梅昆布茶 2012年2月17日1時01分から2012年4月22日3時51分まで ---------------------------- [自由詩]もう戦争には行かない/梅昆布茶[2012年2月17日1時01分] やまない雨 ひとりぽつんといる すべては遠のいているし この部屋できみという花が萎れてゆくのをじっと見ている ふりしきる雨はやがて氷雨となって 言葉を紡いでゆく フィルオクスというソングライタ−がいた 76年に自殺したがよい詩人でもあった 彼は戦争は終わったと歌って自殺したのだ 容姿もよく皆に好かれた彼には何の悩みがあったというのだろう 過度の繊細さのほかには ボブディランと並び称された彼は真のプロテストソングを歌い それでも神経を病んでいたのだと思う コマ−シャルを嫌い吟遊詩人の魂を貫いて死んだのだね まあ僕は生活に病んでいるだけなのだけれどもね 彼の旋律は昔の恋人に会うようにやさしい いちばんすきなのはジェイムスディ−ンの歌だけれどね ちょっと切ないピアノのイントロがとても胸をうつのだよ とても良いバラ−ドだね 彼はギタ-の6本の弦で愛を奏でる僕の指針 彼は歌った 愛のためだろうがどんな言い訳のためだろうが 俺はもう戦争には行かない 絶対に行くもんか ---------------------------- [自由詩]はなみずき/梅昆布茶[2012年2月17日2時10分] ぼくは7にんの子供を持つろくでなしだ 僕の精子は世界中の女の子のパンティに染みをつける狂気なのだよ いつもアウトサイダ−だったしヒーローは似合わないみたい 缶けりの鬼はいつも僕 誰もいない夕方の裏通りを泣きながらだれかを捜しているのだね 人間失格をよんで寺山修司を愛していたのはずいぶん昔のことさ 今はっていうとやまてどおりをスクランブルする魂なのだね 宗教もないしあばずれと遊ぶ羊なのさ 夜は明けてゆく僕とは関係なしにね そらをおしあげて僕がいきれますように 僕じゃない誰かを愛してるきみが成就できますように はなみずきのように美しく咲けますように ---------------------------- [自由詩]接続先/梅昆布茶[2012年2月18日1時11分] デリカのハイル−フが僕の儚い夢を載せて走っていたあのころ 僕は孤独だった 家族に見捨てられて行き場のない猫のように彷徨っていた はしごをはずされた愛という幻想を必死で回復しようとしていたのかもしれない 人生の奈落なんてこんな程度ではないとわかっていながら 空走していた 日給月給の労働を外国人労働者たちとしていた 陽気な仲間といてもやはり孤独だった 仲良くしていたトルコ人の若者に言われた 故国をはなれてる僕たちよりもあなたはさびしいってね たしかにそうだね宇宙一孤独だって思っていたもの 休みの日にはパラグアイの日系2世の竹内くんやブラジル人のフランキ−なんかとフリマによく出店したっけ 気を紛らわせるためにね でもまあそれなりに楽しい日々でもあったね 様々なところで様々な人に会った 日本人外国人ずるい人優しい人値切り倒す人泥棒 なんか人間の展示会みたいだったな 僕にとっては祝祭日だったんだね もちろん採算なんてとれるわけもないし でも出かける家族のいないぼくにとってけっこう慰めにはなったのだ 人肌のぬくもりをわすれないためにもね 僕の回路はたぶん心と体を経由して他人とつながっている 寸断されてもそれは常に接続を模索してゆくもの さて今日の接続先は誰なんだろうかね また新たな接続を この回路は求めているんだね それとも接続先はありませんという冷たい言葉で 却下されるのだろうか ---------------------------- [自由詩]待ってる娘/梅昆布茶[2012年2月24日6時20分] ぼくの人生はだれが采配してるのかな 彼女に言われたの あたしは結婚も恋愛もあきらめていたからいいのってね 時々恋をしながらでも恋に遅れていたのだね ぼくの中には数億から数兆の愛があってそれを読み解くために言葉をつずる 愛のために愛をいつも失っていたのかもしれないね 確実に僕を愛してくれる娘 子供が4人もいてさ僕になついてるの はすっぱな女はさんざん好きになったしもういいのかなあ でも僕はこれを完結させなければならない 愛を証明しなければね