アラガイs 2020年11月20日23時51分から2022年5月21日2時30分まで ---------------------------- [自由詩]どこまでも透明なルビー/アラガイs[2020年11月20日23時51分] ドアは開いたままにしておいた 大型の遺体処理装置が台車に引かれ入りやすくするために 小さな窓からレース越しに薄く幅を調整したLEDの光が差し込んでいた 朝だ!ピクセル形式に時間は感覚に標す。肌触りのいい合成素地のシーツ 今日も大気は赤茶色に染まるだろう 息もなく仄かにアーモンドの香りを携えてアランは眼を閉じていた 摂氏30度を下る体温の、青白い肌に浮かぶ赤黒い火列の脈筋 生き急ぎ窪んだ骨、その間接の狭い軋み、それは春の乾ききった氷河のように硬かった  あと数時間後に彼の生命は尽きる  ありがとう わたしは流れおちていく涙で指先を湿らし、もうピクリとも動かない唇に押し付けた 冷凍保存のまま精子から生まれた第1世代初期型クローンのわたし その時にこれは使命なのだと自分には言い聞かせていた しかし永遠の別れなのだ、意識すればするほど、この哀しみを抑えるこのできる人間はいないだろう これが感情という電気信号を自ら遮断した想像上の悪魔ならば話しはべつなのだが アランと名付けたのには意味がある。 その昔叔母の好きな俳優の話しを母から聞かされたことがある わたしが生まれてまだ地球にいた頃だった クローンは生まれてわずか10年でその生涯を閉じる 否、生まれたときからその生涯を閉じる日は決まっていたのだ。 Aiにつながれたシナプスの空間 立ち上がると三年でわたしの知能を遙かに超えていた  ( ケン、なぜか深い海の生物が行き交う夢をよくみるんだ ) 1年前からそんなことをよく呟いていた    ( 僕は母体というものを知らないからね。) 同じ顔を持ち寸分と違わない肉体を持ちながらみる夢だけは異なっていたのだ     アラン   第一世代の記憶がどこまで遡るのか、わたしたちはまだ答えを見つけ出せてはいない 第二世代のクローンには人工母体という技術が添えられた ときどき在りもしない神秘的な体験の夢を吐き出しては人間たちを戸惑わせている 燃える惑星の冷たい塵から造り出された透明なルビー そろそろ時間だね。 赤茶色窓の外からエアーパーツの噴出する音が聞こえる 。 ---------------------------- [自由詩]Raman (分光)/アラガイs[2020年11月24日7時05分] 月の灯り陽の光り 誰もいない銀の馬車  不幸など誰が予測できるだろう 誰も予測できないから不幸ではないのか あの人たちも 傍らで見覚えのない家族が啜り泣いている 奪われたのは肉体かそれとも 輝きを放つ魂なのか 死が迷光の扉を開けて近づいてくる 誰もが予感を放棄する 突然の雷鳴に戦いている 無数の影が背中を割った 囁くのはいつも鳥たちの会話 季節に咲く花々よ幸いか樹の枝は 飾り気のない白い壁が にぎやかさに時を弾ませる 誰だろう 枕元から小さな息がゆれた 長い髪の毛のほつれ 少女が近くにいるらしい そして動かないわたしの指先に縫いぐるみを押しあてた  ( だめよ こちらにいらっしゃい ) 声を殺して若い母親は叫んだ 走り去る音が響きながら消えた ぐるぐるとあたまの中を駆け巡る  unknown ひとすじに涙はこぼれ 幼いころのわたしが いま永遠の孤独を感じている  ---------------------------- [自由詩]色を食べたなまえ/アラガイs[2020年11月25日1時49分] はなしを食べたおかあさん おとうさんはまだ会社にいる ボクは画用紙にクレヨンをはしらせる えんぴつでなまえのつづきを書いている いろはたのしい 赤や青や黄色 たくさんの色を食べて ボクはおかあさんとおとうさんを書いている ※ 参照  なまえを食べたなまえ氏のなまえによる ---------------------------- [自由詩]Risei/アラガイs[2021年1月5日11時39分] つまりは嘘になるから すべてをさらしてみたいとは思わない。 書いていると気は楽になるけど、 、友や家族を前にして言葉を発したことがないのよ    なんで照れちゃうるのかな。 それはあなたというあなたが               いつまでも他人のままだから。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]破壊と構築について/アラガイs[2021年1月14日2時55分] とある公共放送の番組で二本のドキュメンタリーをみた。ひとつは海外で創作活躍をしている画家ともう一つは日本で人気のあるバンドメンバーの音楽家だ。そのどちらも若いクリエイティブな創作家であることには違いないのだが、番組の終わりに際してふと疑問点を感じてしまった。無論彼らが目指すものは芸術という魔法で、今までに聴いたことのない刺激的な音楽や、観たこともない多彩な色調の絵なのだろう。彼らは言動でそう主張する。が、しかしその楽曲作りと出来上がった絵画を眺めているうちに、本当にこれでいいのだろうかという戸惑いは否定できなかった。というのも作りあげようと苦悩している音楽も、仲間たちを加えて新たな絵画作りを創作をしているその姿にしても、私にはどこかで聴いたことも観たこともあるよ。という記憶がよみがえるだけなのである。破壊と構築について。このことは今を主流とした若い創作家芸術家たちの間でも流行りの文句ではあるが、破壊と構築、これは結果繰り返されるという点においては今も昔も同じことではないのだろかと。