umineko 2018年5月6日23時35分から2021年12月6日15時12分まで ---------------------------- [自由詩]恋するペンギン/umineko[2018年5月6日23時35分] 氷の上を ボクは滑る つーっとおなかで 海へドボン、だ 好きになったら ことばにしなさい それが恋の正しさなんだ、と 雑誌は教える ポパイだったか スコラだったか おなか滑りに夢中になって オトナゴコロが遅れたボクは 今頃ようやく ことばにできた だけど ことばじゃダメよって君は言う ことばは軽はずみで どこにでもあるから ボクは困惑する どうする どうするよ 金品?それじゃ辞任でしょ 実行?それじゃ記者会見 ことばは無力だ ことばは 氷の上を ボクは滑る つーっとおなかで 海へドボン、だ 恋は難しい ボクにはよくわからない ねえ 一緒に滑らない? つーっとおなかで 君にドボン、だ ---------------------------- [自由詩]駅/umineko[2018年5月21日0時51分] 駅が好きだ 旅行者がいる 外人がいる 妙齢ご婦人の三人連れ 急いでいる人 見上げる人 せわしなく 人が動く 何かの目的に 人が動く あなたと 待ち合わせたことも あったような なかったような ベルが鳴って 列車は とても大きな力で 自分の意思で発車する 私は 列車に乗らなかった あなたの意思と 私の意思は 列車のベルに 途切れた 駅が好きだ きちんと 約束を守るから 時間が来れば もう 迷わないから       ---------------------------- [自由詩]三原色/umineko[2018年5月24日23時18分] どんな微妙な色づかいでも 突き詰めると 三色になるらしい あか 青 黄色だったか 突き詰めると 案外 簡単だったりするんだね、 と ウンチクするには それで十分 好き 嫌い どっちでもいい 結局 これに尽きるよなあって 私は あの人が好きで あいつが嫌い あとの人はどうだっていい 昔は もっと八方美人で もっと八方塞がりだった あいつが消えて あの人が振り向けば 私 たぶん幸せだ 青い空は とても高くて 遠近感さえ 失うほどの 突き詰めると 私 あなたが好きだったのか 簡単だった 泣きそうになる ---------------------------- [自由詩]私が眠くなる理由/umineko[2018年6月16日20時19分] 職場近くのケーキ屋さんが 店じまいした 前日まで通いつめてた私は 朝の仕込みがきついんですよー、と おじさんの苦労も知っていたので ま、それもありかな と 真っ暗なガラスの向こう 空っぽの陳列棚に 華やかないちごショートは もうない タウン誌をひらけば 新装開店のお知らせが 次から次へ 引きも切らない だけど そこは誰かの 夢の抜け殻 銀行のロビー 電車の長椅子 私は 席の空くのを待って たとえば あなたの腕だって そこは誰かの 夢の抜け殻 私は すぐに眠くなる 少しのあいだ お邪魔しますね 夢は ひとりで見ますから       ---------------------------- [自由詩]ダイバー大漁旗/umineko[2018年6月17日22時34分] ダイバーシティーってさ お台場みたいな オシャレな街なんかなー 私がつぶやくと いやいやいやいや あなたは手のひら ぶんぶん振って 多様性ってことなんだね そおなんだー 私 ほとんど気にしないから 同性を好きになる いいじゃないですか 私は違うけど あなたが火星人でも たぶん気にしない 木星人なら ちょっとイヤかも なにそれ? 要するに 私といてくれて ありがとう いつも思ってる 優しくしてくれてありがとう 無理 してるよね そこも含めて 世界は いろいろだからね いろいろだからいいんだよ 金子みすゞが ちょっと浮かんだ 大漁旗にくるまって 眠りたいかな   今 一番したいこと        ---------------------------- [自由詩]恋をするならカルピスに/umineko[2018年6月21日5時15分] カルピスはもう カルピスじゃない 長澤さんが飲んでるあの白い液体 言葉にすると微妙にあやしいあの甘い液体 今は アサヒ飲料さんの登録商標です ちょっと前まで 味の素さんだったんですよ 知ってました? 私は わりと積極的にカルピスを飲む派なんですけど だってつらいじゃないですか 商品は悪くない、 環境にも対応しCMにも華がある だけど 存続できなかった 何かが 足りなかった 私は わりと時々カルピスを飲む そこには 業務提携 味の素って印刷もなく 登録商標の??マークも消えている おんなじはずなのに 何かが違う ゆうべ やさしくされたけど さみしかった きちんとしているときは だいたい 何かが終わるとき 私は 私のままなのに あなただけ遠ざかる 私が存在するために カルピス 私はどうすればいい? 