佐々木妖精 2009年2月14日23時35分から2012年3月4日22時04分まで ---------------------------- [自由詩]はじ/佐々木妖精[2009年2月14日23時35分] 太陽から差し伸べられた手が エスカレーターに見えたのですよ 自発的に?よじ登る腹も突き落とされるべき背も空洞です ならば私は何によってそうするのかされる以外楽になれる場所などないというのに あなたの目にはカメラが仕込まれています あなたの口は壁にあるのでしょう でなければ背中から 異次元の人などと聞こえはしません 隅っこの住人は 別次元という殻から産まれた 産声に草原が化膿し 這い回る先に 焼けた砂利が敷き詰められる 脚を上げ 息を潜め 熱を帯び 波打つものに耐えさえすれば 聞こえるはずだ 素足の軋む音 壁と話す声 肩でする息 絶滅を危惧されるその子は 口元が弾く音で縫い針にまみれ 致死量のナイフを飲み この子だけはどうかた― 祈らなくてすむ希望に縛られ 縛られることでこうして 誰の手首も傷つかないなら 絆創膏が太陽を覆い 重々しく揺れるガーゼが 腫れた動脈を包んでいく 埋め立てていくものを手に 隅っこめがけて投げつけるも 放物線の先は ああ 真ん中がはじまる ---------------------------- [自由詩]さんか/佐々木妖精[2009年3月9日21時47分] 信じることから始めるつもりが 疑わないことに気を取られ 信じることで救われるつもりが 疑わないことに疲れている もうダメだ もうダメだと嘆くうちに まだダメか まだダメかと唱えるようになった もしかしたらとかひょっとしてとか万が一と盛り上げ 見覚えのあるビルや 目印だらけの曲がり角へ ぶつかるだけぶつかり日が暮れる うつぶせになれば見えるんじゃないかと地平線を覗き 日差しの裏で目が覚めると もうレジのことしか考えられない 詩集でも読むつもりが めくることなく裏返し  バーコードばかり読んでいます 詩でも書くつもりが POPばかり書いてます コアラのマーチは最近売れないとか パンダのマーチならまだ売れたはず などと論じながら 誰よりも早く ただ速く スピードの向こう側というやつを見据え 打ち続けることでもう レジのことしか考えられない 家族とは長いこと メールでしか会っていません 声を出すと 隠しきれませんし どんなに心配されたところで 父さんごめんと漏らす傍ら 七三分けのバーコードを読み込みたいなんて レジのことしか考えられないので ボジョレー解禁しました と 客のいないフロアで叫んだ夜 新しい彼女でも作れって 世話焼きの店長にはたかれましたし それも命令ならば従いたいところですが 気の迷いです そんな余力はありませんし 何よりも今は 部屋で寝かせたワイン片手に コンビニプレイしか考えられない 休日は寝てばかり居ますが 寝るために生まれたわけではないと 生まれる条件を選べなかった者の一人として呟くのは 誤りでしょうか ただ生きるぐらいなら 追うのをやめるぐらいなら 一刻もはやく                       レジを打ちたい というのは 遥かにマシな生き方です だって今はもう レジのことしか ---------------------------- [自由詩]歌舞伎町/佐々木妖精[2009年4月26日4時09分] 歌舞伎町 変わらないのは開け放たれた門戸だけ 以前何度も往復した場所 歌舞伎町 銘打たれた鳥居をくぐる この町を守護するかのように それだけは変わらずここにいる 歌舞伎町 時には人しかなく 時には傘しかない 歩けばそこに飲み屋があり 酔えばそこがトイレになる 歌舞伎町 あらゆる人が飲み あらゆる人を飲み 限りない欲望を満たしつつも 限りなく飢えと渇きを産む街 歌舞伎町 身をかがめ 歩き 突きあたりへ身を委ね しゃがみ込もうと 静物といえば嘔吐物ぐらいで 立ち止まるということがない 歌舞伎町 かつてこの場所で たった一軒の居酒屋を目指しもした 限られた席を限られた顔で埋め 限られた酒を飲もうともした 客足と客引きの隙間を突破し 見知らぬ看板に視界を覆われ 飲み込もうと吐き出そうと 飲まれようと流されようと 決して割れない酒があった 薄められない原液があった それがなんなのか分からなかった 胃液しかなくなろうと 吐き出せずにいた 歌舞伎町 今はただ 扇動を止めないこの場所のように 青臭い腐臭を放つ発酵体が 胸の中で膨張している 歌舞伎町 砕かれたグラスを拾い集める指 喧噪に紛れた息を嗅ぎ分ける耳 へたり込んだ体を担ぎ上げる肩 朝闇を切り裂く鳥居は 今もただ 飲まれたものを静かに吐き出し 誰よりも早く朝を迎え入れ 誰よりも早く人浴びを始める 歌舞伎町 見覚えのある顔と 真新しい店内 グラスの中でとけゆく氷を揺らし 喉の奥へ流し込む 焼けつく喉 薄まる意思 べたつく氷がほどけ 気道で割れるのを感じる 青臭い息を 手で覆うことも忘れ 語り出す ---------------------------- [自由詩]帰省/佐々木妖精[2009年4月27日7時23分] 雨音に紛れ、扉が僅かに軋んだように思えた。 