それが詩人のやくめだとおもっているの 空をみなよぼくのかえるところってさあの辺のあのあたりなんだよね ---------------------------- [自由詩]無言のひと/梅昆布茶[2012年3月2日5時22分] まず人間であって微笑んで はたけを耕している 最後までたがやしている無心に 野良ぎがやぶれていたってかまわない 無心はかたちや定義をこえているから そしてひとのはたけまでもまったくかわらず てつだうのだ そしてすべてのはたけは作柄がいいのだ すてきじゃあないか ---------------------------- [自由詩]時の遠近法/梅昆布茶[2012年3月2日22時14分] むかいに洋館のある静かな広いとおりに面した 千原さんという掛け軸と刀のある名家の末裔らしいこじんまりした家の裏手の 片隅に石炭スト−ブのある一間に母とあねと僕は父の仕送りで暮らしていた みぎへドンドンいくと函館湾沿いの自衛隊の駐屯地 ひだりへどんどんいくと路面電車のレールを踏んで五稜郭にいたる閑静なとおりには ぼくの母の実家や僕の柏の小学校や孤児院もあってそこから出てくる白い服を着た孤児たち 友達もなんにんかいた それを見守るポプラ並木や青年刑務所や母や叔母の通った広大な遺愛女学校の敷地があった ぼくは自分が貧しい子だと知っていた でもポケットの中には10円玉をひとつもっていた 駄菓子屋に走る そこはパラダイス いろとりどりの小さな輝く魅惑的な星ぼしがちりばめられた おばさんが店番するそばを市電がとおりすぎてゆく 窓から手をふっていたのはだれだったかしら 時をさかのぼって風景をさがす心はかぜをはらんでなにをまわすのでしょうか ぼくのあのときのちいさな小路をまがった先には 詩の子鬼があの青空をゆびさして 嗤っているのでしょうか ---------------------------- [自由詩]夜の病院で/梅昆布茶[2012年3月4日2時13分] 仄暗い廊下に時々夜の天使のように 夜勤看護師が羽ばたく 世の中で最も偉大で逞しい美しさが 老人達の 人生という点滴を 繋ぎとめにゆく また鳴るナースコールは誰のための 子守唄なのだろう 天文学的な数のベッドは無限数列の愛で きっと守られてゆくに違いない もし僕がオムツやパジャマを替えてもらうなら 優しく辛抱強くちょっぴり初恋の娘ににたひとがいいな だってさ死にゆくってことはさ 思い出の消去法なのだもの 君はいちばん最後に消したいのさ そしてきょうも夜の病棟は 初恋の人の名が飛び交って やさしいナーステイションからはナイトフライトの合図が 響き続ける ---------------------------- [自由詩]2次元方程式の彼女/梅昆布茶[2012年3月4日14時26分] 君を前から見ると普通にかわゆい 後ろから見るとなかなか良いお尻だ でもさあ 横から見ると何も無い それは可愛い実存的謎だ 類推するに君はこの平面だけの愛すべき生きものなのだ 君を立体にするにはどうしたらいいのだろう エアブラシでもって陰翳でもつけてみようか 君がいうにはあたいは三角関係や四角関係の中心なのよって 確かに君と寝た男を観察すると皆さんヨコから見えない 僕は本当は安い男達にチヤホヤされて喜んでいる様な安い女に なって欲しくなかったのだよ まあ妹を案ずる兄ってところかな でもさまた確信犯にやられちまったし いつもそう 2次元方程式の回答ってそんなもんさ あたしは男運が悪いのっていつか言ってたね それは違うって何度も言ったはずだよ 何度もね あたしは遊ばれたのかも知れないけれど その時彼があたしを必要としてくれたのなら後悔はしていません 彼がかえって来るのを待っていますって言ったって まず帰って来ないから確信犯なのさ そうやって君はまた前向きに あたしを大事にしてくれる人をさがすんだね 2次元方程式のメビウスの輪のなかでね ---------------------------- [自由詩]直感と推測/梅昆布茶[2012年3月6日0時24分] ぼくは君を体験する=君を直感する 君と一緒にいる間は少なくとも僕の5感は 柔らかな声やよい匂いやあるいはちょとひび割れた唇なんかを 間近に観察することができる 君と別れたあとはぼくは君を推測する 直感で得られたデータをもとに 