馬野ミキ 2014年7月18日21時20分から2016年9月12日5時39分まで ---------------------------- [自由詩]四度目の上京/馬野ミキ[2014年7月18日21時20分] 高校をやめ 好き勝手言って田舎を飛び出した手前 東京に敗北し帰郷した俺はすぐに地元のハローワークで仕事を見つけた ギターを押し入れで風化させたまま 12時間交代の工場に勤務し Windows98搭載パソコンを買って おっぱい詩人の部屋というホームページを作ったり 鳴り物入りでデビューしたMMOウルティマオンラインにハマっていた 工場ではコネクタを作る機械のオペレーターをしていた 業界において世界七位の企業だという 聞いたこともない 休憩時間になっても休憩しない一つ下の元ヤンの女の子に「休憩時間だよ」と教えてあげたが じゃあ俺は何をしていたのだろう お互い休憩室にいづらいのだ たまに孤立していた新工場長と幾度か昼飯を共にした 品質向上スローガンの募集で俺の文学的才能を知らしめようとしたが箸にもソードにもひっかからなかった やがて夜勤で言うことを聞かない機械を蹴るようになり 工場に行かなくなった 班長が俺を居酒屋に連れて行き慰めた 最後に明日から工場こいよ!と言って俺の肩を叩いた 俺は「はひ」と言って次の日も仕事を休んだ 自転車で河原に行き気持ちよかった 長野のスノーボードの大会で怪我をした弟が帰ってきていた 母と三人でレストランに行った 母は俺が工場を辞めたことを責めなかった 俺は少し救われたと思った 弟と三国志を24時間して負けた 母は俺を外に連れ出そうとしていた ウォーキング、日本海のイカ釣り漁船見学、親戚がやっているヨガ教室 俺は常々いたたまれない気持ちであった 心配した東京の彼女が送ってくれたプレイステーションを売って酒代にし 偶然であった元同級生と近所の高校の更衣室に忍び込んでセックスをしていた コンクリートの上でセックスをすると膝が痛いものだ セックスをし終えた後校庭の照明をつけたりした 夜の学校を支配している気持ちだ 蛍が飛んでいた 駅前でワンカップを叩き割りタクシーの運転手に詰め寄れられた 交番からおまわりさんが飛んできた 強制的にどこかに連れて行かれることは気持ちがいい リラックスできる もう葛藤しなくて済むからだ 沖縄のペンションに行って枕カバーを枕にしまう仕事を迅速にできず一日で帰ってきた 母の同級生がやっていた警備会社のガードマンの仕事を半日でやめた オーバードーズをして2日眠った ホームページのファンとSEXをしにいった関東旅行で音楽仲間たちに太ったなと言われた これから群馬に行ってセックスをすると言ったら報告しろよなと言われたのでいやだと言ったら 友達なら報告する義務があると養老乃瀧で怒鳴られて理解できずにいた その夜群馬でSEXをしたら3秒位で出た あとは精神科の薬で眠っているかウルティマオンラインをしていた 田舎で無職であるとちょっとした外出も命取りになる 俺はもうだめだと思い、ゲームの財産を現金に替えるサイトを利用した 25000円になった 俺は25000円を持って東京に向かった 四度目の上京だった ラッキーなことにこの四度目の上京で俺は詩の世界に足を踏み入れた それから少しだけ何かがうまくいきかけた。 ---------------------------- [自由詩]池袋 二十歳/馬野ミキ[2014年7月20日20時06分] 雑司が谷のアパートを追い出された当時二十歳の俺は 池袋の東口で路上生活をしていた 今のタクシー乗り場付近には花壇と その花壇を取り囲むように丁度ルンペンたち横になれるコンクリートのベンチがあった 俺は二十歳になったからには何かやらなくてはと池袋を裸足で歩いていた もちろん恥ずかしい だがこの恥ずかしさを乗り越えなければならないというよく分からない義務感のようなものがあった そして猫を連れていた 裸足で猫を連れてギターを持つ青年か 今思うと我ながら感慨深いというか痛い 池袋の路上で数時間歌えば3000円とか5000円にはなったので生活の苦しみはなかった 稼いだお金を毎日銀行に貯金していた  余分な金を持っていることは外で眠る者にとって危険だ ちょっと目を離した数分間にラジオを盗まれたことがある 性欲は使い始めた個室ビデオでこなした あの頃の個室ビデオは今ほどのラインナップやサービスはなかったな 今ではシャワールームが完備されタオルケットの貸し出しも行われている きついのは雨の日だ 足が濡れると切なくなる 朝が来て駅のシャッターが開くと皆池袋駅になだれこんだが 俺は駅で寝るのは好きではなかった 東口と西口の路上生活者が対立していたり エサ場(マクドナルドなどで廃棄処分になったもの)の取り合いをめぐるささやかな抗争などがあった ビニール傘を右手ににらみを効かせるような・・ だが俺は若かったので可愛がられた 俺が普段歌っている場所に他のストリートミュージシャンが歌いに来ると(今の喫煙コーナーの辺りか) そこはあんちゃんの場所だからどけ!と勝手に場所取りしてくれるような。 いいんですよ誰の場所でもないからと俺が間に入ると 他のおっさんに「ああいうやさしさは受け入れておくものだぞ」と小声でいわれたのを今でも覚えている。 とにかく暇だったので歩いた 猫は水商売の女に盗まれていた 朝が来るまでいけるところまで歩いた 建物があるとその建物を避けて通らないといけないのが当時の疑問だった 道がなめられている気がした なぜ無断で入ってはいけない地上があるのか 見知らぬ公園のすべり台にたたずで夜空を見上げる 深夜徘徊は夜を支配している気がする。 ---------------------------- [自由詩]自転車置き場/馬野ミキ[2014年7月25日14時13分] 窓を開けて煙草を吸っていたら 下の通りをいつものおじさんがうろつうろしていた 同じマンションの住民の年金暮らしのおじさんで いつも暇そうでありニコニコしており誰か話し相手を探してうろついている 時々俺も捕まって長話になりそうなところを何とかきりあげる エレベーターの中までついてくるからな ま、悪い人じゃないが・・ 煙草を吸いながらおじさんを見ていたら 自転車置場を行ったり来たりしている 俺は急に先日自転車のタイヤがパンクさせられていたことを思いだした 自転車屋でいたずらの可能性が高いと言われていた 俺は少し窓から顔をひいておじさんを見守った 辺りをきょろきょろとしているように見える あのいつも笑顔のおじさんの闇の部分がこれから露わになるのかと思うとドキドキした 俺は煙草を消しおじさんを見つめた やるのか!? 犯行に及ぶのか!? するとおじさんがポケットに手を突っ込んで何か出した ワオ! 遠くでそれが何なのかよく見えない 釘か? それでタイヤを一刺しするのか? 俺の心臓は高鳴った 刺せ! 刺せ! 刺してしまえ! なぜかそう思った だがおじさんは何事もなかったようにエントランスに向かい自室に帰っていった。 ---------------------------- [自由詩]愛について/馬野ミキ[2014年7月28日12時52分] オナニーをしても すっきりせずもやもや気分続行で報われないのは 本当は たった一人の人を探しているからじゃないだろうか 仮に 宇宙が無だとするのなら 地球は有であり 俗世だ 絶え間ない雑音でありある種の混乱だ 有ということの特徴は 自分以外にも存在がいるということだ これはついつい当たり前でスクランブル交差点辺りでは思わず見逃しがちなんだけれど 死んでみたらわかる あの耐えられないほどの静けさ いかにこの世界がうるさくてうっとおしくて邪魔者が多くて面倒くさくて疲れて果てて だけれど温かいかということを。 