母親がこまめに掃除しているのだろう。 微かな埃と日向の匂いがする。 雨粒。雲を縫うこどもたちの声。坂道を駆ける軽い足音が風に乗り、ガラス戸を揺らす。 ベランダへ身を乗り出し音源を辿るにも、すでに寄りかかる柵はなく、手を伸ばす枝端もない。 様変わりした景色の中で律儀にも、雨戸だけが変わらずここにある。 いつの間にか点ることのなくなった室内灯や、知らぬ間に区切られた駐車場を、ぼんやり共有する。 腰かけたベッドから柔軟剤の香りが漂い、揺り起こされた蛍光灯が小刻みに瞬きを始める。 静止したブラウン管に光の線が数本、瞼の向こうで映えたように思えた。 古びたゲーム機。数本のVHS。本棚へ統一性なく立てかけられた書物。 一冊の辞書を手に取るも、余白を彩る書き込みが、もはや何を意味しているのか分からない。 ただぽつぽつ。日に焼けたページと空模様を読む。 黒ずんだ雲はもう、ありふれた夜になろうとしている。 ---------------------------- [自由詩]こういうそこ/佐々木妖精[2009年4月28日0時40分] 森を眺めるようにビルをたどる 窓から窓へ目を移し 切り貼られた深さと切り抜かれた感触を行き来する 昨日この先で見つけた あの場所は今日も見えるのだろうか 高さを計るように 首を真上へもたげることで ビルは深く消えゆき 見たいものしか見えなくなる 眼の中へ飛び込むものは空しかなく はみ出すものは鳥しかない 大量の鳥 鳥の合間に翼があり 翼の隙間に羽根があり 羽根の上に空がある 空の隙間にあるあの場所は 僕には果てしなく遠く思えて かつて人々はこぞって高みを目指し 理想を手に 野望を胸に秘め 希望を塗り固め 競い合い夢を積み上げた ソレンはウサギの目を赤く染め 人民はいまだ餅の配給を待ち長蛇の列 あの頃は大変だったよね けどいい時代だったなんて UFOは天使の着ぐるみを脱ぎ捨て ワレワレハウチュウジンデスと声を揃える 金属的な皮膚から一様に輪っかがはみ出し浮遊している 手を差し込み空間を探っても 針金のようなものはない ここはどこですかと踵を浮かせ ツルツル頭(?)を起伏に沿い撫で呟く どこということはないのですが、どこというひとはいるんですねと微笑む まるで宇宙人ワレワレモ宇宙人そう声を揃え スターリンヨシフスターリン あ、レニングラード 三日月状の縁はニヤニヤと生臭く クレーターのおうとつが指を噛む いつまでこうしていれば見えますか 僕は感触しか知りません 望遠レンズも青空がこんなふうに塞ぎ込みます そう深さの足りない目張りです 夜空になったら見えますか 惑星衛星恒星 どれもこれも眩しくて ここが月だという確証が持てないんです ---------------------------- [自由詩]聖夜/佐々木妖精[2009年5月1日3時50分] (ボソボソ悪態つくな。産毛みたいなヒゲ生やしやがって。自力で殻も破れない雛鳥が。お前らに売るヤニはねえ。消費税しか払えない、ふやけた身分証掲げろよ。売る売らないの、選択権と決定権は俺にある。せいぜい俺の顔色うかがって、ハトみてえに首振ってろ。) 別に何が、あったわけでもない。 食事をするのも命賭けな鮫の頭が吹っ飛んで。 ベトナム帰りの軍人が、モヒカンで孤軍サバイバル中なのも。 どうぞご賞味くださいませと、銃弾喰らわせたい気分も。 乱射して運良く皆、一命を取り留めてくれりゃいいのにっていう祈りも。 細やかな掌にくるまりたいみたいな未練も。なあ 永遠のられっこよ(たゆたうぬくもりとこえがほしくて、錆臭い爪でかいてしまう 俺達はきっと、獣として正しすぎるんだ(豚みてえに重い荷物担いで・熱湯みてえな酒浴びて・素肌に犬歯突き立てて・ 獣臭さ。酒臭さ。満員電車に吊るされて、職場に着くとヤっちまう (盗み・博打・殺し・性戦・ 緊縛プレイの針葉樹よ。自分を綺麗だと思うか。 有史以来のされたがり。 むしられるだけむしられて、裸になったら殺される。 なんも言えねえデクノボー。 俺達はきっと、戦争が大好きだ 俺達か 俺はきっと、大好きだ(・きみが。 場所も相手も選べず ただ世間とやらに揉まれ 揉まれる箇所も強度も選べず 揉まれ慣れてるわけもなく 痣だの癌だのこさえようと 揉まれちまったわけじゃない 気持ちいいから揉んでくれって言ってんだ 今日明日中に膝ついて 心から身体がズリ落ちようと きみの根っこに触れてみたい ゆれるおと 指の隙間を埋め 嗚呼。) 