ワタナベ 2005年3月3日14時56分から2007年9月14日5時35分まで ---------------------------- [自由詩]さそりの心臓/ワタナベ[2005年3月3日14時56分] 指先であそぶ旋律がピアノの鍵盤の上を流れて  部屋に溢れるやさしい音階のすきまに 天球図は青くひろがってゆく 東のかなたの さそりの心臓は自ら発火し そのきらめきは引き出しの奥で眠るルビー 観測されるこまかな粒子は 透過する光の空間に 不安定に浮遊しながら おもいおもいにあそんでいる そして 薄明の大気のような 静謐とした調和にしたがい かたちづくられてゆくその さそりの心臓は しずかに燃焼しつづける 目にうつる光がルビーのこまかな粒子を透過し 空間に溢れるやさしい単色光のすきまに 天球図は青くひろがってゆく 北の破軍星は極点を中心にめぐり さそりの心臓を貫くと ルビーははじけて 天球体の頂点から 輝きながらふりそそぎ 大気圏で燃え尽きてゆく 夜空いちめんの流星雨 七曜の星のひしゃくにわずかに残った すきとおる一滴の水が 部屋も空間もすみやかに満たし あらたにかたちづくられるさそりの心臓は 天球図の東のかなたで しずかに燃焼しつづける ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]一人ランダム100人斬り@深夜の会議室(パクリ御免)/ワタナベ[2005年3月30日8時00分] 一人ランダム100人斬り!!!(暇人) http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=6721 からふさん 「遮光カーテン」 遮られて僕には見えていないものを見るあなた、世界を生むあなた、女性の神秘デスカ。発想は結構男性ならばありがちッス。僕には見えないなんてチョトストイックにキメてみたり。世界を世界のまま扱うのは難しいと思いますから〜。残念! ワタナベ [5:09:45] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=7254 竹節一二三さん 「二月に」 12〜15文字の定型詩ッスね。定型なら徹底的に定型にこだわって12文字ならば12文字の出す語感を、11文字にして内容とがっちさせたり、13文字にしてみたり、そういうとこかっちりこだわってミレバ〜?こういうのって作者のリズム感だったりするわけで、より精緻なリズムでライムなポップヒップアップがんばれ。 ワタナベ [5:17:21] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=641 いわぼっけさん 「ふるさとの声」 キター 地元の郷土料理風。じもてぃーしか分からん単語がたまに深い詩情を生むことがありマスネ。じもてぃずむと都会ズムとのメリハリ、あるいはカオスティックな部分。残念!浅いッス。黄金比を追及してくらさい。 ワタナベ [5:25:06] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=16947 さささん ハグロトンボ OH MY GOD ポイントしちまったZE! こういうの好きなんだけどなぁ。ルナールの「博物史」と比較してみましょう。ん〜「ハグロトンボ」がいかなるものなのか、その提示が弱い。知らない人にはどんな感じなんかさっぱりわからん、黒曜石と書いてあるからきっと黒いんだろうが。レトリック、その他表現駆使して「ハグロトンボ」を読者に提示してくらさい。でもすきー 何気ない場面を切り取ったっぽい感じ、そこに「わた...以下略 ワタナベ [5:31:31] 以下略ってなんだYO!! 書いた書いた 書きましたっての そっからがミソだったっつーの ワタナベ [5:33:03] 激なまくら刀で続けるZE,、、、 ワタナベ [5:34:27] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=27047 Dr Jaco氏 「プラトニックな夜」 ぬお、二行目四行目がなんの暗喩なのかがわかんねーぜ、よって漠然としか感じられnaiai. んー、この感覚ってば、結構人間の根本的な矛盾だったりするってばよ(ナルト風)よってじゃこさんなりに書き込んでほしかったZE! ワタナベ [5:39:57] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=17027 蒼空と緑さん 「靖国にて」 若いなりにこういった国際問題について、個人で考えをめぐらせるのは良いことだと思いマフ そっからなにか自分の進むべき道が見えてくるかもしれないしNE!! ワタナベ [5:42:49] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=20253 草野大吾氏 「返済する秋」 やっべ 未詩にも意見述べたかも ワタナベ [5:47:02] ウス 全部自由詩でしたッス グッドラック。 子どもの頃は甘えん坊で、でも美人に育ったわねぇ、最近じゃぁ3丁目のだれだれさんと付き合ってたらしいわよ、あら、もうその人とは別れたのよ、最近じゃ5丁目の、、、てな感じッスね。しかもお金にルーズ。擬人法も効果的に使用したアイテムを引き立たせていると思うッス。最終連がうまめ。ただ、あまい!!この女=秋には萌えがたりん!!ギャルゲーやってでなおしてきな。 ワタナベ [5:51:21] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=1576 本城希望さん 「どうしようもないこと」 俺に言うな、俺に(スパイク・スピーゲル) ワタナベ [5:53:27] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=13303 アンテ氏 「みにくいきもち」 うーむ。素材の良い、単色のインナーという感じッス。ちょっと小粋なりーまんのおいさんが着ているような。俺にはまだはえーな。ジャケットとパンツとのあわせ方で高級感あふれる大人の男になるんだろうけれど。ちょいとラフに着て近所に買い物にでかける休日のお父さん?パパーあれ買ってーって娘にねだられたらダメって言えないんだろうな。結局娘はぐれたりしちゃいますけど、それは娘さん本人の人生ですから。ぱぱがんばって ワタナベ [6:06:09] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=3011 冲克。さん 「ただいまー」 まぁがんがれ、途中の誤字「なるにかなー」にちょっと萌えたゾ☆ ウッス 10斬りで休憩ッス ワタナベ [6:14:57] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=10852 たかみみずうみさん 「トレンチコート」 ご主人様 行ってくるんだにょ(はぁと てじなーにゃ☆ ワタナベ [6:17:26] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=6613 クリさん 「RED」 うーむ。からめかたが微妙。一つ一つの専門的知識の必要な比喩や表現は嫌いじゃないッス。個体の絶滅に焦点を絞るのか、君と僕に焦点をしぼるのか、そしてそのどちらかに赤、夕陽をからめレバー? マカロニとパスタ混ぜてさらにトマトソースかけちゃった感じっスね。 ワタナベ [6:23:18] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24198 さささん 「さよならさつき」 7,5、完璧です。ソレダケー ワタナベ [6:26:38] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=23889 T-シャツさん 「要は簡単だ」 暮れなずむ街の 光と影の中 愛するあなたへ 贈る言葉 涙こらえて 微笑むよりも 涙枯れるまで泣く方がいい 人は悲しみが多いほど 人には優しくできるのだから さよならだけでは 淋しすぎるから 愛するあなたへ 贈る言葉 ワタナベ [6:32:21] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=23589 天野茂典さん 谷川俊太郎 これ自由詩じゃないでしょ いやまぁ本人が自由詩だってゆーんだからそうなんでしょーけど ワタナベ [6:35:21] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=9378 六崎さん 「点三つ 10minutes」 まだまだ夜は、長くある だったり、最後の二行だったり、そこらへんが この詩の根底に流れている雰囲気をよく出している行だと思う。それにうまく全てがのっかっているかというと、そうではない。これは言葉、例えば恒星新薬氏というシーニュのシニフィエの追求だと思う。全ての言葉においてその追求をしていくんだね。果てしない道のりだ。それらが全て統一されたとき、あるいは一つの黄金比を作り出したとき。他の追随を許さな...以下略 ワタナベ [6:43:04] でたぜ以下略、、、 ワタナベ [6:44:58] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=14313 木立さん 「ノート(風)」 情景を描いてるんじゃないのね、はてさて、なにを追っかけてるのか。作者のことを知る上で作品を超えるものは存在しないというのは自明の論理であるる。これだけ作品を通して人となりの想像できない詩人さんも珍しい、作品数の多さから言っても。それは詩と作者との距離を示しているのか。あるいは、、、こういうの好きな人っているんだろうね。俺は苦手ぽ。 ワタナベ [6:52:16] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=19491 椎名さん 「露草」 露草の青を引き立たせるためには、まず、前提として比較対照とされている太平洋の青やら空の青やらに圧倒されなければならない、そこから始めてみたらどないだしょ。圧倒されると、もっともっと書きたくなるんじゃないかナ。 ワタナベ [6:55:20] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=27850 かなめさん 「リタイア」 ポイントしちまったZE!! そしたらベンジャミンがいたZE!! 思わず笑ったぜ(笑 なんだろうね、技術とか表現だとかいろいろあるんだけっども、こういう考え方する人って基本的に好きなのね。詩がどうこうよりも、あなたが好きですと言いたいにゃ。 ワタナベ [7:01:24] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=31476 練さん 「パーフェクト デイ」 読み手は「こういう日はなんだって捨てられそうな気がする」 「そしてあたしは、からっぽのコーヒーの缶だけすてました」 さらに「あしたも〜」 から作者の心情を読み取ろうとする。しかしここで、それを言い当てたところでたいした意味はない。 実際に意味があるとすれば、詩自体からそれが湯気のように立ち上ってくる、そんなこと。そしてそれを追求するのが楽しかったり、苦しかったりするんだけれども。そこは人それぞれ。...以下略 ワタナベ [7:06:38] 以下略うぜー ワタナベ [7:07:52] (ΦωΦ)ふふふ・・・・ おいらのなまくら刀で20斬ったぜ 休憩だ 少し待ってろこわっぱども、、、 ワタナベ [7:11:28] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25703 渡邉さん 「アクアリウム」 んー? 静けさを際立たせる鉦の音、「いぬがしんで しずかです」 は中也の「とたんがせんべいくって 春の日の夕暮れは穏やかです」 を彷彿とさせますな。 なるほど、作者は犬と暮らしていて、その犬が死んで一人、ってのも際立たせているのかな? それにつながる墓地のイメージ? と考えると なかなか上手いじゃないッスか。 百科事典をひらく、わたしもいつか〜 最終連、なかなかにお見事です あとは行間をいかにして...以下略 ワタナベ [7:18:51] ミソのところが以下略なのがミソです。 ワタナベ [7:38:54] よし、これ投稿します!決定!もうちょい斬ります。御免! ワタナベ [7:39:53] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=27841 Utaさん 「M&M」 これは成長でふか? 骨の折れる(ように聴こえていた)音楽は(今になって聴きかえしてみれば)案外ポップスじみてたよてことなのかなぁ。痛い〜もう一杯。 ワタナベ [7:44:48] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25025 紫音さん 「愛しすぎて」 何気に結構伝わってきますね。詩中に愛だのなんだの入れるとかなり陳腐になりますけど、言いたいことは伝わってきます。激しい不協和音。調律しないでこのまま、不協和音のままで表現方法を練ってみてはどうでしょ。どうなるかしら、あたしもこれくらい愛してみたいわ。 ワタナベ [7:49:27] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=8470 玉兎さん 「ほっぺた」 やヴぁい、詩にはまってきたので、そろそろやめます。詩にはまるとどれもこれも好きに見えるんですよね。これとかも、二連目、そのぎこちない笑顔が脳裏に浮かんじゃったりして。言葉の線がすごく細いです。それを自分の良いところととらえるか、悪いところととらえるか、好きなようにしなっせ。でも嫌いじゃないんだなぁ、困ったもんだ。 おつかれい!!失礼侍!!御免。チン。 ---------------------------- [自由詩]リフレイン/ワタナベ[2005年4月1日9時14分] リアシートの女が もたれかかる窓には 人々の行き交う街の喧騒がうつり それが音もなく流れてゆく 目を閉じても ネオンの原色が まぶたの裏に繰り返し焼きつく 鼓膜を揺らすウッドベースの心地よい重みが 全身にかかって リアシートに埋もれる女 立ちこぎで坂道を登ってゆく その頂上からはこぼれるほど青いそらが広がり 冬の余韻を残した風が全身をなで一息にとおりすぎる 最後に ちからをこめてペダルを踏みつけると そらよりも青いいちめんのいちめんの海 呼吸に合わせて イヤホンから流れ込むウッドベースは心地よくはずむ かすかな潮の香りが 深呼吸するたびに 大気に混じって入りこみ 指先からつま先まで満たされてゆく 古びたウッドベースの弦は無く くりぬかれた黒いすきまを覗けば かすれたアルファベットの文字と たまった埃 ただ、そのままじっと目をこらしてご覧 暗い空洞に 節くれだった太い親指が見える 次にしわだらけの黒い手の甲 腕の筋肉が繊細に そして大胆に動く くたびれた椅子に座った大きな影が 上体を前後に揺らす度に ウッドベースは心地よくはずみ 心臓をふるわせる低音が聴こえてくる 窓を流れる街の喧騒を忘れ リアシートの女は眠りに落ち うち寄せる潮騒の波間をただよう 弦の無い 古びたウッドベースの音色 ---------------------------- [自由詩]徒然ー「夜半」/ワタナベ[2007年6月9日6時44分] 今夜半からの雲に覆われた月の光は それでも雨粒に溶け込んでアスファルトにあたるたびに ぴんと張った鼓膜をゆるやかに振るわせる音で うずくまった街並みの背中をそっとなぞっていくから さみしさは、目のずっと奥のほうで鳴るノイズ 誰もがぬぐうことさえあきらめてしまって じっと耳をすますと 淡い月の光の その音 に すいこまれてゆく 夜 雨の降る夜 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]今夜すべてのPCの前で/ワタナベ[2007年6月20日10時04分] 精神科さんの小難しい専門書をひもとくと、学習理論、というものがあります。 学習理論:人間の行動はある一定の報酬に基づいて行われる、報酬がともなうなら      その行動は強化される。人間の心理状態というのはホメオスターシス(均衡状態)      を保とうとする方向に働きかける、ストレスによって心理が不安定になる(ドライブ状態)      人間はホメオスターシスを保とうとする、そのためにいろいろなものに依存、報酬を      得ることを欲する。 ここで、詩というものについて考えてみましょう。生来的、あるいは後天的にストレスを感じやすい 人間が詩を書くとする。当然彼らはホメオスターシスを保とうと報酬、あるいは依存を必要とする。 