などと考えてみたくもなるのだ。 真の破壊とは、そして構築とは一体如何なるものだろうかと。 その昔ビートルズはアルバム「サージェント.ペパーズ.ロンリー.ハーツ.クラブバンド」において自らが慣れ親しんだ楽曲の音作りを打ち壊してみせた。 そして、今まさに絵画を打ち壊して魅せようとしているのはバンクシーが覆面で行っている創作活動ではないのだろうか。 ビートルズのアルバム「サージェントペパーズ〜」は従来のファンを大いに戸惑わせた。結果離れていったミーハーなファンは多かった。当然ビートルズ自身にも予測はできたのだが、彼らは真の破壊と構築に向き合ったのだと思う。今ではアルバムの評価も皆さんご承知のとおりである。 そしてもう一方のバンクシーである。彼の書く画は額縁という空間を超えて時と場所を選ばない。否、実際は選んでいるのだ。いつ消されてもおかしくない。という空間である。 そのことから考えてみれば、このビートルズの破壊的な革命とバンクシーの革命的な創作活動は構築という概念を覆してしまった。 芸術において本来の目的とはその形づくりである。そしてカタチとは紙幣でもなければそのことから得られる価値でもない。ビートルズとバンクシーの破壊と構築。その両方に共通して云えるのはいままで誰も手をつけられなかった手法。それは結果残さない遺らないでいい。とさえ主張にみられる点ではないのだろうか。 ---------------------------- [自由詩]シリーズ「詩人たちの末裔」/アラガイs[2021年2月5日3時21分] 綿の毛が風に飛ばされ             小麦の穂は枯れていく 見よ、紙幣と言われた紙屑が宙を舞う つまり 誰かがシュレッダーにかけてビルの屋上から撒いたのだ これは、まるで古い動画で眺めた光景ではないか しかしながら、動けるうちにわたしは老人ホームへと駆け込むのだ 国家という組織が国家としての機能を保てるうちに並列し 山羊や羊たちのように囲われて             鞭打たれながら餌を与えられる否か、否 もちろんわたしには乳も出ないし年老いた人間の生肉など喰えたものじゃない そうして死を待つばかりの生活に生き甲斐を見出すこともできる     沈黙及び可能に値した 接続詞など必要もない時代  ブラジルでは香り深い珈琲栽培の計画が進行した このようにして我々は我々の人生を終えることができる。 ---------------------------- [自由詩]詩人たちの末裔 ?/アラガイs[2021年3月28日3時12分] 僕はチョコバーを一つ取り出して彼に与えた (ところできみは虐待されたから逃げ出してきたはずだよ、誰に苛められたの?) 一口チョコバーの先を齧るときみは不機嫌な顔して応えた。 (あなたが彼らを追い払うからです。私は無理に逃げ出して来たんじゃない。彼等は私の育ての親ですからね。産みの親とは違う。だからいきなり鞭で撲たれても唾を吐きかけられても私には耐える義務があるのです。) そう応えると彼はチョコバーの棒を中ほどから噛み切った。 (きみは虐待されても平気なのかね。それとも虐待とは思えないから平気なのか、どっちなのですか。) 脚をぶるぶると震わせて苛ついているのがわかる。 そして大きな口を開くと残りのチョコバーを目いっぱい口に含んだ。 溶けたチョコレートの脈が口もとから床を伝う。精神の方は大丈夫なのか。  ( あなたは明らかに私のことを変化させたいと考えているようだが、それって偏見な見方をしているからですよね。 私は叩かれても罵られても、例え地獄に蹴落とされてもよいが相手が彼等であるならば我慢しなければならない。何故ならば彼等は貧乏で教養もなくて可哀想な生い立ちを背負っているからですよ。それに比べてあなたはどうですか。何も苦労などして育ってはいない。温々と与えられるままに生きてきたんじゃありませんか?そんなあなたから彼等を引き離す権利はない。私には許せるのです彼等のことが…) 口にこそ出さないこのようにこころの内を隠している様子に思えた。 この驢馬は明らかに嫉妬し憎んでいる。そのくせ自分の病を誇らしげに語る癖。私にはそう思えた。 旦那、別れた妻の子供の帽子をね、ちょいと絵文字がイカしてたんでふざけて自分のと交換してくれよ。って取り上げたことがあったのですわさ。そしたら、まあ子供がいきなり大声で泣き出して、オヤジからもらった物だって、そりゃもうたいへんな騒ぎで、驚いたでげすねあたしゃ。あれだけ母親の苦労を見ててもやっばり肉親はかけがえのない錘。ようわかったでげすよ。 で、苛められたのかい?って訊くと頸を振るんだなこいつが、近所の噂話しじゃずいぶんと苛められていたらしい。もうようわからんでげすね。子供のこころってやつは。あはは。 ああ、あの驢馬のことですかい。やつは首吊ったでげすよ。なんでも眠ったようにほっこりした顔をして死んでたらしいんでげすがね。まあ先天的な異常性にずっとやられてたんですわね。よく持ったもんだ、はは。 気が狂うほどの運搬で躰を酷使させていた夫婦の方は今でも健在ですがね。じゃが男の方は太り過ぎて糖で眼をやられて内蔵壊してからは片脚引きずって歩いてますだよ。女房に手を添えられてヨチヨチとね。はは。何者も世をはばかる、でげすわ。あはは。 へへ。あれも運命ですかね。生まれた場所が悪かったのか。それとも時代のせいなのか。いまじゃほら、どうぞこちらの舘へ御驢馬様でげすよ。 あっしのほうがよっぽど身分は低い。それでも人間ですよ、あっしも。旦那、旦那様、ところで旦那と呼ばれる貴方様は人間でげすかね。あっしにはわからない。あっしも眼をやられてますんでね。