梅昆布茶 2012年4月22日13時53分から2012年6月24日0時37分まで ---------------------------- [自由詩]旅立ち/梅昆布茶[2012年4月22日13時53分] 長いスロ-プを滑り落ちてくる記憶の思いがけなさに ふと足をとめて目の前をよぎる影を追えば 短くなった日時計は正午でとまったままうたたねをして またあの回廊へといざなってゆこうとする この場所できみの影を見つめ心の痛みを知り 大理石の柱に密かな罪のしるしを刻んだのだが いま再びぼくたちは手足のないトルソ−の眼差しで 夏草のいきれを共有しているのだねここでいませつなげに この回廊は無限に遠く彼方に連れ去ってゆく風 何も確かには存在しないし夢の破片さえも 砂に埋もれてゆく哀しみのよう 導かれるままに石畳を踏み冷たげに湧き出る泉のほとり しばし足を浸せばまたあらたな旅立ちの予感 この場所できみのことばの響き心にとどめて 歩き始めるよこの世界をたった一人で 優しい孤独とともに雲を浮かべた空の下を 微笑みながらも ---------------------------- [俳句]軋轢/梅昆布茶[2012年4月22日17時50分] 給料日またもや上がる摩擦係数 柿の種噛みつぶすのは癪の種 イエスノー枕最近イエスも忘れかけ 山の神箱根駅伝速いかもね ダイエットしてどうするのと言いそびれ 幸せにすると誓った紀元前 無常観出家せずとも身に染みて トリカブト植物図鑑に妻の影 誰に似た子供の遺伝をなすり合い 軋轢は愛のしるしと諦める ---------------------------- [自由詩]魂の浄化のレシピ/梅昆布茶[2012年4月25日20時24分] まず魂のくせを矯正します 今世のくせも後で清算する予定ですが... とりあえずお世話になった想いの数々に手土産のひとつももたせて さっと湯通しをします その際肩をおもみしても構いません 長年の労をねぎらう気持ちが大切です エクソシストまではいりませんが 軽くしおを振るのもよいでしょう 一昼夜ほど風通しのよい処で陰干しします 希望や嫉妬や絶望や失意がほどよく分離したら ひとこと感謝の気持ちを伝えましょう それがすんだらあたりに充満した想いを ダイソンのサイクロン掃除機で一気に吸い取ります なにも残らなくてもいいのです それが実態ならば あなたにもぼくにも後悔はないはずですから ---------------------------- [自由詩]藍について/梅昆布茶[2012年4月27日3時12分] ときどきは会いたいね ところで思うんだけど 藍色の自分がいて それは愛にもなれるし 遇いもつかめる 2音素のaiという母音は 子音を携えて色を変えてゆく それがあなた 貝のようにおもったかもしれない 犀のようにゆうかんでもある 肺のように大気をじゅんかんさせ ときにパイのように甘く 舞のように優雅 すべてあいいろのあなただ だからぼくに藍の可能性を 教えてほしいの ぼくはいつもそれを楽しみにしているんだもの ---------------------------- [自由詩]花をたむける/梅昆布茶[2012年4月29日8時26分] あさひばり月の弓から放たれて飛び 川面より一筋のひかり朝靄を切る 遺伝子のテーマかかえて君を想うその先にあるのものはなに? 奪われしすべての愛に花を手向けん 回答をさがしてみようと思ったけれど 化粧映えあまりにテーマが重過ぎる かたつむり蛇にかえるにコラーゲン君のはだならすべてあうはず 絶望さえも夢のうち廻るよきょうも火の車 祈りしかないのにやっぱり生きている 言わぬ誰かに依存しながら じゃんけんを忘れた頃に番がきて お地蔵様にきいてみる ---------------------------- [自由詩]卒業/梅昆布茶[2012年4月30日21時16分] 愛という甘美な束縛に身をゆだねることで ひとはみずからくるしみを選ぶのかもしれない 虚ろな自由よりは五感を満たす快楽が 存在の証となることを 本能的に知っているのかもしれない 国が侵略された時に鋭く叫ばれる 自由と独立のエネルギーはなまぬるい平和が約束された日には その輝きを失う アメリカという国家は「世界平和」のマニュアルのもと 自由への脅威の旗を掲げ自分たちの利益を損なうものたちに 本土の安全なコントロールルームからロボット爆撃機で 愛に満ち溢れた打撃を与え続ける民主主義の神なのかもしれない ブル-ススプリングスティ-ンの BORN IN THE USA の熱狂と(本人の意図は逆だったらしいが) オサマビンラディン殺害の歓喜の表情には いくども利用され続けてきたあの時代の 圧倒的な心理操作の臭いがしないか 尾崎豊が歌った卒業... 