ここで、現フォのポイントが報酬に当たると考えるならば、自分のささやかな自己表現に対して 読み手がいる、そしてポイントという目にわかりやすい形での報酬が与えられることにより、 現フォの詩人はより強く学習理論に組み込まれてゆく、そしてポイントというものに興味がなくなった、 あるいは報酬としての役割を感じなくなったら去ってゆく。 非常に短絡的な考えではありますが。 そんなことを考えながらPCに向かっている。屁理屈ばかりこねる嫌なやつだ。 さみしい人間がさみしい人間同士傷をなめあって何が悪い、それに一概に言えた話ではない。 中にはポイントなぞ意にも介さずに黙々と詩作活動をしている人だっているじゃないか。 人間には確かに依存というものが存在する、それは人間の生来の業であり、言い換えれば 人と人との絆でもある。詩人ってなんだろう、詩ってなんだろうなんて中学生のような問答を 頭の中で幾度となく考えながら、、、 あおぞら つき こがねいろのこむぎばたけ かぜのとおりみち ゆれる ゆらゆら 人 その中の人 にんげん 人間ってどうしてこんなに弱いのだろう、そして強いのだろう あなたのアンテナは、今日もなにか受信して、それを詩にしていますか あるいは思想、さまざまな思想。 あなたへ、書く、ということ、そしてそれをどこでもいい、発表する勇気を (らも氏へ、ストレートのミルクを) ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]銀河鉄道の旅1/ワタナベ[2007年6月25日9時24分] 私は小学生の頃は母の影響でミヒャエル・エンデや宮沢賢治、ゲド戦記、そういったものをずいぶんと読みました。拙作「さそりの心臓」は宮沢賢治の銀河鉄道の夜の影響を多大にうけたものであり、また私のつたない詩群の中に夜空、夕空、星などが頻出するのは、まさに小学生の頃うけた強烈な印象が残っているからと推測します。 この私の小学生の頃から手元にある宮沢賢治の世界、特に影響を受けた銀河鉄道の夜、これは読むという行為にあってはさまざまなイマジネーションを我々にあたえてくれる不思議な世界です。しかし、本質を読み解こうとすると、非常に難解な物語へと変貌します。 私はこの宮沢賢治の世界が本当はどのようなものなのか、知りたく思い鈴木健司著「宮沢賢治という現象ー読みと受容への試論」という本を手にし、ジョバンニとカムパネルラのたどった銀河鉄道を、自分の足でたどってみようと思いました。 これから記すことは、鈴木健司氏の著作からの引用、紹介であり、それと自分のたどった 銀河鉄道の記録でもあります。 1、銀河鉄道の夜における銀河世界の成り立ち  「銀河鉄道」は古典的な宇宙観における、「天球面」にそって敷かれていることにその本質がある。  以下、銀河鉄道の夜(四、ケンタウル祭の夜)  ジョバンニはわれをわすれて、その星座の図に見入りました。  それはひる学校で見たあの図よりはずうっと小さかったのですがその日と時間に合わせて盤をまはすと、そのとき出ているそらがそのまま楕円のなかにめぐってあらはれるやうになって居りやはりその真ん中には上から下へかけて銀河がぼうとけむったやうな帯になってその下のほうではかすかに爆発して湯気でもあげているやうに見えるのでした。またそのうしろには三本の脚のついたちいさな望遠鏡が黄色に光って立っていましたしいちばんうしろの壁には空ぢゅうの星座をふしぎな獣や蛇や魚や瓶の形に書いた大きな図がかかっていました。ほんたうにこんなやうな蠍だの勇士だの空にぎっしり居るだらうか。ああぼくはその中をどこまでも歩いてみたいと思ったりしてしばらくぼんやり立って居ました。  以下、(五、天気輪の柱)  あああの白いそらの帯がみんな星だといふぞ。 ところがいくらみていても、そのそらはひる先生の云ったやうな、がらんとした冷たいとこだとは思はれませんでした。それどころでなく、見れば見るほど、そこは小さな林や牧場やらある野原のやうに考へられて仕方なかったのです。  ケンタウル祭の夜、において、鈴木健司氏は以下のように述べています。 「ジョバンニが(獣や蛇や魚や瓶の形)の描かれた星座面を見て、「ああぼくはその中をどこまでも歩いてみたい」と思う少年であったことは、この物語が成立する前提条件である。銀河鉄道の夜は科学的物語である前に神話的物語として我々の前にある。」  以下、(一、午后の授業)  先生は中にたくさん光る砂のつぶの入った大きな両面の凸レンズを指しました。 「天の川の形はちゃうどこんなのです。このいちいちの光るつぶがみんな私どもの太陽と同じやうに自分で光っている星だと考へます。私どもの太陽がこのほぼ中ごろにあって地球がそのすぐ近くにあるとします。みなさんは夜にこのまん中に立ってこのレンズの中を見まはすとしてごらんなさい。 こっちの方はレンズが薄いのでわずかの光る粒即ち星しか見えないのでせう。 こっちやこっちの方はガラスが厚いので、光る粒即ち星がたくさん見えその遠いほうのはぼうっと白く見えるというこれがつまり今日の銀河の説なのです。−略ー」  さらに氏は(一、午后の授業)において、賢治の当時の宇宙観は現在とそれほど違うものではなかったことを指摘しつつ、次のように述べています。 「(五、天気輪の柱)においての文章は作者賢治の脱科学宣言の意味合いを含むものである。」 「では、賢治は科学の否定の上に神話の実在性を構築しようとしたのか。おそらくそれも否である。ジョバンニを生徒という立場に設定したこと自体、神話と科学とが決定的な対立を生じないよう配慮された結果であると見ることができる。というのも(先生)は(大きな望遠鏡で銀河をよっく調べると銀河は大体なんでせう)と生徒たちに問いかけており、これは、銀河が星の集まりであることをしるには「望遠鏡」という科学を手にする必要のあることを示している。(先生)の科学は(望遠鏡)という媒体の上にはじめて成り立っているのであり、(望遠鏡)をもたぬジョバンニにとって、(先生)の科学は必ずしも万能ではない。」 そして、最後にこうしめくくっています。 「つまり、問題は科学と神話、先生と生徒という対立構造にあるのではない。ジョバンニがおとなになって「望遠鏡」という科学を手にし、銀河の星々を覗いたとき、少年の頃の 実感としての神話をどこまで保ちつづけられるか。その質が問われているのである。 そしてその答えは、ジョバンニにとっての銀河鉄道の旅という経験の中にのみ存在するのである。」 懐中電灯の明かりをたよりに立ち止まっては本を読み、記された道順をたどってきました。 ふと気がつくと、頭の芯のあたりに熱がこもったようになり、足がいつのまにか疲れていました。 ちょうど天気輪の柱がぺかぺか消えたりともったりしているのが見えてきましたから、あのあたりで休憩することにします。あたりいちめんのしろつめくさをなでる風が初夏の香りをふくんで私の鼻の奥のあたりをくすぐります。 すると、どこからか不思議な声が聞こえてきました。 銀河ステーション 銀河ステーション ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]於会議室A 合評(2004年度作品)/ワタナベ[2007年6月27日0時10分] いとう [22:59:00] 看板=合評しますよー(飛び入れ!2004縮小版) いとう [22:59:03] はいはい。 相田 九龍 [22:59:14] うす!2003もまだ遣り足りませんが、今日は2004で! いとう [22:59:16] 2004かー 相田 九龍 [22:59:30] では行ってきまーす いとう [23:00:01] これいこうぜ。 いとう [23:00:03] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24222&from=menu_p2004.htm 相田 九龍 [23:01:21] おw 相田 九龍 [23:01:26] 面白そうですね!w いとう [23:01:30] つかいいじゃんこれ。好き。 いとう [23:02:09] 構造というか、ギミックかな、それが3つくらいあって、 相田 九龍 [23:02:41] ぎみっく。 いとう [23:02:43] あと、勢いがあっていいなぁ。特に1連 いとう [23:03:11] 男がいて、妻がいるんだよね。 いとう [23:03:36] で、1連の終わりのほうで、妻が強くなって、 相田 九龍 [23:03:40] 男がいて、妻がいる。 いとう [23:04:01] 一度は、妻の勝ちかなぁって感じになるんだけど、 いとう [23:04:13] でも、東征が消えないんだよ。 いとう [23:04:29] そのへんの流れが、一連は上手いなぁと思う。 いとう [23:04:44] でな、 相田 九龍 [23:04:53] うんうん いとう [23:04:56] フツーなら、もっとステロタイプになるんだよね。こういうの。 いとう [23:05:11] けど、波が二つ作ってあって、 相田 九龍 [23:05:36] うんうん、波は感じる。 いとう [23:06:06] そのへんの構造が好きなんだよ いとう [23:06:18] 最後はやっぱ妻なのね。 いとう [23:06:32] でも、妻のもとには帰ってないんだよ。 相田 九龍 [23:06:35] 妻なんですよね。なんでなんでしょうか。 相田 九龍 [23:06:45] 一人目と二人目は売ったのに。 いとう [23:06:53] そりゃー、妻だもん(笑) 相田 九龍 [23:07:04] ww いとう [23:07:19] いや、最初は売ってたんだけど、 いとう [23:07:35] 1連の途中で妻が強くなるじゃん。 いとう [23:07:47] 定着、みたいな。東征の反対のように。 いとう [23:08:02] 定着ということにしとくと、 相田 九龍 [23:08:12] うんうん。 いとう [23:08:15] 定着したんだけど、やっぱ東征が忘れられなくて、 いとう [23:08:30] でてっちゃうんだよね。 いとう [23:08:50] 出てったんだけど、 いとう [23:08:58] 自分が夢見た東征ってのが、 いとう [23:09:16] 鄙びた漁村で終るんだよ 相田 九龍 [23:09:35] (なんて読むんですか?) いとう [23:09:37] そんときに、妻=定着を思い出して、 いとう [23:09:42] ひなびた 相田 九龍 [23:09:58] ありがとうございます。うんうん いとう [23:10:04] そいで、泣くんだよ(笑) 相田 九龍 [23:10:18] 笑って言うんですかww いとう [23:10:23] 簡単に言っちゃうと、 いとう [23:10:52] 男のロマンと、「そばにいて」という女の願いと、 いとう [23:11:04] そのへんの力関係なんだけど、 ちる [23:11:23] こんばんはー^^来ましたー 相田 九龍 [23:11:34] ロマン、をもうちょっと難しく言ってみて欲しいかもしれませぬ。 ちる [23:11:46] ログ読んできます 相田 九龍 [23:11:47] こんばんはー^^ いとう [23:11:51] 東征でいいじゃん!<ロマン 相田 九龍 [23:12:10] ロマン以上の意味はあんまりないんですか? いとう [23:12:11] 東征はロマンだよ!(笑) 相田 九龍 [23:12:22] ww いとう [23:12:23] わかんない(爆)<ロマン以上 相田 九龍 [23:12:38] ロマンかー、ふむふむ。 いとう [23:12:52] 男ならわかれよ!(笑) 相田 九龍 [23:12:59] いや、ロマンはわかるんですけどww いとう [23:13:13] 地球の海は俺の海だよ! 相田 九龍 [23:13:15] それ以上の意味を考えてしまって訳わからなくなってましたw ちる [23:13:17] あああ、相田さんは、男性ですか!? 相田 九龍 [23:13:23] www いとう [23:13:28] (笑) 相田 九龍 [23:13:32] 男性っす^^w ちる [23:13:40] ・・・・。 ちる [23:14:11] 申し訳ございません、、女性と思い込んでおりました・・・(汗 いとう [23:14:18] でさー、 相田 九龍 [23:14:23] あ、なよなよし過ぎッスかーーーあーーーーーw  相田 九龍 [23:14:25] うす。 いとう [23:14:32] 2連で列車が出てくるのもいいんだよなぁ。 相田 九龍 [23:15:08] それはなんとなく分かります。でもなんとなく、なんですよね。 いとう [23:15:08] すごい、一度東征が滞って、その後の年月を感じるんだよ。 ちる [23:15:12] (平川さんも男性だったしなぁ・・・どうして間違うんだろう、、悶々。。) 相田 九龍 [23:15:14] うんうん。 いとう [23:15:15] 列車に乗って東征するんだぜ。 相田 九龍 [23:15:30] ですね、その後しかも歩いちゃいますね。 いとう [23:15:49] 女房売って川渡ってたヤツが、列車に乗って東征だぜ。 いとう [23:16:22] なんかそのへん、ギミックが上手いよなぁ、と。 風鎮子 [23:16:55] こんばんは いとう [23:17:07] ちすー 相田 九龍 [23:17:11] なるほどぉ いとう [23:17:17] まぁ、好きな詩ということで。 相田 九龍 [23:17:17] こんばんはー^^ いとう [23:17:44] なんかせっかくなんで、もっと酒飲むよ! 風鎮子 [23:18:09] いとうさんが片野さんの詩、持ち上げるとつまんないですよ 相田 九龍 [23:18:19] ww ちる [23:18:25] こんばんは、風鎮子さん^^はじめましてー。 風鎮子 [23:18:38] 仲良さそうだし 風鎮子 [23:19:10] はじめまして。 いとう [23:19:42] いやでも、片野さんの詩好きだよ。上手いし。 いとう [23:20:04] つか、俺よりも上手いだろー。 風鎮子 [23:20:24] 率がないんだけど物足りないなあ いとう [23:21:07] じゃー俺の詩やってくれよー(爆) 風鎮子 [23:21:52] トウセイって、結局そんなに大きな事ではないのを誇張してるユーモアっていうか、 いとう [23:22:08] おう。 いとう [23:22:25] モチーフとしては確かに大きくないよね。 いとう [23:22:37] つか、よくある感じだよな。 風鎮子 [23:22:42] だから妻とある種釣り合ってるというか いとう [23:23:01] なるほど。 いとう [23:23:40] 俺は、そのへんのよくあるモチーフを、二転三転させて上手く作ってあるところが好きなんだよな。 風鎮子 [23:23:42] でもナルシズムを感じさせないのが好感 いとう [23:24:08] よくあるのを、よくある感じで終らせてないところ。 いとう [23:24:33] そこは作者のセンスだし、作品の深みでもあると思うよ。 風鎮子 [23:25:26] もっと背景に大きなスケールがあると、深みも増すような いとう [23:25:52] でも、そこまで求めてもないものねだりかなぁとは思うよ。 風鎮子 [23:26:27] ああ、そうですね いとう [23:26:33] けっこうすんなり書かれてあるようで、ギミックはけっこう凝ってるんだよね。 いとう [23:26:49] けっこう作りこまれてる。 いとう [23:27:10] そのへんが俺は好きなんだよな。 風鎮子 [23:27:35] ですよね、うまくいえないけど いとう [23:28:06] 端的に言えば、書こうと思っても書けないと思うよ。こういうの。 いとう [23:28:30] 俺が書けないだけかもしれんが(笑) 風鎮子 [23:28:47] はい〜 いとう [23:28:56] ま、そろそろ別のいきますか。 いとう [23:29:31] あいだなんかもってこいよ(笑) 相田 九龍 [23:29:32] はーい 相田 九龍 [23:30:42] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=11175 相田 九龍 [23:30:44] たっ! 風鎮子 [23:31:58] 最終行が残念 ワタナベ [23:32:45] (こんばんは これログ投稿して新撰組にのせちゃだめ?) いとう [23:33:00] うひゃひゃ(笑) 風鎮子 [23:33:03] いとうさん実は知り合いの知り合いです いとう [23:33:11] おろろ。 いとう [23:33:20] 知り合いは誰ですか?(笑) 相田 九龍 [23:33:22] ろろん。 風鎮子 [23:33:49] それは内緒で(笑) いとう [23:34:05] あれ。俺、この詩、なんか批評したような記憶が。 いとう [23:34:30] そか(笑)。ポエケット行くんで、なんかあったら挨拶でも。 ワタナベ [23:34:38] (Aでやってるということは、投稿に同意した上と見させていただきます。