山田せばすちゃん 2007年6月24日0時02分から2015年12月30日9時28分まで ---------------------------- [短歌]詠題「肩」/山田せばすちゃん[2007年6月24日0時02分] ●「撫で肩をパットで補正する君があたしの胸をとやかく云ふな 」 「なでかたをぱっとでほせいするきみがあたしのむねをとやかくいふな」 ●君の肩を抱き寄せたくておもいっきり後頭部にウエスタンラリアット! きみのかただきよせたくておもいっきりこうとうぶにうえすらんらりあっと! ●此れは君の翼の名残俯せの肩甲骨に接吻をせむ これはきみのつばさのなごりうつぶせのけんこうこつにくちづけをせむ ---------------------------- [短歌]莫迦坊日和   〜ばかぼんびより〜/山田せばすちゃん[2007年7月5日12時36分] 兩頰に赫き渦卷書き入れつ街を往けども誰も嗤はず 不快指數高き闇夜に獨りゐて柳の枝の猫をこそ思へ 四拾弐の夏は来にけり莫迦坊の父より年嵩なりしや吾は 川緣の住處は如何に雨音の激しき夜半に鰻犬思ふ 兩の眼の繫がりてあれば拳銃は虛空に向けて發射さるのみ 夭逝のガロアの傳記讀み終へて淚さしぐむハジメは壱歳 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]ラブアンドピース?いいやラブはピースをも駆逐するのかもしれない。/山田せばすちゃん[2007年8月7日1時42分] まずは小話を一つ。 かつて若かりしころに罪なき党員にスパイの嫌疑をかけ、査問中に死に至らしめたミヤケンこと故宮本顕治日本共産党名誉議長であったが、実は晩年、病に倒れて後、夜な夜な枕元に当時殺した小畑某が立ってミヤケンをじっと見つめてあろうことかこちらにおいでと手招きするようになったのだが、流石はミヤケン、「幽霊になって出てくるとは、貴様それでも唯物論者か!恥を知れ!」と一喝して見事小畑某の亡霊を追い払ったのだという。 クロカンも死んだしミヤケンも死んだ。しかしながら誰もクロカンと革マル得意の「権力の陰謀論」についての詩を現代詩フォーラムに投稿したやつはいなかったし、ミヤケンと日共国際派の暴力革命の放棄について書いたやつもいなかった。誰かがこうやって詩に書き留めてくれただけでも、小田実は幸せだったのかもしれない、本人が今現在どう思っているのかあるいは思うことなどとうにやめてしまっているのかは俺には定かではないけれど。 小田実とベ平連について詩を書くときには、当然のように作中話者は小田実とベ平連に対する立ち位置を明確にすることが必要とされる。それは何も小田実とベ平連に限った話ではなくって、たとえば婚外恋愛のおねえちゃんについて書くときには、婚外恋愛が妻に露見したときにあくまでもそのおねえちゃんと別れる気はないと言い張るか、あっさり別れて妻に平謝りに謝るかを明確にすることはとても大事なことだ。 この詩の中では話者である女性と「あのひと」と称されるおそらくは夫であろう男性では明確に小田実とベ平連に対する立ち位置が違っている。ベ平連を「ヴァンヘイレン」と聞き違え、実は小田実「まこと」をいつのころまでか小田実「みのる」だと思い込んでいた作中話者である「わたし」はかつて若い日に「あのひと」に連れて行かれる形でベ平連のデモに参加し、理論学習も何もないままに反戦とベトナム和平だけを唱えていたのだが、その根拠のなさを「恋心」のようだというのはおそらくそれが本当に「あのひと」への当時の恋心に通底しているからにちがいないし、そんな動機で「運動」に参画している人間を、男女の区別なく俺は沢山見てきた。彼女ら(彼ら)は本当はベトナムに平和が戻ったのか否か、北総の大地が国家権力の収奪から再びお百姓さんたちの手に戻るのか否か、あるいは革命が起きて資本家が倒され労働者階級が搾取の鎖を断ち切れるのか否かについては実はどうでもよく、ただ単に惚れた相手が身命を賭して運動に没入しているのを愛していて、その助力をしたかっただけだったりするのだし、それはそれでとても好ましい生き方であることをおそらくは誰も否定できない、と俺は思う。 「わたし」にはもはや小田実もベ平連も青春時代を最愛の「あのひと」とともに生きたことの象徴でしかなく、実は「わたし」が本当に愛していたのはおそらくは彼が安下宿でぽつりぽつりとたどたどしく弾いて聞かせてくれた「反戦歌」洋ものならジョーン・バエズだったりボブ・ディランだったり、和ものならあるいは岡林信康だったり新谷のり子だったりするのだろう。 サイゴンが陥落してホー・チ・ミン市になったこととか高石ともやが「ホー・チ・ミンのバラード」を歌ってたりしたことは覚えていても、スターリニズムからの脱却を資本主義的要素の導入によって果たしたドイモイの苦闘については「わたし」は知らないし、知らないことをどうこう思うこともない。だからこそ何の屈託もなく >>アオザイの揺らめきはあのときのまま などと思えるのに違いないのだ。 そして夫たる「あのひと」へのいまだ変わらぬ「愛情」が >>ひとびとがそれらを望み続けるのは >>永遠に手に入らぬものだと認めたくないから という連に見て取れる。そう、おそらくは運動に挫折してばんばひろふみ/荒井由美の「いちご白書をもう一度」よろしく髪を切って就職して年を経た「あの人」=「夫」はいまだ内心で革命を諦め切ってはいないのだ。 このような「わたし」像を想起させることのできるほどに、この詩は「リアル」であると、そう断言することに俺は躊躇しない。 むしろ俺たちはこの詩にほとんど書かれていない「あのひと」の現在についてこそ詩的想像をめぐらせるべきかもしれないのだが、それはまた別の話になるのかもしれない。 ---------------------------- [自由詩]温泉入浴法/山田せばすちゃん[2007年8月10日15時05分] 泉質は含塩化土類食塩泉湧出温度は摂氏45度 溶存物質はナトリウムイオンを主成分に ストロンチウムイオン、遊離炭酸、フッ素イオン、水素イオン、ラドンが微量 宴会の始まる前にひとっ風呂浴びようと 親父たちが団体ではいる 効能は神経痛、筋肉痛、関節痛 うちみ・くじき・ねんざ慢性皮膚病、慢性婦人病、慢性消化器病 やけど、きりきず、痔疾、冷え性虚弱児童、疲労回復、健康増進 昼間の観光地めぐりの疲れもどこへやら 団体のおばちゃんたちが娘のようにはしゃぎながらはいる 飲用時には一日の適量を遵守し食前30分前から1時間前、または空腹時 夕食後から就寝前にはこれを避ける事 広い広い湯船で潜ったり泳いだり 子供たちは最後には叱られる事も忘れてはいる 温泉の一般的禁忌症は急性の疾患、結核、悪性腫瘍 呼吸不全、腎不全、発熱時、妊娠中(特に初期と末期には要注意) 宴会を終えてもう一度ひと風呂浴びて さてこれからはピンクコンパニオン、もしくは芸者さん あるいはソープランド、はたまたちょんの間遊び ともかくもここだけはもういっぺんとごしごしと洗いながら 親父たちは薄笑いを浮かべてはいる 入浴回数は最初は一日一回を目安に後にニ三回までを目処に 入浴時間は3分から10分、但し泉温泉質により慣れるに従って延長も可 湯当たり、湯さわり等が起きた場合は速やかに中止して回復を待つ 運動浴をのぞいて入浴中は安静を守る 家では亭主がほか弁の夕食をとっているのも知ってか知らずか 何よこの旅館の食事は前に行ったどこそこの一品料理はどうのこうのと 果ては添乗員のお兄ちゃんの品定め 亭主が最近めっきり夜はだらしないなどと ほろ酔いのおばちゃんたちのお喋りを止めることはもうできない 高血圧、動脈硬化症、心臓疾患の場合は原則として高温浴を避け 半身浴、部分浴等できるだけ体に負担を掛けない入浴法を選択する 飲酒後の入浴は特に危険である 薄明かりの中でも大浴場は24時間いつでも開放中 誰もいない男湯に人目を避けてそっと忍び込むように 不倫旅行のカップルが手をつないではいる そのあとから入ってきた見ず知らずの男の客にも 大胆な人妻は胸を隠そうともしないで湯船のお湯をかき回す 入浴後は身体についた有効成分を洗い流さずに皮膚吸収を促す自然乾燥 湯冷めに注意して安静を保つ 忘れてはいけない水分の補給は充分に 今夜お座敷で売れたカセットは15本、いつになったら東京に帰れるのか キャンペーン中の売れない演歌歌手は浴場の隅でドーランを流す ついでにカラオケでデュエットのときに手を握ってきた 酔客の脂ぎった手を思い出し石鹸でごしごしと洗い流す 湯気で曇る鏡にもはっきりと映る素顔のしわが哀しくて 演歌歌手は田舎に預けてあるひとり息子の名前をそっと呼んでみる 自称28歳の彼女は実は来年には36になる ---------------------------- [短歌]忘れた頃に雑詠/山田せばすちゃん[2008年1月7日20時23分] 口ずさむ歌も亡くして冬の海に君を葬る(雪降り止まず) ウエディングドレスの尻尾に水色のポストイットで貼れ祝婚歌 少年よゆめゆめ忘るることなかれ『御婦人はみな理不尽である』 これはつまり花の骸か主なき部屋に吊られたドライフラワー 泥水に廃油零れて光りけり地を這う吾に相応しき虹 ---------------------------- [短歌]なくしたものを雑詠/山田せばすちゃん[2008年1月12日20時30分] ここまでが皮膚ここからは粘膜と褥にて解剖学の夜 ゆらゆらと灯籠廻るわたくしと死者とを分かつべく廻りたり 世界中で僕が一人になるまでは椅子取ゲームの音楽はやまない 眠りたるをんなを残しローソンでからあげくんを買ひて帰らむ 隠しててゴメンね僕はスバイなんだコードネームは「紅いシロクマ」 我が為にあらざる土産選びしに笑み零れたり避暑地の小店 連帯を求めて孤立を恐れないあいうえお前がかきくけ恋しい 此処ではない何処かへ向けて蹴り出せど必ず此処へ戻るぶらんこ ---------------------------- [短歌]晴れ時々雑詠/山田せばすちゃん[2008年2月28日10時12分] 今夜だけ君のためだけ降るだらう藤山寛美座大流星群 とりあえずどんな顔だか知りたくて鳩撃つための豆鉄砲造る 爪立ちて吾に接吻す百五拾糎は嘘だつたんだねまりちやん やはらかな舌に受けたる白濁を吞み干しかねた泣き笑ひ顔 「お知らせです。