仕組まれた自由に誰も気づかずに あがいた日々も終る この支配からの卒業 戦いからの卒業 いまさらにこの歌の意味をぼんやりとでも わかったかもしれないなんて 恥ずかしいけれどね ---------------------------- [自由詩]言葉の旅人/梅昆布茶[2012年5月3日18時19分] ぼくたちはことばの国のたびびと 遥かな源流から ひとひらの花びらが流れてきてそれは あらたななまえを与えられて言葉となる ぼくたちは森を抜け荒れ野を辿り 大地から漏れ出た溶岩流に閉じ込められた時間を 自分のもののように味わいながら 雲の流れを言葉とする 時にはたわわに揺れる果実の その重さと和毛に手のひらをくすぐられて 歩みを止め感嘆するその想いに 言葉を探す 夜空に散りばめられた世界の断章を 粉々に砕けた古代の骨片を つなぎ合わせて歴史の道程を 言葉で満たしてゆく そしていずれは生命の粒子とこころの成分を 無機の大海のなかから還元し抽出する いのちの錬金術師になりたいのかもしれない 活字をひろうように言葉を組み上げてゆく それはジグソーのピースのように 世界と人生の片隅を意味で埋めてゆく そんな毎日もまたいいものだとか思いながらも やっぱり不器用に積み重ねたレンガを崩しながら つくづくあきれながら惑いながら積み直しながら いつのまにか歳をかさねてゆくのだね そして たびはまだ続く たぶんいのちのある限り 永劫の尻尾を掴まえるまでは 言葉のひかりに触れるまでは 言葉が燃え尽きるまでは あなたと 言葉を交わせるまでは いつまでも ---------------------------- [自由詩]美しき日々/梅昆布茶[2012年5月5日13時52分] 人間も焼けば油が出るわねと腹まわりさする君のしこ名は 妻曰く健診は品質管理の第一歩 ラブレター誤字と誤解は付き物か 懲らしめに柱に吊るした藁人形なれてみればチョット可愛い 五寸釘人形だけではあきたらず 低温やけどするほどにあなたと添い寝がしてみたい エイプリルフール年齢詐称は有りかと聞く妻 ラブチェアーと明朗会計夜の義務こんないい店うちだけね 皮肉か本気か真顔のままで たった一つの願い事あのラブレター反故にしてほしい ---------------------------- [自由詩]ダーウィンの愛したオランウータン/梅昆布茶[2012年5月6日12時41分] ダーウィンはロンドン動物園の小さなジェニーがお気に入り 彼女は言葉を理解しおやつをおねだりし公爵夫人に自分の可愛いドレスを 見せびらかしたり本当に人間の子供のようだった 1832年にビーグル号で南米パタゴニアのフェゴ島に上陸したダーウィンは 恐ろしい顔には白いペンキを塗り肌は汚く油染みて 髪の毛はからまり身振りは乱暴で尊厳の一つもない...人類と出会う 尾と尖った耳をもった樹上性のキツネザルから真猿類をへて この宇宙の驚異と栄光である人類が生まれた いまや宇宙船ビーグル号は空想科学の宇宙で1000人の科学者と軍人を乗せて 銀河間を飛翔する チンパンジーは枝をかみちぎってシロアリの塚に差し込む 僕達はiPodに何千曲も入れてシャッフルしても一生に一度も 聴かない曲もあるだろう 僕達には世界樹の一番はずれの 風通しの良い枝のうえで昼寝できることを 最大の幸福だと感じる自由が 許されてるとおもうのだね  進化論とは関係なくぼくのお月様はときどきおやすみを言ってくれるし 星の王子様なんて箱根にミュージアムまでできてるんだぜ 言葉は誤解の源なんだ 砂漠が美しいのはどこかに井戸をかくしているからだよ なんて言葉が流れてるのかもしれないな そして14万3000年前の人類の共通の祖先である「アフリカのイブ」は ビートルズのルーシーから名前をもらったんだってね でもビートルズは進化論で幸せになんて唄ってないとおもうし ダーウィンはジェニーをお気に入りのままで