初出・「詩と思想」2009年5月号読者投稿作品 (改行等訂正) ---------------------------- [自由詩]着信拒否/佐々木妖精[2009年5月2日19時05分] ぼくの部屋にきみはいらない きみの部屋にぼくはいらない そう いくら距離を保とうとしとても 君はまだ飛び道具を使うし 君は僕の煙を避ける 週末が億劫で 眠くて眠くて仕方ないんだ どうせ撃つなら 寝ている時にしてくれないか これ以上 さめたくはないんだ 銃があるから歩み寄れないのか 歩み寄れないから煙草があるのか 君との距離を保つのに 火種を幾本も床に置き 布団から一歩も動けない 不意に覚めるべき眠気すら失い 夢伝いに部屋を出て 外から眺めた窓は黄ばみ 声をかけても顔を曇らせ 指を当てても泣くばかり ぼくの部屋にきみはいらない きみの部屋にぼくはいらない だからもう きみはいない ---------------------------- [自由詩]モザイク/佐々木妖精[2009年5月2日19時08分] 少年誌の山を崩し 初めて手にしたビニ本をめくることで 成人女性の身体には モザイクという器官があるのを突き止めた 未知の感情に駆られ 求めた場所は 服を着ていたり 声すらかけられなかったり 手もつなげなかったり 部屋が暗かったり 眼鏡を外していたり 服を着せていたりして いまだ辿り着けないでいるが モザイクにしか興味のない大人に なってはいけない 煙草を吸うきみの視線が 黒く塗りつぶされていたとしても きみの未来を覆うぼかしは きみ自身の手で消せるんだ 有機溶剤でふやけた指は つなぐこともできるのだから そう目を細めてばかり いるもんじゃない うつ伏せの肘がしびれ 大の字で向き直った空に太陽がなく 薄暗いモザイクが停滞していようと そこが空であることに変わりはないの だから そう空っぽな頭で うつろな画面を 滲ませるのはやめなさい きみは何も 悪くないのだろうし 悪いかもしれないのだから ---------------------------- [自由詩]セイウンスカイ/佐々木妖精[2009年5月14日19時13分] 仮に我々は静止しているとして それでも地球は回っているのだろうか 仮に地球が回っているとして 我々が静止しているのだとしたら 動いているのは夕食 カツオ本来の旨味をたっぷり含んだ味噌汁 仮に我々は静止していて 地球は回り カツオが巡っているのだとしたら 静止しているのは海 彼等が創り出す潮流 仮に我々は海と共に静止していて 地球とカツオだけが巡っているのだとしたら 誰がタタキを欲しているのか 仮にも我々は動作しているのだ 走っているのはターフ 淀を貫く新緑と突き放された    馬群 芦毛の超特急 セイウンスカイ 仮に私が静物だとしても ノーカウントで着地したい 蹴りあげられたいたい裸体が きみのたてがみに埋もれ ---------------------------- [自由詩]パーソナルカラー/佐々木妖精[2009年5月14日19時20分] 平穏な毎日の中で思い出す 都合のいいきみは なんだかアニメのようにチカチカして 曲がり角で衝突するために 疾走してみるのだが ぶつかるのは壁ばかり たかがメインカメラをやられただけだと強がりながら コブシでぬぐう 僕らのモビルスイーツは大破した 走れと叫ばなかった僕が悪いのか 蜜月期に共同開発したコロニーは墜ち ただ哀しみだけが空と大地を覆った 移住の際に撮影したフロンティアも いまや一面の焦土と化し ミノフスキー粒子の濃い窓枠が またねを閉じ込める 僕らのモビルスイーツは大破した 僕らの間でしか意味をなさない通信が これから解読されることはないだろう クリスマスに共同開発した新型が メレンゲの段階でメタリックであり それはボールの色が落ち付着したのだということを マグネットコーティングの一言で解読できる人は 脱出ポットと共に消息を絶ってしまった ネチャネチャした食感にしかめた笑顔とは また別の識別信号を残して さようなら 僕らのMSマカロン 僕らのモビルスイーツは大破した ポケットの中でただ きみの手を抱く強さで 量産型を握りしめている 初出(mixiコミュ「ペペロンチーノ・フィクション」) ---------------------------- [自由詩] ともだちになろう。/佐々木妖精[2009年6月30日19時35分] 何が見えているのか分からない ただ何かが見えている ようだ 揺れる隙間から何かが見えた気がする 何が見えたのか分からない 少なくとも起きてはいると感じる 悲劇的名作を繰り返し観て泣いてしまう。 というきみは、悲劇的な名作をわざわざ観てしまうことをかなしんでいるようだった。 リモコンに主導権を握られているかのように、きみはまだともうを反復している。 何が見えているのか分からない ただ何かを見ていると感じる 逆さまつげの向こうに何か見えた気がする 何が見えるのか分からない ただ深いまばたきが伝わる しかしきみは毛まみれでいいね。 小石が気になって駆け回れない獣のようだね。こわがらなくていいよという人は、躓いたことがないんだから気にしなくていいんだよ。 それでも小石と地球どちらに躓いてしまうか。戸惑うきみはいいね。 何が見えているのか分からない ただどこかを見ているのだ。ろう 視点から終点が見えた気がする どこを見ているのか分からない ただ震えてはいるのが伝わる まさにきみは目触りがいいね。 きみを抱く赤ん坊が、声だけの涙を湛えていていいね。 肩に手を添えられるだけで零れてしまうものや、なぞられただけで泣いてしまうことが、コップだけじゃないことを知っているんだろう。 