いまじゃ泣き声が驢馬のように詩を奏でるんでげすよ。詩を。  そう、ありゃあ気持ちのいい声だが、人様に聴かせたらどうも不味いらしい。  子供らが急に泣き出すんでさ、涙を浮かべてね。それがいいのか悪いのか、あっしにはどうも見当がつかない。困ったもんでげすね、はは、はあ…。      ところで、といっておいて彼は魂を声に乗せて生き返ったのだ。天上との対話吉増剛造編。詩人だね。歌手の佐野元春氏は。何しろ思い込むという世界観の強さそれだけでも詩人というカテゴリーが付いてくる。そう、詩を認めない振りをして自虐ネタ拾う前に先ずは思い込むことだよ。あはは。 ---------------------------- [自由詩] (   )  西瓜/アラガイs[2021年3月29日12時56分] 闇市に西瓜を買いに出かけたよ 金脈が本物の黄金だとか噂話しで聞いたんだ 途中チンピラに追いかけ廻されては警官に発砲されたり 散々な眼にあったぞ* !あ、こんなところに… 板張りの上にころころと転がるのはお地蔵さんのようにつるつるした禿げあたまの子供   大きな赤ちゃんだね 素っ裸で大きなお尻をくるくると何度も回転させては黒い瞳で僕のほうをちらちら見ている        前回り〜後ろ回り  それにしても大きなお尻だね  〜あちらからこちらへからだを回転させるやわらかマヨネーズのかたまりさん 僕を見ては板張りの床をころころと一回り〜二回り ぷりぷり桃色のポップアップ 象のような大きなお尻だね 思わず、僕はパチンと手のひらで叩いてしまったよ あれ? 小さなタネがふりまかれた夕陽    黄金の西瓜は何処に消えてしまったのかいな 朝はやくから筋雲に    大空を過る最新鋭の米国戦闘機だよ。  ---------------------------- [自由詩]夜ネ 風に/アラガイs[2021年3月30日1時35分] 誰かの風に乗り 誰かの声をきく そうしたくないもの そうなりたくはないもの   覚えているかい 小学校の夏休み みんなで寝泊まりした教室の匂い 擦り切れた廊下の窓ガラスの向こう おしゃべりに夢中な女の子たちが手にした  鞄の匂い 西風を避けて  昼はうずくまる仔猫たち くしゃみ      溜息 続くものね    煙草 止めれないものね  音 忘れていたりする 遠い星ふたつ大きな深呼吸 何処に居ても夜はひとりきりで眠る もの                      誓うのかい  樹サナギ根の揺れる 朝は  必ずやってくるものね ---------------------------- [自由詩]人鳥は濡れない足〜台詞付〜/アラガイs[2021年4月3日1時28分] 遅れて歩いてくる足音につい気後れがして        わたしは膝をついたまま下向きに歩いて行く     自転には追いつけない針を進める ( ) 氷の幕を滑り落ちる   人鳥 乾いた靴の底を舐めるように這いつくばってきた蔵人  手にした強い武器を輝かせ、黄土を行く人々よ あなた方にはひれ伏せて進もう    、、わたしには何ひとつ価値あるモノはない  「あのう、これはもう少し高く値をつけてもらいたいのですが、これじゃ一晩の飯代にもならない。?ん、ああそうですか、なら、要りませんよ。今どきこんなモノ欲しがる人はいませんからね。この値段なら引き取らせていただきます。いいですかあなた、引き取らせていただくんですよ。わたしらは。売ろうが売るまいがどっちでもいいのです。この価格ならば買って損してもいいという、リスクの値札になるのです。この値段でお譲りなさいな。これ以上なら買うことはできません」。          極地の朝、読めない春に叫び 憤る波に浚われぬようにと円陣を囲う、我が子を守る雄たちの群れに、冬の嵐に陽が射す羽根の背、飢えが眼を覚まし餌を狩る雌親の、ペタペタと揺れる遠いあしもと  急ぎ足が聞こえる ペンギンたちの俯き 木枯らしが吹き付ける夜には厚底の靴を履き、薄い三日月の口もとを自転車でさまよう街  影に怯えたのは背中    薄情な道だ、と一人嘆いてみても、今さら誰も振り向いてはくれない満月の夜を 、喩えては後悔して眺めている  わたしは                      裸足では歩けないよ  素足でも歩けるの、夏の砂浜 寒い冬には靴下を厚く足先の凍えが温もるまで待てばいい  譲るなよ足もとを                           そう気がついてからではもう遅い  人の足跡 。 ---------------------------- [自由詩]表現と表現者の領域 −詩人たちの末裔 ?/アラガイs[2021年4月4日13時13分]    20数年も前になるだろうか。たまたま帰り道に寄った駅ビルの居酒屋で、長い木目調のカウンターに腰掛け、惣菜のつまみをちびちびと頬張りながら熱燗を?んでいた初老の男性と話したことがある。最初は遠慮して二席離れて座っていたのだが、( ああ、疲れましたね…)ふと彼のほうを見て発した私の一言が彼との距離を一気に緩めた。 駅に到着する数時間まえ、街の中心を行き交う人々はプラカードを掲げ練り歩くデモ隊に遭遇していた。多くは隊列を整え、照れ笑いを浮かべながら覚束ない足もとで歩道を歩いていたのだが、後ろから下がるに連れ、その多くは歩道から逸れて道路の進行を妨げていた。そのため街には大勢の警官や見慣れない機動隊員が駆けつけていたのだろう。道路は塞がれ、渋滞にバスや電車は立ち止まり、中心街の交通機関は麻痺していた。街は完全に彼らに掌握されていたのだ。