おいておけば良かったのかもしれないな ---------------------------- [自由詩]買い物/梅昆布茶[2012年5月8日1時50分] 母のおむつと尿漏れパッドを買う 要介護度3でデイサービスと訪問介護で 助けてもらっている 食べ物にたいする執着がつよくなっているようだ それが生きるということなのかもしれない 子供たちのおむつやミルクを買って帰ったあの頃は いずれ破綻することも知らぬげに 子供たちは育っていった 彼らと過ごした時間がなんだったのか 今はなまえをつけないでおこうそれは そのままでいいのだとおもう 買えないもののほうが多いのは分かっているのだが せめて買えるものを買ってかえる それが生きるということならば ---------------------------- [自由詩]たいせつなもの/梅昆布茶[2012年5月9日22時12分] あなたはそれが 遠いところにあるとおもっているのでしょうか 海にわきあがる雲をみているように 自分にはかくれてるように感じたのでしょうか 風が蒔いていった種はどこかで芽吹いて きっとそこには春がおとずれるのかもしれない ミモザやオジギソウがやわらかなあいさつをかわす春が そういつもそれを願っているのです つたえたかったのは あなたの呼吸を静かにたもつように あなた自身をととのえてほしいということなのです また深い憂鬱のくさりでじぶんを縛らないように 自虐のやみを引き寄せないようにいのっています たいせつなものをひとつづつきちんと選んでゆかないと このままでは失速してしまうのですよ あたしを大切にしてくれないというあの人や認知されてないけれど愛する子供 そしてライブのよるに忘れたあなたの黒いヒール 執着するなとはいいませんただきちんと選んでほしいのです 捨てたいものを次の項目の中からひとつえらんでくださいな 1 ウオッカがないと眠れない夜 2 男運のわるいじぶん 3 みんなとワイワイやりながら過ごした飲み会 たぶん無理にでも捨てなければいけないものだって あるのです ひとつひとつ多少間違ったにしてもエラーを消去していかないと あとにもさきにもすすめないとおもっています 血も涙もないわけではないのです ほんとうはとてもかなしいのですよ 曖昧なのが好きなのよねなんて言わないでくださいね だったら僕にしあわせって何ってきかないでくださいな 相談してくれるのはかまわないのですが ぼくだってほんとうは あなたのたいせつなものに なりたかったのですから ---------------------------- [自由詩]しるし/梅昆布茶[2012年5月13日5時42分] 古本のあいだにみつけた四葉のクローバー これをはさんだのはどんなひと 幸福をひとつ逃したのかなあ それならかわりに僕がもらっておこうか きみの幸福の受信感度は良好かな 太陽にはいま怪物級の黒点群が発生中だってね 水素ばくだん10万〜1億個の威力の 太陽爆発が電波障害をおこすんだって ずっと電波障害だって... そりゃあお気の毒 曾祖母がイタコというあるセラピストのブログには 地球号のビッグイベント金環蝕 エジプト時代からの金星の時代が終わり 新しい太陽の時代へと変わります 今までの価値観が総崩れします お金に依存しそれに価値を見出していたひとは苦しみの時代に突入し 人々がまったくお金とは別なところにしあわせをもとめるようになるのが こんどの5.21からはじまる新世紀 価値転換の時代...らしいのだが 僕の立ち位置はびみょうだなあお金も欲しいしな でも金環蝕が新次元へのエンゲージリングならば それは受け取るがわのこころしだい 四葉のクローバーにしあわせの予兆をおもうように ひとはじぶんの文脈で世界を読み解いてゆくしかないのかもしれない だとしたらできればせめて創造的な読み手でありたいと願うのだ 人間はことばの意味をひらいてゆくちいさな造物主 世界に意味とことばをあたえてはじめて世界から意味とことばを かえしてもらえるのだろう さらに言えば意味とは内容だけではなく はたらきとかやくわりとでも言おうか うまくはいえないんだけど  いつかそれをうまく伝えられればいいなって おもっているんだ とりあえずは朝から オアシスでも聴いているさ 開け放しの窓からのかぜ 四葉のクローバーはひらひらと 