沢山の女とやりたいと思う けれどもそれは本当は二番目に大切なことなんじゃないだろうか 一番にほしいものについて それがまるで大前提であるかのようにあきらめているからではないだろうか ---------------------------- [自由詩]トマト/馬野ミキ[2014年7月28日13時38分] 窓から通りに停めているトラックの荷台に トマトを投げる ここらは駐車停止なんだ このように常に自分には病識がある 通りに車を止めているトラック運転手が「何をしてるんだ!」と怒ってきたら 殺せばいい これが犯罪者の心理だ 殺せばいいんだよ 何があったって 圧倒的な腕力さえあれば 警察官も裁判所もみな殺せばいい 犯罪者は人々の良識の闇の産物として製造されるのか もともと救われないような絶対的な悪がこの世には存在するのか 俺には分からない 前者なら革命の見込みがある 後者なら神を殺すしかない 他人に迷惑をかけないようにしなさいと教えられてきた だが存在しているだけで他人に迷惑をこおむる人達がいる 池袋駅東口で異臭を放つ乞食 アスペルガーのトラブルメイカー 胸の谷間を魅せつける境界性人格障害の女 沈黙の電車内で発狂する知的障害者 老人を騙す極道 身なりの美しいクレーマー エトセトラエトセトラ・・ 世界の金持ちベスト100の私生活を見ろよ あいつらが別荘のプールに泳いでる時 その水の一滴一滴を埋めるために 世界の貧しい地域の少年少女が 死に者狂いで働いてる そう 俺が地球という砂場で習った三つのことはこうだ 人は人を殺してもいい 人は他人に迷惑をかけてもよい めざわりな機械自動車にはトマトを投げつけていい。 ---------------------------- [自由詩]高円寺、阿佐ケ谷、下井草、中野/馬野ミキ[2014年7月30日15時24分] 阿佐ケ谷に引っ越したKに会いに行った Kの働く作業所(主に知的障がい者の人たちなどが働く喫茶店)で Iphoneのゲームの情報を交換などした 昨日ipadを買ったらしい 彼は高円寺の路上である種名の知れた存在なのだが ここのところ路上に疲れてしまったらしい でひきこもってゲームをしていると。 そのうち彼が疲れたと言って寝てしまったので高円寺をうろついた それから駅前の個室ビデオに入った 酒と個室ビデオ、街に出かけても俺の行動は限られている・・ 2時間コースで入ったが一時間もしないうちに果てた くそう 1時間コースにすればよかった・・ 3000円持ってきたが1600円消えてしまった 競争相手がないので新宿や池袋に比べ割高である そうするとKから電話が来て うちに来ないかというので阿佐ケ谷で待ち合わせをした Kは自転車の荷台に熊のプーさんを載せていた Kの部屋で600円のカベルネソーヴィニヨンを飲んだ Kは一文無しだった Kは金のないときにしか俺に連絡をしない 俺は105円Kに恵んだ カセットコンロを買ってスパゲティーを茹でることが可能になるからだ Kと別れ下井草でE子がやっているバーを目指した 5、6人客が入れば満員になる小さなバーだ バーの売上ではなりたっていかないのでE子は別の仕事もしている 残り1000円か、、 ビールを二本飲んで帰ろうかと思ったがツケの交渉をした 常連の植木屋さんにビールを2本おごってもらった 彼はネプチューンのホリケンに似ていた ホリケンが帰った後E子もカウンターに来て二人で飲みだした 店で何かイベントをやろうという話、自転車にとって車は邪魔である車にとって自転車は邪魔であるという話、愛人について、ドラッグのこと、人生と世界とは? 酒に酔い気の向くままに話した それから昔なじみのUに下井草で飲んでるから来なよと電話をした 日本橋で会議中だという ワオ もう20年以上前、神戸から音楽をやりに上京した男で今は小さな土建屋の取締役をしている 以前俺のアパートで世話していたことがあった Uは約束の時間から三時間遅れで下井草にやってきた ぶっとい作業を着ていなかったのが印象的だった ぶっとい作業着は俺たちの1つのトレードマークだった それからずいぶんと物腰が大人になっていた 1、2年会ってないだけなんだが・・ この頃の友達は皆俺の事をミキと呼び捨てで呼ぶ それはとても気が楽なことだ Uは言った 会社の経営プランの一つとして中野にバーをオープンするということ そこで時給2000円で俺を雇ってくれるという話 願っても無いチャンス! だが店舗が空かないことには具体的に話が進まないらしい 今年中か、来年かとUは言った バーの隅に座って煙草の煙を揺らしている俺 これはなかなかいい絵じゃないか 酒を飲みながらイカれた客をネタに詩をかくことも出来る この仕事決まれば最高なんだが・・ ---------------------------- [自由詩]GOD/馬野ミキ[2014年7月31日18時00分] 大きな会場でライブをする 俺の出番の手前で夢が覚める 飲み屋をやっている知り合いいわく 普通の人たちはよっぽど偏狭で狂ってる ミキみたいに話が通じないもんだよ と言った 普通の人たちか 俺だって君の店を出れば話が通じなくなるんだぜ なんてね 下品に慣れるために俺も下品に堕ちた 俺が日々どんなにいやらしい目で女性を追いかけているか だけれど俺が割りと正直に告白できるのは 所詮それほど皆さんほど悪の知識がないのだと思った昨日 この悪の諸先輩共! お前のことだ 資産価値が下がるから葬儀場は周辺にないほうがよいんだという地域住民の運動 でも糞汚いガンジス川を輪廻とか宇宙とか言ってありがったりするんだろ 日本人はそうだ だから俺は原発に賛成することも反対することも 9条に賛成することも反対することもいやだ お前らに反対する たった一人 俺を愛してくれる人がいれば俺は 原発があろうがなかろうが構わない いつか死ぬのに資産価値がどうなるんだ 愛は、死より強いだろう でなければ愛を探求する意味が無い 愛が何か分からないにしろね 歯がどんどん抜ける 死は差し迫ってきた 俺はお前らに愛される必要はない 好きなことをするだけ 誰かたった1人俺のことを愛していてくれるのなら おそれはない 常に、証明できないものだけが歴史を覆すだろう 生きるということは、証明できないことに全身を投げ打つことじゃないのか。 ---------------------------- [自由詩]ハセの頭を割った/馬野ミキ[2014年8月6日10時19分] ハセ(長谷川)と俺はお互い母子家庭だったので 学校が終わって親のいない家をお互い自由気ままに支配しあったりした インスタントラーメンを茹でずに 付属の粉をかけてベビースターラーメンのように食べることは ハセに教わった ハセが、今日が何月何日かしらないということに 割りと早熟であった俺は衝撃をおぼえた ああ 今日が何月何日かしらない選択肢というのもあるのだなと・・ ある時ハセと山にカブトムシを取りに行った 俺は小学一年の文集に昆虫博士になりたいと書くほど昆虫が好きだったので カナブンなども捕まえていた ハセは、カナブンは譲ってるからカブトムシは俺にくれよというようなことを言った ハセはミーハーだからカナブンに興味はないくせに と俺は思っていた だいいち、カブトムシなんていないだろう 近くに精神病院が有り基地外を連れて行くと5000円もらえるという 都市伝説ならぬ田舎の伝説があった 今考えるとたわいもない噂だが当時小学生の間でそれは少し信じられていた 山の中に隔離病棟があり、窓をドンドン叩いて外に出たがっていたおばあさんを俺も見たことはある あのおばあさんは俺の空想だっただろうか わからない 病院の生ごみを捨てる大きな穴が山に掘られていた 近くにパワーショベルがあった ハセはカブトだ!