君がいまでも僕を愛してるかどうか推測するのだ 科学は推測の世界 実験や計算で推測の結果を提示するもの 愛の科学は成り立つのだろうか 知らせようという意志がこもった言葉が詩だとしたら 昨日の君の手の感触についてそれを継続的に僕のそばにおきたいとか 君の誕生日のためにオリジナルのキーストラッブをつくったのはなんのためかとか 例えば知らせようという意志がこもっていれば 犬は何語だろうと理解するらしい 彼女も理解するだろうか 直感においては昨日の彼女はおおむね僕の宿命論でもなさそうだし 自由意志論寄りに3段重ねのソフトクリ−ムにチョコトッピングして 子供のようにはしゃいでいるあたたかいどうぶつなのだよね いつものようにね 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そして時にはただ詩的だというだけで キメラ・クローン・遺伝子 生命の発生・進化をめぐる研究の歴史 とか 友達の数は何人? ダンパー数とつながりの進化心理学 などという本を 題名の響きだけで借りてしまうのだ 古代の器や石器が僕を魅了するように それらは人生の謎を深めせせこましさという呪縛からときはなってくれる H.G ウエルズのタイムマシ−ンやデロリアン号とまではいかないにしても 存在と時間と生命と宇宙と海と空を想ういのちを満たしてくれる 少なくとも僕にとっては最高の 人生の特効薬だとおもうのである ---------------------------- [自由詩]ゆうべに釈放されて自由を想う/梅昆布茶[2012年3月10日3時51分] かつて収監されていた何故 どの小鳥の羽根をもぎとった罪なのか それとも母を殺し身内の愛を根こそぎに うりとばしてしまった哀しみのせいなのか 外への出口は自働ドアだ ドームの外へ踏み出すとそこは沙漠 銀色の細い月が夕闇にかかっていたさ 無数の生きものが その息遣いを夜に満たすのさ そして眠りにつくまえの祈りをそれぞれにくりかえしてゆく ここがこの星系の何番目の惑星なのか 或いは衛星でもあるのか 僕はなんのためにこの夕暮れの中に釈放されて どういう自由に あるいは新たな呪縛に愛されてゆくのだろうか また償うべき罪を重ねてゆくのだろうか 監視カメラのない自由のように いまは夜にまぎれてやすみたいのだね 君を迎えにゆく頃には 僕は小さな沙漠のトカゲになっていると思うのだね 冷たい石のトカゲにね ---------------------------- [自由詩]光の彫刻館/梅昆布茶[2012年3月11日1時52分] 八丁湖に近い里山の中 築130年の古民家をマスターが再生させたという 彼は光の彫刻家漂泊の魂 彼のミュージアムで光の芸術を見せてもらう 暗やみのなか中心となるオーロラ様の赤を基調とした3次元のオブジェは その周りを衛星のように取り巻く5つの小さなオブジェと 微妙なシンクロで暖かな焚き火のように 光の踊りを舞う そんな陰と光の小世界の不思議な時間と空間を暫し旅する そう言えば以前新宿南口の沖縄料理店で浜田澄子さんという画家さんと 飲んだことがあって彼女の作品のテーマはアンビエンス なんだか彼岸と此岸の境界みたいな意味らしい 大胆な青を貴重とした色使いで和紙を使った コラ−ジュ作品も輪郭のはっきりしたものだったし 彼女もさっぱりした中性的な美人だった でもラルフタウナーとかブライアンイーノとか音楽の話ばかりしていたっけ ああいうアート系の人といるといつも一個か二個か頭のネジが吹っ飛んじゃって あちらの世界を彷徨うのがつねなのだけれども 光と陰の小世界を出るとそこは森のなかの静かなカフェテラス コーヒーと手作りケーキ付きのおしゃれなランチをご馳走になる なんと僕には似合わないシチュエーションだろう 隣には友人のジェロ向いにはジェロのバソコンの弟子で24歳の女の子 いいさ人生ってあの光と陰の小世界みたいにグラデーションしてくんだしさ 時には導火線に火をつけてくれる人に会うのもいいもんだよね ただ自分が壊れない程度にね 光の彫刻館はひょっとして僕のこころの森のなかにも ひっそりとあったのかもしれませんね あの優しい光の世界はね ---------------------------- [自由詩]中途半端な夜に/梅昆布茶[2012年3月12日22時17分] 