部屋のすみに舞った ---------------------------- [自由詩]グルーミング/梅昆布茶[2012年5月15日23時21分] さわれないことば 冷えてゆくかけがえのなさ いつもとぎれてしまうモチーフ あたたかいスープもないテーブルでは 君の影がゆらめいてみえる ほんとうは君の髪にふれていたかった ゆびがいたくなるほどはてしなく やさしい時間にこころとからだをゆるめて 魔法のエンドルフィンの陶酔に 世界を凝縮してしまいたかった ぼくたちは進化のかたすみの霊長類 動物行動学の痛々しいサンプルではなく 理科室の人体模型の兄弟でもなく そう僕らの車椅子にははねが生えているんだって いままできづかなかっただけさ かなしい親愛のしるしは ありきたりな携帯メールの絵文字のなかで 燃え尽きてしまったねあとかたもなく 僕はきみとの社会的共存と和解と ちいさな序列のためにきょうも きみのやわらかなうなじやその 光に映える髪に すべてのきみに 指をすべらしていたかったのだ ---------------------------- [自由詩]文明の仮面を剥ぐ/梅昆布茶[2012年5月19日2時22分] 無欲な晩餐会でかわを剥がれて丸焼きになるな せめて生き延びる手立てを身につけろ 降り注ぐ暗黒の汚物は人生のソース 世界の淫らなリソースアンドてり玉バーガーセットは ぶたのストラップのおまけ付だぜ 文明の仮面をはいだばかりの生乾きの皮膚で 渇いた暗黒の風土となるな もう偶成はやめだ 夜の宿ではいい女が待っている 取って置きの暗渠がね シタールの伴奏付の涅槃さ 大陸の向こうでかなでるバラライカ もういちどペレストロイカ 難破船の羅針盤は北北西に進路をとって めざすは未来都市ブラジル或いは北京の秋へと プロコフィエフははたしてフレディの技巧的な ピアノ表現をこころよくおもうだろうかそして ことしの宇宙のベアははたして僕たちの 空走距離を埋め合わしてくれるだろうか 回答はすでにパブロフの犬の 条件反射のなかに誰かが仕組んで あるのかもしれない ---------------------------- [自由詩]謎の真実/梅昆布茶[2012年5月20日2時13分] おもうんだけれど すべての真実はきっとどこかの看板の裏にでも ちいさな文字でこっそりと書いてあるんだ ぼくの夢の中の沙漠の入り口で老人は言ったのさ 誤解は理解の種 迷妄の畑にも真実の苗は育つって 本当の時間が時計の文字盤ではないように 事実の集積が現実ではないのかも知れないな 僕達は個別的偶然的に不条理に愛するのさ だって君の恋人ほどわがままで冷たい生き物は 動物園にだっていないぜ でも世界はロマンのない劇場だなんて 早合点しないでくれるかな いつになったら生活楽になるかなあなんて せちがらいメールをぼくがしてるなんて思わないでくれ それは彼女と僕の間の秘密だから きみにだけは言っちゃうけどね ロミオとジュリエットという酒場があるの いつもそのロマンチックなネオンをみるのだけれど 想像するだけでじゅうぶん なかに入ろうとは思わないし もしシェークスピアがその後のジュリエットとか書いて たら幻滅でしょう。 僕は嬉しいけど。 だけどさあ...もんぎりがたの文部省推薦の恋愛よりも 下世話な恋愛生活のほうが高度な技術が必要な気がするんだ たぶん今必要なのは誤解を正解にしちゃうような 茶目っ気たっぷりないさぎよさじゃあないのかなあ きみにはそれがあるようなきがするし たとえば花嫁がぼくらにとって一瞬の華であるように 僕達は二次会のもぎりの半券をもって残りの人生をいきねばならない そんなリアルな日常のなかから あらたな恋愛哲学をあるいは 絶望の美学をまなばなければならないのかもしれないのだね 僕の個別的例外的な真実がきみの恋愛生活に応用できるとは思わないが でも時々はきみが思うとくべつな真実もこっそりとおしえて欲しいんだ それがきみの生きるスキルの核心だと睨んでいるんだ 隠さないで教えてくれよ一杯おごるから だってきみの生態はぼくにとって謎だらけなのだもの え...