馬野ミキ 2006年12月23日20時07分から2007年5月6日0時39分まで ---------------------------- [自由詩]或る夜の出来事/馬野ミキ[2006年12月23日20時07分] 夜の神が言う 「眠れない人は手をあげてくださーい」 最初は皆息を殺し、ふとんの中から辺りの様子をうかがっていたが もっとも臆病な少年、インバビロニアの血を引く息子パテロモスクベスクァテイルが やがて大きな声で返事をし その美しい褐色の右腕をまっすぐにあげると (そう、それはまるで天を指し示すかりように!) 皆いちように大声で、或いは泣き叫びながら (或いは糞をもらすような仲間もなかにはいた)、 ああ、本当なのです 眠っている人間などは一人もいなかったのです 夜の神は降伏を認め 世界にはいとも簡単に平和が訪れました。 ----------- 2000年7月27日 ---------------------------- [自由詩]1999年 月曜日/馬野ミキ[2006年12月23日20時12分] 田舎に帰ってきた。 就職して始めての一日、職安で見つけたんだ!会社に向かう途中、 チャリキがいきなりパンクして うなった。 考えた。 会社いくの、やめた。 自転車を思いっきり、コンビニに向かって投げた。ごちそうさま。 シラフだ、根性で。あとはやる気。 百メートル走って、七秒台だったと思う。自分時計で。 まだまだ、捨てたもんじゃねぇ。公式記録、塗りつぶせ。 構わない、バスに乗ろう。 遠くまで。 ここが見えないくらい、遠くまで。 でも臨海公園、ここで降りよ。 バスじゃそんなに遠くまでは行けないよって、 昔おばあちゃんが言ってたの思い出した。 おばあちゃん、葬式いかなくてゴメン。メンゴの気持ち、忘れない。 メンチをきる。 調子にのりかけてた弱そうな中学生をにらむ。えへっ。 快感、強い気がする。 強くなったみたい。 王様みたいでちょんぼ。 ジャングルジムのてっぺんに脚を引っ掛けて逆立ち。 煙草が落ちても気にしないねっ。 そこには青空があったよ。 おっきいおっきい雲がもくもくたくさん流れてて、 きっとアレって触るとふかふかで母さんみたいなんだ。 白目をする。 おかしくなって一人で笑っちゃったでし。 内藤蟻の軍隊蟻が俺の煙草をみんなでかついで 巣に持ち帰ろうとしてるのを発見。 こら、蟻君。やめないか。 ま、でも、いいや。 泳ぐ。 真冬の東郷池に飛びこむ。 やっちゃった、俺の悪いクセ。タフガイ。ちめたい。 勢いだけで人生を渡っていけると思うなよ、俺。 海老の子供みたいのがたくさん泳いでいたので ワイルド風に全部噛んで食べてしまう。 服を乾かして、小枝にかけた。 ごみ箱からおやつのカールを拾って食った。 おやつのカールがこんなに捨ててあるなんて、倉吉も変わったものだ。 パクパク食いながら、ガキ共の野球を見てた。 勝手に審判をした。 子供たちは歓迎してくれた。 でもアレは、俺が危ない奴だと思って 共同で嘘の歓迎の演技をしたのかも知れぬ。 でもね、どのみち、いつだって若者たちは僕等より天然だし上手です。 明日から会社にいこう。 -------------------- 1999・1/14 ---------------------------- [自由詩]1999年 火曜日/馬野ミキ[2006年12月23日20時18分] 東京で買ったお洒落な服を着て街を歩く。 けど、通り過ぎる女の子の 誰も俺を見てない。 むかつくから母に下駄を買ってくるように命じ(海で裸足で遠くまで歩いてたら盗まれた。) 下駄を履いて街に出た。 まぁ、街ってほどでもない。町ぐらいなもんなんだけど。 そしたら、ちょっと見た。 けどあんまり見なかった。 ヤンキーみたいに歩いて下駄をカツンカツンと鳴らして歩いた。 そしたら少し目だてた。 けどみんなすぐ目をそらした。 それでもいい。目をそらしても構わない。ちょっとは俺を見てくれたんだから― ローソンの前でスクーターを改造した倉吉暴走族にあった。 きっとこの辺だと河北中だから、俺の後輩だから、ツカツカ歩いていって威張ってやろうと思った。 半分エヘヘって笑いながら近づいた。 そいでトークしてたらそのうち殴られて、コンビニの前で集団ボコボコにされた。 人たちが遠くで見てて、コンビニの可愛い子も見てた。 恥ずかしかった。 恥ずかしくて涙がこぼれてきた。 幾つも下の少年たちに取り囲まれ、キックされる度にダサいうめき声をあげている。 これが俺なのだ。 誰かが遠くで「警察、警察!!」と叫んでいるのが聞こえた こんなもんなのだ、俺は。 ----------------- 1999年3月 ---------------------------- [自由詩]無料SEX情報発信基地/馬野ミキ[2007年1月6日17時43分] ローグみたいなエロゲーないかな、と思う つまりエロさをグラフィックに依存しない てかほんとは愛しかエロくないのかもしれん わからんけれど 結局表面的にどうあれ、 人間は精神的なものでなければ満たされないのではないか 俺がそうだった きみはローションの使いすぎで手の皮膚の色が変色したことはあるか? 俺は無い。 社会を批判することより俺にとって楽しいことは もっと素敵なことはないだろうか 瞳を閉じて空気中にマイミクを申請する 例えばそこに一つの無料SEX情報発信基地があると仮定し それを愛と仮定してみる場合 中古のばねの壊れたソファーに腰掛け 息を少しもらしたら 俺は証明する為に世界中を旅せまい 俺は科学じゃないもの それより以前から存在した、 俺は冷蔵庫から最後のスーパードライを取り出し一気飲みすると すべての時計を窓から線路に投げる あと住民票と保険証も 2007年現在に証明されている理論と科学が一体トータルに何をもたらすというのか? 俺は存在するに値する 俺の存在には意味がある 俺には月に三日か四日はバイトをずる休みする価値があるのだ! *ローグ(rogue) パソコン創世記に産まれたRPGの始祖ともいえるコンピュータゲーム。 1986年前後、パソコン通信がようやく300bpsから1200bpsに切り替わりつつあった時代に開発されたテキストのダンジョンRPGで、フリーウェアでソースが公開されており、営利目的でない限り誰でも改造、公開することが出来る。 ---------------------------- [自由詩]光熱費協会/馬野ミキ[2007年1月6日18時17分] バイトを休み家でAngbandをしていたら 光熱費協会が来てインターホン越しに今月払わなければ電気とガスを止めると言うので 俺は詩人だというと 何か機械で調べだして えーと馬野幹さんですね、なるほど 詩人登録してらっしゃいますね ちょっと向こう三ヶ月の活動履歴を調べさせてもらいますね、といって またピポパとやりだし俺が村正をGETしたところで ・向こう三ヶ月で売れた詩集が2冊 ・詩の投稿サイトでの総合評価が、んー D- ですね、 ・向こう三ヶ月で朗読が4回、総拍手が3デシベルですので えーと、詩人資格は今月いっぱいで剥奪になりますというので ドアを開けて泣きながらうんこをぶつけた これだから役人はだめだ 俺がダークエルフやフェアリーといった異世界の住人や 西口や東口に住む白痴共にどういった評価されているのかを知らないんだもの まいった まいってから腹が減ったので冷凍たこやきをチンして食った それからまた深くダンジョンへと潜った 潜った 潜ったさ- *Angband PC創世記に誕生したテキストRPG「Rouge」から派生したフリーのコンピュータゲーム。 J・R・R・トールキンの著作に基づいており、地下50階に棲む冥王モルゴスを倒すのが目的。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]コラボレーション/馬野ミキ[2007年1月16日1時25分] コラボレーションとかっつって ただ一緒にやってるだけじゃん ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]詩人論?/馬野ミキ[2007年1月16日1時58分] 現代詩の世界を見て 世界を見ない ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]せかい論?/馬野ミキ[2007年1月22日1時21分] 悪いリーダーに人々が苦しめられてはならない だがリーダーが良すぎると人々は怠けだす であるからリーダーには、ほどほどの者がなるのがよい。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]雑工日記/馬野ミキ[2007年1月23日19時13分] 現場のスポニチでミス日本を見る 現場は男だらけで価値が無いので新聞のそういった記事にも敏感に興奮してしまう ああ俺もミスコンを開いてみたい 難しい顔をしながらもっともらしい事を言って 審査員席でやらしいことを沢山考えたい いわゆる俺の書く「詩作品」よりも ブログの日記のほうが面白いというようなことを 三人ぐらいの人に言われ それは当たってて、 実はそこに根源的な命題が隠されている。 