チアーヌ 2007年5月31日17時02分から2007年9月9日23時35分まで ---------------------------- [自由詩]捨てられて/チアーヌ[2007年5月31日17時02分] あなたの恋人が ひと目見たいわ なんて 未練がましいわたし どこかに捨てて行きたい ビルの屋上や 夜の沼や 樹海の中へ たくさんの雨に降られて 遊びに行くの 遠い遠いところ ---------------------------- [自由詩]あなたは弱いですか?/チアーヌ[2007年6月8日1時23分] 弱いものいじめ しようと 手ぐすね引いてる人たち たくさんいる やっと咲いた花を 夜中にこっそり 折り取って 持って行ってしまったり 耳元で突然 大きな声出して 大喜びしたり 最初は 他愛ない嫌がらせ そのうちに どんどん大きくなっていく みんなそんなこと やるなんて言わない 言わないでやる 無かったことみたいにやる 思ってもみないのにやる そしていつかほんとに忘れちゃうよ だから 弱くなってはいけないよ 赤剥けになったら 塩を塗りこまれる だけだから あなたは 弱いですか わたしは 弱くありません ---------------------------- [自由詩]どうだっていいこと/チアーヌ[2007年6月11日1時21分] そんなことどうだっていいじゃん って思うけどとりあえずニッコリする 思うことすべて言って歩いていたら世の中敵だらけ それでもいいって考え方もあるけど結局面倒なだけ やりたいことは こっそりやる 夜に見る夢を録画することはできないから わたしだけのものにしておける 坂をどんどん下っていって 谷間に行き着いたらあとは上るだけ 巨大なエビがこんにちは ここは海の底ですか? 山なのに ---------------------------- [自由詩]かしこいひとたち/チアーヌ[2007年6月11日22時35分] 大きなカエル に なるまえに 大きなおたまじゃくし が 処分されました ひとりの犬 も 処分されました けっこう平気みたい みんなけっこう クールだね ---------------------------- [自由詩]青空モノレール/チアーヌ[2007年6月14日22時59分] 天井まで届く モノレール わたしが常に憧れていた風景 青空に ---------------------------- [自由詩]どうせいつか/チアーヌ[2007年6月18日10時34分] どうせいつか 愛せなくなるなら さいしょから 愛さないでください っていうのは どうせいつか 死ぬのなら 生まないでください っていうのと おなじ ---------------------------- [自由詩]恋人がたくさん/チアーヌ[2007年6月24日0時51分] 幸せな夢から覚めたら 恋人がたくさんいて 誰とデートしようか 吐き気を抑えながら悩んだ 恋人なんかいらない 面倒なだけだ たくさんなんかいらない ひとりだっていらない まったくいらない ぜんぜんいらない いらない ---------------------------- [自由詩]バーゲン/チアーヌ[2007年6月24日1時00分] とりあえず 行く イライラして 試着室では 剥ぎ取るように 脱ぐ あれも これも 全部欲しい マネキンが着ている服を 脱がせたら 裸になった ざまあ見ろ 大嫌い 子供のころ 世界から人がみんな消えたら デパートに行って 欲しいもの全部持って来ようと思ってた 世界から 人がみんな消えたら どんなに楽しいだろうと 思ってた ---------------------------- [自由詩]地球内生物へのメッセージ/チアーヌ[2007年6月25日14時50分] 残念ながら 愛はもうどこにもないので 地球外生物を探しに 旅に出るしかないのかもしれません 地球外生物にはきっと愛がある 地球内生物には愛なんかない いくらひび割れた心をくっつけようとしたってダメだよ 一度ついた傷はもう治らない 簡単なことがあなたにはわからない 愛がないから「こんなこと」になるんだな 「こんなこと」だらけの世界なんか 飛び出そう そうだそうだ みんな滅びてしまえ そしてすっきりしようぜ ---------------------------- [自由詩]夢の中の悲しみ/チアーヌ[2007年6月30日21時12分] 夢を見ていて悲しいことがあると 純粋に悲しい感情だけが高まって 夢の中で 押しつぶされそうになってしまう そんなとき 胸の上の猫を払い落とせば 急に楽になれる 目を覚ますと 猫のいない現実が待っていて わたしは濡れたように寒くなる ---------------------------- [自由詩]腕を登る虫/チアーヌ[2007年7月7日0時00分] 腕を虫が登ってくる ウデムシ ウデムシ 誰も助けてくれないの 誰も助けられないの よく見ると サイに変わった 小さなサイ その後からカバ メルヘン? 