存続できなかった 何かが 足りなかった       ---------------------------- [自由詩]8月のレクイエム/umineko[2018年8月6日7時48分] おはよう? 8月6日 ?今日も元気です おはよう ?8月6日 ?ボクらはみんなおろかで? ボクらはみんな学習しない みんな幸せになりたいのに? ボクらはそれを奪おうとする おはよう ?8月6日? 今日はボクらの街に ?大勢の人がくるだろう ?意味を忘れた? 撮影クルーも だけど? この街がテレビに流れるのはいい ?君はもしかして? 思い出すかもしれない ?猛暑のニュース? そのあわいで 小学生が ?詩を読む日です ?ボクはボクの無事を? かすかに伝えたい ?君に平和がありますように? ボクに勇気を ?神様         ---------------------------- [自由詩]花の葬列/umineko[2019年1月7日1時14分] 何となく気分が乗らないとき 音楽も文字も 救世主とはならなくて いや  本当はわかってる 誰かのもとに幸せが届いてるのだ 私は それに嫉妬している 自分の小ささが  それもかなり致命的だが とりつくろって よかったねって理解者のふり 馬鹿みたいだ 失う方がマシかもしれない ちょっとそれ、どおゆうこと?って  ドラマのように詰め寄ったりして 恥ずかしいよね 失えるのはあの日の特権 私にはもう 権利もないよ 私に残されたのは 無難という抜け殻ばかりだ いい人であることはたやすい 適当に相づちを打って そうですねーって わかんなかったらグーグルに聞く 今のはやり今のきぶんお金の話ドラマの話 どこかの国の不幸の話 強烈な 目もくらむほどの たとえば 強く理不尽な愛情とかね あれほどめんどくさくて わがままなものはないだろうそれも十人十色だ だけどあの激しさは あの苦しさは もうない 残されたのは 花の抜け殻 感謝しかない ありがとう ---------------------------- [自由詩]寒い国/umineko[2019年1月7日23時10分] 寒い国が好きです あたためる 言葉もない寒い国 寄せ合うことは許されている しかたない しかたないって 港に浮かんだ 帆船(ほぶね)の群れが ぎい、ぎいって 音 立ててる 互いの固さを 確かめながら 俺の方こそ しあわせなのさ、 と ---------------------------- [自由詩]絆というものを私は/umineko[2019年2月5日0時16分] 絆っていうことばがあって 糸へんに はんぶん 半、はもともと 牛の意味で こちらと、むこう 分けられた牛 それをつなぐ綱ということ 絆 それは縛る道具だ だからこんなにめんどくさい 縛られたくないくせに つながっていたい 人はいつでも 臆病だから 群れをなし その結果 群れの中で競い合う 人は人が大好きです 競い合うだけ なのにね 誰もいない丘の上に コスモスが咲く それは 花ゆえできること 私には無理 牛を繋ぐ綱のように 誰かが私をおびやかす 私はいつまで私であるのか わからなくなってくる 誰もいない丘を越えて 私はゆくだろう 喧噪と あきらめと 欺瞞に満ちた人の国 その群れの中 絆に縛られ あるいは求め いつまで 私なんだろう あるいは 大きな牛の群れ いつまで けものなんだろう         ---------------------------- [自由詩]空を青でいっぱいに染めて /umineko[2019年2月9日23時25分] 孤独って やだなあ 最近の君の口癖 孤独ってさ 結局 誰も信じられないってこと ちょっとさ いろいろあって 結局さ 中二病のガキどもと 全然変わってないんだよね いい歳をしたオトナがさ ねたみ?やっかみ? 知らないところで 悪口言うの やめてくんない? マジ勘弁だよそんなの 内容もチャラいし 言いたい奴らは言えばいいけど でも 本当に嫌なのは 疑ってしまうこと あのひとも、 あのひとも、 敵なんじゃないかって 私の中に鬼がいる それに 気づいてしまうこと ねえ 私 大丈夫かな ちょっと 自信ないんだよね 誰かを無意識に 追い込んでいるのかな 私の自由や 誰かの言い訳が 人が怖いから SNSも閉じている だけど 私は知ってしまった 私を救うのも また人なんだ それが それが君ならいいのになって 照れくさいけど私は言いたい 私は君を だから たぶん     ---------------------------- [自由詩]春の待ちぼうけ/umineko[2019年2月19日2時13分] 誕生日おめでとう 私はだんだん私ではない何かになっていく その姿をあなたに見ていて欲しかった 止めて欲しいとか 