ ---------------------------- [自由詩]デスペラード/梅昆布茶[2012年11月23日20時51分] 深紅の薔薇を投げた夜 いくつもの吐息をかさねていた 僕達の想いには名前がなかった そんなもてあました悲しみが 僕達は好きだった いくつもの季節を共有し 違和を閉じ込めた小箱を持っていた 憎しみという熱いかたまりさえも 飲み込んでしまった日常は もうあきらめかけた 色をしていたっけ 旅立つ日はいつも雨なんだ そびやかした肩にきらきらと 滴が光るんだ もう若くはないし ふんだんな時間は過ぎてしまった もういちど待っているものを さがしに行こうと思うんだ せめて君の 手の温もりが 残っているあいだに ---------------------------- (ファイルの終わり)