番田  2018年6月24日21時24分から2020年6月15日1時39分まで ---------------------------- [自由詩]6月の海を行く/番田 [2018年6月24日21時24分] 僕は半年ぶりぐらいに そして しかし テレビのサッカー中継に海を思いながら 飲み屋で 僕は でも yに会い 目を 閉じていた 前と同じ食べ物を そんな 隣で注文されていた 僕は飲み屋で 風はその時と違って 暖かかった 昔 僕は 彼と旅に出かけたけれど しかし 今 会っている意味はなんだろう この手は 今話している言葉を忘れてしまっている 若者たちが騒いでいた しかし 瞼を開いた目ではいた 言葉の数々を 彼に伝え 耳を傾けると 僕は 皆 すでに 辞めてしまった五反田の 僕は そして かつて僕が編集プロダクションにいたのはいつだっただろうと思った 角を曲がった同僚に そして 手を振った日のこと 僕と一緒に働いていた同僚と 2018年の渋谷を 歩く  五反田に忘れてきた僕自身も 雑踏の中に消えてしまっていた  僕はスマホをタッチして あれから一度 彼にメールをしたけれど  返事は 海の色以外 ググっても しかし 無かったのだった ---------------------------- [自由詩]明治通りの夏/番田 [2018年7月2日0時08分] 腕を振って僕が歩いていたのはいつだろう 角の入口で そんなことを考えていた 僕は 僕自身の中では でも 地図を見ていたけれど  いつから僕は夢の中を歩かさせられていたのだろうか 目を開くと しかし 扇風機の音の向こうに聞こえた気がしたさざなみ 僕が子供の頃に聴いていたはずのかすかな音 僕の夢の子供がはっきりと耳にしていた音 時々そんなことを考える僕が 角を曲がって 立ち止まった ユナイテッドアローズの前で この先の明治通りで立ち止まったことを思う時 瞼の裏で思っている 街が流行っていた時代のことを  どんな服を着ればいいのだろうかと いつも悩んでいた たとえそこで目を閉じていないときでも 僕が 人混みで胸を張って 生きていた頃のように  未来の僕が この暗くなった通りに 透き通って見えたんだ ---------------------------- [自由詩]夏の光/番田 [2018年7月16日23時01分] 友達のことを考えていた午後 何もすることもなく 過ぎた 夏の一日 しかし 僕は 服を買ったのだ 何か特別なものを手に入れたわけではないのだが 自分であるということはつまらないものだ やがて秋が来て何もすることもなく今年も終わることだろう しかし 今年は いつからはじまったのだろう そして 去年の終わりを 思い出すことができないでいる 昨日は一人で海に潜っていた 時々 コーラを飲んでは 僕は 海の底を行く魚を 延々と見つめていた 将来の自分が見えない 海の底で 帰りのバスの中で 揺れていたつり革 人が生きているということは あまり意味のない事だ そんなことを一人で 考えることもなく 口にしていると 昔の友達の横顔が夜空の向こうにはっきりと見えた気がした ---------------------------- [自由詩]原宿の夏/番田 [2018年7月23日0時20分] 僕は原宿のいつもの喫茶店にいた sと そこで 僕は待合わせた 真夏の蒸し風呂のような風景の中で sは そこで 僕のことを待っていた  アイスジェラートを頼んだ 僕は sと二人で 外のテーブルに座っていた そして そこに 外国人女性と座っているおじさんを見ていた  sと二人で 僕は 座っていた 手製のような味のコーヒーを ごくごく飲んでは この先誰かに出会うことはあるのだろうか そんなことを考えさせられながら 僕は 時々 人影のまばらな炎天下の通りを見つめていた 何がかかっていたのだろう 音楽は 僕は覚えてはいないけれど よく そこで見た 苦い味の コーヒーのような 彼の怒った顔だけは よく 覚えていた ---------------------------- [自由詩]夏のスプラッシュ/番田 [2018年7月30日0時14分] 僕は夏の雨の日に 僕は夏の雨の憂鬱を感じていた  そして 頭にのしかかる 重い大気に    疲れのようなものを この 頭に 椅子にもたれてスマホをのぞくとフジロックの光景 しかし 雨で 向こうは 大変らしい  それが楽しいのだという人もいる しかし雨であること自体を スマホで見ている僕には理解することができなかった 僕は来月はタイに行こうと思う 