そんな状況の話しから入り、居酒屋という空間で二人の演技者は場面を展開していった、と思うのだが… 男の名は栗原といい、なんでも通信社の特派員としてベトナムに派遣されていたのだという。そのことを酒に交えながら二人の会話は盛り上がっていった。と書いておこう。  (…あのね、ベトナム戦争、あのときはよくやられた、っていうんですよ。知り合いの元軍人が…… )。それは?  ( なんでもね、怪我をしたベトナム人の子供を助けてやろうと近づけば、いきなり手榴弾を手にした母親や男が出てきて爆発させるんだって。それで同じ仲間が何人もヤラレタってね。 )まだお銚子もひとつかふたつ、既に栗原の頬は紅く染まり、普段から酒量の多くない人だとは判断することができた。 ( …でね、沖縄でも、やっぱり少しはそんなことがあったのか、と調べてみれば、やっぱりあったんだな。 まあ、当然といえば当然ですよね、貴方…   )盲目の愛、人は愛するが故に殺すこともできる。(そういえば思春期を迎えた男の子をみつめる母親の眼差し、あれは初恋の男を眺める女の子の目線だな… )それから会話は今日のデモのことに移り、気がつけばお猪口は濁ったグラスに変わっていた。 わたしがなんでこのように過去を振り返るような創作話しを持ち出すのかといえば、私小説と詩の境界には同じ表現としての空白地帯が介在すると思えるからなのです。 私はあたまの中で演じていた。それはいまから買い物に行くコンビニの中でも同じく物語として振る舞うことができる。道を誤るかも知れないし、路を変えるかもしれない。思い描くままに行動するかも知れないが、いまの私にはそうあるべきだとは判断もできない。 一人称による独白はそのどちらにも属して境界もない。私小説はある物語を題材にして話しが進められる。私の中を巡る物語の主人公や脇役たちは存在はしないかも知れないが、私という人物を通して鏡面の中には存在もしている。私は物語の中で彼らと同じ時間を共有し同じ空間へと至る。実際に目の前に姿が現れることもなければ実のところ目の中には姿が表れているのだという、仮想空間を現実へ向かわせる認識の創造。ならば詩には物語る時間の経過は存在しないのか、といえば作者のあたまの中には必ず時間という流れが介在している。例えひとつの言葉を発しただけでも時間の経過を無視することはできないのです。 独白された私小説と詩との区別はむずかしい。仮に創造の最中に於いてあなたの思考は停止された。はじまりもなければ終わることも無い世界がある、と表現者は言葉にして書き停めることができる。しかし過去が未来をそのまま追い越せないように、言葉を発したその瞬間から、もう別なあなたの世界は始まり終わりを告げる。パラレルな世界観を意識するとき世界はあなたを中心に目覚め洞察されるのです。 私小説と詩の曖昧な時間の領域には現在という空間が介在してきます。私はいまこの時を言葉に置き換えながら既に未来を造り変えている。 そして優れた表現者とは、その停止不可能な時空の中で、言葉を用いて停止させ得ることができる間(読み手)を、自らに共有する、ということではないでしょうか。? ---------------------------- [自由詩]眼場馬の流木/アラガイs[2021年4月10日3時06分] 連れてきて5年は経つだろうか 当初から敷き詰めた砂を蹴散らしては小さな魚を追い廻す 我が物顔で水槽の中を暴れ廻っていたおまえも わたしの姿を見つけてはじっと動かなくなる 大きく成長するのもはやかった こちらをキョロキョロと嫌らしい眼場馬さん そんなおまえも最近は置物の穴に閉じこもっていた いじけて地球の砂を荒らして     どこから来たのか  おまえは  アフリカそれともアマゾン川        親の顔がみてみたい   老齢なんだよ 最近餌を食べてるのか おまえ    いったい、いつまで生きる気なんだ    そう思いながらも幾年月は過ぎて ふと水槽に眼をやれば横倒れの長い孤木が 小さな黒目を開いたまま動かない   魚よ  死んだ、じゃない、ちゃんと死ねたんだな  網で吸い上げたら悪臭がたちこめて     ローリエ一枚添えて、ティッシュに包んだよ      ---------------------------- [自由詩]クウォーク&ラン/アラガイs[2021年4月11日3時09分] ヘッセら何をしても見えない壁に阻まれているのだから、なのと、ひとり呟きながら果てのない自慰を繰り返しているカールゥとエリアン。 壁の隙間ではベッドに凭れ掛かり、初老のアラン夫妻がお祈りをすませ床に就こうとしていた午後 月という存在を知らない遥か遠くには、恒星に照らされたこの小さな衛星を生命の手掛かりにしようと、宙を見上げるDXな世界もあるのだ。 ヘッセら僕は歩いている。期日によれば恒星の廻りを半周した水滴の着水にモラギキの花が咲く。そのときがこのアラン夫妻の肉体は食べ頃を迎える。匂いを嗅ぐ。そのことをこの植物はちゃんと知っている。主人のサイズはMだったかしら? ゆり子はLのトランクスを拡げて頸を傾げた。バーミリオンの擦り切れた布地を腰に巻く狩人が剣を天に振りかざす。芽吹きを迎えた大地の裂け目から真っ赤に燃えた核の炎が噴き上がる。硝子戸に写り込んだヨークシャー犬の舌は涎を垂らし、ゆり子が出てくるのをじっと待機して待っている。ううんアハァントリカブト大麻 明日はもうやって来ないかも知れない。   見たこともないのに明と暗は互いに引き寄せあうのだろう。エリアンのやわらかな乳房の感触を思い出しながら自慰にふけっている。飛び散るのは眼球。屈折という輝く円球(ボウル)を手にしたエリアンの溜息は途切れることはない。苺がペパーミントに香る季節なのかしら? 