PULL. 2007年2月9日18時41分から2007年3月29日12時30分まで ---------------------------- [自由詩]「 蒲鉾と犬と、月。そしてあたし。 」/PULL.[2007年2月9日18時41分] 蒲鉾がなくなったので、 あたしは買いに行く。 近くのスーパーは深夜まで開いている。 あそこの練り物はコンビニのよりも美味しい。 そう彼が言っていた。 自転車に乗る気分でもないので、 歩いて行く。 ぼさぼさの髪のまま、 ぶかぶかのスニーカーを履き、 ぶかぶかのコートを着て、 外に出る。 数週間ぶりの外は、 とっぷりと暮れていて、 あの夜よりも少し明るかった。 見上げた夜空に、 つるんとした、 まあるい月が出ていた。 なんだか白身の練り物みたいで、 とても美味しそうだった。 近道を行く。 スーパーへの近道は、 向かいのウロコ公園を通る。 買い物の帰りにいつも、 彼と通った公園だ。 あの夜以来の公園は、 しんとしていた。 すごくしんとしていた。 あまりにもしんとしているので、 少し恐くなった。 少し恐くなったので、 啼いてみた。 「わん。」 そう啼くと、 「わん。」 と啼き返す声があった。 誰だろう?。 もう一度啼いてみる。 「わん。」 するとまた、 啼き声がした。 下の方からした。 「わん。」 犬だった。 「おまえひとり。」 声を掛けると、 「わん。」 返事が返ってきた。 犬は素直だ。 犬は雑種で、 青みがかった灰色の毛をしていた。 お腹が空いているのか、 あたしに餌をねだってきた。 青みがかった灰色の尻尾を振り振り、 あたしの周りをぐるぐる回る。 「あたしなんにもないよ。」 言っても聞かず、 ぐるぐる回り続ける。 犬は素直でも犬だ。 よく見ると、 意外に、 いい毛並みをしている。 月明かりに照らされ、 その毛並みが、 さらに青みがかって見えた。 「おまえすてられたの。」 犬は答えず、 黙ってぐるぐる回る。 「おまえもすてられたの。」 犬は回るのを止めて、 あたしを見上げた。 物欲しそうな目であたしを見上げた。 泣きたく、 なった。 捨てられた犬に見上げられて、 捨てられた犬に物欲しそうに見上げられて、 あたしはまた、 泣きたくなった。 でももう泣けなかった。 だからあたしは見上げた。 それがこぼれ落ちないように、 あの夜よりも明るい夜空を、 あたしは見上げた。 夜空には、 つるんとした、 まあるい月が出ていた。 まあるい月は、 やっぱり白身の練り物みたいで、 とっても美味しそうだった。 なんだか憎らしかった。 チョップした。 月はあっさり割れて、 落ちてきた。 半分落ちてきた。 あたしは落ちてきた半分の月を拾い、 もう一度チョップして、 半分の月をさらに半分に分けた。 それを犬にやった。 犬はきょとんとした顔で、 またあたしを見上げた。 「食べな。」 「わん。」 ひとつ啼き、 犬は半分の半分の月を食べた。 美味しそうに、 尻尾を振って食べた。 尻尾はさっきもより青みがかり、 振ると、 きらきらと光った。 まるで流れ星のようだった。 半分の月がうらめしそうに見ていた。 公園からの帰り際、 犬に来るかと聞いた。 犬は答えず、 あたしをじっと見つめ、 ぷいと、 公園の奥に消えていった。 無言のままだった。 しばらくして、 青みがかった遠吠えがした。 それは開放された、 野性の叫びにも聞こえた。 犬は戻ったのだ。 あたしは、 耳を澄まし、 それを聞いた。 躯の中がざわざわした。 血が熱かった。 彼のことを考えても、 泣きたくなんてならなかった。 「わん。」 もう一度だけそう啼いて、 ウロコ公園を後にした。 そして、 部屋に戻り、 おでんを作った。 あたしひとり分のおでんを作った。 その夜のおでんの蒲鉾は、 つるりんのもちもちだった。            了。 ---------------------------- [短歌]「 春待草。 」/PULL.[2007年2月10日7時27分] 積もる話もあろうから雪が止むまで話そうか暖まろうか。 「きみからふって、  ぼくからつもった。」 そんな雪の日だったね。 別れの日。 躊躇いがちに訊くのは未練からじゃない。 きっと、 そうじゃない。 「…幸せ。」 きみの探した春は結晶になって、 そこにある。 「指輪…似合ってる。」 ぼくが贈った結晶は春待たず熔けてしまった雪の結晶。 想い出話は雪化粧。 枯れ木の下はいつ芽吹く、 春待草よ。            了。 ---------------------------- [自由詩]「 鬼妙な果実。 」/PULL.[2007年2月11日8時46分] わたしは毎朝目覚めると、 あなたの前で尿をする。 