腕を虫が登ってくる 行列を作って ウデムシが登ってくる 行列を作って 直径一ミリのサイ カバ 登ってくるよ メルヘン? メルヘン? 誰も助けてくれないよ 壁が段々狭くなってくるよ ---------------------------- [自由詩]ミサイル女/チアーヌ[2007年7月12日22時14分] ミサイルになって あなたを破壊してやりたい 骨の髄まで ぶち壊しにしてやりたい 流線型の顔をして ---------------------------- [自由詩]心を取り出そう/チアーヌ[2007年7月13日20時53分] 暖めるよりも 冷やしたほうがいいよ チルド室くらいの感じで なるべく 知らん顔してたほうがいいよ 小さな恋の物語 なんか 暖めてもしょうがない 何がしたいのか考えようよ 自分の欲望を見つめようよ そこに何があるのか ないのか 鏡に映してみようよ うんと大きく広げて 秤があったら グラム単位で計ればいい ピクピクしていたら そっと撫でてあげればいいよ 自分でね ---------------------------- [自由詩]それがどうしたって言うの/チアーヌ[2007年7月17日0時50分] ここはとても静か 湖の底 体がばたばたと動く 気持ちが揺らぐ 不安で立ち上がってしまう メールを何通も打って 返事が来てまた打って あれもこれも ああ ああ そんなとき 「それがどうしたって言うの」 湖の底は とても静か どんよりとした水 何も見えない 底は泥 ---------------------------- [自由詩]足の下/チアーヌ[2007年8月3日22時37分] 暗い 家具の下や 冷蔵庫の下や 米びつ の下から 何か黒いものが 這い出てくるような気がする 何度も何度も そこを見てしまう 居酒屋で 爬虫類みたいな顔をした店員に 上目遣いで見つめられて なんか そんな感じ わたしは急に30メートルくらいに大きくなり 逃げようとするんだけど 地面にめり込んでいく そうしていると 小さな白い顔をした人形が とことこと こちらへ 歩いてきました ああ どうして わたしばかりがこんな目に遭うのか 気がついたら どうにでもなればいいと 思っていたのに 本当は 怖くて仕方がないの ---------------------------- [自由詩]真っ暗な世界/チアーヌ[2007年8月6日0時13分] 真っ暗な世界へ お帰りなさい 夢見る兵隊さん ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]花火大会の夜に/チアーヌ[2007年8月6日10時56分] 昨夜は仙台で大きな花火大会がありました。 わたしは東京からのお客さんと一緒に、西公園という大変混雑している場所の片隅で、たこ焼きとビールを片手に、跳ね回る子供を叱りつけながら花火を鑑賞していたわけなんですが、そのときにそのお客さんにつらつらと思い出話などしていたら、 「それで?それで?で、どーなったの?」 と、なぜかその話が大変好評(?)だったので、ここにも書いてみようかと思います。 花火・・・といえば、東京では何といっても隅田川の大花火大会ですよね。テレビでも中継されるし、もう現場は殺人的な混みよう。それに、東京はヒートアイランド現象も手伝って夜になっても恐ろしく暑いにもかかわらず、暑苦しい浴衣などわざわざ着込んでカップルで乗り込む若者が多いこと多いこと。 ま、そんなことはいいんですが、わたしもそれに「行きかけた」ことがあります。 あれは、もう、・・・・ええと何年前かな、考えたくないな、・・・とにかくずっと前の、隅田川の花火大会の夜のことでした。 わたしはその当時19歳の女子大生で、で、彼氏なんかもいまして、そこそこ仲良くやっていたわけなんです。 で、その、ちょうど隅田川の花火大会の日、わたしたちはデートの予定なんかさっぱりありませんでした。 なぜかというと、わたしは神奈川在住だったので、要するに、遠かったんです。わざわざ隅田川に行かなくたって、って思いますしねえ。 それにその日は、彼氏はバイトが入っていました。 そのとき、彼氏は日本橋三越の恐竜展で受付かなんかのバイトをしていまして、・・・で、たまたまわたしはその日、渋谷に用事があって出かけていたんです。 