詩作品には一応の体裁があり 俺でさえ( ̄ー ̄)頭の隅で理性のようなものを振るう 日記はまとまってなくてばらばらだが実はこっちのほうが伝わってるかもしれないのは まとまってなくてばらばらというのは ちょうど宇宙そのものと似ているからで まとまってなくてばらばらであるのに、何かを伝える文章というものを 意識的に。 書くということは まとまっていて美しい文章を書くことより難しいと あえてここで断言しよう なぜなら人間には分別があるからだ 分別を隔てたところから分別のある者の胸に突き刺さって離れないもの それこそが本来の表現であり 詩ではないだろうか? 現代アートや何々のコラボレーションが 感覚的に、 直接的に、 我々庶民や雑工を感動させることができないのは まさに現代の全体性の欠如であり また敢えてここで言うなれば 現代詩はその事実を無視し続けているといえる。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]イメージ/馬野ミキ[2007年1月23日19時52分] 俺はオナニーを中断して詩を書くこともある 俺は野性的だと言われるが きみたちにそんな理性はあるまい 意味のない繰り返しなら 俺はごめん 人類や歴史共と さよならしたらどこに行こうか? 続けるのかこれを永遠に アジアを無銭旅行で横断しても、 ガンジス河で顔を洗っても マリファナを100本吸っても変わらないぜ 現存する日本のどの著名な 詩人が 俺につっかかってきても俺はまったく何も怖くない この発言はサブいか? いたいか?、大人っぽくないか? だとすれば現実に起こっているもっと痛くてさぶいことは 誰の沈黙によって維持されているか ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]詩の朗読について/馬野ミキ[2007年1月23日20時38分] 詩の朗読とは 思春期の中心を体現するようなものだ その行為は恥ずかしく常にみずみずしい 朗読者は、迷いと決断の真っ只中に立たされる それは存在を「行為する」人間の姿だ。 ---------------------------- [未詩・独白]小鳥時事?/馬野ミキ[2007年1月23日22時28分] だが実際、宮崎県民はこれからもしがらみを必要としている 正義にこだわることにより 人間がたった一つの真実を求めていないということを忘れてはならない 花王や視聴者が怒りに震えるふりをしている間は こういった事件は繰り返される。 王様は裸か? お前らもちん毛やまんこが丸見えじゃないか ---------------------------- [自由詩]雑工日記・前編/馬野ミキ[2007年1月24日2時20分] 空腹にて地下五階で殺された- 通勤の電車で色白でお餅みたいな顔をした女子高生とよく同じになる 彼女は池袋まで眠っている 詰め所にて。 代わる代わる雑工の同僚たちが 俺の耳元で誰かの陰口をささやいて ポケットに飴を入れていく それらはメリーゴーラウンドのように回転している あとの時間にはゴラクやYOUNGKINGを必死になって眺めてる よだれをたらしている。 元ヤクザや特殊学級 感情が抑えられない奴ら いやな感じだっだメリーゴーラウンド 足元はよいか? 安全帯はよいか? 今日も一日、安全作業でがんばろう! オーー ぐる ぐる ぐるぐる、廻っている 俺たちはラジオ体操を終えたあと 仮設エレベーターで順番待ちをしている 現場の花形である鳶が先頭に陣取る 左官と塗装工が後につく 設備関係はおっとりなので今回のエレベータはあきらめている 鉄筋屋には茨城から来てる16歳の女の子がいる 16歳なのにDカップあるといううわさだ くだらない便所の落書き 土工はヘルメットを外してわかばを吸っている JV社員は窓際で職長たちと話し込んでいるので何も気づかない 雑工は皆俯いていて俺はその輪の中心にいる おすすめリンクとか完全無料とか全部うそ 仲間由紀恵とかauとかはみんなヤクザ 俺をgoogleの社長に就任させない限り、俺はお前らの罪をすべて暴く 貧乏人から権力者まで俺は差別しない 俺たちはくだらないエレベーターを待っている 機械の到来を心待ちにした、 ---------------------------- [自由詩]IN PARIS/馬野ミキ[2007年1月26日8時43分] バイトに行くより   パリに行きたい この国で育てた情緒が すごい武器になったよ 昼は芋ほり  夜はカフェテラス 凱旋門へ凱旋 もっと大きな 責任感を果たすために。 