露崎 2008年9月30日1時08分から2011年9月1日19時14分まで ---------------------------- [自由詩]ワーク/露崎[2008年9月30日1時08分]  いつも果物をならべている  腐ったものはないか確認しながら  ひとつひとつのウマさが  きわだちゃしないかと  あわよくば  そう考え  数秒後に忘れる  これは仕事だ  胸にはバッジを張り付けている  そこには俺の名前がある  たたずまい  というものがあって  どうにも  違和感ばかりただよう  そういうネームがプレートになってる  お金が  山のようにあれば  果物パーティでもしたい  ネームのプレート達と談笑して  グレープフルーツをつまむ  で、数秒後わすれる  これは仕事だ  わすれるな  これは仕事だ   ---------------------------- [自由詩]死にぞこないの朝/露崎[2008年10月5日14時24分]   昔からの友人が   タバコをやめることにして   最後の一本を吸った   けむりだ   僕は朝方のベランダで   でたらめなCMソングを歌い   世界のはじまりを祝福した   一日があっというまに   終えてゆく最近の   言葉はさびしい   ずっとあったようなほのかな熱が   正常に戻っていく、   ような日々に沈んでいる   タバコはやめたほうがいい   友人は放り投げるように言ったあと   毛布を奪い取って眠った   それはそうだ   やめたほうがいい   たくさんのことを   やめたほうがよかった ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]ショートレビュー・サンデー/露崎[2008年10月5日20時18分]  サン/アローン  石畑由紀子さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=167647 10月5日に読んだ。  おもしろい。短い詩のいいところは、みじかいところだ。詩は比喩や、普段はあ りえない言葉の接続を連発するので、それを受けとめて想像するのには、わりかし 集中力と根気がいるとおもう。「サン/アローン」も想像を刺激しようとするタネ があちこち仕掛けてある。そのかわり全体の分量はすくない。そのへんのバランス がちょうどよくて読むのがきもちよかった。  男と女が夜、それぞれの場所に向かって分かれてゆく。ただそれだけの場面を、 作者はこの詩にせざるをえなかった。ということを考えると、がぜんキュっとせつ なくなる。冒頭、2行が意味ありげにあって、これが想像の行き場をひろげている ところもいい。なんなの。どうなっちゃうの。というはじまり。よかったです。  ひとつの車輪が回っていった  こもんさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=167105 10月5日に読んだ。  読んでファンになった一作。思いあまって他の詩にもおすすめポイントを献上。 どれも素敵ですが、本作のたどたどしさはとてもいいです。頭のなかのイメージを 表現するとき、流暢にかたられているのを見て、こいつはすごいな、とおもうけれ ど、それって本当にあなたの頭にあることなの?といういじわるな気持ちになるこ とも、けっこうある。  ほんとうはもっと支離滅裂で、断片的で、安易で、無防備なはず。ただ、それを そのまま加工しないで伝えるのはしんどいし、危ういんだろうなとおもう。それに たぶん読んでも意味わからない。  この詩は、そのあいまいかつ不確定なイメージを、なるべくそのまま、伝えよう 伝えようとしてる感じに見える。そのもどかしさ。そこがねー、ぐっとくるのよ。 なんか他人のことがわからない、その感覚に似てる。絶望的に他者がわからない。 そのむなしさ。でも、なんとかわかろうとするじゃないぼくらは。徒労に思えるよ うな日々のなかに、希望をいだいてもいいのかな。と思えるところがいちばんよか った。  見舞い  たもつさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=166109 10月5日に読んだ。  家族のだれかが病をわずらう。そのときから、胸にずしんと重いなにかを詰めこ まれてしまう。この感じ、とてもよくわかる。祖母の介護に必死だった母の姿をぼ くは見ていて、そのやりきれなさ、ゆきばのなさはひとことではちょっと表現でき ない。人が死ぬ。というのは、触れてしまうと本当に重たい。だからこそ、軽く人 が死ぬ、ばたばたと人が死ぬ。そんな映画を見ると、嬉しい。その感覚、その弱さ。 そして、それすらも認めてくれる存在がいる。  見事な配置だなぁとおもわずうなってしまう詩だった。あと、何気なく「〜〜死 んでいくのが嬉しかった」と表現しているけれど、わたしだったら「楽しかった」 という言葉を選んだとおもう。「嬉しかった」とするだけで、何かを確かめている 感じがしてさびしい。「夏の終わりに蝉が鳴かない」という1行なんかすばらしす ぎる。隙のない鋭い詩だとおもう。 ---------------------------- [自由詩]ダイアリー/露崎[2008年11月14日1時54分]      やせぎすの背中が   たぶん好きで   ぼくは隣にいることが   もったいないような   そんな気分を抱えたまま   あなたとセックスは   できなかった、という   泣ける話があり   泣けない今があるようだ   美しい日々は   すべり落ちるように消えて   思い出されるすべてが   確実に劣化していく   どうして死ぬと悲しいんだろう、とか   関係のないことを考えながら   たばこをゆっくりと吸った      あなたが好きだった       ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]ショートレビュー・サンデー 2/露崎[2008年11月23日0時43分]  曖昧な輪郭をなぞる  ゆうとさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=171540 11月22日に読んだ。  いろいろ詩を読んでみて、ひねりにひねった言葉もおいしく食べられる身体にな った。とはいえ、素直な言葉で書けばええやないの。とニセ関西弁をつかいたくな ることも多い。  とても素直な詩だとおもった。でだしなんかすごくキュートでなんのかざりもな い。「ほんとうはこんはずじゃなかったのに、」そうだよな。もっと正解があった よな。という、恋愛でいちどはかならず経験するあの感じ。その独特な空気をしっ かりつかまえていて、陳腐さをぎりぎりで回避しているとおもう。最後のひかえめ な希望の持ち方もよかった。「ぼんやりだけど そう思ったのです」これがあるだ けでなんかこう、切なくなる。素直になることを怖がらず、抑制のきいた良い詩だ とおもいます。恋っていいよねー。    おちんちん  イシダユーリさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=171442 11月22日に読んだ。  意味を追うととんちんかんな解釈をさらしてしまいそうでなかなかむずかしい。 イシダさんの詩は好きで、この縦に長い特徴的な様式の魅力はなんなのだろうか。 なんてよく考えます。たくさんの改行の中で、急にパワーのある言葉が出現する。 「谷川俊太郎」なんてちょっとびっくりするくらいなパワーだとおもう。まあ「 おちんちん」もだけど。そういう強弱が怒涛のように上から下へとつづいていくか ら目がはなせなくなってしまう。それっぽいことばであらわすとグルーヴがあるの だとおもう。  そんなうねり感にのせて『ほんとうのこと』へ激突する。人が避けて通る、目を そむけてしまう、あるいは気がつくことのできない、そんな『ほんとうのこと』を 言ってしまうし、挑みかかる。ちょっとおちょくるユーモアもある。この詩はそん な詩だとおもいます。やっぱりとんちんかんになってしまった。反省。  スーパーにて  吉田ぐんじょうさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=171257 11月23日に読んだ。  あまり本作とは関係ない話。現代詩フォーラム界隈をあるいていると、だいたい このひとはこんな詩をかくよね。ということがわかってくる。それが「作風」とか 「個性」とか「オリジナリティ」と呼ばれるものだ。そういったものをうまく武器 にできる人はだいたいみんなおもしろい。仮にそのような人たちを「アームズ」と 呼称してみるのはどうだろう?漫画みたいでかっこいいでしょう。  わたしのセンスを疑う声が画面のむこうでささやかれていますが、吉田さんはじ ぶんの武器をしっかりと持っている方だとおもいます。物語的な様式にそって詩情 たっぷりのシークエンスを見ることができる。特別、詳細な描写はないのに映像的 です。「これは嘘だろう」とおもうようなひっかかりを取りのぞいているから、ス ムーズに想像できるのだとおもう。スーパーにカブトムシですよ。あるよなー、そ ういうの。他の一画には、布団とか絶対売ってる。花柄の。よかったです。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]ショートレビュー・サンデー 3 年末版 /露崎[2008年12月22日4時32分]  「ショートレビュー・サンデー」略称SRSの年末版です。  2008年の印象にのこった現代詩フォーラム内の詩をふりかえったり、つれつ れとおもったことを書きます。  2008-02-08  アースシャイン  夏野雨さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=147713  詩は「なんか感じているんだけど言葉にできないあの感じ」を言葉で表現するか ら(代弁してくれるから?)エキサイティングなんじゃないかな、とおもいます。 「おのおのがひとしく生まれ持った孤独」という一節にはその醍醐味があって、す ごくおもしろかった。わたしがわたしであること。それはそれだけでどうしようも なく孤独で、だからこそ引かれ合う。そんな人間の関係性を、見事に月と地球でた とえているとおもう。  夏野さんは1年間、ほどよいペースでたくさんおもしろい詩を読ませてくれまし た。