哀れんで欲しいとか そんなんじゃない 私は 私が変容するさまを あなたに見ていて欲しかったんです それだけ あなたもきっと変わっていくから 私からもう目を背けてるよね だけど 私は確信している うぬぼれてもいる こんなにも 尊敬してやまないあなたの才能を 私はちゃんと見抜いているから その感謝があるからまだ少しだけ こちらの世界にいられるんだよ おめでとう 生まれ変わったら もう少し近くで過ごせたらいいな 公園のベンチで たわいない春を待ちませんか たとえあなたが一匹の猫で たとえ私が一羽の風でも         ---------------------------- [自由詩]世界と雨/umineko[2019年3月3日8時12分] おはよう 世界がひどすぎて 私は眠るしかないよ あんなに頑張ってたあの人が 血液の病気になりました 私ならどうしただろう 目標 生きること 競泳プールも ポイントカードも みんなみんな ゴールがあるのに 生きることにだけ それがない 小さな 長い石段の踊り場のような そんな場所が あるだけ 自分のためにだけ 時間を使えばいいって ほりえもんなら言うかもね 私は 生きているのか死んでいるのかわからないような毎日を おくるのは嫌だなあって思ってた でも ちょっと違うかも 百万粒の雨粒になって 空を浮遊する気分だ おもては雨が降っている 重力と時間はよく似ている おはよう 私は閉じた窓の隙間の 向こう側を思うのが好きだ 路面電車の発車の音が 空に響いて雨を待つ おはよう 間に合わない たくさんの後悔が 雨に紛れて空を撃つ         ---------------------------- [自由詩]エンドロール/umineko[2019年3月8日4時43分] 最期は自分らしく 過ごしたいんです、だから テレビの向こうで 透明な声 自分の最期くらい 自分で決めたいと 彼女の声は 静かで揺るぎない そうかな 私は食事の手を止めて 私の最期 私の最期 私は たぶん振り向かないよ 最期って 明日くるかもしれないし だから 逢いたい人に逢い 行きたい場所に行き たぶんもう 時間がないから あなたに声を届けなきゃ それだけ それだけできれば あとはもうだいたいでいい 痛かったら怒るけど 死ねば終わりだ あなたのこと 思い出して にまにましながら私は逝こう 世界よ ありがとう 楽しませてくれて ありがとう 長い長い映画を見るのと たぶんそんなに違わない エンドロール 大勢の人 楽しかったよ 廻れ 廻れ ---------------------------- [自由詩]インパラ・ロード/umineko[2019年5月1日15時58分] おはよう みどりの季節が とても好きです 新しい顔 懐かしい顔 笑顔と同じで 世界は花であふれている だけど 私はくるしい 失ってしまった笑顔を 私は知っている つい昨日まではそこにあったものが そこには ないんだ そんな中で 私は生きている 生まれ変わりたいとさえ思う だけど 虫になっても 花になっても きっと私はさみしいだろう インパラになって 草原を駈けたところで 俊敏な黒ヒョウに 喉笛を裂かれ息絶えるのが せいぜい 新しい元号になって それおもしろいですかってずっと思ってる 嫌いじゃない いいことばだ だけど大事なことはそこじゃない 今日も誰かが泣き 誰かがそれに付け込む 私は インパラになって 群れを離れ あの小高い丘の上に ひとりで立とう 沈みゆく夕陽を見ながら ああ 私はひとりなんだって 360度 誰も助けに来やしない あとはもう 走るだけだ 力の限り 全速力で 草をへし折り 水辺を蹴散らし 走れ 走れ 走れ ---------------------------- [自由詩]私の好きな世界/umineko[2019年8月19日6時11分] 私の好きな世界が 蹂躙されている 私の職場の何人かが 私の元を離れた 白い四駆が 目の前に止まったら 私は 窓を開けるだろうか それとも 私のために 誰かが 奔走してくれる世界 犬 でもいいけれど 犬 は ちょっと違うよ 私の好きな世界が だんだん変わっていく たぶん疑ってるからだ そのおトクな話には 何か 裏があるんだろう、って ポイント還元 大感謝祭 浮き草みたいに 流されていく 私の好きな世界 100% 私の味方が せめて 3人いる世界     ---------------------------- [自由詩]コイン/umineko[2019年12月8日6時36分] 引き出しの奥から 財布が出てきた じゃらりと小銭が はいっている 一円玉 五円玉が懐かしい Payの時代に 価値はうつろう 努力は価値を生まない コイン以外の 生きる道は閉ざされる 私はまだ ことば 書き続けるだろう 書いて 書いて 書いて 書いて 伝わらない コインみたいに 愛することにも刻印が