夢見ることが ちょっと億劫なのです ピアノをポロんと弾くように 言葉がこぼれます 僕を待っているものがなんであろうと きっと仲良くなれます 暦の明日に色を塗るとしたらどんな色がよいのでしょうか それとも いつか君がくれた未来への言葉を貼り付けておきましょうか 僕のさびしい窓辺には小さな花が必要なのかもしれません ただ咲いていて小さな意味をしっかりはらんでいる 薄紫の花が だから今夜もそんな花の夢をみるでしょう きっとね ---------------------------- [自由詩]今日の記憶/梅昆布茶[2012年3月14日20時21分] 君に捧げた花束が枯れた頃 約束した季節の巡りがやって来る頃 君の筆跡が薄れてくる頃 僕の影ばかりが遠くに伸びて ぼんやりとした輪郭のままに生きてゆく もう一度問い直す言葉の端から ついばんでゆく時間の小鳥 思い出という名の残酷さを 風化させてゆくのもやはり 空や風や光や雲をうごかしている何か むこうの通りはつむじ風 こちらの通りはにわか雨 飄々とふんわりと懐かしくやさしく 立ち止まって空を見上げて また歩き出そうか 今日という記憶を忘れないように ---------------------------- [自由詩]診察室/梅昆布茶[2012年3月17日2時48分] 僕は病んでる自分を疎ましく思ったり でもいとおしくもある 診察券にはだいぶ慣れてきたし 人間て病んでて当たり前なのかも知れない 検査着に着替えて腹部CTをとる さらには超音波でいろいろしらべられる 肝臓は肥大してます あれだけ飲めば当然さ 胆嚢は炎症の跡があります そう救急車で運ばれたもの 膵臓にはちっちゃい膵石がみえますがガンになるようなものではありません 腎臓は大丈夫ですね ぼくの信頼する山田先生が言う 酒とタバコはやめなさい 食事は脂肪を控えて野菜中心でね 豚カツとかフライとかバターとかマグロとかは なるべく摂らないように でも僕はこっそり食べていたりするが それくらいの罪は許してほしいのだが 仏陀は達しがたい四つの目標について説法したという 正当な方法で得た財産があること 社会に尊敬され求められること 健康で長生きできること 死後 幸福な天界にうまれること そしてこの希望が叶うことは稀有であると 経典のなかで明言されているそうな 僕はいちばん最後のだけでいいかなあ いやいやみんなそこそこに求めたい 山田先生の前にある僕の腹部CTの内臓を眺めながら そんなことをぼんやりと思っていた ---------------------------- [自由詩]DNAの息子/梅昆布茶[2012年3月18日22時16分] 僕たちはDNAの命じるままに歴史を漂流し拡散してきた 朝露に濡れた森の匂いに 木漏れ日の暖かさに まっすぐ空に突き刺さるメタセコイアの高みに 想いを託してきた 僕たちは恋愛という幻想のなかで種の保存のメカニズムに 操られる哀しい詩人なのだろう 木の実を集め獣を追い集落をつくり女を孕ませ子供を守り 法律をつくり建築術を編み出し生活の調度を整えてきた 2進法の電脳文化を作り上げてさらには またヴァーチャルの森をさ迷おうとしている SNSで友人を増やし自分をもっとこまぎれにしてゆく アフリカの母をルーツとするホモサピエンスは 脳の新皮質つまり社会的スキルにたけたメスと 闘争本能に満ちたオスの大脳辺縁系の融合した集団的進化心理学の産物なのだ その未来はコンピューターのようにブロセッサーとメモリー容量で 規定されてしまうのかも知れないが 僕は歴史的誤解でも良いから 脳の本能的な部分が命ずるままに詩を綴る 僕はホモルーデンスでもなくホモモビリタスでもなく 君に伝える為の何かをきっとDNAに刻まれて生まれてきたのだろうね 死ぬまでに遺伝子の暗号をダヴィンチコードのように解析できたなら 新しい言葉の地平線を開くことができるのかも知れないね そう言葉は意味を超えて何かを予兆してゆくのだろうね ---------------------------- [自由詩]想春賦/梅昆布茶[2012年3月20日22時04分] 報われない愛を僕にください 届かない手紙を僕に書いてください 安っぽい言葉でもいいからささやいてください 僕が必要だって言ってください 思い出します君の柔らかな薄紅色のマフラー 