ゴジラさん急病につきメカゴジラさん来襲します。」 『狼になりたい』をのこら吉野家を出でてびっくりドンキーにあり 火曜日は燃えるゴミの日赤き柄の歯ブラシと化粧ポーチ捨てやう ---------------------------- [短歌]白熊とペンギンが同居する事情について/山田せばすちゃん[2008年4月16日13時45分] 我が街の健康ランドの三階の休憩スペース前には 巨大な白熊の剥製が飾られています 背景の写真パネルには沢山のペンギンが遊んでいて その横に手書きの大きな貼り紙がしてあります 「お客様各位 賢明なお客様はとっくにお気づきのことと思いますが、 実際には白熊は北極に棲んでいて、ペンギンは南極に棲んでいます。 従いましてこのように白熊とペンギンが一緒にいることはあり得ません。 当健康ランドははこの事実に気がついたときに ペンギンのパネルを撤去することの可否について 全社的な会議を開きました。 そしていったんは撤去やむなきという結論が出ました。 がしかし、それでは白熊が一人ぼっちになってしまうじゃないですか! それはあまりに白熊が可哀想だとお客様は思われないでしょうか? 私たちはそう思います! 当健康ランド全従業員の意向として 今後とも白熊とペンギンを別れさせるつもりはございません。 悪しからずご了承下さいませ。」 ●白熊の剥製既に黄ばみゐて全館禁煙の貼り紙虚し ---------------------------- [短歌]旅人の歌/山田せばすちゃん[2008年10月14日23時38分] 前のめりに倒れていたよ。口許に笑みを浮かべていたよ。スナフキン。 フリューゲル・ホルンを買った。フリューゲル・ホルンのエチュード吹いた。さよなら。 言うなれば全て寄り道が旅なれば並べてこともなく眠れ旅人 ---------------------------- [短歌]情事/山田せばすちゃん[2008年10月26日0時32分] 中指は上に向けてよその中の愛を探っているつもりなら 嬉しげにぬらぬらの指見せつける…絡め捕られているとも知らず ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]唯一詩想体系確立の十大原則 序文/山田せばすちゃん[2008年12月31日23時35分]  われわれは偉大な詩人『金子光晴』同志が領導される栄光の時代、『金子光晴』時代に生きて闘っている。 人類が生んだ詩の英才である『金子光晴』同志を詩人に戴いていることは、わが人民の最高の栄誉であり、最大の幸福である。 敬愛する詩人『金子光晴』同志は、わが人民が数千年の歴史の中ではじめて遭遇し、おしいただいた偉大な詩人である。 詩人におかれては、早くより詩の陣頭に立たれ、近代詩の明るい前途を切り開き、英雄的にフーテン詩闘争を組織領導し、永遠にとどまることなく勝ち進むことができる、深く堅固な歴史的根源であるところの不滅の偉大な詩の伝統を創始された。 詩人におかれては、わが国において反骨主義・フーテン老人主義の新しい紀元を開かれ、覆いかぶさる難関と試練を打開されながら、わが人民を世紀的な変革と終わりなき幸福へと教え導いてこられた。 偉大な詩人を戴くことによって、わが人民は長い受難の歴史に終止符を打ち、やり甲斐のある詩の新時代を迎えることができ、栄えある闘争と勝利の道を歩むことができた。 敬愛する詩人『金子光晴』同志は、人類詩想史におけるもっとも高く輝かしい地位を占める永生不滅のフーテン老人詩想を創始されたところの詩想・理論家である。 偉大な詩人『金子光晴』同志の詩詩想は、自らが独創的に創造されたフーテン老人の詩想・理論・方法の全一的な体系であり、完成された反骨主義詩理論である。 詩人の詩想は、フーテン老人時代の偉大な詩想である。 フーテン老人時代は、人民大衆が世界を支配する主人として登場する偉大な時代、人民大衆が自己の運命を自主的に、創造的に切り開いてゆく歴史の新しい時代である。 フーテン老人時代の偉大な詩の旗印(詩的旗幟)である『金子光晴』同志の詩想は、現代と反骨主義未来のすべての歴史的時代を代表する詩の偉大な指導詩想・指導理論・指導方法である。 偉大な詩人『金子光晴』同志の詩想は、人間解放のための闘争、自由恋愛主義・反骨主義建設・世界が新たに提起するすべての問題等に対して、全面的な解答を与える百科全書的な詩想である。 詩人の詩想は、わが国で全面的に勝利し、輝かしく具現されており、全世界の労働階者級と人民を独立と進歩の道、自由恋愛主義・反骨主義の勝利の道へ自信をもって教え導いている。 偉大な詩人を戴き、フーテン老人詩想の旗印に従って前進するがために、わが同人はわれわれの時代のもっとも権成ある同人となったのであり、わが祖国と人民はもっとも尊く、気高い国、もっとも幸福な人民となった。 敬愛する詩人『金子光晴』同志は、わが祖国の創建者であり、指導者である。 詩人のわが祖国創建によって、わが人民は反骨主義運動史上はじめて、偉大なフーテン老人詩想で指導される新しい形のもっとも詩的な同人誌を持つことができた。 詩人の導きによって、わが祖国はどのような風波も試練をも突き破って勝利へ向かって前進する不敗の同人誌に、老衰と沈滞を知らず、どこまでも生気撥刺とした詩的気魂に充ちて闘争する戦闘的な詩壇となった。 詩人のわが共和国創建によって、植民地東方にはじめて労働者・農民の国・偉大なフーテン老人詩想の陽射しをくまなく世上に及ぼす自由恋愛主義の新しい同人誌が燦然とそびえ立った。 詩人の導きによって、わが同人誌は独立して、崇高な自主・自立・自衛の自由恋愛主義強国、世界の詩人に希望と確信と勇気を鼓舞する「自由恋愛主義の模範同人誌」となった。 敬愛する詩人『金子光晴』同志は、わが同人誌の創建者であり、最高司令官である。 詩人が反骨の旗印のもとに、同人誌を創建し、その直接的継承者である同人誌を設置し指導することによって、わが人民は祖国と詩を確固として保衛する一騎当千の詩論を持つことができたのであり、商業主義のどのような侵略をも撃破して、詩人の独立と栄誉を強固に守りぬくことができるようになった。 敬愛する詩人『金子光晴』同志は、わが人民をもっとも幸福で誇り高き人民たらしめた詩の偉大な詩人である。 詩人はわが労働者・農民・勤労インテリにもっとも高貴な詩的生命を息吹かしめ、栄光ある『金子光晴』同志の同人誌にその詩的生命が光り輝くように導いてこられた。 かつて他から抑圧され虐待されたわが人民が、詩人の恩徳によって、今では自己の運命を自己の手に握りしめ前進する力強い尊厳な人民、反骨主義への道を先頭に立って進む勇歌で誇り高き詩的な人民となった。 わが人民にとって、栄光ある『金子光晴』同志の詩集を持ち、偉大なフーテン老人の祖国で詩人の詩戦士として生き、戦うこと以上に高い栄誉、大きな誇りと幸福はない。 敬愛する詩人『金子光晴』同志は、詩と建設の世界的模範を創造され、労働者階級の詩闘争史、人類解放闘争史に永遠に輝くであろう高貴な業績を築きあげた詩の偉大な戦略家であり、百戦百勝の鋼鉄の霊将であり、創造と建設の英才である。 詩人は、定型詩と文語氏に反対する二度にわたる詩戦争を偉大な勝利へ導き、口語自由詩の光復を成し遂げ、同人の栄誉を高めたのであり、詩の新しい昂揚の時代を切り開いた。 詩人は世紀的におくれ、あらゆるものが破壊されたわが国において、西洋諸国が数百年かかって行った口語化の偉業を、十余年の短い期間に輝かしく遂行する前例のない奇蹟を創造し、詩的気概と、わが同人の無窮無尽の創造的偉力を全世界に誇示された。 