三奈 2010年3月5日1時55分から2013年3月31日0時12分まで ---------------------------- [自由詩]残骸/三奈[2010年3月5日1時55分] 星屑に夢を抱いた 光り輝くその存在は とても美しいものに 見えたから 雲に夢を抱いた 自由自在なその存在は とても優雅なものに 見えたから 星屑と雲と夢 どこか似ているその三つ あの日ブラックホールのような この口で 捕まえたゆめだけを ぱくりと食べた 美しいもの達の残骸は 今日も私を満たしはせず 後悔だけを残していくのでしょう 『遠くにあるものは いつだって 光り輝いてみえるけど 手にいれたその瞬間 色あせてしまうから』 おなかがすいて つかまえて おなかがすいて またたべて 後ろをふりかえればいつだって たべたゆめ達の残骸が 何も言わずにこっちを見ている。 ---------------------------- [携帯写真+詩]特製ギブス/三奈[2010年4月3日3時28分] 君の心に特製ギブス 命の色を消しましょう 痛い、痛いと叫ぶなら 治るまで傍にいてあげる 真っ二つに折れた心 きっといつかは元通り 君の心に特製ギブス 流れる紅(あか)を消しましょう 壊す為のハンマーは 机の下に隠しておくよ 遠くない未来 それが振り下ろされる瞬間 僕も君もやっと 幸せになれるのでしょう (だって、君の為の存在) (さぁ、僕だけの価値を見いだして) 君に命の色が灯る時 僕の心も動き出すのさ ---------------------------- [自由詩]拝啓、夏目先生/三奈[2010年4月12日18時26分] すでに巣食う私の心には あまりにも重い言葉だと思うのです 色に例えるなら、情熱的な赤 でも、静かに降り続ける霧雨のように 柔らかくこの手を濡らすもの 傍から見れば「幸せの象徴」のようなその言葉には 実は、大きな錘がついていて 聞いた瞬間に何故だかずしんと 身体が重くなるのです 離さない、と言われているようで 逃がさない、と言われているようで 悲しいかな嬉しいかな 涙が頬を伝うのです そんな窮屈な思いをさせるのは ひどくひどく可哀想なので 今日もまた、貴方の言葉を借りたいと思います 拝啓、夏目先生 月下の薄闇 穏やかな静寂 「月が綺麗ですね」 見えない相手にそう呟いた ---------------------------- [自由詩]殻に籠ったハリネズミ/三奈[2010年5月9日1時47分] 触り心地、なんて 求められても困るのよ 今日も私はきみの手に 小さな小さな傷をつける いたい、と小さく泣いた声 そっぽを向いて 聞こえないふりをした うさぎさんの所でも いってらっしゃい あの子はきっとふわふわで 人を傷つけたりはしないのでしょう 私はきみと体温を分け合うことも 甘えることもできないのだから 棘は私を守ってくれる 棘は私を遠ざける 棘は私を独りにする あるのは自分の体温のみ だから、きみの温もりを 優しい手を 知ってしまったら、きっと 負けてしまう 許してしまう 境界線が、ほどけてしまう 慣れ始めた“孤独”が牙をむく それはとても怖いこと、だから うさぎさんの所にでも いってらっしゃい ねずみさんの所にでも いってらっしゃい 帰ってこなくても、いいからね (最後の強がり) (さよなら、を言わせて) ---------------------------- [携帯写真+詩]斑(まだら)/三奈[2010年5月26日11時13分] 生きていく事がひどく 滑稽に思えてきたのです 紡いでいく朝 邪な思いを甘やかす小部屋 この道の先にあるものは 高が知れているだろうに 私は今日も滑稽な光に 身を委ねる 怒声が聞こえない クラクションさえ鳴らない 車道の真ん中で ---------------------------- [自由詩]エピローグ/三奈[2010年6月19日2時27分] 「君がいなくなった後の話をしましょう」 二人で見つけた、魚の形をした雲 毎日せっせと泳ぎ続けている 月のうさぎはもちつきをして 夏の音は歌を唄い 紅葉は静かに路を染める 「だけど私の世界の」 魚の雲は死んでしまった 月のうさぎは引っ越した 夏の音を聞くと君を思い出し 目と耳を塞ぎ、秋がくる 「そんな現実(ゆめ)を見させないで」 貴方が消した¨アナタ¨は、私にとっては¨宝物¨でした。 でした。 ---------------------------- [自由詩]クラウン/三奈[2010年7月11日19時45分] 悲しき道化師の夢を見た がらんどうに流れる残響 琥珀色の朝日 笑顔の仮面は外れることなく 重い鎧をつけたまま 笑いながら、泣いていた 笑いながら、怒っていた 笑いながら、哀れんで 笑いながら、死んでゆく 悲しき道化師の夢を見た 似た者同士の、私と彼 無惨なクラウン 暗闇ピエロ 二人の違いはささいなもの 涙の味 笑う喜び 輝く言葉 それらを少しだけ知っていた ただ、それだけのこと 最後に映ったのは 箒星が描くシュプール 目覚めて感じた 鼓動と温もり きっと今の私を つなぎ止めているのは ずっと、捨てられない この温もりなのだろう ---------------------------- [自由詩]眠れる森/三奈[2010年7月31日0時08分] ぼきっ 骨ばったゆびの折れるおと まるで、マリオネットのよう 一人では立てない私を君は何故慈しむの? 『早く治るように』 そういって塗ってくれた薬は 今でも確かな熱を保っている 眠らない森で、君がくれた沢山の“肯定” 縋る様に膝を抱え、頬でその熱を感じた瞬間 眠らない森は、眠れる森へと変わってゆく 微かに香る花の匂い 南風に揺れる木々 呼吸する夏草 君が残した言葉の中に“否定”はひとつもなかったね 不安だらけだった私の心を穏やかにする術を 君はいつから知っていたの? ---------------------------- [自由詩]太陽と月の話/三奈[2010年8月22日16時49分] この命に何を求めるの? 光なんて望まないで 空っぽになった 言葉の引き出し 錆びたシャベルで庭を掘った  探していたのは君へのプレゼント いつしか足の踏み場はなくなって 真っ逆さまに落ちた暗い穴 「どうしよう、帰れないや」 そこで出会った旅行中のもぐらに 君への贈り物を託したよ 温かい言葉が詰まった 橙色の綺麗な小石 世界中の誰よりも 君に似合うと思うんだ  この命に何を求めるの? 光なんて望まないで 太陽より明るいものはないのだから だけどもし君が疲れて 穏やかな闇を望む時は 僕の名前を呼んでほしい それまでに逃げてしまった言葉達を 呼びもどしておくからさ 次のプレゼントは決まっているんだ 光り輝く 琥珀色の小石 シャベルを片手に探しにいくよ 逃げ出した言葉達が詰まったその小石 君は喜んでくれるかな? ---------------------------- [自由詩]“凛”/三奈[2010年10月29日2時44分] 沼の中へとダイブしたい 白いワンピースが泥色に変わる瞬間を この目にしっかりと焼きつけて 刻みこむんだ 服に肌に心に 生きてゆく為に必要な汚れを 泥んこになったワンピース 「様になってる」と未来が微笑む 「似合わないよ」と過去が叫ぶ 罠だらけの路の真ん中 まだ見ぬ自分にむけて掲げた拳は 砂嵐の中でも揺るがない 揺るがない 例え今大きな声で 過去の私が泣き叫んでいたとしても ---------------------------- [自由詩]Zombie/三奈[2010年11月24日14時51分] 「有害な空気を生み出す煙突のようだね」 そう呟いたのは、他でもない私の心でした 体内をぐるりと回り行き場を失くした有害物質は、ため息と共に吐き出される 透き通った冬の空気 吐いた息は煙みたいな灰色だ 「心が焼却炉になったのはいつからだろう」 そのせいで私の口は煙突になってしまった もえるゴミは毎日飽きずに何かを叫び 焼却炉が無理やりそれを黙らせる 本当は気づいていた “愛して”の声 誰が?誰を? 私が、私を 今日もせっせっと焼却炉 もえるゴミを燃やしていく 壊れるまで働いてちょうだい 火種なら無限にあるからね 今日もせっせと私自身が 私自身を潰していく それでもなぜ、もえるゴミは生き返るの? 昔見たホラー映画のワンシーンが ふと、脳裏にちらついた ---------------------------- [自由詩]優しい剣/三奈[2010年12月31日13時35分] 世界が声を失くしても 消えない音符と手を繋ごう 脳が奏でる たった一つの音楽 外国語よりうんと近くて 私が使う日本語より 少し遠い言葉達 その歌の中に自分を見た その人の心に自分を見た 冷えてゆく心をゼロに戻すのは いつだって君の歌声で 言葉という優しい剣は 私を裁く為ではなく ただ立ち上がらせる為に存在していたから 世界が声を失くしても 消えない音符と手を繋ごう 頭の中のミュージックプレイヤーが 今日も“生きろ”と語りかけた 反芻して、呼吸する 何回も、きっと呆れる程 反芻して、呼吸する 言葉を交わしたことのない君がくれた 微かな光を絶やさぬように ---------------------------- [自由詩]願いゴト/三奈[2011年3月16日17時51分] 夜の次には 朝が来ますように 春風が貴方のもとに 届きますように 空が晴れていますように 温もりが涙が笑顔が 貴方と共にありますように そして何より どくんどくんと 貴方の命が 世界のどこかで声をだしていますように 今、私と貴方の心臓が 重なりあう事はなくとも 愛を、安らぎを、優しさを、穏やかな日常を どうかあなたに。 (欲張りな私の、一つではない、願いゴト) ---------------------------- [自由詩]顔のないひと/三奈[2011年4月29日0時51分] その人には顔がなかった ゆっくりと動く喉仏 見なくても分かる 嗤っている 高い位置から嗤っている 私の苦手な目をして 私の苦手な言葉を紡いでいる その人には顔がなかった 顔なんていらなかった 見たくもなかった だから消した その目も 鼻も 口も 私はあなたをおばけにした 私はあなたをかおなしにした だからもう大丈夫 次逢った時は その喉仏に 最上級の愛想笑いをプレゼントしよう 顔のない人も きっと嘲笑ってくれるでしょう いつものように 鼻を鳴らしながら ---------------------------- [自由詩]ふたり/三奈[2011年7月1日23時40分] 絡み合った方程式 かけてたして、導き出すの “しあわせ”という名の回答を 笑っていたい 笑ってほしい わたしの“しあわせ”は わたし一人ではつくれない 空いた隙間を埋めるのは いつだって、そう きみの笑顔と、きみのしあわせ 絡み合った方程式 かけてたして、導き出すの “しあわせ”という名の感情を 笑えないのなら、笑わせてあげたい へんてこりんな方程式に乗っかって 憂鬱の海を、超えていこうよ ---------------------------- [自由詩]愛猫/三奈[2011年8月22日17時45分] 膝の上の猫 まるで愛おしい生き物でも見るような目で わたしを見てにゃーと鳴くの 通り雨降る、夏の午後 その視線を すり寄ってくる体温を 振り払いたくてそっぽを向いた うっとうしくて、邪魔くさい だけど手放すことはできない温もり 心地よい距離は、いまだ見つけられないまま 夏雲は消え、向日葵は土に還り いつのまにか秋の気配は すぐ傍まで近づいていた 膝下の猫は相変わらず 寂しがり屋でにゃーと鳴き 秋色の私は「仕方ないな」と ため息ついて微笑むの うっとうしくて、邪魔くさい だけど手放したくないその温もり 愛される事に慣れないまま 愛し方も分からないまま 季節は巡る 少しの希望と願いを乗せて どうかどうか、願わくば 粉雪降る、冬の朝 私は猫になっていたい 甘えるように喉を鳴らし 寄り添って丸くなっていたい 猫と人の境界線のど真ん中 消ゆく星々に そんなことを願った ---------------------------- [自由詩]脳内旅行/三奈[2011年9月21日10時37分] トランク一つで旅に出よう 遠い遠い異国の地へ 木の橋を渡り森を抜けるのだ 憧れていたムーミンの家 扉をノックしたのなら、彼は出迎えてくれるかしら? 可愛らしいお家の中で、お茶をして スナフキンのハーモニカに癒されたい きっときっと、楽しいでしょう きっときっと、幸せでしょう だけど、どんなに楽しくても 動物たちが寝静まる真夜中 私は一人、泣くと思うのです 寂しくて寂しくて 私の事を知ってる人に 大切に思ってくれている人に 愛おしい人達に 会いたくて会いたくて 泣くと思うのです おそらく耐えられなくなった私は ムーミン谷に別れを告げて そそくさと故郷に帰るのでしょうね 旅の終わりはいつも同じ これが私の脳内旅行記 “永住”という選択肢がいつの間にか消えていた 早く帰って笑顔がみたい 嘘みたいなお土産話 君は信じてくれるかな? ---------------------------- [携帯写真+詩]空飛ぶサカナ/三奈[2011年10月12日12時33分] 酸素のない入り江 海水で満たされた視界 手足のついたサカナは駆け上がる また呼吸をする為に また"にんげん"に為るために 『無駄な事を』と嗤うあいつに向かって 心のままに暴言吐いたら もっと高く飛べる気がするんだ 海底から生まれた一つの命 見せてあげよう 格好悪い生き様を ---------------------------- [自由詩]お互い様なふたり/三奈[2011年10月17日23時50分] 敷き詰めた地雷 踏まないように爪先立ちで歩く君 だけども小指が当たってしまって 凄まじい音と共に 私の心に闇が迫る “ごめん、ごめん”と焦る声 熱くなる目頭 笑いたいのに、笑えない 割れるような地雷の音が 頭にこびりついて、いつまでも離れなかった 穏やかな日々を送りたいのに 人間というのは難しい生き物ですね ため息をついて顔をあげる 