みずたまり蹴っていこう ズボン汚したっていいのさ 自分探しはしない ただ自分であるという旅路 きみがピカソかシャガールか 俺がジャポンの馬野幹だ シャンゼリーゼで乾杯 まだ聞いたことの無い音楽で 俺の心臓は満たされているぜ こんにちはヨーロッパの子供たち おじさんは酔拳の使い手なのだアチョー 手品を一つみせよう 新しい世界を共に作ろう。 ---------------------------- [自由詩]「軽犯罪日記」 シンナーの練習/馬野ミキ[2007年2月5日22時39分] ぼくたちは静かにシンナーを吸引する ボンドやパテやガソリンはやらない 誤ってガソリンを飲んだロッテは恋人のアパートで死んだ その恋人の名前をぼくたちは知らない ぼくたちは常に純度の高いものをうまく仕入れた 夏休みを有効に使い、市内の建築現場の地図を製作したのだ ぼくたちはいい具合に知識をなくしつつあった 倉庫街から丁度死角になる位置にあるテトラポットの上で ダンボールを敷物にして楽な姿勢で遠くを見つめた 気が遠くなったりしたが しだいにどこが近くでどこが遠いのかも忘れるようになる 翌日のぼくたちは街でそろって異臭を撒き散らし ぼくたちはポケットに手をつっこんで歩く 太陽は赤でも黄でもなくどちらかと言えば白で 見つめていると少し下に下がる ぼくたちはそれを太陽がうつむく、と表現する 歯みがきをしても歯がぬるぬるとするので 気持ちの悪い時には何かしら食べたり 大量のスポーツドリンクを飲んだ ぼくたちは警官やガードマンといった連中から滅法嫌われていたので よく走った ---------------------------- [自由詩]「軽犯罪日記」 面接の練習・前編/馬野ミキ[2007年2月5日23時06分] ぼくたちは客車のなかで汗だくで存在する ぼくたちは時に自分たちの水分によりとろけてしまいそうになることがある 木々のようにつり革の手前で僕たちはたたずむ そうしてなるべくスマートに中央口の改札を抜けるということを振舞う 光の街でシティマップに視線を投じるが、ぼくたちにはもう何も見ることが出来ない 一つの確実な事実として面接の時刻は確実にぼくたちに迫りつつあった スクランブルの交差点で一千人の人々をよけて歩く為にぼくたちはアクロバチックに踊る その様子を誰も動画に撮らない ぼくたちはぜんぶの戦争の兵器をはじめから無いもののように隠した ポケットをひっくり返しても柔らかな砂しか出てこないといった具合に 色とりどりの三色の信号が各地で一斉に点滅をはじめる ぼくたちは初めにまずてんでばらばらに歩いてから 人気のないところで統合する エレベータのなかで同時に時計を見る 601号室の扉を開けてぼくたちは皆さんと言語を交わした ---------------------------- [自由詩]行進/馬野ミキ[2007年2月7日19時15分] テキストファイルには何を書いてもいい だがワードパットドキュメントには真実以外書いてはならない                         ゲーテ IDカードを首からぶら下げてる女とやりたい やりたいというか犯したい IDカードをぶら下げてるゴム紐で手首を縛りたい そしてやりたい やりたいというか犯したい ビンタしながらIDとpasswordを聞き出す そしてそれを録画してDVDに焼きたい そしてそれをリストにして秋葉原の路地裏で中国人のふりをして売りたい そのお金を全部誰かに捧げる- 作業着じゃなく私服なのに「仕事あるよ」と声をかけられるのはなぜか 新宿 電気街口ではクリスチャン・ラッセンの弟子たちがオタクたちに 20万とか50万とかする印刷されたイルカの絵を売りつけようとしている きれいなお姉さんに声をかけられたおたくたちは一瞬喜んでしまう 展示即売会とはヤクザの仕事だ だがそれはもしかすると自業自得なのかも知れない だとすると例えば仮に、 俺がそのきれいなお姉さんに声をかけられた瞬間にみぞうちに蹴りを入れた場合 それも彼女たちにとって自業自得になるか 違う 俺のほうが牢屋に入れられ自業自得になる なぜか? あなたは深いですね、などと言われると慎み深く勃起して喜ぶド変態の仕業よ いっそ全ての詩情をその長い解説文と同時に発表してはどうか? 俺はもっと世界みたい サングラスとかかけてらんない 兎に角、なるべく金を使わないように路上に突っ立っている ---------------------------- [自由詩]ハッピー ニュースプリング・フェアー!/馬野ミキ[2007年2月26日22時43分] 現場、吉祥寺 マクドナルド井の頭公園店、店舗改装におけるはつり、解体作業。 