下半身を突き出し、 あなたがそうしていたように、 尿をする。 わたしの尿は、 黄色かったり透明であったりする。 わたしは朝の尿のために、 栄養のあるものを食べ、 飲んでいる。 あなたに少しでも精が付くように、 そればかり考え、 食べている。 わたしの食べるものは時に、 あなたとおなじことばを話す。 おなじことばを話すので、 わたしは時々あなたと間違えて、 それと床をともにする。 それはただ乱暴に入ってくるもので、 わたしはいつも愉しめない。 おなじことばを話していても、 やはりそれはあなたと違う。 わたしは愉しめない。 あなたと違う精は、 ひどく苦い。 一連のことが終わると、 わたしはそれの首を絞める。 大抵はあっさり死んでゆくが、 時折しぶとい者もいる。 しぶとい者は念入りに締めて殺す。 わたしは台所から鉈を取り出し、 大まかにそれを解体した後、 少しずつ食べてゆく。 まずは腐りやすい内蔵、 次に脳。 次々と食べてゆく。 目を見開いて死んだ者の眼球は、 少々硬い。 恐怖の所為かもしれない。 胸骨に取り掛かる頃には、 もう夜は明け、 空が白んでいる。 わたしは食事を中断し、 あなたの前にゆく。 服を脱ぎ、 下半身を突き出して、 あなたがそうしていたように、 あなたに向かって尿をする。 食後の尿は黄色く濁っていて、 わたしはそれに満足する。 尿が終わると、 わたしは大きく足を広げ、 あなたの幹に跨る。 愉しめなかった夜明けには、 かならず跨る。 わたしは擦り付け、 あなたの幹を揺らす。 やがてわたしは溢れ出し、 あなたを濡らす。 あなたは溺れるように、 それを吸い上げる。 あなたが木に消えてから、 いくつもの季節が過ぎました。 いつか実るあなたの果実は、 きっとわたしの尿と、 あなたの肉の味がするでしょう。            了。 ---------------------------- [短歌]「 無音弦。 」/PULL.[2007年2月12日17時35分] 地球の重みも痛みも我に極まれり重力うなぎ喰らう夜。 蛍光灯冷蔵庫テレビハードディスク高周波四重奏団。 冷蔵庫に入れた頭痛を被り耳鳴りやり過ごす午後の調べ。 眼を閉じるように耳を閉じていた誰にも聴こえないきみに怯えて。            了。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]SATP.Vol.9,「 簡単に、おやすみなさい。 」/PULL.[2007年2月13日11時57分] 簡単に。 作品がそれを欲するのなら、 それが作者にとって、 どんなに嫌なことでも辛いことでも、 なんでも書く、 書いてしまう。 それで消耗して苦悩して、 耐えきれなくて、 書きたく書けなくなったなら、 それはおれが、 その程度ものだということ。 ほんとうに耐えきれなくなったら、 逃げればいいし休めばいい。 文藝や音楽、 げいじゅつなんて、 恋人や家族友人知人に比べたら、 全く価値のないもの。 だから、 しんどいときは、 しんどい季節。 休めばいい。 いつか次の季節が来る。 書きたいものたちを、 生かす術も殺す術も。 みんなみんな平凡なのほほんな、 日常の中にある。 例えばそれは、 美味しい肉じゃがを作るときの、 味醂の加減であったり。 キーボードを打つときの、 小指の密かな反乱であったり。 「きみの恋人がキスをするときになぜ目をつぶらないのか?。」 その理由と原因であったりする。 気付いて書けることがあれば、 気付いて書けないこともある。 それは作者を築いてゆく上で、 避けて通れない道ではないか。 こんなことはわざわざ書かなくても、 誰しもがもうすでに感じていること。 それを承知の上で、 ここに書いてみました。            了。 Sex And The Poetry.Vol.9, 「 簡単に、おやすみなさい。 」 ---------------------------- [自由詩]「 きみへの太陽。 」/PULL.[2007年2月13日12時50分] 「太陽を見たことがない。」 きみはそう言って、 ぼくは太陽の話をした。 きみはそれだけじゃ満足しなくって、 だからぼくは旅をして、 色んな太陽を見て回ってる。 色んな太陽たちは、 どれもひとりひとり色が違ってて、 とっても鮮やかな赤たちなんだ。 あのね。 みんなきみに会いたがってた。 そんな時、 ぼくはいつも彼らに、 こう言うんだ。 あなたの鮮やかな赤を一滴、 ぼくの血に下さい。 それはぼくの中で息づいて、 いつか彼女に届くでしょう。            了。 ---------------------------- [短歌]「 べいべ。 」/PULL.[2007年2月14日15時51分] 付き合ってもないのに、 キスして。 