美味しい食べ物の他にも何か得るものがあるのかもしれない きっと異国の地で 来月は 国内にはない得るものがそこにはあるかもしれない しかし何も無いだろう 青い海に 白い雲と そして 怪しい女に 愉快な男の他には 白い幻想と  そして 黒い女に 安い食べ物 美しい服があるのかもしれない そんなものが極彩色の風景の中にあるのかもしれない  ---------------------------- [自由詩]昔の日記を開いて/番田 [2018年8月13日0時40分] 取り出したノートを夕暮れに見つめている 手にして 最初の行から それを見つめては  手で 時間自体を紐解いたような 光の方へと 時の言葉を読んでいる 何か そして 自分が経験した出来事を だだっ広い空に 描くのだ 過去を 空に見上げながら 部屋で思うそこから 過去ではなく 僕は 未来へと 捨ててきたもののことを思いうかべる 僕は 僕の中から もみ消したのだ 悲しさを   抱いていた希望や 苦くあきらめたことが 今は 憂鬱なものとしてポケットの中にはあったから 月の光に 僕は目を閉じている 明日も 同じ電車に乗っている僕 僕の真面目な営業マンだった頃を思い出す そして 一人ぼっちで見上げていた 青い天井を ---------------------------- [自由詩]どんな趣味を、2018/番田 [2018年8月27日0時41分] 僕はサマソニに向かう電車の中で  見つめていた そこへ行くであろう人を 海が 広がる 窓の外 そして 連なっていた化学工場 それから しばらく歩いて 着いたメッセで  僕は もう 毎年のことなので 慣れたように  チケットのバンド交換をしたのだった 最初の目的地へと そして 歩いたのだった 僕は今年もサマソニへやってきたのだ とりたてて見たい歌手が しかし そこにいたわけではないのだが そして 知るためだった 自分自身の中の居場所を しかし年々増え続ける外国人の姿には驚かされる 外国人の姿自体 昔は探しだすのにすら 苦労したほど だが 後ろに元気な若者がいるかと思えば  外国人の姿だった そこにいたのは いつも ---------------------------- [自由詩]ドンムアン空港からホステルへ/番田 [2018年9月10日0時36分] バンコクに僕が到着した夜 頭に入れておいた空港の複雑な地図の中に僕がいた しかし さまよいながら 歩いていた  そして 空港の建物の中から 僕は這い出た  ホステルへと 僕はネットで予約した紙を持ち 湿気と暑さにぼやけた頭で 大量に流れる 車やバイクの 国道の光を見つめながら そして 歩きながら 車やバイクとともに 僕も流れた そして 立っていた老人に ホステルまでの道をたずねた 日本と同じには どこか見えない そんな不思議な風景の おぼろげな光と影を捉える 僕の目の感覚 信号機のない 長い道 野良犬には注意しなければならないのだが しかし この通りの信号は 運転手に合図をすることだけだ  屋台の光は 薄汚れた緑色 いつものように人が働いている 地元の人が食べに きっと そこに来るからだ ---------------------------- [自由詩]船にバスから乗り換えて/番田 [2018年9月18日0時40分] 島が点々と見える船の上で思い出していた  早朝の高架橋の上から見下ろした 僕が見ていた街の静けさ 空港の脇を横切る道を    いくつもの そこを通る 通勤バイクを 昨日までは夜だった道を行く いくつものバイクの背中が 後ろから追い越していく  僕は目指した バスに乗り換えて 次の目的地を 光の通りには何もない 心の中は空っぽで ヤシの木だらけの風景の中を通り過ぎた チェックインカウンターで手続きを済ませた 僕は 観光客がいるということを感じさせられた 僕は そして スマホを売店の売り子のようにいじっていたけれど 儲けはあるのだろうかと考えていた   眺めた 港に向かう島を 駐車場の柵から 僕は売り子の姿を思い出さされながら とても青い海に 心の中にある道を歩いていた  ---------------------------- [自由詩]詩とタイと/番田 [2018年10月1日1時09分] 僕が今書いた詩と   かつて書かれた 詩であるものとしての作品の    その違いが一体どこにあるのかについてを 時として 僕は考えている 僕のかつて無邪気だった頃の 好きだった場所が 僕にはある  そこでしていたのだ 好きなことだけに限っては   たとえ 会社が倒産した その日であっても   