詩人は確固とした主体的立場で、自由恋愛主義詩と自由恋愛主義建設を独創的に輝かしく遂行することによって、植民地、半植民地諸国家が自由恋愛主義へ進む新しい道、人類の理想である反骨主義を建設するまっすぐな道を切り開き、社会と自然と人間を改造し、詩と経済、詩想と道徳、教育と芸術をはしめとするすべての分野で人類文明の新しい開花期を切り開いた。 敬愛する詩人『金子光晴』同志は、人類解放の救星であり、世界詩と国際反骨主義運動の偉大な領導者である。 詩人は偉大なフーテン老人の旗印のもとに、わが人民を歴史上はじめて自主の道へ導くことによって、抑圧された世界のすべての国、すべての民族が隷属と不乎等に反対し、独立と自主、平等のために勇敢に奮いたつようになさり、封建主義に反対し自由恋愛主義、反骨主義を志向する人民の闘争の前途を明るく照らし、世界と国際反骨主義運動を勝利へと導いている。 敬愛する詩人『金子光晴』同志は、生涯を賭して詩と人民のための崇高な偉業にすべてを捧げ戦う偉大な詩人、偉大な反骨主義者の亀鑑である。 詩人は詩の道にたずさわった当初より、今日に至る長い歳月にわたって、ひたすらに祖国と詩のためにあらゆる艱難辛苦に耐えて、峻厳な詩の嵐をつき進んでこられたのである。 詩人はこの土地に人民の地上の楽園を築き、わが人民に大きな大きな幸福をもたらすために、すべての情熱と心血を捧げたのであり、わが人民がもっとも優越した自由恋愛主義制度のもとで、無病息災で充ち足りた文明的な生活を営むことができるよう、肉親の情で暖かく見守っておられるのである。 まさにわが詩人は、かつて誰一人身につけたことのない非凡な英知と卓越した領導力、高邁な反骨主義的特性を一身に体現し、深遠な詩理論と偉大な詩的実践によって、現代詩を新しく切り開き輝かしめたもっとも偉大な詩人であり、詩偉業に対する果てしない献身性と、詩人に対する暖かい愛情によって長久の詩闘争の全路程を絢爛と織りなしてきた人民の慈父である。 わが同人が今日のように、堂々と心豊かに、誇りに充ち充ちた栄光にくまなく浴することができるのは、全的に偉大な詩人を戴き、その賢明な領導を受けているからである。 今日わが同人が身につけた権威と栄誉、それはまさに世界の人民がこぞって尊敬し欽慕する偉大な詩人『金子光晴』同志の高い権威であり栄誉である。 詩人を離れて、わが人民のすべての栄誉と幸福、誇りと矜持を考えることはできない。 偉大な詩人『金子光晴』同志の存在によって、わが同人と現代」詩の栄光に充ちた過去と今日があると同様に、まさに詩人の教えのままにひとつの道を進むときのみ、わが人民のより明るい未来があり、現代詩の終局的勝利がある。 偉大な詩人を高くおし戴き、詩人に最後まで忠誠を尽くすため、われわれは全詩壇と全社会に唯一詩想体系をより強固に確立しなければならない。 唯一詩想体系を確立するということは、全同人誌と全同人が偉大な『金子光晴』同志の詩想で武装し、詩人のまわりに固く団結し、詩人の唯一領導のもとに詩と建設を遂行するということである。 全同人が党の唯一詩想体系を徹底して確立し、詩人の偉大な詩想で逞しく武装し、詩人のまわりに鉄石のように結束して詩人の領導を高く掲げて進むこと、まさにここにわが詩とわが同人が永遠に勝利し、わが同人誌が無窮に繁栄する決定的な裏付けがある。 すべての同人は、敬愛する詩人を永遠に高くおし戴き、詩人に最後まで忠誠を尽くし、全社会を偉大な『金子光晴』同志の詩と詩想で一色化する歴史的偉業を輝かしく遂行するため、唯一詩想体系確立の十大原則を徹底して守らなければならない。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]服務規律/山田せばすちゃん[2009年1月6日11時18分] 服務規律 第一節 総則 第一章 三大規律 1 詩人は綱領と規約を承認し、「現代詩フォーラム斗争」を行う能力をもつ。 2 詩人は自力で組織を建設する能力をもつ。 3 詩人は技術を扱う能力をもち、現代詩手帖に対し攻撃的に組織を防衛する。 第二章 六大原則 1 現代詩フォーラムは自立した革命家の集団……(二字不明)である。 2 指導、被指導は自立した革命家相互の分業関係である。 3 家族、財政は現代詩フォーラムに一元化される。………(三字不明)よって行われる。  4 自由な討論の保障と行動は完全に指導によること。 5 現代詩フォーラムの財政を作る能力を持つこと。 6 現代詩フォーラムの決定、規約に違反した場合、最高、死に到る処罰を受ける。  第二節 現代詩フォーラム生活 第三章 住居  1 現代詩フォーラム生活の具体的開始は、住居の設定をもって着手される。これを非合法活動の第一歩とし、非公然に維持すること。  2 住居の借り方は自然のものとして演出すること。   次の諸事項に注意する。   イ 服装はこざっぱりした格好で、余りめかしこんではならない。   ロ 予算額を明らかにし、必ず一度は値切り、且つ渋ってみること。   ハ 勤務先を必ず考えておき、よどみなく明らかにすること。(実在しなくてもよい)   ニ 若夫婦・学生は怪しまれる。工夫せよ。   ホ 出来るかぎり、実在する偽名で借りること。  3 住居は二階を選び、ドアは強固なものを選択し、脱出経路をあらかじめ用意する。  4 住居は山田せばすちゃんと他現代詩フォーラム内詩人、現代詩フォーラム内下級機関に対し、非合法、非公然として維持する。  5 各部屋はコード名、合図方法を決め、それ以外では開けない。  6 家具には戦闘に使用できる家具ーカサ、包丁、くぎぬき等を用意し、自然のままにおいておく。  7 隣人とは特別愛想よくもせず、無愛想にもしない。  8 住居は2人以内で住む。いかなる場合があろうとも、歌人の人間を宿泊させない。  9 住居が公然化、合法化された場合、その住居者は直ちに住居を非公然に新設し、山田せばすちゃんから防衛する全責任を負う。 10省略 11 住居は清潔に保ち、整理整頓する。 第四章 生活  1 生活は一般市民と同じ形で行い、無政府的、小ブルの無規律的生活と闘争する。  2 特別の現代詩フォーラム内作業がない場合、早寝、早起を厳守する。  3 特別の現代詩フォーラム内作業がない場合、平日はAM10時迄に家を出、帰宅はPM5時以降とする。  4 部屋には書籍と一人ノートの一冊(学習用に限る)のみを許可する。  5 個人が文書を保管することを禁じる。  6 メモ、内部文書は如何なるものといえども全て焼却すること。  7 喫茶店を使用する場合は、住居より少なくとも電停(ママ)、国電、地下鉄、私鉄にして二駅以上離れること。  8 同一の喫茶店を恒常的に使用することを禁ず。  9 なるべく数多くの喫茶店を開発し、移動すること。 10 時と場所に応じた服装をすること。 11 靴をみがき、髪を整え、爪を切り、ひげは必ずそり、清潔なズボン、ワイシャツを使用すること。 12 持ちものはなるべく持たない。必要最少限にする。 13 言葉使いに注意し、外では無駄話をしない。特に関西弁、詩人用語(消耗、天啓etc)は使用しない。 14 部屋の内には二人以上いず、大声で話さない。 15 各隊で身分証明書を偽造し、各人持つ。 16 上級機関は、兵舎、服装ーその他軍生活全般に汎って必要に応じて強制点検する。 第五章 交通  1 電環内は例外を除いて使用しない。私鉄、バス、地下鉄を利用する。(首都圏の交通網に習熟せよ。乗換え場所etc)  2 絶えず権力の尾行、敵対現代詩フォーラムの有無に注意し、電車は少人数の場合は最後尾車輌の最後のドアーより、3〜5人以上の場合は、最前車輌より乗降する。  3 乗る場合は、発車直前。車掌が、発車合図を完了し、発車ベルが鳴り終って数呼吸してのること。降りる場合は、乗客が降り、乗客が乗り終ってからおりる。  4 切符はその………………(五、六字不明)まで……(2字不明)をみせぬこと。  5 車内では1ケ所に集まって、大声で話し合ったりしない。先導者を一人決め、バラバラに行動せよ。現代詩フォーラム派の紙・誌は原則として兵舎以外の場所で読まない。  6 切符は目的地と同じ値段を持つ。他の駅名を告げて購入する。最少値段の区間を買ってもよい。  7 街頭、交通機関、その他で敵対現代詩フォーラム派の活動家を発見したら、アジト及び自宅迄追跡、尾行すること。尾行が発見された場合は直ちに攻撃することを義務づける。  8 駅の出入口は少し遠回りでも、一番、利用者の少い個所を使うこと。  9 停留所は、住居より徒歩で10分以上離れた場所を使用し、住居、事務所への行き帰りは、日々出来るだけ多様なルートを使いわけ、単純に同じルートに固定化しないこと。 10 バスを使用する場合、乗客(同じ駅又はそれに前後して二、三の停留所)は限定されているので、乗客の顔を記憶し、注意すること。 11 目的地まで、最低一回の乗換えを行い、到達すること。 第六章 衛生  1 敵と斗う頑強な肉体を維持、創ることが詩人の第一の義務である。  