吉岡孝次 2006年2月4日11時40分から2006年8月26日15時34分まで ---------------------------- [おすすめリンク]ホンニナル出版/吉岡孝次[2006年2月4日11時40分] http://www.honninaru.com/web_order/publish/ 学校アルバムのマツモトによる、自己資金がなくても著書を出版できるウェブ上のサービス。 ただし、 ・本が売れても手数料と製本原価が引かれる。 ・原稿をPDFにするためのソフトが手元に必要。 ・作品展示期間は原則1年以内。 以下、2006年1月31日付日本経済新聞より全文引用です。 自己資金なしで著書出版  学校アルバムのマツモトは自己資金がなくても著書を出版できる一般向けサービスを始めた。同社が運営するサイトに著書を電子文書形式で出稿してもらい、サイト閲覧者に販売する。通常、自費出版は百部単位で製本するため、自己資金がいるが、注文に応じて一部ずつ製本することで不要にした。  出版希望者はマツモトのサイト「ホンニナルマーケット」に接続し、判型やページ数を選び、タイトルと販売価格を決める。文章や写真は標準的な電子文書形式「PDF」で入力し、送信する。サイトには表紙の画像と著者による内容の解説をつけて出品する。サイト閲覧者から注文を受けると製本して宅配する。  販売価格の二〇%の手数料と製本原価がマツモトの収入になり、残りは著者が受け取る。A5判百ページの小説が二千五百円で売れた場合、手数料が五百円で、原価が千三百円程度かかるため、約七百円が著者に入る。初年度四万冊の販売を目指す。 ---------------------------- [自由詩]引退騒ぎ/吉岡孝次[2006年2月5日16時55分] 騒ぐなら閉めとけ。 ---------------------------- [自由詩]バレンタイン・デー/吉岡孝次[2006年2月8日21時22分] 短髪の ジュニアハイスクール・ガールは また てくてくと日没を切り拓いてゆく タフでクールなハードボイルド・ウーマンでもある。 車道を挟み 並んで歩く。 ---------------------------- [自由詩]さらば静寂/吉岡孝次[2006年2月14日21時50分] 明るい時刻に帰れることもあるから 一人暮しは悪くない 許されて 晴れて許された僕は 席を立とうとする冬の空を見上げる 傷めてしまった膝も今日は軽い 人がいなければ人の世はかくも清々しく 帝政ドイツで「断章」を意味した花粉が舞っていても この景色はどちらかと言えば水に似ている 僕が 絶妙なタイミングで放り出された町 凡庸な比喩も切り詰めなくていい 過ぎ去るべき「時」も今は散らされている 言葉を覚えるくらいなら調子よく コートの中に逃げ込んだほうがいい そのほうが気も利いていて 寒くもない こんな静けさを 取りこぼすことも ない それでも顎の下 空気に曝された喉は喜んでいる 「ありがとう」の一言は余計だし そういうのはもういいから 追わずに 添いとげてやれ ---------------------------- [自由詩]二択/吉岡孝次[2006年2月19日9時04分] 妙齢の、かくれなき頬を前に 筋道を追えるほど 人生は強くない。 ---------------------------- [自由詩]目覚まし時計/吉岡孝次[2006年2月21日22時43分] 遅れても動いている 本棚の片隅で 分針の反った目覚まし時計が そう ねじれていった十余年の月日そのままに ---------------------------- [自由詩]淑女走れ走れ/吉岡孝次[2006年3月12日9時13分] ひとに頼ることのなかにも熱はあり うつむいた舌打ちにも聞かせたいひとがいる 呼び出され 土を蹴るようにドアから まっすぐに目指す先には 何もないかもしれないのに ただ まっさらな空があるというだけで ただ 心は躍って ---------------------------- [自由詩]達磨さんが転んだ/吉岡孝次[2006年3月15日21時32分] 