あったらいいのに 書いて 書いて 書いて 書いて あなたは遠くへ行ってしまう あなたは私を疑っている 寒い国だ きっとあなたはそういう人だ あなたの 裁縫箱の中 コイン 確かな重みだけ 手のひらの中 消えない             ---------------------------- [自由詩]物理学の定理/umineko[2020年2月9日10時47分] 広島にいる私の水面と 室蘭にいるあなたの水面が 水平 だとするなら 大型客船の中のあなたと 日曜日のカフェの私も きっと 同じ高さだとと思う それはずっと連続していて だけどどこかで安心してる 物理学は残酷だ 移動するには障壁がある 心には 距離がないんだよって 思おうとした私がいて 信じようとした私がいて でも 物理学は正直だ 距離に比例して 気持ちは まるで言葉みたいに 電送する魔法が欲しい ウイルスは コーヒーカップの持ち手のあたり 今日も 誰かの帰りを待って             ---------------------------- [自由詩]もしも/umineko[2020年2月11日9時18分] もしも今が縄文時代で そろそろ 肉の備蓄が切れる頃なら 僕はこの冬空の下 ウサギ狩りに出かけるだろう 男女平等が正義というなら 男たちは子宝を守れ 女たちは木槍を握れ 生きるのが精一杯な 時代には時代のルールがある ブラック企業をせせら笑う あなたならどうするのか 能力の限界 時間の限界 肉体 社会にも でもピリオドは自分では打てない 神もしくは他人である 次の曲がり角までを 懸命に走り切ること それがマラソンをの極意であると 誰も教えてくれなかった もしも今が縄文時代で 夕暮れだからわらぶきに帰ろう 星が届くほど近くにあるけど あした ここで生きていくんだ               ---------------------------- [自由詩]さあ共犯者を探しにいこうか/umineko[2020年2月16日23時26分] にんげん ぎりぎりになったら 嘘と本当がわかんなくなるよね あのウイルスが どこまで恐ろしいのか まだどこにも 本当はないんだよね 米国のメディアが あの船の扱いを非難しているらしいけど あなたの国では インフルエンザで1万人以上死んでいる 毎年だよ 毎年 津波が来たんだ 止めようもなく 誰が悪いとかそこは問題じゃない 全力で 生き抜くことを考えようよ そして 私はここにいるって 発信するよ ルールの死んだ世界 昨日どおりに 赤信号を守ったりして バカだけど バカじゃない 世界がくっきりと ふたつに分かれていく様を 私の味方と 私の敵が 奇妙に 交錯する世界       ---------------------------- [自由詩]地球サイズのNとS/umineko[2020年2月19日2時50分] いつまで夢を見ているんだろうって もしかして まだ少し 親密な気分で、 そんなわけないんだけど それを夢見る自由も まだ残されているわけで 真実はいつでも 後ろ手に遠ざかる 私はたぶん 追いかけたりしない 地軸と平行に 揺れる方位針みたいに 私がゆらゆらできるのは あなたの正しさに 甘えていたから 地球サイズで 私を正して そして今度は間違えないよ         ---------------------------- [自由詩]青、もしくはブルー/umineko[2020年6月10日22時01分] 母さん?? と 私が呼ぶと 文節のない文字を あなたはつぶやく 失ってしまったね と 私は 悲しいことだけど 自然なことかもしれないね あなたの あと何年かで そこに行くから なあに 20年はひとっ飛びだよ 私は隙間にしゃがんだままで 夏空は 心拍数の数字のように にくらしいほど綺麗な青で           ---------------------------- [自由詩]夜の動物園/umineko[2020年11月8日12時19分] 夜の動物園に行く 夕暮れの猿山 フラミンゴの池 みんなみんな 楽しそうだ 夜行性の動物たちは どこか 不思議に我がもの顔で 自分たちの世界が 始まりくる予感 それにひきかえ ヒトはどうだ マスクを強いられ 距離をとって いったい どちらがとらわれの身か ほら カモシカの親子がそうだ 不器用な前足で おろおろ子供の背を寄せて 背丈も近い子供の方は 肩口にほほ ふんわり乗せて それだけでいいんですよ マスクをした お客さんたち 大事なことって 簡単なこと 星を蹴って 夜を見上げて 私はここだ 私はここで           ---------------------------- [自由詩]茶碗蒸しの極意/umineko[2020年11月8日17時28分] 伝えれば 伝えるほど 孤独になっていくんだね 吐き出して 楽になるのは 臆病者なんだよね その軽さに相乗りして ふざける奴もいるだろう 注意するのは身の危険だ 賢者は黙る やり過ごすため あなたの正しさと 私の正しさが 争っている ダンスのように オブジェのように美しい 女心と秋の空 先人はうまいこと言うよね だし汁と卵 3対1で あとはやさしく火を入れて 違う何かに変わっていく 銀杏ひとつ 入れましょう それが毒だと わかっていても         ---------------------------- [自由詩]最後のカルシウム/umineko[2020年11月25日13時51分] 今。 