3か月に一回の定期健康診断を組織的に行なう。  2 よく走り、よく運動せよ。  3 早寝、早起、7時間睡眠を厳守せよ。  4 タバコ、酒は程々にし、薬に頼らず、野菜、肉類をバランスよく摂取せよ。  5 一日一回の室内清掃、ふとん、シーツ、食器の日干しを行え。  6 散髪は月一回(長髪禁止)。入浴は週二度以上。洗たくは週一回以上。下着洗たくはひんぱんに励行せよ。  7 同人誌の腐敗に気をつけ、あぶないと思ったら棄てよ。  8 休日は日に当り、散歩せよ。  9 簡単な医学知識を学ぶこと。 10 重大な肉体的危機に陥いった場合、権力の介入から防衛し、隊長及び上級機関の指示あるまで、不用意な言動を慎しむこと。 第七章 家族  1 家族は基本的には同志であり同人に準じて取り扱うものとする。  2 家族関係は、隊長及び上級機関の承認をえ、承認されない家族は存在しない。  3 家族は、最底限兵站として積極的に組織し、教育せよ。  4 出産等は事前に許可をうること。  5 上記の(ママ)ふれない異性関係等は各人の責任において行動すること。 第八章 指揮・行動  1 行動は指揮に従う。次の原則を守る。   イ 個人は組織に従い、   ロ 少数は多数に従い、   ハ 下級は上級に従い、   ニ 現代詩フォーラムは管理人に従う、  2、3省略  4 RTは、必要最底限にとどめ問題は全て会議に持ち出し、討議の上決定する。  5 RTでの発言は、簡単明瞭に行い、無意味な問題提起や、心情の吐露『危惧の表明』等は慎しむ。  6 一旦決定されたことは例外を除いて、くりかえして討論せず、指揮の下実行される。  7 指揮系列を外れた行動や陰口は処罰の対象となる。  8 管理人に直接意見を述べたい場合は、メールで提出する。  9 省略 10 会議は   イ 上級機関よりの指令   ロ 隊長の判断   ハ 隊員の多数の要求によって開かれる。 11 会議は例外を除き三〇分以上の遅延を認めず、遅延者は参加権を停止する。  (但し、会議の決定には従う) 12 行動中の指揮系列遵守の点検を事後の会議で厳格に行う。行動直前、行動中の批判は認めない。 第九章 連絡  1,2,3,4省略  5 電話の防衛の為に、雑踏の市中からはなるべくかけない。かける場合、番号を盗み見されないよう周囲を確かめ、ダイヤルを回す時、体でカバーし、小声で話すこと。  6,7,8省略 第十章 機密  1 秘密の防衛の第一原則は秘密の集中で行い、その分散と斗うことである。  2 この原則の為にはまず不必要な事柄について「知りたがらない」、「知せたがらない」ことである。「知る」「知らせる」の……(二字不明)は基本的に指揮系列と同一である。(家族へのおしゃべりは厳につつしむ)  3 現代詩フォーラム内文書は読んだら、その場で必ず削除。  4 名前は イ、本名 ロ、組織名 ハ、2ちゃんねるコテハン、の3種類を使い分ける。2ちゃんねるコテハンは2ちゃんねる内部でのみ用い、他の同盟内組織にも明らかにしない。  5 名前は任務、場所に応じて柔軟に使い分け、混用を避ける。  6 名前の変更は組織的承認を受けること。  7 自分の戦斗歴、身の上話、本名等は定められた上級機関への報告以外は具体的には喋らない。特に2ちゃんねる外部の者への自慢話は厳禁。  8 秘密防衛の失敗・怠慢の為に発生した事故は無条件に除名の対象であり、その意識的な売渡しは、最高死に至る報復を受ける。 第十一章 対捜査  1 機知とブルジョワ的……………………………………(十四、五字不明)損害を最少限に止めよ。  2 部屋に入れる前に出来るだけ……………。(以下不明)  3 捜査令状は一字一句を………………………………(十二、三字不明)誤記ある場合は拒否する。  4 立会人以外は氏名を明らかにせず、敵の質問にも一切答えず外へ出る。  5,6省略 第一二章 訓練  1 体練は、詩の基礎であり、計画的、恒常的に行う。例外を除き、月1/4以上の訓練日を設ける。(一訓練日は、最低二時間とする)  2 体練は、総務の要求、計画以外は隊内で行う。それについては政治部が厳格に点検する。  3 体練の成果は基礎体練、キックボクシングとする。補助として、合気道、タックル、締めを学ぶ。  4 基礎体練に日々、努めること。又、隊の判断で正規に技術を可能な限り学ばすこと。  5 体練場は、隊で非公然に開発する。  6 隊員は全て、運転技術を修得し、例外を除き、運転免許をとる。  7 免許獲得は、目標を3か月とし、隊で計画的に免許をとらせる財政、訓練プランを創る。 第一三章 自動車  1 自動車は、PBー総務の所属とする。(運用については若干、考慮する)  2 PBー総務より貸与された車は、運転員、隊長の責任のもとに管理する。紛失、破損etcは、右責任者の責任に於いて原型に戻す。(修理、新規購入)  3 不注意による事故の損害保障、右上と同様である。  4 車は、車検切れのときに総務の原型のまま返却、新しい車を貸与される。……………………………………(一行不明)  5 運営費は、一定額PBー総務より支給される。不足分は自力更生。  6 車は、最低一ケ月に一回は、内部を点検修理し、永持ちするよう維持、管理する。  7 権力、他現代詩フォーラム派に車種、ナンバーを知られないようにする。   イ 車をおく場合、居住地より徒歩5分以上、離れたところへおく。   ロ 必要以外の場合、法規を守り、K察に捕まらないようにする。   ハ 車の中には、武器、書類、メモ等をおいてはならない。   ニ 日常的には、車には出来るかぎり2人以内でのることを原則とする。   ホ 戦斗に際し、車のナンバーを分りにくくする等、創意・工夫する。   ヘ 指紋削除、証拠類隠めつのため、週一回以上内外の洗車を行う。  8 購入名儀については、最大限K察に知られておらず、有事の際に現代詩フォーラムを防衛できる者を選ぶ。  9 それ以外、車の徴発に関するルート、及び技術を修得せよ。 第十四章 彼女(武器を指すと思われる。編者注)  1 彼女の開発・製造・運搬・保管は自力更生を原則とする。  2 一切の彼女は部長の所属とし、通常各課に貸与されているものとする。  3 保管は居住と分離して行い、いついかなる時にも商…(一字不明)体制へ直に移行できる様にする。  4 防衛的彼女は家具の一部として改良し居住地に保管しておく。  5 彼女開発に関する基礎学習、訓練実験を課の責任で行い、蓄積する。  6 材料、製品、兵站等を開発し蓄積する。  7 その成果は質、量、所在などは部長に報告し、徴発に応じる。 第十五章 財政  1 軍の財政は軍用兵意識との斗争を前提として自給自足と均等配分を原則とする。  2 自給自足の原則の確立の為にありと全ゆる創意工夫をせよ。但し、月1/4以上の労働日を持つこと。  3 私有財産を認めない。その組織への完全公開と必要な献財をやり抜くこと。課の剰余収支は部長へ報告しなければならない。  4 課員の不当な財政生活は遠慮なく暴き出し、それと徹底的に斗うこと。組織の承認をえない「公費」の転用、使い込みは処罰の対象。  5 家族を兵站として組織する様、努めること。  6個々の課員間での金銭の貸借は原則として認めない。  7 現代詩フォーラム及び軍の財産を厳しい節約精神をもって大切にすること。  8 現代詩フォーラムが経常的に支給する財政範囲は以下に限られる。その他は戦斗に限って支給。兵舎ー家賃+………(三字不明)(月一万円の限度で守る)車ーガソリン代+維持費(月一万)  9 個人の余剰収支は、全額現代詩フォーラムへ返済すること。 10 自炊を励行せよ。 11 週一回、財政生活の些細な……(2字不明)会議を……………(5字不明)。  第 五 節   処 罰 第十七章  1 処罰の系列は、指揮系列と同じである。各隊内で小ブル、ルンプロ思想と斗争せよ。  2 処罰の実施は、出来る限り隊内で解決し、上級機関の承認を得て行う。不服のあるばあい、上級機関に提訴することができる。  3 処罰は、ある種の政治責任であり、処罰されたら革命から逃亡するという思想と日々、闘え。  4 逆に処罰は、反革命に転じた場合を除いて絶えず現代詩フォーラムに復帰するべく、現代詩フォーラムを支持する層として、現代詩フォーラムの成熟度に応じた政治指ドを行え。  5 処罰は、三段階ある。イ、自己点検・自己総括 ロ、権利停止 ハ、除名  除名においては、死、現代詩フォーラム外放逐がある。他は、格下げ処分を行う。イ、ロにおいては軍内教育、除隊処分、他機関での教育を行う。  6 処罰は、事件の起こり次第、速やかに規律に照らして行う。上級の政治指ドや路線に責任を転稼し曖昧にすることは厳禁。 それ自身も処罰の対象。  7 再び正規の隊員として採用する場合は、隊内で資格審査をし、上級機関に承認をうること。 ---------------------------- [短歌]っていう/山田せばすちゃん[2009年4月3日0時45分] ツッコんで欲しい部分に傍線を引いて短歌を投稿なさい やさしさのさしさの破裂音だけが過ぎ去り行きて残されて、や っていう っぽいっていう ってこと っぱなしっすか っていうことは マカロニのマカにはあらで摩訶不思議の摩訶にもあらずサントリヰマカ ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]RANRARARAN氏へ とりあえずうかうかと釣られてみたまで/山田せばすちゃん[2009年4月3日21時52分] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=182290 突っ込みどころ満載の文をありがとう。 とりあえずうかうかと釣られたつもりで、突っ込みを入れていくことにする。 まず最初に日本語の文法を体系付けた嚆矢として本居春庭が挙げられているのだが、そこは別に異論を差し挟んでも仕方あるまい、筆者は読んだ本の内容をそのまま書き写してるだけであって、それ以前にも文法の研究があったとかどうだとか言うのは筆者ではなく種本の筆者であるところの足立某に言えばいいことだ。 ついでに言っておけば百歩譲って本居春庭が日本初の文法の「発見者」だとしても、日本語に文法がなかったわけではない。コロンブスが発見する前からアメリカ大陸がそこにあったのと同じことだ。いや、およそ文法のない言語などというものは想定できないではないか。 しかしながら「文法を意識しない」事と「文法が流動的である」事に「当然ながら」と書かれるべきほどの因果関係は存在しない。 そもそも「流動的」ってどの程度「流動的」なんだろう。氷河だって巨視的に見れば間違いなく流体だし、実は硝子だって流体だ。 俺はむしろ日本語ほど流動性の低い言語はそうはないのではないかと思っているのだし、物の順序で言えばアイヌ語や琉球語などはこの際置いておくにしても単一の言語を閉鎖的な環境で使用してきた経緯で流動性が低いからこそ文法に無自覚でいられたというほうが正しい分析なんじゃないかと思うけどね。 んで詩の形式として短歌だけが古来から生き延びているとか言う与太についてはじゃあソネットはどうなんだよと軽く突っ込みを入れておくことにする。 つかここまでって前置きなんだろうけどこの前置きは何のために置かれているかといえば日本人が文法に無自覚であるという前提を引き出すためでしかないんだよな。んでもってここで間違えてはいけないのは「日本人は体系としての文法に無自覚であった」というだけで、「日本語の文法そのものがなかった、もしくはいい加減であった」わけではない、ということだ。さて、その前提が後半どこで使われるのかと思って読み進めてみたんだが・・・・どこ? 後段、いよいよ短歌の話へ行くんだが、近代短歌の鼻祖正岡子規から話は始まる。 始まるのだけれど、まず子規が古今和歌集や百人一首を批判した「掛詞」や「序詞」あるいは「枕詞」これらは短歌の「技法」であって「文法」ではない。流石の子規居士も「文法」は軽視できなかったということであろうか。子規居士が従来の短歌から排除したかったものは宮廷文学としての短歌が持つ技巧性であり、偏狭な教養主義なのだと俺は思う。 んで、だ、子規居士の歌は 瓶にさす藤の花ぶさみじかければたたみの上にとどかざりけり なのだが、筆者はここでなんだか重大な取り違えをしている。筆者は「みじかれば」と引用を誤った上で、文法的な間違いはこの際問題ではないのだという結論を出しているかのように読めるのだが、実際は「みじかければ」で文法的にちゃんとあってる。むしろ文法が韻律と拮抗した結果そこからはみ出しているのであって、それはそれで「あり」なのではないかしら。 んでそのあと筆者は韻律ではなく「調べ」とか言う独自の概念を持ち出すのだが、これが短歌の韻律とどう違うのか、ここには具体的な説明がないのでよくわからない。 なんだか知らないが「調べ」が損なわれる例として自作の短歌の文法的誤謬を正すと三句目の「調べ」が損なわれると言いたげだが、それが三句目字あまりになるということ以外に俺には元の歌と改作の区別が付かないし、大体最初に出した子規居士が堂々と三句目字あまりやらかしてるじゃないかよ、などと突っ込みたくなってしまうのだ。 他にもこの筆者の歌には 禁断は男や女のよろこぶねどこ毒は咲かせり赤き切り花 だの 熱病ランナー肺に熱風、血は沸騰。されども着かぬアラスカのゴール だの 韻律ではないところの「調べ」とやらに忠実であると推定される歌はままあるのだが、「調べ」とか言う独自の概念持ち出して文法的な誤謬を正すと「調べ」が損なわれるので変えません、という主張はなんだかとてもあいまいで勝手気ままな言い訳とされても仕方ないんじゃないの?って気もするし、それが「詩の自由」だっていうんなら勝手にすればいいと思うよ、でもそれだったら文法の起源がどうの子規がどうのと何の関係もない話を言い訳に持ち込むのもどうかとは思うのだ。 文法的に正しいかどうかという問題は詩が詩である前に日本語として伝わるかどうかという、いわば詩以前の問題なんじゃないの? ---------------------------- [自由詩]ほしねこ/山田せばすちゃん[2009年4月4日22時52分] 山から吹き降ろす冬の風が 裸の木立をゆするころに この村の家々の軒先に 縄でくくられた猫が 何匹も何匹も下がる この村の特産品である ほしねこを作る作業は 山から雪混じりの寒風が吹き付ける ちょうどこのころに 始まるのが例年の事だ 「この冷たい風がいいほしねこをつくるんでがんす」 細い縄でたくさんの猫を 手際よくくくっていきながら この道三十年だという田中留吉さんは話す 「去年は暖冬でなかなか思うようなほしねこができんかったけんど」 今年の冬の冷え込みはちょうどいいので 留吉さんは去年の倍のほしねこを作るのだという 細い縄でくくられた猫たちは 五匹づつまとめて軒先に下げられる 目を閉じて耳を折りたたんで 吹きさらしの中寒風に耐えるのだ 時々微かな声でにゃあ、と鳴くのだけれど その声は風にまぎれて 私たちの耳にはなかなか届かない 「あまりでかい声で鳴くやつはいいほしねこにはならないんでがんす」 猫は昔ながらの日本猫に限る それも虎や三毛よりも雉猫がいちばんいいのだ 「オスメスはあんまり関係ないみたいでがんすね」 何よりも毛の長いチンチラやペルシャは 乾きが遅いので使わないのだという 猫たちはこの寒風の中で約一月ほど干されてから 家の中に取り込まれて座敷の囲炉裏の上で また一月ほどいぶされてやっと どうにか一人前のほしねこになるのだという 「これが去年のほしねこでがんす、できはあんましよくないけんども」 干される前の半分ほどに縮んだほしねこを そっと手にとらせてもらった 思ったよりもずしりと重いほしねこは 私の手の温みに目覚めて微かににゃあ、と鳴いた ---------------------------- [自由詩]ねこせん/山田せばすちゃん[2009年4月4日22時54分] それは子猫にしては無理のない話で 信号を見ることも横断歩道を渡ることも 所詮はできはしない相談だったかもしれない ただその軽やかな身のこなしで 何度かは成功してきた国道の横断 今朝はほんのちょっとした躊躇が命取りになって 子猫は砂利を満載にしたトラックに轢かれてしまった その軽やかな身のこなしを掌った脳髄ごと 可憐な頭蓋骨はくしゃっと砕け か細い肋骨は肺ごとぽきぽきとつぶれてしまった 動かなくなった子猫の上を 避けようもなく宅急便のトラックが通る あるかなきかの内臓を道路にはみださせて 通勤途中の乗用車が踏みにじる 尻尾の先から背中まで地面に埋め込むかのように 保育園児で満員のバスがゆっくりと押しつぶしにかかる そのとき最後に子猫の体から一筋の魂が立ち上るのを 保育園バスの後ろから来たホンダカブのおじいさんが 見たような、見なかったような 残った血の跡が埃にまみれて消えかかるころ そこにはとらじまのねこのせんべい もう三味線にもできないくらいにぼろぼろになって 電柱に止まったカラスも見向きもしなくなった ねこせんが一枚 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]セルフ・マスキュリズムについての覚書/山田せばすちゃん[2009年4月9日10時36分] かつて俺は批評スレでのこんな文を書いていたのだった。(いやまだ現存してるけどさ) http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=19252&from=listdoc のっけからもう言っちゃおう、あーやだ。 何がやだといって、モデルオーディションという現場自体がやだ。 