人が減って 電車は軽くなる 「達磨さんが転んだ」 象の鼻をのばしたような 雪原の竜巻 「達磨さんが転んだ」 西の惨事を 引用しないで済ませてごらん 「達磨さんが転んだ」 母子連れなんてどこにだっているし どこにもいない 「達磨さんが転んだ」 十三回唱えれば 安楽死できるという伝説を今作る 「達磨さんが転んだ」 行く末にも来し方にもなじまない咳 続報を読みとばす冬 「達磨さんが転んだ」 達磨さんが転んだ きっと遙かな史実 達磨さんが転んだ わずかに目を瞑る遊戯 ---------------------------- [自由詩]桜の季節/吉岡孝次[2006年3月20日21時41分] 僕がその娘を好きで その娘もまた僕を好きだったところの少女は 桜が 離脱する魂のように散り去ってゆく季節を 越えられなかった (もう誰の手も届かない所できっと泣いている) (小さな石を握りしめて  僕のことを許すまい、と心に決めているに違いない) (そして) (その石も)どこかしら 歪んでいるのだ 遠い呼吸 ── 目を 閉じてみれば何もかもが児戯に等しい いつしか 少女の背後を平板な闇が覆う 眠れない夜のような重さを額に受けて 僕は 傍観者であることを強制されているのだ 古い口約束に向かって「はい」と大声で返事しさえすれば いい と 目の前のおまえが言った (あの一切の請願) (わめく木々の) 恋人が、今はいる 得体の知れない歌 耳を塞いでも ---------------------------- [自由詩]召喚/吉岡孝次[2006年3月23日21時53分] 古い雨が降る 小糠みたいな雨が降る "The rain is raining." と唄ったのはイギリスの詩人だが 赤い髪をした僕は「ひゃ 〜〜 」と歌う大馬鹿野郎さ おじいさん おじいさん いつまで 待っているのですか 肉が付くのを 審判はまだですよ そのうち誰もいなくなりますよ 生意気な一番星が線の下でじれていたって幻想(ゆめ)は かないっこない 夜は永遠に来ないといっていいんです 紫の傘は一箇所 破れていますね 138個目の 雨粒が「裸眼を直撃」 ── あなたゆずりの凶眼を無残に 貫き はじけます 石の上でぱちんと さ さ 春の汁をあまさず飲んでください ウェールズにも桜は咲きます 天才園芸家バーバンクの勝利です 先ほどから やさしい音色が流れてきてはいませんか セメントを練るような 甘い心音 湿った生木は案外燃えやすいそうですね ついつい思い出してしまいました だって臭い 籾殻を焚いたような匂いがする あっ ため口をきいてしまいました お赦し下さい お赦し下さい The rain is raining とめどもなく暗い花壇を しめやかに 古びた雨は塗り込めていきます 誓ってもいい 明日はきっと来ません ---------------------------- [自由詩]勉学と虎/吉岡孝次[2006年4月2日17時05分] なんでわかっちゃったのかね 中島敦の『山月記』 詩人なんか目指してると虎に  なるんだってさ ガオー ---------------------------- [自由詩]はるか西にいるおきゃんな少女のために/吉岡孝次[2006年4月7日20時38分]   放り上げた空にあなたの姿が映るよ   白くかがやくこの円天井は思いきり酸っぱい匂いがする   廃車場のバスの屋根に寝転んで   ぼくは若枝のように腕をのばすんだ   てのひらにあたる光と風に   Hello! のエガオを感じると ほら   辞書はめくれた   虫も跳ねてる!   森の向こうにはいくつもの県   とん、   とん、と渡って抱きつきたいな   あなたは   きっと倒れてしまうだろうが   起き上がれば   帳消しだ   逃げ出し洗いたての葉の裾に紛れては   ショートカット   振り切る   水滴を散らすように約束は忘れてしまえ   残るのは胸   いっぱいにみたす青   ウインク一つで   待ちきれるかい?              ── 草の上に降り立てばぼく                 の町は一面の交響楽。