どこを見ているのか分からない ただどこかを見つめているのが分かる 互いの中間地点に何かある気がする 何があるのか分からない ただそのポイントを反復するには まだともうを数時間 重ねなければならないのを知っている という僕にはきみの頭しか見えていない。 数分置きにうつむく、微かに呼吸する毛先しか見えていない。 見えていない、ということに関しては僕の後ろの人が知っているはずだ。僕にしか見えない人か、きみにしか見えない人かは分からないが、 それはきっと、神様には見えない場所だ。 きみの手に選択権があるように、僕は手動権を握りしめている。 悲劇がすでに移項したなら、どうか僕にも見せてほしい。 きみが右往左往した読点を。 ---------------------------- [自由詩]公園/佐々木妖精[2009年6月30日19時37分] 家からも駅からも離れていく かげすら踏まず蛇行する 昼は知らない人が沢山いるが 夜は知らない人がいない いつの間にか気付いた場所 街灯なき公衆電話 110番と119番 寝たまま息を吐く光源 ケータイを構える事なく 電話帳を探るまでもなく 僕はその番号を知っている ねたこを起こすな テニスコートを覗けば フェンス越しにふて寝するボール こんばんは シダ科です などと突付いて転がす 闇雲に乗り越えた植物の群れが まだらに忍び込んでいる 木陰と夜の隙間を縫って深さをはかり 寝返りをうつボールへ ヒラヒラ伸びる指 こどもを眺める まだ背の低い繁みだ 知っている子へ会いに行こう こうやって撫でに行こう 撫でられたいけど長身だ 桜の樹の下と 舞い散った花弁の上で のらのらと積もるしろねこや ここが家かとしゃがむ突風に 目を見張る生き物よ 君が逃げるより速く 僕がこの場を離れよう 振り向きざまに暗転したねこは 今も静かにだらけている ---------------------------- [自由詩]もちにつかれて/佐々木妖精[2009年10月4日12時16分] これが時代ってやつか 取っ手なんかどこにもない ただやけに研ぎ澄まされた杵に ささくれ一つないのは気になる どこからが錆びかと眼は垂直かつ平行移動しているが 空間はどうも垂直に移動している でなければ もちが降るなど考えられない もち後もち 空から降る膨大なもちの群れに 僕達 私達は つかれていたのです。 あーなんか、先頭車両に乗れば早くつくと思って? 隅っこまで歩いてみたけどあんまり意味ないのかな たまに遅くついちゃうけどちゃんと早くついたりするからほんとに幸せ そうやって意味意味言ってる時がいちばん幸せ 紙一重の悲劇をまばたきで回避できて(あ、)ほんとに幸せ。 轟音をまとい降り積もるもちに転がり、つり革なんてどこにもない。 ツン、デレ。という定型を知って以来 何かを喪った気でいますが ただ得た事に気付けずにいるのだと思います 今までずっとそうでした これからもきっとそうでしょう 即ちツン後デレ たまには性別ぐらい跳び越えるといいのにやたらもごもごしているきみはうさぎかい? やけにもたつくきみは農耕へ跳ぶといい 文明を築くといい あんころもちをつくるがいい。 しかし我々がかつて発明した 偉大なる全自動もちつき機の中に 全手動で米粒を詰め込んでいたなんて信じられるか 声と声を弾ませ合い つき合えばいいじゃん 指と指を触れ合わせ たき合えばいいじゃん 物言わぬ臼への気遣いすら忘れ 見つめ合ったりふかし合ったりすればいいじゃんってたまには思っていなくもなかったんだaa、 あんこはきっと塩まみれなんだから! とか跳び越えてしまえばいいのに、きみは 等距離等速度で移動する空間で僕はきみと もちを、つきあいたかったんだ。 ---------------------------- [自由詩]こもりつのる/佐々木妖精[2009年10月5日21時21分] きみはいわばかもしかだから、1Rの僕には名付けられないんだ 知りもしなかったあなたとわたしが抱き寄せていた枕を想い 壁へ囁いてみる 目が二つしかないから見えないんだけれど 総人口分の1ぐらいの確率で 当事者だったらごめんなさいね 通り魔にでも刺されたと 歯を食いしばって忘れてください 手当てぐらいはしますけど 傷痕ぐらいは堪えてください トイレにとってウォシュレットが革新的だったと気付くのは、 驚くべき水圧が、弾けながら各々の形へかえる時で。 どうしているのかとメールがきて こうしているのだと答える時、笑われるか怒られるか気になります。 触れられるか引っ込むか。 殴られるかくすぐられるかハラハラと、こうして自室に溜まります。 我々が水だというような わたしの事実は新鮮だった きみにも見えるだろうか 蛇口という蛇口から覗く潤みが 排水溝でしばしばするぬかるみや ぺたぺたした掌や緩やかなかたまりが 水が流れ落ちはにかむのを聞く時 見えるだろうか けしてとけることのない窓から 身をかがめる光のまとまりが 分かるだろうか 誰も起こすことのない細かな震えが えくぼにもしわにも残る たしかな痕跡が きみにも 聞こえるだろうか 息を吸い吐く時 それぞれの部屋からこぼれる音が 傷が癒えたら帰るといい きみのにおいのする場所へ ---------------------------- [自由詩]ビルです/佐々木妖精[2009年11月22日19時40分] ビル があるから空が見えない 等間隔で配置された乱射する窓 屋上中央をほのめかす凹凸 それはそれはとても人工的な囲いが空を狭め 樹木が何百年もかけ届く高さへ、人間は数十倍の速度、数百分の1の時間で到達する。 (かつて 人間の欲望、民族の発展欲には限りがなく、それ故に国家競争が存在し激化し続け、その最終形態が戦争である以上、世界の歴史から戦争の絶えることはないという認識があった)このビルもその一形態、限りない 欲望の形なのだろうか。 善悪や醜美へ振り分ける前に、ただ単純に (こんなものは作れない) (作ろうとすら思えない) この更なる上空 ボイジャーあるいは二号 肉眼では把握し切れないほどに、限りがない 「世界は人間のエゴ全部を飲込めやしない」 俺個人の欲望には限りがあって、ビルすら建てられない。 やりたいことは他の誰かが全てやってくれていて。 限りない様に思える睡眠欲すら、休日に16時間も寝るとお腹一杯。 三大欲とか表現欲とか。 睡眠欲とか表現欲とか。 表現欲 があるのが分かる。 という時は、表現になれてないんだと思う。 もっと夢の中で夢と気付けないみたいな。 したくない したい せざるを得ない その先へ吸い込まれた時 ビルはどこまでも伸びていく 人間の欲望には限りがない 人間の欲望には限りがない おかえりエンデバー 私はビルとして建っていた ---------------------------- [自由詩]垂直落下/佐々木妖精[2009年11月22日19時53分] 死ぬまでにしときたい事を聞かれないと答え してもらいたい事はと聞かれ即座に答えたね 膝枕 寝付くまで穏やかにしててもらいたい 髪と布の磨れ違う気遣いにウトウトほろ酔い 時に寝返りうつ伏せ窒息するほど吸込みたい その後はもぐら もぐらに生まれ変わりたい なんて思わないのはかれがモグラだからだよ 土の奥深くいつも いくつも穴を掘り続けた 向こう側に掘ればよかった そう蛇に出会った時思った 壁 木の根に行き当たった 上と下どちらへ翻るべきか 上 上には太陽がありそこで僕はしぬ。 乾いた砂の上でもがもがもがき ぬ。 下 根が下へ下へと気侭に堕ちてし 。 根はねぐらの串刺しを目論み落下し続け などと考える事なく踵を返し掘り下げる もぐら もぐらはオケラでも構わない もぐらは仲間をまくらにして構わない 人は膝に依るまくらの上で惰眠に溺れ 膝に因る蹴りを浴びて尚しぬ事もない 起きりゃいいんだろと無骨に息を飲み むせながら吐きバタバタと身を起こし ただジタバタとあがきうつむく 過程、 ボタボタと穴より墜ちゆく現世 大丈夫、これはトマトジュース 鼻から牛乳的なトマトジュース 燦々とさし貫く膝に因る目覚め 大丈夫、僕はトマトじゃないから だからこれは、血液じゃないから 僕は君の膝の上で膝に寄り現世を、 ---------------------------- [自由詩]がらんどう/佐々木妖精[2010年4月4日8時50分] どういう仕組みか知らないが ペットボトルに羽虫がいた 難儀な自殺と考えた 助けようとも感じたが 入り口は小さいし はさみで切るのも億劫だ 干からびたボトルを放置していた という点 部屋が乱雑な点にも落ち度はあるのだが ペットボトルの外には見当たらない 羽虫が一羽入ってた 人知れず小さな虫が 緑茶の代わりに入ってた どういう仕組みか知らないが ペットボトルに羽虫がいた 難儀な作業に思えたが 助けないのもばつが悪い 入り口は小さいが はさみで開けた出口から 腕はなんとか潜り込み 羽虫は難なく抜け出した ---------------------------- [自由詩]こげパンチは発火するほどバーニング/佐々木妖精[2010年8月9日13時58分] 晩ご飯の魚と目が合った日のことを、覚えていますか。 腹の中の子まで食われ白骨化してるくせに、目だけはしっかり残ってやがった。 ゲーチェなんかがそう言っていたことにして 正しさってさ、使命感のことだよ。 たとえばそう、僕の空間はこの身体しか占拠できず、君の身体は君しか当てはまらない。身体が人の正当性なんだ。だから僕はもっと早く、口を振りかざしたくてたまらないのさ。 夕暮れ 全ての大人は飲み屋で大気圏突破を試み、誰が切離しブースターになるかで揉めている。 世の中おかしいのは僕の仕業さと胸を張り、人はなぜ兎跳ぶのかと原液をジンで割る。 たとえば焼き目が焦げ目でないように、アンパンマンとこげぱんは違います。 月を目指し地に伏したマントは朽ちてなお熱を放ち、あんこは落下する過程で蒸発してしまったのかもしれないけど、全てのパンは同根で、中は小麦色でなく純白なんだ。 餡子が黒いのはそう、甘さの証で、イカスミと違ってちっとも生臭くないだろう?つまりはミディアムレアで、みな食パンマンのようなイケメンさ。