観測者はブラックボックスをこじ開けようともがいている。カールゥ、月はどちらから見ても照らされているのだ。永遠のキルキル キル 鉄と銀の擦れる音に狩人が自閉する。何をしても閉ざされているのだから責任は持てない。誕生からぶら下がる今世紀の樹液。枝に吊したハンモックが戦慄いて、セラミック?細胞は時計という細長い黒針を告げる粘膜の角質。散らねば性質の循環が滞るチューブ。ゆり子は知らない 手ナズケタ犬の眼はカーボン 主はそのことにちゃんと気づいていたノダ。 ---------------------------- [自由詩]毬藻walkディスるway/アラガイs[2021年4月12日23時40分] 、!おいサキッポ、おまえ火傷したって?だから餃子は包皮に包んであるんだよ。やってる? 歩け歩け、逝かれて Wong 具? ダメダメ、ジェルやクリーム、何をつけてもLovejuiceにゃ勝てないからさ、やりすぎなんだよ、おまえ、女の子の尻ばっか追いかけて、いや、まてよ、ここの売り場は暇なオヤジばかり、やい!離れろよ、ここから、あたいに興味持つんじゃないよ、、チ!ェスト  わからないわ、わからないを考えてたらついついね、まだまだ世紀末の性局はこれからでぇスタイ、グブヴィバ、ヴィバ、Wooo Wu バカバカしく寝て、アアこれじゃ当分女の子には見せられんね、残念、斬、無念お母様、お母様って誰のこと?空のホトトギス、暇つぶしにカネ持って来いやー マイナポイント 1500円 わからないわ、ネ、餃子に魚醤ってダメかしら? !ソレ、いいかもね、Come,On,my,House.しょうゆうこと、世の中は、アノサイト、あのさ毬藻の話ししてるんだけど、アンタ、あたま逝かれてるね、地球くらいの毬藻に育てあげたいんだよ、木葉のこと、あ!鬘がハズレそう  グブヴィバ、ヴィバ、Wooo Wu  !やいやい、離れろよ、何処に行ってもウザい奴らばかりだな、女性のお尻は居ないのか、潮風に香る焼けない肌をした湖のイオニア、アラミスかしら? バカだなあ、笑笑、男性化粧品じゃないばってん、お米はやっぱし不魚住、おいサキッポ、もうそろネタはつきたよ、終わりにしよか、イェー全然イケてないよ、外反母趾だろ?歩け、歩けよ、ころころと毬藻は湖に転がるんです。YES Wooo ー ---------------------------- [自由詩]もののふは転た寝を拒んで/アラガイs[2021年4月26日3時42分] そうだ! ポットに注いだまま忘れていたお湯がすっかり冷めきって 、中でおたまじゃくしが泳いでいても僕は気絶まではしないだろうね。       どちらかが死んでる雲母(きらら) 変なこと。 それは何気なくふっと壁に眼をやれば大きなムカデが蜘蛛までもがじっとしてこちらの様子を覗っているんだ。 ときどきぼんやりとした不安に駆られる空気の重いときだよ。  考え過ぎた昨日。  ずっと同じ速度で車を運転していると空と地上が双方向に入れ替わる。あれは過去や未来が攪拌されて現在形の体裁をはじめるからなんだな。   念力を電圧に換えて送ろう  したらきみの首筋は異様に刺激を感じて胸の鼓動が激しく揺さぶられる。血圧を上昇させるのは容易なことなんだ。    放たれた音は消えない 1000年も居座り続けるのは記憶だけではないだろう。例えばきみが放った言語の解が雲に巻かれて地上に降り注ぐ。それが1000年の刻を隔てて今も響きわたる。深夜一人で眠る頃に木材は軋み屋根を歪めさせるんだ。もっとも風や地震は常に途絶えることもないのでその影響はあるのかも知れないよ。 ?に 獣の様子     変な                        こと。     聴衆の拍手が鳴り響き英雄たちが甦る 明日 僕の立ち位置は海だから三葉虫で底を這って進む。画は透明な石英に染みついた山や谷の滲み。物の怪の虫たちがじっとこちらをみつめるように、きみに抱かれ僕の中で眠るきみは  エナジー                                    ほら                          刃が裂け 魂が消えた予感   いつまでも眠れない夜を   ---------------------------- [自由詩]下げちゃいなさいよ/アラガイs[2021年4月27日2時36分] 水しぶきをやり過ごせよ    虹の架け橋 背負わない傷跡を見せたくないから下着も脱がないわ お尻の大きい外国人のお姉さん 牛さん牛さん、ダッシュダッシュ! ああ腕が回らないお年寄りな実態把握 自分のために他人を巻き込んで 他人のために自分を売り尽くして あああ なんという人生を下り坂から引き返しても時間は戻らないので  「love letter from Heaven」 引き出しの中に隠してるの/ 自由 もう書けないよ もう書かないよ どっちなの、はっきりしないでいいからお金をちょーだい 痒いの背中が/ 掻いてくれる?/ 雨降る 血しぶきをあげて筆がはしるのよ 青き空/さわやかな冬眠 夏みかんの状況 しょうがないわね、使用がないではないのか? 誰も食べてはくれないもの  なら さっさと片付けてベッドに行こうよ あら?ベッドは眠るものでしょう パンツは脱ぐもの着替えるもの、どっちなの どうでもいいけどさ、食い散らかしたの誰よ猛牛みたい これは薄情な若者たちの仕業でした だからお年寄りに調査が廻るのね  人間   、辞めますか そうだ!テーブルのお皿 もう下げちゃいなさいよ 紙とペンチを握り〆あなたの眠る順番はやってくる きっとやってくるから ---------------------------- [自由詩]底のない浜から/アラガイs[2021年5月17日3時31分]  高台から遠浅の浜を眺めると波の照り返しには目が眩む。 