ちょっと心配なぐらい、バランス感覚が抜群で感心してしまいます。感謝。  2008-03-18  軽さへのあこがれ  佐々宝砂さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=151410  全体の分量がこれ以上ないほど最適で舌を巻いてしまいました。表現したいこと があって、それを書くとき。そのテーマにふさわしい長さや重量というものがある とおもう。その最適な感覚こそがじつは詩でいちばん大切で、むずかしいことなの ではと感じて、興味深かった。  おもわず息をとめてしまうような1連目もまたすごい。とりたてて派手な言葉で はないのに、鮮烈です。いろいろなものがつまった14行で、くりかえし読みたい 一作だとおもう。  ■ 詩のジャンル  ところで、詩には細かいジャンルが名づけられていない。音楽では「プログレ/ メタル/スラッシャー/ドゥーム/フォーク/フォークトロニカ/エレクトロニカ /パンク/シンフォニック・パンク/ポップス/アリーナ・ポップス/……」とい った連想ゲームができるほど名称があふれてます。  「現代詩」と「ポエム」というような大きなジャンルはある。という説はよく言 われることですが、やはり突っこんだ細かいものはなさそう。すぐにでてくるのは 「散文詩」「定型詩」ぐらいでしょうか。  ラベリングされることによって、いやな気持ちになる、窮屈と感じる。そういう マイナスが詩にはあまりない。それはいいことのようにおもえる。でも、ほとんど 読み手のわたしとしては、目安が数えるほどしかなく不便です。詩という創作は読 者に不親切である、という欠陥があるとおもう。  現代詩フォーラムでは、ポイントが目安として機能している。それにも賛否あっ ていろいろめんどうなことになっています。大変だ。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]SRS4 ルアーズ/uminekoさん/露崎[2009年1月20日0時26分]  2008-11-25  ルアーズ  uminekoさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=171822  魚に似せられてつくられたルアー。本物の魚を釣りあげるため、ルアーは川を (湖を)泳ぐわけですが、そこに詩情を見いだすところがすごい。にせものとほん ものの邂逅を見事に描き出しているとおもう。  uminekoさんの詩はどれもすばらしくて、去年はよく読みました。やはり短いのが いいとおもう。短さはそれだけで長所だと痛感するこのごろ。長さでごまかせない し、短いなかでインパクトも与えなくちゃならないからハードルは高い。けれど、 それを軽やかに飛び越えてそんな苦労をみせないところがとてもすてきです。  この作品でもちゃんと印象的な部分をつくって読者を楽しませてくれています。 「哀しみに似た」で終わる最後のフレーズなんか、快感すらともなうほど。口ずさ むと抜群のリズムであることも注目したいです。 ---------------------------- [自由詩]それだけ/露崎[2009年1月24日23時05分]  呼吸を取りに帰る  瞬いてしまうまぶたみたいに  あらがえないこともあるのだった  息をひとつ  死んだ誰かへ  捧げるわけでもなく  そこに酸素があるぜ、  ということ ---------------------------- [自由詩]クリスチャン・ベイル/露崎[2009年3月8日0時18分]  おととい  バイトを終えたあと  たばこをぐだぐだと吸ってから  そろそろ冬が春へと切りかわりますな、と  ひとりで会話して  お茶を買いまして  地下鉄へ向かい  すべりこむ銀のやつに身体をほうりこんだ  どれぐらいの速さで生きれば  君にあえるのか、と  ひとりでパロディーをして  目をつむってそれで終わりだ  ずっとこのくり返しが  行われていたはずで  悲しいけれど  半笑い  みたいな感覚  かぎりなく薄く  スライスされた肉片  それから  キリスト ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]SRS5  からだ/C子さん/露崎[2009年3月9日3時59分]  からだ  C子さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=179260  わたしとあなたのいろいろな意味での勝負を、からだになぞらえてつづってある詩で すが、これがけっこうおもしろく読めてよかった。冒頭の畳みかけもセンスがよくて続 きを読みたくなるつかみになっているとおもう。「せなかは使わなかった」とか名フレ ーズ。  どちらかというと、詩的文法にきちんと沿った作風だと感じました。たとえば、わた しとあなたの対比で進む展開。「せなか」や「ちぶさ」といったキーワードが順々に登 場して、新たにでてきたワードがどこかに接続される。構造的にきれいに整理された印 象でとても読みやすいです。逸脱したり飛躍したり、いくらでも複雑にできそうなのに しないところがすごくいいとおもう。  男女のちがい、というものはたしかにあってそれに僕らは悩むし苦しむ。でも、苦し む価値があるからこそ僕らはだれかを愛す。そういう苦闘の原始的な美しさがうまく表 現されていてよかった。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]SRS6  フリーワールド/田柄さん を読んで/露崎[2009年4月5日6時07分]  フリーワールド  田柄さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=182511  田柄さんの新作。毎回、こんなことも表現できるのか。と驚嘆するし、意欲的な作品 を続々と生みだしていてすごいなあと感じていたのですが、今回もすごかった。世界の 本質を鋭い筆致でえがきだしているようにおもいます。私は読んで、いろいろなことを 考えてしまって、ちょっと胸がいっぱいになってしまった。長くなるけど、以下にかん がえたことを書きます。  この世界は自由で、自由すぎていやになることがときどきある。人間ってほんとうは 自由をおそれているのではないか。おそれているのに、どうしようもなく魅力的でしょ うがないのが「自由」なのではないか、とおもう。  この自由という脅威からなんとか逃れるために、人は規範を求めルールをつくった。 人を殺してはダメだし、他人のものを盗ってはだめ。そして、そのルールを守るのも自 由だ。けれど守らなかったら罰するよ、というルールをさらにつくった。規範が規範を 生み自由な状態からわたしたちは遠ざかってゆく。自由はこわい。なにをすべきか、な にをされるのか、なにがおきるか。なにひとつわからなくなってしまうからだ。  とはいえ、自由は欲しい。世の中には、不自由であふれていて、こんな常識なくなっ てしまえばいいのに。とおもうことなんてしょっちゅうある。身分や国籍、さまざまな しがらみから、たくさんの問題がおこる。そんなニュースがながれるたび、ままならな い世界だなあと感じる。  でも、本当はうすうすみんな感づいているのだとおもう。今ある規範が自由の上に成 りたっていることを。ある日、突然、秋葉原で事件はおこるし、ある日、突然、ビルに 航空機は突入する。それは、自由だからだ。規範というものを度外視して、自由にふる まったからだ。なにかの動機や信念に突き動かされていても、基本的にはそれが自由だ から起こった。わたしはそんなとき、自由は、カオスはこわいと感じる。  そして、それでもなお自由を欲する自分を抑えることはできない。だれかが好きかも しれないあの子と、わたしはなんとかおしゃべりしたりデートをしたいとおもう。そう いう気持ちは自由だ。けれどもしかしてあの子はべつのやつを好きなのかもしれない。 わたしのことがきらいかもしれない。それも自由だ。    わたしたちは、様々な自由の元に生きる。生きることは祈りに似ている。叶えられる か、叶えられないかはわからない。あの子がだれを好きになるか、ぼくは何になり、ど う死んでゆくのか。なにひとつわからない。そのどう転ぶかわからない感じが、祈りに 似ているとおもう。  ということを、わたしはおもったのだ。すくなくともこのぐらい書いてしまうぐらい の力がこの作品にあるので、ぜひみなさんも読んでみてほしい。すごい! ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]SRS7  すべて取り違えてみた声と体/水町綜助さん/露崎[2009年4月26日10時20分]  すべて取り違えてみた声と体  水町綜助さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=183643  このぼんやりとした読後感が妙に心地よくて、おもしろい詩でした。タイトルからも う、内容をそのまま鵜呑みにしていいのかまよってしまうのだけれど、そういう翻弄され ることがけっして不快ではないラインでふみとどまっているあたりが、水町さんのたくみ なところだとおもう。  なんとはなしに、ふとあのときのことを思い出したりとか、わけもなくだれかの顔が浮 かんでくるとか、日々を生きていくなかでたまに遭遇するあのぼんやりとした感覚によく 似ています。思考をなぞると、こんなかたちになるのではないか。とおもわれるような詩 で、なつかしいような不思議な気持ちになりました。  やわらかで丁寧な語り口がこのうすぼんやりとした印象のひとつをかたちづくっている ようにおもいますが「あすの朝をまちな」で、どきりとさせられる。緩急や強弱をさらり と忍ばせるあたり、見事だなとおもった。ほかにも「ぼた 音もなく土煙」付近での反 復、「*」によるシーン変更など、ありがちなんだけれども実は高度なわざなんじゃない かというものを織り交ぜてあって、すごいぞと感じました。  フレーズでは「その午後は全てでっち上げの15:30でした」のところ。それまでの ひかえめな可笑しさが、すきっと上品なかっこよさでおさまってしまう一文だとおもう。 それと「ヤマカガシは咬む蛇だった… 毒も飛ばす…なんてことだ…」の2行は本文と、 はなれた場所にあって、それがまんがのふきだしのようで新しく、ぐっときました。