と叫んで穴に降りた 一匹のカブトムシがスイカを吸っていた 俺は近くにあった竹の切り株をハセの頭に投げつけた ハセの頭はパックリと割れ血が吹き出した カブトムシがその後どうなったかは忘れたが 俺はハセの流れ続ける血を拭い自分の頭にもなすりつけながら 二人で山をおりた。 ---------------------------- [自由詩]国道9号線を走った/馬野ミキ[2014年8月6日16時48分] 松田さんが死んだ 白兎駅でソアラをシャコタンにしようとしていて 車に押し潰されて死んだ 倉吉で暴走族を立ち上げようとしている時で 関西から帰って来られた先輩が何人かおられた 松田さんはその1人だった その死はあっけなかった 翌日俺たちはカラオケで馬鹿騒ぎをしていた 俺はもっとも後輩の部類に位置しパシリ的な存在であった 東京から帰ってきた俺は荒れていた 酒を飲んで電話ボックスを壊したりタクシーを蹴ったり ミキに酒を飲ませろ 何でもするから ミキあの女をナンパしてこい はいわかりました! 右肩に刺青を入れた Yさんの家で皆互いに刺青を入れあった 大人の歓楽街という刺青を足に入れている人もいた 時々知らない女が隣の部屋で泣いていた 松田さんとはそれ程親しくなかったが 俺はトイレに行くと言ってカラオケボックスを飛び出し 白兎駅に向かって国道9号線を走った じきに先輩たちの車が追いかけてきて俺を見つけてくれた ミキ どこに行くんだ! 松田さんの声が聞こえます! 俺は嘘をついた そんな声は聞こえない ただカラオケで馬鹿騒ぎしている自分たちがいやだったのだ 俺はY先輩の胸で泣いた Y先輩はミキ泣くな!と怒った 翌日、同級のKが「本当に松田さんの声が聞こえたのか?」と俺に問いただした Kと俺はこの暴走族の最低学年の二人の道化としてグループを支えていた 俺は「うん、聞こえた」と言った。 ---------------------------- [自由詩]初体験/馬野ミキ[2014年8月7日9時25分] 17歳 パンクロッカーでありながら童貞であることを恥じていた俺は 女性器に対する不安と恐れがあった 物心ついた時から空想がちだった自分にとって女性器は現実そのものであった 政治や社会よりも避けて通りたい現実・・ 当時土木作業員として13000円の日給をもらってて仕事帰りに 池袋の西口のファッションヘルスに行った 少し酒を飲んでいった 十代の頃につきあった女性とはSEXを避けていたし長続きしなかった おままごとだったと思う 彼氏彼女ごっこ 好きかどうかさえ分かっていないような・・ 初体験はキツネ目の女であった まったく好みではなかった 俺はそんなに気持ち良くなかったが「気持ちいい」と言った 癖になるわよと女性は言った ゴムをして2,3秒で出た お金を払ってどうしてこんなにさみしい想いをしなくちゃならないのか ふらふらとロサ会館辺りをうろつき チェーン店の居酒屋のカウンターで1人で飲んだ 大学生のようなものが騒いでいた あの頃からずっと、大学生のようなものが騒いでいることが嫌いである。 ---------------------------- [自由詩]下北半島のみどり/馬野ミキ[2014年8月7日13時54分] 福島のお祭りへのライブ参加を終え 皆東京に帰っていったが 俺とKはN子にタカりながら北を目指した Kの友達が青森にいるという 各駅を乗り継いで下北半島へ 皆東京では無職の歌唄いだった 当初みどりは俺たちを歓迎している感じではなかったが その夜皆で人生について語っているうちに打ち解けた 人生の意味について、宇宙とは何か 若かった俺たちはよくそんな話をしていた みどりがトイレに行くとき、俺の頭をポンと叩いた これはとても素晴らしい合図だと俺は思った 次の日みどりが仕事に行った後俺は顔の産毛を剃りはじめた 俺は毛が濃く眉毛なんかほっとくと繋がってしまいそうである つまり、かっこつけようという想いだ Kが俺をからかう みどりはKの元彼女であった その夜俺はみどりと二人で手をつないで出かけてしまった N子は俺のことを好きだという噂があった 少し遠くで救急車の音がしていた N子が酔っ払って路上で寝ていたので通報されてしまったらしい まあ東京ならその辺で寝ている人はめずらしくもないが・・ N子はヒッピーの生き残りのような女だった N子は次の日東京に帰った 俺とKはすすきの原っぱを全速力で走っていた 自分たちよりも背が高く、もし仮に崖でもあったなら俺たちは死んでいただろう 夜はKに外出してもらいみどりとセックスをした はじめて女性器への恐れが消えた瞬間である 俺たちは交互に子供のようになった 翌々日、後ろ髪をどうにかする想いで俺とKは東京に帰ることにした 一文無しだったのでみどりに50円もらった 50円でうまい棒を5本買いヒッチハイクをして東京に帰った。 東京に帰った俺はファッションヘルスのボーイの職についた 池袋サンシャイン通りの雑居ビルの最上階からの見晴らしは気分がいいものだった 15000円の日給は試用期間中の一ヶ月は10000円ということで騙されたなあと思った ボーイたちは夜、客と嬢がプレイする個室で眠った 毎日電話ボックスからみどりに電話をかけた 今勃起してるでしょう?といい当てられるのは楽しいものだ 親のすすめで自衛隊の男と結婚させられそうになってる 私を連れ去ってくれる? 俺は連れ去る自信について分からなかったが お金を貯めてもう一度会いに行くと言った ボーイの仕事は一週間でクビになった 俺が女の子たちに敬語を使わないという理由だった 俺は俺との会話のなかにくつろぎを見出してもらおうとあえてタメ口を使っていたのだが 古株が気に入らなかったらしい 彼女たちは持ち上げてほしかったのだろう 俺はそんな関係は悲しいと思ったが・・ とにかく、一週間分の給料を受け取り俺はアパートに帰った アパートにはKがいたので二人で麻雀をした お互い豪快に積み込む 金がなくなったらプライドを賭けようと言って勝負した クリスマスにフリーマーケットで買ったワンピースを送ったがサイズが合わなかったそうである この頃からみどりは俺への愛を失せてきたのではないか・・ 俺が送った詩を「これほんとにミキが書いたものなの?」と疑ったりした 翌年の春 俺はもう一度みどりに会いに青森に向かった 駅からタクシーで一万円を越えた みどりは「ただやりたいだけなんでしょ?」と言った 二人の関係はすでに壊れていた 次の日、鍵を閉められ 追い出され 俺はギターを壊して どしゃぶりの雨が降る電話ボックスの中で朝まで歌を歌って 東京に帰った。 ---------------------------- [自由詩]特に何もない日/馬野ミキ[2014年8月12日17時51分] 昼前に起きた 妻はiphoneをポチポチ 子供は3DSを見つめている 多分朝からこうなのだろう 子供がまだ自転車に乗れないので無理やり外へ連れて行く 大切なDSの時間を奪われ悲しそうな顔をしている さあお前なら漕げる 行くぞ離すぞ ブレーキをかけて足をつけばこけたりしないんだ 漕げ!とにかく漕げば進むんだ 恐れるなクソガキ!漕げ漕げばうまくいくんだ! 何故諦める? 