一応聞いてみました) 相田 九龍 [23:34:47] ぎゃ。 いとう [23:35:01] あー、ま、そうだよな(笑)。<同意 ワタナベ [23:35:38] えへ(ちょっとずるい) 風鎮子 [23:35:45] その節はよろしく〜僕は行けないんですけど遠くて ワタナベ [23:35:54] (でもどうしてもやめてくれっていうのなら無理にはいたしません) 氷水蒸流 [23:36:00] (ズルイようでズルクない、こんばんは) ちる [23:36:23] (あら。いつのまにかワタナベさん。こんばんはです。) ワタナベ [23:36:39] (こばにゃ^^) ちる [23:37:04] (氷水蒸流さんも、はじめまして、こんばんはですー) いとう [23:37:21] いやまぁ、なんか発言すると絡まれるんで、絡まれないスタンスが欲しいなと思うないものねだりの今日この頃なのでした。>ワタナベさん 氷水蒸流 [23:37:22] (はじめまして、よろしく) 相田 九龍 [23:37:26] (汀←これなんて読むんですか?) いとう [23:37:27] (ちす0) ワタナベ [23:37:55] ご心情 深くお察しします>いとうさん いとう [23:37:59] みぎわ。<汀 風鎮子 [23:38:01] みぎわ? いとう [23:38:12] 水際とか、渚 とか。 相田 九龍 [23:38:12] さっき実は「ぽいんとぽいんと・・・」のれつらさんのコメント読んで泣きそうになりました。 相田 九龍 [23:38:15] みぎわ! 相田 九龍 [23:38:30] あたーっす! いとう [23:39:25] これなんかどっかで批評した記憶があるんだよ。 相田 九龍 [23:39:41] 極道とか? 風鎮子 [23:39:45] 石板とか、いとうさん嫌いそう ワタナベ [23:40:03] フォラムですね批評も覚えてます いとう [23:40:40] あった。 いとう [23:40:42] http://po-m.com/inout/06ito.htm いとう [23:43:16] なんかいいこと言ってんなぁ(笑) 相田 九龍 [23:43:30] 言ってますねwwww 風鎮子 [23:43:44] うーん… 相田 九龍 [23:43:49] うわーww 松本 卓也 [23:44:05] 流れも読まず、ふらり。 相田 九龍 [23:44:23] ぐてもくさんばんはー。 相田 九龍 [23:44:52] この詩の深みが増しました。くそー、良い批評ですね。 風鎮子 [23:44:54] やぱ最終行が唐突すぎてぼくは冷めます 松本 卓也 [23:45:04] 柱|´×`)□ モフー。飲んだ勢いで飛び入りますよ。 氷水蒸流 [23:45:55] 石版をおろしにくるっていうのが、なじまない いとう [23:45:55] 詩が終ったところから、詩が始まるんだよ。 風鎮子 [23:45:56] そんなに詩を愛してないからかなあ 佐々宝砂 [23:46:03] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=11487 佐々宝砂 [23:46:06] 去る いとう [23:46:08] <最終行 相田 九龍 [23:46:12] wwwww 松本 卓也 [23:46:25] 中心が曖昧な作品だな、と一読して感じます。何を芯に添えているのが分らないので、拡散してしまっている。何処にも収まっていないもどかしさがある。以上寸評。 氷水蒸流 [23:46:28] 失われてしまうのならわかるけど 相田 九龍 [23:46:41] めずらしい!触発されてる!ww 相田 九龍 [23:47:05] ひゃひゃーw 俺ぐらいじゃないですか、二人とものファンなのw 松本 卓也 [23:47:37] おいら、こういう作品の中で、掻き消えてしまっている言葉の行方には馴染めないと思うです。こんなんでよか? いとう [23:48:02] なんかそのはかなさは好きだよ。俺。<掻き消える ワタナベ [23:48:13] (よかです) 松本 卓也 [23:49:08] これは自分の詩風がそうだから、そう思うんですがね。どこか、まぁつまり凪が収束される情景の果てにある、塊を欲するわけですね。おいらの場合ですけど。 ワタナベ [23:49:08] 言葉のうつくしさは確かにあるけれども きっと ふりむけば ふりあおげば などのカメラワークをとりはずしてみると格段におもしろくなくなってしまう、それは周りが茫漠としているからではないでしょうか。以上です 松本 卓也 [23:49:35] 僕にとって、この詩は良い詩ではない、と思います。 いとう [23:49:55] いや、だからこそカメラワークがあるからいいんだよ。たぶん(笑) ワタナベ [23:50:13] (そのとおりなんですけどね) 松本 卓也 [23:50:47] カメラワークですか。ふむ。そこらへんの他人事感ももどかしさに繋がっているのかもしれない。 風鎮子 [23:51:20] 批評文としてはさささんのほうがおもしろいや 松本 卓也 [23:51:53] 結局、主体は収まりを求めていないわけで、凪の中にあるであろう流動、情動であるとか、人としての感情の消失を感じると、面白みが掻き消えるように感じる。 松本 卓也 [23:52:06] あぁ、えらい久しぶりに力込めてんな、おいら。 風鎮子 [23:53:20] 詩そのものを扱うには短すぎるような… ワタナベ [23:53:26] (さささんの批評は貴重だと感じました。レベルの高い作品であるとおもうし いとうさんの評もうなずける部分があります。ですがいとうさんの評がスタンダードになってしまってはちょっと、とおもったので) ちる [23:53:31] 私は掻き消えるよりも、うまれるような感じがしますねぇ・・・ 松本 卓也 [23:53:55] もうちょっと、集まって欲しいんですけどね。 いとう [23:54:08] あー。ささ来てたんだ。ログ見てわかった。 相田 九龍 [23:54:16] www いとう [23:54:39] いやすまん。俺、ささはフィルターかけてるんで、わからんのよ(笑) 松本 卓也 [23:54:48] このままじゃ掻き消えてしまうと、おいらは感じたわけです。で、その部分に弱さ、良い意味ではない弱さを感じる。 相田 九龍 [23:54:48] (げ、遊び過ぎだ、なんも言ってない) ちる [23:55:01] !!(笑) 相田 九龍 [23:55:09] www 松本 卓也 [23:55:28] 柱|;´×`) フモー いとう [23:55:40] でも、スタンダートになってしまうのはちょっと、ってのはよくわかる。 いとう [23:56:16] わかるうえで、俺はこの詩、好きなんで(笑)。 風鎮子 [23:56:26] ちょっと主体がヒロイック過ぎるなあ僕には 松本 卓也 [23:56:49] もっとこう、面白い作品は無いですかね。探すのは面倒ですけど。 ワタナベ [23:56:55] 実は僕も好きです。 氷水蒸流 [23:57:12] (僕は死んだって、石版をおろさないと思う) 氷水蒸流 [23:57:36] (だから好きじゃない) 相田 九龍 [23:57:37] 潰されたい、、、気もします。 ---------------------------- [自由詩]イメージ・猫/ワタナベ[2007年7月4日4時50分] どこまでも澄んだ音色で 鳴る笛に すすきの野を一陣なでてゆく風 音色に誘われて4匹の猫が 野のくらがりから 躍り出てきて おおきなウッドベースの上に飛び乗る 4本の弦の上でのんびりとしたステップの猫 ささくれた神経をいたわるような4つの低音が 眼下に広がる街なみの背中をそっとなでて ひとつひとつ街に舞い降り 閑散とした駅のプラットフォームで シャッターの下ろされたクリーニング屋の前で 北極星を中心にぐるりとまわってゆく砂浜で そして寝息をたてる僕の部屋の隅で プラットフォームでひとり動き続けるのっぽの時計が 静かに時を刻むのをやめると 猫は一匹ひげをぴくぴくさせて 野のくらがりへ消えてゆく クリーニング屋の前で奏でられる低音に 店の明かりは紛れて 灯の落ちた街並みの風景に溶ける 砂浜は静かに回転をやめた その度に猫はひげをぴくぴくさせて 一匹、また一匹と野のくらがりへ 僕は夢を見る 部屋の隅から聞こえるウッドベースの鼓動の夢 それは一番太い弦の鳴らした夢で 同時にすべてが凝縮された街並みの夢 低い、ささくれた神経をなでるような音色で 鳴る夢に すすきの野は凪いで 四本の弦のウッドベースの上で踊る 一匹の猫の夢 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]復活!!一人100人斬り(於早朝会議室A) -2/ワタナベ[2007年7月8日6時14分] ワタナベ [5:20:55] 看板=とびいれっ ひとりぼっちの寸評会 ワタナベ [5:21:31] てな感じで時間をつぶさせていただきます ワタナベ [5:21:44] 未詩、独白への寸評は行いません。 ワタナベ [5:23:58] 7月8日、午前5時以降の作品について寸評します。 ワタナベ [5:31:41] SOS hyro氏 http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=125454&filter=date&from=menu_d.php%3Fstart%3D0 ワタナベ [5:39:59] まっすぐな気持ちの詩 まっすぐな気持ちていうのはもちたくてもなかなかもてるものではないのでうらやましく思います。君を愛してやる なんて。こういう詩は作品として冷徹な目で見るよりも、少し視点をかえて共感してみよう、あるいはこの詩からどんな方向の作品が生まれるんだろうなんて考えてみると、楽しくなりますね。歌詞のように、いろんな表現であらわしてみよう、だとか、ロックにしてみよう、ポップスにしてみよう、ミュージカルにしてみよう。無限の可能性を秘めています。詩を楽しんでくださいね。書くことが楽しくなってくればまた表現も変わってくるとおもいます。そしていろいろ表現していくうちに、もっともっと気持ちだとか自分のことだとか、深く知りたくなるんじゃないかなぁと。 ワタナベ [5:43:39] 優飛さん NOT FOUND http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=125456 ワタナベ [5:53:42] んっと、今回は細かいところをつついてみたいとおもいます。2連目に注目してみましょう。  >さながらわたしたちは〜 あー、細かいですが、さながら〜の用法は、さながら〜のように、と比喩として使用されます。ここ一つ 「かごの中の鳥にもなりきれずに」 ここが少し読者にとってはひっかかる場所です。籠の中の鳥にすらなりきれない、開け放たれた扉の前で躊躇している姿。単純に比較すると、開け放たれた扉の前で躊躇しているなら、いっそ籠の中の鳥であったほうがいいじゃないか、というALL or nothingの考え方が提示されていますが、じゃぁどうしてそう思うの?って作品に問いかけたときにその答えが示唆されることなく詩が進んでいきます。詩中で答えを明示する必要はありませんが、なんらかの暗喩や比喩、かるく示唆してあげるだけでも読者はとても読みやすくなりますから。 ワタナベ [5:57:29] 追記:細かく読むと出たり入ったりの繰り返し でしたね。失礼。それでその後、昨日と同じ今日、変わらぬ毎日、それよりも籠の中の鳥であったほうがいいって話でしたね。最終的に同じ毎日に辟易している姿。かな。 ワタナベ [6:02:33] アマモリトオル氏 「累積」http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=125457 ワタナベ [6:08:59] うん、そうだなぁ、「立体としたそれは〜」で考え付いた評なんですが、良くも悪くも、紙の上でのみ存在してしまっている詩だなぁと感じました。「蛍光灯」と記されても、それはイメージとして読者の前に立ち上がってくるわけではなく、ただ、「蛍光灯」という言葉として紙の上にのみ存在しています。人の情念を描くのであれば、ある程度紙上よりイメージとして読者の中で立体的な像をむすび、読者の前に立ち現れてこなければならないのではないかなぁと考えました。これはハードル非常に高いですが、書けている作品だけに、次のハードルは高いぞってことなのでしょう。もっと細かい評が必要であれば、某罵倒サイトへもっていくことをお勧めします。 ワタナベ [6:10:36] ここらへんでちょっといったん投稿してきます。読者にとって読みやすい長さでしょう。 ---------------------------- [自由詩]生きる。/ワタナベ[2007年7月9日9時53分] 生きるということが腹の底に岩としてずしりといて もう随分になります その間にも あやふやな記憶をたぐりよせ ようやく原色で彩られた暑い夏へたどりついたころに季節は秋めいて 高い空に母娘の晴れやかな笑顔を見たと思ったら それは灰色の風に凍ってゆっくりと落下していきました あいかわらず岩は岩としてゆらぎもしません 安易に死を望むこともありますが 私は臆病な人間ですので 痛く苦しいことを想像すると身の竦む思いで ただただ老衰で穏やかに死んでいく様を夢想するばかりです くしゃみを2度しました 目の前を銀色の背びれの魚がちかりとして泳いでゆきます まとわりつくような海水の中です ペンを置くと、嘘のように穏やかな気持ちになっている自分に気づい た。しかし今まで薬の効いたためしはなかったし、それは朝の静謐な 空気がもたらしたものであったかもしれない、願わくば、書くという 行為によって苦しみが体の外に放り出されたのだと考えたかった、 それならばこれからだってなんとかやっていける。深い渓谷の底に 陽光が差し込む様を思い浮かべた、細い小川がきらめいている。 また、狭い川原のところどころに咲く白い花のことを思った。 どこからか吹く風に揺られて、触れると高い澄んだ音色がした。 目の前を銀色の背びれの魚が泳いでゆく、 でも私の体にまとわりついていた海水はどこかへいってしまい、 そのかわりにやわらかな風を感じた。 岩は依然として腹の底にあったけれど、不思議と重みを感じる ことは無かった。 耳の奥で澄んだ音色がした 一時だけ糸はほぐれておもいおもいの風にふかれていた ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]水在らあらあ氏・「最果て」に寄せて。/ワタナベ[2007年7月9日15時52分] 水在らあらあ氏 「最果て」 http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=123658 私はネット上にあるさまざまなサイトに自分の詩を投稿している。それは、いろいろな方の意見を聞くことにより、自分の詩を客観的に見直し、さらに上達していきたいからだ。ただの詩馬鹿である。そして投稿するにあたって、よく言われる言葉がある。それは、この詩はあなたにとってどうしても書かなければならない詩だったのか、というものである。これは一概に全ての詩において必要だというわけではないけれど、やはり、作者にとって、どうしても書きたい、と思われて書かれた詩には言葉の強度、そして読者をして迫真にせまらせるなにかがやどるのではないかと思う。 私はこの「最果て」という作品において、少なからずとも読者に迫真にせまってくるなにかを感じた。この詩の根底に流れている生の言葉に圧倒されたのである。読者をしてなんらかの素敵なイメージを膨らませる作品でも、なにか強烈に訴えかけてくる詩でもない。だが、この詩には「血」が通っていると感じた。 >アレックス >ラファ >血を >もらってくれ 作者はどんな意図で、血を「もらってくれ」と言ったのだろう。若輩者の私には想像がつかないがそれでも、強固な絆を感じる。そしてそれは、作品と向き合う際の読者にも及ぶのではないだろうか。最果てでつながれるこの生の絆は私にとってうらやましくもあり、そして人間を恐れる私にとっては勇気付けられるものでもあった。その点ですでに私とこの作品との間には、絆が出来上がっているのではないかとも思った。 作者にとって、どうしても書きたいと思うことがら。 最果てでの愛すべき人たちとの一夜は永遠に生き続けるだろう。 作者の記憶の中で、「最果て」という作品の中で。 そして、その光景を詩という形で垣間見られたのは読者として私には幸運なことであったとおもう。 ---------------------------- [自由詩]石榴/ワタナベ[2007年7月12日13時07分] 黒い布で顔を覆い隠した女が まるみをおびた重いはらをかばいながら 前から、後ろから早足で通り過ぎる人々に おびえるような足取りで市場を歩いている ときおり女の腰のあたりにぶつかっては ”ベバフシードゥ”とはにかみながら謝って 走り去っていく少年の後姿は 女の顔にぽっかりとあいた二つの穴に入ることなく (女は知っている、走り去った少年の行く先を、あの笑顔の上に塗られる影のことを) 女は石榴を一つ買い求め 市場をあとにした 夜中、病院の待合室で貧乏ゆすりをしている どこにでもいるような青年の鼓膜を命の産声がふるわせた 青年はあわてて病室のドアを開け どこにでもいるような母となった女の腕に抱かれる どこにでもある希望におそるおそる手を伸ばした (どこにでもあるということは、なんと素晴らしいことだろう!) 桃色のやわらかなほっぺた これから迎えるすべての未来をつめこんだかのような まるいはら 青年の親指ほどしかないちいさなちいさな手を見て 彼は泣いた あたたかい涙が赤ん坊の額に ぽつりぽつりとおちて 赤ん坊の体温が 母親の胸につたわって 彼女のこころはぬくもりで満ちたり その両目から流れる涙にも気づかずにいた (気づかないことを誰が責められるだろう) 部屋の片隅で 女はおびえるように出産した 伝わってくる確かなぬくもりに 哀しい笑みをうかべながら 今夜もいつものように 遠くからの轟音が机をかすかにゆらし 産まれてきた子のやわらかな背中を 部屋のくらがりが包み そこに死がへばりついている気がして 女は涙もなく嗚咽する ゆれる机の上にある石榴が 音もなく落下していった ---------------------------- [自由詩]僕たちは生まれながらに死んでゆく/ワタナベ[2007年7月18日20時24分] 頭のずっとてっぺんから かなたまでつつみこむようにはられた 透明なフィルムの外側を 音もなく星々がすべりおちてゆく そのすきまに かすかな灯りがひとつ はらばいになって停泊している 砂浜にころがっていたコーラの瓶を オーバースローでおもいきり おばあちゃんね 肺がんやねんて もう80過ぎやから 転移することはないねんて でもね、うんと 病院から出て行ってくれって 言われたらしいから そういうことやから、ね コーラの瓶は確かな手ごたえを右手に残して ほほをなでる風などないかのように ぐんぐんと回転しながら きれいな放物線をえがく オーバースローされるべきなのは 軽い空き缶だったのに おもいきりふりかぶってもなんの手ごたえも感じずに ひじに痛みだけをのこして 風にながされて目の前にぽちゃんと落ちる そんな軽い空き缶 ぼとん、と音がした かなたに見える灯りの ボォーっという泣き声が フィルムの内側で反響して すべりおちる星々がゆがんで見えた ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]一人ランダム100人斬り3/ワタナベ[2007年7月19日9時15分] 愛と勇気だけが友達のへっぽこ侍ワタナベのお送りするひとりランダム100人斬りのコーナー まー侍っつってもさぁ いろいろあるやん? 将来の不安とか 年金もらえねーかもしんねーし だるめでいくで いざ http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=68443 みつべえさん :えろもん(ぽえじーの話) 寝起きやからライトなので助かったわぁ まぁえろもんだからちょっとエロはいってますけど、ライトライト、エリア51 そやってどこが感じるんやろう、とか、こう、ほら、ね あるやん。それは結構難しいことであって、そういうのにお互い無頓着だったりすると夜の生活は楽しくないものになるからのい。 芥川さんが 恋愛は性欲の詩的表現である って言ってたの小耳にはさんだんやけど 詩は言葉の性的表現である か・く・げ・ん☆ つぎ〜〜〜〜〜 http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=57281 炭本 樹広さん 「とりかえしのつかないもの」 書いてあることよりも書いていないことのほうを読ませるタイプの詩なんではないかなぁ >とりかえしのつかないことを >してしまったのかもしれない とある。 老いた母を幼少の頃育った家から 一緒に住むために現在の鉄筋コンクリートのマンションへ連れてきた、そんなストーリーが頭をかすめる ただ残念ながら 強さ(コンクリートの箱の中)<>弱さ(昔住んでいたところ)との対比と書かれていない部分とが不協和音を奏でてしまっている。 幼少の頃の思い出の挿入もあまり効果をあげていない 作者の母への想いはいくばくのものだろう。この詩の底には長い長い物語が詰まっている、好きですとしか伝えようが無い。 なまくら刀で斬りつづけるで〜 http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=123273 苺蝶 梓さん 「喫茶店」 心地よいね  こう、思索の海に沈んでいって、かろうじて残った意識で自分が「溶けていく」ことを知覚している >自分のかたちすら >わからなくなった ところまで自己の内に沈んでいったのに どうして突然また世界を世界として知覚できるようになったのだろう、その次の連が少し唐突。 そして最後に自分の意識がグラスの中に溶けていた、さっきまでの心象をそこに残影としてみている。 でおしまい この詩は作者にとって必要なタイプの詩なんだろうと思う。いろいろな詩があるからのい 表現力とか言葉のセンスなんかはあとづけさくさくで、はじまりはいつも朝、やなくていつもここからでいいんじゃないかな。かなしいときー 拙者には武士道がありますゆえ 武士道とは ちらりと見えるふとももや胸元をおそれず凝視することと覚えたり つーーーぎーーーー http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=122431 今村知晃さん 「車両自己始末書」 あー ここで拙者のスタンスを少しだけお話すると ランダム100人斬りでは 基本的にランダムやけど 好きな詩だけをピックアップしとります。 面白くないな とかおもったのは基本スルーで せやからほめ言葉ばっかり並ぶかもに さっき 自分にとって必要な詩ってはなししたっけ? いや した これもそうだと思うんだけれど、そういう詩はたまに共感を呼ぶことがある。 自分にとって必要なものが他人にとっては不必要だとは限らない。 必要、という点では それは嘔吐だったり、思考の海への沈降だったり、いろいろするだろう そしてそういう作品を読むことによって、奇跡的な確率で、共感する、それは作者が詩で行った行為を追体験すること その行為が行われた時点で 作者と読者の距離は一歩縮まる、よかれわるかれ なんてことを思ったでござる にんにん ラストー http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=111991 たもつさん 「独白」 ちゃっかりポイントしてもた これはいいなぁ  単純に読むならば >かつてそれは〜 >着古した寝巻きが〜 ここで、え、なぜ?って読者は思う。 違和感。 そして「届かないもの」っていうのはなんだろう これは拙者のなまくら刀では斬れませんなぁ 大まかに感想を言うならば、いろいろな場面がパーツパーツとして組み込まれていて、しかしそれらひとつひとつのピースが互いに密接に関係しあい、溶け合い混じりあいながらモチーフの深度を深めている って感じかな。 さらにそれらひとつひとつの場面にも、確かに深度はあって、たとえばさっき言ったような部分みたいに、 ひとついちゃもんをつけるならば、というかこの先もっとこの作品に付加してほしいものをあげるならば ちょっとかくかくしてるイメージうけたので、なめらかさんが欲しい、かな >届かないものを ここが、意味的ではなく、文章として唐突。 でも作品としては脱帽やなぁ。 てことでしゅーりょー 投 ---------------------------- [自由詩]マミについて/ワタナベ[2007年7月20日14時51分] マーミー 悲しい詩を詠ってはいけない 高原に咲く白い花が ときおりふくかすかな風にゆられて りんと鳴るその音のように 僕たちが幸せについてささやきあうとき 高原からのびあがって どこまでも広がる青い空の底を歩く くるぶしをくすぐる雲のやわらかさに わらいながら幸せについてささやきあうとき バス停で かたむいた時刻表を見ると 怠惰な数字がごちゃまぜにならぶ 見上げた白い月は 無表情で僕を見下ろす バスから吐き出される人はおらず 飲み込むばかりで飽和してゆく 振り子のようにゆれる車内で 高原の花と雲について メールをうつ それは中継アンテナで 造花と白い月に変換されて あて先違いで戻ってくる そうさマーミー 悲しい詩を詠ってはいけないんだ どんなに変換され いびつな形になって戻ってきても 僕は発信しつづける そして僕は造花や白い月の白昼夢に包まれて 本当のメールを受け取ることを ずっと待ち続けて 仕事からの帰り マンションのいつもの部屋に灯りがともっていないことに気づく あわてて階段を駆け上がり 息切れした声で名前を呼びながら 合鍵でドアを乱暴にあけて部屋の中へ駆け込む 泣き声が部屋の隅のほうから聞こえる その声を唯一の手がかりにして かすかにのこったぬくもりに触れる 急に足場をなくして どこまでもどこまでも落ちてゆくような 造花や白い月の夢 わかるよ、と言うために必要な勇気は 僕の持つありったけのぶん だけどマーミー 悲しい詩を詠ってはいけない 僕たちはどんどんお互いをはだかにする どんどんと、たまねぎの皮をむくように ふたりがぬくもりと、一滴のなみだになるまで そうして僕たちが幸せについてささやきあうとき 造花や白い月の夢を抱えながら 幸せについてささやきあうとき 声はぬくもりのなかへ溶けてゆく マーミー 僕たちは悲しい詩を詠わない 発信しつづけ、はだかにしあいながら 詩は、そう 大気に 高原の白い花も くるぶしをくすぐる雲も 造花や白い月でさえも そう 大気に そして僕たちが幸せについてささやきあうとき 僕たちはぬくもりに ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]即興詩会(飛びいれ!火にいる夏の虫、編)1/ワタナベ[2007年7月20日19時17分] ワタナベ [17:18:15] 「EVE」 ワタナベ [17:18:29] 制限時間10分 はじめ ワタナベ [17:30:21] はじめに言葉ありき どこからか鼓膜を振るわせる声 きこえてくる はじまりながらにおわりにむかう EVE 最初で最後の パソコンのモニターを眺めながら 一日を終える あふれるほどの ことば、詩、散文、ことば そう ことば が モニターからあふれてくる 少しずつ息が止まる 窒息して、遠のく意識のなかで わたしはあなたを見た このワイヤードの中に EVE はじまりながらに終わりにむかう EVE 最初で最後の アオゾラ誤爆 [17:31:23] 冬のうちに悴んだ指先も いまとなれば幻のようでした あなたの狭い部屋のすみっこで ねころがって集めたたくさんの景色も うそのようでした こんどはわたしの小さなてのひらで 芽吹く声だけがせかいを生かしている テレビのなかでうごめくひとかげが いつもよりやさしいのも、気のせいかな 街が明るくなるのも時間のうちで さよならをいえなかったのは僕らの傷で 何度か舐めあってもたぶん消えない 夕べの空に浮かんだ星に あなたの大きな願い事をひっかけて 飛ばしたでしょう きょうがなんのひか、わすれてしまったかな くだらないイヴ わたしだっていつのひか なくしてしまうかもしれないもの きみとみた沢山の今日が 昨日からじゃ期待できないことに さみしくなんて ならないよ、きっと なにもなにもない、そばにガラスの匂いだけ 抱きしめる 思い出を片っ端からくだいていったら いつも同じ場所にたどりつくよ きみがいなくてもそれは同じなんだ 痛みはもうどこにもないの ないよ ないの 七月、群青色が落ちてきて 写真になるのはずっともう前のこと だよ 氷水蒸流 [17:40:11] まどろみながら待っている  はじまりはいらない  遠ざけて輝きを   グラスの中で太陽を転がして  マドラーは溶けて行く  ワタナベ [17:42:10] では寸評を アオゾラさんのは冗長で散漫 氷水さんのは描きたいことはわかるけれども意味まで到達してないっていうかその後に出てくる言葉が詩だと思う ということでアオゾラさんの力技一本、アオゾラさんで。 アオゾラ誤爆 [17:44:53] 「サークル」 アオゾラ誤爆 [17:45:10] 制限時間10分です どぞ ワタナベ [17:48:10] A to Z = A やわらかな曲線美 そう、この広大な 言葉すらも届かない 宇         宙 にある青い星 それは美しい 球 「人間が地球の描く球体を 科学的に再現しようとすると あと数百年はかかるだろう」 そう  天文学的         数字 その奇跡のなかでうまれた うまれた 氷水蒸流 [17:51:34] うあー無理だ、リタイア。交代要員を アオゾラ誤爆 [17:52:02] 転がりまわって着地点 朝はまだか 嘆きなげいて現時点 ハロー、ハロー  きこえますか 無駄なコールに 三半規管が 悶えているよ かき混ぜられて 泣いている とけていくのは誰かなあ だれだろう 誰かなあ ワタナベ [17:53:15] 短い詩においてはリズムも重要視されると思う リズムがいい ワタナベ [17:57:59] 「氷結」 ワタナベ [17:58:09] 制限時間10分 はじめ 氷水蒸流 [18:02:11] 凍り損ねた左手に 誰かが暖かいものをのせた 心は少しも動かず 新しい土が生まれた アオゾラ誤爆 [18:04:03] 塩素の匂いがだめで 眩暈をひきおこす つめたい 消毒液がまずい 保健室のベッドの きれいな窓では ぼくらが泳いでいた 夏が終われば 冬がくるから こうしていれるのも今のうち 明日にはたぶん ひえたベランダに 素足が 白い肌が あいまいになる境界のそばで しずかに凍てついた そらのしたで黙り込む ふたり (ここは どこですか 亀裂が) (入る) 楢山孝介 [18:05:58] 空気が凍っていて外に出られないと そんな馬鹿な冗談につられて 玄関まで出てみると 凍った空気の中を 無理やり進もうとした君が 半身を空気に取り込まれ 青ざめた顔をこちらに向けていた 「出られないって自分で言ったのにね  馬鹿だから、難しい漢字も読めないし  空気が凍っててもさ、外出たい時ってあるじゃない」 慌ててお湯を汲んで来て溶かそうとしたが 水道管は凍りついているらしく アイロンもこたつも 玄関までは届かなかった ならば僕の身体で暖めてやればいい そう気付いて服を脱いだが 君はさっきよりもさらに遠く 凍った空気の奥に進んでしまっていた 「馬鹿だねあたし  何で動いちゃったんだろね  帰りたいんだけどね  ねえ、こっち来ないでね  危ないよ。ほんと寒いし。  実はもう動けないし。  今まで楽しかったよ。  こっち来ないでね」 そんなことを言われても 僕の歩みは止められなかった 思考が凍りついていった ワタナベ [18:06:32] しめきりーーーーー!! ワタナベ [18:07:26] 寸評を ワタナベ [18:09:25] 氷水さんのはその行の隙間や後に立ち現れてくるものが詩だとおもう。アオゾラさんのは自分と世界との境界線がうっすらと描かれていて好印象、楢山さんのは一つのストーリーとして完結しており、なおかつ余韻も残す、よって楢山さん! 楢山孝介 [18:11:32] シンプルに「夏休み」 楢山孝介 [18:12:01] 13分から10分間 楢山孝介 [18:12:32] 始め アオゾラ誤爆 [18:17:07] 通知表いらない おかあさん、ごめんね 夏がきたんだって ぴったりとくっつく 汗ばむふともも あのこに会えなくて すこしさみしくて すこし どきどきするのは なんでだろう なんでだろう 水色うちわでかぜを呼んだの 夏がきたんだ だれかが言ってた くるりとまわる たいようが降る 宿題はともだちとやるよ だいじょうぶだよ ほんとだよ 夏がきたんだって ほんとだよ Tsu-Yo [18:21:37] 一年中が 真夏の国の子供たち お腹がグーグーなる音で 明日のビジョンが掻き消される そんな彼らを指さして 日本人に 自殺は甘えだと 説教するおまえ 馬鹿も休み休み言え 夏休みとるな 楢山孝介 [18:22:32] プールの日なのにK君は来ない 登校日なのにK君は来ない 夏祭りなのにK君は来ない 学校が始まったのにK君は来ない 「なあ、K君てどうしたの。夏休み始まってから、一度も会ってないんだけど」 「あれ、そうやったっけ?   