僕は思い出の語られた昔の日記を読み返していた そして 大雨の降る 窓の外を見つめていた 考えていた この先のことを 僕は 逃げるように  あの頃の若かった頃の自分を一人で思い出している   バンコクに僕が行ってきたのは この間のこと 景色それ自体としてのアジアを欧米人たちの中で見つめていた 僕は そして 尊さと その無の感覚の中で 自分が 僕は日本人であるという認識を深めていた   ---------------------------- [自由詩]未来の選択肢/番田 [2018年10月9日0時33分] けだるさの中で空港についた日だった 僕には連れも出迎えもなく 一人 何も照明のあてられてはいない 異国の暗がりの道を歩いていた  僕には 守るべき何かが そして 今はあったはずだったのだけれど 僕は 今は東南アジアの片隅を歩いていた しかし 昔は 一人で歩いてはいなかった道を 捨てていくものと それから 僕が これから得ようとするものの  選択をする時間はのこされてはいない そして 明日は 便がもう出てしまうから  それとも最初からそれは決まっていたのか 飛ぶ時に 荷物を持つことなどできなかった 得ることもできないものをのせて そして 僕は翌朝南部へ向かう便に乗った のせるべきものを残して ---------------------------- [自由詩]ドンムアン空港からの道/番田 [2018年10月14日23時39分] しかし バンコクの空港から 歩いた風景 僕は バンコクの道の続く その外に押し出された  アスファルトの整備のされていない通りを そして僕は 熱気の渦巻く通りを 歩いたのだった 空の暗さの下を歩いたのだ 道は黄色い照明の  そのどこまでも連ねられた車のライトの白さだ 僕は 高架下で見た そして緑色の屋台のそばだ 僕は腹を減らしていたが 暗闇の中 その通りを歩き続けたのだ ホステルのある場所を そして 探したのだ 確かなのは道を教えてくれた老人の言葉だけだった あったのだった 言う通り その 老人の 看板は 目印を右に曲がったところに そこを右に曲がって 管理人に暖かく迎えられた僕は バンコクの白いマットレスの上に横になったのだった  ---------------------------- [自由詩]タイの夜のどこかで/番田 [2018年10月22日0時09分] 僕はタイのドミトリーにいたのだった 蒸し暑い階段を登る時に思う 僕は 今 タイだ 事前に予約しておいたベッドに案内された 白いシーツに横たわると そこに 四角い窓 僕はそして風の入る窓の外を見つめていたのだ どこかリラックスした思いで しかし 窓の中に そして 思いの中に過ぎていく時間を感じさせられた 東京とは少し違う顔をした僕だった 僕はそれから 屋台に向かった でも いたのは少しだ 食べ物屋といえばそこぐらいだった屋台 あるだけでありがたい そして レストランではなく ただ 黄緑色のビニールテントがあるだけの屋台だ しかし鉄のテーブルでカオマンガイを食べた 炭色のような 出入りする労働者たち しかし 僕の風体も似たようなものだ そして 出入りするのは まだ 若い人ばかりの労働者たちだ 僕は一人で見つめていた 労働者たちの輝く タイだった ---------------------------- [自由詩]バンコクのスーパーマーケット/番田 [2018年10月29日1時15分] バンコクの光の中 仕事場へ向かう人たちと そこから帰る人たちとで混み合うバス ガイドブックに無いスーパーの前 バスに乗っていた僕だった 高架下はどこか寂れた冬の風景 暑いけれど 街は観光ばかりで栄えているから ---------------------------- [自由詩]タイのどこかで/番田 [2018年12月10日0時06分] 必要なものが心の奥にはあったのだ そして 戻れない道を 歩いていた たどり着けない場所に しかし 目を開いた 僕は 光に憧れた子供の頃の目をしていたのだ 僕が定期が無かった時に歩いた道は 今の僕にとってもあまり変わらない風景だった  かつて僕が得た金についてを思い出しながら 手にした航空券を 今日 僕は 握りしめる 僕は夢見た道のどこを歩いていたのだ 航空機の中から見た 夢見ていた夜景の中で  日本から見たタイについてを 僕は夜景自体の中で考えていた タイ人の人々と 肩を そして並べて歩いていた 友人は国王の絵の掲げられた公園の路地にいた 一人で思うことに夢中になった 街は高くそびえ どこに行くにしても目的地はいる場所にあると考えていたけれど 