おかしいね。 やきもち妬いてる。 「キスして、」 あれって言われてあれでわかるけどさそれってあれじゃない恋人とか…。 酔ったふりして告白するのは卑怯だよもう一度言いなさい。 大笑いして、 鼻からうどんが出てきても、 この愛は変わらないさべいべ。            了。 ---------------------------- [自由詩]「 前想眠。 」/PULL.[2007年2月14日15時54分] この冬はあれだってね。 「だんとう。」 でもこの間の冬も、 そうだった気もするよね。 思い違いかな?。 勘違いかな?。 けどさ、 「だんとう。」 って、 書くとさ。 「暖冬。」 より、 「弾頭。」 って、 感じゃない?。 近頃はさ、 なにかと物騒だもんね。 色々と騒いでて。 でもさ、 この間の冬も、 「弾頭弾頭。」 って、 騒いでた気もする。 暖冬だったからかな?。 まあいいや。 話は変わるけど、 あたたかいのも困りものだよね。 お昼にね。 まあるくなってると、 もう眠たくなってくる。 今日はあいにくの雨。 だけど、 屋根裏部屋はお昼寝日和。 だからね、 天窓から届く、 やわらかい伝言。 屋根を叩く雨音たち、 囁くように、 歌ってる。 ざあざあ。 ざあざああ。 春はまだ、 すこし遠いけど、 ぽかぽかあたたかいから、 お昼寝します。 おやすみなさい。            了。 ---------------------------- [短歌]「 、っくすと愛と、でぃすこみにュけーしょん。 」/PULL.[2007年2月15日15時24分] また三分持たなかったまた三分も持たなかった…ぼくそうろう。 もう!三分持たなくてもいいからせめて前戯に三十分かけてよ。 吹かせてやるぜ今夜こそゴールドフィンガーの仲間入り!おれってすげえ!。 もういいやおしっこしとこ……ってなんでこんな馬鹿としてんだろ…アタシ。 右胸の方が大きいよなそうだよなぁああああ!!!!なんか萌える。 げっ!こいつ左曲がりおまけにほーけーだし見かけ倒しだったなぁ。 したはいいがこの唇どうやってこじ開けて舌をねじ込むんだョ。 うわっ舌入れてきたよそれも初キスでこりゃーこいつ童貞だな。 いったいどっからあんなウワサが流れたんだよ!おれはまだド・ウ・テ…ィ。 げっと!これでアタシもコレクションあれっ意外とぎこちないけど…ぁああ。 おっぱいだよな!やっぱいつもこれに負けちゃうんだよなちんちんくん。 どうせおっぱいだけなんでしょほれほれ出してみなさいよちんちんくん。 これだ!まな板の上のレーズンのようなこれがおれはたまんないんだよぅ。 この胸がいいってもしかしてこいつロリコン?やだやだまたハズレだよぉ。 カラダだけじゃないって今夜こそきみに言うおれもう本気なんだ。 カラダだけって楽よね束縛とかないし着替えて早くかえろーっと。 ここで拒んでくれ今夜はアレを買っておくのを忘れたちくしょう!。 ここで我慢してくれるってことはアタシのこと愛してるってこと?。 教えてくれ叩けと言われて叩いていいものなのかお尻ちゃんよ。 倦怠期よねなんか刺激が欲しいのよねもう飽きちゃったこの♂。            了。 ---------------------------- [短歌]「 おやすみさん歌。 」/PULL.[2007年2月16日16時52分] 黙っているだけで、 聴こえてくるよ。 こんにちはこんにちは。 ことばさん。 道路工事の音リズミカルどどどどどど土曜日にはしないでね。 お湯の沸く音も季節によって違う気がするぞ「ゆわわゎ。」 給湯器の音も小さくなりまして暖冬さまのお通り代。 そんなにきつくしちゃ駄目お茶碗さん泣いてるよ大切にしてって。 ぺちゃぺちゃと土間で話しているのは誰の話それは裸足の噺。 きききっ新聞すとん配達の人また変わったな前はききっ。 一段ごとに文句を言う膝くんきみは少し黙っていなさい。 あくびあくびして寝っ転がって聴こえてくる流れる音あれは、 っ。 瓦鳴り。 声はすれども姿は見えず。 裸足の春が駈けてった。            了。 ---------------------------- [短歌]「 ひとがた戯び。 」/PULL.[2007年2月17日20時02分] 「裏山に捨ててあった人型あれ誰のかな?誰か人だったのかな?。」 「そう言えば最近姿を見ないけど人なんて他人事だよね。」 「博物館で見た人間の標本おぞましくて吐き気がしたぜ。」 「博物館?。」 「この間の課外授業で行った人間の歴史展。」 「あれだよ人間の滅亡と人間狩り。」 「どんなだったの?。」 「うっげーっ。」 「うげー?。」 「すげえグロくってさこいつマジで吐ちまいやんの。」 