真実はいつも謎だって そんなつれないこと言わないでさ... ---------------------------- [自由詩]爬虫類の時代/梅昆布茶[2012年5月22日22時28分] 想像のちょうじょうから降りてくるものがあるんだ 延髄から降下してゆくエレベーターは脊髄を各階どまりで 総なめして行く黒い影をともなった魔術的旋律なのだ 人間が理性なんて持ち出したのはつい最近のことさ 古代インドのウパニシャッド哲学やアリストテレスや墨子とか 長くて短い生物の歴史のついさいきんのトレンディードラマ みたいなんだろなそういうかんがえかた 攻殻機動隊やマトリックスだって ピンホールを通して像が倒立することだって 木漏れ日と部分日食のふしぎなメッセージだって 理性と悟性の違いだって ほんの日常的な手品のたぐいなんだね ぼくの心臓がドキドキしたんだ きみが廊下を曲がってきたからね 早鐘だってあんなに打ったらこわれちまう ぼくに理性なんてないしょうこだよね 世界は手の届くものと無限より遠くにあるものとで構成されてるって はじめて気づいたのもあのころさ ぼくはぽちと話せるのにきみとは話せなかった 石のつめたさと夕べの星ととこぼれそうなこころ 退屈をおてだまにしてあそび呆けてひとりきり 自転車とぽけっとには時の化石 ぼくたちが駆逐していくのは色褪せたあいどるだけじゃあない やさしいとさかをもった爬虫類は いつしか風化し歴史という図鑑の中の 一枚の挿絵になってしまうのさ ---------------------------- [自由詩]Woodstockと宇宙船/梅昆布茶[2012年5月23日16時29分] 学生服で横浜野音のロックフェスティバルにはじめて友達と行ったのは 田舎からでてきたばかりの冴えない俺 両想いだったかもしれない恋も風に紛れてどこへやら 彼女は僕とは別のさわやかな青春のむれのなかにいた 盗んだバイクで走り出せない俺はともだちを値切り倒して 改造スーパーカブを手にいれる いまだったらトレンディだったかもなあ 乗っていたのは怪気炎渦巻く廃棄寸前の宇宙船アルバトロス 安下宿で安ウイスキーと下ネタつまみに くだまいておだあげてトイレで吐き続けたくそ星間ワープな日々には 誰もが何かを教えてくれたし何も教えてくれなかった 充足した渇望と飢餓だけで生きていた だって変化は前に進むことだって勝手に思い込んでいたんだもの いつも瑣末なものに足をとられながら 荒野の狼を夢みて吉野家の牛丼と学食のカレーの香りに満ちた風と アジビラとアジ看の粉砕と闘争と勝利のとがった文字が ちくちくと眼とこころに痛かった ジミヘンドリックスがストラトキャスターを惜しげもなく燃やし 酒とブルースとTバックのすてきな温度に拍車をかけたように 悪魔を哀れむ歌がいつも背景にながれていた時代 墓標もたてずはなむけの言葉さえ思いつかずに すぎさるにまかせたすべてのきらめきを いまふと思いかえしているのは きょうが休みで暇なせいなのだが この5月の不安定な天気ににも似た 気まぐれのしわざなんだろうな ぼくの老朽化した宇宙船にもちいさな休息が 必要なのかもしれない ---------------------------- [自由詩]彼女/梅昆布茶[2012年5月27日8時53分] かろやかな韻を踏んで彼女はやって来る きせつのすべてを引き連れて 草原や潅木の露をあつめたりミツバチたちと あかしやのはちみつをつくるんだとか 神殿の壁はまだひんやりとして小さな蛇がやすんでいた 旅芸人は眠りから覚めあさげのしたくをはじめる そのやさしげな髪はなだらかにうねり ちいさな後悔を日の光でとかしてくれる 動物たちは水辺であさの喉をうるおし よるの魔物は地の底でやすむ そうこんな時間には 福音はだれのものでもない やさしいことばだとおもえるんだね きょうという日はぼくらのために ささやかな驚きを用意してくれている そんな予感に満ちあふれたたゆとう時間のなかに ふんわりとうかんでてもいいんじゃないかな まるで一日のはじまりに やさしく髪をなでられているみたいに なみなみと注がれたミルクを飲み干すように ひかりで満たされるのさ そうこんな彼女がまた くりかえしやってくるなんて すてきなことだよね そうおもわないかい ---------------------------- [短歌]待つ/梅昆布茶[2012年5月27日20時52分] のみかけのコーヒーにまた水足して待つ午後の日差し 16分音符じゃ足りないと時間まで切り刻むピアノ白い指 白鍵と黒鍵は隣り合わせの不幸だねって笑うきみ ドアをあけてから遠い時間をあるいてすわる 相席よろしいですかと風にきかれたきがする ふるい蓄音機からながれてくるきみの足音さびし歌かなし 体育座りとさびしさの相関関係を式であらわすなよな 研究室ことしの課題は溶液中の愛の濃度の分布あるいは それを読み解くためのおいしいデザートのレシピ ---------------------------- [自由詩]アドバルーン/梅昆布茶[2012年5月30日12時25分] トレンドに流されない確かな価値。 