怪物なんていやしない ただの道路だ 大地だ 何を恐れる!? お前は前に進むんだ! 結局最後には10m弱漕げた 息子も少し自信をもったみたい だが俺は疲れた 帰ってハイボールを飲もう 俺の子供ともあろうものがたかが自転車に苦戦をしいられている なんてこった 俺の子供は空を飛べるのだと思っていた 家に帰ってjazzを聞いた サントリー角のCMのウイスキーはお好きでしょからjazzに傾いた ジャズとボサノヴァの合いの子みたいなのが好き ボサノヴァギターはさすがに弾けないのでピアニカでデタラメなJazzを吹いた そうすると息子も3DSをやめてピアニカを吹き出した 息子の知ってる曲を軽く弾くと僕にも教えて!と 紙にドレミを書く 最初はゆっくりでいいんだ うまく出来なくていい 1つ1つ音を確かめて 少しずつうまくなるよ なんで諦める! ちょっとつまづいだけだで・・ なぜこんなにも簡単に諦めるんだろう お前の好きな曲を吹きたかったんじゃないのか 俺の子供はへたれなのか 白ワインが切れた 妻はiphoneを見つめている おでんの具を買いに行った 帰りに雨が降ってきた 横断歩道でこんにゃくが落ちて少し路上を跳ねた。 ---------------------------- [自由詩]Johnny B. Goode/馬野ミキ[2014年8月12日18時34分] ジョニーは知的障害者 ジョニーに務まる仕事なんて何もない 福祉で食ってるジョニーは大食い ジョニーは家族の鼻つまみもの ジョニーには友達なんかいない そもそも会話が通じないから だけれどジョニーのギターは最高 きかせておくれJohnny B. Goode 若い女たちはどこに行った イケメンを探しに街に行った 日本車に乗って彼らは出かけた 飲酒運転で海に出かけた ジョニーの知ってる女は母親だけ だけれどそんなジョニーを 義理の父親がまた殴るんだ ねえ 最高で最低な メロディーを聞かせてJohnny B. Goode ライブハウスには客なんていない バーテンはカウンターで寝てる たいした時給じゃないしね 睡眠は大事だということには賛成です 世界はぐるぐる回るんだ ハッピーエンドを目指して皆大忙し だけれど俺はジョニーに首ったけ 聞かせておくれJohnny B. Goode ---------------------------- [自由詩]タイトスカートイニシアチブ/馬野ミキ[2014年9月1日13時28分] 刑務所に入りたい 死刑になりたいというのは まだ、社会と関わりたいという意志があるということである この地上で 例えどんなに孤独であったとしても 誰かと関わりたいという欲求は かけがえのない想いであるとおもう 現実の女性よりもアニメの女性がいいという人たちもいる けれどもやっぱり 彼らはカマキリではなく 紫陽花でも二酸化炭素でもなく 所詮、女性を求めているのだ 女性を求めているという意味で リア充とオタクには共通点がある まあ大きな範疇でみれば似たもの同士だ タイトスカートのしわが伸びることはしびれる スーツのルーツは軍服だそうである サラリーマンは現代の軍隊かも知れないな 山手線のホームを行進する タイトスカートのなかに 窮屈そうに肉体がしまわれていることに興奮する 綿が ポリエステルが伸びる ビッグバンが拡大を目指すように 生地は丸みを帯び 今にも爆発しそうだ そんなタイトスカートの女性を追いかけたことがある 都庁方面へと抜けるガードを尾行した なんて素晴らしい尻なんだろう ハイヒールサラウンドが辺りに響いていた ガードを出る頃彼女は俺のほうへ振り返った 危険を感じたのかしら なんと彼女は厚化粧のおかまであった 俺はホラー映画か悪夢でも見ている気分になった そして犯罪を犯さないで助かったなととも思った 俺はUターンし新宿駅に向かった 職務質問され署で悪態をついた パトカーで漫画喫茶の近くまで送ってもらった 俺は興奮していたし瞳孔が開いていた パトカーから降りた時、中国人の女性が二人「あなたはVIPな人ですか?」と近づいてきた 少し遠くで中国人の男たちが見守っていた。 ---------------------------- [自由詩]スマートな星/馬野ミキ[2014年9月1日13時29分] ファミマでTポインドカードお持ちですかと聞かれて 俺は「はい」と応えた そしてつったていた Tポイントカードをお出しくださいと言われので イヤだと言った それからだばこのボタンを押した ありがとうごいますと店員が言った 俺は鮭おにぎりとセブンスターを買った 自動ドアが開かなかった コガネムシが自動ドアにひっかかっていた コガネムシは自動ドアの下で砕けていた 足がちぎれていた ありふれた死 誰も念仏をとなえない 俺はセブンスターにを吸った 都市では煙草が吸える場所が限られていて せまく仕切られた区画で皆が煙草の煙をくもらせていた 火をもった人がそんなに近くにいては危ないと思い俺は喫煙所から少し離れた場所で煙草を吸った 座って煙草を吸っていると女の尻がへ目の前にきて塩梅がいい やがて警備員が来て枠内で煙草を吸ってくださいと注意された あのなかで吸う方が危ないと俺は言った 彼はルールでから言った ルールがなんだよと俺は頭のなかで思って煙草の火を消した 警備船はすばやく携帯灰皿を俺の前にさしだした それは一つの流れ作業にも見えた 路上で寝ている浮浪者が立ち退きを余技される 確かに彼は臭い 浮浪者に足りないねのはたった一つ 水浴びである 苦情がきたのでろあう たかが大地が出世したものだ 座るのべきは椅子 それがコンテンツだ 何もかも小奇麗になってしまった 俺はスマホを見ながら歩いている奴にわざとぶつかった。 ---------------------------- [自由詩]山元よしお/馬野ミキ[2014年9月3日19時01分] ふと視線を感じて振り返るとおっさんがいた うちの家のなかである 知らない人だ こたつでせんべいを食べている 「君はコンピュータばかりしているが何かねプログラマーかね?」とおっさんに言われた 俺は、「いえ、作家です」と言った 「君の本なんてどこにも売ってないじゃないか」とおっさんは言った 一体何なんなんだろうというか ぶしつけな 誰なんだよお前は するとおっさんは「私は山元よしおだ」と言った いや名前とかじゃなくてどういう存在なんだよ どういう関係性なんだよ なんでうちにいるんだよ どういう理由でうちでごく自然に普通にくつろいでいるんだよ そんな怒りの目でおっさんを睨むとおっさんはにわかに消えていった 寂しそうたであった 「ここだって宇宙だろう 関係ないところなんてないじゃないか」 おっさんはそう言って消えた 雨足は強さを増した しばらくすると小学一年の息子が帰ってきた ずぶ濡れであった 服を脱がせ靴と帽子をサーキュレーターで乾かす準備をした 息子は自分で風呂を沸かして湯船で温まった 今ではボタン1つで、まあ2つか 2つで湯がわくのである 風呂から出て息子は3DSをはじめた 息子は学校での出来事はほとんど喋らない。 ---------------------------- [自由詩]Pain in the ass hole/馬野ミキ[2014年9月4日20時02分] 戦争ゲームで熱が入ったのとワインを一本開けたので興奮が収まらず 近所の飲み屋へ おばあちゃん1人でやってる 店舗と家兼ねてる小さな赤ちょうちん カウンターでおばあちゃん店主と延々と話す 白髮のおきれいな方 14歳の時に戦争が終わったこと 長く続いた亭主の看病が終ってほっとしたこと 息子三人になるべく迷惑かけたくないとかね お仕事は? 