「きみだって吐いたじゃないか。」 「バカヤロあれは…お前の付き合いってやつだよ。」 「人のせいにするなよ。」 「本当に仲がいいわねぇあんたたち。」 「いわゆるおれたち腐れ縁ってやつ?。」 「腐ってるのはこいつだけだよ。」 「あーそんなこというやつはこうしてやる。」 「やっわきゃ!やめろよくすぐったいぃ。」 「くぬぅくぬぅーういやつめ。」 「あははもっとやれぇー。」 「人間狩りって…楽しいのかな?。」 「それで滅んだんだから多分そうだよ。」 「それ殺し合いじゃんホント下等生物だったんだな人間って。」 「でもさママが言ってたあたしたちも昔はあんな姿だったって。」 「ホントかな?。」 「本当かも?。」 「それ捏造だよネットでそう書いてあった。」 「もし…。」 「本当だったらどうする?殺し合うのかな?人間みたいに。」 「そしたら誰から殺す?。」 「誰から殺されるの?。」 「おれから。」 「あたしから。」 「殺されるかな?。」 「殺せるかな?。」 「殺されるよりは、」 「殺す方がいいのかな?。」 「あたしを殺したら死んでくれる?。」 「一緒に?。」 「うん。」 「お…おれ死ぬの恐いよ。」 「あたしは殺せるわよ殺してあたしも死ぬのシンジュウしちゃうの。」 「ジンジュウ?。」 「そうジンジュウ人間は神の獣に自分を献げたんだって。」 「献げて、」 「どうなるの。」 「究極の愛を誓うんですって獣になって。」 「獣になるの?。」 「獣になるのよ。」 「獣って…。」 「きっとすてきよシンジュウ。」 「それって殺し合いとどこが違うんだろ?シンジュウだって殺しだよ。」 「バーカそれが解んないから人間は下等生物で滅んだんだよ。」 「みんなでシンジュウして滅んじゃうぐらい人間は愛し合っていたのよ。」 「獣の愛なんていらないよ。」 「そうだよおれたち人間じゃないし…。」 「ひとがた…。」 「あれに入ると人になっちゃうのかな?。」 「なってみたい?。」 「なってみる?。」 「どうする。」 「どうしたいの。」 「だけどさ。」 「だけどなによ。」 「どうなっちゃうんだろう。」 「どうなっちゃってもあたしはあたしよ獣のあたしは嫌い?愛せない?。」 「おれたちだって獣になるんだぜ人間に。」 「そうだよそれでも…ぼく。」 「愛してあげる獣みたいにふたり愛してあげる人間だから。」 「人間だから?。」 「そう人間だから。」 「人間だから愛してくれるのか?。」 「ばか…ふたりが好きだから。」 「だから?。」 「だからどんな姿になってもあたしは、」 「愛し続けてくれるのか。」 「そうよ。」 「変わらない?」 「変わらないわ。」 「愛してる。」 「あたしもよ。」 「あの人型…。」 「あそこに入ればおれたちは、」 「人間に。」 「なる。」 「どうする?誰からいく。」 「あたしでもいいわよ。」 「本当にいいんだね。」 「いいわ。」 「ど…どうなるの。」 「おれにも解んねぇよ。」 「ひとつだけ…約束して。」 「なに?。」 「なんだよ。」 あたしがおぞましい…。 人間の獣になっても愛して、 約束よ。            了。 ---------------------------- [短歌]「 雨後のふたり。 」/PULL.[2007年2月18日16時04分] ひとつのポケットにふたつの手を入れあたたまったふたり雨の日。 雨の日にはくりくりになる。 きみの髪くりくりするのが好きだった。 怒られるのが好きなんじゃないよ。 きみを怒らせるのが好きなんだ。 こんな雨の日に傘はいらない。 ぼくだっていつ泣き出すかわからない。 空から涙がこぼれ落ちて雨に変わる前に泣きやんでしまえ。 水溜まりの、 涙の数を数えて。 そしてその数だけキスをして。            了。 ---------------------------- [自由詩]「 おれ。 」/PULL.[2007年3月6日16時57分] 教室に戻ると、 机がなくなっていた。 みんなぼくに背中を向けて、 くすくすと笑っている。 すごく笑っている。 いつもの光景。 誰かが振り向いた。 なにか言った。 ぼくは、 そいつを殴りつけた。 殴り続けた。 なにか言っていた。 なにも聞こえなかった。 躯が熱い。 吼えていた。 気が付くと手が痛くなっていた。 鼻から血を流したそいつが、 「もうやめてくれ。」 そう言っていた。 泣いていた。 構わず殴った。 殴り続けた。 取り囲まれ、 後ろから羽交い締めにされた。 腹に膝蹴りを喰らう。 血の味がした。 みんなは笑っていた。 楽しそうだった。 楽しくなった。 ぼくは笑っていた。 後ろの奴に、 後頭部で頭突きを喰らわす。 ひるんだ隙に、 そいつも殴った。 前歯が拳に食い込む。 肉が抉れた。 痛くなかった。 誰でもいい。 