究極のエコマインドという誇りをあなたも。 最新竪穴住居(ロフト付)!残り5棟。 隊員募集中。健康で演技力のある方。 経費削減のため武器の使用を控え怪獣を 泣き落としたりするので…。 ヒーローでもないのでルックスは不問。 ウルトラ警備隊地球防衛本部 募集。鉱山技師。 業務内容。飛行石鉱山の開発。営業。 浮遊都市の維持管理。空中庭園のメインテナンス。 地底旅行のガイド。火山の掃除。 人材派遣。いつまでもどこまでもあなたとともに! 冥途のとも。人生の整理。仇討ち。温泉旅行。 ヘボ将棋。ただしスタッフはかならずしも人間とはかぎりません。 また通常生前の名前を使わせていただいております。 (株)添付スタッフ ---------------------------- [自由詩]あたらしいものたち/梅昆布茶[2012年5月30日21時38分] あたらしいものにはまだ名前がない 形もあまり決まっていないしそれはたぶん 人類が歴史のなかへ隠しておいたものを あきらかにするようなようなかたちではみえててこないのだろう 冷蔵庫のドアに貼ってある付箋の文字のきみの固有名詞の響きが 普通名詞とならんで僕からはうすくて遠くてせつないように それは熟練した鉱山技士が本命の鉱脈をひたかくしにするように 支脈のまましばらくたたずんではぼくたちのちょっとでこぼこな ことばの整列の中へそっと寄り添ってくるものなのだ あたらしいものがことばを求めるのかあるいは ことばがなにかえたいのしれないものの輪郭を炙りだしてしまうのか かつてわかっていたものではない あるものが胎動を始めるのを感じとるのだろう それは定形不定形にかかわらずある意志を持ってそこにある 気配なのだ ほんとうは君の唇からもれだしてくるものは 僕たちが経験の連続性というかってな仮説で歪めてしまっている あるたいせつなメッセージなのかもしれない 名前があたえられていないからといってそのものが 存在しないわけではない 僕たちの頭の隅っこに影のようにうずくまっているそれは いつか言葉を得てゆくのだと思う そしてそれが血肉化した日にはまたさらにあらたな あたらしいものを要求してゆく ことばやことばの示す世界の新陳代謝はこれからもつづくのだが果たして それとともにぼくが変わってゆけるのだろうか? このまま凝固してしまわないように わかったものをわからないものへと変換する 強烈な無知でありたいものだ ---------------------------- [自由詩]仲間/梅昆布茶[2012年6月2日20時29分] ぼくはわらう きみもわらう ふたつのわらいは似ていない けれどもきみとぼくはいま仲間だ きみとぼくの痕跡はまったく違うが たまにおなじ涙をながす ふたりとも最近猿よりもいささか利口になったが 道徳的とはいえない きれいな身なりをしてたまに出かけるのさ そして天然なふりした打算とデートするのさ 良い習慣だろう? そしてぼくたちの誤算ぐらいどうってことないさ ふたりはシャム双生児のように仲良く 同じ女をはらませるのさ 愉快だろう? だれかが言ってた 仲間ほどすてきなものはないって そう君も迷わず 仲間を見つけることだね ---------------------------- [短歌]おはようサラダ/梅昆布茶[2012年6月3日7時20分] おとしぶみと言う虫に託す詩集ひとつ恋愛論のなれの果て ストリートミュージシャンにあすを尋ねるどのコード進行で生きるかと 炎天下脳みそは妄想やめて夕涼みプラタナスの鈴の葉陰に 初音ミク僕より稼げるボーカロイドへやの隅でフィギュアがクスリと DNAヘルメスの杖蛇がからまる錬金術の生命のくさり タイタンに湖あるなら白鳥は?