誰かの背中をなぞるようにして 人々は歩いていた ---------------------------- [自由詩]かつて祖母の家で/番田 [2018年12月25日1時01分] あの日 バンコクの高架下で 僕は一人ぼっちで寂しくご飯を食べたのだった 薄暗い屋台の席で カオマンガイと 闇の中を行くバイクを 一人で 静かに眺めていた 今年のクリスマスの印象としては 少し 天気の様子が悪かったけれど 僕も一切外に出ず 一人で家にこもっていたのだ 今は部屋で静かにテレビを見つめている 昔 祖母の家を家族で訪れた日は 幼かった いとこと部屋を走り回って 楽しかった でも あの頃の思い出は戻ってはこないし 過去に戻ることはできないことを知っている あれから 一度 友達と旅行したことがあって 最近亡くなったらしい 祖母の家の前を 彼と通り過ぎた夜のはっきりとした記憶があるのだけれど そこは 実際は 小さくて 目立たない建物だった ---------------------------- [自由詩]休日の時間/番田 [2019年1月27日23時36分] 誰も知らない 部屋の中で いつも ぼんやりと 遠くを この目に見つめる かつて そこにいた 自分として 僕はそこで生きているのだろう しかし短い時間の中で ただ生きているのは 生きているからこそ変化を感じるものかもしれないが あまり変わることはない 変化なのだ 昔一人で海に行った日のこと 親の車を借りてアクセルを踏んだものだった あれはいつだったのだろうかと 思わされた 過去に だけど大事なことを 何か置き忘れてきた気がするのだ 一人でボードを借りて 波に乗っていた 僕は あの日 僕に社会は向いていないと気づかされた そんな日々が 確かにあった ---------------------------- [自由詩]かつて西麻布で/番田 [2019年2月26日0時59分] 郷田九段が勝ったのを見た 窓の外を見ている 僕がいた ただ 僕の中では風の冷たい2月下旬は  ダウンジャケットが 外に出るには必要だ 僕は目黒には たぶん来年もいる 見当たらなかったけれど 住む理由は きっと アクセスの良さという理由がなくなったら 渋谷に行く用事も 僕は なくなったのだから ---------------------------- [自由詩]新宿駅から歩く/番田 [2019年3月27日0時11分] 手に取るようにしてわかった 店員のひどい作り笑い 一人で海賊版を探して歩いていたあの頃 ストラトキャスターの音色に狂っていた 僕が 好きだったフレーズを試奏した店 毛皮のコートを脱がせて 思いを語らせた暗がり 友達と 居酒屋で そんな女のことを口にして飲んだ  通りすがりの女のために高すぎる服を買い 鏡に映しださせた 真っ白な乳房を見つめながら 数少ない言葉と ああ そして いくつもの そこで行われた面接によって 座ろうとしていたイスは消えていたことを 絵筆を買いに来た店で思う 駅前の人混みは 昔来た 学生だった僕と変わらない思いがする 新宿駅は かつて 僕が訪れた 学校へ行く途中の乗り換えの駅でもあった ---------------------------- [自由詩]四十五歳のサンセット/番田 [2019年5月6日22時02分] なぜ外で誰に会うこともないのだろう 自転車の上で 終わっていく午後 僕は悲しげな顔をして 週末は 暗い風景を 誰に会うこともなく きっと 明るい 青い空だった あれは 外の仕事をまだしていた頃のこと 車の窓に見ていた 街の光景 僕はハンドルを握りしめ 新しいスーツを着ていた かつてのサラリーマンのような人は少ないものだ 誰もが 幸せな思いでいることだろう そこにいてほしい自分として歩いているのかもしれない どこか憂鬱な顔をして 買い物に行く時も 十年後にはどんな人でも歳をとっていたりするものだ 金を握りしめていても まだ 若かったりした 僕には持っているものはなかったけれど 風景の中を 自由を持って 通りに出ていった ---------------------------- [自由詩]僕とバスキア展/番田 [2019年11月6日8時44分] 誰にも会わなかった日の午後 思い浮かんだ 友達との日々 だけど 顔は忘れていた 僕は夢ばかりを見ていたからだろうか だけど 夢は僕に 一体 何を与えてくれたのだろうか 六本木でバスキア展を見た そして帰る 通りの暗がりの中で 目にする 今でもそこにある僕が踊っていたクラブの看板 あの頃 友達と交わした 