ともに働くおっさんたちは寡黙だし 公園には猫や水鳥がいる 10時と3時の休憩にはそこに猫をさわりに行く 東北の寡黙なおっさんたちと働くのはとても好き 休憩時間に現場がシーンとしてるのがすきだわ 時計の針だけ聞こえた 投光機の光と影 申し分ない 春みたいに 何もかもがスカートのなかで行われているみたいに。 見上げる。 12時の休憩には駅前に働く女の人を見にゆく 表通りのカフェのオープンテラスでは 2、3回本気で蹴ったら死にそうな犬を紐で結んだ飼い主たちが カプチーノをすすりながら誰にマイミクを申請しようかと思案を練っている ぼくは脚立の上で寡黙にマクドナルドを解体する のみとハンマーを握り締め 大振りは禁物 コンパクトにインパクト与えーの マクドナルド井の頭公園店に破壊と創造を ---------------------------- [自由詩]スカイフーチ/馬野ミキ[2007年3月6日18時55分] カスタマイズとカスタマイズの狭間を携帯で埋める 仕事の休憩時間に俺が詰め所にいなくて公園にいることを俺の子どもが見たらどう思うだろうか 意味のわからない言葉を言ってわらって- 世界の路上ではもっともアウトサイダー的な風貌をした奴が どの組織にも属していない人間を馬鹿にする 詩を書いているという理由により線路に立ち入ったり横断歩道の真ん中で寝そべってもよい ○か×か 胸の谷間を開けっぴろげた女を凝視して恐がらせる 親指の付け根のふくらみが異常な人間は性犯罪者が多い ○か×か 靴ひもほどけたまま歩いてたっていいじゃん 新しく入ってきた同僚がチック症で 会話の後に「ふざけんな」とか「馬鹿やろう」とか混じる そいつはなかやまきんに君に似いてる そいつは他の同僚からさけられている 俺はチック症の奴もノーマルもうっとおしいので休憩時間は一人ですごす ガラの山のなかで眠る 詩の朗読と愛の告白と 革命のミーティング以外で男たちと会話する気にならない 現場、築地本願寺改装におけるはつり、及びガラ出し 帰り道に池袋で頭がいかれた 鼻くそをほっているおばさんを わざと凝視していたら すれ違いざまに紙袋で後頭部を叩かれた。 ---------------------------- [未詩・独白]東京日記 33歳/馬野ミキ[2007年3月15日19時16分] 朝- 電車に乗るときの 皆のあの私座りたい俺も座りたいというオーラがいやで 先に乗り込んでも窓際とかに立ってしまう ヨーイドンとか言ってないのに競争しだすのがいやだ ルールが明文化されて誰かがヨーイドンと言えばいいのに。 そうしたら俺も一位になるようがんばれる。 四つの路線を乗り継いで現場へ向かう 交通費は1000円までしか出ないので交通費的にこの現場は赤字だ JRと私鉄と地下鉄を最初から敷き直すとしたらどうするか考える なかなか難しい問題だ このまま遅刻したら今日このまま仕事休んじゃおうかと思ったけれど間に合って朝礼に参列した 鉄のバケツに入っているねずみ色の液体をハケで外壁のタイルをはがしたところに塗る、 という仕事をした このように建築の派遣業において 自分が一体何をしているのか分っていないということはよくある 現場というものはいちいちに説明がなされるほどのんきな所ではない 昼- 幹線道路をどこまでも歩く ドブネズミみたいにアニマルになりたい 写真には写らない動画みたいな動きがあるから という歌詞を歩きながら考えた 埼玉のいいところは路上で煙草が吸えるということだと思う サイゼリアで地元の女子高生たちとカルボナーラを頂く 3時- 休憩時間は寒いので早く終わって欲しい 帰途- 何駅にいるにしろ その駅のなかで一番今から何かしでかしそうな奴を見つけてしまう 必ず目があうので遠巻きにしながら壁に隠れて逃げる用意をしている 中吊り広告を見ながらほぼ毎日コピーライターVS詩人という企画を考えるが 家に帰ると疲れてしまっているか 他に差し迫った用事があるか 実はそんなに楽しくないことなのか或いは忘れているかでやらない クーレンズの世界トップシェアブランドとか 中国とインドで一番売れてりゃトップシェアブランドじゃん、みたいな コピーライターの技法とやりくりを台無しにしたいとか でもこれは俺のなかのすねた気持ちであろう。 ---------------------------- [未詩・独白]日記/馬野ミキ[2007年3月20日18時32分] 2007-03-17 今日は南千住タワービルで生コン打ち ポンプ屋、土工、監督、電気屋、おれ、鉄筋屋、大工、鳶 知らない人たちがひとつのことの為に協力しあったり感情を発揮してるのみて何度か泣きそうになった 俺もその人類のなかの一人になれているのかが不安になる 誰か若い奴が俺だけを見つけてこの人は何もしていないと告発されるんじゃないかと たまに被害妄想が白昼堂々青空の真下で際限なく広がり そういうのは前の日に日本酒を飲みすぎて少し脳がおかしくなっているんだ 日本酒を沢山飲んで睡眠時間が短かった次の日は涙もろくなる 日本酒を沢山飲んで睡眠時間が短かった次の日はえろくなり あとは新しいアイディアが浮かぶことやコンクタトがよく取れそうになることなどが挙げられる。 2007-03-19 日曜、高円寺PoshMe 19時から2時間スタジオ入り そのあと駅前で焼き鳥を食い 酒を飲み タクシー代を借り 家に帰って風呂場で吐き 朝、自転車で知り合いの仕事へ 木造民家のリフォームに伴う解体を手伝い 9時〜3時で13000円もらえてうれしく 自転車をこいで今家に帰ってきて コーラと牛乳を混ぜて飲んだ それからオナニーしながらたこ焼きを食べ うんこした オナニーは3時間して複数のエキサイティングなassやbuttやboobsを見た 俺は色々なものをみておなるが 海外の女性でオナる時は現実逃避的な意味合いが大きい時だと思う ふるちんのままそのまま腹巻をずり降ろしミニスカート風にして妻にみせた それから何だか疲れてうずくまった でも今に限ったことではないし人生はだんだんと楽になっている気がする だんだんとというか1mmずつみたいな感じ 3mm進んでは2mm下がるみたいな で、なんか2年で1mm進んだみたいな 銀河にも宇宙にも何も及ばない感じ 俺自身が銀河であり宇宙であるはずなのになぜなのか ミニスカートのままmixiの他人の日記を読んだ 俺はあまり他人の日記を読まないが今日は少し読みけり。 ---------------------------- [未詩・独白]池袋〜南千住/馬野ミキ[2007年3月21日18時56分] 今日は朝時計を見て遅刻かと思ったら 一時間時計を早く見ていたらしく池袋駅で下りて煙草を吸って少し歩いて うんこをしてから交番の横で煙草を吸ってから松屋に入った 交番の横の喫煙スポットで煙草を吸っていると俺は社会に守られている気がした 俺は早朝の池袋で二人連れのギャルと田舎から出てきたばかりの禿げ伸びの若者の間で 静かに豚を食べた 昨晩からいやな予感がしていたがあらゆる関係に対しての無気力な感じは続いていて 結局仕事に行ったが、 朝現場でうんこをして 昼まで、いつこの現場から逃げ出そうかと考えていた 逃げ出すことと妻とやがて生まれいずるわが子について同時に考えた 詰め所で加害妄想に襲われる。 だが張本人にとってそれは実質的な加害であり己を否定し続ける罪だ 風は冷たいが空は晴れていて 俺は歩道を歩く 南千住で安くてうまい定食屋をみつけて気に入っている 道路に花束が落ちていたから誰かがここで交通事故で死んだのか今日も俺の誕生日か 鬱というかこれは多分逆でアドレナリンみたいな何か知らないけどそんな物質が 分泌されすぎて自分でセーブというかブレーキをかけすぎている状態なのだと思う 街路樹の葉や工場の煙突や区画整理や空き地や子どもや痴漢に注意といった看板 そういったあらゆるものがいちいち美しい そういう美しいものを見ている なぜなら見たいからだ- 例えば太陽が太陽であり続ける為に必要な要因とは 燃え尽きてしまわないこと 太陽は太陽系をマジ照らすエネルギーかそれ以上のパワーで燃やすに値するもの自体を 己の内側で創造、展開させなければならない それは涙を流しながら笑顔で一人フェラチオを延々と繰り返すようなものではあるまいか とりとめがなく 当たり障りはあるけれど 俺の詩集やCDが評判以上にまったま売れないのは 読者以上に俺が俺の作品を欲しているのからかも知れん わかんないけど、その原因を最近よく考えている なぜステージにたっている俺が客より金を持っていないか 南千住の現場で本日の俺は 沢山の道具を持って仕事をしたから職人っぽくてかっこいいなと思った そういうのを沢山の人に見られたい そしてかっこいいと思って欲しい 何者かになっている自分がたまらなく嬉しいのだ。 ---------------------------- [自由詩]テレポ/馬野ミキ[2007年3月23日21時23分] 俺が詩を書いているときに 子どもが何してるの?って聞いてきたら 俺は何してると言おうか メモしているというのが一番ちかい気がする 毎日一時間はメモしている- お父さんと お父さんたちは 忘れっぽいから きみは黙ってきょとんと俺を見上げる お父さんはきみの目を見る お父さん今日もうメモしないから いっしょにあそぼう ---------------------------- [自由詩]石神井日誌/馬野ミキ[2007年3月25日12時10分] 日曜の朝 一人の娘が固まっている 俺の妻だ。 