メタンがかなでるチャイコフスキー いっぴきのミジンコのなみだイーハトーブの水力機関車 別れ話かれと彼女も係争中ソフトバレーのつぎの一撃 はなげとははなしなげーよの略と知るサラダセットは草食カップル への字なりに埒あけさせて西鶴が世之介の夢傾城のよる ---------------------------- [自由詩]おぼえてる/梅昆布茶[2012年6月7日2時02分] なかなか顔と名前が一致しなくてごめんね でももう時が来たのだね なにもかえせなかったのに 君が担いだにもつおもそうだった かわってあげられないけど許してくれるかな でも自由を手に入れたんだね あしたもまたヒースのおかにたたずんで 君が降りてきたそらをながめ やさしいかぜを感じてるだろう この星は豊かな水と無限のいきものと 土のおもさと変化する炎と大気の呼吸でできてる 笑いと涙とちいさなジョークのうえで ちょっと焙ってやれば食べごろだ きみの名前がうまく発音できなかったし きみのようには心で話せない ぼくたちは不器用な地上の生き物 最低で最高のランナー でもここで愛をはぐくんでゆく 活版印刷で大量に刷られてのりとホチキスで 製本されたペイパーバックみたいにね おぼえているよ きみが落葉の丘で編んだ タペストリーになにを織り込んだのか 風にどういう歌をおしえたのか ぼくたちはしがない アンダーカバーエンジェル 永遠におとり捜査を 続けてゆくんだもの ---------------------------- [自由詩]夕餉/梅昆布茶[2012年6月7日22時02分] 今日もあせをかいて老母と 子供たちと彼女のあしたのかてを用意する 支払いが間に合わないことなんてたいしたことじゃないさ 金星はゆうゆうと太陽面を通過して 菊地直子もつかまった 消費税も上がるだろう 世界はひとつの結論で快適に倒置されて 僕の部屋の懐かしい乱雑さも 荘厳に維持されてゆく なんて悲しい夕暮れだろう もうラッパを吹いたとーふ屋のおじさんはいない びっこの犬が長いかげをひきずって 原子炉の建屋とのっぺらぼうの海岸線のあたりを彷徨っている H.G.ウェルズが想像のなかで描いた太陽の終焉と 暮れかけた赤黒い風景のなかでうごめく異形の生命のように なにかに支配されてねむるような足取りで 僕はこの悲しい混沌を整理したかった そして敬虔な異教徒の夕餉を 血だけがつながっている あるいは血さえもつながっていない家族たちと ともにしたかっただけなのだ ---------------------------- [自由詩]ともだちになってよ/梅昆布茶[2012年6月12日21時23分] ベイビーこんな雨の日は ひきずるようなブルースをきくんだ だから ともだちになってよ それとも懐かしい曲で こころを満たすかい ベイビー3弦がきれたよ へやのすみには 弾かない楽譜がたまってゆく リフレインが雨のようだね ことばはぼくらをばらばらにしてゆくんだ だからあいしてるなんて言わないで ともだちになってよ 僕達は音のすきまのきこえないものを さがしているんだ だれも聴かせてくれないフレーズで ときどきギターが甘くスライドするのさ 明日の朝僕たちは ジョバンニとカムパネルラといっしょに 軽便鉄道にのってベーリング海峡まで うしなわれたコードをさがしにゆくんだ ビートルズの Free As A Bird がながれている 1977年のニューヨーク My Bonnie がロックンロールしている 1961年のハンブルク 三匹のクールなのら猫が ロンドンの裏通りをほっつきあるいている ワイマールのシャルロッテにゲーテが恋をした頃 キェルケゴールやニーチェなんてのは種もすがたもなくて レディーガガだってきっとへんてこりんな帽子はまだ かぶってなかっただろうな 錬金術師が賢者の石やホムンクルスの研究に没頭して ブラッドベリの霧笛にかなしい怪物がでてくるんだね そう ビートルズがロンドンで カンサスシティーを歌っていた頃 僕はまだこどもだったんだもの それはうそだけれども だからともだちになってよ お願いだから こんな雨の日にはね ---------------------------- [自由詩]古書店/梅昆布茶[2012年6月14日2時53分] トラックのエレメントとオイル交換をしてもらう 33万キロも大地をかけぬけた偉大なポンコツだ いきつけのスタンドの早川さんとちょいしもねたジョークで あいさつして笑いあう こんな日常もいいかもしれないなと思う デリケートないすゞ車より無骨で無口な三菱車が おれにはあってるみたいで じみで頑丈に生きれたらいいなとおもったりもする 車庫にトラックを戻して切れているマーカーのバルブを求めに かえりみちにあるホームセンターに寄る その近くに気になる古書店があって市街から離れているし 駐車場もないのでたぶん客は向かいにあるローソンに 車止めてるとおもいそれにならう かんばんはなく三か所ぐらい 壁?