近づいて来る花の精におもえて 優しい約束のようにもおもえて 胸がいっぱいだったのを憶えています 君の視線が何を見ているのかは知っていたけれど 君の瞳に映るものが虚像かも知れないなんてやっぱり言えなかった 僕の瞳はガラス玉のように虚ろなのかもしれません 遠い雲を浮かべたままのあの空の断片のように孤独なのでしょう 野の花のように吹き渡る風のように光に満ちた水面のように 愛おしさを繋ぎとめておきたかっただけなのです やがて時が明らかにするものを何と呼びましょうか 寂しい微笑みでやり過ごす時間を何と名付けましょうか 今はもう君が僕を何と呼んでいたのか思い出せないのです そしてもう呼ばれる事もないことも知っているのです すべては春の旋風に巻かれるように 些細なものだったのですね ---------------------------- [自由詩]1983/梅昆布茶[2012年3月22日20時09分] 空は突き抜ける様に青かったし俺のバイクは相変わらず 走り出すまではやけに重かった 時々はビニールレザーのシートの上に安っぽい天使が 休んで煙草をふかしていたりするのだけれど それでも自由を愛を平和をのんきに夢見ていた 彼女は愛らしくてでもめっぼう気も強かった もちろんたまにはわがままも言ったけれど ボディブローのように後から効いて来る女だった 桜の並木道は空を薄紅に染めて俺たちもそんな夕暮れにしばし 足を停めて二人桜色に染まる小指繋ぎながら 幾つもの別れの言葉噛み殺しながら そんな横顔焼き付けるように ためらいながら望みながら心彷徨わせたまま 言葉の替わりに音楽があってビートの合間に伴奏のように意味の無い 挨拶を交わすぼくたちには北極圏の白夜のように 一晩中明るいままの休憩なしのライブショウさ 聖子ちゃんのハイトーンの歌声が流れる街に赤いスイートピーをさがして 粗悪なウィスキーで身体を傷めながら路地裏で吐いていた 1983 僕は相変わらず生きている 壊れかけたアンプでささやかな想いや切なさを増幅させる 人型アンドロイドタイプ3 分類パターンHG-55 特性 抒情過多情緒不安定 汎用自働修復回路に多少のバグあり どう生きてみたところでファジーなんです人間て 世界がわがままに見えるのはきっと自分がわがままなのですね 真の自由は得るものではなく なるもの なのです ブッシュマンが服を着ないのは彼らの正しい生き方なのでしょう ---------------------------- [自由詩]珈琲と朝と/梅昆布茶[2012年3月25日9時51分] 僕たちは有限な生を生きるのだけれども 異なった価値観の人生をそれぞれの主観で生きるしか無いのです だから自分で思い込んでる真実なんてたいしたものじやないのですね 僕は人に無駄と指摘されながらも 空っぽな愛という妄想で生きていました 不得意な分野なのにモグラが空を飛ぼうとするように 無理な約束事に縛られて怪しい森の中を歩いていたのです かつて好きだった人に言われました 自然でいいと思うって 壊れるものは壊れ生まれるものは生まれ 人間のコントロールできる範囲なんてたかがしれているんです 僕たちが日々懸命に得ようとしているものが 逆にあらゆる哀しみ苦しみを無限に生み出してゆく 人生ってほとんどは相入れないわがままな主観どうしの すれ違いの繰り返しなのかもしれませんね 不完全な自分を再認識し続ける事によって僕たちは 他人にとっては別な真理がある事を理解するのです ただ無常なものを価値付けても比べあっても意味がありません 君の夢をみたよあの場面はね 小さな舞台のように僕のいないまま 展開していったね 僕の言葉は君に通じない君にさわれない 宙ぶらりんな浪費される時間を そっと君に返してあげたい 君はもう他人に惑わされないで生きてゆきなよ 明日の夢は見ないで昨日に引きずられないでね 今をきちんと生きなよ だれかに依存したってきっちり結果は自分についてくるもの 居場所を確保する為に他人や自分を騙さないでね いちばん傷つくのはあなたなのだから ---------------------------- [自由詩]自立する親父/梅昆布茶[2012年3月27日23時05分] 今さらその年で自立もないのではあるが おやじなりに家族やら仕事やら北政所のご機嫌をとったりの 相互依存の日々を懐かしくおもいだすのであった 