無邪気な言葉を思い出す あの日 並んでいた 大きなバスキアの絵 きっと それは 中学の頃だったのかもしれない 僕が一人で出かけた美術館 友達の女の子の声を そこで 確かに 耳にした もう僕は ミュージアムショップには寄らないけれど CDを手にすることも もう なくなってしまった 胸を焦がした バンドが鳴らしていた 熱い音 揚々としたサウンドがラジオからは毎日のようにこだましていた 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何の意味もない歌詞のような 僕は 言葉もなく BGMに耳を傾けている あの いつも飯を食べていた店を思う それは 遠い 昔の頃のこと だけど 何も変わっていない日々 僕が傘を持つようになったこと以外には ---------------------------- [自由詩]荒川サンセット/番田 [2020年3月10日1時06分] あの日のプライドを思いだす  土手に そして 腰を下ろした友達を  土手の上に沈む夕日は でも 違う街のものだったけれど 今もあいつは きっと変わらない  そう 僕は 時々 考えていた  そして今は何をしているのだろうと もう 連絡は この歳だからとらないけれど ああ 絆は なぜ 街で  何もないところから生まれるのだろう そして 白いパーカーを着ていた頃 僕は 戦うことだけが全てだった事を思い出す  ---------------------------- [自由詩]桜とタワレコ/番田 [2020年3月23日1時35分] 僕は桜の道を歩いたのだ 家に帰る時 桜を見ているふりをして  タワレコの前にCDを見に現れる 家に帰る時に でも ああ 僕が歩いたことのある道を 僕は店の前に現れる タワレコの  その看板を確かめるように そして 今も昔と同じ気持ちなのだろうかと 僕の体から 僕は自分を突き放すように  ---------------------------- [自由詩]2010年、渋谷で/番田 [2020年4月6日1時25分] 昔 夜の渋谷で 自転車を 必死で走らせていた時に 誰もいない仕事場へと向かっていた時や クラブにでかけた時のことを思い出す 暗い 人気のない道の 電灯から電灯へと 僕は見えないものを追いかけていた 一人で 自転車を 走らせていた  君も出かけていくことだろう 若かった頃の 僕と同じように 言葉のない 遊びと 仕事をこなしにいくために ---------------------------- [自由詩]落ち葉の春/番田 [2020年4月20日1時01分] 今日もドアを押すと 誰もいない街を 僕は行く 硬いペダルを 誰に会うこともなく踏みしめている そして 通い慣れた道に僕がいた ラブ・サイケデリコの声 ラジオをつけると彼らは今もそこにいた CDを借りたことがある 遠い昔のバンドの名前  リスナーのメールが丁寧に読まれていた午後 僕も昔の日記をライブドアで時々読んでいる そう ブログを 僕は 昔必死で書いていた 四畳半アパートに住んでいた頃 皿を洗いながら 儚い夢を心の中で追いかけていた 声を交わす誰にも熱い夢があったあの頃 そして 誰に この先会うのだろう どこに この先行くのだろう そして 会った人と僕は何度別れてしまうのだろう ---------------------------- [自由詩]日曜日の夜に/番田 [2020年4月27日1時16分] 僕は川辺で 砂を踏みながら歩いた 心は 日が暮れることで 遠ざかる 歩いていく 深まる夜を コウモリが空を飛んでいた そして 街は 夜の中 でも 僕は 明日を思う 朝はいつも窓に訪れるから 腕時計を見る 僕は 僕の部屋を出ていくのだ テーブルには鉛筆の跡 そして テーブルの鉛筆である跡だ 朝の訪問者は どこにいったのだろう でも 誰かが この僕であるということを そして 考えるのだ 嘘をついているのだという証を示すために ---------------------------- [自由詩]45歳のスニーカー/番田 [2020年6月15日1時39分] 何もしていない時に 僕は 良く外に出かける そしてカメラを持って 考えながら 立っている 渋谷の歩道橋の上 池袋のドンキホーテの前 新宿のプロムナードの地下 品川の駅の改札の前 僕は東邦生命ビルの近くにある 専門学校にいたことがある 卒業後 そこの 52階の職安で 呆れた職員の顔をそこで見ていた ---------------------------- (ファイルの終わり)