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]SRS8  醤油/たもつさん/露崎[2009年6月16日9時17分]  醤油 たもつさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=504  われわれは忘れる生きもので、忘れていくからこそ、生きていけるという面があ る。けれど、どうしても染みついて取れないよごれのように、良きにつけ悪しきに つけ忘れることのできない瞬間や物事があるのだとおもう。  たもつさんの2003年に投稿されたこの作品ではそういった人間のありふれた性質 のおかしさ、悲しみ、が鮮烈に描写されていて、すごくよかった。醤油を飲みすぎ ると死ぬらしい。というのは、わたしも小さいときに聞いて、興奮したものですが まず、そこに着目できるところがすばらしい。そういった一見なんでもないような でもへんてこりんだったり、魅力的なモチーフをみつけることは、作品をつくる上 でとても大切なのだとおもう。  また、コメント欄に「醤油以外の調味料だと感じないかも。醤油だからこそ。」 と記されていますがたしかに!とうなづいてしまった。醤油のたたずまいというも のがあって、あの塩辛い、けど舐めまわしたくなるような濃い黒の液体。「醤油の 海」なんて表現からも日ごろから醤油を偏執的に観察しないとでてこないものを感 じて、たもつ氏の食卓を想像してしまう。きっと好きなんだ、醤油が。  他にも「佐藤君」などにみられるリアリティはすごいなと感じた。顔は知ってい るし、話したこともある、深くはしらないけれど、でもどことなく苦手。そんな相 手を意識してしまう感じ。じぶんにも覚えがあって興味深い。トイレとかで偶然会 ったりすると「おう」とか挨拶して、すぐ出ていくような。そんな空気感が封じ込 められていてよかった。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]ショートレビュー・サンデー(再) 9/露崎[2009年9月5日5時24分]  君から電話が来なくて重要なロックバンドが生まれる/餅ヴィシャスさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=23847  カッコよすぎ!しびれまくった。Fuccccccck!と心の中で何度もシャウトしながら読み直 しました。この詩の男子度はかなりのものだとおもう。男の子ならだれだって、バンド組 んで世界を震撼させたいものですが、その序章といった雰囲気がすごくよかった。カッコ よさの法則としてひとつあげることができるのは、ユーモアを用いることだとおもう。ユ ーモアを混ぜることで、濃淡、緩急がでてくる。この作品はそれがビシッと意識されてい てぐっときました。この強烈な疾走感。いやあ。  海溝/カンノナツミさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=189520  先日、「海のエジプト」展を見に行きまして、海底にはまだまだお宝が眠ってるんだ。 と胸を躍らせたわけですが、そういういやらしい気持ちを一蹴するような、美しい詩だと おもった。膨大に積み重なった時間、というのは想像するだけでなんだか静謐な気持ちに なる。わたしって、すごくちっぽけ。とおもった。  ■ 探し方の工夫  現代詩フォーラムで、おもしろい詩をたくさん読みたいと思った場合、その圧倒的な情 報量にげんなりすることはまず間違いないとおもう。ポイント上位を探っても、自分好み の作品に行き着く割合は経験則から判断するに、20%程度である。数字は適当です。  そこでわたしが提案したいのが、自分と好みが似ている人をさがすことである。ふつう にまずは詩を読む。自分が気に入った詩にポイントを入れている人を見る。吟醸度が極端 に高い、もしくは低い人を外す。そうやって絞り込んでゆくと、過不足なく詩をカバーで きる人が何人か見つかるはずである。  そんなことはみんなやっている。もっと良い方法はないのか。そんな声には、我がショ ートレビューでこたえたいと思います。おれのレビューを見とけば間違いない!あはっ。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]ショートレビュー・サンデー 10/露崎[2009年9月8日22時02分]  おい イタル/オイタルさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=187756  わたしも今年で22歳になった。小学生のころはどうしても買えなかったアダルト なブックだって、余裕でみている。小学生のじぶんに言いたいのは、人は放っておく と22歳になるということだ。あの時とまったく変わっていない自分がもう22歳。 成長していない、という気持ちと、でも、もう昔のようにはなれないという気持ちが ないまぜになって切なくなってしまう。少年性の欠落について、するどく描かれた作 品でよかったです。泣けちゃう。  女の子の詩/海田うにさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=174756  躍動感のあるガーリーな作品でおもしろかった。へたに上手すぎない文章であるこ とも逆にリアリティがでていてよかったとおもう。キュートでなおかつ苦みもちゃん とある。これぞ女の子の詩だなーとおもったらタイトルがそれで、じつにジャストで ある。いいぞー。こういうのがよみたかったのだ。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]ショートレビュー・サンデー 11/露崎[2009年11月9日12時11分]  このあいだハロウィンだったので、ロブ・ゾンビ監督の「ハロウィン」を見た。 スラッシャー映画というのは、血しぶきを見ながら、ころせー!と心のなかでさけ びつつ鑑賞するのが正しい見方なのでは。とおもいます。なにより、監督の名前が いいですよね。ゾンビ。こういう徹底した姿勢というのは胸を打つものがあるとお もった(ちなみに監督の奥さんもシェリー・ムーン・ゾンビという名前で出演して いるらしい。かっこいい)  うずく、まる。 / 夏嶋 真子さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=193861  うずくまる。というひとつのモチーフから話をひろげていくところが発想の豊か さを感じてよかった。何より「うずく」で区切ることを思いついたことにアイデア があって、そういう光るポイントがひとつでもあると詩はおもしろくなるのだなと つくづくおもう。部分部分、感情をのせきれない面があるにはあるのですが、うず くまる、丸くなるという身体感覚には、はっとさせられました。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]ショートレビュー・サンデー 12 レコポエ版/露崎[2009年12月30日3時21分]  子供の病院 / ヒダ・リテさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=198517  おもしろかった。ひじょうに映像的なフレーズが多くて、ふくらませれば短い映 画くらいは撮れちゃいそうだなとおもいました。強引な飛躍を読者の想像力で補わ せる作品ってけっこう多いですが、これくらい丁寧なつくりだと詩になれていない 人でも読みやすそうでいいと思う。  癒しというと胡散臭いイメージもありますが、それをうまく回避しつつ、けっこ うベタな最後の一行に着地させるあたり、お見事!とおもいました。みんな疲れる よ、こんな時代じゃ、なんてつぶやいているうちに、わたしはいい年になり、今の 子供はまた大人になるんだねえ。  カレーライス / 森下悠里さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=197762  平凡なことがなんだかうれしい。そういうことってあるよなー。誠実な作品だと おもいます。シンプルすぎてどうしても強い引きがない部分はあるけれど、それで いいじゃないか。と思えるし、すべてがすべて、刺激的である必要はないとおもっ た。逆にこういう詩が発信されない状況になってしまったらなんだかさびしいもの がある。  ハタチ女の憂鬱 / ゆるこさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=193236  よかった。「憂鬱なんだろな」とつたわるシーンの連続で独特の浮遊感がある。 たまに、わけもなく静かになりたいと思う瞬間があって、べつに死にたいとか大げ さな感情ではないけれど、限りなくゼロになりたいというようなことって、けっこ う誰にでもあるとおもう。感情の空白(飽和)とでも言いますか、そんな瞬間を詩 でうまく表現しているとおもった。ラストの夕日のシーンはいいですね。サンダル を投げる一瞬の爽快感と、燃える太陽の激情が入り混じって、ぐっときました。    五月 断片 / 如 月さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=195201  制御された文体で、一定のトーンに保たれた静けさがよかった。タイトル通り、 じつに断片らしい断片。分散した思考からゆっくりと焦点を結んでゆくような感じ をうけました。解釈としてはよくわからないというのが正直な感想ですが、そのわ からなさがセンス・オブ・ワンダーにつながる、というマジックがあって、それま であと一歩というところだとおもう。  細部では、三がおもしろかった。パスタを茹でているシーンが少ない言葉で想像 できる。気泡とか、単語の選択がすてき。たしかに茹でるとき細胞分裂みたいな気 泡でるもの。  水槽 / もも うさぎ さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=197184  言語的な快楽にうったえかけてくる作品で興味深い。ファンタジックな作者独特 の言葉選びとくちずさむのにちょうど良いリズムが、この雰囲気づくりに役立って いるのだと思う。美しく心地の良い文章が「主」で、テーマが「従」となっている ような気もするけど、詩をつくるうえで、したいことをのびのびとしている感じが してそこが一番よかった。