自立する以前にまず家族からほっぽり出されてしまったのではあるが いまだに独立の旗を離さずにいる様なお馬鹿なのである つい先日まではちょっと恋愛気分の 気持ち悪いおやじであったけれど その実力どうりまた敗戦を重ねて今シーズンも期待薄らしい 人並みに生きる辛さを嘆じたりはするけれど 基本的にはのーてんきなのだが 人間の執着心が行きづらさや哀しみの原因ではないのかと最近思っている 物や人や移ろい易い事象にこだわっても自分で自分の檻をつくるだけ わかっていながらあの娘の檻にだけは入りたいらしい ほんと馬鹿はなかなか治らんのー 自由や幸福は排他的な束縛のなかにはないのでしょう 生まれてから死ぬまでに僕たちは身の廻りに様々なものを集めますが 頼りになるのは自分だけなのですね 自分のなかに灯るともしびがどういうものかはわかりませんが それは孤独や追っても逃げる幸福や自由の問題やらと 何だか深くかかわっている様な気がするのです おやじのあたまは単純だけれども どうやらおやじの自立は何か無駄なものを削ぎ落として 真の孤独に親しむ辺りから始まる様にはおもっています おやじの自立はまだまだこれからなのですね ---------------------------- [自由詩]詩の時間/梅昆布茶[2012年3月29日3時17分] 僕のなかには日常とは違った時間が流れている それを詩の時間とでも名付けようか 遠いところからやってきた亡くした妹の様に 僕の本当の名前をささやいてくれるもの 日常がすべて散文的だとは限らないのだが そのなかにひそんでいるかも知れないキラキラした結晶を見つけるのが好きなのです 希少金属を発見した鉱物学者のように小躍りしつつ ココロに書きとめるのです 昨日散文的な女友達からmailがあって どうしてる元気?的な フツーのやつ 蠱惑的で自堕落で退屈なデートもいいけれど いつも雲散霧消してしまうあれってさ 結局何も解消してはくれなくていつも 噛み終わったガムのように吐いて捨てるしかないのさ すべての日常がラップのリズムにのせられはしないのだし 出来事すべてを定型詩では伝えられない 路地裏でたむろしていた世間話のいなくなったあとに 缶蹴りして遊ぶ童子達のように 世界を引き寄せて糸を紡ぐそして 哀しみや戸惑いや慈しみとかちょっとした喜びなんかを織り込んで 今日も不出来なタペストリーを 織り上げるのだね それくらいなら君はゆるしてくれるよね? ---------------------------- [自由詩]いちご畑でつかまえて/梅昆布茶[2012年4月1日4時11分] 僕たちは生きてしまっているのでいきていたくはないのです ウェディングドレスはすぐにその役目を終え次の花嫁はいません 君は花嫁の投げる花束を待つように死ぬまでまっているの? エリナーリグビーは教会の結婚式のあとのお米を拾って夢の中で生きるのさ ドアのそばの瓶にしまった顔をつけて窓のところで待つそれは だれのための顔か? 町の道具屋では生きるための道具が陳列棚で僕達を待っている 稼いだGOLDしだいでゲームは変わってゆく 神父の祈りや雷の槌や回復の呪文をたずさえて 僕たちはダンジョンで戦闘に明け暮れるには愛に満ちすぎてはいないか? 少女の赤い風船は風に吹かれて地球の緑の丘を見降ろして 地上の移り変わる地形を3Dでシュミレーションしてゆく それともジュールヴェルヌの夢の気球にのって 地底湖をさがしにゆくの? きみを連れて行きたいの いちご畑へね すべてが夢の時間 あくせくすることもない 永遠のいちご畑 誰が待っているのかな? エリナーリグビーは埋葬され忘れられ 葬儀には誰もこない マッケンジー神父の言葉さえも 彼女には聴こえない すべての孤独は何処から来るの? 