枕元に携帯電話が二つある 電池パックを入れ替え その機種でしか出来ないゲームをするらしい いまはモンスターハンターというのをしている。 雨が降っている。 妻が布団のなかで煙草に火をつける。 俺はインターネットをしている。 笹目通りを行きかう車が水を跳ねていく音が聞こえる。 この天気を見越して昨日雨養生をしておき正解だった 建築現場でスリーブ工をしている 鉄筋コンクリートの壁面や床から天井へ 電気やガスや水道を通す為の配管を通す穴を確保する仕事だ 生コンを打設するまえに枠を仕込んでおき 固まったら枠を取り外す それらを延々と繰り返す。 妻がテレビのスイッチを入れる 娘は布団のなかで固まっている そうして二人は黙ったまんま笑っていいともの増刊号を見る。 妻が窓にへばりついて結露を飲んでいるので静かに抱き寄せる 顔を近づけると妻は目をそらし俺の顔を手で押しのけたが 押しのけたその手のひらの頬への感触が まるで子どもがいやいやするみたいにかわいかったので抱いた 妻が手をぐーにしたのでそれを包むように握る インターホンが鳴った ベビーバスが届いた。 ---------------------------- [自由詩]道/馬野ミキ[2007年3月29日21時00分] むかしある男がある場面で 海を二つに割りその真ん中に道を作った それは奇跡だった その場にいた人々は驚愕し うわさに聞いた人々は私たちも体験したいと叫んだ 男は皆を集めもう一度海を割り道を作った 人類は彼に服従する者と非難する者とにわかれた 自分の道を歩む者がいなかったのである。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]フォーラムでは××という名前で書いてる○○です/馬野ミキ[2007年3月29日21時47分] 俺が毎月主催させてもらってる自由参加型の朗読会にて 参加者がステージに立ち自己紹介をする。 「こんにちは、フォーラムでは××という名前で書いてる○○です」 など、という人は結構いる。 俺は「フォーラム」が 「現代詩フォーラム」を指していることが分る。 小さな朗読会であるから観客の何割かは同じように理解している。 だが何割かは、まるで分らないでポカンとしている。 うちの朗読会ではネットで詩を発表していない参加者も沢山いる。 「インターネットで詩を投稿するサイトがあり現代詩フォーラムというのですがそこで私は・・・」というのならまだ話は分る。 「フォーラム」でグーグル検索し「現代詩フォーラム」は何位ぐらいに出てくると思ってるんだろう。 何故「フォーラム」という単語だけで通じてしまう前提を勝手に持ってしまってるんだろう。 俺はこの現実を見てなさ加減に驚くし この現実を見てなさ加減がその人の詩作品にも表れているのだが その事実じたいを意識している人さえ少ないということに更に驚く。 ---------------------------- [自由詩]しょくにんになりたい/馬野ミキ[2007年3月29日23時11分] グレーのさぎょうぎを きた ぶかぶかの  ニッカをはいた ぼうずあたまの よく あせをかく うつくしい はならびをした しょくにんになりたい ぎを おもんじ ぶれいながきども がけからつきおとし おうだんほどうで  じじばばを  ひゃくにんせおって あゆむ ひこうきにはのれず さいしんのけいたいをもった しんせんな さしみと にいがたの にほんしゅを つまと こどもの  つぎにあいする てどり よんじゅうごまんの  よく あせをかく しょくにんになりたい。 ---------------------------- [自由詩]2007-03-31/馬野ミキ[2007年3月31日21時02分] 仕事で二日連続ポカをした 休憩時間には詰め所でコーヒーの成分表ばかりを見つめている 同じ班の人たちはそんな俺にとても親切にしてくれる だから余計みじめになってしまう 現場で働いている90%の人は 俺より仕事ができ責任感があり常識を身につけている 普通に俺よりいい人たちだ 本当は俺は職人じゃない ぜんぜん知識を知らない ただ作業着を着てかっこつけている 職人のふりをしてカフェの前で煙草を吸っているのだ 俺は自分が建てたビルが地震で壊れてもちっとも悲しくならない どちらかといえば馬鹿受けすると思う これは職場の同僚や先輩や社会全体を裏切っているということだ トータル的にみれば俺は ほとんどの人達より社会に悪影響を与えている気がする おれのブログや詩は一体なんなのか 俺は何に怒ってる革命家のふりをしてる? 