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]【批評祭参加作品】 現代詩フォーラム50選 (1)/露崎[2010年1月13日5時22分]  どうも!ショートレビュー・サンデーをかいてる者です。  現代詩フォーラム50選を発表し、わたしがたのしい。という企画です。  新しくこのフォーラムにきた人のガイドになれればいいとおもいます。  「なぜこの作品が入らない」とおもったら、自分で書いちゃいましょう。  これを読んでおけばまちがいない!な50個になったとおもいますよ。  001  ラブホへ行って死のう / しゃしゃりさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=78621  笑いと泣きの表現では一級品の腕前をもつしゃしゃりさん。  伝説の「〜死のう」シリーズのなかでも「ラブホへ行って死のう」は  序盤に発表されたこともあり、インパクトがありました。  三国志買っちゃうあたり、どうしようもなくて、うわあ。となる。すごい作品。  「恥をしのんで生きよう」でシリーズを完結させるあたり、にくい作者でした。    002  コバルトブルー99% / ピッピ(ウィズアウト詩)さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=23603  青をモチーフにしたら、右にでる者はいないピッピさん。  みずみずしい感性というのはこういうものを指すとおもう。しびれた。  「きみは青いねえ」なんて表現があって、たしかに青いわけなんだけど  でも、そんな言葉で否定しつくせない思いがこめられている入魂作です。  003  世界はいま、キッチンにあるとして / バンブーブンバさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=13901  日常をただ描いただけにはとどまらない視野の広さを  この短さにさりげなく濃縮させるあたり、すばらしい技が光る作品。  身近なことをなにかに届かせようと目指す作品は多いですが、  これだけジャストな言葉たちはなかなかないでしょう。必見。  004    Love Song / 安部行人さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=3841  恋や愛についての詩はそれこそ山のようにありますが、  群をぬく力強さでうたう愛がめちゃくちゃかっこいい作品。  大仰な表現だって「きみとだ」といわれたら、うなづかずにはいられない説得力がある。  無骨な男気をストレートかつ巧みに表現した一品。  005  少年予定 / 霜天さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=69674  少年性を語っているようで、それだけではなく  読みようによって考えさせられることが、ひとりでたくさんでてくる不思議な作品。  読み手にすべてをゆだねるようなことはしていないのに、  けれど、読む側の意識を引き出してくれるような懐の深さがすばらしい。  006  金(キム) / 馬野幹さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=62375  でました、キム。このすさまじさは一度読まないと分かるまいな一作。  コント的な展開から、そこまで到達してしまうのか。と驚くし  ひいてしまいそうな言葉や表現でさえ、美しいと感じさせる熱量は  なかなか触れることはできないものだとおもう。名作。  続編の「金金金(キムキムキム)」もおもしろい。  007  おはなし 1〜50 / Monkさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=10872    でました、Monkさん。才能で、ずば抜けたものをもっている方だとおもいます。  散文や批評でも名文をいくつも輩出していますが、詩もすごい。  50個のおはなしどれもがどこかにアイデアがあり、工夫しているのがわかる。  わかるのに、それがつくれるのか。とおもいあたって、戦慄を感じてしまった。  また投稿してくださるとファンとしてはうれしい。  008  君に覚せい剤を打ちたい / 寺崎 マサシさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=125563  「覚せい剤を打ちたい」そのまがまがしいまでの強烈な言葉が、  なんどもなんどもくりかえされるこの作品。  一歩まちがえれば、ただ物議をかもすようなものになってしまうけれど、  それをぎりぎりで回避して、美しさすら感じさせてしまうまでいたっている。  タイトルのインパクトもふくめて、すさまじい作品。  009    ひとつの車輪が回っていった / こもんさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=167105  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=167778  これは以前、レビューをかいた作品ですが、当然のようにいれます。  相変わらずわからないわけですが、そのわからなさがやはり素敵な作品。  010  ANOTHER GREEN WORLD / カワグチタケシさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=20645  朗読を聞いたことがあるのですが、そのリズム感たるやすごいものがありました。  解釈をこえた部分に作品があって、ひとつひとつの表現が、  強烈に映像をおびてくるこの高出力の描写はなんなのだと衝撃でした。  いまだに色あせない訴えかける名品。  011  寿司屋にて / 嘉村奈緒さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=3410  これも初期の名作だなー。吐露とトロ。言葉の妙が実におかしい作品。  大将と私のコミカルなかみ合わないやりとりが単純におもしろいし、  全速の助走からの後半は、人間と人間のかかわりを自問しているようで  全体にわたって、鋭さがまったく落ちないすばらしい詩になっている。  012  センチメンタルレッスン / ナカゾエ ヨシヒロさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=86696  知る人ぞ知るナカゾエさん、シニカルさ全開の一作。  なんてったってタイトルがまず良いわけですが  キャッチーな「いいえ、ゴリラです」の問答から、ここまで広げられることがすごい。  「軽作業->16歳->」の散文もすばらしいものがあります。  013  ハピネス / いとうさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=138  おなじみいとうさん。名作がおおすぎて選ぶのも一苦労ですが、  やはりこれでしょう「ハピネス」。  ただ善と悪が戦うようなものでもなく、敵と味方というわけでもなく、  戦争が持つ一般的なイメージを、本当の意味でつきつめていくには  これだけの思考が必要で、それでも足りないのだということがわかる  人間の深淵をのぞきこむような作品。  014  光、スロウ、アウェイ / nm6さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=13881  冒頭から全速力で疾走する言葉は、まさにnm6節といったところでしょうか。  当時、これを読んでそれは真似しましたよ。かっこいいもの。  バチバチと言葉が反応しあっていくさまは単純に快楽がある。  酔ってしまうような極上の作品。  015  よるにとぶふね / haniwaさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=106107  人の息遣いを感じる詩で、せつなさがあふれてきてしまう。  やっぱり人間ってせつない生き物だよな。とおもって  なんだか泣けちゃう。そういう作品はとても少ない。  静かな夜の空気感がつたわるすばらしい一作。     つづく。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]【批評祭参加作品】 現代詩フォーラム50選 (2)/露崎[2010年1月13日23時50分]  現代詩フォーラム50選を発表し、わたしがたのしい。という企画です。  みなさんついてきてますか?テンション落とさず残り35個いきましょう。  016  野球やりに行こうぜ磯野 / セガール、ご飯ですよさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=170034  ユーモアならこの人は外せない、セガール(略)さん。  「野球やりに行こうぜ磯野」その言葉になにかが足されるだけで、  こんなにもおもしろくなりますか。という才気がほとばしる作品。  終盤には狂気すら感じられて、磯野と中島の背中がみえるようでした。すごい。  017  醤油 / たもつさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=504  おまたせしました、たもつさん。たもつさんも名作が多く選ぶのはむずかしい。  ここはやはり以前もレビューした「醤油」をあげておきたい。  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=187342  いつか、たもつベストアルバムを勝手に妄想して投稿したい。  018  世の中がどんなに変化しても、人生は家族で始まり、家族で終わる / 吉田ぐんじょうさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=194835  でた。吉田さんのクリティカルな一作。吉田さんも名作多数ですが、  これが一番、吉田さんの持ち味をあらわしているとおもいます。  語り部としてトップクラスの作者だとおもうので、  長いのにめげず読み進めると、ひきこまれてしまいますよ。  