今火葬場なんですよね。母が亡くなりました。 コロナ禍での入院なので、あんまり会ってない。6月のあの夜、急いで実家に帰った時から、ぼんやりわかってた。緊急入院。カテーテル治療。でも、あとは小さな先延ばしだ。リハビリもやってたけどね。左中大脳動脈の完全閉塞では、なおさら。 絶対性の味方が、いなくなったなあって、ぼんやり思う。精神が良く似てたから。お気楽で、回り道で、頑張るのが好き。法名なんて、釈 精進ですよ。旧知のお寺さんから、これしか思い浮かびませんって、言われてんの。まあお浄土でも、みんなを集めて書を広めて、赤ピーマン育ててください。頑張って頑張って頑張って頑張って、その先に何があるのか、代わりに見届ける。             ---------------------------- [自由詩]冬の日/umineko[2021年1月10日16時08分] コロナはただの風邪だって あなたは言うけれど たぶんそれは間違っている 恋はただの勘違いって あなたは言うけれど それもたぶん間違っている 恋 にわかには覚め難い 肺いっぱいに広がる奇病 定義も 出自も あやふやなまま でも 確かにここにあるものを その熱病は伝染するから 逢わないでいてください それとも すべてをゼロにして 暖めあえたら どんなにいいか      ---------------------------- [自由詩]ダックワーズ/umineko[2021年7月24日0時14分] 圧倒的な魅力さえあれば すべて うまくいくのにね たとえば食事 たとえば逢瀬 圧倒的な魅力さえあれば 願いはくずれるためにある ダックワーズを ほろほろ食(は)んで 私は 泣いていたり する            ---------------------------- [自由詩]水平線/umineko[2021年8月2日19時34分] 画面には 今日も嘘があふれていて 私は何度でも 立ち止まってしまう あなたの清らかさ 身勝手な才能を 今日もここから見ています 探さないで    甘い言葉に群がる鳥たち それは子供の特権    あなたには才能がある 私より 少しだけ それが口惜(くや)しい    あなたの手のひらを 柔らかく噛んで 傷を残せばよかった 思い出せ 思い出せ    私は孤独だ だけどあなたほどじゃない    あなたは孤独だ 水平線にひとり立つ         ---------------------------- [自由詩]愛のかたち/umineko[2021年8月17日22時12分] 父親のことを書こうかと思う 優しい男だ 優しさを通り越して 気弱であった かなり痩せ型で ひょろひょろしていた まあこうして 兄も私も それなりの社会人に仕立てたのだから 立派な大人、のはずなんだけど 重みがなかった 絵本に出てくる 空腹のロバ そのもの   私が大学生の時 突然出家した 仕事を辞め  大学に通い 僧侶の資格をとり   法衣を着て 家々をめぐる 法話を説く彼は 楽しそうだった   愛にあふれていたんだ 今なら 私にはわかる   気弱で 重みがない でもやたらに愛があった 破れた障子 あぜ道のもぐら 分け隔てなく 愛していたのだ   私は 愛の扱い方が どうも苦手で 選択と集中 でしたっけ たぶん照れくさかったのだ 星降るほどの 愛を浴びて   母は時々 ああ、お父さんがいたらなあ、と 他界して10年もたつ父を お茶の合間に懐かしがる そんな母も 去年逝った   愛のかたちは 星の数ほど   わからないまま 大人になりました   だけど まあ それでいいよね   父さんならわかるはず たぶん ね       ---------------------------- [自由詩]朝焼け/umineko[2021年12月6日15時12分] 朝焼け あなたの赤だ あなたの時間が 空を染める 配達の車 足早のジャケット 私? 私は 愛されない人たちだけが 空を見上げる 空は嘘をつかない 流れるだけだから あなたの安寧と 小さな冒険を 私は 心から願う 朝焼け 見上げる先から消えていく 目を覚ませ ためらうな 私はここだ あなたのいない   ---------------------------- (ファイルの終わり)