何処へ帰るの? ---------------------------- [短歌]ステイショナリー/梅昆布茶[2012年4月1日6時15分] コンパス: 全ての円は固有の中心を持つからちょっとこまるのだなあ 分度器: クリスマスケーキもピザみたいに切れてるとうちは揉めない クリップ: 今流行りのメッセージクリップ 絵文字は象形文字だって言ってたのは泡沫恋歌さんだっけ? ディバイダー: たのむから僕たちを簡単にわけないでほしいのだけれども 三角定規: ニ辺の長さが違う場合長い方は足切りされるのかもしれないな テンプレート: 昔おやじの製図用具の中にあった飛びきりのおもちゃ 板に様々な形の穴のあいたあれさ 三角スケール: 転がらないサイコロ あの三角の世界は周りから独立している 消しゴム: 最近は消しゴムもとても美味しそうだしつかうのが惜しい 付箋: 僕のきみへの手紙はいつも付箋だらけでそのうえキミは付箋に付箋をつけて返して寄こす note: 書き出しだけの日記が何冊もあるな〜 画びょう: 思い出の写真をコルクボードに刺すと痛いのだね 計算尺: 対数はよくわからないが君の体操なら見てみたい ---------------------------- [自由詩]自由或いは生きる意味/梅昆布茶[2012年4月8日7時34分] 病院のベッドに三日間泊まった 聖なる牢獄に三日間も居たんだぜ すごいことさ 可愛い看護師さんは小首を傾げて言った 何処に居たってあなたの生きる不安は同じでしょ そう彼女はとても魅力的でセクシーなグローバルスタンダード 三日なんて短いものかもね でも救急車の着いた処は地獄の三丁目 白衣を着た看守達が今度はどいつの人生を裁量しようか ベッドを空けて待っているの 昨日まで誰かが寝ていたベッドをね 栄華は一場の夢人生は燃え上がる火宅 燃え尽きれば真白き骨が残るだけ 命を繋ぎとめる素敵なシステムは 限りなく不自由なゆめの時間を約束してくれる 希望ある医療 誠意ある看護 の横断幕のある待合室では ときにちょっぴり醒めた眼をして残りの人生を数えてしまう 心は瞬間の五感の外界との交感 二度とはないであろうカレイドスコープの断面を いつも通り過ぎて生きてゆく 病院の長い廊下は何故か永遠に繋がっているようにも思えて 自由への逃走経路のように非常口へ走る人の緑色のシルエットが連なっているようだ でも春野に芽吹くいのちは何故か嬉しくて切なくて言葉にする必要の無い世界からの回答なのかもしれない きっと病室の窓は何かに向かって開け放たれなければならないのだ ---------------------------- [自由詩]aiという音素/梅昆布茶[2012年4月11日23時26分] コトバは音声と意味を結びつけるしくみの総体である コトバの本質は意味を伝達する道具 それはぼくの頭の中の愛という概念を体の生理的機能にしたがい aiという2音素の物理的波動に変換してきみの鼓膜を震わせる それはきみの聴神経を刺激してたんなる生理的信号でしかないaiは きみの脳に知覚され そして不思議な空間をとおって愛という意味に認識されるのだが 果たしてきみのシナプスが火花を散らして飛び越えた奈落には 愛のさざなみが心地良い調べを奏でていたものか? 全世界の愛から抽出された単語としての愛はエロスでありアガペーあるいは慈悲の衣を纏って さまざまの生理的振動数と色彩と音調で救済を謳うのではあるがしかし メル友も含めて5人もボーイフレンドが出来ちゃって忙しいの…(爆笑) おたがいに頑張りましょうね なんてメールを寄こすきみの気がしれないのだけれど コトバが有益な道具として機能する為には話し手の表そうとした(爆笑)が 聞き手にも(爆笑)と理解されねばならないのだが 往々にしてそこには多少の齟齬が生じがちであろう 未だ彼女からのいつも通りの不可解な記号の列をながめながらも 平穏な日々を送っている昨今である ---------------------------- [自由詩]夢の門出に/梅昆布茶[2012年4月15日2時54分] 僕達は旅立たなければならない その始点と終点はひとつの意味のまとまりを持つ 優美な構造体であって欲しい 君や彼女や彼等が互いに意味付けあう関係性の生きものである僕らは 社会性というオペレーティング・システム上で展開されるRPGの申し子 伝説のソードを持て余す冴えない勇者だ 僕達は物事を構成する要素を弁別しその配列と体系を読み取り それらの断片をまた相互のニュアンスの色分けにしたがって 並べ直す作業を繰り返して認識の裾野に風景を組み立ててゆく即興詩人 薔薇をかざらないで その窓辺に姿を見せないで欲しいのです 小さな誘惑で僕の五感を震わせないで 記憶を呼び覚ますうたをうたわないで 朝を傷つけないで小鳥を撃たないで 世界がもたらす意味をそのまま感じさせて欲しいのです