019  かみさまについての多くを知らない / 望月 ゆきさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=35474  望月さんのやわらかでうつくしい表現、ゆったりとした語り口、  作者の魅力をかたちづくる色々なエッセンスがつまった一作。  「かみさま」というどうにもあつかいにくいモチーフを、  すてきに詩に封じ込めています。おぼれないように気をつけましょう。  関連として「かみさまについて学んだいくつかのこと」もあげておきたい。  020  風が唄っていた / ダーザインさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=10143  文学極道のドン、ダーザインさん渾身の名作。  身構えてしまいそうな幻想的な描写さえ、受け入れさせるような説得力は圧巻。  最終行の「風が唄っていた」の余韻は、特筆すべきものがあるとおもう。  「旅の終わりに」「星屑の停車場にて」などでもその持ち味が堪能できます。  021  肉じゃが / 窪ワタルさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=16766  これを選ばずにはいられないでしょう。窪さんの「肉じゃが」。  身を切るような痛みが読むたびにやってくる鋭すぎる作品です。  痛みをともなうような読詩体験は、この作品がはじめてでした。  一度でもよいので目を通すと、その強烈さにひきこまれるでしょう。すさまじい一作。  022  スタンダード / 大村 浩一さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=37228  大村さん、ご結婚にさいしての、でましたこの詩「スタンダード」  「君の幸せに、間に合って良かった」ずるい。こんなこと言ってみたい。  車の種類からはじまって、人生が透けて見える展開が見事な一作。  愛についての詩を読みたいかたはご一読を。にやにやしてしまいます。素敵。  023  ピース、ストロボ / 高田夙児さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=15167  現代詩フォーラムでは、一番すきな作者である高田夙児さん。  淡々とした描写や、あとに未練を残さないような言葉の使い方にしびれます。  それでいて、余韻が美しいというクールさにわたしはやられました。  この詩がすきな人とは趣味があうのではないか。そんな傑作!  024  きゃらめる 5 / アンテさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=8332  全編、ひらがなで書かれた作品ですが、この幸福さはなんなのか。  キュートな印象が目立つけれど、芯がとてもしっかりしていて、  深みのある味わいがとても素敵な作品です。  かわいい詩が読みたい、そんなあなたに最適な名作。  025  稲妻でみんな酔って終われるって言うから此処に来た / 水在らあらあさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=106614  水在イズムがもっともあらわれているのはこの作品ではないでしょうか。  乱暴でさえあるような勢いのある言葉が放たれていくさまは、  ほんとうに自由に詩をかいているのだなと心打たれるものになっています。  名作多数ですが、危険なほどにかっこよいのでおぼれないように!傑作。  026  美しき日々 / 石畑由紀子さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=17499  石畑さんのぞくぞくするほど官能的な一作。  下品にならずに、ここまで男女の関係を描けるのかという衝撃がありました。  小指を与えてみる。というそのなんとも妖しい発想。  女の美しい所作が思い浮かぶようです。読むべし。  027  アースシャイン / 夏野雨さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=147713  近年の現代詩フォーラムではMVPなのではないか。  そんな称賛をおくりたいぐらい、良作名作を送り出してる夏野さん。  以前レビューしましたが「アースシャイン」。孤独の輝き。  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=173862  028  滑らかに廻り続ける欲望の輪 / 大覚アキラさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=32086  大覚さんのシンプルかつ力強い一作「滑らかに廻り続ける欲望の輪」  無駄をそぎ落としたソリッドな本作は、そのたたずまい、まさにロックですね。  やはりこういうシンプルな構造の場合、作者のセンスが問われるものですが  見るものを圧倒する畳みかけに参りました。名作です。  029  いるかのすいとう / かいぞくさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24102  これほどまでに透明な絶望があるのか。と読んで言葉をうしなった作品。  こんなに美しいのに、こんなに残酷で、けどやさしくて、希望がある。  「これがひかりだ」という一行にはさまざまな感情をもって読みました。  自信をもっておすすめできる名作です。  030  すれ / ミサイル・クーパーさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=12565  最高の瞬間を、適切に切り取って表現する。できそうでできない芸当を、  やってのけているすばらしい作品。平易な言葉で語られているから、  すっと心にしみわたってゆくことができる。そんな魅力があるとおもいます。  現代詩フォーラム史にのこる不朽の名作でしょう。     つづく。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]現代詩フォーラム50選 (3)/露崎[2010年2月17日16時27分]  現代詩フォーラム50選を発表し、わたしがたのしい。という企画です。  批評祭がずっと前におわっても、平気で大発表してしまいます。ラスト!  最後に、感想を書きました。最終行までお付き合いいただければ幸いです。  031  君から電話が来なくて重要なロックバンドが生まれる / 餅ヴィシャスさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=23847  カッコよさ+ユーモアの融合でしびれまくりました本作。  この作品もすでにレビューしていますが、外せないですね。  なにかをきっかけに爆発する物語。やっぱり好きです。  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=193073    032  祝福のおわった夜に / choriさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=10  自己愛につらぬかれているのに、不思議とにくめないchoriさんの初期作。  軽やかな語り口にのせて、ふたりの姿が鮮明に浮き上がるようです。  リーディングをされているからか、ひじょうにクチあたりのよい言葉が選ばれていて  リズムやテンポが口ずさむと美しい名作になっているとおもう。  033  ごらん、ゆうぐれる / みいさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=17732  語感の使い手といえば、みいさんは外せないでしょう。「ごらん、ゆうぐれる」  意味をスッキリすべて分かって愉しむという系統の作品ではないものの、  このたどたどしい特異な語感にはあらがえない魅力を感じるのではないでしょうか。  音読すると、よりいっそう言葉の選び方の妙がわかります。推薦。  034  sky / uminekoさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=48600  かならずどこかに気に入ってしまう言葉やフレーズを読ませてくれるuminekoさん。  読後の軽やかさ、爽やかさ、は派手ではないものの長く読み続けたい作者のひとりです。  本作は、9.11というむずかしいテーマをあつかっているにもかかわらず、  重たすぎず、かといって底の浅さなどは一切感じさせない、決意に満ちたすごい作品。  035  うさこ、戦う / 最果タヒさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=178483  でたー、最果さん。作品数は少ないもののえらばずにはいられないさすがの存在感。  なにかを比喩しようとするけれど、伝える意志をわざと途中で折ったり、横道にそれたり  決して中身が空ではないはずなのに、限りなく空にしてみせる「変さ」がおもしろい。  間違いなく表現力では抜けている作者ですが、それを露骨に誇示しない味わい深い一作。  036  飛光 / ワタナbシンゴさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=5050  これは気合いをいれてみなさん読んでいただきたい。衝撃作。  おぎゃあ。という赤ん坊の泣き声からはじまるこの作品。  原始的なまでの生命の力強さが強烈に叩き込まれていて、圧倒されてしまいました。  言葉で表現する。というのはまさにこういうものを言うのだと思います。凄まじい。  037  わたしのさみしさは / 浅見 豊さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=35091  この詩をみなさんにおすすめできてよかったとおもうぐらい、個人的に好きな作品。  「いとしくうまれ、いとしく生き、いとしく死ぬことを思い、生き」この部分に  ぐわーっと掴まれてしまった。切なすぎて、涙腺ゆるんでしまう。  他に「蛍光灯がきれて買いに行く日」なども隠れた名作。必見です。    