目の前にいる奴に拳をぶち込んだ。 もう誰も笑っていなかった。 おれだけが笑っていた。 その午後、 ぼくはおれになった。            了。 ---------------------------- [自由詩]「 ケタ。 」/PULL.[2007年3月8日8時06分] あの夜、 ケタの顎を蹴り砕いたこと、 今でも後悔していない。 いつも間違いばかりしていたけど、 あれだけは後悔していない。 ああしなければ、 ケタはまたケイサツに捕まって、 今度はネンショじゃなくて、 ホントのムショに入れられて、 そこでもっと、 わるいものを覚えて帰ってくる。 きっとそうなる。 だから…。 だからおれ、 そうならないように、 ケタの顎を蹴り砕いて、 病院に入れた。 病院に見舞いに行った時、 ケタはあの夜とは別人みたいに、 澄んだ目をしてた。 退院したら車の整備工場で働くんだって、 それが小さい頃からの夢だったって、 目をキラキラさせて、 そう言ってた。 退院した後、 ケタにはホゴカンが付いた。 すごく厳しくて、 ウザいジジイだけど、 すげぇ親身なジジイなんだって、 ケタ、 最初の手紙に書いてた。 のたくったすげぇ下手な字で、 そう書いてた。 ホゴカンから紹介された整備工場で、 ケタは朝から晩まで働いた。 油まみれになって、 働いた。 こんなに夢中になったのは、 リトルリーグ以来だって、 次の手紙に書いてた。 相変わらず、 すげぇ下手な字だったけど、 もうのたくってなかった。 仕事を覚えて、 今の生活に慣れたら、 夜間のガッコウに通うんだって、 もう一度勉強し直したいって。 やっぱり、 すげぇ下手くそだけど、 でも読みやすい字で、 そう書いてあった。 それが最後の手紙だった。 車検の納車の途中、 ヤクチュウの車に追突され、 ケタは死んだ。 即死だった。 ホントならケタは、 その車に乗っていないはずだった。 その日は休みのはずだった。 だけどケタは、 少しでも早く仕事を覚えたくて、 センパイの納車に付いていったんだ。 相手のヤクチュウは、 ケタと同じ、 ネンショの出身だった。 そのネンショから出た後、 ヤクチュウはすぐに、 ショウガイでムショに栄転した。 栄転先のムショで、 ヤクチュウはわるいものを覚えた。 たっぷりわるいもの覚えさせられた。 ムショから帰ったヤクチュウの周りには、 誰も、 いなかった。 ケタとそのセンパイ。 ふたり殺したヤクチュウは、 でも怪我ひとつなくて、 ムショに戻った。 出てくる頃は、 倍の年になってる。 収骨の時、 ケタから針金が出てきた。 砕けた顎を止めてた、 針金だった。 ケタのお母さんが、 それをくれた。 「慶太をいつもいつも、  ありがとうございました。」 泣きながら、 何度もそう言って、 おれに針金をくれた。 焼けた針金は、 くすんだ色をしてる。 涙が、 止まらなかった。 あの夜もそうだった。 ケタが暴れてる。 やばいものに手を出して、 錯乱して、 ナイフを振り回してる。 あの夜、 そう連絡を受けた。 近くで飲んでたおれは、 すぐに現場に駆け付けた。 暗い路地裏で、 ケタが吼えていた。 ナイフを振り回して、 おれの知らないケタが、 吼えていた。 ケタが振り向いた。 おれに気付いた。 血走ったケタの目が、 おれを見た。 言った。 「…さん、  おれもうつらいんです。」 ケタは、 泣いていた。 ケタもおれも、 みんな泣いていた。 「ひとりじゃおれ…。  寂しいんです。   だから、  一緒に死んでください。」 ケタが、 襲いかかってきた。 血に濡れたナイフが、 ひどくきれいに見えた。 あれは誰の血だったのか。 足が、 先に動いた。 靴底から伝わる嫌な感触に、 おれは安堵した。 砕けた顎を押さえ、 のたうち回るケタは、 おれの知っているケタだった。 あの夜、 ケタの顎を蹴り砕いたこと、 今でも後悔していない。 だけど…。 だけどどうして、 今もこんなに、 夜が苦しくなるのだろうか。            了。 ---------------------------- [自由詩]「 リイ。 」/PULL.[2007年3月9日22時03分] 「ひとを殴るって、  どんな感じ。」 リイは変な女。 いつだって変な女。 いつも変なことを訊いてくる。 いつもおれにばかり訊いてくる。 「楽しい。  気持ちいい。  それとも嫌な感じ。  ねえ。  笑ってないで、  リイに教えてよ。」 夕べ、 おれの頬を叩いた時、 リイはどうだった。 楽しかった。 「すごーく、  すっきりした。」 その逆だよ。 すっきりしない。 嫌な感じが残るんだ。 ずっとね。 「じゃあどうして、  いつもケンカばかりしてるの。」 どうしてかな。 リイはどうしてだと思う。 