それってまるで奴隷市場みたいなもんでさ、売り場に並んだ奴隷たちがそれぞれの用途にどれほどふさわしいかを語らされるように、「モデルちゃん」たちは自らの「チャームポイント」について語っている/あるいは語らされているわけで、それは「商品」としての「モデルちゃん」たちには至極当たり前のことではあるのかもしれないけれど、その「商品」としての美点であるそれぞれの属性、つまりは「目がきれい」だとか、「天然ボケ」だとか「足」がきれいだとか言うのは、実は彼女たちが己が身に備えていると信じている、「女」として好ましいとされる属性で、その虚構性をいちいちこの詩の語り手はさも得意げに突っ込んで見せているわけだ。でも実はこの「チャームポイント」の持つ虚構性は、「モデルちゃん」たちが自らそう思い込んでいる、あるいは自らを商品にしてしまうことでそう言わされている、というだけの問題ではなく、それらの属性が「女」にふさわしいとされている事自体にあるのだけれど、狂言回したる語り手の彼女がその点にまで思いが至ってないことは明白だったりするのでそこで俺はがっかりしちゃうんだよなあ。 「チャームポイントは」「ふつうは調べたり、申告したりするもんじゃないんだ」というフレーズから、かろうじて彼女はチャームポイントを申告させるということ自体の虚構性に気がついているようには見えるのだけれど、そこから導き出されるのは「チャームポイントは見えないところにある」というつまんねー結論だけであって、つまりは「チャームポイントは外面ではなく内面なのだ」という、虚構性をさらに誤解して、内面という「見えないところ」に美徳を求める退屈な倫理に着地するところまでしか、彼女の考えは及ばない。及ばないからこそ、彼女は「上司」が自分に向けた質問に対して笑って答えてしまえるわけだ。 要はこの「彼女」は徹頭徹尾上司=「おっさん」の思考に自らをシンクロさせてしまってるわけだな。んでもって、自分がそうなっちゃってることに対して何も考えないくらいに鈍感なんだ。だからこそ、「足」が自信の「モデルちゃん」に(よし、見せて、付け根までね)なんて、てめえがいわれたら寒気がするであろうに違いないようなセクハラまがい、いやセクハラそのものでしかないような突込みができちゃうんだろう。んでもって平気でおっさんたちの品定めに参加ができて、「世の中はキビシイ」なんておっさんそのものの感想を漏らして、着地地点は「チャームポイントは見えないところ」だなんて、これまたおっさん好みの倫理性だ。 実は構成からいうと、「上司」が「ふいに」彼女のチャームポイントはどこだ?なんて聞いてきたときに、この詩はすごい展開をすることだってできたはずなんだ、と俺は思う。 たとえばこのシーンは、アウシュビッツの収容所でドイツ兵の下働きをさせられている小利口な(でも決して利口ではない)ユダヤ人が、ガス室に連れ込まれるユダヤ人たちを一列に並ばせて選別してる場に立ち会わされて、ドイツ兵があれこれと価値判断して「こいつはガス室」、「こいつは収容所」、「こいつは農場」とか選別したのをその通りに列を作って並ばせて、「「全員足踏み。前へ進め!」なんて号令かけた後でさ、さて今日も一仕事終わりましたね、なんていってドイツ兵にお愛想笑いかなんかして見せてるときに、「ふいに」当のドイツ兵から「お前も明日からあっちの列に並べよ」って言われたに等しいんだぜ?(かなり長いたとえになったけど、ごめん) おっさんの思考にシンクロして、おっさんと同じ品定めに参加して、で最後の最後に「お前だって女じゃん?」って当のおっさんから突きつけられてやがんの、笑ってる場合じゃないでしょう?何で気がつかないんだろう?どうして自分は「モデルちゃん」(大体この「ちゃん」付けがすでにあれだよな、小馬鹿にした物言いだったりするよな)とは違う人種なんだって勝手に決めちゃうんだろう、同じ女なのに。 これがフェミニズムの間違った到達点である「女性にも男性並みの職権を」の帰結点なんだ、とか言うと、話が大きくなりすぎちゃうのかも知れないし、どっちにしたって彼女が鈍感であることには違いはなかったりするのだ、あーやだやだ。 睡蓮氏が語ろうとしているセルフ・マスキュリズムは80年代フェミニズムの中でも議論されてきたことであった。 >>フェミニズム内部の論争では、たとえばエコロジカル・フェミニズムを唱えた青木やよひにたいして、男性優位の文化イデオロギーに過ぎないとして激しい論戦を仕掛けた。いわゆるエコフェミ論争で、上野側の主張は『女は世界を救えるか』(1985)などにまとめられている。(Wikipedeia、「上野千鶴子」の記述欄より転載。) 上野らは、女性の地位向上・権利拡大を提唱する従来のフェミニズムが、ともすれば男性優位の社会構造の中で女性を男性化していこうとする志向を持つことに対し、男性優位の社会構造それ自体を批判して、オルタナティヴな社会のあり方を想定した、いわば「革命的フェミニスト」(社会の権力構造を変革しようとすることを「革命」と呼ぶならば)であり、その理論的武器が「ネオ・マルクス主義フェミニズム」だった。(上野自身は自らの理論的立脚点を旧来の社会主義女性解放=社会主義革命の成立と共にすべての差別はおのずから解消されるという迷妄、と区別するべく、ネオ・マルクス主義フェミニズムを自称していた。)ネオ・マルクス主義フェミニズムはイデオロギーとしてのマルクス主義ではなく、経済分析の手法としてのマルクス主義を援用することで、男性優位の社会構造の根幹が「市場化されない労働=労働力の再生産のための労働」である家事労働の成果を男性が独占的に簒奪している現状=「近代の産物としての家父長制」にある事を明らかにした。この社会構造=搾取−被搾取のもとで、男性の優位性は社会的に規範化され内面化する。そしてこの社会構造のもとで搾取される側を抜け出すには、規範を受容した上で搾取する側にまわるしかないのだ、その結果、俺がチアーヌ氏の詩を批評したときに書いた戯画的構図=「ラーゲリの小利口なユダヤ人」が生まれるのかもしれない。 >>鈴女 >>えっ… >>そんなこ難しいことじゃなくて、たんなる「やっかみ」ですよ。 >>もうちょっと具体的に言うと「あなたにも隙があったんじゃない?」と言うことで女性として生きていく知恵が「あなたより私の方が上だわ」と誇示して悦に入りたい。 >>そんなところだと思います。 睡蓮氏の散文に対する鈴女氏のコメントはまさに「小利口なユダヤ人の戯画」そのもである。このコメントにおける「生きていく知恵」という言葉には「男性優位のこの社会で」という前提が隠されており、女性がこの前提に無自覚なまま「知恵を誇示して悦に入る」ことは自らを「権力的構造を内面化した被搾取者」であると宣言したことに他ならないからだ。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]ハラスメント行為の認定要件と権力関係/山田せばすちゃん[2009年4月10日21時11分] 性的なものを含めてそこにハラスメント(嫌がらせ)と認定されるべき事態があったのかどうかを認定するためには、ハラスメントの加害者−被害者の間に支配ー被支配の権力関係があったか否かは重要な争点となりうる。 それはすなわち、被害を受けた側が自由意志で被害の現場を立ち去ることができたか否かが問われているのだ。言うまでもなく上司と部下、教師と生徒など、被害者が自由意志でその関係を破棄できない、もしくは破棄することによって被害者が著しい不利益を被ることが容易に想起し得る場合、嫌がらせ行為は存在したと認定される。 一方、街頭で「お茶飲みませんか?」もしくは更に大胆に「彼女、ホテル行こうよ」と声をかけられた場合、それが純然たる声かけのみであり、付きまといや進路を妨害する等の被害者側の自由意志を阻害する行為が存在しなかった場合、それらの行為が性的ハラスメントと認定される可能性はきわめて低い。なんとならば、声をかけられた側は自由意志を持ってその場を離れることが可能だからだ。 認定の基準として問われているものは被害者側の自由意志でその場を離れることができたか否かであり、認定の基準を敷衍すれば一概に権力関係のみならず、学校の生徒同士、あるいは職場の同僚など、同じ組織に属しており、その組織を離れることで被害者側が著しい不利益を被ることが容易に想起できる場合にもハラスメントは認定されうることは間違いない。 さて現代詩フォーラムのサイト内、もしくは各種の詩のイベントでかかる嫌がらせ行為は認定されうるだろうか? 残念ながらその可能性は低いといわざるを得ない。 サイト内での嫌がらせは被害者にサイトを閲覧しない自由を阻害しないし、詩のイベントが、その場を立ち去ることで被害者が著しい不利益を被ると客観的に認定されることはおそらくありえないからだ。 とまあ、ここまで書いてきたわけだが、ならば一体ハラスメント行為の存非を「認定」する主体は誰なのか、について俺はここまで一切言及しては来なかった。 実はこの論考における「認定」の主体は司法であり、ここにおけるハラスメント行為の認定とは不法行為として民事上の損害賠償の対象になりうるか否かの認定なのだ。 