038  そしてシグナルタワー、女子 / しもつき七さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=161719  タイトルからもうハイセンスな、しもつき七さんの「そしてシグナルタワー、女子」  ふつう使わないような奇抜なフレーズを、疾走する勢いにまかせながら、  それでも読ませてしまう強烈な腕力。根っこにたしかな文章力を感じる鮮烈な一品。  「ハイテク、とつぶやいて」の部分なんて、かっこよすぎるもんなあ。すごい。    039  ところで / みつべえさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=19009  伝説の「そろもん」シリーズ生みの親、みつべえさんの作品から「ところで」  この短さのなかで、ユーモアと味わいを込めつつ、なおかつ読者もつかむという  その研ぎ澄まされたポエム力は圧巻の一言。ほかに「凪の日」なども名作です。  毎日そろもんが携帯電話に送られてくるサービス。絶対加入する。  040  十三月記 / 嘉野千尋さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=27970  なんといっても、言葉のもつあたたかさが何より魅力的な嘉野さんの一作。  アクロバティックな刺激ももちろん最高ですが、さりげなく丁寧な言葉選びで  他者との違いを獲得している素敵な作品。エンターテイメントとしても優秀な  「幻視顕微鏡」や「海辺の詩集」など名作多数の作者です。    041  軽さへのあこがれ / 佐々宝砂さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=151410  最適な文体に最適な長さ。これは詩の基礎にして奥義である。というのは、  今、ぼくが考えた名言ですが、それをまさに体現するような作品。  これも以前レビューしました。http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=173862  何度よみかえしてもほれぼれするような無駄のなさ。  042  遠泳 / 砧 和日さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=87996  わたしの大のお気に入りの作者さんである、砧さんから「遠泳」。  あまりにも詩の内容と自分の経験がシンクロしすぎて、びっくりしてしまう。  そんなことが詩をたくさん読んでいるとごくまれにありますが、わたしは  この作品を読んでいろいろなことを思い出し「うぁぁ」とつぶやかざるを得なかった。  そのときのレビュー(http://sundayworks.blog.shinobi.jp/Entry/11/)      043  断片集「幸せの庭」 / 簑田伶子さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=71265  断片集シリーズはどれもすばらしくて、贅沢な満足感にひたれるものばかり。  そのなかから「幸せの庭」をえらんでみました。1、3、5、6がとくに好き。  みのださんをRPG風にたとえると、MPが豊富な魔法使いという感じである。  「ドロップって 前世みたいなひびきね」なんて魔法だよなあ。素敵。        044  ポエムの国 / モリマサ公さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=56634    もう一連目からすごすぎるモリマサ公さんの「ポエムの国」。  はじめて読んだときは、意味をこえたところで衝撃を受けてしまった。  ひらがなの多さでかわいらしいようですが、毒を忍ばせてあるようなフレーズがあり  それがなんだかよいアクセントになって、深読みできる多様さにつながっていると思う。  045  かわいい匂い / チアーヌさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=20788  わたしは男なので、母性というものを知ることはできないわけですが、  今まで見てきたような、やさしくてあったかいだけのステレオタイプな母性ではなく、  どこか生々しい新しい母性像をこの詩で目の当たりして、腑に落ちたのを覚えてます。  あたらしい視点や視野を提示してくれるとても興味深い作品。ご一読を。  046  ペダル / ぬくみ りゑさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=144132  ぬくみさんは「エレクトロピカ」など傑作を多数輩出している作者ですが、  今読めるものも良作揃いで選ぶのになやみました。その中でも「ペダル」。  笑っていいのか一瞬考えて、いやいや、だめだ。とあわてて思い直したエピソードの破壊力に加えて、  自転車の描写でとどめをさされてしまいました。傑作です。  047  てん、 / はなさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=158197  女性の詩がつづいてますが、はなさんの作品も女性らしい感受性を  自由に表現しているところが素敵です。「てん、」はビルの屋上からはじまって、  はらはらする緊張感のなか進んでいくところがひきこまれる。落っこちちゃうよ。と  心配しつつ、最終行に「そうかぁ」と感情を動かされました。すばらしい!      048  六月の水球 / 佐野権太さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=186314  父と子の、いとしいやり取りが逆にせつなくなってしまう佐野さんの作品。  子供の無邪気さがこんなに真に迫るのは、ひとつひとつのシーンがとても、  吟味されているからでしょう。じょじょに人は成長していき大人になる。  「かなしみと折り合いをつけるやり方」の部分、響くなあ。名作。  049  chika / れつらさん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=4952  れつらさんも名作多数ですが、なかでも「chika」は感情にくるものが大きい。  パソコンでゆっくりとスクロールしながら、一行一行をかみしめるように読むと、  4のハミングの、空白ですら意味を持つようになる。支離滅裂な解体された言葉さえ、  そこに感情を見出すことができる。とても、すばらしい。傑作。  ***  ここまで読みとおした方は根性があるとおもう。おつかれさまでした。  全体を通しての感想を以下。  50選を作成中、えらぼうと決めていたあの作品、あの作者がない。ということが  けっこうありました。すでに書いていたのに、投稿前に退会。なんてこともあった。  そういったかたの作品をここで挙げることはとくにしません。  あと、ほんとうは入れたかった作品、作者のかたもまだまだいるのですが、これは  おいおいということになりそうです。  しかし、以前に投稿したレビューにも、どんどんリンク切れの波がおしよせています。  当然いろいろな事情があって、個人の自由なわけで「辞めないで、削除しないで」と  おしつけるつもりはありませんが、さびしいですね。  わたしがみなさんに伝えたいことは  「あなたの好きな作品も、ある日いつのまにか消えてくなくなるかも」ということです。  そういうときに、なにか感想を言葉にしてつたえておけばよかった。という後悔を  しないで済むなら、しないほうがいいとぼくは強くおもいます。  伝えたいことは、言わなければつたわらない。というのは、みなさん意外としらないので、  ツユサキの名言(笑)として心にとどめておくといいんじゃないでしょうか。  というわけで、以上です。ありがとうございました。  ***  050  It's up to you!! 50個目は君がきめるんだ! コメントに書きこむんだ! ポイントもするといいんだ!   ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]レビュー 適切な世界の適切ならざる私 / 文月悠光さん/露崎[2010年3月31日4時32分] どうも!ショートレビューをかいてる者です。 このあいだ用事のついでに新宿へ寄って文月さんの詩集を買ってきました。 「適切な世界の適切ならざる私」は、文月悠光さんの中原中也賞受賞作です。 せっかくなので一読した印象をかんたんにレビュー。  適切な世界の適切ならざる私 / 文月悠光さん   「ふつうの文庫本の厚さくらいなのに2000円か…」という器のちっちゃい ためらいはあったものの、これがなかなか読みごたえがありました。ひとつひ とつの作品は長めのものが多く、詩は速読に向かないということもあって詩に ふれたことのないふつうの人が読み切るには時間と集中力が必要かな。わたし は10日にわけてゆっくり読みました。 この本のおもしろいところは、作中の「私」が異様な存在感をはなっていると ころだとおもう。タイトルにも登場しているように、とにかく「私」が色々な 作品に顔をだしそのたびに姿を変えてゆく。こんなに「私」を意識させられる と、だんだん「私」がどんなやつなのか理解したくなってきて、今回はきみ、 どんなことを思うんだい?と考えつつ読んだりして、おもしろかった。これほ ど「私」をしつこく強調した作品群はあまりないのではないか。スーパー自意 識をそこにみました。 また、10代のころを連想するようなモチーフやテーマが多く収録されていて 本としてのまとまりはとてもよかった。ただ、10代女子を取り扱っているわ りに、文体はひじょうにこなれているし、言葉選びもとがらず、流暢なんです よね。乱暴な部分も、整頓された荒っぽさの範囲におさまっているようにみえ る。著者が現代詩フォーラムの会員だったときからおもっていたことですが取 り扱うテーマやモチーフ、と、手法、のミスマッチさが、文月さんの変な魅力 の鍵になっているのではないかとおもう。 作品単位だとかならずどこかに印象的な描写やフレーズがあって、クリティカ ルなつかみがある。「横断歩道」では おりてこいよ、ことば。 の力強さに 圧倒されるし、『私』の 私は私を孕まなくてはならないのだ。 なんて危険 なほど圧力のある一行でびっくりする。