俺の見てないのはY君だけど」 え、僕はM君を、私はN君を、貴子先生はO君を 次々と出てくる行方不明者たち おかしなことにそれらを全部足すと クラスの人数の倍ほどにもなった 二学期が始まってしばらくすると まず始めにK君が姿を見せた それからY君やM君やN君やO君や その他の誰彼が次々と出席し始めて 教室はとても狭苦しくなってしまった 実はK君なんていなかった YもMもNもOもその他も 僕が理想の友達を一人欲しがって 些細な嘘をついたがために みんながみんなが真似をし始め 嘘の責任を連帯で取るはめになってしまった 他のクラスの連中に指差されて笑われながら 僕らは汗にまみれてノートを取る 貴子先生の周りにいる若い男たちの吸う 煙草の煙がとても煙たい 楢山孝介 [18:23:05] ギリギリだった ワタナベ [18:27:27] PCがフリーズしたので 全部とびました お前が人間なら 殺してるよ そんな夏休み 楢山孝介 [18:29:16] アオゾラさんのは三連がすごくいい。「くるりとまわる/たいようが降る」ポイント入れたい 楢山孝介 [18:30:36] Tsu-Yoさんの詩における説教は、僕も似たようなことをされた経験あり。ただ、夏休みとの関わりがどこか薄い気が 楢山孝介 [18:31:24] ワタナベさんは、剥き出しの素の感情がわかりやすく伝わってきて、自分はPCじゃないのに、謝りたくなってしまう ワタナベ [18:31:25] (即興詩会は編集されて投稿されます さらにスレにてポイント制になってまして 四天王きまります よろしく) 楢山孝介 [18:31:57] アオゾラさんの第三連に引き込まれたので、アオゾラさん ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]批評をするにあたって。/ワタナベ[2007年7月23日12時17分] あー まぁ、よく批評なり感想なりを寄せる人間なので、ひとつそういうことをする、にあたっての立場表明などしておくと、読む人も読みやすいかなと思ってしてみます。 自己紹介みたいなもんかな、あれっしょ、名刺とか、大切やんね。 えとね、ここには6000人、なんかで読んだけど1週間でのべ300人くらいの詩書きがおとずれるんやってね。すごいねー。 んでざーっと作品がならぶわけや。ほんでポイントが入ったり入らなかったり。 えとね、いいきっちゃうと、1週間に並ぶすべての詩を読むよりも、300円なり出して 市販の有名現代詩人の詩集買ってきて読んだほうが、俺にとって有益です。 それは多分、その一週間にこのサイトをおとずれる300人にとっても同様のことが言えるんじゃないかなぁと思うわけですよ。なにも好き好んでアマチュアの詩を読む必要性が見出せない。まぁこれを読んでるあなたの詩を否定するわけじゃないけれどもね。俺も詩書きの末席に並ぶものとしてここに自分の作品を投稿しているわけだし。 で、もしその300人なりが、俺と同じ考え方をしたとする。ここに並ぶ作品群よりも、市販の詩集買ったほうが有益じゃないかってね。そすると、だーれも読み手って存在しなくなるっしょ。読み手が存在しなくなって、投稿してもなんのアクションも起こらなくなったらどうなるかな。んー、どうやろう、多分50%くらいの人は詩を書くことをやめてしまうんじゃないかなぁと思う。ここのサイトだけの話じゃなくてネットという空間すべてにおいてそういう現象が起こったとしたらね。やっぱり、どうしても市販の詩集を上回るほどのクオリティを持った詩なんてのは、千分の一だとか、そんな割合です。でもね、 俺はネット詩の世界が好きなん。はずかしいけど言い切ってしまう。ネット詩に投稿される少年少女の恋愛詩やそこから無限に広がってゆくこの場が好きだ。そして可能性がないわけじゃないとも思う。ネット詩っていうのは、フォラムに限らず、そういったある種相互依存関係の上に成り立っているともいえてしまうかもしれない。良くも悪くも。んで、ここまでを前置きとして、自分が批評をどういう位置においているかというと。「ニーズにこたえる」これに尽きる。批評は詩を育てるひとつのファクターであるとも思うし。詩をもっと広げる、こんな読み方もあるんだよ、とか、読者に異なる新鮮な視点を与えることによって、最終的には相互の交流や、ネット詩を豊かにしてゆくことを夢想している。 ネット詩だとかでかいこと言ったけど、それはほんの小さな切り取られた空間の中でのものだっていい。ネットは広大にして、同時に小さな空間でもある。純粋な批評とは、詩と相互依存関係にあり、かつ独立した作品として存在するもの、云々、という話をきいた。 そしてスレッド「新撰組」ではそういうことをお題目として掲げている。俺の書き方としては相互依存関係にあるのはもちろんであるし、「読んでもらえるだけの魅力を備えるため」という点において独立した作品であるということを掲げている。ただそれだけのことなんです。魅力なくて読んでもらえなかったら交流だのなんだの言ってられないからのい ということで今いろいろと批評のお勉強中。また、読み方を勉強すると、自分の詩を少し時間を置いたときに客観的に見られるしね。あいーながくなったけど、自己紹介おわり。 要はそれぞれがそれぞれにこの空間を楽しめってこったw ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]一人100人斬り(7月24日分)/ワタナベ[2007年7月25日7時44分] やってきました、インチキ侍。 レコ・ポエにおいてのみならず、すべてのスレッドにおいて、連投するとスレがあがらないという事実に気づいたインチキ侍は、なんとかお気に入りの詩をおしつけよ(ry と思い、そうだ、これで100人斬りをすればいいんだ!と思った次第。 われおもふゆえにわれありコギトエルゴスム、エロイムエッサイムエロイム・・・・ いざ! 参る! Tsu-Yoさん 偽者ロケット http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=127579 拙者はいまでもマンフレッド・マンでイケるでござる、少々紹介しておきませう。 マンフレッド・マン(ジャズ、ブルースミュージシャン)ジャジーテイストあふれるR&B といったところですか。60年代のブリティッシュビートの先駆者、ござる口調がこれほど似合わない人物もいないだろう、でござる。 ジョン・アーヴィング:'68年 「熊を放つ」で作家デビュー、小説家 月刊ムー:オカルト雑誌、拙者は「ぼくの地球をまもって」という拙者の青春のバイブル      である漫画にて知ったでござる。 と前置きして。 拙者には、この詩が妙にスタイリッシュに見えた、それはマンフレッド・マンだったり ジョン・アーヴィングだったりのカタカナの単語がもたらすものであろうし、また、 彼らがどのような活動をしていたかを知っているとさらにスタイリッシュに感じる。 スタイリッシュと言っても、詩としてのスタイリッシュさではなく、青臭い下世話な スタイリッシュさではあるけれどもそれが拙者には心地がよかったのでござる。 月刊ムーの編集室が良い按配で爆破されるところなど、爽快なり。 分かるとは、不感症になることに似ている、だが俺たちの前には、以前よりもさらに 広大な宇宙が広がっている、マンフレッド・マンではイケなくなったかもしれないけれど マーカス・ミラーやアキンボなどがまた新しく偽者そっくりの本物で俺たちを酔わせてくれる。 その気になればジャンゴでもイケるから、感じやすいの。月までイこうぜ。 広瀬犬山猫さん ベタ。 http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=127587 すごく好きな詩でござった、ということを最初に伝えておかなければならない。 永遠にも思える19歳。20になるということは話者にとっては特別な意味があるのだろう。わずか300ミリリットルの中で戦う赤と青の二匹の麗しい金魚の描写も美しく、 そしてそれは >何度も何度も殺し合い再生され殺し合い >金魚の命がひとつ消えるかのように >あたしは二十歳を迎えたのだけれど >金魚が再生されるのと同じように >来年もあたしは十九歳で 話者は未来永劫、「わずか300ミリリットルの世界」でひたすらに十九歳なのです。 でも最終連において >そして決闘させる。 >コップの外で >ちゃんと決闘させる。 とある、これは話者の十九歳への決別でもあり、またもっとつっこむと、これから 生きていく、歳を重ねてゆくことへの決意でもあるように思えた。 語り口調は >そんなノリで >かわいい。 だとか軽妙なのに対して、そこからの飛躍がとても心地がよかった。 さらに言うならば金魚と闘魚との認識の違いは読む人が読めばもっと面白いとおもふ。 高崎さん 樹 http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=127648 これは、表現がうまいなぁ、と思ったのでござる。 一本の幹から派生していってやがて複雑に「別々のもの」になる。 >物事の表面積は増え >いろいろなことが >そのうちはっきりしなくなっていきました >声は >いつしか複雑に反響するようになり >なかなかうまく きみのもとへ届きません まぁあげていけばきりがないのだけれども、「わたし」「あなた」「せかい」という 三種の神器を描いた作品が多い中で、ひとつ目を引く作品でありました。 ひとつだけ指摘するならば、三、五、六連目と最終連が、 希望という意味性の上でかぶってるかなぁというところです。 「声がいつか届く」ことに希望を見出しているのか、あるいは 「枝分かれしたものがやがていびつな形であってもひとつになる」ことに希望を見出しているのか これは多分両方なのだろうけれど、そうだとしたら、構成をもう少し変えてみると より洗練されるかなぁという感想を抱きました。 好きな詩でござった。 信天翁さん その名に http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=127668 さぁ、やってきたでござる。これはただならぬたたずまいを感じた詩でござったので 拙者も襟をたださねばなりますまい。 なかなかに難しい表現がならんでおりますので、拙者も自分で調べてみたでござる。 黒南風(くろはえ):鳥羽・伊豆の漁師は、梅雨始めの強い南風を黒南風、 梅雨期間中の強い南風を荒南風(あらはえ)、梅雨明けを白南風(しろはえ)と呼ぶという。九州西北部では、今でもこのことばを使っているが、白や黒は、雲の色からの命名である。  すなわち、梅雨中の陰雲な日の南風が黒南風で、そよそよと吹く季節風である。 ただし、荒南風は黒南風が強くなって、出漁などに好ましくない風のこと 白南風は、梅雨が明けて黒雲が去り、空に巻雲や巻層雲が白くかかるころ、そよ吹く南からの季節風のことである。  歳時記では、黒南風は仲夏(六月六日〜七月六日)、 白南風は晩夏(七月七日〜八月七日)の季語に配されている。 Eros:エロスとはもともと「神の愛」の意 これは、短歌、和歌、俳句に造詣の深い方の書かれた詩だろうか、そんなことを思いました。 >まるで 有情(自然の情景美のあること)がエホバのErosに生かされ >その名に生きようとするかのように 素晴らしいと個人的にはおもったのでござる。 この詩に関しては、言うべきなにものもないです。豊かやなぁ。。。 大村 浩一さん 中野島 http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=127675 んー、これは拙者がなにか言うべき詩ではないでござる。好きな詩やった。 言葉を添えて新しい発見をうながすことも、今の拙者にはできますまい。 以下引用 エレミヤ49章10節や創世記42章9節において、エデンにおける「裸」や「裸の」 という言葉は比喩として用いられています。それは「資産を奪われ、無防備の」状態、また、「明らかにされた、露にされた」状態を表しています(ヨブ26・6、ヘブル4・13)。 おつかれインチキ侍! コンチキチン。 ---------------------------- [自由詩]数多のあなた/ワタナベ[2007年7月26日11時49分] 数多のあなたから 発信されることばに わたしは固くまぶたを閉じる それらを愛さないために 西側の、部屋 窓に切り取られた風景のなかで 遠く稜線がたそがれてゆく そう 書いたときにはすでに 稜線は稜線ではなく 大学ノートの余白が 網膜に焼きつく 反転 退屈な授業中 いかにも古文という顔の好々爺が 文法についてのんびりと語っている 大学ノートの余白に 「アリス」と書く 「アリス」はみるみるうちに 空色の服と金色の髪をした小さな「アリス」になって 大学ノートの上を走り回る アリスは背丈ほどもある僕のシャープペンを 両手でよいしょと持ち上げると よろめきながら大学ノート全体に 四角い枠を描く とたんに枠内は夕暮れに染まり 遠く稜線がたそがれてゆく アリスはこちらを振り向き シャープペンを軸にくるりと踊ると 手品のように消えた 大学ノートの余白には 「アリス」「稜線」の文字 間延びした声と 教室の外の青い空 だんだんよわく 真夜中の汀に 星々のまたたきが降りそそぎ あわい波がうち寄せては かなたへとかえってゆく 水平線から ゆっくりと仰ぐ とうめいな天球体の外側に 敷かれたレールと さまざまに散りばめられた みずがめや、わしや、こと そして、白鳥座の傍を 列車が音もなく走ってゆく それらに包まれた 僕 を 砂浜に沿って走る国道の 街灯の下で見つめる わたし 国道に車はなく 遠く影のように横たわる山際に見えなくなるまで 街灯が等間隔に並んでいる わたしは オレンジ色の明かりをたよりに 僕を包む天球体と 僕を描いて そっと ノートを閉じる 塞がれたまぶたに 遮断されたことばたち わたしがすべてを愛する それはなにも愛さないということ そして わたしはすこしずつ 目をひらく あなたの一遍のことばが そのイメージをたち現せ まぶしく瞳にうつる ---------------------------- [自由詩]突発即興詩会(7月31日深夜@会議室A)/ワタナベ[2007年8月1日1時15分] ワタナベ おk お題「クレジット」 制限時間10分 はじめ(ここからのログは投稿されます) 月見里司 [23:21:36] クレジット 電話は誰にも取られなかった カセットテープが 留守居を守り続けている 歪んだ果物を抱いた男が おのれの吐き出した怒号に倒れた 横たわるその体からは イクサが切れ目なく生い茂り 枯れ 編まれて 乾きはじめ ささくれ立て ささくれ立て いずれ革靴を 貫き通すほど ふたたび 三度ドアが鳴って ここは 人間の住まうところ 楢山孝介 [23:24:36] 100円入れたよお兄ちゃん ほんまに100円入れたよお兄ちゃん 100円入れたのにゲームできへんよお兄ちゃん ゲームできへんでもいいから100円返してやお兄ちゃん 坊主だ 髪型も年齢も坊主だ 100円が重大事なところも坊主だ 嘘ついてるところも坊主だ 注意深くないところはどうだろう とにかくそのゲームはな 100円を入れるゲームじゃないんだ ちゃんと50円って紙貼ってるだろ 50円で出来るゲームなんだ 50円でしか出来ないゲームなんだ うちには100円で2クレジットのゲームもあるけどな そのゲームは50円で1クレジット 50円でぷよぷよ1プレイしか出来ないんだ もし本当に100円を入れたのなら 中に入らずに、取り出し口に落ちてくるはずなんだ おまえがぷよぷよをやりたくてやりたくて たまらないというのだったなら 俺はいくらでも譲歩して おまえにゲームを楽しませてやったのに おまえが欲しいのは100円なんだと 一時の楽しい時間などではないんだと 店員を騙してスリルを味わいたいんだと そうわかってしまったから 俺はおまえに冷たくすることしか出来ない このゲームは50円専用でな 100円ちゃうからな 100円入らんからな 100返すことは出来ん 俺がそう言うと すぐに諦めてしまった坊主は また別のゲームに向かった 今度は100円専用台のところに 十円玉を入れようとしている 落ちてきた 戻ってきた それは無茶だ 帰ってくれよ 坊主よ 怒りたくないんだ 実はおまえみたいな奴大好きなんだ 100円くらいあげればよかった 早く帰ってくれよ 灰人/カイト [23:25:27] ものすごくおおきなきもちわるい蛇がいてね 上から見下ろしているの すごくいやらしくて 生理的にダメっていうの? もうホント、勘弁してって感じ でね、その蛇は ながーくてチョーグロい舌出してさ 地面に突き刺すのよ そうすると緑の草原が みるみる枯れていって 地肌が出て ひび割れちゃうの でしょ? アタシもーヤダって思って 後ろ向いて逃げ出すんだけど そこにもいんの もーサイアク、耐えられない そんで座って泣き出しちゃったわけ でもどこからか 「立ちなさい」っていう すごく強くてやさしい声がするのね あたし無理って思ったけど その声聞いてるとちょっと勇気が出て 立ち上がったわけ そしたら 足首がスパンと切れて あたしは地面に倒れそうになった そんで もうちょっとで地面に付いちゃうよ蛇の舌が見えるーって所で 首がスパンといって そこで終ったの ううん。