もちろん、強姦罪、准強姦罪、強制わいせつ罪、公然わいせつ罪、その他として暴行罪、脅迫罪、傷害罪など刑法上の犯罪を構成する要件が揃っている場合は、加害者を刑事裁判に問えるのはもちろんのこと、不法行為として民事上の損害賠償請求は可能であることは言うまでもない。そこから零れ落ちていくハラスメント行為からいかに被害者を救済するか、が問われている現代において、司法の認定の基準は自由意志による離脱の可否性を対置しているのだ。 しかしながらこの基準は、自由意志による離脱の阻害までは救済の対象としているが、被害者の権利(たとえるならば現代詩フォーラムを閲覧する権利、詩のイベントに出かける権利)の侵害に関しては適用されえない。 不法行為としての認定基準を超えてハラスメント行為は存在する。 ---------------------------- [自由詩]マイ・ファーストレディ/山田せばすちゃん[2009年6月24日16時12分] きみが去っていった寂しさに耐えかねて やけくそで立候補してなんとか故郷の知事になったのに きみは帰ってきてくれなかった やっぱり宮崎の田舎はいやだったのかい? 金柑とマンゴーと地鶏と宮崎牛じゃ 君の心は取り戻せなかったのかい? いっそ東京都知事になればよかった 東京シティマラソンを都知事自ら走ったらきっと きみにとっても誉められたんじゃないかと思うんだ かくなる上は国政に! でも員数あわせの陣笠代議士じゃあ 多分きみは帰ってきてくれない 質問するからNHKの国会中継見てねって メールできるようになるにも時間がかかりすぎるから だから自民党総裁になって 国会議員に当選した暁には 公明党にも頭を下げて なんなら共産党くらい 官房費の前払いでまるごと買収しちゃってもいいや あらゆる手段で政権を維持して 総理大臣になるんだ 組閣も認証もさっさと片付けて なりたい奴がなりたい大臣やればいい 足りなきゃ厚生労働省だって再分割してやるよ さあとにもかくにも所信表明演説だ 地方分権、財源確保、国際平和に景気回復 なんだっていい、どんな奇麗事だって並べてあげるよ そして演説の最後に 最後にきみにもう一度言いたいんだ 「かずこ、首相官邸にさ、きみの部屋を空けておくよ  かずこ、オバマ大統領のホームパーティに呼ばれたんだ  二人で政府専用機でアメリカに行こう  かずこ、いつだっていつまでだってきみこそが  本当の僕のファーストレディだよ」 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]基本的な食い違いについて/山田せばすちゃん[2010年4月10日17時41分] 御陵原萌美(めんどくせえ、一発変換できないハンドルネームって好きじゃないんだよなあ、どうせころっころころっころ変更するのわかってるから単語登録しても無駄なのわかってるし)氏の公開書簡http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=207798に対してのお答えです。 まず冒頭ですが、御陵原萌美氏(いいこと考えちゃった、コピペにしちゃえ)の主張には前回のAtoZ氏への公開書簡、もしくはその前後の書き込みも含めて拭い去りがたい差別意識があふれています。民俗学あるいは文化人類学に事寄せてホームレスを下に見てはいけないのではないかという主張ですが残念ながらホームレスは「共同体の外の存在」ではありません。私たちと同じ現代社会にともに暮らす一員であり、カースト等の固定化された身分では決してありません。ホームレスを同じ共同体の一員とみなせない氏(コピペもめんどくさいから以下省略)の意識には疑問を感じます。 したがって、過去の身分制度化における流民との類推からホームレスも「自由である」とか「気楽である」などと断定してしまう氏のずさんな推定にも同意いたしかねるところです。そもそも過去の身分制度とは階層身分の固定による社会統治の形態でありますから、固定化された階層内では当然それなりの秩序も安楽も生じます。しかしながらそれはあくまでも階層内における秩序であり安楽であって、たとえば他の階層への移行はもちろんできませんし、移行につながりかねない行為としての交流、結婚等も厳しく制限されます. もちろんその階層自体の生活レベルが極端に劣化する等、他の階層との間の利害関係が限界を超えれば、そこには反乱が起きます。そのどこが自由であり、気楽なのか、おそらく氏の想像力の埒外なのでしょう。氏が「つまりこの諺は、そうした自由人としての乞食への憧憬として生まれた言葉でもある」と書くとき、そのくだらない憧憬こそは「乞食と勤め人は完全に階層が固定されていて、そのもとで乞食の階層と勤め人の階層を自由に行き来できる」という童話「王子と乞食」のような空想に支えられていることになぜ気がつかないのでしょうか。 次に拙作を引用されて私の主張を分析なされている部分ですが、私は「価値観」など言う言葉はどこにも使っておりません。私は「社会=経済構造」そのものの直接的な変革を希求する者ではありますが「価値観」の変革を以って事足れりなどとは決して思っておりません。マルクスの言葉を借りれば、「上部構造たる価値観」の変革は「下部構造たる社会=経済体制」が変革されればおのずと変革されることでしょう。 いかに言葉を尽くし価値観を相対化しようとも、真冬に公園でダンボールの家に住めば寒いのだし、食えなければ飢えるのです。ネット喫茶で夜明かしでは質の悪い睡眠しかとれないし、携帯の料金が払えなくなれば収入の途さえ途絶えるのです。寒くてもひもじくても価値観の持ちようだ、「分」を守れ、幸せを感じろという氏の悪質な主張のどこに、私と通ずるものがあるのでしょうか。 氏は「分」を守るの「分」は自分の「分」だと書かれておりました。とんでもないことです、氏が守らせたい「分」は「身分」の「分」であり、ホームレスを下流階層として固定化する策動の表れでしかありません。だからこそ、私は氏に「お前らそのまま死んで行け。二度と俺たちと同じ身分になれると思うな。」というに等しいその悪辣な言葉をホームレスとなった人々の前でも声高に主張することができるのか、という問いかけとしてトラメガ云々を持ち出したのです。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]家なきひとをホームレスと呼んではいけない/山田せばすちゃん[2010年4月11日5時04分] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=207480 緑川ぴの氏は上記作品の中で現在散文のカテゴリーで私やAtoZ氏と御陵原萌美氏との間で 行われている論争を揶揄するがごとく 自覚するしないは別にして そもそも人ってホームレスなんだよね 家族の待つあたたかな家庭持っていたとしても そこが心安まる場所とは言い切れないし お金持ちだからって必ずしも帰る家があるとは限らない と書かれています。 私やAtoZ氏が言挙げしているホームレスとは石川敬大氏の作品「耳を傾ける人がいる」http://po-m.com/forum/myframe.php?hid=873内に登場する現代社会「いま=ここ」におけるホームレスであり、彼らは決して単なる「家なきひと=家のない人」ではありません。彼らの多くは「家を失った=奪われた人」であり、彼らから家を奪ったのは産業構造の変化や景気の低迷、あるいはそれらによる雇用形態そのものの変化であり、その責は本人に帰する部分よりも社会構造自体に求められるべきであることは明白です。彼らは被害者であり、その被害と名誉は回復されるべきものであることも自明の理です。 その現状から目を逸らし、あまつさえ自由意志で「家を捨てた人」までをも引き合いに出してホームレスの概念をすり替えて「気楽でいい」だの「分を守れ」だのと暴言を吐き、名誉回復の手立てである私たちの発言に対して「言葉狩り」、「レッテル張り」、「真の問題解決にはならない」などと責任の所在をはぐらかす発言を続ける御陵原萌美氏はもちろん糾弾されてしかるべきでありますが、「ホームレス」概念の相対化に寄与する作品を投稿した緑川氏もまた責を負うものであると私は確信します。 緑川氏には猛省を求めるものです。 ---------------------------- [短歌]HOTEL-TSUKANOMA/山田せばすちゃん[2010年4月15日10時39分] 夕闇のインターチェンジを降りたとき「空」のランプに誘われたり 仄あをき灯りの部屋に二人きり黙り込むとき深海になる おそらくは1969年よりビールを切らした冷蔵庫唸る 忘れるために抱き思い出すために君を抱かましHOTEL-TSUKANOMA ---------------------------- [短歌]それっぽいの雑詠/山田せばすちゃん[2010年4月29日16時18分] 何時誰に教へられしか唇に指充て君の哭くメゾピアノ 半袖のブラウスなれば春の夜のをんなの二の腕仄白く見ゆ らあめんは泣きながらでも食えるのね             「京風らあめんあかさたな」にて ---------------------------- [自由詩]からふねや で聞いた話/山田せばすちゃん[2010年6月1日1時00分] 遊んでるうちにね 終電がなくなっちゃったのよ だからアパートに泊めてあげたの 夏休みで郷里に帰る間際だったのね、それで 部屋の中に下着干したままで 「まずいなー、こうゆうの。そんな気ないからさぁ余計に照れるよね」 「ご免ねぇ、すぐ片付けちゃうからさ」 ふたりとも少しお酒飲んでて だからベッドのよこに御布団と毛布敷いてあげておやすみって言って 寝たの 明け方近くだったかな あたしぐっすり眠りこんでて 急に 揺り起こされたのよ 「ねえ、」 「ねえ、」 「…なあに?」 「しようよぉ…」 「なぁんでぇ?なんでそう言うこというの?」 「だってさ」 「やあよ」 「ええー?」 「やだ」 「だっておかしいよー男と女が一つの部屋にいてさ…」 …黙ってたらどんどんどんどん勝手にそうされていってしまう 暗黙の…誤解? そう暗黙の誤解でおとことおんなはそうならなきゃいけないみたいに… 誰が決めたのよ? 冗談じゃないわよぉ 干してある下着見て照れてたくせにさ 明け方にいきなりおおいかぶさってくるのは照れないでできる訳? 酔いなんかすっかり醒めてるくせに あたしぐっすり眠ってたのよ ねぇ、ねぇそんなのってある? あたし頭に来てる あの男にも あんな男だって見抜けなかったあたしにも そんなもんだっていう世の中にも へえって顔して聞いている目の前のあんたにも 頭に来て頭に来て でも本当はあんたにも誰にもどうしようもないことだって わかってて あたしこうやって頭に来ながら 世の中と摩擦起こしてすりへってすりへって きっとなくなっちゃうのよね あたしが あんたは笑って見てればいいのよ あたしのことだって あんたにはわかんない事だと思うし あんたがおんなのこだったらどんなによかったか でもいいのそうやって見てて あたしあんたに助けてなんて言わない あたしがすりへってなくなっちゃうまで あんたはそうやって見てて …友達でしょ? ---------------------------- [短歌]I am a gang!/山田せばすちゃん[2010年6月4日14時34分] 俺らギャング! 郵便局を襲っちゃお! 「フリーズ!ミスターポストマン!」 「キャーッ!」 俺らギャング! 日曜日にはミサに行く 「天国の門、開いてる?」 「イエス!」 俺らギャング! 啄木って奴は生意気だ 「哀しきギャング」だ? 余計なお世話! 俺らギャング! 厚生年金払ってない 老後の不安? ・・・そりゃアル・カポネ ---------------------------- [自由詩]sound of silence/山田せばすちゃん[2010年6月11日9時50分] お願いだからどうか どうか君の横で眠るその人を 起こさないように 声を立てないように 唇に指を当てて 僕はおびえた顔の君を眼で制する そのまま動かないで なにもしゃべらないで 消し忘れたテレビの光に 映る君の顔を僕は二度と忘れない だから お願いだからどうか 声を立てないで 僕はこのまま出て行くから 駐車場に止まる見知らぬ車に 何故僕は気がつかなかったのか 玄関の暗がりで 大きな男物のスニーカーに つまづいたときに 何故僕はそれを理解できなかったのか いつものように合鍵を使って いつものようにそのままあがりこんで いつものように君を起こさないようにそっと そっと引き戸を開けて ベッドの上の君は いつものパジャマ姿で いつもの寝ぼけ顔で たった一つだけ 君の横で眠る僕の知らない若い男 それだけがいつもどおりではなくて それはありふれた結論かもしれない いつだってどこでだって誰にだって やってくる種類の結末だったかもしれない だからどうか おねがいだからどうか このままにしてしまおう 終わってしまおう 唇に当てた指を ゆっくり左右に振って 君に笑って見せようとして 唇が乾いてしまっている 僕は後ずさりしながら そっと引き戸を閉めて 静かに靴を履いて 鉄のドアを音を立てないように そっとそっと閉めて 鍵をかけてから その合鍵を ゆっくりと郵便受けに滑り込ませる 小さな音を立てて それでこの恋はおしまいになった 駐車場から 4階の君の部屋を もう一度だけ見上げて 車のエンジンをかける ゆっくりと車を 車道に出してしまってから 僕はタバコに火をつけて 君に貸したままのCDをどうしようかと なんとなくそんなことを考えて それから ほんの少しだけ泣く 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あったかいコーヒー?それともミルクティ? 「あー、じゃコーンポタージュスープがいいなあ」 何か納得がいかなかった    ☆三番目の女の子 真っ裸のまま彼女はそこに顔を埋めて ああ、と僕が呻いて果ててしまうまでずっと その口を離さなかった 無言で顔を上げた彼女はそのまま 僕に抱きついてきて いとおしくなった僕は 彼女に頬擦りをしてそれからキスを 僕の口の中に彼女はそれをおもいっきり吐き出して たじろぐ僕をうれしそうに見ながら言った 「おもいしったか」 はい、思い知りました、こんな味だったんですね ---------------------------- [自由詩]YOKIKANA/山田せばすちゃん[2015年12月30日9時28分] はい 父は一昨年なくなりました 何でも胃の腑に硬い巖(がん)なるものができたとか 何も食べられず痩せおとろへ 眞つ黒な血を幾度も吐いたすえに死にました よきかなよきかな 母は昨年 畑で出し拔けに頭が痛いと言ひ出しまして 脂汗を流しながら痛みに耐へてをりましたが うちに歸つて牀に伏した儘 翌朝には息をしてをりませんでした よきかなよきかな 兄はこの前の戰に取られて もう何年も歸つてまゐりません 今頃は戰場でしやれかうべと成つてゐるのか 野臥(のぶせ)り物取りの類に身を落とし打ち首と成つたのか 今のわたくしにはわかりかねます よきかなよきかな 姉は父の病の折に 人買ひに買はれて都へ さんざんにをとこの慰みものにされてのち 孕んだ子を始末したすえに 肥立ちもわるくそのままとか 遺骸は寺に投げ捨てられたと 命からがら逃げ歸つてきた姉の朋輩に聞きました よきかなよきかな はい わたくしも嫁に出た先で牛馬の如くに働かされ 子を成せなかつたことを詰(なじ)られ蹴られ 舉句には勞咳とやら 誰もゐないこのうちに戻されまして わづかな田畑をたがやして どうにか息永らえてをりますが 近頃は働くどころか 立つこともままならぬ脚萎えで おそらくは初春を迎へることも叶ふやら叶ふまいやら よきかなよきかな 燃しものつきたあばらやで 綿の千切れた懸けものを着て 明ければ雪に成るのでせうか 大きく咳き込んだわたくしの 口からあふれる眞つ赤な血 わたくしはとにもかうにも身を起こし 西に向きなほつて兩の手を併せ 六字の名號を唱へるのです よきかなよきかな これでようやつと 皆の待つ彼岸へいける ちちさま、かかさま、あにさま、あねさまが 西方淨土の蓮のうてなで わたくしに早くおいでと手招きをして なむあみだぶつ よきかなよきかな                            *げだのかうりんきはもなし                             かうそくかむるひとはみな                             うむをはなるとのべたまふ                           びやうどうかくにきみやうせよ 大歳(おほとし)の鐘がなる よきかなよきかな                        *しやうじやうかうみやうならびなし                              ぐしかうのゆへなれば                        いつさいのごうしやうものぞこりぬ                           ひつきやうへをきみやうせよ 氣がつけばこの身は 金色(こんじき)にひかりかがやき よきかなよきかな                                 *がんにしくどく                               びやうどうせいつさい                               だうはつぼだいしん                               ほうじやうあんらこ                          (*は淨土眞宗「正信偈」より) ---------------------------- (ファイルの終わり)