家で文章書いてるんです まあ音楽では食べていけないので・・ それから7度も入院したこと しまいに、家に上がり込んでこのCDプレーヤー動くの?なんて説明したりした 演歌は悲しくいやよ 学校は同志社で賛美歌を歌っていたの いいですね賛美歌 ゴスペルでもジャズでも今度CD焼いてきますよ 簡単な作業ですから まあライター業は根詰めるような仕事でもないので 最後に残り物のはまぐりの醤油バターを頂いた 少し変だなと思ったが食べ続けた 多分これがあたった 家に帰りセックスしようとしたが下痢と嘔吐が続いた 5分おきに下痢をするのでケツの穴がヒイヒイ言ってる 自分でヒイヒイ言ってちゃ仕方ない ケツもなお割れてくるというものだ 朝になっても頭痛と腹痛が続いた のた打ち回りながらも自分の性欲を感じていた ああ 精子を出したい 昼で仕事を終えた妻がトマトジュースを買ってきてくれた 俺はトマトジュースを浴びるように飲んだ トマトとは相性が良い そしてまた下痢をした トイレットペーパーで拭くとケツの穴が痛いので 風呂場で温水にしたシャワーでケツの穴を流した。 ---------------------------- [自由詩]テロルの季節/馬野ミキ[2015年1月9日9時35分] 猿や猪がふもとの町にあらわれ 人々は大混乱というニュースをみると 俺は猿や猪を応援しがちである へっ 何が現代社会だ きどりやがって 猿や猪一匹登場でこのザマか  とまあ少しひねくれているのか 自分は社会にあまり恩恵を受けていないと思っているのかも知れない であるから 通り魔事件などが起きても同じような気持ちを抱いてしまう 加害者に共感するのだ 20年以上前、バンドブームというものがあり そのムーブメントの真ん中で自分はパンクロックをやりに鳥取から東京に夜行列車に乗ってやって来た 俺はライブハウスに行くかわりに読書をするようになった 新右翼や新左翼、ライヒやフロムを読み社会を変えるにはということを自分なりに追求した 東京のパンクバンドには ライブをして打ち上げをしてセックスをしているだけで 本当に世界を変えようという気概を見いだせなかった 今も池袋駅前で政治演説をしている小さな政治結社がある 年をとってないな 変わってないな元気だなと思う 20年前、雑司が谷の俺のアパートに彼は来たのだ いかにして社会を変えるか 彼と話した だが彼は俺がいかに多くの友達やツテを持っているかを一番に気にかけているように見えたので それ以降会うことはなくなった やがて俺はバンドを組むことをあきらめ 路上で一人で歌うようになる 他人と饒舌なコミニュケーションが取れないのだ ギターの弾き語りにしろ、フォークミュージックが好きでやっているわけではなく むしろフォークはめめしくて嫌いであり それは詩の朗読にしろ、俺にとってそれはテロのようなものであったのかも知れない 2ちゃんねるの殺人予告や マクドナルドをツイッターで晒しあげることも ある種のテロではないだろうか 個人が、システム化された社会に影響を与えうるという意味では・・・ 人間はシステムを作って来たが 自分たちの作ってきたシステムに息苦しさを感じている それを誰か他人に壊してもらいたいと思ってるから傲慢だ 企業の重役が赤ちゃんプレイにいそしむのはそのためではないか そういう奴の指示に従い派遣社員は働く 食品にコオロギが入っていたら 一緒に食べればいいじゃないか 栄養があるぞ てか、お前らはコオロギをなめてんのか? なぜ、まず、コオロギを土に埋めてお墓を作ることをしないのか? ---------------------------- [自由詩]魔法/馬野ミキ[2015年1月28日13時06分] 学校から帰ってきた息子が 窓際で何かしている 覗いてみると、濡れたつまようじを網戸の目に刺し水の膜を張らせている 何してるの?と聞いたら テトリスみたいと言った ゴミも取れると。 なんてたわいのないことに夢中になって素敵だなあ 息子より先に風呂を出る 俺は10分と風呂にいない パソコンの電源消しとくぞーYoutubeのはお気に入りにいれとくからー うん 息子が風呂を出た時まだパソコンの電源はついていた 切れるのに時間がかかっていたのだ なんだ ついてるじゃんと息子は言った 俺はパソコンに向かい魔法をかける真似をした 手を振りかざしエイッ!と言ったらパソコンの電源が切れた 息子は、うそーうそーと驚いていた 俺には2つ下の弟がいた 幼いころ、弟が嘘をついていると思った時に ウルトラ透視光線で見ぬくぞと脅すと 弟はいつでも素直に白状した その当時の弟もいまの息子もまだ魔法を信じられるのだ 息子に種明かしをしてバスタオルで髪の毛をふいてやる テレビではアラブのある国の特集をしていた そこに住む日本人の得意料理はというところで俺は「焼きうどん!」と叫んだ すると本当に、その日本人の得意料理はやきうどんだった これには嫁さんも、当てた俺もびっくり 嫁さんが怖いと言い出した なるほどまだ魔法は生きているようだ。 ---------------------------- [自由詩]死にたいと言うな 助けてといえ/馬野ミキ[2015年2月18日14時36分] 漢字の書き取りをしながら息子が大粒のなみだをぽろぽろとこぼしている 耳という字を書いていた どうしたんだ?と聞いたが俺には言わないらしい その後スマブラをしたんだけど俺の勝ちがちょっと続いたら 息子はかなり取り乱してこたつに潜ってしまった 不安定だな・・ 何か学校で悲しいことが多いのかも知れない だが敢えて楽観してみようと思う あんまり深刻にならずに 弟の写真に手を合わせ目を閉じてみる だけれどもうそこに弟はいない気がする だいたい俺が死んだところで毎年お盆に墓に帰ってくるだろうか 不老不死なんて言葉をたまに聞くが そこまで執着しなければならないほどこの世界は良いところか? 七回忌に鳥取に帰る予定を立てているがまあ母に息子をあわせたいというところが一番強い 夜、布団の中でGyaoのドッキリ動画を観る ドッキリが好きだ ドッキリで食えないだろうかと考える ドッキリを会社の面接に使えないだろうか 人間性が見えるのではないか 朝、玄関で息子を見送る そういえば以前、バイト先の霊感がある奴に ミキさんには狛犬の守護霊がついていますと言われたことがあるのを思い出した 信じているとも疑っているとも思っていなかったが 俺は両手を合わせて 俺の左右にいる狛犬を二匹、息子に憑かせるイメージを抱く あいつを守ってくれと 代々木へ カウンセングを受ける 認知療法をはじめる 例えば俺には階段を降りている時に誰かに突き飛ばされるかもしれないという不安が常にある そんな想像は馬鹿げているという客観性も持ち合わせているが その可能性が0%ではないという事実は拭えない 0,01%可能性があれば俺にとってそれは信じるに値するのだ だがまあ、階段を降りている時に殆どの人はそうは思わない それが認知の差だ 若くかわいいカウンセラーに「なぜ階段で誰かに蹴飛ばされてはダメなのですか?」