ほんとうだよ と、助走距離自由競争が続く ビールもマリブも急激にストレートになる 真夜中 子供として叫んだ夢が、目覚めを感じ取る たとえばあの子が泣いていた時 たとえばそれを、拭いようのない時 そんなとき僕は、神様より先に祈りがあったんだと、信じることが出来るんだ だから一刻も早く、僕は神にならないといけなくて 酒臭い布団の中、抱き寄せた自身の肩が、予想外にあついと知る。 ---------------------------- [自由詩]白目色/佐々木妖精[2010年8月10日9時05分] 人 人はみんな目を持っています それは見える見えないに関わらず持っています 肌の色は違えどみんな同じ色の目を持っています みんな白目を持っています みんな白目を持っています 白目むいて棒立ち 白目むいて棒読む 差別 はいけない 差別と区別の関係というのは 黒目と白目の関係ですか 碧眼と黒眼の関係ですか 裸眼と被眼の関係ですか わかりません 正当な差別と不当な区別の関係はイコールですか 差別と区別の違いが分からず白目向いて口頭 区別は差別と関係あるからしちゃダメと伝承 全ての人は肌色と白目を持っています 動物もみんな白目を持っています 対して静物には白目がありません 白目の比率の問題です 白目の形状の問題です ヒトと非人の関係です 有機と無機の関係です タッチタイプの音 無駄鳴きするマウス 赤く染まりゆく目 ドライアイとコンタクトの関係 メガネとファッション性の関係 振り向くと椅子へ鎮座する 奥行きなきぬいぐるみの瞳 みんなかわいい みんなかわいいといいのにね というこの世と僕の関係 みんな白目を持っています みんな白目を持っています ---------------------------- [自由詩]私 達/佐々木妖精[2010年8月13日6時33分] 無痛でいられた頃 ただ手触りの良い毛布に包まっていた頃 こんな風になるとは予想もしていなかった せめて(きみと水)を飲みたいとマグカップをくしゃくしゃ握りしめる 皺くちゃの破片が幾重にも折り重なり光を閉じ込める 色を決めるのが光だというのなら 俺色に染めてしまいたい みんな俺色に染まればいいんだ(思うのだけは自由だって学校で習った)拳を解くと囚われた光が燦々にこぼれ きみと水がどのように作用するか予想し頭痛薬を仕込む 楕円型の錠剤が胃壁を直撃し胃薬を恐る恐る落とす 着水音がペタペタとくたびれた靴のように馴染み 上目線でゲンコツ落としたくなるきみは平均的で一回り背が低くくしかし遠い場所にいて 手を伸ばし指先でようやく殴り 誰も痛がらないその殴り方を私達は撫でると名付けた 指先で撫でる≠きみを殴る時 同じ時空に異なる点が産まれた 私はきみへ近い極限の値点に置いてもらうため産まねばならないと思っている 頭痛薬とセット処方の胃薬について考える これは頭痛薬+胃薬=無痛ということだ きみ+僕=私達 私達―きみ=俺 私達―僕=あたし 俺+僕=私 算数の中にしかない関係を私達は可能性と名付けた 私には大は小を兼ねるのが分かる だが中を兼ねるかどうか分からない 大は大以下を兼ねると明示しなったという事これは そう考えられる 僕はきみを兼ねる事が出来ないかもしれないだから 僕はきみの隣で せめてきみと(水)を飲みたい 俺色の水を きみ色の容器を眺めながら飲みたい きみと私をかけた時あるいはその上で割った時どうなるか その可能性を僕が口にすることは  だろう(私はマグカップの内側が何色なのか知りたい) ---------------------------- [自由詩]たくさん/佐々木妖精[2010年9月4日0時54分] 分からない 何も分かりたくないしニータニータいたい、たしくわらっていたい口元の傷隠して笑っていたい 頭でっかちの前向きが窮屈に耐えかね鈴生り走ってった夏 青白く誘う街灯に触れ指紋が1つ消えた アスファルト 電柱の幹 ポイ捨て 白猫 にゃーと三回告げ門を擦り抜け消えた 見えないから見なくなったのか 見なくなったから見えなくなったのかは分からない 星といえばそれは私のように孤独な それでいてやかましいこの惑星1つだった レールの軋む音 人身事故 悲鳴 ギャーとか三回喚く関係ないやつら 見上げてみた空に星があり 街灯の上でなお霞まずに在る 計38個の恒星 惑星 衛星 きれいとかなんとか言えばいいのに こうして数えしまう 見えないから見なくなったのか 見なくなったから見えなくなったのか そんなことは忘れて 見上げてばかりいた頃のように たくさんをきれいとつぶやきたい ---------------------------- [自由詩]こもり うたう/佐々木妖精[2010年9月5日11時02分] 足音は雨音に紛れ 身体は真夜中に紛れる 微かな人とすれ違うが みな傘を手に雨よけに夢中で 真っ直ぐ歩いていく 傘を手に飛び出てはみたが 差す差さないで迷ってしまう 肩へ着地した滴を振り落とさぬよう 歩幅を合わせる へしゃいだ水たまりの中へ紛れ込めればいいのだが どうも輪郭があるらしく、首周りが落ち着かない 透き通るくらいまばらになって、そこらじゅうになれればいい のに 雨の日は自分の音が目立たなくて好きと呟いた 彼の言葉には筆跡がなく ただ指が垂直に雨を跳ねのけ 白々と浮かんでいると思え 雨に紛れた音は 晴れの日はどこに在るのだろう 