そうでもないんだな おかしいんだけどそのときあたし、すごく「救われた」って気がしたんだもん ワタナベ [23:28:50] 楢山さんの作品について 底辺に流れる考え方には個人的にとても好感がもてるし 詩にいたろうとする努力も見られたけれどもいかんせん 冗長で、濃度が低い 濃度 という見地から見ていって みる。 ワタナベ [23:31:16] 月見里司さんの作品について こちらはなにやら意味がわからないのだけれど 詩としての言葉の濃縮具合からすると、 俺の目には濃縮されて見えた。 ダダ・シュルレアリスムス、理性という色眼鏡を はずしてみると面白かった。 ワタナベ [23:33:18] かいちゃんの作品について これはねー 最後にきらりと光った気がしたんだけ れど、やはり月見里さんの作品にくらべると 最後の収束してゆくところが弱く感じる ワタナベ [23:33:55] 月見里さん を選びます。 月見里司 [23:37:01] あからさまに書きづらそうなお題 「かなたの湖」 月見里司 [23:37:16] 10分でどうぞ。 灰人/カイト [23:43:17] 長い杖を手に 歩いていた もう一方の手では 鈴が しゃん しゃん と 鳴っている よそでてらりと ひかる地があった 「水を引きたまえよ」 と声がして 私の足元に川が出来た 私は深い水に飲まれ 沈んで行き 一匹のドジョウになった さてそれでは 目指すとしようか 水底で鈴は 錆びたりしないだろうか 楢山孝介 [23:44:47] かつて湖に沈んだ 年老いた恋人たちは 湖底に行き当たり 突き抜け 彼方の世界で再び抱き合っている 湖に沈む前に見上げたのと同じように 空には爆撃機が飛び 冷気が濡れた肌を刺す 「死ねなかったのかな」男は言った 「いや、多分死んだんですよ」と女 その証拠に湖のそこここには 二人と同じような恋人たちが 老いも若きも 震えながら抱き合っていた 男と男もいた 女と女もいた 女と馬もいた 馬と神もいた 「湖から出られないみたいだな」 「ずっと抱き合っていなければならないみたい」 年老いた恋人たちは震えながらも くすくす笑いあった 爆撃機から投下された爆弾が 湖の周りの森を焼くと わずかに熱せられた湖上では 生気を取り戻した恋人たちが 生前を思い出して交じり合った ワタナベ [23:47:53] 耳をくすぐる小川のせせらぎが やがて二尺ほどの川となり せきとめられ 澄んだ湖面には入道雲が映っている あれはいつの日だったろうか 赤いワインを湖に流したのは 映りこんだ入道雲のすそに 血のような跡をひいて 薄らぎ消えていった 悠久の時間にささげた 供物 私が歴史的現在にものを言うと さまざまに形造られた かなたかなたの湖たちが それぞれにこだましはじめる 月見里司 [23:57:12] (投稿順) カイトさんの作品の印象 神話というよりは民話テイスト。 四連五連は「オチに置きたくなる感じ」がバッティングしている気がします。 両方使うなら、離して置いたほうが好印象だと思いました。 楢山さんの作品の印象 神、かぁ。 そこだけはややクサいかな、と思いますが題意の解釈は明快だと思います。 湖から見上げた爆撃機の飛ぶ空、綺麗なのでもっと描写して欲しかったですね。 ワタナベさんの作品の印象 最終連はとても好きです。 しかし、二連の体言止めは少し雰囲気に合っていないかも知れません。 ご本人の仰るとおり、細かい言い回しを整えるだけで随分雰囲気が変わりそうです。 票は楢山さんへ。 楢山孝介 [0:03:23] お題「老人」 ワタナベ [0:11:12] 彼の眼は深く 底には長い物語をたたえている 彼のしわに覆われた手は 年輪のように太陽の昇る方向を示している 彼の弱った足は もはや歩くことさえままならず しかし彼の影を苗床に 新しい命が芽吹いている 灰人/カイト [0:11:15] 広げた皮膚に 刻、刻と点刻してきた 血が滲む印もあった しかし大半のものは薄らいで消えてしまった 今 その全てを シュレッダーにかけよう 機械音は なかなか鳴り止まない 細切れになったそれを この痩せさばらえた体に巻いて 今最期を 踊って 引きちぎってみせよう ああ血が 噴き出して来る 満ちる そうわたしは ここから産まれたのだ 月見里司 [0:11:27] 海はそこから見えますか 狭い窓は東を向いていて 当たり前のように眩しく 弱った目が、灼かれます 山はそこから見えますか 緑の壁が覆いかぶさった ねずみの声が聞こえます 噛むものをどうか下さい 町はそこから見えますか 車椅子はすっかり壊れて 波が高すぎると嘆きます 雑踏、再びの雑踏、雑踏 経ちすぎてしまった時間 海はそこから見えますか 山はそこから見えますか 町はそこから見えますか 私はそこから見えますか 楢山孝介 [0:27:58] ワタナベさん 第一連を読んだ印象では「ああ、ありきたりな老人像が描かれるだけかな」と思ったものの、第二連で「あれ、手はいつも同じ方向を指しているとは限らないよな、ああつまり動いてないんだ」、第三連でそれが裏付けされ、第四連から新しい生と物語の始まりを見て、「おお」「おお」「おお」と思った。 灰人/カイトさん 老人班、とでもいうのか、老人の皮膚にあるあの染み、それがありありと浮かんできた。シュレッダーにかけることも、細切れになったそれを体に巻くことも、引きちぎることも、苦もなく想像できた。映像喚起力がもの凄かった。ただ最終連の「ここから産まれたのだ」にやや唐突な感。 月見里司さん この時間内に文字数を揃えて書く力業。早書きに任せてさらさらと展開させる僕なんかからすると脱帽。しかもこの行数、時間内で、海、陽光、山、緑、鼠、車椅子、波、とどれも細かに表現出来ている。 どれもすごくて、なかなか選べなくて困った。 ただ、敢えていうなら、ワタナベさん、月見里司さんのは、うまくまとまりすぎている。カイトさんの詩に一番爆発力を感じた。 よってカイトさん。 灰人/カイト [0:32:14] 「夏は夜、月の頃はさらなり」 いとう [0:40:12] 夏は夜、月の頃はさらなり 肌が月光にあらわれて 艶かしく光っています あなた あなた、と呼んでもいいのでしょうか、 あなた、 その、触れるまでもなく熱のこもる肌を 触れていてもいいのでしょうか あなた。 山の向こうでは 私の知らぬ風が吹いて 月の影をなめていきます あなた たとえばあなたのその丘の果ては 私に触れられるのを待っているのでしょうか 夏の日の持つ汗の匂い あなたのその 隠された場所の 月見里司 [0:40:43] 傘を差してあるいている 夏と秋の虫の声がまとめて降りそそぐ ここは片田舎だった 白色の外灯はもう珍しいもので 誘われた蛾が ジジジ、と 羽音をたてる 誰とも出会わないままで 一歩ずつ、闇の中を、 未熟な柿は この前の大雨でだいぶ落ちてしまった 決して振り向かない 足元だけを向いてあるく 灰人/カイト [0:44:08] いとちゃん ああ綺麗だなーでもそれだけだなーと思ったけど最終連、さすが! 一気にむわっときたw ワタナベ [0:47:09] 言葉の生まれる力としては梓さんのほうが上だけど 同じイメージが何度も出てくるね 灰人/カイト [0:47:13] あずさちゃん 最初読んでなにも浮かんで来ないので焦ったw 改行できないのが悪いのかなと思って音読してみたけどイマイチピンとこない。 辛口でごめんw ワタナベ [0:48:12] いとうさんは さすがに10分でも遊んじゃう余裕があるなw (1+1)/4 [0:48:31] (よし・当方が複数行で苺蝶さんのぶんを投下だー) 静けさが夜を包み短く吹いた生暖かい風は人々の間を縫ってゆっくりと昇華、していく 闇は目を伏せたまま月を隠すその瞼の裏で煌々と輝く光を私は想像しては人混みに紛れていく 何もかもを包めそうな夜闇にそっと、触れては息を吐く吐いては、空を思う 昇華していった風は柔らかく闇の瞼を開きその輝きを外気へと晒す ああ、やはり 闇があってこその光。 (…これでおk?) 灰人/カイト [0:49:52] さとちゃん 柿のところが良い。 月が直接出て来ないのが物足りないけど、主人公のどこかすりきられたような心情がよくわかった。 ワタナベ [0:50:17] 梓さんのは 雑然としてる感は否めないけれど きれぎれには好きなイメージがたくさんあるよ 並べ方やねあとは 灰人/カイト [0:51:17] というわけで老獪ながらいとくんが制しました。 ワタナベ [0:52:05] 俺は梓さんに一票やなw いとうさんのは手癖で書いた感が否めないと思う 灰人/カイト [0:52:50] 手癖っていうのもまあわるくはないよいと 灰人/カイト [0:53:34] 年喰ったらそれでしか書けんようになるかもしれん 灰人/カイト [0:53:57] 若い頃にいかにて癖をつける可かモナーとお思った ワタナベ [0:54:20] 手癖であれだけかけちゃうんだから ってところもあるねぇ 俺は梓さんの言葉のほうが 梓さん自身に近い位置にあるように感じられたから 好みの問題やな ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]犬色勾配さん 「徒然ぽえむ君」に寄せて。/ワタナベ[2007年8月3日10時18分] ぽえむ君さん云々はここでは置いておきたい、それをとりまく環境のほうに焦点をあててみたいと思う。まぁ、環境を語るために少し引き合いにださねばならないが。 まずぽえむ君さんには1000の詩を短期間に書くということ、これはなかなかできる ことではないと思う。素直に賞賛したいです。 2名云々の態度などは正直どうでもいい。その態度に対して、フォラムの大多数が いままで何のアクションもとらなかった、あるいは知らなかった、興味がなかった。 そういったところに俺は興味を持つ。 これはどういうことだろう。 夏、が来ました。 あなたはどうですか? この夏いかがお過ごしですか? 夏休みを迎えた学生たち、肌をこがしながら懸命に働く若者たち、 夏ばてにもかかわらず、毎日通勤電車にもまれる中年の方、育児の大変なお母さん方 娘、息子の行く末に頭を悩ませるお父さん方。あるいは精神的になにもできない やる気にならない。退廃的にただ日々を過ごしている方。 なんだっていい、あなたがどんな人間であろうとも、あなたが自分の中にある 「なにか」を追求しよう、あるいはなぜかしらないけれども書いてみようと思った。 どんな形であれ、書くという行為を自分を表現する方法のひとつとして選んだ あなたがたに、俺は幅はあれ、多少なりとも好意をもちます。 で、前置きとして。多分、だれもがいちいちそこをつっこむのがめんどくさかったの だろうし、あるいは興味がなかったのだろう。もちろん、拒むことに全面的に賛成 という人もいるだろう。 この文章は、ただ興味がなかった、あるいはめんどくさかった。そういった人に宛てる ものです。俺の批評態度はまとめてひっくくって「批評するにあたって」という 文章の中で書きました。最終的にはそれぞれの交流、それによる切磋琢磨 たとえば、あなたがひとつの詩に感動し、なにか書かずにはおれない、というような 気分になったとして、簡単でもいい、一言なにかコメントを寄せるだけで、作者から 見れば、読者としてのあなたの姿が若干見えるような気がする。逆に、 作者として自分の意見を発信しつづける、その姿が読者の中に印象に残るかもしれない。 フォラムにはもちろんポイントというものがあって、それはひとつの指標となるもの だけれど、ほかの方法をひとつ、模索してみませんか? それは、ポイントを入れるときに寄せるコメントであってももちろんいい。 さまざまなスレッドにおける交流でもいい。レコ・ポエなんかもありますし。 簡単な感想を批評、散文カテゴリに書くだけでもいい。 もちろん、批評というものに興味を持ってもいい。 スレッドで井戸端会議的になされる会話であっても、チャットでなされる会話であっても 書き手、としてのみではなく、読み手、としての自分の姿を少し現してみませんか? 本来ならば、読み手は一般に開かれたもので、その姿を現すことは無いし その必要もない。ただ、書き手と読み手が同じものとして機能しているフォラムの中では ある程度、読み手としての姿を現すことは、必要なのではないかと思う。 これが、俺がフォラムに見る幻です。そして、願はくば、そういった環境の中で どんどん、書く、ということに興味を持ち、また楽しみ、フォラムからもっと飛び出した いろいろな場所で書いてほしい。 フォラムという縮図にあっても、書くということに費やされる労力が、読むという ことに費やされる労力よりもだいぶ多いのではないかと感じる。 あるいは、ひたすらに読んでポイントだけしてるという人もいるだろう。 そういう方には、読み手としてのあなたの存在を作者にもうすこし気づかせてあげてほしく思います。 まぁ、そこまで詩は保護されるべきものなのかって議論ももちろんあるやろうけれども、 俺の立ち位置はこんな感じです。 つらつらと書いたからすげー冗長になった。読んだ人おつかれさま。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]即興詩会:第3回/ワタナベ[2007年8月9日22時00分] ワタナベ [20:20:39] お 即興詩会いきますぜー 相田 九龍 [20:21:03] うぎゃー 相田 九龍 [20:21:07] うきませう ワタナベ [20:21:24] ここからの発言はある程度編集されて投稿されます。では 俺から ワタナベ [20:22:09] 「翼」 10分間でおねがいします どうぞ 相田 九龍 [20:32:13]  太陽の塔が何か言ったか。何か言えるのは私達だけだ。風が何か言ったか。何か言えるのは私達だけだ。鳥が何か言ったか。何か言えるのは私達だけだ。  外国人が街をウロウロしている。私は声を発する。それは鳥の鳴き声に似る。  私達は飛べない。鳥は飛ぶ。私達は飛べない。風は飛ぶ。太陽の塔は今飛び立たんとしている。私達は飛行機に乗って、外国人に会いに行く。やぁ、おはよう。  外国人が私に声をかける。それは鳥の鳴き声に似る。  鳥は飛ぶ。私は太陽を仰ぐ。やぁ、翼が欲しい。 月見里司 [20:32:24] 翼 コンクリートの建物に 雪は降っている 汚れた壁には 固形物が必要だった 空があまりにも濁っているから 電柱で身を縮めていた 鳥の群れが 呻きだし 厚い雲へ その身を投げ込みだす 雪は降っている まだ時間がある 奇妙に白い雪と 身投げする鳥と 遠雷さえ 聞こえてくる そして舞いだす あらゆる ワタナベ [20:33:55] では寸評をば ワタナベ [20:39:45] 相田さんの作品は惜しいなぁと感じます。 モチーフは2,3個あるかな。 >太陽の塔が何か言ったか >風が何か言ったか >鳥が何か言ったか この太陽の塔が声を発さないというところが活きてこない。太陽の塔=70年代の古き良き昭和の象徴、平和の象徴、科学進歩の象徴、それが、何か言ったか 「何かいえるのは私たちだけ」ここからいろんなイメージが飛び立とうとしているのが感じられるのに、なんだか置いてけぼりにして次のイメージにとんでしまった気がする。 ワタナベ [20:43:46] 月見さんはタイムアップだったんですね。 細かいところをつつくと 固形物 投げ込みだす がちょっとひっかかります。 ここは固形物であるほかの語を持ってきたほうがより際立つ気がしますし、投げ出すとしたほうが、次につながっていくような気がします。 固形物 としてしまったところが一番失敗だった気がする。 相田 九龍 [20:46:55] 「さぶいぼ」、でお願いします。 ワタナベ [20:47:05] ww 相田 九龍 [20:47:26] 開始! 月見里司 [20:56:42] さぶいぼ  ああ、そうだ、キコちゃん。キコちゃんさ、熱いもの飲める?大丈夫?そう、じゃあコーヒーでも淹れるね。いや、つまんない話なんだけどさ。俺、チョウチョがダメなのよ。いやいや、冗談とかじゃなくて本当に。俺の実家、田んぼとかすげーあるんだけどさ、こないだ実家帰ったときに、なんていうの、水引っ張ってくることろ?うん、呼び方よく知らないんだけどさ、あそこに落ちちゃって。笑わないでよ。飲みすぎたんだよ、ちょっと。んでさ、落ちただけならいいんだけど、なんか片足はまっちゃって動けなくてさ。誰もいなくて。もう明けがただから、じいちゃんとか通りそうなのに全然。で、ちょっと泣きそうになりながら頑張ってたんだよ。夏なのに水冷たくて。もう体とか超寒いの。で、頑張っても頑張ってもダメでさ。誰か通れー、とか叫んでバタッ、と道路に体倒したんだ。空見えるじゃん。夜明けのさ、きれいな空。そこにチョウチョが一杯、ほんとに太陽とか見えなくなるくらい飛んでてさ、もううわぁ、って思って固まっちゃって。そん時のショックで足抜けたみたいなんだけど、それにも全然気づかなくて、ずーっとボケてた。それ以来チョウチョがダメ。全然ダメ。さぶいぼ出る。いや、それだけなんだけどね。コーヒー冷めちゃったわ。ん?どうしたの、キコちゃん。 