「わかんない。  リイばかだもん。  でも、  みんな言ってるよ。  ここの一番はケイだって。」 そう、 らしいね。 「その言い方、  なんかむかつくー。  後でまた夕べみたいに、  叩いてやるんだから。」 いいよ。 リイになら、 いくらだって、 叩かれて殴られてやるよ。 ほら、 今だっていいよ。 「そのにやにや笑いが、  さらにむかつくー。  もう大好きなんだから、  リイはその笑い方。  ちくしょう!。  ホレタヨワミってやつだよ。  これは。」 惚れてたの。 「ホレてるよ。  ばかケイばか。」 奇遇だね、 おれもだよ。 「ああああ。  また笑ってる。  このこのばかケイ。  ぽこぽこしてやるんだから!。」 痛い。 痛いよリイ。 「ごめん。  ホントに痛い。」 ごめん。 ホントは痛くない。 「ばかばかばかばかばかケイのかば!。」 あのさ、 リイ。 訊いてくれるかな、 いつもみたいに、 どうしたのケイって、 おれにまた訊いてくれるかな。 「どうしたの、  ケイ。  ねえこれで、  いいの…。」 リイ。 おれさ、 もう本気で…。 「もう本気で、  なに。」 もう本気でひとを殴れない。 おれ終わったよ。 終わっちゃったよ。 リイ。 「きて、」 リイは、 抱きしめてくれた。 きつくきつく、 おれを抱きしめてくれた。 「大丈夫だよ。  これからはリイが、  ケイの代わりに殴ってあげる。  ケイのこと本気で、  リイが殴ってあげる。」 手加減してね。 「ばか、  本気だよ。  いつだって、  リイは本気だよ。  ホレタヨワミってやつだよ。」 激しいね。 「激しいよ。」 リイ。 「ケイのばか、  本気で愛してる。」 リイは変な女。 いつだって変な女。 だけどリイと一緒だと、 いつだっておれ、 幸せなんだ。            了。 ---------------------------- [短歌]「 ドラえもんだってつらい。 」/PULL.[2007年3月12日8時39分] 出木杉くんが主役だったら「おはなし」にならないのび太はのび太。 おまえの悲しみはおれのものだからなんでも言ってくれ剛田武。 ヒロインは譲らない源静香は今夜もあなたに毒を盛る。 おねしょは知っているスネ夫に敷かれたレールはスネ夫にしか解らない。 ドラえもんにだって出来ないことがあるさのび太に訊いてみればいい。 押し入れの中で泣き疲れて眠るぼくドラえもんだってつらい。            了。 ---------------------------- [短歌]「 押し入れの中は宇宙。 」/PULL.[2007年3月13日5時49分] 悪い子は見つからないパパにもママにも見つからないぼくは悪い、 押し入れの中は宇宙だから漂う星たちは涙じゃない。 膝を抱えて星座になってきみはいつか発見される星の子。 流れ星はしょっぱい海の味ざあざあと波のようにあける朝。 押し入れの中は雨中だから誰も見つけないでこれはかくれんぼ。 息を潜めて殺して気付かない誰も気付かないで秘密の傷。            了。 ---------------------------- [自由詩]「 マコちゃんぺっ。 」/PULL.[2007年3月13日8時08分] マコちゃんはぺっと思いました。 でも床に唾を吐いたら、 もっと嫌な気分になりました。 床はみんなの唾でぬるぬるでした。 マコちゃんの唾はみんなの唾と混じり合い、 もごもごと蠢いていました。 踏みつけると、 唾はさらにもごもごとしました。 踏みつければ踏みつけるほど、 唾はどこまでももごもごとしました。 やがてもごもごと、 唾は泡立ちはじめました。 そして唾は立ち上がり、 人の姿になりました。 もごもごともごもごと何かを呟きながら、 唾はマコちゃんに近づきました。 一歩近づくごとに、 唾はマコちゃんの姿になりました。 唾のマコちゃんはマコちゃんに向かって、 こう言いました。 「おとうさんぼくを吐いてくれてありがとう。」 言い終えると唾のマコちゃんは、 マコちゃんがそうしたように、 ぺっとしました。 顔に引っかかる唾に、 マコちゃんは思いました。 ぺっ、            了。 ---------------------------- [自由詩]「 見世物。 」/PULL.[2007年3月14日13時29分] 穴を開けて、 愉しんでいる。 穴の向こうには、 ぼくの目を見て愉しむきみ。 相思相愛って奴だね。 セックスしよう。 淫らになろう。 誤解でも曲解でも、 好きにして。 きみは清ましたふりしてる。 けど、 みんな少しずつ変態で、 感じるところも、 違う。 剥き出しのそれを、 目に押し付けて、 それが好き、 そうされるのが好き。 堪らなくなったら搾り取って、 捨ててくれ。 