にK古書センターというペンキの らくがきみたいな字でへんてつもない店名が かいてあるのに最近きがついたのだが たしか大昔からっぽの世界なんかをうたっていた ジャックスというバンドの早川義夫というひとが川崎で 古書店をやっていたような... それとか椎名誠のさらば国分寺書店のオババの タイトルやら 御茶ノ水駅から下っていって石橋楽器やディスクユニオンを過ぎて スポーツ店が見えて神田古書店街のはしっこ 源喜堂とか書泉グランデとかの風景がいっしゅん あたまのなかを去来する たぶん20数年ぶりに見たおやじは脱サラで店をはじめた頃より 当然ふけているのだが 息子はまったく店を継ぐ気はないという いまは人生と本の在庫の整理にはいっているという たぶん70前ぐらいの温厚なおっちゃんだ 昭和30年だいの週間アサヒが1冊50えんとか 謡いのほんらしき和とじの山積みになったものが1冊200円とか ぼくはたぶん小学館だったと思うが日本古典文学全集のてるおか康隆監修 井原西鶴3冊がほしかったが だって1冊350円なんだもの アマゾンでは5000円ちかくするはず だれにもないしょだけれども でもまだ4月分の家賃の払いも残っているので とりあえずあきらめる あとは東山魁夷のセットもの4000円とか 美術書も一冊2〜300円で山積みなのだ 掘り出せばもっと怪しい本とかもでてきそうだが... 親父さんが言った あんたやる気があるならおれのあとつぐかい? ノウハウはおしえるからさ... そしていま半分ぐらい本気で 考えてはいるのだが ---------------------------- [川柳]哀しみのおやじ/梅昆布茶[2012年6月17日4時16分] 増毛剤カタログふえても髪増えず 亜麻色の髪の乙女に足踏まれ 夜が来る妻の叱咤の恐ろしさ おじ散歩犬と一緒に立ち小便 借金のかたに妻をいらないか? 足摺岬とこずれの母思い出す 麻原にポアしてほしい某議員 パパだっこなついたむすめを誰が抱く 妻旅行むすめデートでぽちと俺 指名手配のポスターよりは福山似 むかしから繊細だったと妻が言い ちゃぶ台返しやってみたいが恐ろしすぎる ---------------------------- [短歌]水脈/梅昆布茶[2012年6月21日22時55分] ぼくときみは違う水路をたどって岩に孵化する山椒魚さ 無限のかがみの列から零れ落ちたひとひらのきみの笑顔 体温をかんじながらぼくらは越境する夜よ冷えろ この曲をききながら羊水のなかに浮かんでいた夏 発信音とだえてもどる静寂のなかできみのうたごえ 夕餉の食卓ぼくたちに逢いに来た知り合いの腸詰めのあいさつ さようならはいわないでぼくたちは最初から遇っていなかったんだもの だいじょうぶきみは玉入れで一番だったからってなぐさめる秋日和 存在の違和をなでさすりながらいっちょうまえのふりをする異和 なにかがつながってなにかがはなれてゆくそれって無常? 離心率>1 ぼくらのコバルトブルーの双曲線はかなしみに突き刺さる 地下に水脈があって僕らの血はたぶんそこにつながっているんだ 空から降りてぼくのこころのFおさえてまたかえってゆく優しさひとつ (返歌の返歌です。ありがとうございます。) ---------------------------- [携帯写真+詩]ぴんなっぷす/梅昆布茶[2012年6月24日0時37分] ぼくのたいせつなピンナップは 可愛いおんなのこでもなく こころを満たす風景でもなく 人間たちという お芋の写真 肉じゃがになったり カレーに入ったりして みんなおいしく生きてます いも堀りって楽しいよねぇ きっと芋になるのも楽しいはずさ ---------------------------- (ファイルの終わり)