ワタナベ [20:57:39] さぶいぼ、 手の甲から肩あたりまで 僕は肩を切り落とす さぶいぼをたてた腕が転がっている 切り口からみえるぼくの中には 一遍のことばと 夕暮れが広がっていた 公園の砂場でお山を作っていた子供が 母親に呼ばれた気がして どこかへ帰ってゆく その後 その子の行方は誰も知られなかった 誰もしらない物語が 僕の中にある さぶいぼ、 行方不明の子供たちを 呼ぶ母の声 僕は呼ばれた気がして 切り落とした腕をそのままに 声の方へ駆け出す 僕の行方を知るものは誰もいなかった 相田 九龍 [21:01:12] 月見さんの作品は、なかなか面白い線いってる。即興らしく、ねじれがゴゴーっとなってるところがいい。きこちゃんの扱いが、話者も作者ももう一息。 相田 九龍 [21:02:15] ワタナベさんの作品は、読者にさぶいぼっちゃったところがあって、二重に良い。ラストへの落とし方がワタナベさんらしい安定。良くも悪くも。 相田 九龍 [21:02:46] どっち選ぶ、となると非常に迷うので、ここは月見さんに一票。 月見里司 [21:04:54] 「金属の日」 時間は十分。シンオウトレーナーのいかいかさんも是非。 相田 九龍 [21:10:55]  金属の日。かちかちな空を見上げた君が、耳を広げて飛び立つのなら、俺はどうも納得がいかず茶を沸かす。ヤカンに水を注ぐとき、少し昨日のことを思い出す。思い出したはなから、ヤカンはドンドンと速度を上げ、東京に辿り着く。手から滑り落ちる。  金属の日。おはよう。とてもじゃないけれど御飯は三食食いたい。それは習慣を通り越してアイデンティティに関わる問題だ。誰が俺を呼んだ?俺は呼び声よりもアイデンティティを大切にする男だ。ロックンローラーがロックのために死ぬように。  金属の日。速度と音の関係を図にしてみた。波線部をよく読んでおけ。あいつからの伝言だ。 ワタナベ [21:15:21] 金属は勤続逃れて 今日は花よと酔い歌う 酩酊した金属からしたたるアルコールは 潤滑油となってさらに金属を加速させる 飲む金属、勤続逃れて 今日は花よ 相田 九龍 [21:20:47] 「かっこいいこと言うために」 月見里司 [21:28:23] かっこいいこと言うために 男は煙草を吸え 女は手首を切れ いや、 女も煙草を吸え 痛いのは嫌だから むしろ男は水に沈め 重りはなんでもいい プライドとか 家族とか その辺がおすすめだが ハードボイルドを気取るなら ユニクロのパンツはやめておけ 女が水に沈むと かっこいいより前に 演歌だから やめたほうがいい 着物はエロいだけだ ここまで書いたら 男女差別は良くないなんて言われた じゃあ性別はどうでもいい ギターを弾いてみろ 汗を流すのもいい 宗教に夢中になれ 愛の告白をしてみろ 臆面もなく ふられるとなおいい だが 詩人だけはやめとけ やめとけって 相田 九龍 [21:30:09] しゅーりょーーーー ワタナベ [21:30:17] まず朝の体操からはじめます 手を大きく伸ばして、すって〜、はいて〜 このときも若干ビリー軍曹を思い浮かべながら 腹筋に力を入れたりその白い歯を見せたりすると 効果的です、歯はいつも丹念に磨いておきましょう 次に朝食づくりです。 朝食はパン食がのぞましい。 ベーグルなんかだとベストです。 ベーグルに玉子焼き 玉子焼きを焼くときはかならずフライパンの上で 躍らせるようにしましょう。 さていよいよ出勤です。 横断歩道の白い部分だけを踏んで渡ってください 階段はひとつ飛ばしに 会社についたらさわやかな笑顔でおはようございます を言いましょう。 このときも白い歯を見せることが大切です。 工事現場の作業員が ヤニに黄ばんだ歯で 黒く焼けた肌に汗を流しながら 家で待つ子供や妻のことを思う そのようなことを脳裏によぎらせてはいけません。 あなたは一人で、この競争社会に打ち勝ち エリートとしての階段を上がってゆくのです このまま。 作業員は黄ばんだ歯を気後れすることなく見せながら 先輩からもらったお茶を受け取る 彼には家族がいる そのために黙々と アスファルトのいたるところに穴を掘る この穴がなんのためのものか なににつかわれるのかもわからずに ただ穴を掘る そして帰って、妻の晩酌でいっぱいの酒を飲む 黄ばんだ歯を見せながら妻に満面の笑顔を返す 相田 九龍 [21:31:02] かっこいいこと 相田 九龍 [21:31:18] あんまり関係ないじゃん!w>ワタナベさん ワタナベ [21:31:34] しらんw 相田 九龍 [21:32:36] 月見さんの作品はー、即興でも「手首切れ」って言葉は僕は嫌いだー、ユニクロのパンツと着物はエロいだけだ、がよかった。 相田 九龍 [21:34:04] ワタナベさんの作品は、「先輩からもらったお茶を受け取る」ここがかっこいい。なぜだろう、エリートと土木を対比すると土木がかっこよくなるのはなんでだろ。焼酎もかっこいい。 相田 九龍 [21:34:43] ワタナベさんに一票したいところだけど、題の活かし方を優先で月見さんで! 月見里司 [21:37:11] お題「十四時」 ここから十分。 相田 九龍 [21:45:06]  ライフ。歩く距離を数えていくことをなんと呼んでもいい。誰かが歩いた足跡を辿って、それで幸せなヤツもいるくらいだ。ライフ。時計の文字盤から目を離すな。  葉露を綺麗だと思う心がライフ。昼下がりは有名人よりも大切。雨が上がれば散歩をしたい。虹を二時に見られたら少し得をした気分になるヤツ、それこそがライフ。透明を探せ。垂直に動くものを探せ。  子供たちがジャンプ。球体の上で私達は生きている。夏休みは有効に使え。太陽を見透かせ。足跡を見ろ。  そら、お前は時間を愛おしく思う。時計の文字盤が愛おしくなる。二時ならある。でもそこにはないものが昼下がりにはある。ライフ。透明を探せ。 ワタナベ [21:47:02] ことばの上を流れる小川のせせらぎが ふとイメージとしてぼくの前にたち現れるとき 十四時、の上を流れてゆくイメージは 無味乾燥でぼくの前にはたち現れてこない だが月日はどんどんと十四時へ流れ込んでゆく 昨日歩いたアスファルトの感触 強い日差しを避けるキャップをかぶって 自転車で漕いだ木漏れ日の中 ふりくるせみの鳴き声 学校のセメント越しに香ってきた塩素の匂い と、子供たちの歓声 もくもくと立ち上がる入道雲と とつぜんの夕立 その匂いや手触り、音が どんどんと十四時にながれこんでゆく 僕の前には十四時の上を流れる小川のせせらぎしか 聞こえないが、十四時は何度も繰り返す 僕が望もうと望むまいと 月見里司 [21:52:48] 相田さんの作品は、悪くないんですがどこか手癖感。小気味いいんですがもう一歩潜りに来て欲しかったかもしれません。ワタナベさんの作品は、苦戦はしていて、勝利もできていない印象もありますが、題と一生懸命戦っている感じがします。 戦い方の差でワタナベさんに票を。 ワタナベ [21:53:18] にっしっし 相田 九龍 [21:53:26] んがーw 相田 九龍 [21:53:34] 手癖万歳! ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]詩人専用出会い系スレについて。/ワタナベ[2007年8月12日6時20分] 片野氏は「黙認」の立場をとった。 システム関連スレによると。 ああそうですね、すいません。注意書きが必要のようです。 インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律 第三章 児童による利用の防止 によると、18才に満たない者は利用してはならない旨を伝達しなければならない、ということですので、スレッドの冒頭でこれを表示してもらうようにします。 たとえば、俺が夜の歓楽街を歩く補導員だとしたら。 タバコをすいながらたむろする高校生がいたとしよう。 俺は若干怖い顔を作って、心の中では「しょうがねぇなぁ」と思いながら。 「おまえら、親にあんまし迷惑かけるなよ」くらいの注意をして、もとの仕事にもどる。 売春しようとする少女がいたとしよう。 まず、とっつかまえて話を聞いてみる。 「いいじゃん、お金欲しいんだから」って笑いながら返されたら、多分 一応仕事だし、買ってるほうも売ってるほうも、両方を冷たく警察にもってく。 仕事だし、そんなやつにはかける情はない。売春もまぁ、現実としてあるわけだから。 いちいちかまっていられない。 「ほんとうに困っている、家が貧乏だ、あるいは精神的に自分を追い詰めようとしている」 そんな感じの答えが返ってくる、あるいはそんなニュアンスが読み取れたとしよう。 俺は多分知り合いがやってる、ガールズ・バーかキャバクラ(こっちは知り合いいない) を紹介する。年齢なんて偽れば、あるていど仕事をこなせばまとまった収入がはいるはずだ。 体を売らなくても、とりあえず男に話さえあわせていれば。それから先は本人のモラルだから。 俺のモラルなんてこの程度だ。 で、詩人専用出会い系スレについて。 このスレのモラルと、売春する少女達と比べてみよう。 「ほんとうに恋愛に困っている」ならば、少女達と同じく、違う方法を探せばいい。 ネットでなら出会い系のサイトがいくつもあるのだろうし、街に繰り出してナンパでも すればよい。 ただフォラムに持ち込むのはどうなのだろう。 なにも恋愛(金)を得るためにフォラムに出会い系スレを立てる(売春する) 必要はどこにもない。というのが俺の考え。 ただ、俺はこれ以上はなにも言うことはないだろう。 俺はいちいち売春する少女達の悲痛な叫びを聞いてる暇もなければ(たまには聞くかもしれないけれど) 補導員でもないからだ。 フォラムという場はどういう場なのだろう。 片野氏が黙認という立場をとったということは、出会い系スレ、ひいてはセフレ募集スレなんかも たてていいわけだ。おおいにたてるといい。セフレ募集スレは俺がたてるかもしれんw 2chの詩板をひきあいに出すのは、こうなった以上2chで詩を書いている人たちに 失礼かもしれないけれど、2chですらおおっぴらに出会いを掲げたスレはないのに、フォラム にはある。 無視するか、排除するか、歓迎するか。 それぞれが好きにすればいい。 片野氏の考えにいちいち拘泥するのもつまらないことだ。 混沌としてくると、より良い詩を書かなければ誰からも相手にされないかもしれないけれど。 それはそれでいいかもしれない。 俺は自分の考えを変えるつもりもないし、批評もこれからもやっていくだろうと思う。 ただフォラムに対する一方的な幻想は打ち砕かれたことだけは確かだ。 これからのフォラムがいろんな意味で楽しみでもある。 ただ、該当スレについては、議論はなされるべきだとは思うけれど。 それも興味のある人がやればいいことかもしれない。 できたからには、きれいでかわいくて感受性豊かでやさしい、遊ぶときに割り勘でいいって いってくれる女の子が見つかるなら参加するけどねw ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]即興詩会:第4回(夏の陣編)/ワタナベ[2007年8月12日19時11分] ワタナベ [17:31:31] 「ミネラルウォーター」 10分で はじめー 参加者 いままでで6〜7人いらっしゃるので それぞれを名前順にスレッドにならべて 獲得ポイントを表示します 独り言 最終的に 夏の終わりころに獲得ポイント合計やら ひとつ目を引く作品の各賞を決定します。 ○月見里司 「ミネラルウォーター」  冷蔵庫一杯に、ぎっちぎちぎにミネラルウォーターを詰めているやつがいた。俺のことだ。最初にそれをしていたのは二人目の彼女で、冷蔵庫の扉を開けてしまい絶句する俺に向かって(冷蔵庫の照明が、たくさんのペットボトルで乱反射している!)、飲むかとただ訊いた。そんなに詰めたら冷えないだろうというくらい一杯にミネラルウォーターは詰まっていて、何かの(もしかすると、たぶん寒気のするような)理由があると思って絶句していた俺は驚いた。飲むのか。なんのメタファーでもなかった。ミネラルウォーターはやはりミネラルウォーターに過ぎず、それは飲料水として日々普通に、ごく普通に飲まれ、減った分は補充されていた。それだけだった。だから俺は冷蔵庫一杯にミネラルウォーターを入れている。普通に飲むために。来客はたまにしかないが、皆無と言うわけでもなく、冷蔵庫を覗き込んで絶句するやつも勿論いる。俺はそいつらに向かって、飲むかとただ訊くだけだ。 ○櫛田鶇吾 「ミネラルウォーター」 ラスカトロフの白いカラスが飛んでいる 硬質なレプリカに似た5本の松は 3度目の奇跡を顧みない 乱反射する簾の奥の銀貨 パッケージは竹光だと云う 嗚呼、我々の枯渇を慰めるものは 鬼神の涙よりも静謐な、青   ワタナベ [17:41:18] うお これは力作ぞろいやなぁ 終了〜 灰人/カイト [17:42:20] ねむい ワタナベ [17:42:32] ちょっとこれは俺一人では 寸評きついw みんな寸評してみて おー かいちゃん!! やろう!! かいちゃん 寸評から参加してw ☆灰人/カイト さとちん いいなー 自然の持つ言いようのない圧倒感を感じる。 トーゴくん きれいだが、きれいすぎるな。ミネラルウォーターらしさが希薄かも さとちんに一票 ☆櫛田鶇吾 月里さんは、とにかく頭の中を文字通りにミネラルウォーターで一杯にしてみたって感じ。愚直とも言えるけどそれでこれだけ発展出来るのは充分評価に値するかな。 ☆ワタナベ んー 難しいなぁ、詩情という点では櫛田さんの方が 詩情を前面に押し出した感があって好感がもてる。 月見さんのは「なんのメタファでもない」とあるように 本当になんのメタファでもない。でもそれが故に 匂いたってくるものがある。 これは好みの問題だろうとおもうけれども、月見さんは 良くも悪くも即興として、自分の持つ詩情を自分なりに 肉感的に表現した感じ。櫛田さんのは、さらにそこから ちょっぴりだけ一歩進んでる感があった。 ☆月見里司 ラスカトロフというのがなんなのか、わからないけど、わからないので、銘柄ということにして読み進めます。白いカラス、五本の松とかはボトルのラベルに描かれてそうな感じで、簾、竹光、鬼神というと和風なタームなので、一気に無国籍感が増します。最終連での「嗚呼、」が息をつく感覚で素敵でした。(ぷはー!)的な。 ワタナベ [17:52:01] 今回は 総合的に月見さんに 軍配を 月見里司 [17:54:28] 「煙草を吸わない」 十分間でどうぞ。 ○灰人/カイト 「煙草を吸わない」 白い靄を掻き分けると 冷たかったので 煙ではなかった すうと息が吐かれ しずかな顔が浮かんだ ゆっくりとまぶたを開くと 長い睫毛がしとやかに咲いた くろいまるい まるいくろい に 吸い込まれたまま私は 神々に似た誰かに手をとられて たゆたうのであった ○ワタナベ 「煙草を吸わない」 いっぱいになった灰皿の中で蠢く タァルを暗がりが覆い 煙がさらに喉を通過するたび 上下する胸の 奥にともるジッポの火種 (シャキリ、シャキリとまたたきながら タァルは肺胞の隅々まで 影のように染み また煙は部屋のくらがりのように そっとぼくの背中をなでる 新たに煙草に火を灯す (シャキリ、シャキリとまたたきながら ぼくが背中におおいかぶさるくらがりを 厭うならば煙草を吸わない 煙草を吸わないぼくの肺胞は 健やかに酸素を取り込み タァルを駆逐していくだろう ゆっくりと時間をかけて そのようにしてぼくの胸は上下し そしてそのようにして ぼくは生きている ○櫛田鶇吾 「煙草を吸わない」 快晴の肺胞に 小鳥たちが巣くい 肝臓の山の麓で地震が起きても 甲状腺の谷でまあるい熊が踊らずに済む バナナボートはかなりのスピードにも耐えられるらしい 実際あきこはそれですごいGを感じたと言った 智哉はパイロットになりたいんだって パイロットねぇ・・・。 深海のらくだが、千年橋を叩いて渡らないように ぼくは煙草を吸わない   ☆ワタナベ かいちゃんのは 少し漠然としすぎているかなぁ 櫛田さんのは、飛び立つ準備運動の時点で、いろんな 準備運動をしてて面白いんだけど、飛び立てていない 感触。 ☆櫛田鶇吾 カイトさんのは隙がないね。すごく丁寧。 ☆灰人/カイト なべっち 凡庸(>_<、) トーゴくん こういうふうに拡散していっちゃうのは嫌いじゃないよ ☆櫛田鶇吾 確かに、特に着地がちょっとつまらないかも。あと「シャキリ」とかもデメリットの方がこの場合多い。ナベさんのやつ。 カイトさんのは、「しずかな顔が浮かんだ」のところ、 まるまる削ってもいいかも、なんか展開がより安直になってしまうような。 「神々に似た」もそのせいであんまり活きずに陳腐になってしまうし。 ☆月見里司 灰人さん ねむり姫を起こして一目惚れ、という読み方は身も蓋もなさすぎでしょうか。くろいまるい/まるいくろい が素敵ですが、全体の雰囲気とは少し乖離していますね。前半と後半の改行形式がバラバラなのも惜しいところです。私は後半のほうを推します。 ワタナベさん どことなく戦後の、というか少し前の文調です。雰囲気は良いのですが、雰囲気だけなら後半二連だけでも充分に感じますし、もっと書き込んでゆくなら (シャキリ、シャキリとまたたきながら を単に調子を整えるための小節線ではなく、もっと刺さるような使い方をして欲しかったです。 