鰯の群れを追いかけて飛沫をあげるスナメリが、                     ハセイルカの一団を連れてやって来た。 小屋の喜三郎は日の出前に仕留めたミンククジラの解体に追われ手も脚も出せなかった。   ( わりゃあ こげんときにかぎって来くさるのう ) 陽の潮に引かれ波は落ち着きを取り戻していた。 喜三郎が肉を板に放れば米蔵がそれを束ねる。それを竹籠に盛ると交代で担ぎ浜を駈けあがるのだ。   なんともいえない塩味の薄さに舌の感覚が麻痺してしまったようだ。弱々しい台所の椅子に腰掛けて考えている。海図を探索してもアサリは獲れないだろう。いや、直に貝を獲ろうとすること自体を人々は無益な事だと思い込んでいる。長い入院生活を経験すればそれくらい弱気にもなるものだ。 泡が湧いて小さな穴からミル貝が塩を吐き出した。挟みを挙げたまま石牡蠣の割れ目で動かないワタリガニ。それを白鷺はじっとみつめていた。置き石から釣り竿を上げれば腐りかけたナマズ。その日は経験のない珈琲の苦い味がした。  底のない時代、丘や海にも多数の生きものたちが安楽と蠢いて、陽と陰を二分していた。 いつまでも辿り着けないと思い込んでいた蜃気楼。あの頃は水平線に直線を重ねて定規にしたものだよ。とは喜三郎から受け継がれた合言葉。近くに無いものは遠くにも無いものと思え。ふと、透明な影が指して そういえば崖の淵には宮殿のような白亜の建物が内海を見下ろしていたはずだが、 ( トルル トルルウ ) ママ〜誰か来たよ〜   深々とした厚みのあるソファで脚を組み、物思いに耽っていた黒い夫人が立ち上がる。 立ち上がると夫人はテラスに出て浜を眺め、潮風の、それは空耳だと確信した。 小石を拾うと後ろから振りをつけておもいきり投げつけた。材木が積まれた空き地に向けて、100yardくらい小石は飛んでいっただろう。  田が埋まり、畑はアスファルトに固められ、崩れ欠けた防波堤の下、ハマナスが咲いた季節にも春はやって来ていた。 引き合う電線の面影と、向かい合う住宅の壁は波に消されて、  丸く、虹の翼を持つ灯りに支配された空の闇。喜三郎と米蔵が獣臭い鼻をつつき合う。 せめてもの救いは誰も居ないことでしょう、と暗喩に装い雲が語りかけてくる。刻は何を比喩するものかと。 いまも下水道は流れて、すぐにでも大地が動きだそうとしている。貝殻は羽根のない鷺を着る。  忘却と、海の底は帰る場所を探している。 ---------------------------- [自由詩]勤労感謝Love208/アラガイs[2021年5月19日3時35分]                                            マシン   短くて気が遠くなる 長雨の季節には藍藻入りのスープで夜をやり過ごす ことになる  不審 冥界の使者から未だ返信の宛がない 渇いた窒素を液体に取り戻そうとして 堕落 三日目で忘れたのは最初から意地を張りすぎたのね僕 硫化水素の腐臭に慣れ親しんでしまったのだ。 植物に同化して獣に分解するわ ラブ 至り謹しみ 新しい言葉ください                冥界の双生児たち       軽やかな無機質と 有機的な根性とに連れられ      それを                                     勤しむなかれ          勤しむなかれと        鳩笑う 朝のホットスポット 。 ---------------------------- [俳句] 青竹や潜(くぐ)るパンセの空ふ紘(いと)/アラガイs[2021年5月25日11時41分] 青竹や潜るパンセの空ふ紘   ---------------------------- [自由詩]かけひき/アラガイs[2021年6月3日2時07分] ペットボトルの口が開いて  水蒸気舞い上がればイルカが波に乗ってやってくる 街のカラスが餌を探す  幼虫は産声を上げるその時をじっと待っている 怪しくもない人々が夜を擽るのは   塵 僕は炎に焼かれ塵として天秤にかけられる ホンネのところ 知りません                           それでも  人生を回収はしない 東西南北 風に乗り  今日も晴れた空が流れていく 変わっていくのは生きものか  生きものが創り出す景色なのか エイが吐き出したPEをカモメが飲み込んで巣に持ち帰る 卵が先か鶏が先なのか   人々はそれを天秤にかけている 眩しくもない人生を光に賭けるのは    塵 イ草の未来が 吉と出るのを 凶が楽しみにして 舌を垂らす狼  牛は追われ 海にまかれたルヨ灰 灰の山   SDGsと語りだすからには僕は不在で綱渡りの余生を迎えなければならないような 意識が燃えたヨナル滓  懐中時計は壊れて  回避できない ※ 塵  (チリ)またはゴミ) ---------------------------- [自由詩]にんにく/アラガイs[2021年6月8日4時37分] 我慢し過ぎるというこれも眠りには良くないようだ。 失意は立案の乏しさを今さら悔やんでも仕方ないのだが、委ねた事への憤りはいまだに収まらない。 もう少し道幅を広く取ればよかったとか、遠慮してカーポートの屋根を短く切った。しかもよけいに高くしてしまい雨避けにもならない。 思いやりもときには嫉妬へとつながる。憎々しいが教訓でもある。  土臭う夢の中で、にやりと皺を寄せた老人が鼻声を立てながらしゃしゃり出る。