その用事が終わってふと街を歩いていたら、「半蔵門線」の入り口が。 (あっ、これに乗ったらもしかして、「三越前」まで一本だったよね。そういえば花火大会もあるし、一緒に行けるかなぁ) ちょうど、彼氏のバイトの終わりの時間が近づいていたこともあって、わたしはそんなことを思いついて、ふとその電車に乗ってしまいました。 今だったらねえ、携帯で電話の一本もかけてから・・・・ってところなんでしょうけど、その頃、携帯なんか無かった(年がバレるなぁ・・・・)。こういうときは、思いつきで行っちゃって、会えなかったらそのときはそのとき、だったんです。 そして三越前で降りて、三越のほうへ歩いていたら。 (あれ?) わたしは少し離れた場所から、しげしげと前方を見つめました。 ちょうどバイトを終えたらしい彼氏が、浴衣姿の女の子と、駅に向かって歩きながらイチャイチャしているではありませんか! (・・・・・・・・・・・・・・。) 経験したことがある方はお分かりでしょうけど、こういうときって思考回路が止まりますね。別に、怒りとか悲しみとか驚愕とか、そういう感じじゃなくて、止まっちゃうんです。 そして・・・。彼氏がわたしに気がつきました。 そのときの彼氏の顔は。 正に、 「信じられないものを俺は見た」 ような顔でした。 目を見開き、何度もしげしげと。 わたしも同じように見ていました。 そして。 彼氏が、浴衣の女の子に、なにやら言ってます。で、すたすたとこちらに歩いてきました。 「帰ろう」 彼氏はこちらを見ないでいきなりそう言いました。そして、だだだっと素早く、先に立って歩き、わたしが来た方向へ戻るように、渋谷方面への車両に乗り込みました。 その、空いてること。 逆はめちゃくちゃ混んでましたけどね!こっちの車両はがら空きに近い空き具合。 でも・・・。案外わたしがそう感じただけで、実はそうでもなかったのかな。 電車の中で、とりあえずわたしたちは一言も口をききませんでした。 そのときわたしが思っていたことはただひとつ。 (あー、・・・・来なきゃよかったなぁ) わたしは運が悪いというかなんというか・・・・。何も疑ってなどいないのに、そういうときに限って!彼氏の浮気の場面に遭遇するということが多い人でした。 何度かあったので、パターンはわかってしまったのですが、そういう時って、別に修羅場とかにはなりませんね。 きっと、どこかで彼の浮気を疑っていて、そう思っているときにそういう場面に出くわしたりすれば、まぁそういう場合って「心の準備」ができてますから、怒ったり泣いたり責めたりなどの「修羅場」になることもあるんだと思うんですけど、わたしの場合、もう全く疑ってない場合が多くて(というよりも、何も考えてないだけなのかも・・・)そういう場合って、なんか止まっちゃうというか。 まっこれは別のときの話なんですが、わたしがある日、彼氏が休みの日(これはさっきのとは別の男)に、ふと家の近くまで行ったもんで、やっぱり夏でしたね、アイスなど抱えて、いきなり彼氏の家に行ったことがあるんです(行かなきゃいいのにね!)。 ドアの前でチャイムを押して、待っていたら、チェーンがかかったままドアがガチャンと開きまして。たぶん、確認せずに開けたんでしょうね、彼はわたしがいるとは思っていなかったみたいで。てっきり新聞の集金かなんかだと思っていたんでしょうね。上半身裸で、寝起きの顔で、・・・でも、わたしを見た途端、別の彼のときと同じように「信じられないものを見た人の顔」になりまして。 わたしは何も考えずにニコニコしてたんですが、彼の様子がおかしいので、ふと目線を下に下げると、玄関には女物のサンダルが・・・・。 そして、目線を上げて、部屋の中を見ると、彼のせまーい部屋のベッドの上には、やっぱりびっくりした顔でこっちをみている女の人が・・・・・。 タオルケットで裸の胸を隠して・・・・。 (・・・・・・・・・・・。) とっさに、ビックリしすぎたわたしは、 「あっ・・・・。かっ帰るね」 と、おどおどと申し出ました。 すると、 「いやっちょっと待って」 と、慌てたような彼氏。 後ろでは、もうのすごい勢いで女の人が服を着てまして、そしてまもなく、女の人が玄関までやってきて、 「ごめんねっ、ユタカ君、あっ、どうもこんにちは、ごめんねっ」 と、わたしにまで挨拶してくれて、部屋を出て行きました。 わたしもつられて、 「あっすみません」 とか謝っちゃったり。 なんだか間抜け・・・・。 「はっ、入って」 なんだか呆然としてしまったのですが、彼氏に引っ張られてわたしは部屋の中へ。 