そうされるのも好き。 ねじくれてるそれを引っ張って、 清く正しくまっすぐに、 きみはそれが好き。 変態だ。 とっても変態だね。 きみがどれだけ正しいか、 見せてあげればいいよ。            了。 ---------------------------- [短歌]「 実験密室。 」/PULL.[2007年3月14日14時54分] プレパラートに乗せられた午後ぼくはきみの眼球に恋をした。 水の変態点は零度と百度では人間は?実験しまショ。 試験管に氷を入れて愛撫して熔けるのあたしとどっちが速い。 舌先で染色して赤く腫れ上がったら観察時間きれい?。 膨張率は基準値をオーバーあたしのせい?もっと大きくなあれ。 失敗はセイコウのもとだからもう一回こんどはきっと性交よ。            了。 ---------------------------- [短歌]「 ろっく・ゆー。 」/PULL.[2007年3月15日6時46分] ふぁっきん。 ダイダイマイダーリン!。 ブラストビートで悲しみを突き抜けろ!。 ヴォォォーーーデス声だけどアイムアライブ失恋でも愛してるデス。 ロックユー狙いを定めておまえをシェイクしてやる!ずんずんちゃっ!。 せっくすぽえっとろっくんろーる。 スリーコードでうるさく書き鳴らそうぜ!。 ロケットぽえっと発射準備完了。 後はきみの返答詩第。 殴られるのには慣れてるよだからキーを叩いて殴ってこうしてる。 詠んでるときはいつもマスターベーション読まれてきみとファックしたい。            了。 ---------------------------- [自由詩]「 詩卵。 」/PULL.[2007年3月15日8時40分] 読まれて落ちる卵には、 きっとわたしの顔は付いていない。 だからどうぞお好きなように、 割って食べてくださいませ。 わたしの伺いしらぬ、 卵でございましょうから。            了。 ---------------------------- [自由詩]「 卵の午後。 」/PULL.[2007年3月15日11時42分] 寝っ転がってると殻に当たった。 殻の向こうでは大きな嘴が、 こつこつと、 ぼくを喚んでいる。 ごめん。 午後の昼寝には、 少し遅れてしまいそうだ。            了。 ---------------------------- [自由詩]「 詩体。 」/PULL.[2007年3月15日17時57分] いくら、 書いても、 晒してしまえば、 それで死んでしまう。 次の瞬間には、 なにも書けていない気分。 気が付けば、 また死体を漁って、 屍書き、 です。 したいように書いて、 それで憎まれてもいい。 詩が無い、 屍書きでいい。 そうしたいのなら、 殺してください。 これはわたし、 死体です。            了。 ---------------------------- [短歌]「 お魚くわえたサザエさん。 」/PULL.[2007年3月16日7時52分] タマは見ていた!。 磯野家の秘密はニャー…。 テトロドトキシン痺れてしゃべれニャイ。 あれだあの髪だ!。゚‥・ ‥。. あれがぼくの未来……‥・゚。・゚。・゚。・。 。・*:゚。・*:・゚。・*:゚。・*:・゚。・*:゚。・*:・゚・‥……。 カツオの絶望は海より深い。 不穏な視線を感じつつも、 鰹の叩きを食べる、 波平であった。 右手が愛人“マス”オさん深くは訊かずにティッシュをあげてね。 「あたい。」 そう言っていたあの頃のきみ。 こっちでは、 優等生なんだね。 「サザエでございまぁーす。」 広げた足の奥には、 サザエの開き、 ぱっくり。 波打つフネに堪らず波平は出航した。 フネは、 まだ止まらない。 ふたりの横を魚をくわえたサザエが裸体で駈けてくんがんぐ。 それを追い掛ける養子のマスオの右手には白く汚れたティッシュ。 ああ嗤ってる。 タラちゃん嗤ってる。 「だってもう嗤うしかないでしゅ。」 因みにマスオさんは養子ではありませんでも愛人は右手です。 誰か知っているか磯野家の隣人たちのその後の消息を。 伊佐坂浜伊佐坂まるで巧妙なアリバイ工作ではないか。 「ここほれわんわん。」 浜さんちのジュリーは吼えた。 数日後ミツコは…。 「今日もいい天気。」 カツオの日記にはそう記される。 磯野家の平穏。            了。 ---------------------------- [自由詩]「 流木。 」/PULL.[2007年3月16日9時56分] 裏庭で流木を見つけました。 流木なので、 どこからか流れて、 どこからかこの庭に、 流れ着いたのでしょう。 流木はぐっしょり濡れていて、 近づくと強い潮の香りがしました。 