タ                 クトを握って、さあ、飛                 び込んでいけ!     ---------------------------- [自由詩]運河の堤防は白い花でいっぱい/吉岡孝次[2006年4月14日21時02分] あたらしいいのち を ふきこむのはあなた このてのひらに ---------------------------- [自由詩]現象フェーン/吉岡孝次[2006年4月26日22時39分] 湿った荷を下ろした、 身の軽さで 熱く 駆け降りてゆく。 我が名はフェーン。 現象フェーン。 気象予報士を得意がらせ 異性間に汗での交歓を齎して 海に 消えてゆく。 我が名はフェーン。 現象フェーン。 さあ 今年も家を焼くぞ。 お前たちが大切に抱え込んできたものを 少しだけ灰燼に帰してやる。 我が名はフェーン。 現象フェーン。 好かれもせず  嫌われもせず そのようにして一目も置かれぬまま 我が名は フェーン。 現象フェーン。 ---------------------------- [自由詩]十二才/吉岡孝次[2006年5月15日20時31分] いたずらに手をこまねいていた (金網のむこう 少女が白い腕を差し上げる) 日暮れて 梢はゆらぎ また 憩うように止める思い (明るく ふるまおうか) きまって人が見ていた それで ただ 「やあ」とだけ目で挨拶 ―― 立ち去ったのだ 汗のない風に押されて 東へとよろける 今が過去だなんて 誰にもわからなかった ---------------------------- [自由詩]ジャック&ジョーカー/吉岡孝次[2006年5月24日22時43分] もう死ぬのをやめたから 入れ替わる攻守さえ 簡明な減らず口。 もう生きるのをやめたから 由々しき事態にも 身命は冴えざえと軽い。 「『沈んだり潜ったり』だな、俺たちは。」 ---------------------------- [自由詩]点描/吉岡孝次[2006年6月5日20時37分] あくせくしてると 虹が出る ものを思うと 消えてゆく ---------------------------- [自由詩]生まれたばかりの海から/吉岡孝次[2006年6月10日10時04分] ここからは 陸続と 死が育まれてゆくことだろう でも それは愚かなことじゃない ---------------------------- [自由詩]魔王/吉岡孝次[2006年6月19日22時03分] 魔王は 生まれるだろう 余人の吐息を嫌って選ばれた修道院の建つ 青空のように堅い岩塊の園から 誰もが逃れられぬ「人称」を彼もまた大気に放ち 口伝えの反復に摩耗したイコンも 魂の生き延びる道を探る小児の慰撫も 与り知らぬ「名君」は ただそれだけを思考の拠点として SEINに 憤怒する 彼は下命せず 自らの使徒として 厚く君臨する 僕等が時折たまらなく暗愚へと身を組み込みたくなるのは 概ね 彼の限りない誕生の瞬間においてなのだ 彼は死を迎えることなく生まれ変わり 恋人たちの瞳に愛を注ぎ込むや 虚無を盲信するなかれ と 再び 胸に炎を呼ぶ口づけの歓びを以て 強訴する そして何度でも かの専心の荒野に 魔王は 生まれるだろう うかうかと悲憤が眠る この 刹那にも ---------------------------- [自由詩]Poembar一行詩集/吉岡孝次[2006年6月25日11時09分] 好きなこと言ってりゃいいさ、雨! 自慢の大観覧車に、落雷。 キュートなヒップに、ゲフンゲフン! もしも地球が60億人の村だったら 物真似ぬきで森進一を超えてみろ! 「止むを得ん、ハヤシライスだ!」 雪女、熱愛発覚! テライユキ、不倫疑惑! 混ざるな 危険 進化するからケモノ しないからヒト 襲われにくいのは直立しているから。 エロサイトのキリ番を踏む憂鬱。 秋は、真実の愛の季節。 ゴルゴ、後ろ後ろ! 詩のない暮らしもあったのに。 きみは ドッグフード作りの名人。 そこに耳ありせばなりとパン屋言ひ 処女航海でも船長は最後。 一年の大半は 非・国民の祝日。 均されて。 