そんな朝にしたいのです 遠くきこえるあなたのおはようが まだ夢のなかの僕に柔らかに染み込んでゆくように ---------------------------- [自由詩]こいのうた/2012/梅昆布茶[2012年4月16日20時39分] 生きてゆくちからが 愛するちからがいまもあるならば 笑い転げたあのジョ−クを 思い出してよ 僕の最初のまちがいは 生まれたことだってね いちばん不幸なのは 君と一瞬も離れることができないことさってね あたしたちはビリヤ−ドの赤や黄色の球みたいに 誰かに弾かれて そして誰かを弾きながら ポケットの奈落に落ちてゆくけれど お互いの惨めさや不恰好さを責めたことはなかったよね だって あなたとわたしの生きる文法の違いを知っていたから あなたは洗練された符号のような恋人ではなかったけれど ときどきは思いがけない意味を世界から切りとってみせてくれた たねあかしは後でねって言いながらも 生きてゆくちからが 愛するちからがいまもあるならば  いまは聞こえなくなったあなたの子守唄を くちずさむの 人生はすべての瞬間がたった一回きりのチャンスだなんて アスファルトのうえに ジョン・レノンぽい絵を描きながら パンクって生きる姿勢なんだとか訳のわからないこと言ってた そうあなたはあたしの胸のなか 赤方偏移するちいさな宇宙のスペクトルの輝線の温もり 星間物質の渦が発熱しはじめるみたいにね そうずっと側にいて笑わせてて欲しかった そして明け方の空に 流星群が尽きるまで 待っていて欲しかったの La La La... GO GO 7188 解散へありがとうをこめて...。 ---------------------------- [自由詩]うたのはずれのうた/梅昆布茶[2012年4月17日23時33分] あるひめざめたら さびしいにんげんが さびしいにんげんのあしを ひっぱっていた 高級なこどくが秤にのって じぶんの重さをはかっていた うしろすがたをみるとかみさまだった あるひめざめたら のうしゅようの友人は亡くなっていて 毛布だけがのこっていた その痕跡がいちばん彼らしかった あめのハイウェイはせかいを 静謐な残酷さで満たして ゆっくりと墜落してゆく天使が みえたきがした せかいがたったひとつの言葉から なりたつということもありうるかもしれない それはいま沙漠のすなのなかにうもれてしまって だれも気がつかないだけなのだ あるひめざめたら つくえの引き出しのなかで せかいが死滅しているということもありうるかもしれない そしたらこんどは だれが世界を造ってくれるのだろうか? ---------------------------- [自由詩]海と空とねじれたキャンドル/梅昆布茶[2012年4月22日3時51分] タイトルはブリティッシュトラッドの歌姫 サンディ−デニ−の海と私のねじれたキャンドルというアルバムからいただいた 近所に日本最大級の品揃えの蔦屋ができてそこでいまはなき彼女のジャッケットに遭遇 ジャニスジョプリンとはまた違った意味で懐かしい恋人に出遭ったような想いがよぎる ことばはある意味なにかをしめす符号でしかないのかもしれないけれどもリアリストのためだけの道具ではないし なにやら僕にとっては社会で生きてゆくためのツ−ルとして以上に生きるためのインスパイア−をもたらしてくれるスパイスでもあり しいて言えば主食であるとも思っている 僕たちは自分にとって特別な意味合いを持つものに特別な記号をあたえて特別な意味付けをする 自分の子供の名前はクラス名簿にあいうえお順にならんだ記号より自分にとって上位の 存在であるかもしれない 当たり前のことだが代入できる符号にちかいことばではなく方程式の回答まで塗り替えてしまうような すぐれた創造のたねになることもことばの大きな役割でありちからであると思うのだ 僕の船は難破する阿呆船だ りゅうこつ座のカノ−プスが波頭に隠れ 風が嵐を告げているのに 羅針盤は南の楽園をめざしているのだね ねじれたキャンドルは君の部屋の隅をほのかにてらし 君は物語の続きを読みきはじめる 時間は歩を緩め暖かさにみちる それは素敵なことさとても 人生には暗礁なんてなにもないようにみえる そう暗礁なんてね ---------------------------- (ファイルの終わり)