詩をたのしむ上でまず足がかりとなっ てゆくのは、こういった、魅力的な一行であることが多いとおもいます。この 本に限らず、まずは「好きな言葉」を追いかける、というのは詩になじみがな い人におすすめしたい読み方です。 作者の仕事をこれからもフォローしていくかはちょっと微妙なところですがこ の一冊はチェックしても損はないんじゃないでしょうか。なにせキュートな女 子がこんなすごい本を作り出してしまう。そのパワーだけで、ぼくはグッとき てしまった。よかったです。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]ショートレビュー・サンデー 13 / カニミソ2/露崎[2010年6月9日1時52分]  カニミソ2 / 番田さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=211270  からっとしたユーモアに、若干ただよう物悲しさ。このなんとも言 えない空気感がひじょうにおもしろかった。まとめてしまうと、カニ 釣って、友人としゃべって、車で帰るだけなのですが、描写がうまく て飽きないつくりになっているとおもう。  ポールスミスの紙袋、ビーズの稲葉似の男、ダイソーのピッキング 係などといった単語のセンスが独特ですごくよかった。ビーズのくだ りは想像して笑ってしまって、その言葉を選びますか、という新鮮さ にとくに感心しました。  会話の部分はやたら説明的で、小説なんかだと不自然になってしま うところなんですが、その違和感を逆手にとってうまく詩としてとり こんでいるとおもう。ほかにも「タムタムという漁船の音」とかおも しろい表現だし、称賛したい箇所がたくさんある良い作品でした。  関連  カニミソ http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=210417 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]ショートレビュー・サンデー  14 テンガロン/あ さん/露崎[2010年8月3日21時40分]  テンガロン / あ  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=186000    心配性で変に格好つけなわたしにとってこの作品にでてくる「俺」 というのは、もうほとんどあこがれである。わたしはこれでもけっこ うイケてるナイスガイのはずなのだけど、人を惹きつけるのはだいた いこういうやつだ。みっともない姿をさらすくせにそれが自然体で、 向こう見ずなのに、でもときどき影がある。そういう男にあこがれち ゃうのはなんでなのだろう。  この作品でも、黒髪の美人の家にあがりこみ、タロイモごちそうに なったあげく「テンガロンはしばらくここで暮らすよ」というずうず うしさを発揮している。このためらいのなさ。わたしだったら、そこ で「迷惑ではありませんか」と期待してるくせに格好つけてしまう。 そしてだいたい下心を見ぬかれるのだ。くやしい。  詩全体として、決して技巧的ではないですが、巧拙をこえた情熱が たしかに刻印されているし、なにより「俺」こと「テンガロン」が絵 になる男として魅力的に生き生きと描かれているところがよかった。 むしろこういう男を描くには、これぐらい荒削りで勢いのある表現の ほうがいいのかもしれない。要所要所で、ひじょうに詩情あふれるキ ラーフレーズがあって、ぐっときました。最高! ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]おまえのお気に入りをおれによこせ/露崎[2010年8月4日14時10分] どこかへ詩を読みに行ってつまらなかった。なんて当たり前すぎることで、そういうのをいちいちクサすのはもうやめにしよう。っと20歳のときぐらいにおもった。残念な詩に遭遇するなんてことは、もう、夏があついぐらいありふれたことなんだとおもう。 ダメな作品を読んで緑の毒霧をリング上で吐き出したくなる人というのは、おもしろい詩を毎回読みたいとおもってるからじゃないだろうか。おもしろい作品に出会いたいとおもっている人ほど、ダークサイドに堕ちてしまいがち。皮肉なことである。残念な詩からは逃れられないし、じぶんだけおもしろい詩を読みまくりたいというのはずるいじゃんか。たぶん、おもしろい詩を読むことをあきらめたものが、何十回にいちど、素敵な作品にであうように出来ているとおもうのだよね。 わたしはショートレビューというのをやっていますが、そう簡単に「つまらなかった」とはやっぱり書けない。自分にとってはそうだっただけでだれかにとっては大切な作品になるかもしれないのに、その一言で出会う機会を摘んでしまったら、ちょっと申しわけない気がする。レビューでは僕にとってイマイチだった部分をなるべく遠まわしに書くようにしている。逆によかった詩を誉めることはためらわない。どんどん読んでほしいから。 わたしはみんなもっとじぶんの好きな作品をアピールしてくれればいいのに。とおもう。どこがどう面白くて、じぶんはこう思ったんだ。っていうのを、別にありふれていたっていいから、発表してほしい。ポイントじゃ、わたしには物足りないし、届かないよ。少なくともその文章で好きって気持ちが伝わるし、ぼくは「そうか」とおもって読みに行くもの。 そして、そういうものがたくさんあるからこそ、「これはこういうところがまずくて、だからこうすべきなんじゃないか」とか「いや、この作品はダメだよ」という読み方が生きてくるし、「いや、こう読んだらおもしろかったんだよ!」というやり取りがあったっていい。わたしはそういうものをひっくるめて詩を楽しみたいと思ってる。好きだと言うことをためらってほしくない。つまらないという発言を嫌悪してほしくない。そういう現代詩フォーラムであってほしい。そんでもって、ツユサキくんにレビューされたいという女子が増え、モテたい。(台無し) ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]【批評祭参加作品】レビューを書かない7つの理由/露崎[2011年3月6日2時59分] こんにちは。詩のレビューをやっている者です。 これまでにいくつかレビューを書いてきました。それを見た人が「こんな のでいいならおれも書けるぜ」と思い、にわかにレビューが盛り上がる! というようなことは一切なかった。無念。今回の批評祭はツユサキチルド レンたちが独占するはずだったのに。そして、それを温かい目でながめる わたし。みたいな格好いい絵を妄想してた。恥ずかしすぎる。 なぜみんなレビューを書かないのか。いくつかありえそうな答えを考えま した。それを発表することで、批評祭に参加しようとおもう。お手軽。 1.レビューの絶対数が少ない 数がすくないから心細い感はある。何を隠そうわたしもはじめてレビュー をここへ投稿するとき、おっかなびっくりでした。詩のえらい人たちが意 味不明な言葉で抗議してくる夢にうなされました。せめて、ぼくが毎日の ようにアップしていたら。みんなそんな夢をみなくてすむかもしれなかっ た。無念。 2.言っている内容が陳腐、つまらない、的外れじゃないかという不安 詩のえらい人たちが影でくすくす笑いながらぼくのレビューを見てる。そ んな夢でうなされた夜もありました。この不安へのアンサーとして言える のは「誰もおまえのこと興味ない」ということです。笑われもしないわた しを笑ってくれ。あと、レビューは普通が一番だとおもう。自分らしさが 大切。 3.ジャンルや用語が定まっていないため、書きにくい 「ポエム」と「詩」ですら若干意味合いが違うややこしさがある上に、ジ ャンルも細かく分かれてないからひじょうに面倒。その気持ち、とっても よくわかる。詩のえらい人たちはとりあえずこっちを先に整備してほしい 。そしてウィキペディアなんかにのせてください(土下座)。面倒さで言 うと長く書かなくてはという先入観もある。短いぐらいがちょうど良い。 4.作者本人の目に触れる可能性が高い 作者の目というプレッシャーに負ける。ありそうな仮説である。このプレ ッシャーに打ち勝ったわたしから言わせると「読者様がわざわざレビュー するのだぞ」という自己暗示をかけることによって克服できます。詩の作 者どもは映画や音楽というジャンルに比べて、他人からの無遠慮な視線に さらされ慣れていないから、どんどん視てあげよう。上から目線。 5.自分の詩を棚に上げて人の詩について言いにくい 詩を書きつつ、人の詩も読むタイプがほとんどだと思うのでだいたいの人 があてはまるはず。わたしは書かないからその悩みを実感できないけれど ありそうな仮説。ぼくから言えることはひとつ。開きなおりなさい。 6.あんまり他人の詩に興味がない(時間を割くまでには至らない) これはだいたいの人に当てはまりそうだ。みんな興味があるふりしている だけなんでしょう。そうなんでしょう。まあ、自分の作品が一番というの は自然なことだとおもうので、いいんじゃないですか。わたしも現フォ5 0選を見直しては「良いこと言ってるなあ」とにやにやしています。 7.そもそもレビューに需要がない レビューが増えるとメリットがたくさんあるぞ。?作品を語り合う楽しさ が根付く?知らない作品に出会う機会を読者に提供できる?詩環境が活発 になる?レビューから「批評」への流れができる どうです、こんなに良 いことがあるでしょう(必死) 以上、レビューを書かない理由7つでした。こう見ると、けっこう関門が あって、みんな書かないはずだわ。と思いました。でも、7で触れている ようにレビューが増えれば絶対に楽しいとおもうので、みんな面倒くさが らずに書いてみておくれよ。とおもいます。 「批評」や「評論」はともかく、レビュー(感想)は主観に偏ってたって いいし、内容がダメだってそれが自分の受容したことなら胸張ればいいん だ。すくなくともぼくは陳腐なこと書いてるかもしれないけど偉そうに生 きてるわけだし、そこにどんな種類でもいいから熱がちょっとでもあれば それを見てくれる人はいる。 なによりその文章が存在することだけで価値があるとぼくは信じている。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]SRS15  『ハロー、ハル』/川村 透さん/露崎[2011年4月30日3時43分]  『ハロー、ハル』/川村 透さん  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=113655  「詩は災禍を前に無力である」と感じてしまうような4月のある 日。