本日の特選素材「密林の戦友」 川の字になって流れてゆく親子 黄色議員。 出会った女しか愛せない。 細分化コミュニケーション「指先」 まだ自然降雨に頼っているの? 人道的紫煙、この一服は。 口が悪いので 通院 臨兵闘者皆陣列財前直見! 無は 虚ではない 冬が温けりゃ この世は闇だ うふふ あはは フハハハハ! 数GHzじゃバビルの塔には敵わない サンタさん!僕に反射衛星砲を下さい なまはげは結局よい子も泣かしてる マイナスイオン思考で貴方も健康に! 東京電力提供「こんな時刻の白い雲」 三箇日どこへ積もるか白雪は 藤岡弘は藤岡弘 笑ってみえる豆電球 僕をまさぐる君の価値観 高学歴、高身長、高脂血症。 恋に狂った男の手に、パスワード。 そんなことより もうすぐ夜が来るぞ 俺のいない世界は どんなだろうか 空を見上げる目に映れ、青! ずっと片思い いっそ一思いに 暦の上では、もう君が好き。 肝障害でガングロ 罰ゲーム「中谷彰宏全著作読破」 観覧車に乗せて 延々と説教 資格がないから参画、か・・・ 初めての店だから いつものメニュー ビビデバビデジャヴュー お前 自分の躾がなってねーよ 美女を訪ねてマイルを貯めよう! 目明きの按摩に御満悦? 「きみを憎む会」が発足しました。 出火元は昼行燈。 ほうれん草は、中華に限る! 「嫌がらせの道具」としての私。 生意気な女の 入り日に明るい瞳 いい子だから、人造醤油で我慢して。 ひと文字ごとに、歳を取ってゆく。 ながら族くしゃみしながらあくびする ア太郎か♪ハタ坊だジョー♪ 現行犯で容疑者で 折り畳んであるのが使ったハンカチ 小六法は食べられません 今日も花の咲く日です 「青鬼は、自害させておいたよ。」 子供を蹴って飛距離を競う 星占いを信じてみたい きみを答えとしない生き方で 胸に迫る万感の思いを 門前払い 「両手に花」が使える今のうちに。 石焼きビビンバを、舐めるように! 気晴らしに失敗して ここにいる キムタク効果でシステムダウン サクラチル馬鹿 ウメキレヌ馬鹿 人生まで推敲するのはやめろ。 慌てて乗ったら回送電車。 字幕:デーブ・スペクター ルール「恋人は一人一体まで」 死神の予備軍がまた惹かれ合う 山羊座なんて後ろから3番目のくせに 入会時に御説明申し上げた筈ですが? ハートがナイスバディ 矢田亜希子の代役に矢野顕子 殺したのは憎しみ 埋めたのは愛 新感覚ホラー『まんじゅうこわい』 イネのにヒトのをこうやって・・・ 聴け、俺の孫たちのロックを! 「精進します」ってそういう意味か… 物凄い地名シリーズ第一弾「熱海」 メルヘンチックな地名第一弾「茨城」 匠の技なれば、陰画の陰画も陰画。 「小誌」化社会 逡巡はいつもちょっとだけ長すぎる 動物占いだと「ニンゲン」 まるで「『白装束集団』を想う会」 菊川怜が面会したいテロリストは誰? 草の上、膝は崩れて 言語も割り箸も只だと思っている そんなに悲しいなら盗んでゆけばいい モールス信号で聴く『点と線』 俺はポスト俺 吉岡美穂の親戚じゃねえのかよ! 夜は語られてきた この、疫病好きが。 ここがロドスだ、て言われてもねえ… 狸に餌をやる女を見かけた 仕事とアタシとどっちが大事?「酒」 鈍痛丸見え 頑張って下さっていいんですよ きみからの限界効用が逓減しない法則 球児も年下 組長も年下 煙草はニャアニャアと鳴く ショウタロウよ走れ ロリータの下へ アダルトビデオ・チルドレンの麦秋 お返事確実 レス・クイーン 女子校のキャー 男子校のウォー Tシャツの襟を伸ばしたのがYシャツ 人差し指は くすぐり指 株価 阪神 小野真弓 手心を加えたいひとがいる あなたとかのこととかが好きですとか 俺とやらの必殺技とやらを喰らえッ! ウインドウの幅を狭めても一行です 好きでもないのに嫌われて 大人の方が4倍危ない 電気椅子は肘付き。 どの一日も きみのおんな盛り 失われた十年 十代の十代 グリ!グラ!ベロ! 妖怪人間♪ 本当に汚い言葉は思い浮かべられない 嫌だなあ 滅んでなんかいませんよ 「僕は、うなぎ文だ。」 「倒置法なのよ、これは!」 盗んで奪って帝王ぶって縊って 何がプチ泥酔だ。 