真夜中に紛れた身体はこのように 日向で日陰を探しているが 音はどこへ行くのだろう 音 音は浴室や台所に紛れ込む 蛇口をひねれば掌に 満開の雨音 よかったね きみの生活音は、人に潤いを与える と、いうことにして雨脚と駆け 見えない場所で、だくだく息を呑む 過去作 ---------------------------- [自由詩]つらつらつららる/佐々木妖精[2011年2月4日23時16分] 日常の八割は魔に刺されて足掻いているから 誰に殺されても文句は言えない なんて みな息をするのに必死ですが ばたついた手足は誰を殴ったか 答えよ リンゴが木から落ちるのを見て引力に気付いたという逸話は創作だそうですが まあそうだとしたら 雨が降ってくる時点で引力に気付くよなと雨の日に思いました 落下する雨粒や零れおちる涙で僕達は引力に気付き 舞い落ちる雪で浮力に 横殴りの雨で風力に気付く 跳んでも跳ねても着地してしまう耐え難い身の重さを重力と呼ぶと それは責任転嫁でしょうか 頭上で身を寄せ合う雨雲 降ればつららであると分かります 弛まぬ雨乞いが形となり弛緩した夢想を射抜く愛のルサンチマン劇場 恋は戦争 なんてほざけばラブレターは常に矢文 果たし状 たらいが落ちれば笑いがとれる などとボケたこと考えてそう 浮力ある海へ行きたい 息継ぎ下手な魚がプカプカ浮いてきて なんかパクパク喋ってんの 明滅する鱗は大なり小なり艶やかなのに なぜか苦しそうなの ---------------------------- [自由詩]そ≠ら/佐々木妖精[2011年2月6日13時11分] 同級生に出会えません 同じ教科書を広げ 同じ食パンを食べ 同じ制服を着ましたが 違う仕事に就きました そういう決まりなんですね 知らずに席を立ちました 子供しかいなかったんですから 振り返れば狭い学び舎 ジャングルジムからの眺めを 登ることなく味わえます 先生だけが先生のまま みんな大人になりました みんな大人になりまして あいつはせんせになりました 不思議なことに今はもう クラスメイトと出会えません 修学旅行の席を埋め尽くしたあの群れは どこを走っているのでしょう なんだか乗り遅れた気分で 夜空なんかも眺めてみますが 目を凝らすと太陽が未練がましく身を隠し フォーキギターの覇気はなく 僕らの空はもっとはっきりと明るく 酒はひどく不味く 「勝敗に囚われるな。引き分けがあるじゃないか」ってな授業を笑い うん、そう。 確かにこの空じゃなかったのに 魔が差して見上げては 必死に同着を探してみたりもする 勝ちたい ---------------------------- [自由詩]地に伏せた付箋/佐々木妖精[2011年7月19日0時49分] 整列する人の群れ 視線を避け動き回る目とうつむくつむじ 肩車に疲れた身体を寄せ合い、互いを委ねているのか。汗を擦り付けているのか。 手を垂直に伸ばしたところで、いまだ雲すら掴めない。 地平線が見えないからって わたしの背中の前で泣かないでください わたしの背中の前で泣かないでください 服が汚れてしまいます よごれてしまいましたよ? 海へ行きたいですね みんなで泣けば迎えにきてくれますか 夏の重厚な空気を汗で沈めていけば、冷たく沈めてくれますか。 堕胎と自殺の間で揺れていますが、目の前のばあさんがそろそろくたばりそうです。 どうしましょうか 電車はひどく揺れますし、双子の可能性も否定出来ません。 いっそ心中話を持ちかけようかと思うのですが、口説き文句が浮かびません。 最大限の譲り合いの結果、空いたスペースにすかさず赤子をねじ込む母と目撃した私はそれを愛と思いました、たただずっとうつむいていたおかげで、床と話せる気がします。 「最低限争おうって言えば英雄になれるよ」って。なるよって飛んでって。 肌色の地表を俯瞰する透明な翼は、ますます軽くなり重さに耐えかねて息遣いが恋しくり、多くの衛星を引き連れ、ついには星になる。 恒星を探すのに疲れたけど、顔をあげるとぶつかりそうでこわいね。 地球は丸いからぶつかっても痛くないよ って、叫んでみようか。 ---------------------------- [自由詩]分別劇/佐々木妖精[2011年7月19日6時50分] 納豆を食べる 納豆を残す 納豆を生ゴミへ捨てる 納豆の容器を捨てる 怒られる 納豆の容器を洗う 納豆の容器を捨てる 怒られる 納豆を拾う こびりついた葱を捨てられる 納豆で怒る 俺と地球とどっちが大切なんだ! どっちも大切よと微笑む女 薄々勘付いてはいたが・・・と言葉をつまらせる男 地球 俺の全てを育み 俺の全てを奪ったもの お前の全ては奪えないが お前の全てを憎み お前の血肉を掻き乱そう 原初より受け継がれてきた復讐劇に、この身を焦がそうじゃないか そう。