帰途が耐えられない為に現場から1番ちかいコンビニで酒をかいこむ 交通の便に沿って酔ったもん勝ちみたいな振る舞いをみせる 最悪だ 家に帰って今日起きたことの二十分の一くらいを書く そうすると現代詩フォーラムで十一ポイントぐらい入る それを俺は芸術で大きな仕事をしているとか言って 十ヶ月の妊婦に酒をつぐように要求する 書きながら睡魔がくるまで酒をのむ 自分の脳から逃避したいのだ- ---------------------------- [未詩・独白]2007-04-02/馬野ミキ[2007年4月2日21時50分] 6時15分 目覚まし時計が鳴る たぶんあの世とこの世の間にいるみたいな顔をして煙草を吸う それから秒針がちかちか聞こえだす 引力に引かれるように瞬速で作業着に着替える タオルと靴下を2セットナップサックに投げこむ 妻の額にくちづけする 現場、南千住- 三つの路線を乗り継いでいく 喫煙所のある駅では必ず煙草を吸う 息を吸って吐くことによって現実を少しずつ取り込む 誰にもいじめられていないのに まぶたを閉じて全身の毛穴を塞ぐ かつての忍びの者たちが 「存在」する為に身を隠したように 俺は常に俺から遠ざかる 詰め所で日本銀行は悪魔にのっとられているという人がいる その人は祈りとかキリストとか予言とか破滅とか乞食とかたびたび言う 俺はびっくりしてしまうがみんなは上手く返答したり交わしたりできる 俺はみんなの能力に唖然とする 俺は早く休憩時間が終わって欲しいといつも思っている コンクリを打ちすぎたところを今日ははつった スリーブを出すためにはつった これはドリルのような機械で余分なコンクリートを削る作業だ 設備は常に建築になめられる なんでだろう 鉄筋屋は鉄筋しか出来ないのに 空調設備はスリーブ設置、取り外しの他に鉄筋の結束もはつりもするのに なぜ設備屋は常に建築の下に位置するのだろうか かち合った場合常に設備は建築にその場を譲るという暗黙のルールがある。 最上級の土工と最上級の鳶 最上級の鳶は鳶しか出来ないが 最上級の土工はすべてが出来る 日本で最上級の鳶100人が集まっても建物は立たない だが日本で最上級の土工が100人集まったら何でも立つだろう だが土工の日当は圧倒的に鳶より低い なぜか 日本人は万能な才能を嫌う それはぼくたちのしなやかな配慮だ 日本人はアマゾンの未開の部族さえ泣ける程やさしい 憎たらしい程につつしみ深い日本人のアイデンティティ お前らが秋葉原を徘徊してる間にお父さんはいなくなったよ 慎み深き大和! 妻からロングメールで前期破水の知らせが来る 日暮里、西日暮里、駒込 俺は車窓にへばりついて外界の空気を求める 時代遅れの看板とさびた建物が見える 山の手線の駅前なのにこんなに未開なのか 池袋 西口東口中央口東武丸の内西武池袋 妻からロングメールが3通届く 俺は車内で氷結を飲みほして空き缶をポケットに隠した、 ---------------------------- [自由詩]故ブラッド・ノウェルに/馬野ミキ[2007年5月6日0時39分] 果物を持って歩いていこう どこに歩いていくかは知らない ポケットに入らないこのでかい果物 手に持って歩こう どの国から輸入されたのか どの船に積まれてきたのか フルーツよ! いつの時代に黒人たちは摂取されたか 知らない果物 知らない俺たち おまわりとキャッチボールしよう アウトなら職安の前で食べちまおう 俺は一人ぼっちで共同墓地にたたずむ これだけの数の人間が生きて 死んでいったのに 後に残されたこの土地はなんて静かなんだろう 戦争や寿命や肺ガンや俺の知らない病気にかかって死んだホームレス 州をまたぎ活躍した連続の殺人鬼に犯された魂  サーカスの玉乗りの練習をしてて死んだ間抜けな奴もいるだろう だから俺は祈るんだ でかい果物を小脇に抱えて一瞬祈る そして歩く 俺は宙に向かってフルーツを投げる そうするとフルーツは落下してくるから俺は両手で受け取る これはニュートンの法則と呼ばれているが ニュートンが見つける前からそうだったろう そう気づいてから俺は本を読まなくなり こうして墓場をほっつきまわってるってわけさ 町の誰もが俺についてのよくない噂してるよ でもいつかレコードが100万枚売れて俺たちのBANDがグラミー賞を取ったら 俺にも親戚が増えるだろう 彼らをあたたかなスピーチで迎えよう 果物をほおばりながら ---------------------------- (ファイルの終わり)