真っ先に、ひまわりは君なのである。 胸の谷間は暗い. ひとまず逆効果 トナカイも帰省させたし髭でも剃るか 園芸部の奴隷農園 地学部の隠し金山 恐怖体験 私は私を    見た 世が世なら 毒味役 世紀末に亡んだ僕らは 明るい幽霊 虚構はフロンティア 舌禍美人 俺は折れた。俺は折れた俺だ。 烏よ 知性の墓場より今こそ飛び立て 結局俺たちが着ているのは全部古着だ 地下鉄は流れる水までおぞましい 仮面舞踏会でも優勝 書を捨てて町に出て 夕食までに帰る 論壇は どこか動物的だ 最後に逆立ちしたのはいつですか 待つから遅れる 不遜と卑下のアマルガム 強面だけどハト派 優男だけどタカ派 闘牛を、通しで観たことありますか? 煮魚は脊椎料理 カレーは無脊椎料理 「赦し」はハイリスク・ハイリターン 今日という今日は 今日だ 仮払金の精算はお済みですか? 親友は少ないが、少なくていい。 僕が望む世界は僕が 追憶される世界 おまえはおまえで増えてゆけ。 一文にもならない一文 厳父といえば石頭 広末涼子の退学届にむせび泣く教授会 アブラカタブラ鎖かたびら 足の爪の方が伸びるのが早くて 怖い 我々がファンであることで貶めている 板挟みは、このケースだと主観の問題 「噂を流しても、いいね?」 動物は英語で何と言う?「ドブーツ」 投票所は、さして遠くない。 禁酒したいが、酒は飲みたい。 『家庭の医学』で肝試し 君には卒業 僕には厄介払い そういう紛らわしい冗談は嫌い 逃げる小銭は足で踏め。 青春またまた只 外出先だ、表に出ろ! 白組:曙 紅組:ボブ・サップ 【野良人間】ではない理由 クリスマスです調。 縦書きで詩を書いたことなんてない 新宿の母 銀座のママ 「なんて長い俳句なんだ・・・」 十二支も全部収まるポエム・バー スモモもモモも 股関節脱臼。 「であります調」も、ある。 ほとんどのひとがほとんど。 余命がバクバクいってる 二人称代名詞の研究に一生を捧げて 男なら、地上波。 ここから先は一人歩きしてくれ 七月には七月のお楽しみ SPもお遍路 黙して語らぬ目撃者 警官なんだから 歩いて帰れ 思惑は三原色 レギュラーは 試合に出られる球拾い 白羽の矢は 諸刃の剣 酒を飲まないでいると 夜は暗い昼だ 死ぬまで一生勉強だ 修学旅行だ 「今年一杯は無理。」 大丈夫、モテなくても死なない。 カツカレーは大人の味。 なかなかそうはいきません ---------------------------- [自由詩]草の上、翼の下/吉岡孝次[2006年7月1日8時18分] 一体どこにいたのかと なぜ自分が見えるのかと だから記憶には創られたものがある 虫も緑も陰る飛行場の近くに 住まったことはない 白シャツを着たことはあっても レフを当てられたことはなかった ゆえに少しばかり絵になるくらいのことで そんな自主制作くさいコンテに こだわるな なかったことだ それよりは一字一字が画然とした 詩を 夏空へと目を上げた 少年の身の置場のなさへ 消しても消しても爆音なき 自由へ ---------------------------- [自由詩]LAST_WEEKEND/吉岡孝次[2006年7月2日9時23分] 続編が読みたかった ということなのだろう。 程良く重い布団に 未明に 新装された三姉妹の表紙を しあわせな気持ちで眺めかえす夢を見ていた。 「ラストウィークエンド」・・・ 駅ビルの書店で手にしたのは 日本語まじりの ありきたりのタイトルだったが 叶えられたのは まさに十余年を経た週末だった。 僕が もう若くはなくなったように 飾り気のないヒロインにも 寡黙な息子の成長と同じだけの時間が流れていた。 美しく育った姪は 一人で生きていく心細さを知った。もう子供ではなく 自分たちでやっていこう、と二人とも思っていた。 彼らに振り返る過去はなく 少女たちも 週明けを待つ大人になっていた。 ---------------------------- [自由詩]当選/吉岡孝次[2006年7月3日20時48分] これで会いに行く理由が出来た。 里親の好きな図書券を紙袋に差し、 緑のつかまっている蒸し暑い細道を辿ろう。 