まるで一瞬の出来事みたいだったのですが、結構時間が経っていたんでしょうね、彼氏のために買ってきた、彼の大好きな「ガリガリ君」が結構とけかかっていました。 それを無言で冷凍庫に入れるわたし・・・・・。 「今の人は・・・・?」 「いや・・・。仕事先の先輩で・・・・」 そんなこと聞いてどうするんだ、と思いながら、ほかに話題もなく・・・・。 「帰るね・・・・」 ぼんやりとつぶやくわたし。 そして冷凍庫にガリガリ君を残し、わたしは彼の部屋を出たのでした。 「あははっ、チアーヌちゃんらしい〜」 そんなことを話していたら、昨夜はすっかり一緒にいた人に笑われちゃいましたけどね〜、でも、わたしの教訓としては、「人間は準備がないとなかなか怒れない」ということがわかった・・・という感じですかね。どっちの場合も、怒りや悲しみはあとからふつふつと湧いてきました。まぁでもそういう性格だから、結構しつこく詩を書いたり小説を書いたりするんだと思うんですよ。その場でガンガン言ったり怒ったりする積極性はないんだけど、けして内に篭りっぱなしにもなれないというかねえ。よく考えると結構いやな性格ですね。暗い・・・・。 何年でもずっと、そのときの感情を忘れずに録画、再生できる!これも特技と思って、これからもいろいろ書いていくことにします。って、あまりまとめにもなってませんね。すみません。 ---------------------------- [自由詩]削られた一部/チアーヌ[2007年8月7日0時51分] ふと 街で 耳にした音楽から わたしの声がして びっくりしてしまった あの日あなたと過ごした半日で わたしのどこかが変化したよ あの日の前と後で わたしはずいぶん違うみたい 西葛西のあなたの家の二階は とても不思議な空間でした 屋根があったような気がしない 壁はあるのに 天井は抜けていて はじめて 雑誌に名前が載っていたのを見たときには びっくりしたけど それからもう10年以上 経ったね あなたは今どこにいるのかな どんな風景を見ているのかな あなたのサンプリングしたわたしの声は 楽器のひとつになったみたい もし会っても話すことなんかないけど なんだかわたしの一部を抜き取られたみたいで いまだにちょっと わたしは削れている ---------------------------- [自由詩]タイムマシーン/チアーヌ[2007年8月7日19時57分] 今日も部屋は止まっていて わたしをどんどん越えて行く 青い空に擦り切れたような雲 部屋はわたしをどんどん越えていく 戻ってきて繰り返して 戻ってきて繰り返して 何度もプロペラを回すけどエンジンがかからない タイムマシーン そしてやはり部屋はわたしをどんどん越えていく どんなに擦り切れても白い雲は 青い空に薄く流れて わたしをどんどん置いて行く 怖くなんかない どんどん置いて行く ---------------------------- [自由詩]サティ/チアーヌ[2007年8月7日20時12分] 砂漠の王様に すべてを捧げたサティ 月が昇り 希望に満ちた今夜 サティは眩く輝いた 大道芸人は すべてが美しく見えるよう 呪いの言葉と共に 七匹のコブラを 火の釜へ 投げ込んだ ---------------------------- [自由詩]絆創膏/チアーヌ[2007年8月9日22時21分] 最低のことをしているという 自覚は一応あった でも相手は男の子なんだから これくらいいいかっていう気持ちもあった 恋がダメになるたび 手近にいた 誰かに手を出した 「今夜は一緒にいてね」 そんな勘違いなセリフを いけしゃあしゃあと語り 胸の谷間をわざと見せて ガンガン誘惑したりして いつもながら 自分を慰めてくれそうな男を捜す時の勘だけは冴えてる わたしが男だったら こんな女いやだなぁ 誰でもかまわない そう思いつつ ほんとうはやっぱり誰でもよくはなくて ちょっとは選んでた 絆創膏みたいな男の子 心の傷にぺたぺた貼って 濡れてもOKな感じの ---------------------------- [自由詩]潮時/チアーヌ[2007年8月14日12時54分] 江ノ島に行こう なんて あなたが休日の昼過ぎ 突然思いつくもんだから 車を出して行っては見たものの やっぱりうんざりするような渋滞に 巻き込まれただけ もうそろそろだなって 思ってた あと何回 きらびやかな電飾のついた門を 二人で くぐるんだろうと どうしようもないね こういうとき あがけばあがくほど 事態がよくない方向へ行くってこと わたしはよく知ってる だからといって よい方向へ持っていくことなんか できないけど 「やっぱり戻ろう」 っていうことになって 夕暮れの海を 横目で見ながら引き返すとき 「やっぱりね」 と思ったけど 言わなかった もう何も 言いたくなかった ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]わたしの感想 7/チアーヌ[2007年8月15日13時38分] すごーく久しぶりの「わたしの感想」。 