櫛田さん 最初テーマの縁語で書き出しているのに、途中から煙草そのものが極めてどうでも良くなっている気がします。期せずして禁煙のプロセスに似ているかも。それがふわりと広がっていくのを最終行でブツリとやってしまうのは、時間切れゆえかもしれませんが好きです。 月見里司 [18:16:02] この寸評と皆さんの評を総合して、櫛田さんに票を。 櫛田鶇吾 [18:18:52] いきます。「絵描きたちの沈鬱」コレいってみよう。なるべくお題に引きずられない面白い展開を希望。 ○灰人/カイト 「絵描きたちの沈鬱」 カミソリがカツンと落ちた 泣いている (もうどうしようもないのです・・・ (見て下さい。私の胸の皮膚を採取したのです。 (でももう干乾びてすこしも広がりません。 (こんなものっ ぺしっ (見て下さいあの窓の外を (あれも私が描いたのです (なんてざまでしょう 押し殺した泣き声 (ええ、ええ、これも (沼です底なしの。ええ (もうできあがります (さあ、もういいでしょう? ドボン ○月見里司 「絵描きたちの沈鬱」 ドアの向こうに僕は 絵の具セットを持って ぽつんと立っていた 図工室でイッシンフランに 絵を描くみんなには 顔がなくて どれも同じ落書きで 時計の目が こっちを見てる 夕焼けがすごい教室にもどって 顔じゃなくて 時計にでっかい 目玉を 描くことにした ○ワタナベ 「絵描きたちの沈鬱」 エドガー・アラン・ポーから 江戸川乱歩が生まれたように 絵描きたちの沈鬱から イメージの欠乏が生まれ それが駄作と名づけられて 歴史の流れに飲み込まれてゆく わたしは船にのっている 歴史的現在という名の そこから流れにむかって ワインをそそぐ そそがれた赤い筋は ふっと拡散し (もはや群青の海がひろがるばかり 船底をたたく波がよせ もはや色の見えなくなったわたしのワインを 遠くかなたへと連れ去ってゆく 南十字星があがろうとしている 絵描きたちは 流れの中に沈鬱している。 ☆灰人/カイト さとちんのは ひとつのイメージにとらわれすぎている気がする なべっちのは 「絵描きたちの沈鬱」が「歴史の霞」に入れ替わってる ☆ワタナベ かなり苦戦の跡が見られる気がするw その中でもかいちゃんが一歩リードな感じかなぁ ☆月見里司 灰人さんのは、絵描きという名前ですがこれは神様に見えます。世界の終わりでしょうか。 凄いのにドボンだけが惜しいです。ここまで壊さなくてもいいのに、と。 ワタナベさんのは、二連目の「イメージの欠乏」を江戸川乱歩張りの駄洒落に仕立てて欲しいと思いました。 そこが決まったら最高でしたね。 ☆櫛田鶇吾 カイトさんのは、ストーリー性と口語体が上手い具合に組み合わさってるけどいかんせん内容がなさすぎる。それと本当は「ドボン」のところでもうひと工夫したかったんだろうなーと思った。 月里さんのはありきたりながら日常の呼吸がちゃんとあって、ことに終連での未然形な期待感は素敵。出だしのあたりの要素をもうちょいカクテルすれば化ける可能性がある感じかな。 ワタナベさんのは土台がしっかりしていてつい読み込んでしまう。展開もなかなかきれいだね。 櫛田鶇吾 [18:37:55] 3回戦と言ったけど、票を入れるならワタナベさんかな。 ワタナベ [18:38:14] おーーーーっしゃ!! この一票はうれしい 純粋にw この面子で勝ち抜けたことがうれしいなw あざっす では編集して さらに厳しい読者の目にさらしてくるよw ”夏の陣、第5回戦はこのようにして行われました、興味のある方 少しでもおもしろそうだなと思われた方はどんどんご参加ください。 俺そっちのけでやってもらってももちろんかまいませんw ルール等はスレッドをご参考に、後でログだけ送ってもらえれば こちらで編集いたします” ---------------------------- [自由詩]メッセージ(稿6/ワタナベ[2007年8月18日1時23分] 教室の扉をあけると机が整然とならんでいる 錆のこびりついたロッカー、同じような景色の描かれたいくつものデッサンが壁に貼られている。窓から俯瞰された線画、L字型の校舎と塀に囲まれたグラウンド、校舎は塀にむかって屈折し屈折部分は低く腹ばいになっている。その突端で塀は切れており、そこから鞄をたすきがけにした、学生服が入ってくる。塀から上だけは、すべて青く塗りつぶされている。 (どこからか耳の奥に響く声) 窓際の机に鞄を置き、窓枠に力をこめる、つまさきが少しだけ浮く、雲のない空。 校門に立っている、数メートル先には玄関があり、靴箱が並んでいる。レンガ造りの玄関の左手にはグラウンドが広がり、奥には三階建ての校舎が建っている。玄関をくぐり、靴を履き替え、廊下を進んでいく。下穿きが廊下をこする音が響く。突き当たりに階段があり、左には教室が並んでいる。 カルトンと画用紙、HBの鉛筆を、机に置いた鞄から取り出す、そして窓から外を眺める、空は青い、まず腹ばいになった校舎の屈折部分を描く、そして、塀に沿って線を引く、空間部分はグラウンドにする、校門が目に付く、アスファルトがちらりと見えている、鞄をたすきがけにした学生服をそこに配置する、塀から遠く街並みが見える、何も描かない。 空を見る、雲はない、すいこまれ、視界が青く溶けていく。 いつものチャイムが鳴る、画用紙に青い絵の具をしぼり出す、筆で塀から上を塗りつぶす。 (耳の奥に響く声) 並べられたデッサンの端っこに、画鋲で画用紙を貼り付ける。 突き当たりの階段を三階まで上がっていく、教室の扉を開ける。中を見回すと、机が整然とならんでいる。 (耳の奥に響く声) 教室の後ろの壁には、同じような景色の描かれたいくつものデッサンが貼られている。窓から俯瞰された景色、すべてのデッサンの上半分は青くぬりつぶされ、校門には鞄をたすきがけにした学生服が描かれている。いつものチャイムが鳴る、窓際の机に鞄を置き、窓枠に力をこめる、つまさきが少しだけ浮く、雲のない空。 校門に立っている、またぼくは校門に立っている、頭の中で響く声。ぼくの影がながく伸び、レンガ造りの玄関は夕日に照らされている。声がする、ぼくはぼくの校舎に入っていく、靴箱いっぱいに靴は並び、下穿きはない。靴のまま、校舎の中に入り、三階の教室を目指す、声がする、扉を開け、壁一面に貼り付けられたデッサンを剥ぎ取り、破り捨てる、声がする、頭の奥で響く。 画鋲がばらばらとふりそそぎ、手の甲をひっかき、数多にぼくの教室を反射し消えてゆく。ぼくは一心不乱にデッサンを剥ぎ取り破り捨てる。 鞄を投げ捨て、窓枠に力をこめた。 手の甲の傷に、しずくが、ぽつり、ぽつりと落ち、染みこんでゆくたび、遠く燃える空が、頭上からゆっくりと、とうめいな群青に染まり沈む。 ぼくは投げ捨てた鞄の中から、カルトンと画用紙、HBの鉛筆をとりだし、窓から見えるだけの街並み、ひとつひとつの家、ビルディングをできるだけ丁寧にデッサンし、それらの無数の窓からもれるささやかなひかりを、こまかく塗って、教室の後ろの壁に貼り付けた。 ぼくはしばらくそれを見つめて、階段を降り、靴箱の横を通り、玄関から外に出る、校門で学生服とすれ違う、振り向くと、暗闇の中で、学生服が呆然と立ちつくしている、校舎は見えない。 その足元には、一枚の画用紙がぼんやりとひかりを帯びている。 ひかりの中から、矮小なぼくのさまざまな声が聞こえてくる。 学生服は耳を塞いでうずくまり、頭のてっぺんからどんどんと画鋲になり、崩れ、画用紙の上に音をたててふりそそぎ、はねた先の暗闇に消えてゆく。 画用紙を拾う、そのあかりをたよりに、ぼくは歩き出す あらたなもうひとつのひかりの中へ ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]☆第五回即興詩会(夏の陣編)/ワタナベ[2007年8月21日23時38分] ワタナベ「空の箱」 10分間で はじめー ○田代深子 「空の箱」 足から入り腕を出すと そのダンボールのほかは空ばかりで おれは首も伸ばし下をのぞきこんでも からりと晴れ風鳴る空のどこまでも しまった あれも連れてつれてくればよかったと ポケットの小瓶をあおって ああ携帯もないし ダンボールは揺れもせず ただ口を空け どこかへとしょんべんを放った ○月見里司 「空の箱」 ちいさい点が見えて どうにもならないことがわかる。 むげんの草原に立って 何処へでも着く前のわたしたちと 平坦な雲の列の ゆるみ。 わたしたちの脳は 厳重にかぎをかけられた、 歩きつづけるよりはむしろ 苦しむことを選んだ、 沼をひとつ見つけ わたしたちは空のすき間から 上へとのぼってゆき わずかな塵。 ○いかいか 「空の箱」 私たちが川べりで ゆっくりと下っていくころ 私たちの稲の家は、 多くの、実りの中で、 燃えては、陰る、 無数の瞳の群れ、 私たちの抜け落ちた湿地帯、 かの田園は程なく夏へと入る そして、私たちの懐かしい 挨拶の香りは、 この亜熱帯の都市の下で揺れては消える ところで、と、私が打つ、 可能な限りの濁点の数が 濁る川べりで下っては上る、 そしてまた繰り返す、 陰る田園を挨拶の残り香が飛ぶ、 聞けばそれは どこかの誰かが揺れては消えた 鉱石の振動、 夏、 田畑が 燃えるのは、 私たちが亜熱帯のざわめきを抜け 燦々と降る挨拶の中へ 突き抜けたからだ、 ☆田代深子 いかくんのはモチーフがとてもいいけど もうちょっとまとめられるとよかったね 月見さんのは逆にすごくよくまとまってるけど 一発インパクトがほしかったな ☆いかいか 田代さんのは、まさに空の箱という感じで、あっけらかんとした感じが出ていて、 うまくテーマをとらえているとおもう ☆月見里司 田代さんの作品は明快ですね。 ☆櫛田鶇吾 月見さんのはなんとなく上手くまとめようとし過ぎてるように思うね。イメージは伝わるけど。 *この後、寸評会の途中でフォラムのサーバーダウン、7月15日@リアルタイム会議室A ですので、寸評会の雑感、及び、私的な判断で軍配は田代さんに。 ---------------------------- [自由詩]街/ワタナベ[2007年8月22日22時44分] あかねにたなびく雲に コールタールはへばりつき ぬぐってもぬぐっても 整頓された家々へ 投函されてゆくディーマイナー 遠く燃える山際のノスタルジアが 無言の背中で街並みを責めている ゴミ捨て場にまとめられた 声にならない叫びは あの電線にとまっているからすの影 風きり羽根をもがれたからすだ 嘴を真っ直ぐ街の方へ向けている その上空を模型飛行機が山の方へ還ってゆく 都心を取り囲むように 数多の家々が かごめかごめをしている 鬼はだれだったか 「忘れられてゆく」 その言葉だけが いつまでも母親を待ち続ける幼子のように 公園のベンチでひざを抱いていた うしろのしょうめんだあれ 喧騒にまぎれて絶えず聴こえる わらべうた 「ふりむいてはいけない」 見上げると、電線にとまっているからす こうべは変わらずあげたまま 声はからすのものだったろうか からすは一声鳴き、羽を広げると さかさまに墜落していった みずからの影の中へ これから街はネオンの原色を通過する プラットフォームに からすの息遣いが響く ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]言葉探偵ワタナベ-週間レコメンド・ポエトリー(1)/ワタナベ[2007年8月23日16時05分] 今週のレコメンド・ポエトリー さよさん 「パパ」 http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=130846 文明開化の足音も遠く過去の遺物として語られることになったこのご時世において 侍って(笑)的な発想から言葉の探偵に鞍替えしました。 てことで、今週一番好きだった作品について 不思議な色合いの詩だと思う。ひらがなと漢字のバランスも不思議。 親父、でも、おとうさん、でもなく、パパ、なんだよね。 パパってなんだろう、なんだかなんでも出来そうな気がする。 幼い目から見たパパはきっとなんでもできるんだろう。 もちろん、三日月を虫取り網でとっちゃったりもできる。 だけれど、話し手が歳をとるにつれて、人間としてのパパが抱えている さまざまな、葛藤だとか、人間らしさ、が見えてくる。 でもやっぱりパパはパパで、今でも「わたし」は 鞄の中の書類には、お菓子の家の設計図が入っていることを 「しっている」んやねぇ。 パパの笑顔は世界一だ。だれがなんと言おうと世界一なのです。 パパがにっかりわらうと、つられてにこりとしてしまう。 ところが、1,2連の描写のパパはなんだろう。 「くるまの匂い」は「こびりつく」もので、あまり愉快ではないように 見えるし、「死」というワードが二回登場する。 2連目の死んでいるくらげにむかってべろを突き出し、忍びわらいを しているパパ。 そのパパ像とは「わたし」にとってどんなものだろう。 ユーモラスな表現の中に見え隠れする複雑な「パパ」像 それはイコール、「わたし」にとっての「パパ」がどのようなものなのか、 うーん、と頭をひねって自然と出てきたものなのかもしれない。 「パパ」は「パパ」だけれど、「わたし」にとってはいろんな「パパ」 がいる。 「ほんとうは知っていたんだよ」むむむ、ほんとうは知っていたんだけれど あえていわずに隠していた、ともとれる書き方、それは「わたし」が 「パパ」を「パパ」という位置にいさせてあげていたのかもしれない。 でもきっと「パパ」もそれを承知していて、両者の中に暗黙の了解のような ものができていたのかもしれない。 でもやっぱり「パパ」はやさしくて、大きい。 だって、そんなお互いの暗黙の了解の中にあっても 照れも、一抹の寂しさも感じさせずに、おもわずつられてしまうような笑顔で 「にかっと」笑ってしまうのだから。 ---------------------------- [自由詩]地図/ワタナベ[2007年8月24日4時01分] 地図はいつでも正確だ 何分の一という尺度から道がどのように走ってその脇にどんな建物があるのか ことこまかに教えてくれる ぼくはそこに自分の生活を書き込んでいく 家を基点にして、小林さんの勤めているジャズバー 小林さんは木曜日から土曜日まで顔を出し、たのめばいつでも 「煙が目にしみる」を体全部で弾いてくれる ランチタイムには賑わうカフェ、ここのランチは絶品なのだ 「文」の文字で表された中学校、自転車で通るといつもサッカー部なり 野球部なりが練習している。 コンビニ、スーパー、薬局、いろいろな生活を書き込んでいく さまざまに書き込まれたメモから ぼくの目の前にそれらの場所で生活する人たちの息遣いが聞こえてくる それらに囲まれたぼくの家だけがなんのメモもされずに、地図からとりのこされている 書くことはコップから溢れるほどある しかし、いざ手で掬おうとすると、指と指の間からみるみるうちにこぼれてしまう こぼれた欠片を拾い集め、ジグソーパズルのようにひとつひとつ当てはめていく すると、ぼくの家のピースだけがどうしても見当たらないのだ そこにこそ、ぼくの長い物語が書かれていたはずなのに 欠落した部分の周りを指でなぞってみる ジャズバー、カフェ、中学校、コンビニ、スーパー、薬局 それぞれに触れるたびに、指先にかすかに電流がはしる ぼくがメモしたよりも、ずっと長い物語がそこここに隠れている それは暴風雨の中を行く一艘の帆船の話かもしれないし 朝の静謐な空気のなかから香る真新しいシャツの香りだったりするかもしれない 毎週金曜日の夜は小林さんのピアノを聴きにいくことにしている その音階の隙間にも小林さんの物語はひそんでいるのだろうか 静かな調べがぼくの心を揺らし 高い音階がぼくの耳の奥で踊る ぼくはぼくの物語を読むために 小林さんのピアノを聴きにいく ---------------------------- [自由詩]螺旋/ワタナベ[2007年9月14日5時35分] 八月はしづかに 葉先からくれないに燃え 白い節くれだった骨になる そのつつましさの中に 芽吹こうとする強い意志を隠しもっている 漂流する鳥たちは わずかの間のよすがを求め 自らの骨のゆめをみる アルジャーノン 知ることがぼくの苦しみだとするなら ただ季節のうつろいに体をあずけ あるがままの骨になることが やすらぎなのだろうか ぼくの骸を苗床に 咲く一輪の花のうつくしさを ぼくが知ることはない 歩くたびに たんぽぽの綿毛がふわりふわりと舞い上がってゆく 素足にのこる確かな葉の感触と 地平線まで続くたんぽぽの草原 そのすぐ上はもう宇宙だ 綿毛はどんどんと舞い上がり はるか頭上で渦をまく 見とれながらぼくは もうひとつの懐かしい家に ぼくは還ってゆく くれないに燃え、骨になり、芽吹く 渦をまいたたんぽぽの綿毛のように 螺旋を描き、遠ざかる八月を まぶしく見送りながら あの夏にこしらえたぼくの秘密基地には 今でもぼくの骨が埋まっている たくさんの便箋が隅に重ねられて 伝えられなかった言葉が あたらしい八月がくるのを しづかに待っている ---------------------------- (ファイルの終わり)