決まって便秘と下痢を繰り返すのは、同じように醜悪だと認識しているからだろう。狭くなった駐車場から何度も切り返して車を動かすというのは実に忌々しいことなのだ。 忌々しいといえば小うるさい雀たちが、田畑や庭付きでもないこの隣接する界隈を住み家にしているという、ほら!今日もまたボンネットの上に黄な粉の塊を落として知らんぷりだ。身から出た錆。無人に、とは況んや。  しばらく放って置いて腫れあがると今度は歯周病の菌も増すばかりで、ほら、あの臍のゴマと強烈な匂いは似ているのではないか。無気味な話。 以前ならば小鳥たちや雀の鳴き声は朝の気配を清々しく迎えてくれていたはずなのに……がこれは囀りにもよるのだ。といういまのわたしの心境がそう感じさせてしまうので、どうやら身を削られてねじ曲げられた思いの強さに甚だしく囲われていて、早朝からバイク便の音に反応しておしゃべりをする鳥たちはラジオ体操にお年寄り。 忌々しい。 忌々しいが誰の庭でもない、これもまた教訓なのである。  痩せ細る草地の境界線を一束につなぎとめるのはくたびれたロープ、それとも張られたラップなのか……巻き取れずに苛々していると土の中から強烈な匂いを拡散させて這い出してくる姥虫がいる。堪えなければならない。  一日はドアの外に香水を吹きかけて歯磨きを終えたところからまた繰り返される、という構図から始まるのだ。 ---------------------------- [自由詩]漫画満載曼荼羅/アラガイs[2021年6月18日4時54分] サザエさんの一家ならソフトウェアにしのばせて歩けるやさしい世代だからわかるよね。 クレヨンしんちゃんのママなら浮気してもいいかな。セクシーで小股キレそうだから。あとで毒を盛られてしんちゃんのしてやったり小狡い顔が病院のベッドに浮かんできたりして。 まあ、バツイチさんと仲良くなれば子供たちからは蔑みの眼で見られるのは覚悟しておいたほうがいいよ。 美しい言葉なんて必要ないんだからさ。 こころまで欲しいとは思わない気持ちに理解を示して距離を保てばいいのよ。与えても与えられてもこころまでは届かない。しかも貯蓄は罪悪だと思ってる。だから在宅は向かない家庭も保てない。 一人円卓に想いを寄せる時代。 ただなつかしさが邪魔をする。   70年代 pilotの「January」いまでいえばジャニーズの曲風だね。 自分たちの尺度を基準にしてはダメなんだな。  蒸発しない雲がおちてきたよ。勉強のできる生徒からイジメられて。さりげなくも愛は愛を殺したの。 阿弥陀如来forever. そんな世の中でもきみは詩人を目指している? 言葉が潜り込んだのは電子レンジの中で、ブラックホールも温められて行き場をなくしてるから弛緩も置換もすべてお金目当てのコンタクト。  古い漫画だけど鉄人28号に鉄腕アトム。王子と宗教。 地上で喧嘩したらどっちが強いんだろう。「架」「空」「金」「塊」物見遊山。アホかおまえは。笑。    ---------------------------- [自由詩]善師アキの空/アラガイs[2021年9月27日19時12分] 秋は仏頂面のヒゲ男を察知してイヌやネコも傍らに近づいては来ない 積み石で寝仕度を整えているのは巣を閉じた青蛇の一団だろう まあるくそれでいて刈り取られた雑草の刺々しさがのこる畦道  田に散りばった屑藁を篤ねて              一服の宴を座に敷いた                        故に晴れわたる深紅の彼岸花よ  一人禅師を十人の落武者が板で打つ 銘々と名づけられたご馳走を手に、村人は白粉で顔を覆う そら、盾槍者が軒下の隅から這い出してきた ---------------------------- [自由詩]系図/アラガイs[2022年1月6日11時34分] 雑然と立ち止まる地 夜には目覚め 朝には忘れてしまう 記録したはずの/瞬間        径路/不覚 寒さに囚われて 思いだすこともない言葉たち ---------------------------- [自由詩]一平米の憂鬱/アラガイs[2022年4月9日5時18分] 唾を吐き出して、溝を入れ換えてみる (ああ、そうか、悔しいのでしょう、)ね。) 何一つ生まれてはこない、ここ庭の隅で、ですからぐるり  と囲う柘植の柵をいつまでも見届けるのわ、らわら 右に踏み出せば血も流れ           直角に折れてタマネギの匂い固まる あやや、やひよ、ひ、りちりに などと、ああいう口コミが息苦しさを      いいつもどりつ カギくけこ、いついつまでも、切り取りマジキリジリ 畳一畳半、やわらかな、狭くて硬い、グラスのそこに                        ---------------------------- [自由詩]詩人というそのおもさ/アラガイs[2022年5月12日1時54分] 低気圧を駆け抜けていくオレンジ色の光 曇り顔が灰色から墨色に変わるそれは 、壺を仕留めたせいだろう きっかけはちょっとした背中の痛み 割れそうな傷口を絹糸で塞いだ モーメント 抗うには遅すぎた蜃気楼ノ 欲望に、顔を出す永久凍土が              塩素系 冷たく カルキ   そこ歴史は嘘をつくことになり     嘘は言葉を二色に混ぜ合わせ  きみの乳液よ 骨髄は執念に浮かび溶け出した 季節は順風かそれともここ 明日ならばもう少し耐えられるのか 重力から 、筆を手に折り考えてみるその軽さ 文字にされる罪人の戯れ                 化身と読まれる意 ゲンザイ形の杞憂 稀有な味だね  駄目だ            詩人たちよ ---------------------------- [自由詩]打ち壊したの章(ブレーキで二輪車を担ぐもの)/アラガイs[2022年5月14日1時18分] はじめに言っておくがわたしはこれから仕事をしなければならない。