幹にはフジツボがびっしりと張り付き、 見たこともない海藻がぐるぐる絡まっています。 流木には擦れた字で、 こう彫ってありました。 「こんにちは。  お元気ですか。」 それは懐かしい、 あのひとの字でした。 あたし、 元気です。            了。 ---------------------------- [自由詩]「 ぬくりもこ。 」/PULL.[2007年3月19日17時13分] 「もこもこと旅に出るんだ!。」 そんな寝言をきみが言うので、 ぼくはすこしだけ、 もこもこになってみる。 もこもこになったぼくは、 きみの夢に潜り込み、 きみと旅に出る。 もこもこはまるまると違うから、 丸まって転がって旅はできないけれど、 もこりもこりと歩いて、 きみと旅に出る。 おおきな風が吹いたら、 もこもこ膨らんで、 風に乗って、 ふんわり。 海を渡って、 知らない土地へ。 日差しの強い日には、 もこもこ大きくなって、 日影をつくって、 ひんやり。 雨の日には、 もこもこ伸びて、 もここっと広がって、 傘に。 寒い夜には、 ぼくはぬくりもこ。 きみはぼくを抱きしめ、 ぬくぬく眠る。 おやすみ。 ぼくはもこもこ。 いつかきみの夢から抜け出して、 きみと遠い旅に出る。            了。 ---------------------------- [短歌]「 地球照。 」/PULL.[2007年3月28日9時37分] ぼくが笑っていればきみもいつか笑う。 だから今夜は、 地球照。 ひときわ明るく笑って、 翳る。 隠してる。 きみの裸月が見たい。 はだかの月は、 あばたの月。 きみはみにくい、 あばたの月の乙女。 きみはぼくのうつくしい月。 だれに見られたって、 かまわない。 ぼくの月。 きみの翳はぼくが喰べる。 あいつのひかりは届かない。 もう離さない。 頬染め色づき月は満ち、 やがて艶やか果てて醒め、 朝に消ゆ。            了。 ---------------------------- [短歌]「 ひろいもの。 」/PULL.[2007年3月28日12時25分] 拾いもののあなたのこころはひろいつもゆるしてくれるくるしい。 くるしい?もっと傷つけてあげるいつかあなたはあたしに恋をする。 する時はいつも上の空あなたどの空を見てあたしとしてるの。 嫉妬してるこんな気持ち拾うんじゃなかった…あたしあなたなんて。 あなたを抱えて捨てにゆくどうせ捨てきれず帰ってくるクセにね。 悪いクセ冷たく当たってあなたの気持ちを量るもっと傷ついて気づいて。 気づいてみればあたしばかり傷ついて傷つけて疲れちゃったよ。 疲れて眠るあなたの首を絞める殺したって捨てられない…なのに。            了。 ---------------------------- [自由詩]「 蠢く土。 」/PULL.[2007年3月29日12時30分] ひとりの頃は辛かった。 仕事を終えた夜は、 いつも罪の意識にさいなまれ、 眠れず、 飲めぬ大酒を喰らい、 やっと落ちた夢の中でも、 責められた。 ある日、 数が増えた。 全部で十四人いた。 わたしは、 いつものように穴を掘り、 いつもよりも大きく深く穴を掘り、 いつものようにそこに彼らを落とした。 上から土を掛け、 わたしは鼻歌を歌い、 いつもより多い仕事を終えた。 土はしばらく蠢いていたが、 やがて止まった。 その夜は酒も飲まず、 ただ眠った。 眠れた。 しばらくして、 また数が増えた。 もう数は数えなかった。 わたしは、 覚えたばかりの重機を使い、 穴を掘った。 大きく深く穴を掘った。 そこに彼らをひとりずつ突き落とし、 上から石灰を撒いた。 石灰に灼かれた彼らは、 激しく悶え踊り狂うので、 わたしは鼻歌を歌い、 上からさらに、 石灰を撒く。 やがて土を掛けると、 彼らは悦ぶ。 悦びのあまり涙を流し、 目を石灰に灼かれ、 彼らは踊り狂い、 よろこび、 悦ぶ。 埋めた後の土からは湯気が昇り、 蠢いている。 わたしは、 それを最期まで見届けて、 わたしの家に帰る。 玄関では娘がわたしを出迎え、 上がったばかりの小学校でのことを、 あれやこれやと話す。 学校には彼らはひとりもいない。 娘はそれを気にもしない。 やがて夕食が出来たと、 妻がわたしと娘を呼びに来る。 また給料が上がる。 そう伝えると、 妻は喜んだ。 妻のお腹は大きく膨らんでいて、 その中には、 娘の妹がいる。 「ねえ今日、  また動いたの。」 そう言って、 妻はお腹をさする。 彼女たちは知らない。 わたしの仕事を知らない。            了。 ---------------------------- (ファイルの終わり)