自分しかポイントを入れていない詩についてあれこれ短い感想を書いていきます。 良かったら読んでください。 未詩・独白カテゴリのものはのぞいてあります。 最近フォーラムの詩もあまり読めてなくて、昔のほうがよく読んでたなーとこれを書きながら実感。 「こうばしいにおい」かなりや http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=17513 恋愛の空しさ、慣れてしまうことの悲しさ、を淡々と書いてあって、そこが好きでした。 暑苦しく書いてないところがいい。 「宛名書きが見つからない。」示唆ウゲツ http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=17528 これも、実に淡々と書いてますが、よく読むとすごく面白い。 いろいろと想像できる作品で、タイトルもいい。重なってない。 「はやく」今村知晃 http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=18104 せっぱつまっているこの感じ。まぁ読んでみてください。誤字?(だと思う。だってメイベーって・・・・)もあるけど、文章に構っちゃいられないような、炸裂感がすごい。普通構うじゃないですか。だってとりあえず詩を書いてるんだもの。それが全くないところがすごい。だからこその切迫感。なかなかここまで突き抜けられないですよ。歌詞っぽいけど歌詞じゃない。やっぱりなんか、違うんだ。 『ベイベー、射精したいけどそれだけじゃないんだ それだけじゃないんだけれども射精ももちろんしたいんだ 深く考えないでくれよ 言葉のバランスを取りたいだけさ、今のところね』 ね。 「じんせいせっけい」石川和広 http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=19232 石川さんはわたしが好きな詩人さんのひとり。この「じんせいせっけい」は、差し迫ってはいないけど、ゆるやかな破滅に向かっているような、そんな不安感を読後に残す不思議な作品です。漠然とした何かを読後に残すのは、わたしにとっては詩の特徴のひとつのような気がします。 「水のソコ」ソラ太 http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=19384 ああ、「ソコ」は「ソコ」なんだなぁって思いました。心当たりのある、切なく重い感情を、すごく単純に表現されているところが気に入りました。なぜか、きれいな写真と一緒に、何も無い午後寝転がって読みたいような詩集に入っていて欲しい。 「文化祭前」anne http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=22092 あーこの感じわかるわかる!という感じの共感ポイントです。 これもなんか、写真と一緒に寝る前に読む詩集に入っていて欲しい。 「美貌の花嫁」天野茂典 http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24849 なんか熱い。絶望的に、でも熱い。なぜだろうか?男性的な力を感じる作品。火口に抱かれるかのように。 「消費について?(一妻多夫制)」今村知晃 http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=26815 全体的な流れがステキな作品。これすごくいいし今村さんの作品の中でもわりとキャッチーな方だと思うんだけど、なんでわたししかポイント入れてないんだろうなぁ? 「TrUth iS stRanGer tHan fiCtIoN」たいにぃぼいす http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=27580 こういう正直系の作品もわりと好きです。飾らない日常。日常にはドラマなんかないし、何も美しくないし、普通って、つまらない、そして小説には筋書きがある。ということ。 ---------------------------- [自由詩]風が吹くと/チアーヌ[2007年8月19日14時16分] 夢の中で風に吹かれていた 耳の中を風が吹き抜けていて 頭の中まで涼しくなった 寂しいから一緒に住む人を探した 総理大臣とかそういう 忙しい人じゃない人だったら誰でも良かった 暑いのはイヤだったので 涼しい場所に風が抜ける 家を作った 木の寝台には鳥が寝ている 羽毛が抜けてふわふわと空中に漂っている 鳥は 足の裏でぴったりと あなたの頬を挟んだ 毒々しい色のペディキュアを塗った足の指は まるで生きているみたいにぐねぐねと動いた 穴に落ちるのがイヤだったから 木の上に住んだ それに気がついたのがいつだったのか もう覚えていない ---------------------------- [自由詩]許し/チアーヌ[2007年8月23日23時49分] お姫様が 何でも許してくれる王子に 浮気を告白しました それを聞いた王子様は 持っていた剣で お姫様を 刺し殺しました 「許してあげるよ」 そう言いながら ---------------------------- [自由詩]見ないフリ/チアーヌ[2007年8月30日15時23分] 夕方 花に水遣りをしていると ブルーサルビアの花の影に 妖精がいた 一目見て 「ヤバイ」 と思った 妖精は蝶の羽を持っていて ブルーサルビアの花と同じ色のワンピースを着て 髪の毛は金髪のロング 頬はバラ色 大きさは5〜7センチくらい そう よく絵柄で見るヨーロッパの妖精そのものだった 冗談じゃなく 連日の飲みすぎで 頭がおかしくなったのだろうか それとも 最初からわたしは おかしかったのだろうか まぁどちらでもいいけれど とりあえずわたしは妖精を見ないフリをした ---------------------------- [自由詩]京王線の彼氏/チアーヌ[2007年9月3日21時25分] 顔が いい感じで 寝転んだ姿が 可愛くて 何を考えているのか よくわからなかったけど ちょっと好きだった 京王線が好きで 就職したら 千歳烏山あたりで 一緒に暮らそうって 言ってくれた 「まぁそれはないだろうな」 って 思っていたけど 恋愛って なんであんなに キラキラしてるんだろう 何もかもが どうでもよくて たいしたことじゃなかった 雪の降る場所といえば 長野しか知らない 都会の人で 連れて行ってくれたけど 東北出身のわたしには 本当は 珍しいものなんかなにひとつ無かった まぁでも 「きれいね」 とか 言ってみたり スキー履いて 転んでみたり これでもいろいろ気を使った 恋を盛り上げるためには 演技だって必要だから 本当はどこを探しても 本気なんかなかったけれど 京王線沿線で一番自殺の多い場所を教えてもらったり 新宿駅西口で待ち合わせをしたり した 相性は良くなかったし 長く付き合うつもりも無かったのに 別れたときは 寂しくて どうしてだろうね 京王線に乗ると もしかしたら あったかもしれない 別の人生のことをたまに考えます 千歳烏山のあたりを通ると やっぱり彼はこのへんで暮らしているんだろうか なんて もうずいぶん昔のことなのに 思ったりします ---------------------------- [自由詩]カンガルーになりたい/チアーヌ[2007年9月5日22時09分] カンガルーになりたい カンガルーになったら お腹にポケットがついているから 裸になってもへいき どこへ行くのにも 子供をひょいと中に入れて ピョンピョン飛んでいける カンガルーになりたい あの大きな足があったら 疲れをしらずに 草原の中を どこまでも飛んでいける それにきっと 子供だって重くない 帰るところもいらない お腹のポケットに子供を放り込んだまま きっと どこまでだっていける ---------------------------- [自由詩]膿/チアーヌ[2007年9月9日13時42分] 膿んでいることはわかっているから なるべく開かないように 大事にしまっておくのだけれど たまに何かの拍子で 飛び出てしまうことがあって ぐちゃぐちゃ びちょびちょ ぐねぐね 赤黒い 目も鼻もない 何かの一部に 傷が付いて 膿になって 匂いもひどくて とても耐えられないくらい だから なるべくならしまっておきたいのだけれど たまに開いちゃうことがあって ---------------------------- [自由詩]廃棄/チアーヌ[2007年9月9日23時35分] 青くてすごく激しい魚を まな板に乗せてばちんと 首を刎ねた 何の通告もなしに 首も胴体も捨てた 血の匂いがあたりに漂って ハイターをぶちまけた 心残りは無かった ---------------------------- (ファイルの終わり)