ふと思い出して『ハロー、ハル』を読み直し、しばらく呆然と してしまいました。そうか。とおもった。いや、特になにか結論が でたわけじゃないけれど。とにかく、そうだよ。とおもった。とっ ても胸が熱くなったのでした。  本作は2007年に投稿されたものなので、震災とは何の関係もない ですが、ふとした瞬間、過去に読んだ詩の一節が頭の中によみがえ りぴったり来てしまうことってたまにある。いつか見た言葉がわた しの中に息づいているというのは、よく考えたらすごいことだ。  改めてみんなの作品を読ませてほしいと思ったな。言葉は痛みを ともなうし無力かもしれないけれど、誰かの中に残り続けることが できる。わたしに川村さんの言葉が残り続けたように。そして、そ れだけで充分なのではないかと漠然とおもいました。この作品に出 会えてよかったです。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]SRS16 虹のない/あるせいかつ コーリャさん/露崎[2011年7月24日9時00分] 虹のない/あるせいかつ / コーリャさん http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=235936 すばらしかったです!現代詩フォーラムでも屈指のポエム力を持 つコーリャさんの最新作。軽やかな跳躍と鮮やかな語り口に特徴 のあるコーリャさんですが、ここに深度を兼ね備え傑作を生み出 されました。読んだ瞬間、ハートを射抜かれましたね。読んでな い人はいますぐ読むべき。 おもしろい詩って、よい詩ってなんだろうと、詩を書く人はずっ と悩みつづけていると思いますが、ぼくがもし詩書きになるなら こんな作品を書いてみたいベスト3にランクインさせたいとおも う。これだけひとつの真実にむかって自由に言葉をあやつれるっ てどんな気分なのだろうと夢想しました。 本作の最も特徴的なところは「あなたも筆頭に」という言葉に代 表される読者への問いかけがはっきりと示されている部分にある とおもう。以前までの作品は、センスのあるフレーズや美しいイ メージを眺めて「すげーな」という傍観者でしかいられませんで したが、本作は強くわたしに参加を求めている。これは作者だけ の詩ではなく、ぼくらの詩なんだ。という実感がより読者を引き 込む力になっているとおもう。 限りある平面な世界で、わたしたちが想像できる範囲はどこまで だろうと考えると無力さを感じずにはいられない。もしかしたら フクシマでさえ、滝の向こう側にあるような気さえする。本作に あるのはどうしようもない他者との隔たりだし、それはつまり絶 望なのですが、それでもあきらめきれない切なさが胸を打ちまし た。 部分部分で気に入ったところを挙げるときりがないのでひとつだ け。「世界が不確かになっていくと感じるとき」の連がとくによ かったです。その感覚たしかにある。ぼくだと換気扇のしたでひ とりぼんやり煙草吸ってるときとかかな。とにかく良い連ではっ としました。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]ショートレビュー・サンデー 終/露崎[2011年9月1日19時14分] どうも、ツユサキです。これまで「ショートレビュー・サンデー」と銘打ちいくつ かレビューを書いてきましたが、個人的な事情もありこの文章をもっていったん終 了します。今までどうもありがとうございました。そんなわけでメモ程度の文章で 申し訳ないですが、投稿して終わりとします。 (1)参考にしたもの ReadLines http://www.geocities.jp/readlines_temp/index2.html リアルタイムで閲覧していたわけではなく、後で知ったのですが、一つの作品に複 数の人が評をつけるというシステムがとても魅力的に感じたのを覚えている。正直 に白状すればほとんど同じような形態を目指してたし、今も誰かが再起動してくれ ないか願ってます。あをの過程氏の文章が読めるという意味でも貴重なサイト。 フレージストのための音楽 http://po-m.com/forum/grpframe.php?gid=128 Monkさんの散文全般 http://po-m.com/forum/myframe.php?hid=367 シロン、の欠けラ http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25997 http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=129629 レビューのスタイルとして特に大きな影響を受けたのは上記の3人の方の文章です 。レビュー執筆時につまった時は何度も読み返しました。うまく消化できなかった のが悔やまれるところ。 (2)詩人には2種類ある説 詩書きは大別すると「肉食系詩人」と「草食系詩人」に分類される。という大雑把 な仮説。おもしろい詩、すごい詩、理想の詩を書きたいという欲求を持つ書き手が 肉食系。詩で競う気持ちが薄い書き手が草食系。現代詩フォーラムは肉食系も草食 系も混在していて、文学極道なんかは肉食系のみ募集している。 わたしは肉食系詩人の一生懸命なところも好きだし、草食系詩人のいじらしいとこ ろも捨てがたい。このゆれる乙女心をみんなに理解していただきたいです。ちなみ にわたしは男です。 批評やレビューは、対象の作者がどちらかといえばどっちのタイプなのかというこ とを頭の片隅で考えつつ書くのが、不幸を生み出さないこつであるとおもう。とく に肉食系詩人は草食系詩人を内心けっこうバカにしてるところがあるというのはバ レてるので、こころあたりのある方は胸に手をあててゆっくり息を吐き「これが世 界の選択か」とつぶやいてください。あなたも立派な中学2年生。 (3)レビューは求められていない説を必死で考えないようにする 上の言葉を借りると肉食系詩人は批評を求め、草食系詩人は一行感想のほうがむし ろ気楽でいいというイメージがあり、それはおおむね正解なのではないか。だから わたしの書くレビューは空気だったのではないか。そんな疑念が頭をもたげた。と はいえ、おもしろおかしいレビューを書ければ、たとえ需要が少なかろうとも支持 されるはずなので、今後レビューを書く方は不安にならずわたしという失敗例を糧 にし、レビューいらない説をくつがえしてほしい。そして、環境のせいにするわた しに大恥をかかせるべき。 (4)レビューできなかったが良かったやつ(敬称略) はしばしからふるひかり/あすくれかおす (http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=199633) 言葉の組み立てというか手つきが好きで、どの連も光っているのに、不思議と全体 でバランスがとれてるのは「はしばしからふるひかり」っていう珠玉のタイトルの おかげ。 かんらん石/mizu K (http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=232042) きみとわたしが出会う話っていつ読んでもなんかキュンとするので好きで、これは 特に目に星がつきささる感じとか、きみのくちもとがうるんでいる感じとか新しく てよかった。恋愛ってこうだよなと思う素敵な作品。 Doors close soon after the melody ends/カワグチタケシ (http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=229243) 強い言葉が並んでいるけど、どんどん読み進めるのはリズムが良いから。そこに愛 はあったか。の流れが胸をついた。 でも結局、光がないと生きていけません/雪莉 (http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=225855) おそらく若いかたの作品だとおもうし、うまさとかを追求してるわけじゃないと思 うけど、そのときそのひとにしか書けないものってあるよなとおもう。 遠距離セックス/新守山ダダマ (http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=210724) 終盤にもうひと盛り上がりあったらさらによかったけど、真面目に語りきることで 生まれるこの笑いは見習いたいですと思いました。わらった。 幻視譚/砧 和日 (http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=210820) 完璧な作品だと思いました。ここまで研ぎ澄まされると感心してなにも言えない。 切りがないのでこのへんで。 (5)おまけにおもうこと ぼくはみなさんがどういうつもりで詩を書いてるかなんて知らないし、ぼくがみな さんの詩をどう読もうと自由だとおもうけれども、でも、だからといって作者なん てどうでもいいとは思わっていない。結局そのあたりの信頼をうまく築けないとレ ビューや批評ってあんまりうまくいかないんだろうなとおもう。 逆に書き手であるみなさんは読者をどう思ってるんだろうか。詩を書いて投稿する からには読んでほしいはずで、でも全て読者に伝わりきることなんてできないなか で詩を書く。わかってくれる人がわかってくれればいいのか。それとももっと認め てほしいのか。自分が納得できればいいのか。読者には良い読者と悪い読者がいる のか。 そうやって考えだすときりがないし、正解なんてないわけですが、とにかくわたし は詩を趣味にしてきて詩を書く人がけっこう好きで、そのなかでも気に入ったもの は言葉にしてだれかに伝えたかった。そして、そういう読者でありたいと思いやっ てきました。みんなはどんな作者になりたいんだろう。肉食でも草食系でもいいん ですが、そういう問いかけはやっぱり欠かさないほうがいいんじゃないか。とおも います。 自分でも何言いたいかわからなくなったけど、つまりそこに愛はあんのか。という 話。ちがうか。 ---------------------------- (ファイルの終わり)