と言われ 返答に困った そりゃ誰だってそんなのいやだろwww 俺には街で狂人に刺されるという妄想があり 街では常に緊張している だから酒を飲むのだろう あるいは狂人に刺されるくらいなら俺が狂人になったほうがいいのではないかと思ったりする だがそれは逃避だった 俺は自分自身が下品になることによって 世の中の下品から身を守ろうとしたのだ 何もしてないのに通り魔に刺されたり 理不尽な扱いを受けたりする可能性がある世界に生きているという心構えが自分にはないのかも知れませんと俺はカウンセラーに言った カウンセラーはたまに俺の発言に驚く そのおどろく顔がかわいい 付き合いたいと思ってしまう 病院の帰り、 まあ誰かに刺されたり階段で突き飛ばされても そういう可能性はある世界に生きているので致し方無いかなとか少し考えながら歩こうとしたが 大江戸線で傘をコツコツ派手に地面にぶつけながらホームをうろうろしている外人がいて やべーイカれた外人だ刺されるw とか思ったが何事もなかった そうなんだよね たいていはなにもないのだ 薬局に寄る これまたかわいい薬剤師が「大丈夫てすかー?」と言って俺を見て笑う 俺が雨でびしょ濡れだからだ 精神障害者を笑うってアグレッシブな薬剤師だなと思った だって精神障害者って怖いじゃん 急に暴れたりするし意味わかんないし 「夜は眠れていますか?」と言われ「はひ」と言った 本当は夜起きているが、俺が赤裸々に自分を語りだすとこの人も困るだろうと想いもあるし かわいい人が俺に親身だと緊張する 好きにならないように 家に帰り着信のあった母へ電話をかけた 俺と息子の帰郷に興奮しているようだ 甲斐性がなく申し訳ないと思う 息子が生まれた時から会っていない 嫁さんからメールがくる 明日の学校公開、仕事を休んで行こうかなと・・ 息子がいま学校生活で不憫な思いをしていることは俺達にとって共通の重要なテーマだ 別にいじめられているとかそういうことではないのだが 俺の精子から出ただけはあって小学校生活がうまくいかないようだ 俺は、狛犬も飛ばしたしあいつもあいつ自身で問題を解決していける強さを 持たなければならないと返信した 普段なら狛犬のくだりで「何いってんの?おたまおかしいんじゃない」と言われそうだが 「そうだね」という短い返事がきた 母は強しというが俺はそうは思わない 教育を女だけに任せるのは危険だ おたくは女にモテないが日本の女がおたくを育てるのだ 女は、守ることに特化しているがその自覚がない 母親が過干渉な子供は大人になってだめになる だがそれを変えるには男たちも社会も変わっていかないとだめだろうな だいたい得点力のない侍JAPANってどんな侍なんだよ? とか書いてるうちに息子が帰ってきた 雨に濡れている 寒かっただろう 冷たかっただろうと言って抱きしめたら このジャンバーが守ってくれたと言った ジャンバーとは素晴らしいものだ ジャンバーを売っているイトーヨーカ堂は美しい ジャンバーを作っている中国の工場で働く出稼ぎの少女をアカデミー賞の助演女優賞に推薦したい 芸術とはそういった地道な革命作業ではないか 死にたいと言うな 助けてと言え それなら相談にのる 死にたいと言われれば俺は死ねばと思う 助けてと言われればみんなくそったれと思いつつも腰をあげるんだよ 言葉はちゃんと使わないといけないんだ いつか俺が社会的に成功して テレビで素晴らしい歌を歌っていたら カウンセラーや主治医や薬剤師や デイケアの仲間やマンションの住民や 嫁さんの両親が感動するかもしれない さっき小便をしながらそう思った その可能性は0,1%くらいであるがそれは信じるに値する。 ---------------------------- [自由詩]春の小旅行/馬野ミキ[2015年3月2日17時09分] 昼過ぎに起きて洗濯物を廻す ベランダに出てみればまるで春みたいにいい天気じゃないか 家にいるのはもったいない ネットで息子の耳鼻科を検索する 下敷きを無くしたらしいから買いに行ってやらなければ 学校の指定で無地のものでないとだめだそうである 西友は妖怪ウオッチとかしかなかったので 自転車はそのまま停めておいて昨春にオープンした無印まで歩いた ぽっちゃりした女店員に無地の下敷きはありますか?と聞いたら 無いかもしれません ちょっと待って下さいと言われたが 透明のやつがあった 105円だった もう少し値が張るのかと思っていた それから西友まで戻り食材を買いそろえる だしが切れかけていたな ししゃも 108円か 買おう 鮭以外の魚も食べさせなくては それから今夜はステーキを焼こうじゃないか 買うのは一人前だが 3人で分けて食べよう 家に帰り保険証を用意して息子の帰りを待つ が、何だかいてもたってもいられず学校まで迎えに行ってしまう すれ違う小学生たちが何だかどいつもこいつもやたら邪悪にみえる みつけた 俺の恋人 せかいを小さな人が1人で歩いている 息子は俺を見つけると驚きと歓びの表情を浮かべた 息子を自転車に載せる いくぞ 後ろから息子を呼ぶクラスメイトの声が聞こえた 俺たちは振り返らないで坂道を走った 家に帰りランドセルを置かせ耳鼻科に向かう いつもは空いているのだがなぜか客でごった返していた 明日にしよっか うん 俺たちは大根畑を抜ける道を通った 区営の野球場があり「広いね」と息子が言った 一駅行くと前住んでいた町にたどり着くのだが 何だか時空を越えていくような感触がある そこにはまだ生まれたばかりの息子や つきあったばかりの俺と嫁さんが息をしているような気がした 前住んでいたマンションの前で自転車を停める なつかしいね うん ブックオフに寄りそれぞれの漫画を買う プレイステーション3はまったく値崩れする様子がないな さあおうちへ帰ろう 今夜はステーキだ ---------------------------- [自由詩]What a wonderful world/馬野ミキ[2015年7月16日13時22分] ほんと参った てこずって迷って送ってきた この人生 捨てる神あれば 踏んづける神もあった 前髪は後退し トイレの紙にことかいたこともあった 結局最後まで 望むように認められることはなかったよ 俺はNo,1にはなれなかった ある晴れた陽の朝に俺は首を吊った  そうすると神さまがあらわれて最後に言い残すことはないかと言ったんだ 俺はこう言ってやったよ お前は詐欺師の糞野郎だって もう神も仏も幽霊も怖くない これからは俺が神や仏や幽霊になるのだから それこそ 美しい世界だろう 引力に鎖のようにつながれて もう 奴隷みたいに地べたを這いつくばって生きるのはごめんだ そう言ってまぶたを開いたら 目の前で神さまが死んでいたからびっくり ワンダフルワールド お前が死んだら  これから誰が世界を造っていくというんだい 俺は死ぬことをやめて酒を飲んでる。 ---------------------------- [自由詩]ALL OF ME/馬野ミキ[2015年7月16日13時45分] ねえ 君 ぼくを地球に 一人ぼっちに 置き去りして どんな気持ち? 街は忌々しい地球人に溢れ 手におえそうにない 毎日テレビを見て自分をおかしくさせなくちゃ やっていけない ぼくは地球人のようになるために 努力してる 洋服を着たり髭をはやしたりしてね ねえ そろそろサイコキネシスが通じなくなる  君は円盤に乗ってどこに行ったの? 一番大切なぼくを置いて あの時 地球に行ってみようだなんて 冗談かと思った あんな誘いにのるんじゃなかった ぼくはきみにふられたんだね かなしいよ ---------------------------- [自由詩]鳥とテレビ/馬野ミキ[2015年7月21日11時46分] ぼんやりとニュースを眺める オナニーを終えて暇だからである ニュースは、事件と事故がばかり放送する あとは天気か つげ義春の漫画に出てくる朝鮮人の李さんは鳥語が話せるが それでも鳥は脳が小さいので餌の話か天気の話くらいしか出来ないらしい 人間が天気の話をしている時 俺は鳥について思い出す どこかで誰かが1人死ぬことよりも、 今日港区の堂島さんの意識が格段に拡大したというようなことのほうが宇宙にとって大きな出来事の気が 俺にはする。 