アルバムにふさわしい人生を携え 意気揚々と僕は帰ってきた。 ---------------------------- [自由詩]私たちが立ち去った後もハイビスカスは この島で咲き続ける/吉岡孝次[2006年7月6日21時54分] 許せない と 思った心を許そう あなたの償いは もうあなただけのものじゃない ---------------------------- [自由詩]不惑2.0/吉岡孝次[2006年7月30日6時39分] 人を 自然の風物のように愛せるかな、と思ったとき 唇の間から 舌が覗いた。 ---------------------------- [自由詩]盂蘭盆会/吉岡孝次[2006年8月11日21時46分] 大雨の裏側に、 日々 ないがしろにしてきた反駁。 目をそむけ、 お手前のハツを まさぐりあそばす。 ---------------------------- [自由詩]濃いミルク/吉岡孝次[2006年8月16日20時27分] 見栄は ある だけど そろそろ勘弁してもらえませんか 質の善し悪しの問題じゃ  ないんですよ 牛乳が飲めない私は 不良ですか 「先生も 昔は牛乳 飲めなかったの でもね ここで更正プログラムを受けたら ほら バストもこんなに豊かになりました」 大人の女のひとの乳房なんて要らない おもてで 遊びたい 「あなたに殺された女の子は もう二度と遊べないのよ」 何百人もの少女の魂を矯めてきたひとより たった一人の命を奪った私の方が ちいさい 「いいえ あなたはここから出られない」 たった一人分しかなかった命を終わらせ 「ここ」は どこなんだろう 目の前には 濃いミルク 流れゆく血の賜物を 器に 溜めて ---------------------------- [自由詩]サキ/吉岡孝次[2006年8月20日20時23分] 坊主頭の弟分は唐突にこの世から消されて オフクロだって半狂乱の檻の中 味方にとってアタシは切り札、っていっても結局は「道具」だし セーラー服なんて着てもちっとも小娘っぽく見えやしない だから せめてアンタみたいな蛇女の鱗でも剥ぎ取ってやらないと いくらツッパってみたところでさっぱり割に合わないのさ ほら 火の手が上がったよ でも、まさか逃げ出したりしないよな? 「よく吠えるね、  運命に流されているだけの自らへの毒婦が。」 ---------------------------- [自由詩]冷灰の巷/吉岡孝次[2006年8月21日20時38分] 金色のマテリアと乳白色の幼体群を格納した、 寓話の種「蜂」の巣を模したかのようなジュンク堂書店で 旧世紀 父の遺したネクタイを緩めながら 新訳されたアダム・スミスの、課税に纏わる明察に舌を打ち しかし 二行で背表紙をまた揃え直して 何だか疲れてしまい 炎暑の谷を、恋う。 涼やかな商人の塔で 歌姫の記録と 連載を終了した単行本の続きを 購うことで映し出される魂は肉も薄くて どこにでも滑り込めるが 熱い棺、としての人生は 現世ではなく 冷灰の巷へ。 時の、見えない壁の向こうへ。 ---------------------------- [自由詩]月に降る雨/吉岡孝次[2006年8月26日15時34分] 光線を照射する角度を 特定すれば ヒトの衛星にも画は届く 彼らは知らない いのちを育むのに 空気など要らないことを 霊長類とやらには青く映る あの中庸の惑星で 雨 と称される恵みと循環が ここにも 但し我らにしか受け取れぬ位相で 降り注ぎ ひっそりと しかし考えようによってはこの上もなく 賑やかに 時を告げる 地に 波紋はひろがり 星の眺めを 明暗を利かせた湖面へと 書き換える 今までも そして今も 静かの海 を生かしたければ 記したければ好きに呼ぶがいい だが こんなにも 争いと愛とで 恩寵と試練とで 「月」というこの系は 笑いという笑いが少しも絶えないのだ 光線を照射する角度を 特定して ヒトの衛星に画を届ける 交差しないことで 渦巻く嵐にさえ比すべき自らへ 行き着けるように ---------------------------- (ファイルの終わり)