たった一時間だが、1100円と少し色つきの重労働だ。これから丑三つ時を過ぎれば街は深く暗い静寂に覆われる。路面も眠っている。陶酔感よりもリスクのほうが心配になる。季節を変えて雨風が容赦なく脆弱な身体を懲らしめるだろう。わたしは鈍った足腰や眠気を抑えつけてもこの二輪車で立ち向かわなければならない。無論使命感など持ちたくはないが、無理にでも期待され任せられれば使命感も立ち上がるというもので、ああ、まったく困ったものだ。振り返ればこれも無知の仕返しだと根に深く思うのもやめた。ただ糧として小銭入れにつないでおくこと。これも自分が撒いた種だと諦めることにしたのだ。 こうして散文のように話しを書き進められていくことには抵抗感もある。それは自由詩というジャンルに括られ、まるで板に縛られているかのようだ。  ここで話しを動機に戻そう。 一度捨て置いたモノを思い返してみる。ということが気になったからだ。 その昔一輪車という仮名で詩を書いた男がいた。不真面目で手荒い語気ばかりが気になる初老の男だった。出鱈目な言葉もよく並べていたが何故か気になる詩を残している。 わたしは以前から物忘れがひどく、人の名前もたちまち三秒で忘れてしまう。そして何かのきっかけでふっと思い出す。これはいわゆる痴呆症状の現れだ。つい最近も彼の書いた詩を思い起こすような出来事を経験した。いや、経験というよりは、わたしの脳内のリズムがあちら調子に狂ってきているせいかも知れない。だとしたらしめたものだ。幼児並みの純粋さが甦り、予想以上に波が際立つとも限らない。 ( こうしてお碗をとりまして〜汁をじゅるっと吸いまして〜麺もちゅるちゅるすすります〜 ) このような文句で書かれたのか定かではないが、書かれた当時その奇妙さにわたしの評価は好ましくなかったと思う。この奇声を発する少女と作者の関係が奇異に読めたからだが、しかし時を隔ててからこの奇声と同じような調子を口ずさんでいる自分に気がついた。いつの間にそうなったのか、本当に気にも止めないうちに。それもハングルやらハンユイやら可笑しなラテン語やらと、わけのわからない言葉でかって気ままに替え歌を作ってしかも声にだして歌ってしまうという。阿呆の鳥(阿呆鳥にはわるいが)この所作を傍で誰かが耳にすれば、この男は気が触れたのか、きっとそう思うに違いない。流行歌一( ビッチュギャッザービッチュギャッザ〜とじまり、ビッチュギャザービッチュギャザー〜こまわり〜)笑 なんのことはない、鈴木あみのBetogetherだった。とりあえず検索してみてやっと取り戻すことができた。 こうなれば独り言も天声を極めていくことになる。あたまの回転は戻る。自らブレーキを壊して軸はぶれる。空間は変調に止まる。痴呆症の男が知的好奇心に蝕まれている。 ヤンバルクイナやあ、やれやれ障害者よりも厄介だ。  と、そろそろ時間差が近づいてきた   続く ---------------------------- [自由詩]ロマン湖にあこがれて/アラガイs[2022年5月16日23時51分] 容赦なく足もとは揺れ、真っ赤な炎を吹き出して大地が割れた 渇いた砂を巻き込み、刺々しい緑色群生がのみ込まれていく 底暗い活断層(裂け目の誕生だ) 荒ぶる原野うねる緑地帯 空を映し出す水面は、いつの日も瞳を潤してくれる ちょうどその頃僕は便座に座り込み、途切れ途切れの力を加えながら次の講義のために予習をしていた 黒板のまえに立ち(浪漫溢れる湖)つまりロマン湖だ、などと言うと、すぐに隣の女生徒を指差してからかう学生がいたりするものだ 、どうやらきみたちはロマン湖をお〇んこと重ねて想像しているようだが、、、ここでわたしの場合弁舌がタイムラグに立ち塞がってしまう。つまり、火山噴火によって雨水を溜め込んだロマン湖でも、その女性器を造語するお〇んこでも言い方はどちらでもかまわないのだ。 一度怪しげな人物に縁を持ってしまうと、言葉も怪しく変化するようになる 縁もゆかりなく生きていきたい  これには、まいったな 人間なかなか正直には言えないもので、正直に言葉を発した途端にお馬鹿なレッテルを貼られてしまう。  (先生、それって駄洒落のことですか?) 積み重ねていくと造語なんてまともには受け止められないのだ。 長々と便座に座り込み、どうでもよいことを考え込んでいた 人によっては、お〇んこのことをセックスと受け止める人もいるだろう かってだが、二枚に割れたホタテ貝の中でヴィーナスは生まれた この臭い匂いを発するウンチだっていつかマロンの匂いに変わるでしょう ロマン湖だろうとお〇んこだろうと              それはきみたちの美意識次第ですよ。 ---------------------------- [自由詩]之変体漢/アラガイs[2022年5月18日11時26分] 「我思故我在」 光陰流水   性愛図、快楽湯勝糞尿湯、狂気平々、閉地肉林戸 ---------------------------- [自由詩]語らない詩人/アラガイs[2022年5月21日2時30分] 俯いて、含み笑いを浮かべて、 、ニヤついてはいない、じっと足もとに視線を落とし、 ときどき、うん、ふん、へえと頷く男、その男詩人、白い球赤い球、黒い球、 黙ったままで、眼がふらんでる空に、やわなつま先、その男   詩人 ---------------------------- (ファイルの終わり)