命の形とは、復讐の所作なのだから 男は家を飛び出し 地球を何度も踏みつけた 数回足を叩き下ろしたところで自家用車をふかし 地球の顔面を掻き毟る 排気ガスを地球のツラに吹きかけながら 幾度となく辞めるよう諭された煙草をくわえ 窓から投げ捨てヤキを入れる 宛てどなくたどり着いた公園 妻とも遊んだボートで漂う心は 出会ったころ まだあどけなさの残るえくぼであるとか どちらともなく初めて手をつないで 付き合うことになった日であるとか 幾度となくデートを重ね 初めて結ばれた夜であるとか ウェディングドレス姿 ベールから覗く横顔が これまで見てきた中で一番きれいだったことなどを思い出して 男は声も殺さず泣きじゃくり スワンで津波を煽動し岸へ乗り上げ亀を逆にした 再度、凶器と化した車で特攻をしかけ そこら中の地面という地面を陥没させ、木という木を粉砕して これから足繁く通い詰めることになるであろう牛丼屋で特盛りを頼み、屍肉を喰らう 一度は愛した女へ 別れを告げる鬼となるために 悲愴を奏でる夫とは対照的に インターフォンを覗く妻は玄関まで出迎え 命の始まりを告げる 「ほんとに俺の子か?地球の子じゃないのか」 「私たちも地球の子なんだから、この子もきっとそうよ」 ---------------------------- [自由詩]あーうー/佐々木妖精[2011年7月19日20時30分] 図鑑で見たことのない名前が 見覚えのない恐竜についている たかだが十数年で何が起きたのか サウルスは何ら変わっていないはずだが 人類は何を発見したのだろう 化石になりたい 化石のように気高く在りたい 今際の際にうまいこと泥に埋もれ そこは人類滅亡後の地球 僕の痕跡は美しく再発見され 人類の色を夢想してワクワクする知的生命体に愛でられる 塗り絵になった僕らを 彼らはいったい 何色で満たすのだろう どうかその輝かしい知性で決めてください 僕の色は何色ですか 人類代表としてどういうわけかたまに 人間を辞めたい なんて色は 塗らずにいてもらえると嬉しいけれど 嬉しいけれど僕は以前 トリケラトプスを毒々しく塗った記憶がある 僕の色は何色ですか 僕の色は何色ですか ---------------------------- [自由詩]ブラン&ブラン/佐々木妖精[2011年7月22日6時12分] 植え込みに隠された自転車をぼんやり眺めていた ピカピカなのに捨てられているから おもいはサドルに積もり シーソーがかるいを弾く まるで意味のないことを口走りたくなる 風になりたい、とかそうたとえば メランコリックブランコリー メランコリックブランコリー ブランコリーが揺れ呟いている メランコリックブランコリー メランコリックブランコリー 僕は風としてカルト的英雄となる 風のような足取りでスカートをつき上げる 背広から拡がる男色の拍手喝采 本日のチラリズムは予告付きのため100% スパッツにお気をつけ下さい ほらしまった してしまった やっちまったのだから メランコリックブランコリー メランコリックブランコリー 揺れる木の葉は絶え間なく おもいは軋み続ける メランコリックブランコリー メランコリックブランコリー ---------------------------- [自由詩]黄昏ナツの一生/佐々木妖精[2011年10月3日0時45分] ニンゲンは幸せだ 猛暑の代名詞になることもなく 熱い息をイライラ吐き しばしば彼らを罵倒する (やつらは実に暑苦しい いっそ冬に産まれてくれればいいものを) ニンゲンは幸せだ 数年間 蓄えた滋養を使い果たし 力尽きた青白い亡骸を 幾度も観測出来る この世のものとは思えない蒼白の彼らは 物静かな少年の面影だけをのこして とりわけニンゲンの雄は のんびりしている 法師ですら ツクツクしたくてたまらないというのに こちらときたら 産まれてこの方なきはしたが ぐんにゃりしぼんだ抜け殻を ぼんやり眺めていたりする (我々はなぜ鳴くのか) ところで僕たちは ひっそりと だが確実にいる雌について もう少し考えてもよいと思うんだ 例えばそう 舞い落ちる木の葉をよそに 凛とおすまし高嶺でひとり 黄昏ナツが遙か彼方 お高くとまっていて― 彼女の落下を僕は知らない ただ音もなく抜け落ちたであろう彼女の痕跡が 落ち葉に紛れ眠っている ---------------------------- [自由詩]だめ/佐々木妖精[2012年3月4日22時04分] ダメだなあ。何をやってもダメだなあ。 地震があったからかなあって言っちゃうぐらい最近ずっとダメで、最近なのにずっとかよと笑ってしまう。ダメだね。本当に 地球何回まわってんだよと怒る子供に365×46億ぐらいだよって教えるか迷っていたらランドセルが縮み大人になる。 地球は止まっている気もしたけど地震のせいでこうなったのかな。 46億にいくつ足せばいいのかな。年齢かな。歴史かな。 けど指は10本しかないから割り切れないとダメだね。 手をつなぐことすらなんともなかったのに、恥ずかしがるようになって恥じらいもなく地震のこと書いてるともう一度手を握ってワケも分からず泣きてーよ。オンギャアです 絆ですか。流されました。 首輪のように手錠のようになかった鎖が軋みます。 なかったくせに流されて無線LANも流されて回覧板が回ります。 きみは大人になれた。僕は大人のままだめだめ ---------------------------- (ファイルの終わり)