視線の先にあるのは、敷き詰めた地雷と うなだれている小さくなった背中 改めてみるとすごい数 こんなのよけて通れるわけがない 君が、蟻んこでもないかぎり きっと、穏やかな日々なんて 意外と簡単に手に入るんだ 難しい生き物なのは人間ではなく 地雷を敷き詰めている “私自身”だったんだね 闇の中で導き出された答え それを呟くと うなだれていた君が、ゆっくりとこっちを向いた 振り回して、振り回されている これが今の私たちの関係 だけど幸せになるために 安らぎや安定も欲しいから 雲を見上げて私は考え始めた 無数にある地雷 それら一つ一つの処理方法を 狭くてもいい 二人が歩けるくらいの 細い道を作り出す為に ---------------------------- [自由詩]いってらっしゃい、いってきます/三奈[2011年11月13日0時21分] 眠気眼のサラリーマンは 今日も大きなあくびをする 長いコートに包まれた 少し猫背なその背中 「いってらっしゃい」と声をかけたら 「いってきます」と言って 背筋をピンとのばした あぁ、きっと今日もこの人は 満員電車に揺らり揺られて 目上の人には頭を下げ 弱音は心にしまったまま 一日を終えるのでしょう 自分が生きていく為に 家族が生きていく為に ピンとのばしたその背中が なんだか頼もしく見えました 眠気眼のOLも いつも大きなあくびをする 「いってらっしゃい」と言われたから 「いってきます」と手を振った 街は今日も生きている 店の前を掃除する人 都心へ向かう車の渋滞 世界は今日も生きている みんなみんな、「いってらっしゃい」 みんなみんな、「おつかれさま」 働き始めて分かったよ 生きてゆくって呼吸する事じゃないんだね 呼吸するにもお金がいるのね やっとやっと気づけたよ 出かける前に深呼吸 今からは自分の力で呼吸していこう そしたら、あの見慣れた猫背に 乗っかっている荷物も 少しは軽くなるかしら? 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身動きがとれない部屋 その部屋に押し込まれた瞬間 私はいつも考えてしまう 空っぽの人間などではなく いっそのこと 本物の空気人形になりたい、と ---------------------------- [自由詩]ぽろぽろぽろ/三奈[2012年10月19日21時34分] ぽろぽろぽろ 言葉がおちる 温かみのない言葉がおちる 刃物のようにとがっておちる 後悔と苦悩が降り注ぐ 冷たい言葉を君に投げた 君はきっと、泣いたでしょう やがて来る明日を嘆いたでしょう ごめんなさい、は届かずに ぽろぽろぽろと降り積もる ごめんなさい、と伝えたい ごめんなさい、は届かない お互い白髪になるまで、と そう願ったはずなのに ぽろぽろぽろ 涙が落ちた ぽろぽろぽろ 今日も朝日が教えてくれる 昨晩も 彼女から連絡がきてない事を ---------------------------- [自由詩]週末/三奈[2012年11月11日0時44分] 人の心に耳を澄ませた金曜日 聞こえてくる様々な声に 目頭が熱くなった 人の声に耳を塞いだ土曜日 何度も繰り返した同じ言葉 口にだしてしまえば、泣いてしまいそうで 唇をぎゅっと噛みしめた 全ての事柄が透明に見えた日曜日 一人ぼっち、深夜1時 心地のよい夜の風 今日は何をしよう、なんて考える 料理の一つでもつくろうか もし晴れていたら、出かけるのも悪くない 精一杯のおしゃれをして、君の街まで飛んでいこう 今日はいつもより心が軽い 週末の魔法の効果で今日だけは 自然に笑えるような、気がしてるんだ ---------------------------- [自由詩]ぐるぐるり/三奈[2013年3月31日0時12分] ぐるり、と周りを見回してみた 遮断された思考回路 崩れ落ちた自信とプライド 夢中で追いかけているうちに 何を追っているかも分からなくなった ぐるり、と周りを見回してみた 逃げる準備を着々と進めている私がいる 恩知らず、という言葉が頭の中を這いつくばる 無駄にしてきた、いくつもの季節 “頑張る気力”なんて輝かしいものは もう、私の身体の中には残っていない だから逃げるのだ 塵ひとつ残さずに 飛び立つのだ ぐるり、と見回してみた世界 綺麗で大切で、輝いてる そんな大事な者たちに 八つ当たりしてしまう前に 逃げる準備を始めよう 最後の逃げだ、約束するよ 今日も私は何万回目の“約束”を 見えない誰かとそっとかわす ぎしぎしと小指の関節が小さく音を立てた 許されている、なんて 勘違いしてしまいそうな 痛みだった ---------------------------- (ファイルの終わり)