メインキャスターは毎日深刻な顔をしている 女はその横でそうですねと言ってる 大きな事件がない時は小さな事件を一生懸命探し出して 毎日深刻な顔をしている それが仕事なのだ 台風が来れば喜んで現場のレポーターは一番雨風の強いところに出向き ヘルメットをかぶって今にも吹き飛ばされそうな演出をしている 毎年、観測史上まれに見る天候に見舞われている きっとたいしたことを観測してこなかったんだろう 俺は寝転んでけつをかきながら彼らを見ている 仕事をしていない俺が仕事をしている彼らを毎日見ている そう 彼らは金を稼いでいるのだ なぜなら俺と違って彼らは仕事をしている テレビを見ているだけの俺は金をもらえない テレビを見ることはバカにでも無能にでもできることだ テレビを見ている人間を見ているとたいてい馬鹿か無能に見える 俺はさきいかをしゃぶりながらリモコンを押す オナニーを終えもう今日することはないのである 俳優、歌手、アイドル、アナウンサー、落ちぶれたタレント、一発屋 様々な人が仕事をしている 皆、金を稼いでいる 鳥は空を飛んでいる 俺は何もしない。 ---------------------------- [自由詩]ツタヤにて/馬野ミキ[2015年8月4日21時25分] 昼過ぎに悪夢にうなされて目覚めた つけっぱなしのクーラーでのどを痛めていた そのままソファに寝転がりテレビを見ていた テレビに文句をつけながらチャンネルを変えていく まるでパソコンの前に座ることさえ面倒くさいではないか 甲子園の鳥取城北は二回戦からの登場で初戦は山形の鶴岡東に決まった これはおいしい相手だ 相手もそう思っているだろうが・・ 少し印税が入ったのでコンビニで公共料金を払い あまりに暇なので自転車でツタヤに行った 何かホラーと、アダルトビデオでも借りてみようかしら 段差の激しいバス通りを避け裏道を走る モスバーガーの角を左に折れる モスバーガーを食べることさえ困難になってしまった 前歯がぐらついている 早く抜ければいいのだが 監視員がいないかどうか様子を見て自転車を止める しかし旧作はラインナップが悪い 仕方なく準新作から選ぶ これはそんなに新しくないはずだが・・ アダルトコーナーにいる時に女子店員が来た どんな気持ちで彼女はこの仕事をしているのだろうか 女子店員が棚に戻したDVDを血気迫る感じで素早く取り出してみた 女子店員は「ひっ」と言って俺の顔を見て「失礼しました」といいどこかへ消えてしまった 俺はそのDVDを棚に戻し他の作品を借りた レジに行くとTカードが期限切れで使えませんと言われた 俺はレイプという作品を手に持ちながら更新しますと言った それから身分証明書はお持ちですか?と店員に言われた 俺がここにいることが最高の証明ではないか 俺は店員の胸ポケットからサインペンを取りカウンターに自分の名前を書いた 自分の名前の横にレイプを起き、家に帰った。 ---------------------------- [自由詩]模造刀/馬野ミキ[2015年9月18日11時26分] 模造刀を作業着のズボンの中に仕込む 上着でさやを隠せばほとんど分からない 通りに出るがタクシーが捕まらず雨の濡れ駅まで歩く 途中嫁さんからメールが来るが返信せずにおく 返信すると決行への態度が変わってしまうからかも知れないからだ 歩くと駅までは15分ある 今思えば自転車で行くという発想はなかったな 本当に行くのか?やっちゃうのか? 何度も自問自答するが、いっちまおうというのがその時の俺の答えだった 模造刀とはいえ、刀を持って街を歩くのはスリリングだ ところが雨のせいか駅でもタクシーが捕まらなかった なんということだろう 池袋線に乗り練馬に向かう 本当は森元首相が効果的だと思ったがネットでMR-DESIGNの住所が分かったのでそれでいいやと思った 審査委員も組織委員も森会長も佐野さんも記者会見をしない マスコミも追わない もう一度この事件を表沙汰にする必要があった デザイン界をはじめとする日本の美術界、官僚、政治家、企業、ヤクザたちの利権と癒着 この問題には改革すべき古い日本の体質が凝縮されているように感じた これが俺の仕事だ 練馬でタクシーを拾う スマホを見ながら住所を運転手に伝える 雨が降っていた ニュースで沢山の報道陣がいることは知っていた 豊田商事の事件や、大義の為に己を犠牲にしてきたであろう先輩方を少し思い出した 多分MR-DESIGNには人はいないだろう 模造刀を持つということは人を殺す意図がないことを意味したかった 審査員たちはマスコミから逃げているという 責任者は不在のまま次のエムブレムが作られるのだという この問題はもう一度表舞台で明るみになるべきだ タクシーは渋谷の神宮寺で停車した ネットで見たMR-DESIGNのビルが見当たらなかったのでうろうろした どこかに報道陣が陣取っているはずだ 報道陣に事務所へ案内させて模造刀で扉や窓を破壊しようと考えていた それがテレビに出ることを ニュースになることを 誰かが警察を呼ぶことを そしてこの罪はそれほど重くはないということを計算していた 家族はばらばらになるかも知れない だがお父さんはこんな仕事しか出来ないのだ ムショから出てきたら新しい世界が待っているだろう もっと俺に似合った気楽でストレートでその日暮らしの世界が ネットで見ていたMR-DESIGNのあるビルにたどり着いて驚いたのは 報道陣が1人もいなかったことである 計算外だった 俺の存在はその場で崩れそうになった ---------------------------- [自由詩]西暦3000年/馬野ミキ[2016年1月21日14時19分] 沈黙を恐れるということは 実は伝わっちゃっているということを薄々知っているからではないか そういう意味でこれからSNSは廃れるだろう 人々は自分たちがテレパシーを使えるということを それが自分たちの利益にならないという思い込みによって無視し続けているのではないか 超能力のようなものは存在する だが他人にそれを証明したい、信じない人たちを屈服させたいという想念は 超能力の発動条件にみあっていない アスベストの健康被害と同じように コンクリートやアスファルトの健康被害はある タワーマンションは壊れる オートロックは危険 厳重に鍵が閉められた場所を選んで不安と恐怖はやってくるものだ 1200万円する超高性能のセックスアンドロイドで射精した後には 想像を絶する絶望感に襲われる 資本主義でも社会主義でも共産主義でもないシステムがある アイドルやアーティストという存在は1000年後 誰もが必要なときには瞬間的になれるようなものであるし だいいちそれほど執着するような現象でもない お金に執着することにより 多くの不利益を受けていることに人々は気づく 人々はもっと楽に楽しく笑って生きる 人々の職業は現代社会において固定的である 一週間おきにそれぞれの人間の職業が変わるくらい流動的であってもよい ルールは減る あなたは素晴らしい 安定とは? 変化し続けること 新幹線に乗って早く遠くへ行く必要はない インスタントラーメンは3秒でできあがる 高さによって低い人が見下され 深さによって浅い人が劣等感を感じるのならば そういう概念は将来的に必要ないだろう 俺はもうとっくにパリで朗読をしてきた 2025 SMAP問題は俺のせいでもある ロボットが人間を襲うということはない だがロボットが人間を襲うというストーリーを人々は好きである 俺は真実を知らない これらは比喩である クオリティーの高いものを作りなさい そしてそれで金をとるのをやめなさい 夢をもちなさい いっさいの他人に期待することなく 破壊してもよい 批判しないなら 出会いは素晴らしい ?日違う女とセックスしなさい あなたがとても素敵なプレゼントをもっている場合 相手のポケットにどれくらい入るかを考えなさい ---------------------------- [自由詩]ホワイトホールの黒い鳥/馬野ミキ[2016年1月27日13時57分] 怖い 社会が怖い なんかすげー怖い 家をでるときドキドキするのでもう一回おしっこにいく 玄関の扉を開けるとき、不安になり尿漏れする 外にキチガイが居て明日殺されるかも知れない 日付が変わった瞬間に 或いはカラスが飛び込んできて俺の目を刺すかもしれない カラスは知的だという 俺たちは自分たちの知的さ加減の範疇にはいるものだけを知的だと認めるので 誰かがあの人はセンスがあるとツイッターでつぶやいたり あの人は粗暴だけど実は愛があると思い出横丁で言うことを若干シラケてみたりする だが基本的にはこれらは蟻の妄想であり 99,99% 俺は起こりえないことに怯えてた なぜならキチガイもカラスもアリクイもまた俺に怯えたからである 俺は扉の鍵を閉めるとき いつも緊張している なぜなら鍵穴にうまく、鍵を挿さなくてはならないからだ 鍵穴に上手く鍵をさせない人間は馬鹿にされて生きることになる そんな人間は社会では通用しない  ビジネスは厳しいものだ 自分で自分の部屋の鍵を閉められない人間はそっと捨てられる そっと捨てられるところが人権なのである ビジネスとは厳しいものだ 鍵穴に鍵を入れることにいちいち緊張している人間は あなたはセックスが下手ねと言われるだろう どれがちんこでどれがマンコなのかがわからない人間は永遠にセックスできない いつか女は男を見下したが 男はそれよりはやく女を見下した そして別々の部屋でアニメをみて sftbankやauのCMの続編を楽しみにしてた つーか、日本人の1/3は離婚しているようであるので 親が別れても子供たちが幸福になる制度を作りたいと思う まともに扉に鍵をさせない人間は痙攣しているので監視カメラに録画される それらはフォロワーたちにより共有され名前をつけて保存される そうしてわたしが地域社会で馬鹿にされることになると 俺の息子は学校でいじめにあうだろう あの無邪気なかわいい人が集団でいためつけられる 息子の貯金箱からお金をくすねている父親を、上目遣いで信じているかわいい人が集団の一致で殺される ああ 一体何回殺されれば みんなは許してくれるんだろう 家を出ると緊張してエレベーターで違う階を押してしまう 何階に何があるのかがわからないので着いたところで降りてしまう 着いたところに降りるというスマートさを身に着けたくて毛穴から汗が出てしまう なぜなら着いたのに降りない人は、スタートとゴールをわかっていないと思われるからである そのような分別が必要である 分別というのものにより誰もが宇宙の全体像を捉えられないのだとしても・・ 廊下ですれ違った知らない人に「ここも銀河ですか?」と尋ねると その人が隠し持っていたハンマーで前歯を折られたので萎縮して部屋に帰った しばらくしてから、隣人にハンマーで前歯を折られたと交番にに行くと あなたのほうが怪しいと言われ逮捕された 服を着ていなかったからである。 ---------------------------- [自由詩]もこみち/馬野ミキ[2016年6月9日16時46分] ニコニコ生放送で若い女の子が踊っている 肌を露出すれば一定数のファンは獲得できた 男って単純 八ヶ月後彼女は望まない子供を妊娠する ビッグエコーでカンパリオレンジを飲み過ぎたのだ 自分の肉体の中に生命が宿っているというある種の特別な感覚は男にはわからないだろう 望まぬ生命であるとしても我が子いとし それから彼女は男を軽蔑して生きた 彼女は生主からヤクルトレディへとジョブチェンジを果たした 太陽の下、アブラゼミが鳴き止まぬ坂道を駆ける  ヤクルトミルミルを坂の上の山口さん宅に届けるために 日本に住む子供の1/6は貧困状態であるそうだ 少なくとも俺にはアベノミクスが何なのかわからない 日本企業の内部留保が何兆円あるのか その仕組もよくわからない 中卒だからかも知れないが・・ 自分がしてきた人生の失敗を繰り返さぬように 彼女は息子を教育する いや、洗脳するのだ 幼い子供は一方的に両親を受け入れるしか無い 彼女がそうであったように 生活に苦しんだ彼女はその子どもに学歴と安定した収入が得られる大企業への就職を望んだ また彼女の日常的な男性不信は少年の人格形成に多大な影響を及ぼした 少年はその思春期に自分の男性性を否定し歪んだ 歪んだオナニーをするようになり高校を途中でいかなくなった 彼女はヤクルトをやめて駅から少し離れたところにあるスナックで働くことになる 子供を育てるのにはお金がいる そして教育とは母性だけでは破綻するものだ 熟女専門デリヘルの面接には行ったこともあったが出勤初日に房総の海に行った 砂浜を裸足で歩いた それは彼女の最後の乙女心である それから息子が家庭内暴力を振るうようになる 彼女はベストを尽くしたはずだった その夜スナックに来た初見の客と寝た その男の寝顔が自分の父親に似ていて思わず笑ってしまった 夜明けにシャワーを浴びながら一寸泣けたが無理やり低い天井を見上げた 天井には銀河のかたちをしたシミがいくつもあった このシャワールームでどれだけの男と女たちが何を思って一人の時間を過ごしただろう 彼女は次の日から女をやめた 下世話なおばさんになった 速水もこみちのファンになったのだ。 ---------------------------- [自由詩]共有しないフォルダ/馬野ミキ[2016年9月12日5時39分] まずインストールしない そして絶対にログインしない 一度ログインしてしまえば それは、死を意味する きみはあたまが悪くて パスワードをいっぱいおぼえられないから 体中にパスワードの刺青を彫っているよね 痛かったね 刺青を彫るのは I LOVE YOU めぐ だけれどいつかめぐからmailが来て 一ヶ月後にサービスを終了しますって言うからびっくり ぼくたちは驚いて返信するけれど そのmailアドレスは送信専用だから 誰の言葉も届かないんだ めぐなんて人間はいなかった セックスアンドロイドの次に 殺されるアンドロイドが発売されて 彼には命がないから みんなが殴ったり蹴ったり好きにする 子どもたちは授業が終わったら 殺されるアンドロイドを殴ったり蹴ったりする 先生たちは職員室で 殺されるアンドロイドを殴ったり蹴ったりする 会社員は仕事が終わって一杯ひっかけた後に 殺されるアンドロイドを殴ったり蹴ったりする 彼には命がないから みんなが殴ったり蹴ったり好きにする 実際統計では、いじめの数も減ったし 大人たちのストレスも減ったって 自殺したい人間が殺されるアンドロイドを駅のホームから列車に投げる ウソの血が飛び散ってみんな笑う 中央快速はそのまま走り続ける ああ誰も傷つかなくてよかった みんなですっきりしたからすっきりボタンを押そうよって わーい ---------------------------- (ファイルの終わり)